【発明の詳細な説明】
黒色腫阻害蛋白質
本発明は、黒色腫阻害蛋白質(melanoma-inhibiting protein ;MIA)、それを
コードする核酸、この蛋白質の単離及び検出方法、並びに療法剤の製造のための
その使用に関する。
細胞増殖の制御はポジティブに又はネガティブに作用する因子により調節され
る。ポジティブな効果を有する因子には既知の成長因子、例えば上皮成長因子(E
GF)、血小板由来成長因子(PDGF)、インシュリン及びソマトメジン類が含まれ
る。ネガティブな活性、すなわち阻害活性を有する因子には成長促進物質及び成
長阻害物質として使用し得るTGF-β(Roberts ら、Proc.Natl.Acad.Sci.82(1
985),119-123)に加えて、直腸癌細胞からの(Levineら、Cancer Research 45 (
1985),2248-2254)、メラノーマからの(Bogdahnら、Cancer Research 49 (198
9),5358-5363)、及びラットの乳腺由来の健康な上皮細胞からの(Ethierら、J
.Cell.Phys.142 (1990),15-20)、内因性腫瘍阻害因子が含まれる。
例えばポジティブな作用を有する成長因子の過剰生産又はこれらの成長因子に
対する変異した細胞の低下した依存性(Rodeckら、International Journal of C
ancer 40 (1987),687-690)による上記制御系の撹乱により、腫瘍細胞が制御さ
れることなく増殖することが可能になる。種々の腫瘍組織からの前記の腫瘍阻害
因子は、この障害された制御系において療法的に介在し得る興味ある化合物を提
供する。このような療法的使用のためには、これらの因子が多量に且つ再現性あ
る純度で提供可能でなければならない。しかしながら、これらの因子のほとんど
について、それらの複雑な且つ時として
未知の組成のため、及び同時にそれらの製造の再現性の欠如のために、療法的適
用のために適当ではない、細胞溶解物から濃縮されたに過ぎない画分が今までに
記載されている。
本発明は、細胞系HTZ 19-dM 及びATCC CRL 1424 の増殖を阻害し、そして
a)成熟蛋白質もしくはN−末端プレ配列を有する蛋白質のために配列番号:
1に示すDNA 配列、又は配列番号:3に示すゲノム配列によりコードされており
、あるいは
b)配列番号:1もしくは3に示すDNA 配列、又は成熟蛋白質をコードするDN
A 領域中のこれらのDNA 配列の断片とハイブリダイズするDNA 配列によりコード
されている、新規な黒色腫阻害蛋白質(以下、MIA 蛋白又はMIA と称する場合が
ある)に基礎を置いている。
増殖阻害は、抗増殖活性として理解すべきである。この方法においては、細胞
の増殖は、培地にMIA 蛋白質を添加することによりかなり妨害される。このため
の適切な濃度は例えば 0.1μg MIA蛋白質/ml培地である。しかしながら、MIA
蛋白質のより高い又はより低い濃度は、濃度に対してより高く又はより低く依存
することが観察される増殖阻害のために適切である。
このような蛋白質の性質は本発明者らにより、Cancer Research 49 (1989),5
358-5363;Cancer Research 50 (1990),6981-6986;Melanoma Research 2 (199
2),327-336 に記載されている。しかしながら、この蛋白質の再現可能な製造方
法はそれらの刊行物には記載されていない。この蛋白質は、今まで公衆に入手可
能でなかったヒト黒色腫細胞系HTZ 19-dM から得られる。この細胞系は転移悪性
黒色腫に由来し、そして 0.8mmol/LのL−グルタミン、非必須アミノ酸、10μ
g/mlのトランスフェリン、30mmol/Lの亜セレン
酸ナトリウム及び4μg/mlのゲンタマイシンを含有する定義された血清不含有
培地(50% Dulbecco 最小必須培地、50% F−12)中で標準的培養条件下で単
層培養物として培養された。この細胞系はBraunschweigのDeutsche Sammlung fu
r Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH に1993年6月22日に寄託された(DS
M ACC 2133)。これもまた本発明の更なる対象である。本発明の蛋白質はこの細
胞系の培養上清から、約11kDのサイズを有する蛋白質画分のクロマトグラフィー
分離、及びそれに続く、逆相HPLCによるこの画分の精製により得ることができる
。
この蛋白質は、そのDNA 配列により及びそれに由来するアミノ酸配列により定
義することができる。MIA 蛋白質は個体ごとに異る天然対立遺伝子(allel)変異
として存在し得る。しかしながらそれらは、全配列に対するアミノ酸の除去、挿
入及び付加であってもよい。本発明のMIA 蛋白質は、程度及び型に関して、それ
が発現される細胞及び細胞型に依存して、グリコシル化形でもよく、又は非−グ
リコシル化形であってもよい。
本発明の蛋白質はまた、組換え法によっても製造することができる。非−グリ
コシル化MIA は、それが原核生物において組換え生産される場合に得られる。本
発明により提供される核酸配列により、任意の所望の細胞(例えば、ヒトの細胞
とは別に、さらに他の哺乳類において)のゲノム中のMIA 遺伝子又はその変異体
を探し、それらを同定し、そしてMIA 蛋白質をコードする所望の遺伝子を単離す
ることができる。このような方法及び適当なハイブリダイゼーション条件は当業
者に知られており、そして例えばJ.Sambrook,Molecular Cloning,Cold Sprin
g Harbor Laboratory,1989;及びB.D.Hames,S.G.Higins,Nacleic acid h
ybridization - a practical approach (1985) IRL Press、オックスフォード、
英国、に記
載されている。この場合、これらの刊行物に記載されている標準的方法が実験に
おいて通常使用される。
組換えDNA 技法の使用が、多くのMIA 蛋白質誘導体の生産を可能にする。この
ような誘導体は例えば個々の又は幾つかのアミノ酸において、置換、除去又は付
加により修飾され得る。誘導体化は、例えば、部位特定変異誘発により行うこと
ができる。この変更は当業者により容易に行うことができる(J.Sambrook,B.D
.Hames,Loc.Lit.)。MIA 蛋白質の特徴的性質(前記の細胞系の阻害)が保存
されていることを確認しなければならないのみである。
従って本発明はさらに、
a)外来性DNA の原核性又は真核性発現の生成物である、
b)成熟蛋白質のため又はN−末端プレ配列を有する蛋白質のための配列番号
:1に示すDNA 配列により、あるいは配列番号:3に示すゲノム配列によりコー
ドされている、
c)配列番号:1もしくは3に示すDNA 配列又は成熟蛋白質をコードするDNA
領域中のDNA 配列の部分とハイブリダイズするDNA 配列によりコードされている
、あるいは
d)もし遺伝子コードの縮重がないと仮定すれば、前記b)〜c)に定義する
配列とハイブリダイズしそして同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコー
ドするDNA 配列によりコードされている、
MIA 蛋白質に関する。
配列番号:1のヌクレオチド40-432又は112-432 により、又は遺伝子コドンの
縮重により同じアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNA 配列により
コードされている蛋白質が好ましい。
HTZ 19-dM からのMIA 蛋白質は約11kDの分子量を有し、熱安定性(100℃にて
3分間)であり、そして例えばトリプシンのごときプロ
テアーゼに対して感受性である。
本発明は、MIA 蛋白質をコードしており、そして
a)配列番号:1もしくは3に示すDNA 配列又はその相補的配列、
b)前記a)の配列のいずれかとハイブリダイズする核酸配列、
c)もし遺伝子コードの縮重が存在しないと仮定すれば、前記a)又はb)に
記載した配列のいずれかとハイブリダイズするであろう核酸配列、
から成る群から選択される核酸に関する。
本発明はさらに、例えばマウス、ラット、ウシ又はヒツジのごとき哺乳類細胞
からの、細胞系HTZ 19-dM 及びATCC CRL1424の増殖を同様の態様で阻害する黒色
腫阻害蛋白質、例えばヒトMIA 蛋白質に関する。
ヒトMIA に類似するこれらの蛋白質は、当業者になじみの方法に従って、ヒト
MIA をコードする配列を含有するハイブリダイゼーションサンプルにより対応す
る哺乳類のcDNAライブラリーをスクリーニングし、ヒト及びネズミMIA のDNA 及
び蛋白質配列(配列番号:1〜5)の配列比較を行い、そしてコード断片を同定
することにより得ることができる。
本発明の好ましい態様は、ネズミMIA 蛋白質及びそれをコードする核酸配列(
配列番号:4)である。ネズミの蛋白質は配列番号:4のヌクレオチド110-499
又は179-499 によりコードされている。
これらの核酸により、本発明の蛋白質は再現性ある態様で多量に得ることがで
きる。原核生物又は真核生物例えば原核性宿主細胞又は真核性宿主細胞での発現
のため、当業者になじみの方法に従って核酸配列が適当な発現ベクターに組み込
まれる。この様な発現ベクターは好ましくは制御可能な/誘導性のプロモーター
を含有する。
次に、これらの組換えベクターは発現のために適当な宿主細胞、例えば原核性宿
主細胞として大腸菌、あるいは真核性宿主細胞としてサッカロミセス・セレビシ
エ−(Saccharomyces cerevisiae)、テラト(Terato)癌細胞系PA-1 sc 9117(B
uetter ら、Mol.Cell.Biol.11 (1991),3573-3583)、昆虫細胞、CHO 又はCOS
細胞に導入し、そして形質転換又はトランスダクトされた宿主細胞を外来遺伝
子の発現を許容する条件下で培養する。蛋白質の単離は既知の方法に従って、宿
主細胞から又は宿主細胞の培養上清から行うことができる。この様な方法は、例
えばAusubel I.,Frederick,M.,Current Protocols in Mol.Biol.(1992),J
ohn Wiley and Sons、ニューヨーク、により記載されている。さらに、蛋白質の
インビトロ再活性化が必要な場合もある。
配列番号:1(cDNA)のヌクレオチド40-432もしくは112-432(コード配列)
又は配列番号:3のゲノムDNA 配列は、本発明の蛋白質の組換え生産のために好
適に使用される。
さらに、本発明は、ゲルクロマトグラフィー分離、及び逆相HPLCによる約11kD
(SDS-PAGE、非−還元)の分子量に対応する画分の精製によって黒色腫細胞系HT
Z 19-dM の培養上清を単離することにより、MIA 蛋白質を得る方法に関する。こ
の方法により、培養上清1L当り約 0.2μgを得ることができる。
好ましい態様においては、天然MIA 蛋白質を、単離及び精製の間に酸処理にか
ける。これによりMIA 活性を濃縮することができる。有利には約2のpH値が適用
され、酸として例えば酢酸が適当である。
MIA 蛋白質を組換え生産する、形質転換又はトランスダクトされた宿主細胞の
検出及び蛋白質の精製は、好ましくは、この蛋白質に結合する抗体により行われ
る。このような抗体は、既知の方法に従
う簡単な態様で、抗原又は免疫原として本発明の蛋白質を用いて得ることができ
る。
従って本発明はさらに、本発明の黒色腫阻害活性蛋白質に結合する抗体の製造
のための、該蛋白質の使用に関する。
このため、この目的に通常使用される動物、例えば特にヒツジ、ラビット又は
マウスが本発明の蛋白質により免疫され、そして次に免疫された動物から既知の
方法に従って抗血清が単離され、又は免疫された動物の脾細胞がKoehler及びMil
istein (Nature 256 (1975),495-497)の方法に従って、不滅化細胞、例えば骨
髄腫細胞と融合される。MTA に対するモノクローナル抗体を生産する細胞は、こ
うして得られたハイブリドーマ細胞から選択され、そしてクローニングされる。
こうして得られたモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体は、支持体材料、
黒色腫阻害蛋白質の免疫吸着精製のために、例えばセルロースに結合させること
ができる。従って、この種の抗体はサンプル、例えば切断した組織又は体液中の
MIA 蛋白質の検出のために使用することができる。
従って本発明はさらに、MIA 蛋白質により動物を免疫しそして該免疫された動
物の血清又は脾細胞から抗体を単離することにより得られる、MIA に対する抗体
に関する。
MIA 蛋白質は、黒色腫細胞に対してのみならず、より小さい程度に、例の腫瘍
細胞、例えば膠芽細胞腫細胞、神経芽細胞腫、小細胞肺癌及び神経外胚葉腫瘍に
対しても、DNA 合成を阻害することにより(3H−チミジンの取り込み(Coligan
J.E.,Krusbeek A.M.,Margulies D.H.,Shevach E.M.,Strober W.,Corre
nt Protocols Immunology,NIH Monograph,J.Wiley and Sons 、ニューヨーク
、1992))、軟寒天中での腫瘍コロニーの形成の阻害により、又は腫瘍幹細胞ア
ッセイにおいて(Schlag P.,Flentje D.,Cancer Tr
eatment Rev.11:Suppl.A:131-137,1984)、阻害活性を示すことが示された
。これに対して、正常な非−変質(non-degenerate)細胞は阻害されない。この
蛋白質は非常に低濃度(ナノグラムの範囲)ですでに作用する。従ってこの蛋白
質は腫瘍療法のための療法剤の製造のために有用である。このような療法剤は特
に、悪性黒色腫、悪性膠細胞腫、気管支癌(特に、小細胞気管支癌、CSLC)の療
法のために適当である。
さらに、黒色腫阻害蛋白質は末梢血リンパ球のインターロイキン−2依存性で
フィトヘマグルチニンに誘導される増殖を抑制することが見出された。Tリンパ
球の細胞毒性も低下する。従って黒色腫阻害蛋白質はまた、免疫抑制剤として使
用され得る療法剤の製造のためにも適当である。
従ってさらに、本発明は腫瘍の治療において又は免疫抑制剤として使用され得
る療法剤の製造のための、本発明の蛋白質の使用に関する。
本発明の蛋白質は、前記の療法的適用のための医薬製剤において、所望により
、通常使用される助剤、増量剤及び/又は添加剤と共に加工される。
従ってさらに、本発明は、本発明の黒色腫阻害蛋白質を、及び所望により通常
使用される助剤、増量剤及び/又は添付加剤と共に含む医薬組成物に関する。
本発明はさらに、遺伝子療法における、そして特に遺伝子療法のための医薬の
製造のための、MIA 遺伝子の配列、好ましくはMIA 活性を有する蛋白質をコード
する配列、又は5′−非翻訳領域からの活性化配列、の使用に関する。
体細胞の遺伝子療法は、例えばレトロウイルスベクター、他のウイルスベクタ
ーを使用することにより、又は非−ウイルス遺伝子移
行により達成することができる(明確にするため、T.Friedmann,Science 244
(1989)1275;Morgan 1993,RAC DATA MANAGEMENT REPORT,1993年6月、を参照の
こと)。
遺伝子療法のために適当なベクター系は、例えば、レトロウイルス(Mulligan
,R.C.(1991),Nobel Symposium 8:Ethiology of human disease at the DNA
level(Lindsten,J.及びPattersun編集)、143-189 頁、Raven Press)、アデ
ノ関連ウイルス(McLughlin,J.Virol.62 (1988),1963)、ワクシニアウイル
ス(Mossら、Ann.Rev.Immunol.5 (1987),305)、ウシ・パピローマウイルス
(Rasmussenら、Methods Enzymol.139 (1987),642)、又は肝炎ウイルス、例
えばエプスタイン・バールウイルス(Margolskeeら、Mol.Cell.Biol. 8 (1988
),2937)もしくはヘルペス単純ウイルスの群からのウイルスである。
さらに、非−ウイルス供給系も知られている。このため、通常、「ヌード」核
酸、好ましくはDNA 、又は例えば移行剤のごとき助剤(リポゾーム、デンドロマ
ー、ポリリジン−トランスフェリン−結合体(Wagner,1990;Felgnerら、Proc.
Natl.Acad.Sci.USA 84 (1987),7413))と共に核酸が使用される。
遺伝子療法の他の好ましい方法は相同性組換えに基礎を置いている。この場合
、MIA 蛋白質をコードする遺伝子を1又は複数のコピーの形で体細胞のゲノムに
挿入することができ、そして/又は細胞内に本来存在するMIA 遺伝子を調節し(
modulate)、好ましくは活性化することができる。
相同性組換えの方法は、例えば、Kucherlapati,Proc.in Nucl.Acids.Res
.and Mol.Biol.36 (1989),301;Thomas ら、Cell 44 (1986),419-428;Tho
mas及びCapecchi,Cell 51 (1987),503-512;Doetschmanら、Proc.Natl.Acad
.Sci.USA 85 (1988),
8583-8587;及びDoetschmanら、Nature 330 (1987),576-578に記載されている
。これらの方法においては、ゲノムの特定の部位に組込まれるべきDNA の部分(
MIA の遺伝子断片)が標的化(targeting)DNAに連結される。標的化DNA はゲノ
ムDNA の領域(好ましくは、MIA 遺伝子内又はその近傍)に対して相補的(相同
な)DNA である。単鎖DNA の2つの相同な部分(例えば、標的化DNA 及びゲノム
DNA)が相互に近付けばそれらはハイブリダイズし、そして2本鎖へリックスを形
成するであろう。次に、MIA 遺伝子断片及び標的化DNA が組換えの発生によりゲ
ノム中に組込まれ得る。この相同性組換えはイン−ビトロ及びイン−ビボ(患者
中)の両方で行われ得る。
好ましくは、MIA 活性を有する蛋白質をコードするDNA,MIAの発現を阻害する
断片(ノックアウム配列)、又は細胞のゲノムの組込み後にその細胞中でMIA 活
性を有する蛋白質の活性化を行うことができる断片が使用される。このような断
片は、例えば、対応するMIA 領域に対してヘテロロガスであるかあるいはMIA 遺
伝子への組込みの後に、実際に静かな又はわずかに発現されるMIA 遺伝子を転写
及び/又は翻訳の段階で活性化するプロモーター及び/又はエンハンサーである
。
従って、このDNA により、1又は複数のMIA 遺伝子が標的細胞に新たに導入さ
れ、又は哺乳類細胞のゲノム中で本質的に転写されない遺伝子が活性化されて、
該哺乳類細胞が内因性MIA を生産できるようになる。この目的のため、DNA 構成
物が相同性組換えによりゲノムに挿入される。該DNA 構成物は次のものを含んで
成る:この遺伝子に作用可能に連結されればその発現を調節し、好ましくは刺激
することができるDNA 制御因子;及びこのゲノム中の領域であってこの遺伝子内
又はその近傍にある領域に対して相同な1又は複数のDNA 標的セグメント。この
構成物は哺乳類細胞のゲノムに挿入され
て、MIA 活性を有する蛋白質をコードする遺伝子に前記制御セグメントが作用可
能に連結される。好ましくは、MIA 活性を有する蛋白質をコードする遺伝子が細
胞に挿入される場合は特に、この構成物はさらに増幅配列をも含んで成る。
標的細胞へのMIA 遺伝子の導入のため、この構成物は制御因子、1又は複数の
MIA 遺伝子、及び1又は複数の標的セグメントを含んで成る。標的配列は、それ
らがゲノムの適切な領域とハイブリダイズし、それによって相同性組換えの後、
挿入された外来MIA遺伝子が発現されるように選択される。
相同性組換えを開始することができる多数の方法が知られている。好ましくは
、相同性組換えはDNA の複製又は細胞の有糸分裂の間に行われる。この種のDNA
は腫瘍の療法的処置剤の製造のため、又は宿主細胞中での同種性又は異種性MIA
蛋白質の生産のために使用され得る。
本発明により提供されるMIA 蛋白質の核酸配列を基礎にして、MIA 蛋白質をコ
ードする核酸を検出するための試験を提供することができる。このような試験は
、例えば細胞又は細胞溶解物中で行うことができる。この様な試験は、核酸診断
により行うことができる。この場合、被験サンプルを、MIA 蛋白質をコードする
核酸配列とハイブリダイズするであろうプローブと接触せしめる。プローブとサ
ンプルからの核酸との間のハイブリダイゼーションが、発現されたMIA 蛋白質の
存在を示す。これらの方法は当業者により知られており、そして例えばWO 89/06
698,EP-A 0,200,362 、米国特許 2,915,082,EP-A 0,063,877,EP-A 0,173,251
,EP-A 0,728,018に記載されている。
本発明の好ましい態様においては、MIA 蛋白質をコードするサンプルの核酸は
試験の前に、例えば周知のPCR 法により増幅される。
核酸診断の分野においては通常、誘導体化された(ラベルされた)核酸プローブ
が使用される。このプローブは、サンプルからの、キャリヤーに結合した変性さ
れたDNA 又はRNA と接触され、そしてこの工程において温度、イオン強度、pH値
及び他の緩衝液が次のように選択される。すなわち、核酸サンプルの長さ及び予
想されるハイブリドの溶融温度に依存して、ラベルされたDNA 又はRNA が相同な
DNA 又はRNA と結合することができるように(ハイブリダイゼーション、さらに
J.Mol.Biol.98 (1975),503;Proc.Natl.Acad.Sci.USA 76 (1979),3683
を参照のこと)。適当なキャリヤーは、ニトロセルロース製膜もしくはキャリヤ
ー材料(例えば、Schleicher and Schuell,BA85,Amersham Hybond,C.)、粉末
状の補強されたもしくは結合したニトロセルロース、又は種々の官能基(例えば
ニトロ基)により誘導体化されたナイロン膜(例えば、Schleicher and Schuell
,Nytran;NEN,Gene Screen;Amersham Hybond M.;Pall Biodyre)である。
次に、ハイブリダイズしたDNA 又はRNA は、十分な洗浄及び非特異的結合を防
止するための飽和の後、キャリヤーを抗体又は抗体断片と共にインキュベートす
ることにより検出される。この抗体又は抗体断片は、誘導体化の間に核酸プロー
ブに導入された物質に向けられる。代って抗体がラベルされる。しかしながら、
直接ラベルされたDNA を使用することも可能である。抗体とのインキュベーショ
ンの後、特異的に結合した抗体結合体のみを検出するため、それを再度洗浄する
。次に、周知の方法に従って抗体又は抗体断片のラベルを介して測定を行う。
MIA の発現の検出は例えば次のようにして行うことができる。
・固定化された組織スメアー及び単離された中期(metaphase)染色体を用いて
の、固定化された全細胞とのインシチューハイブリダ
イゼーション、
・コロニーハイブリダイゼーション(細胞)及びプラークハイブリダイゼーシ
ョン(ファージ及びウイルス)、
・ノーサンハイブリダイゼーション(RNA 検出)
・血清分析(例えば、スロット−ブロット分析による細胞の細胞型分析)、
・増幅後(例えばPCR 技法)。
従って本発明は、MIA 蛋白質をコードする核酸の検出方法を包含し、この方法
は、被験サンプルを、
a)配列番号:1及び3に示すDNA 配列又はこれらに対して相補的な配列、
b)前記a)の配列のいずれかとハイブリダイズする核酸、
から成る群から選択された核酸プローブと共にインキュベートし、該核酸プロー
ブをサンプルからの核酸とインキュベートし、そして所望により該核酸プローブ
を更なる結合パートナーを介して検出することを特徴とする。
従って、MIA は腫瘍の診断(転移、発達)における価値ある予知マーカーであ
る。
本発明は、次の例及び図と共に配列より、さらに詳細に説明される。この場合
、
配列番号:1は−プレ配列を有するヒトMIA のcDNAを示し、
配列番号:2は−蛋白質を示し、
配列番号:3は−MIA のゲノムDNA を示し、
配列番号:4は−プレ配列を有するネズミMIA のcDNAを示し、
配列番号:5は−蛋白質を示し、
配列番号:6は−プライマーを示し、
配列番号:7は−プライマーを示し、
配列番号:8は−クローニング断片を示し、
配列番号:9は−プライマーを示し、
配列番号:10は−プライマーを示し、
配列番号:11は−アダプターを示し、
配列番号:12は−アダプターを示し、
配列番号:13は−融合蛋白質を示し、
配列番号:14は−融合蛋白質を示し、
配列番号:15は−プライマーを示し、
配列番号:16は−プライマーを示し、
配列番号:17は−プライマーを示し、
配列番号:18は−大腸菌での発現のための、融合していないMIA を示し、
配列番号:19は−プライマーを示し、
配列番号:20は−プライマーを示し、
配列番号:21は−プライマーを示し、
配列番号:22は−プライマーを示し、
配列番号:23は−ポリリンカーを示し、
配列番号:24は−MIA のゲノムDNA(対立遺伝子変形体)を示す。
図1は、ヒトMIA の逆転阻害活性(invasion-inhibitory activity(MIA を用
いての又は用いないでの細胞の動きの阻害%)を示す。B16+mMIA :ネズミMIA
を使用する試験。
図2は、MIA によるT−細胞介在細胞毒性活性の阻害を示し、CD4+ T細胞の
溶解(%)で表現する。
図3は、MIA によるLAK-細胞の細胞毒性活性の阻害を示す。
図4は、MIAによるフィトヘマグルチニン−依存性リンパ球の増殖阻害を示す
(MIA の濃度はng/ml)により表示される。
図5は、MIA によるIL−2刺激PBMC増殖の阻害を示す(MIA の濃
度はng/mlとして表現される)。
図6は、発現プラスミドpQE40-MIA のプラスミドチャートを示す(例5a)。
図7は、ベクターpCMX-PL1のプラスミドチャートを示す(例7a)。実施例1
.HTZ 19-dM 細胞からの黒色腫阻害蛋白質の単離
HTZ 19-dM 細胞を、 0.8mmol/LのL−グルタミン(ギブコ,英国)、非必須
アミノ酸類(ギブコ,英国)、10μg/mlのトランスフェリン(ベーリンガー・
マンハイムGmbH、カタログNo.1073974)、30mmol/Lの亜セレン酸ナトリウム(
シグマ)及び4μg/mlのゲンタマイシン(メルク)を含有する定義された血清
不含有組織培養培地(50% Dulbecco 最少必須培地、50%のF−12、ベーリンガ
ーマンハイムGmbH)中で単層に培養する。この培養物の細胞培養上清を各場合に
3〜4日の間隔で取り出し、そして精製まで−70℃にて貯蔵する。
精製のため、前記の細胞培養上清を0.45μmフィルター(ベクトン・ディキン
ソン、ハイデルベルグ)を通して濾過し、そしてアミコンYM2膜(排除限界2000
D,アミコン,デンバー,マサツーセッツ,米国)を用いて膜限外濾過により、
最初の体積の1%の最終体積にまで濃縮する。得られた材料を0.1mol/Lの酢酸
に対して30時間透析し(1000Dの排除限界を有する透析膜、ライヒエルト、ハイ
デルベルグ)、そして次に100,000gにて1時間、4℃で超遠心分離する。ペレ
ットを廃棄し、そして上清をさらなる処理のために凍結乾燥する。
この凍結乾燥された透析物を1mol/Lの酢酸に入れ、そしてさらに、バイオゲ
ルp−10カラム(ファルマシア,ウプサラ, 2.6×100cm;バイオゲルp−100,
200−400 メッシュ,バイオラド・ラボ
ラトリーズ,リッチモンド,カリホルニア,米国)上でのゲル浸透クロマトグラ
フィーにより精製する。ゲル材料を1mol/Lの酢酸により22℃にて平衡化し、そ
して透析物を5mlの1mol/L酢酸中130〜145mgの濃度で適用する。これを1mol/
Lの酢酸により12mol/時の流速で溶出し、そして溶出液を4mlの画分に集める。
3つの活性画分のプールを抗腫瘍活性の測定により特定し(実施例5を参照のこ
と)、8000〜17000 Dの分子量に対応するその中間プールを逆相HPLCによりさら
に精製する。このため、これらの画分をまず一度凍結乾燥し、そして次に 0.1%
トリフルオロ酢酸(TFA)に入れる。得られた溶液の 100μlのアリコートを、各
場合に逆相HPLCに適用する(流速 0.5ml/分)。各場合に 750μlの画分を集め
る。HPLC分離に関するさらなるデータ:
グラジエントプログラム:溶液A:水中0.06 TFA
溶液B:0.056 % TFA
80%アセトニトリル
2〜25%の溶液B,5分間
25〜50%の溶液B, 120分間
50〜 100%の溶液B,5分間
2%にもどす、5分間。
カラム:mino RPC(ファルマシア)
HPLCグラジエント混合物、ポンプ及び検出器:ファルマシア。
溶出液を 1.5mlの画分に集める。アリコートを凍結乾燥し、そして例5に記載
するようにして抗−腫瘍活性を試験する。こうして、5Lの培養上清から約1μ
gの黒色腫阻害蛋白質を得ることができる。実施例2
.実施例2a
.ヒト黒色腫阻害蛋白質をコードするcDNAのクローニング
精製された蛋白質のAsp-N及びトリプシン消化並びにこうして得られたペプチ
ド断片の再精製の後、MIA のアミノ酸配列をシーケンサーにより決定する。C−
末端ペプチド配列及びN−末端近くに位置する1つを2個のプライマーの合成の
ための基礎として選択した。プライマーは、制限酵素開裂部位を付加した縮重オ
リゴヌクレオチドである。
斜線(/)は、この位置の塩基が斜線の前又は後に位置することを示す。この
オリゴヌクレオチドは、ほとんどすべての可能なコドンをカバーする32の異る分
子の混合物である。標的配列とのG−Tミスマッチは位置12及び13においてのみ
存在することができ、これはハイブリドの安定性を増加せず、しかしそれを低下
させない。PCR による可能性ある生成物の再クローンを容易に行うことができる
ように、EcoRIリンカーがさらに5′−末端に付加される。さらなる3個の不特
定の塩基がこの5′−末端の前に存在し、制限酵素開裂部位は末端ではない。な
ぜなら、制限酵素はこの位置を非常によく開裂しないからである。
DP1はC−末端アミノ酸に対応し、8倍の縮重を有し、そして SalI開裂部位
を含有する。
特定の第一鎖合成のため、プライマーDP1は下記の混合物中で使用した。
5μl 10X PCR 緩衝液
3μl HTE-19全RNA
を混合し、そして5℃にて65℃に加熱した。
ピペットにより次のものを加えた。
1 μl 100mM MgCl2
10 μl 2.5mM dNTP
0.5 μl 胎盤 RNase 阻害物質
2 μl DP1(1μg)
1 μl 逆転写酵素
37℃にて1時間のインキュベーションの後、下記のものを前記混合物に加えた
。
1 μl UP1(1μg)
5 μl 10X PCR 緩衝液
70.5μl H2O
1 μl Taq ポリメラーゼ
増幅は次のプロフィールで30サイクル行った。
94℃ 30秒
55℃ 30秒
72℃ 60秒
最終サイクルの後、すべての生成物の完全な伸長のため、さらに72℃にて7分
間インキュベートした。
フェノール/クロロホルム抽出及びEtoH沈澱の後、PCR 混合物をEcoRI及びSa
lIにより37℃にて2時間消化した。酵素の活性化の後、次にこれを5% PAAゲ
ル中で分離し、そして 320bpの断片を一夜溶出した。溶出物の半分を、 100ngの
EcoRI/SalI消化pbluescript と一夜連結した。細菌(大腸菌DH5a)からの組換
え白色コロニーを拾い上げることができた。これを次の日に形質転換し、そして
Amp 及びX−Gal/IPTGを含有するSOB 寒天プレート上にプレートし
た。
プラスミドの単離の後、再クローン化された挿入部の配列決定を、ファルマシ
アからのT−7 Deaza配列決定キットを用いて行われた。T−3及びT−7プラ
イマー(ストラタゲン)はプライマーとして利用可能であった。次の配列は、読
み取られた配列のオーバーラップから得られた(プライマーは下線で示されてい
る):
定義された培地(dM)中に増殖するHTZ-19黒色腫細胞のRNA から合成された完
全なcDNAをクローニングするためにラムダgt11 cDNAライブラリーが利用可能で
あった。
それぞれが8000pfu を含有する合計25プレートをプレートアウトし、各プレー
ト上で2枚のニトロセルロース濾紙を置き、そしてそれらを、ニックトランスレ
ーションによりラベルした精製されたMIR-PCR 挿入部とハイブリダイズせしめた
(ハイブリダイゼーション溶液50ml,2×106 cpm/ml)。2日間のオートラジオ
グラフィーの後、両フィルター上に対応するハイブリダイゼーションシグナルを
与える幾つかのシグナルを得た。対応するファージプラークを拾い
上げ、そしてスクリーニングにかけた。このために、各単離されたプラークの4
段階希釈物をプレートし、100〜300pfuを有するプレートを用いてさらに2回ス
クリーニングした。
50mlの一夜培養の後、こうして単離したプラークからラムダDNA を単離するこ
とができ、その40μgをEcoRIにより消化し、そして5% PAAゲル中で分離した
。挿入部を溶出し、そして8ngを用いて、100ngのEcoRI−消化脱リン酸化ベク
ター(pbluescript 、ストラタゲン)と連結した。連結混合物の半分を用いてコ
ンピテント大腸菌DH5aを形質転換し、この大腸菌を青/白選択のためにIPTG及び
X−Gal を含有するSOB/Amp プレート上にプレートした。組換えコロニーを拾い
上げ、プラスミドを単離し、そして挿入部の配列を決定した。完全なコード配列
を示す挿入部を配列番号:1に示す。
こうして得られたプラスミドがpbs L7MIA であり、これはドイツ,ブラウンシ
マバイクの「Deutsche Sammlung fuer Microorganismen und Zell-kulturen Gmb
H」(DSM)に、1993年7月14日に寄託された(DSM 8420)。
クローニングのために使用したすべての方法はJ.Sambrook E.F.Fritsch,T
.Maniatis(1989),Molecular Cloning:a laboratory manual,2nd edition,C
old Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor、米国、に詳細に記
載されている。実施例2b
.ヒト黒色腫阻害蛋白質をコードする遺伝子のクローニング
ストラタゲン(ハイデルベルグ)から商業的に入手可能なバクテリオファージ
λ FIXII(Elgin ら、Strategies 4(1991)8−9)中のヒトゲノムDNA ライブ
ラリーを、確立された方法(Sambrookら、Molecular Cloning (1989),Cold Spri
ng Harbor Laboratory Press)に従って、ニトロセルロース上にプレートした。
ハイブリダイ
ゼーションサンプルとして使用するため、ヒトMIA をコードする実施例2aからの
cDNAを確立されている技法(Sambrookら、Molecular Cloning(1989),Cold Sprin
g Harbor Laboratory Press)に従って放射能ラベルしそして使用した。プレハイ
ブリダイゼーション(2時間)及びハイブリダイゼーション(16時間)を60℃に
て6×SSC,5×Denhardt溶液、100μg/mlサケ精子DNA 及び0.1% SDS中で行
った。32P−dCTP−ラベル化サンプルを、ハイブリダイゼーション調製物に、1
×106 cpm/mlの濃度で加えた。次に、フィルターを60℃にて、20分間、2×SSC
,0.1% SDS中で2回、そして次に1×SSC,0.1% SDS中で20分間2回、そして
最後に0.25×SSC,0.1% SDS中で20分間2回、洗浄した。次に、濾紙を乾燥し、
そして次にX−線フィルムに24〜48時間暴露した。この方法において正のハイブ
リダイゼーションシグナルを与えたプラークを単離し、そしてハイブリダイゼー
ションにより確認した。それらのプラーク中に挿入部として含まれるヒトゲノム
DNA を、MIA cDNAサンプルを用いるサザンハイブリダイゼーションにより特徴付
けた。この目的のため、ファージDNA を制限エンドヌクレアーゼ XbaIにより消
化し、0.8%アガロースゲル上で分離し、そして次にSouthern(J.Mol.Biol.98
(1975)503)に従ってニトロセルロースに移した。こうして得られたフィルター
を、サンプルとしての完全なMIA cDNAと、上記の条件下でハイブリダイズせしめ
、こうして約 1.4kb及び約 2.2kbのサイズの2つの XbaI断片が陽性のシグナル
を与えた。これら2つの断片のそれぞれを、配列決定のために適当であり且つス
トラタゲン(ハイデルベルグ)から商業的に入手可能なプラスミドpbluescript
SK−(Short ら、Nucl.Acids Res.16(1988),7583-7600;Alting-Meese及びSh
ort ら、Nucl.Acids Res.17(1989),9494)中にクローニングした。ヒトMIA
をコードする完全な配列は、配列
番号:3にフランキング配列と共に示される4個のエクソン中に位置する。MIA
断片が位置する2個の XbaI断片間に1又は複数の追加の XbaI断片が存在する
か否かが検討されていないので、イントロン2が実際に非常に長いことを排除す
ることはできない。実施例2c
.ネズミ黒色腫阻害蛋白質をコードするcDNAのクローニング
ベクターλEXlox (Palazzoloら、Gene 88(1990),25-26)中13.5年のマウスの
胚からの商業的に入手可能な(ノバジーン,ニューヨーク)cDNAライブラリーを
、実施例2aに記載したようにしてプレートした。ハイブリダイゼーションサンプ
ルとして、ヒトMIA をコードする実施例2aからのcDNAを放射能標識された形で用
いた。ハイブリダイゼーション及び洗浄の間に適用される温度がここでは55℃で
あった点を除き、ハイブリダイゼーション条件は実施例2aに記載したのと同一で
あった。こうして得られそして再ハイブリダイゼーションにより確認されたプラ
ーク中に存在するcDNA挿入部の配列を決定した。ネズミMIA の完全なコードDNA
を含有する挿入部の配列を配列番号:4に示す。実施例2d
.ネズミ黒色腫阻害蛋白質をコードする遺伝子のスクリーニング
この場合、ネズミゲノムDNA ライブラリー(ベクターEMBL3 (Frischaufら、J
.Mol.Biol.170(1983),827)中の成BALB/Cマウスの肝臓から、クロンテック
、パロアルト、カリホルニアから商業的に入手可能)を、サンプルとして実施例
2cからのネズミMIA cDNAを用いて実施例2bと同様にしてスクリーニングした。条
件は実施例2bに記載したのと同一であった。同様にしてさらなる処理を行った。実施例3
.実施例3a
.腫瘍細胞に対する黒色腫阻害蛋白質の抗増殖効果の測定
実施例1に従って得られた黒色腫阻害蛋白質又は蛋白質断片の黒色腫細胞に対
する抗増殖効果を決定するため、対数増殖期のHTZ 19-dM 細胞を、96・ウェル
マイクロカルチュアープレート(コスター,チューリッヒ)中、100μlの血清
不含有培地(実施例1を参照のこと)中で、ウェル当り3×103細胞の密度にお
いて、24時間接種した(Chambardら、J.Cell.Physiol.135(1988),101-107に
従う)。次に、細胞を被験蛋白質画分と共に、4〜5日間37℃/5% CO2にてイ
ンキュベートする。各々に1μCiの3H−チミジン(比活性23Ci/mmol,アマー
シヤム・ブチラー,グラウンシュライク,ドイツ)を添加した後、細胞をさらに
8時間、同じ条件下でインキュベートし、そして次に細胞DNA への3H−チミジ
ンの取込みを、通常の方法で酸沈澱した後に、液体シンチレーションカウンター
により測定する。試験された蛋白質画分の活性は、未処理の対照細胞への3H−
チミジンの取込みに対する処理された細胞の3H−チミジンの取込みのパーセン
トとして表現する。異る濃度の単離された黒色腫阻害蛋白質を用いることにより
、未処理対照に比較して3H−チミジンの取込みが50%阻害される濃度を決定す
ることができる(次の表のIC50値)。
実施例3b.腫瘍細胞に対する黒色腫阻害蛋白質の逆転阻害効果
MIA の逆転阻害効果(invasion-inhibiting effect)を測定するため、改変Bo
yden Chamber System(Albini ら、Cancer Res.47(1987),3239-3245)を使用
する。チャンバーはコスター社から得た(Blind Well Chamber No.441200)。下
チャンバー中の化学吸引物質(chemoatractant)と上チャンバー中の細胞との間
の基礎膜様バリヤーの刺激のため、52μlのマトリゲル(matrigel)(ベクトン
、ディッキンソン No.40234)をポリカーボネートフィルター(孔
サイズ8μm,Coster No.150446)上に適用する。下チャンバーには化学吸引物
質として210μlの線維芽細胞コンディショニング培地を満たす。この培地は次
のようにして得る。正常ヒト皮膚からの線維芽細胞を、ウシ胎児血清を添加する
ことなく、24時間DMEM培地(ギブコ)中第10及び第20継代の間維持する。こうし
てコンディショニングされた培地を化学吸引物質として希釈しない形で適用する
。Boyden装置の上チャンバー中に800μlのDMEM(ギブコ、ウシ胎児血清を含ま
ない)中2×105の被験腫瘍細胞をMIA 活性成分と共に又はそれを伴わないで適
用する。ヒト(実施例3a又は実施例8を参照のこと)又は動物の腫瘍細胞、例え
ばB16(ATCC CRL 6322)を実載された方法により、MIA を介してのそれらの移動
挙動の阻害に関して試験することができる。黒色腫阻害蛋白質を添加しない場合
、約10%の腫瘍細胞が約4時間のあいだに上チャンバーから下チャンバーに移動
し、そこでマトリゲル(Matrigel)膜の底側に付着する。それらは固定され、染
色されそして次に計数される。ヒト又はネズミの黒色腫阻害蛋白質MIA が上チャ
ンバーに加えられれば、細胞の移動は強く阻害される。図1は得られた阻害値を
示す(〔下チャンバー中の細胞数、MIA を用いた実験〕/(下チャンバー中の細
胞数、MIA を用いない実験〕×100%)。実施例4
.免疫活性の測定 実施例4a
.MIA によるT−細胞介在細胞毒性活性
MBP ペプチド87-106に対して特異的なCD4+ T細胞系D7.1 はMBP 及びペプチ
ド87-106を提示する標的を標的51Cr放出測定法(ターゲット:Daudi cells,R.
Martin,U.Utz,J.E.Coligan,J.R.Richert,M.Fler lage,E.Robinson
,R.Store,W.E.Biddison,D.E.MacFarlin,H.F.MacFarland、免疫優性
ミエリン塩基性蛋白質ペプチド87-106に対して特異的なヒトCD4+細胞毒性T細
胞
応答のT細胞レセプターの使用及び正確な特異性の多様性、J.Immunol.(1992)
,148(5),1359-1366)。HIAの添加(使用量は約50−100ng/ml精製MIA に対応す
る)の後、ペブチド−特異的細胞毒性は約55%阻害され(図2a)、そしてMBP-特
異的細胞毒性は約50%(図2b)阻害される。予想通り、阻害はエフェクター/標
的比(E:T)にわずかに依存し、これは本件の場合1:1又は1:5の非常に
低いレベルで設定され、そしてそれ故に高度に特異的である(図2)。実施例4b
.MIA はリンホカインで活性化された末梢血リンパ球(LA
K 細胞)の細胞毒性活性を阻害する
LAK 細胞はコロニーを介さないで拡大され、リンホカインで活性化された末梢
血リンパ球、主としてTリンパ球である(A.A.Rayner,E.A.Grim,M.T.Lot
ze,E.W.Chu,S.A.Rorenberg、リンホカイン活性化されたキラー(LAK)細胞
:ヒトの癌の免疫療法のために有意な因子の分析、Cancer 55(1985),1327-1333
)。これらは、標準的方法で、腫瘍療法のための多くの免疫療法アプローチにお
いて使用される。本件において示す実験において、微小細胞毒性測定における標
的としてのHTZ-19黒色腫細胞に対するそれらの細胞毒性について試験される。1
:1,5:1及び10:1のエフェクター/標的比において、最大細胞毒性(CTX)
はほとんど40%に達する。これは、MIA の添加後(濃度は実施例4aにおけるごと
く)に、そして低エフェクター/標的比において最大80%で強く阻害され、この
比率は局所的に−すなわち腫瘍自体の近傍で−より一層予想されるものである。実施例4c
.MIA はIL−2依存性及びフィトヘマグルチニン依存性リ
ンパ球増殖を阻害する
末梢血リンパ球(PBMC)は、フィトヘマグルチニン(PHA)及びイ
ンターロイキン−2を用いて、標準化された古典的な方法で刺激され得る(J.E
.Coligan,A.M.Kruisbeek,D.H.Margulies,E.M.Shevuch.W.Strober,
Current Protocols in Immunology,NIH Monograph,J.Wiley Sons,ニューヨー
ク,1992)。この方法において、T細胞はPHA によりほとんど排他的に刺激され
、そしてIL−2はTリンパ球を優先的に刺激するが、しかしIL−2レセプターを
有する細胞をも刺激する。これらが記載された量(蛋白質純度:第一精製段階(
Biogel P10カラム)の後、活性は完全な精製の後より約50−100倍低い)のMIA
と同時インキュベートされるとき、PHA応答の非常に強い阻害を達成することが
できる(図4)。IL−2応答はより多くの量において阻害される(図5)。実施例5
.大腸菌における融合蛋白質としてのMIA の組換え発現 実施例5a
.発現ベクターの作製
キャリヤーとして適当な蛋白質との融合蛋白質としてMIA を大腸菌において発
現させるため、例えば市販のベクターpQE40(Cat.No.33403,DIAGEN GmbH,デ
ュッセルドルフ)を用いることができる。このベクターに、成熟型のMIA をコー
ドするcDNA断片が、1個づつ存在する制限部位SphIとHindIIIとの間に挿入され
る。このタイプの断片は、マトリクスとしてのクローン化MIA cDNA並びに2個の
適当なプライマー(5'-GATGCATGCGGTCCTATGCCCAAGCTG-3(配列番号:9)及び5'
-GATAAGCTTTCACTGGCAGTAGAAATC-3'(配列番号:10)を用いて、PCR 増幅法により
最も簡単に調製される。得られたPCR 断片はSphI及びHindIIIにより切断され、
そして同様に処理されたベクターpQE40に連結される。生ずるプラスミドはDHFR
(キャリヤーとしてのジヒドロフォレート・ラダクターゼ)とMIA との融合蛋白
質を発現する。この融合蛋白質から遊離のMIA が蛋白質分解的に切り出されるこ
とを可能にするため、IgA プロテアーゼの認識配列(
Ser Arg Pro Pro/Ser)をコードするDNA セグメントをDHFRとMIA との間にクロー
ニングする。これは、発現プラスミドをBgIII(部分分解、及びそれに続く線状
化ベクターの単離)及びSphIにより開き、次にアダプター(ハイブリダイズし
て2本鎖となる(5'-GATCTAGCCGGCCGCCCAGCCCGGCATG-3'(配列番号:11)及び5'
-CCGGGCTGGGCGGCCGGCTA-3'(配列番号:12))の挿入により達成される。生ずる
発現プラスミドpQE40-MIA はDHFRとMIA との融合蛋白質をコードし、この融合蛋
白質はDHFRとMIA との間にIgA プロテアーゼのための開裂部位を有する。この融
合蛋白質は、Ni−キレートゲル材料により該融合蛋白質を精製するために使用さ
れ得る6個のヒスチジンをN−末端に担持する。この種の方法はEP−A 0,282,0
42及びEP−A 0,253,303に記載されており、これらの記載を引用によりこの明細
書に組み入れる。図6に発現プラスミドpQE40-MIA を示す。
キャリヤー蛋白質DHFRを除去し、そしてそれをできるだけ小形で且つ同じ機能
を満たすペプチドで置換えることによりMIA の含量を最適化することができる。
このような適当なペプチドは、例えば、Met Arg Gly Ser His His His His His
His Gly Ser Ser Arg Pro Pro(配列番号:13)(このペプチドは、成熟MIA のす
べてに続くアミノ酸配列からIgA プロテアーゼにより開裂されることができる;
この種の方法はWO 91/11520に記載されており、引用によりこの記載をこの明細
書に組み入れる)、又はMet Arg Gly Ser His His His His His His Gly Ser Va
l Asp Asp Asp Asp Lys-(配列番号:14)(このペプチドは、成熟MIA のすぐ続
くアミノ酸配列からエンテロキナーゼにより開裂され得る)である。このような
MIA ペプチド融合体をコードする発現プラスミドは次の方法により調製すること
ができる:マトリクスとしてのMIA cDNA(配列番号:1)並びにプライマー5'-A
AAAAGGATCCAGCCGGCCGCCCGGTCCTATGCCCAAGCTGGC-3'(配
列番号:15)及び5'-GGCGAGCAGCCAGATCTCCATAG-3'(配列番号:16)を用いるPCR
増幅が、BamHI及びBgIIIで再切断される断片をもたらす。発現ベクターpQE40-M
IA もBamHI及びBgIIIにより制限酵素処理し、生ずる断片の小さい方を捨て、そ
して上記のPCR 断片で置換える。これにより、誘導後に融合蛋白質Met Arg Gly
Ser His His His His His His Gly Ser Ser Arg Pro Pro-MIA(配列番号:13)を
発現する発現ベクターpQE40-MIA が得られる。全く同様にして、プライマー5'-A
AAAAAGGATCCGTTGATGATGACGATAAAGGTCCTATGCCCAAGCTGGC-3'(配列番号:17)及び
5'-GGCGAGCAGCCAGATCTCCATAG-3'(配列番号:16)を用いて融合蛋白質Met Arg Gly
Ser His His His His His His Gly Ser Val Asp Asp Asp Asp Lys-MIA(配列番
号:14)が得られる。
同様にして、適切な(好ましくは強力で且つ誘導性の)プロモーターの制御の
もとに大腸菌について記載されている多くのプラスミドの1つにクローニングし
、そして発現させることにより、ペプチドとMIA との他の類似の融合蛋白質を調
製することができる。大腸菌においてペリプラズムへの融合蛋白質の分泌を導き
、次に開裂されそしてMIA を放出するMIA とペプチドとの融合体は他の例である
。この方法はWO 88/09373 に記載されており、この記載を引用によりこの明細書
に組み入れる。実施例5b
.融合蛋白質の発現及びMIA の回収
発現プラスミドpQE40-MIA(あるいは、他の基本ベクター又は他のキャリヤー蛋
白質もしくはキャリヤーペプチドを用いて得られる類似の発現プラスミド;この
ような代替物もまた、実施例5aのほかに、Metuads of Enzymology 185(Gere Exp
ression Technology),David U.Goedrlel 編、Academic Press,1991)を、lac
レプレサーの十分な発現を有する適当な大腸菌株にトランスフェクトし、MIA
融合蛋白質の誘導的発現を達成することができる。この目的のため、pQE40 と共
に商業的に入手可能な大腸菌株M15〔pEEP4〕(Diagon GmbH,デュッセルドルフ
)、あるいは他の大腸菌の株、例えばUT5600(Earhartら、FEMS Microbiology L
etters 6(1976)277-280)、又は大腸菌BL21(Grodberg及びDunn,J.Bacteriol
.170(1988),1245-1253)が適当であり、これらはlac レプレッサー発現ヘルパ
ープラスミド、例えば前記のpUBS520(Brinckmannら、Gere 85(1989),109-114
、又はEP−B 0,373,365に記載されている)によりトランスフェクトされている
。次に、次の手順によりMIA を得ることができる:大腸菌M55〔pREP4/pQE40-MI
A〕を、0.6 の光学濃度(550nmにて測定)が達成されるまでLB培地で培養し、次
にIPTG(イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド、ベーリンガー・マン
ハイムGmbH)を1mMの最終濃度に加え、そして次にさらに4時間培養する。細胞
を遠心分離し、300mM NaClを含む100mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)に入れ
、そして凍結と解凍を3回行うことにより溶菌し、そして次に超音波処理にかけ
る。遠心分離により透明となった溶菌物に、製造者による最大結合容量を考慮し
てNi−NTA−アガロース(Diagen GmbH)を加え、混合しながら周囲温度にて一夜イ
ンキュベートする。融合蛋白質が負荷されたゲル材料を低速遠心分離により分離
し、100mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)で2回、及びリン酸ナトリウム緩衝
液(pH6.1)で2回洗浄する。次に、100mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)中でゲ
ル材料をIgAプロテアーゼ(ベーリンガー・マンハイムGmbH)と共に37℃にて一
夜インキュベートすることにより、融合蛋白質からMIA を開裂せしめる。ゲル材
料を一夜の遠心分離により分離し、そして無菌濾過の後、実施例3及び4に記載
の活性試験においてMIA 含有上清を得る。実施例6
.大腸菌での非融合(fusion-free)MIAの組換え発現
MIA をコードするDNA 配列を、大腸菌での効率的な発現が可能なように修飾す
る。この目的のため、マトリクスとしてのヒトMIA cDNA(配列番号:1))並び
にプライマー1(5'-AAAAACATATGGGACCAATGCCAAAATTAGCAGATCGTAAATTATGTGCAGAT
CAGGAG-3'(配列番号:19)及びプライマー2(5'AAAAAAAGCTTTCACTGGCAGTAGAAATC
-3'(配列番号:20))を用いてPCR 増幅を行う。プライマー1はN−末端領域
のMIA-コード配列を変更し、MIA アミノ酸配列は変化しないがDNA配列及びそれ
故にmRNA配列が大腸菌のために最適される。開始コドンMet が付加され、そして
この部位に制限エンドヌクレアーゼNdelの認識配列が挿入され、この配列が、(
選択的に強力で且つ誘導性の)プロモーター及び翻訳開配列(Shine Dalgarno配
列)をその結果置かれたNdel開始部位と共に含有するベクターへの、前記のよう
に修飾されたMIA コード断片のその後のクローニングを可能にする。プライマー
2は3’−カウンター−プライマーとして作用し、そしてHindIII開裂部位を含
有し、その結果、ベクターへの、Ndel−HindIII断片としての修飾されたMIA-コ
ード断片の挿入が可能となる。このように修飾されたMIA コード配列を配列番号
:18に示す。こうして調製された発現プラスミドがp11379(DSM 9267)であり、
これは「Deutsche Sammluny von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH」、
ブラウンシュバイクD−38124に、1984年6月29日に寄託された。
発現のため、非融合(fusion-free)MIAのための発現プラスミドを適当な大腸
菌株にトランスフェクトする。このような菌株は、発現プラスミドp11379のごと
きlac フプレッサーの制御のもとにある発現プラスミドを使用する場合、十分に
高い細胞内濃度のlac レプレッサーを有する菌株である。このような菌株は、pR
EP4(Diagen
GmbH)、pUBS500 又はpUBS520(Brinckmann ら、Gere 85 (1989),109-114)のご
とき第二プラスミドのトランスフェクションにより調製することができる。適用
される大腸菌株は好ましくは、例えば大腸菌UT5600(Earhart ら、FEMS Microbio
logy Letters 6 (1979),277-280)、大腸菌BL21 (Grodberg及びDunn,J.Bacter
iol.170 (1988),1245-1253)、又は大腸菌Bのごとき、細胞自体の低いプロテ
アーゼ活性を有すべきである。次に、実施例5bに記載したのと同様にして発現培
養を行う。MIA を回収するため、大腸菌から蛋白質凝集体として得られたMIA を
、EP 0,241,022,EP 0,364,926,EP 0,219,875、及びDE−A 40 37 196に記載さ
れている手順に従って処理する。
詳細には、例えば、この目的のために次の手順が適用される:大腸菌の発酵か
らのMIA-含有凝集体(「封入体」と称する)を6M塩基グアニジン、100mM Tris
-HCl(pH8),1mM EDTA 中で可溶化し、次にpH3〜4に調整し、そして4M塩
酸グアニジン(pH3.5)に対して透析する。次に、可溶化された蛋白質の再生(rena
turation)を1Mアルギニン(pH8)、1mH EPTA,5mM GSH(グルタチオン、還
元型)及び0.5mM GSSG(グルタチオン、酸化型)中で行う。再生調製物から、例
えば1.4M硫酸アンモニウムの添加後、Fractogel TSK Butyl(E.Merek、グルム
スタット)のごとき疎水性マトリクスへの吸着及びそれに続く20mM Tris-HCl(p
H7.0)への溶出によりMIA を得ることができる。実施例7
.真核細胞中でのMIA の組換え発現 実施例7a
.哺乳類細胞中でのMIA の組換え発現
このため、ヒト(配列番号:1)又はネズミ(配列番号:4)のcDNA又は対応
するゲノムDNA セグメントを、強力なプロモーター・エンハンサー系に基いて、
哺乳類細胞中に転写されるベクターに連
結されるゲノムDNA 段階の場合、この段階は、MIA 自体のプロモーターのみが幾
つかの細胞タイプ、例えば黒髄種において活性であり、そしてそれ故に一般的な
組換え発現のためには適切でない;しかしながら、発現はまた実施例9に記載す
るようにイン−ビトロ相同性組換えによっても達成される)。このようなプロモ
ーター及びエンハンサーは、ほとんどがウイルス、例えばSV40,hcMV、ポリオー
マ又はレトロウイルスからのものである。他の方法として、特定の細胞型又は組
織型に対して特異的なプロモーター・エンハンサー系、例えばMAP−,MMTV−も
しくは免疫グロブリンプロモーター、又は誘導可能な系、例えばメタロチオネイ
ンプロモーターを用いることができる。この種のベクターはMTA cDNA(もし後者
が使用されれば)を、RNA プロセシングのためのドナー及びアクセプターシグナ
ル並びにポリ−A−付加のシグナルに補充する。例えば、図7に示すpCMX-pL1 (
Umesone ら、Cell 65 (1991),1255-1266)はこのような適当なベクターである。
このベクターの1つのそして唯一のEcoRI開裂部位に、EcoRIリンカーを備えた
MIA cDNAを連結し、この場合、このベクターのポリリンカー(配列番号:23)中
の他の開裂部位による制限酵素分析により、MIA cDNAがCMV プロモーターの読み
方向に配向されていることが保証される。他のベクター、例えばpCDNA3(Introg
en,サンジエゴ/米国)又はpSG5(Stratagene,LaJolla/米国)へのクローニ
ングの際、全く類似の方法が適用される。こうして得られた発現プラスミドのDN
A は大腸菌から調製され、そして哺乳類細胞中にトランスフェクトされる。この
場合、特定のケースにおける細胞タイプに対して特異的な技法が適用される(Me
thads of Enzymology 185(Gere Expression Technology),DavidV.Goeddel編、
Academic Press 1991,セクションV)。発現プラスミドpCMX-pL1-MIAは、すでに
記載されている方法(Bue Hnerら、Mo
l.Cell.Biol.13(1993),4174-4185)に従ってヒト奇形癌細胞系PA-1sc 9177(
Buettner ら、Mo.Cell.Biol.11 (1991),3573-3583)にトランスフェクトさ
れ、この場合 100mm培養皿当り 200,000個の細胞が5μgのDNA によりトランス
フェクトされる。トランスフェクションの後、ウシ胎児血清を添加しないMEM(
ギブコ)中で細胞を培養し、これにより48時間後に細胞培養上清中でMIA が検出
可能である。実施例7b
.昆虫細胞中でのMIA の組換発現
昆虫細胞での発現のため、MIA をコードするDNA セグメント、好ましくはヒト
MIA cDNA(配列番号:1)を、AcMNPV(オートグラファ・カリホルニカ(Autogr
apha californica)多形核ウイルス)又はBm NPV(ボンビックス・モリ(Bombyx
mori)多形核ウイルス)由来のベクターに挿入する。この目的のため、MIA cDNA
をまず昆虫細胞のために適当な強力なプロモーター(D.R.O'Reilly,L.K.Mi
ller及びV.A.Luckow,Baculovivus Expression vectors - A Laboratory Manu
al (1992),W.H.Freeman & Co.,ニューヨーク)、例えばpoIHプロモーター又
はp10 プロモーターの制御のもとに置く。poIHプロモーターの助けでMIA を発現
させるため次の方法を適用する:MIA をコードし、そして制限エンドヌクレアー
ゼEcoRI(後期MIA 転写物の5’−末端に隣接する)及びBstI(後期MIA 転写
物の3’−末端に隣接する)のための開裂部位を有するDNA 断片を、マトリクス
としてのMIA cDNA並びにプライマー5'-CGTGAATTCAACATGGCCCGGTCCCTGGTGTGC-3'(
配列番号:21)及び5'-TATCTGCAGTCACTGGCAGTAGAAATCCCA-3'(配列番号:22)を用
いて、既知の方法に従うPCR 増幅により得る。この断片をEcoRI及びPstIによ
り再カットし(対応する付着未満を生じさせるため)、そして同じ制限酵素で処
理した移行ベクターpVL 1393(D.R.O'Reilly,L.K.Miller及
びV.A.Luckow,Baculovirus Expression Vectors - A Laboratory Mannual (1
992),W.H.Freeman & Co.,ニューヨーク)(商業的に入手可能;Phar Mingen,
サンジエゴ,カリホルニア;又はInvitrogen Corporation,サンジエゴ,カリホ
ルニア)に連結する。得られた移行発現ベクターpVL 1393-MIAを、増加のために
大腸菌K12にトランスフェクトし、そして確立された方法に従ってプラスミドDN
A を調製する。移行プラスミドからバキャロウイルスベクターへの、poIHプロモ
ーターの制御下にあるMIA DNA の移行は、確立された方法(O'Reillyら、(1992
)前記参照)による相同性組換えによって達成される。この目的のため、0.5μ
gのBaculo Glod DNA(Phar Minger Order No.21100Dから商業的に入手可能な
、致死的欠失及びpoIHプロモーターにより制御されたlacZ発現を有する、線状化
されたAcNPV ウイルスDNA)及び2μgのpVLB−93−MIA を混合し、周囲温度にお
いて5分間インキュベートし、そして1mlの125mM Hepes (pH7.1),125mM CaCl2
,140mM NaClと混合する。この混合物を、10%ウシ胎児血清を含有するGrace 培
地1mlによりあらかじめコートされた直径60mmの培養皿中の2×106個のSF9昆
虫細胞(Invitrogen,Order No.B825-01)に加える。4℃にて4時間のインキュ
ベーションの後、DNA 含有培地を除去し、そして細胞を新たな培地中で27℃にて
4日間インキュベートする。次に、こうして得られた組換えバキュロウイルスを
プラーク形成により2回精製し(O'Reillyら、(1992)前記を参照のこと)、こ
の場合、β−ガラクトシダーゼ活性の不存在(5−ブロモ−4−クロロ−3−イ
ンドリル−β−D−ガラクトピラノシドの存在下で青色の不存在により光学的に
認識できる)により、相同性組換えで挿入されたMIA を有するウイルスが、用い
られた野生型ウイルス(Phar Mingen から商業的に得られる、致死的欠失及びpo
IHプロモーターにより制御されるlacZ発
現を有するAcNPV,Order No.21100D)から区別される。こうして得られたMIA-
発現組換えウイルスにより、確立された方法(O'Reillyら、(1992)前記参照)
に従ってSF9細胞を感染させ、そして血清不含有培地(Cell/Perfect Bac 血清
不含有昆虫細胞培養培地、Stratagene,Order No.205120)中で27℃にて少なく
とも30時間さらにインキュベートする。次に、細胞培養上清を除去し、上清中に
含まれるウイルスを超遠心分離(Beckmann Ti 60ローター、30,000rpm)により分
離し、そしてその後、上清をMicrocon 100フィルター(アミコン、排除限界 100
kD)を通して濾過する。こうして得られたMIA-含有溶液を実施例3及び4に記載
した試験において使用なことができ、あるいは実施例1に従ってさらに精製する
ことができる。実施例8
.種々の細胞でのMIA mRNAの検出
特定の細胞でのMIA の発現の、そしてそれ故にMIA mRNAの存在の検出は、一方
において、核酸ハイブリダイゼーションの確立された方法、例えばノーサンハイ
ブリダイゼーション、イン−シチューハイブリダイゼーション、ドットもしくは
スロットハイブリダイゼーション、及びこれらに由来する診断的技法により達成
することができる(Sambrookら、Molecular Cloning - A Laboratory Manual (1
989),Cold Spring Harbor Laboratory Press;Nacleic Acid Hybridisation -
A Practical Approuch (1985),B.D.Hames 及びS.J.Higgins 編、IRL Press
;WO 89/06698;EP-A 0,200,262;米国特許No.2,915,082;EP−A 0,063,879
;EP−A 0,173,251;EP−A 0,128,018)。他方、MIP 特異的プライマーを用い
ての種々の増幅技法からの方法を適用することができよう (PCR Protocols - A
Guide to Methods and Application (1990),M.A.Innis,D.H.Gelfund,J.
J.Sninsky,T.J.White,Academic Press
Inc;PCR - A Proctical Approach (1991),M.J.McPherson,P.Quirke,G.R
.Taylor (1991)編、IRL Press)。表2A及び2Bは種々のヒト腫瘍、腫瘍細胞系、
及び正常細胞でのMIA の発現を示し、この場合は放射能標識されたヒトMIA cDNA
(配列番号:1)を用いるノーサンハイブリダイゼーションにより測定された。
この目的のためRNA を記載された細胞からChomczynski 及びSacchi,Anal.Bioc
hem.162 (1987),156-159の方法に従って単離した。20μgの全RNA を1%アガ
ロース・ホルムアルデヒドゲル上で分離し、そしてナイロン膜(Amersham、ブラ
ウンシュバイク)に、標準的方法(Sambrookら、Molecular Cloning - A Laborat
ory Manual (1989),Cold Spring Harber Laboratory Press)に従って移行させ
た。サンプルとして、完全なヒトMIA cDNA(配列番号:1)を放射能ラベルした
(Feinberg及びVogelstein,Anal,Biochem.137 (1984),266-267)。ハイブリ
ダイゼーションは68℃にて、5×SSC,5×Denhardt,0.5% SDS,10%硫酸デキス
トラン及び 100μg/mlのサケ精子DNA中で行った。次に、膜を1時間に2回、
1×SSC 中で68℃にて洗浄し、そしてX−線フィルムに暴露した。
実施例9.療法的目的のためのMIA コード核酸の使用
MIA は腫瘍細胞の増殖及び転移を阻害する。動物モデル又は患者において、こ
の効果はMIA 蛋白質の外からの導入のみならず、適当なプロモーターのもとにMI
A をコードしているか、又は相同性組換えによりゲノム中の細胞自身のMIA 遺伝
子の前方に組み込むことができる適当なプロモーターを含有するDNA セグメント
の挿入により
生ずる。後者の場合、このプロモーターは、ヒトの(又は、動物モデルの場合は
動物の)MIA 遺伝子の5’−非翻訳領域中の配列に対して可能な限り高度に相同
であるか又は好ましくはそれと同一の配列部分により狭まれていなければならな
い(WO 91/09955 を参照のこと)。この方法により、もしDNA セグメントが腫瘍
細胞自身に挿入されれば、腫瘍細胞が増加した程度にMIA を発現し、そしてそれ
故にそれ自体の増殖及び転移を阻害することを、確立することができる。しかし
ながら多くの場合、対応する遺伝子セグメントは特異的に及び排他的に腫瘍細胞
自身に挿入される必要はない。なぜなら、好ましくは腫瘍に隣接する他の体細胞
での発現も増加したMIA 放出を通じて腫瘍細胞の阻害を行うであろうからである
。次の例は、動物モデルでのMIA-コードDNA セグメントの療法的効果を示してい
る。
C57BL マウスの尾部静脈へのネズミB16黒色腫細胞(ATCC CRL 6322)への注射
、及びそれに続く、肺への転移の定量は、転移癌形成の確立されたイン−ビボモ
デルである。黒色腫細胞系B16の 100,000個の細胞を、C57BL マウスの眼球の後
に注射した(1日:16動物)。48時間後、8匹の動物に、100μgのTE (10mM Tr
is-HCl,pH8.0,1mM EDTA)中MIA 発現プラスミドpCMX-LP1-MIA(実施例7a)をD
OTAP トランスフェクション試薬(Leventis及びSilvius,Biochin,Biophys,Ac
ta 1023(1990),124-132,ベーリンガー・マイハイムGmbHから商業的に入手可能
、Cat.No.1202375)と混合し、各場合に尾部静脈に注射した。対照群(8動物
)には同じプラスミドを与えたがMIA 配列は与えなかった。13日後、MIA 配列を
与えなかった対照群の8動物中の6動物に局所腫瘍が生じ、肺、脾臓、腎臓及び
肝臓での転移癌の平均数は7.8であった。MIA コードプラスミドを与えられた8
動物中4動物のみに局所腫瘍が生じ、そして転移癌
の平均数は2.7であった。
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フロントページの続き
(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI
C07K 1/20 8517−4H C07K 1/22
1/22 8517−4H 14/52
14/52 9637−4B C12P 21/02 C
C12P 21/02 8310−2J G01N 33/574 Z
G01N 33/574 9284−4C A61K 39/395 D
// A61K 39/395 9455−4C 37/02 ADU
(C12P 21/02
C12R 1:91)
(C12P 21/02
C12R 1:19)
(72)発明者 カルザ,ブリギッテ
ドイツ連邦共和国,デー―83670 バット
ハイルブルン,ホッホフェルダンガー
3