JPH0948762A - 光学活性ピペラジン誘導体の製造方法および製造の中間体 - Google Patents

光学活性ピペラジン誘導体の製造方法および製造の中間体

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JPH0948762A
JPH0948762A JP20009895A JP20009895A JPH0948762A JP H0948762 A JPH0948762 A JP H0948762A JP 20009895 A JP20009895 A JP 20009895A JP 20009895 A JP20009895 A JP 20009895A JP H0948762 A JPH0948762 A JP H0948762A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 光学活性なピペラジン−2−カルボン酸−N
−t−ブチルアミドを工業的に有利に製造する。 【構成】 光学分割剤として、代表的には光学活性なN
−トシル−L−アラニンまたはN−トシル−L−バリン
を使用してジアステレオマー法を実施する。中間体とし
て、下記の塩(新規化合物)が形成される。 〔式中、RはC1〜C6の直鎖または分岐鎖のアルキル
基、メチルチオエチル基またはC1〜C2のヒドロキシア
ルキル基をあらわす。 Arは1〜3個のC1〜C6のア
ルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、アルコキシ基で置
換されていてもよいフェニル基またはナフチル基をあら
わす。〕

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、光学活性なピペラジン
誘導体、とくにピペラジン−2−カルボン酸−N−t−
ブチルアミドを製造する方法に関する。 本発明はま
た、その製造の過程で中間体として得られる、新規化合
物のジアステレオマー塩にも関する。
【0002】
【従来の技術】エイズ治療薬となるHIVプロテアーゼ
阻害剤として、メルク社は一群の化合物を発表しており
〔特開平5−279337号〕、その中でもL−73
5,524と名づけられた化合物が有力とされている。
この物質は下記の式Vの構造を有する。〔C&EN
May 16,1994,p6〕
【0003】
【化7】
【0004】L−735,524の合成に関しては、
J.P.Vaccaほかの発明にもとづく上記特開平5
−279337号のほか、D.Askinほかによる研
究報告もある〔Tetrahedron Lett.35
(5)673-6(1994)〕。 いずれにせよ、合成の中間体
として、下記の式Iであらわされるピペラジン−2−カ
ルボン酸−N−t−ブチルアミドの光学活性体、または
式VIであらわされる、NHをt−ブトキシカルボニル基
で保護したものの光学活性体が必要である。
【0005】
【化8】
【0006】
【化9】
【0007】化合物Iの光学分割について、Askin
らは上記文献において(S)−カンファースルホン酸を用
いるとしているが、詳細は示していない。 一方、化合
物Iの先駆体であるピペラジン−2−カルボン酸に関し
ては、(S)−カンファースルホン酸を2モル比用いる光
学分割により、(2S)体が得られるとの報告がある
〔Felderほか、Helv.Chim.Acta,
43 888-896(1960)〕。さらに化合物Iは、L−ピログ
ルタミン酸を分割剤として光学分割できることが発表さ
れている。この場合、入手の容易なL−グルタミン酸を
閉環して得られるL−ピログルタミン酸は化合物IのR
−体と難溶性のジアステレオマー塩を形成し、所望のS
−体は母液から回収する。
【0008】これらの既知の光学分割剤はいずれも水に
極めて良く溶けるため、分割に用いたのち回収して再使
用することが困難である。 前記L−735,524を
廉価に製造するためには、式Vで示される化合物の構成
成分(線で囲んだ部分)である式Iの化合物(またはVI
の化合物)を低コストで提供することが不可欠であり、
それには化合物Iの光学分割を効率よく行なうととも
に、回収、再使用の可能な光学分割剤を選択することが
望まれる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
の必要をみたし、式Iのピペラジン誘導体の光学分割技
術の改良、より具体的には光学活性ピペラジン−2−カ
ルボン酸−N−t−ブチルアミドの改善された製造方法
を提供することにある。
【0010】上記の光学分割の過程で形成されるジアス
テレオマー塩は新規な化合物であって、これらの提供も
また、本発明の目的に含まれる。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の光学活性ピペラ
ジン誘導体の製造方法は、式Iであらわされる(RS)−
ピペラジン−2−カルボン酸−N−t−ブチルアミド
(以下、「2−PBC」と略記する。)と、
【0012】
【化10】
【0013】一般式IIであらわされる光学活性なN−ア
シル化アミノ酸である光学活性剤とを
【0014】
【化11】
【0015】〔II式中、Rは、C1〜C6の直鎖もしくは
分岐鎖のアルキル基、メチルチオエチル基、またはC1
〜C2のヒドロキシアルキル基をあらわす。 Arは1
〜3個のC1〜C6のアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ
基またはアルコキシ基で置換されていてもよいフェニル
基またはナフチル基をあらわす。〕溶媒中で反応させ
て、一般式IIIのジアステレオマー塩を形成し、
【0016】
【化12】
【0017】一方のジアステレオマ−塩を溶媒から選択
的に析出させて分離し、分離したジアステレオマー塩を
分解して光学活性なピペラジン−2−カルボン酸−N−
t−ブチルアミドを取得することからなる。
【0018】上記の一般式IIであらわした光学分割剤の
うち、とくに重要なものは、下記のN−トシル−L−ア
ラニン(式IIa、以下「N−Ts−L−Ala」と略記
する)、N−トシル−D−アラニンおよびN−トシル−
L−バリン(式IIb、以下「N−Ts−L−Val」と
略記する)である。
【0019】
【化13】
【0020】
【化14】
【0021】本発明で使用する光学分割剤は、常法に従
って、相当するアミノ酸をスルホン酸のハロゲン化物ま
たは無水物と反応させることにより合成できる。 とく
にスルホン酸クロリドが入手しやすく、一般に高収率で
アミドを与える。 アミノ酸をアルカリ金属塩として溶
媒に溶解しておき、そこへ、反応で生成する塩酸を中和
しながら酸クロリドを添加する、いわゆるSchotten-B
aumann法による合成が有利である。
【0022】一般式IIの化合物は概して結晶性のよい固
体であり、水に対する溶解度は比較的小さいものが多
い。 従ってそのアルカリ水溶液を鉱酸で酸性にするこ
とにより、容易に高収率で遊離酸として回収することが
できる。
【0023】上記の方法で合成した光学分割剤IIはその
ままで十分な化学純度と光学純度をもつが、必要に応じ
て低級アルコール類、含水低級アルコール類、あるいは
ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素類、芳香族炭
化水素とヘキサンなど脂肪族炭化水素類の混合溶媒から
再結晶して精製することができる。 またアルカリ水溶
液に溶解させ、塩酸、硫酸などの鉱酸類で酸性にしてカ
ルボン酸を沈殿させる酸析操作によっても、化学純度の
みならず、光学純度も向上する。
【0024】反応媒体としては、各種の溶媒を使用で
き、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、
イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、
ペンタノール、ヘキサノール、ベンゼン、トルエン、酢
酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケト
ン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスル
ホキシド、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル
など、さらにそれらの混合物が使える。 とくにメタノ
ール、エタノールなどの低級アルコールおよびアルコー
ル類の混合溶媒が好適である。
【0025】低級アルコールに水が加わることによりジ
アステレオマー塩の溶解度が変化し、適当量の水を加え
た混合溶媒を用いることにより、生成する塩の光学純度
を向上させ、あるいは溶媒量を低減したりすることがで
きる。
【0026】さらに、後記の実施例にみるように、光学
分割剤としてアラニン誘導体を用いた場合は、使用する
溶媒によって、得られる2−PBCの立体配置が逆転す
る。すなわち、アルコール系ではR−体が得られるのに
対し、水系ではS−体が得られる。 これを利用し、分
割剤および溶媒を適切に選択し組み合わせることによっ
て、所望の光学活性体を得ることができる。
【0027】光学分割剤は、分割の対象とする2−PB
Cに対して、モル比で0.1〜2.0の範囲で使用する。
好ましい範囲は、0.5〜1.0である。 2−PB
Cは二酸塩基であり、分割剤のN−アシル化アミノ酸は
一塩基酸であるが、ジアステレオマー塩としては1:1
の塩が析出するので、1.0を超えるモル比を用いるこ
とは、さして価値がない。 モル比が1.0を下回るに
つれてジアステレオマー塩の収率が若干低下するが、大
きなちがいはなく、モル比0.5においても、なお十分
な量の塩の析出をみる。
【0028】ピペラジン−2−カルボン酸のカンファー
スルホン酸による光学分割では、ピペラジン化合物に対
して2分子の光学分割剤が結合したジアステレオマー塩
を形成する。 本発明の方法では二酸塩基である2−P
BCの1分子とN−アシル化アミノ酸の1分子とがジア
ステレオマー塩を作って、光学分割が達成される。これ
は予想外の発見であって、比較的少量の光学分割剤を用
いて効率の高い光学分割を行なうことができるという事
実は、工業的に非常に重要である。
【0029】アミドIと光学分割剤IIからジアステレオ
マー塩III を形成させるには、IとIIを溶媒に加えて溶
媒の沸点以下の温度に加熱して溶解したのち、冷却して
ジアステレオマー塩III を晶出させる。 このとき所望
の塩の種晶を添加することが、光学純度の高い塩を析出
させるために好ましい。 この系では一般に光学純度の
高い塩が容易に晶出するが、適当量の溶媒を用い、溶解
状態から徐々に温度を下げることにより急激な晶出を避
けて、十分に成長した塩の結晶を析出させることが望ま
しい。 固液分離は、通常の濾過機または遠心分離機な
どを用いて行なう。 適当な溶媒で洗浄することによ
り、高純度のジアステレオマー塩結晶が得られる。 得
られたジアステレオマー塩を適当な溶媒から再結晶する
ことにより、光学的に純粋な塩に精製することができ
る。 一般には、1回の再結晶で実用的に十分な光学純
度が得られる。
【0030】本発明が提供する新規化合物は、下記の一
般式III であらわされるジアステレオマー塩である。
この塩の結晶には、水または溶媒分子が取り込まれて結
晶構造を安定化していることがある。
【0031】
【化15】
【0032】前記の製造方法における難溶性ジアステレ
オマー塩の選択的析出の後、母液には2−PBCの鏡像
体の塩(易溶性)が溶解している。 これから2−PB
Cを回収し、塩基と加熱ラセミ化して、再度光学分割の
対象とすることができる。ラセミ化はとくに困難なく進
行するので、これも既知の手法に従って実施すればよ
い。
【0033】選択的な析出によって得られた難溶性ジア
ステレオマー塩は、酸またはアルカリを作用させること
によって、容易に分解して2−PBCの光学活性体を取
得することができる。 通常は、ジアステレオマー塩に
酸を加え、N−アシル化アミノ酸を沈殿させて濾別する
か、またはN−アシル化アミノ酸を適当な有機溶媒で抽
出して、2−PBCの酸性溶液と分離する。 しかし目
的とする光学活性な2−PBCは前記のように4−位イ
ミノ基をt−ブトキシカルボニル基で保護した形で使用
することが多いので、ジアステレオマー塩に保護化試薬
を反応させ、2−PBCを4−t−ブトキシカルボニル
誘導体として、光学分割剤と分離するのが有利である。
具体的には、ジアステレオマー塩にトリエチルアミン
の存在下に二炭酸ジ−t−ブチルを作用させて、生成し
た4−t−ブトキシカルボニルピペラジン−2−カルボ
ン酸−N−t−ブチルアミドを溶媒で抽出し、光学分割
剤の塩と分離する。 4−t−ブトキシカルボニル誘導
体を酸で処理すれば、容易にt−ブトキシカルボニル基
が脱離し、光学活性ピペラジン−2−カルボン酸−N−
t−ブチルアミドが再生する。
【0034】光学分割剤は、アルカリまたはアミン塩の
水溶液を強酸によって酸性とし、析出した結晶を濾取す
ることにより、高い収率で回収することができる。
【0035】光学分割剤IIのAr基上の置換基は、光学
分割の成績に大きな影響を与える。フェニル基のp−ま
たはo−位にアルキル基またはハロゲン原子をもつ化合
物、とくにo−およびp−メチル、p−t−ブチル、p
−クロロおよびp−ブロモ置換フェニル基をもつIIが、
良い結果を与える。 一般には、モノメチル置換体、と
くに入手の容易なp−メチル置換体が、収率、光学純度
の両面ですぐれた成績を与える。
【0036】光学分割剤IIの原料となるアミノ酸として
は、アラニン、α−アミノ酪酸、バリン、ロイシン、イ
ソロイシンなどの直鎖または分岐鎖のアルキル基をもつ
アミノ酸類、メチオニン、セリンまたはスレオニンなど
の置換アルキル基をもつアミノ酸類のL−体またはD−
体が使用される。 とくに、入手しやすいD−およびL
−アラニン、バリン、L−ロイシン、L−イソロイシン
などが適している。L−バリン、L−ロイシンなどL−
アミノ酸から誘導されるp−トルエンスルホンアミドII
が(S)−Iと難溶性塩をつくるのに対し、L−アラニ
ンの誘導体であるIIaは、(R)−Iと難溶性塩をつく
る。 これによって、比較的入手しやすいL−アミノ酸
を用いてIのR−体とS−体とをつくり分けることが可
能となる。 もちろん、D−アラニンから誘導されるp
−トルエンスルホンアミドIIを使用すれば(S)−Iと
の難溶性塩が析出し、D−バリンの誘導体IIは(R)−
Iと難溶性塩を形成する。
【0037】
【実施例】
〔分割剤製造例1〕 N−トシル−L−アラニン(N−Ts−L−Ala)の
製造 L−アラニン17.82g(0.20mol)を2N−水酸
化ナトリウム水溶液100ml中に溶解し、p−トルエン
スルホニルクロリド41.90g(0.22mol)を加え、
激しく撹拌しながら2N−水酸化ナトリウム水溶液を滴
下して、反応液のpHを常に9付近に保ちながら反応さ
せた。 2〜3時間でpHが一定となったので、濾過し
て未反応の酸クロリドを除き、濃塩酸を加えてpHを
0.5以下の強酸性にした。 その結果分離した油状物
を放冷して結晶化させた。 濾過および水洗の後乾燥し
て、白色結晶40.0gを得た。 収率82.3%。m
p133.5〜134.5℃(文献値* 135〜6
℃)。 中和滴定による純度99.9%。 * 迫田ら,「日本化学会誌」90(1),77(1969)。
【0038】〔分割剤製造例2〕上記と同様にして、各
種のL−アミノ酸からp−トルエンスルホンアミドを合
成した。 収率および融点を表1に示す。
【0039】 表1 分割剤 No. L−アミノ酸 収率(%) 融点(℃) 同文献値* (℃) 2 バリン 92.6 149.5−150.5 148− 9 3 ロイシン 95.2 123.5−125 123− 4 4 イソロイシン 89.7 134−136.5 130− 2 5 メチオニン 96.7 >120 179−80 * 迫田ら,「日本化学会誌」90(1),77(1969); McChesney et al,J.Am. Chem.Soc.,59,1116−8(1937)。
【0040】〔実施例1〕(RS)−2−PBCの1.
85g(10mmol)およびN−Ts−L−Ala2.4
3g(10mmol)を、エタノール6gに加熱溶解した。
この溶液に、あらかじめ調製しておいた(R)−2−
PBC・N−Ts−L−Ala塩の結晶1mgを種晶とし
て加え、室温で1夜放置した。 析出した結晶を濾別し
て、ジアステレオマー塩(R)−2−PBC・N−Ts
−L−Ala(粗製塩)1.88gを得た。 (RS)
−2−PBCに対する収率は43.9%、HPLC分析
による塩中の(R)−2−PBCの光学純度は90.4
%eeであった。
【0041】この塩の1.0gを60〜65℃に加熱し
たエタノール4gに溶解し、冷却して、析出した結晶を
濾過することにより精製塩0.7gを得た。 融点17
1.0−172.0℃、塩中の(R)−2−PBCの光
学純度は99.97%(HPLC法)であった。 精製
塩の旋光度〔α〕D 25+4.83°(C=2.0,MeO
H) IRスペクトルを図1に示す。
【0042】〔実施例2〕(RS)−2−PBCの1.
85gおよびN−Ts−L−Valの2.71g(10
mmol)を、エタノール7gに加熱溶解した。 この溶液
に、あらかじめ調製しておいた種晶((S)−2−PB
C・N−Ts−L−Val)1mgを加え、1夜放置し
た。 析出した結晶を濾過して、ジアステレオマー塩
(S)−2−PBC・N−Ts−L−Valの1.70
gを得た。 (RS)−2−PBCに対する収率37.
3%、HPLC分析による塩中の(S)−2−PBCの
光学純度は84.3%であった。
【0043】この塩の1.0gを60〜65℃のエタノ
ール2gに溶解し、冷却して、析出した結晶を濾過する
ことにより精製塩0.71gを得た。 融点180.0
−182.0℃、塩中の(S)−2−PBCの光学純度
は99.2%であった。 精製塩の旋光度〔α〕D 25
21.6°(C=2.0,MeOH) IRスペクトル
を図2に示す。
【0044】〔実施例3〜5〕(RS)−2−PBCの
各1.85gを、実施例2と同様にして、3種の分割剤
を用いて光学分割した。 結果を表2に示す。
【0045】 表 2 実 施 例 3 4 5 光学分割剤 N-Ts-L-Leu N-Ts-L-Ile N-Ts-L-Met 同使用量(g) 2.85 2.85 3.03 ジアステレオマー塩 収量(g) 1.75 1.75 1.53 収率(%) 37.2 37.2 31.3 光学純度(%ee) 60.6 79.5 96.3 同上精製品 光学純度(%ee) 95.9 96.8 100.0 融点(℃) 179.5−181.5 177−180.5 154.5−156。
【0046】〔実施例6〜8〕(RS)−2−PBCの各
1.85g(10mmol)およびN−Ts−L−Valの
各2.71gを、表3に示す溶剤に加熱溶解し、実施例
2の方法に準じて光学分割を行なった。 結果を表3に
あわせて示す。
【0047】 表 3 実 施 例 6 8 9 溶 剤 メタノール n-ブタノール 水 使用量(g) 5.3 161 6.8 ジアステレオマー塩 収率(%) 8.8 24.4 18.0 光学純度(%ee) 60.3 95.8 40.8。
【0048】〔実施例9〜11〕(RS)−2−PBCお
よびN−Ts−L−Alaの、それぞれ表4に示す量
を、表4に示す溶剤に加熱溶解し、実施例2の方法に準
じて光学分割を行なった。結果を表4にあわせて示す。
【0049】 表 4 実 施 例 9 8 9 溶 剤 水 メタノール 90%イソプロパノール* 使用量(g) 15.0 5.3 19.0 (RS)-2-PBC(g) 3.70 1.85 3.70 N-Ts-L-Ala(g) 4.86 2.43 3.89 モル比 1.0 1.0 0.8 2−PBC塩 収率(%) 29.8 26.8 28.0 光学純度(%ee) 90.4(S) 89.1(R) 97.7(R) * 水10%を含む。
【0050】同じ光学分割剤を使用しても、得られる2
−PBC塩の立体配置が溶媒によって異なり、水を用い
たときはS−体、アルコールではR−体と対照的である
ことがわかった。
【0051】〔実施例12〕実施例2の方法で製造した
(S)−2−PBC・N−Ts−L−Valの精製塩
4.56gを、トリエチルアミン2.03gとともにメ
タノール30mlに溶解し、この溶液に二炭酸ジ−t−ブ
チル2.18gのメタノール5ml中の溶液を加え、室温
で1時間撹拌した。 反応液から溶媒を留去し、得られ
た残渣に水10mlおよび6N−NaOH水溶液2mlを加
え、トルエン60mlを用いて、(S)−(+)−4−t
−ブトキシカルボニルピペラジン−2−カルボン酸−N
−t−ブチルアミド〔これを(S)−Boc−2−PB
Cと略記する〕を抽出した。 トルエン相を硫酸マグネ
シウムにより乾燥したのち、溶媒を留去すると、(S)
−Boc−2−PBCが油状物として得られ、これをn
−ヘキサン10mlで処理すると、結晶化した。 収量
2.42g。 融点97.5−100℃、ChiralpakA
S(ダイセル化学)を用いたHPLC法により光学純度
を測定したところ、100%eeであった。 ヘキサンか
ら再結晶して得られた精製品の融点は、107.5〜1
08.5℃である。
【0052】
【発明の効果】本発明によれば、光学活性ピペラジン誘
導体とくにピペラジン−2−カルボン酸−N−t−ブチ
ルアミドを、高い収率と高い光学純度をもって製造する
ことができる。 ジアステレオマー塩の形成に当って、
光学分割剤である光学活性なN−アシル化アミノ酸はピ
ペラジン誘導体に対して等モル以下の使用で足り、回収
再利用可能である。 所望の光学活性体を分け取った残
りの光学活性体は、ラセミ化して再度原料に使うことが
できる。 これらと、再結晶によるジアステレオマー塩
の精製がごく簡単ですむことや、溶媒としてメタノール
やエタノールのような安価で扱いやすいものを使用でき
ることとがあいまって、光学活性体の製造コストは、他
の一般の光学分割と対比したとき、画期的に低いものと
なる。 それにより、HIVプロテアーゼ阻害剤L−7
35,524の低コストな製造が実現する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1で得たジアステレオマー塩である
(R)−ピペラジン−2−カルボン酸−N−t−ブチル
アミド・N−トシル−L−アラニンの精製塩のIRスペ
クトル。
【図2】 実施例2で得たジアステレオマー塩である
(S)−ピペラジン−2−カルボン酸−N−t−ブチル
アミド・N−トシル−L−バリンの精製塩のIRスペク
トル。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成7年9月11日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】請求項7
【補正方法】変更
【補正内容】
【化6】

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 式Iであらわされる(RS)−ピペラジ
    ン−2−カルボン酸−N−t−ブチルアミドと、 【化1】 〔式中、*は、不斉炭素原子の位置をあらわす。 以下
    同じ。〕一般式IIであらわされる光学活性なN−アシル
    化アミノ酸である光学分割剤とを 【化2】 〔II式中、Rは、C1〜C6の直鎖もしくは分岐鎖のアル
    キル基、メチルチオエチル基またはC1〜C2のヒドロキ
    シアルキル基をあらわす。 Arは、1ないし3個のC
    1〜C6のアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基またはア
    ルコキシ基で置換されていてもよいフェニル基またはナ
    フチル基をあらわす。〕溶媒中で反応させて、一般式II
    Iのジアステレオマー塩を形成し、 【化3】 〔式中、RおよびArは前記した意味を有する。〕一方
    のジアステレオマ−塩を溶媒から選択的に析出させて分
    離し、分離したジアステレオマー塩を分解して光学活性
    なピペラジン−2−カルボン酸−N−t−ブチルアミド
    を取得することからなる光学活性ピペラジン誘導体の製
    造方法。
  2. 【請求項2】 式Iの化合物に対し式IIの化合物を、モ
    ル比I:II=1:0.1〜2.0、好ましくは0.5〜
    1.0の割合で反応させる請求項1の製造方法。
  3. 【請求項3】 溶媒として、水を使用して実施するか、
    低級アルコール、とくにメタノール、エタノール、イソ
    プロパノール、n−ブタノールもしくはイソブタノー
    ル、またはこれらの1種と水との混合物を使用して実施
    する請求項1の製造方法。
  4. 【請求項4】 溶媒から分離したジアステレオマー塩を
    分解するに当って、ピペラジン環の4位のNH基をt−
    ブトキシカルボニル基で保護する工程を加えて請求項1
    の製造方法を実施し、4−t−ブトキシカルボニル誘導
    体として目的化合物を単離することからなる光学活性ピ
    ペラジン誘導体の製造方法。
  5. 【請求項5】 一般式IIIであらわされる、光学活性ピ
    ペラジン誘導体と光学活性N−アシル化アミノ酸とのジ
    アステレオマー塩。 【化4】 〔式中、RおよびArは前記した意味を有する。〕
  6. 【請求項6】 式IIIaであらわされる請求項5の塩、
    とくに(S,R)体および(R,S)体。 【化5】
  7. 【請求項7】 式IIIbであらわされる請求項5の塩、
    とくに(S,S)体。 【化6】
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