JPH0945264A - 陰極線管 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 爆縮時、ファンネルのガラス破片の陰極線管
前方への飛散を防止することを目的とする。 【解決手段】 ガラス製パネル3 とこのパネルに連設さ
れた漏斗状のガラス製ファンネル4 からなる真空バルブ
を有する陰極線管において、ファンネルの径大部内側に
爆縮によるファンネルのガラス破片の陰極線管前方への
飛散を防止する破片飛散防止部材35を設けるか、または
内部磁気遮蔽体を爆縮によるファンネルのガラス破片の
陰極線管前方への飛散を防止する板厚に形成した。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、カラー受像管などの
陰極線管に係り、特に爆縮によるガラス破片の飛散を防
止する対策が施された陰極線管に関する。

【０００２】

【従来の技術】一般にカラー受像管は、図５に示すよう
に、曲面からなるほぼ矩形状の有効部１の周辺部にスカ
ート部２が設けられたガラス製パネル３とそのスカート
部２に連設された漏斗状のガラス製ファンネル４とから
なるガラス製真空バルブを有する。そのパネル３の有効
部１内面には、蛍光体スクリーン６が形成され、この蛍
光体スクリーン６に対向して、その内側にシャドウマス
ク７が配置されている。一方、ファンネル４のネック９
内に３電子ビーム１０を放出する電子銃１１が配置され
ている。またファンネル４の径大部１２内側には、３電
子ビーム１０に対する地磁気などの外部磁界の影響を低
減する内部磁気遮蔽体１３が配置され、シャドウマスク
７のマスクフレーム１４に取付けられている。

【０００３】上記のようなガラスからなる陰極線管のバ
ルブは、内部が高真空に排気されているため、これに加
わる大気圧荷重によりきわめて大きな応力が発生してい
る。そのため、このバルブに機械的あるいは熱的衝撃な
どが加わると破壊し、ガラス破片が周辺に飛び散る、い
わゆる爆縮がおこる。この爆縮は、バルブ表面のわずか
な傷などの欠陥を起点としてクラックが進行することに
よりおこる。このような爆縮は、製品の安全、信頼性上
きわめて重要な問題であり、絶対におこらないようにす
る必要がある。

【０００４】そのため、通常カラー受像管は、パネル３
のスカート部２の外周を補強バンド１６により緊締する
防爆処理が施されている。このように補強バンド１６に
よりパネル３のスカート部２の外周を緊締すると、大気
圧荷重により発生する応力分布を調整し、かつクラック
の進行を抑制して、爆縮を抑制することができる。また
カラー受像管のバルブは、耐気圧上、その形状や肉厚分
布についても、できるだけ望ましい応力分布が得られよ
うに配慮されている。

【０００５】一方、一般に陰極線管は、奥行きが大きい
という問題がある。現在ＴＶ用カラー受像管では、画面
の対角径に対応する偏向角（対角偏向角）として、１１
０度程度のものが広く用いられているが、奥行きを短縮
するためには、偏向角を現在以上に大きく広偏向化する
必要がある。しかし偏向角を大きくすると、上述した耐
気圧、爆縮が問題となる。

【０００６】すなわち、図６（ａ）に示したファンネル
４を現在広く用いられている１１０度偏向用ファンネル
とすると、より偏向角の大きい広偏向角化用ファンネル
は、同（ｂ）に示すように、ファンネル４の背面の中間
部１８が（ａ）に示したファンネル４よりも平坦化し、
ネックとの隣接部近傍１９が急に曲がる形状となる。こ
のような形状は、バルブの耐気圧強度や爆縮の面から好
ましくないものとなる。このような形状を避けるため、
同（ｃ）に示すように、ネックとの隣接部近傍１９をも
ちあげると、中間部１８がより平坦化し、パネルとの隣
接部近傍２０が急に曲り、バルブの耐気圧強度や爆縮の
面から同様に好ましくないものとなる。

【０００７】また、ネックとの隣接部近傍の強度を高め
るために、ファンネルの肉厚を厚くすると、それにとも
なって、パネルの肉厚を厚くする必要があり、バルブの
重量が大幅に増加する。しかもパネルの肉厚増加によ
り、従来のパネルと同じ外形のままでは、有効面の内側
に形成される蛍光体スクリーンの面積が小さくなり、規
格を満たすことができなくなる。またネックについて
は、様々な制約から肉厚を薄くしなければならないた
め、バルブ全体のバランスから、一部の肉厚を厚くする
ことも好ましくない。

【０００８】また、一般に陰極線管の防爆性能は、補強
バンドの仕様によっても、大きく変化する。従来は補強
バンドの締付け強度、材質、締付け位置、構造などの工
夫により、爆縮を防止しているが、この補強バンドによ
る爆縮防止には限界があり、上述した広偏向角用バルブ
に対しては対応できない。

【０００９】このように陰極線管の広偏向角化は、耐気
圧強度や爆縮の面から好ましくなく、ある程度以上に偏
向角を大きくすると、バルブの形状や肉厚、補強バンド
の仕様を変えても、爆縮を防止することがきわめて困難
となる。

【００１０】なお、補強バンド以外の防爆手段として、
たとえば特公平６−８０５８２号公報には、バルブに熱
収縮シートを密着させる技術が示されている。しかし一
般にパネルおよびファンネルは、複雑な曲面形状をなす
ため、熱収縮シートを完全に密着させることは容易でな
く、多数の気泡ができやすい。またシートのように伸び
やすいものでは、防爆効果も小さく、広偏向角陰極線管
には十分な防爆効果が得られない。

【００１１】なおまた、従来より防爆処理の一手段とし
て、パネルの有効部前面に合成樹脂層を介してガラス板
を配置し、爆縮がおきても、ガラス破片が陰極線管の前
方に飛び散らないようにした技術がある。しかしこのよ
うな手段は、その処理に手間がかかるばかりでなく、画
質を劣化させるという問題がある。

【００１２】

【発明が解決しようとする課題】上記のように、陰極線
管の奥行きを短縮するため、対角偏向角を現在以上に大
きく広偏向角化する場合、補強バンドの緊締による従来
の防爆手段のみでは、爆縮を防止することが困難とな
る。これを解決するためには、補強バンド以外の防爆手
段が必要となるが、従来知られている方法には、種々の
問題があり、実用化が困難である。

【００１３】この発明は、上記問題点を解決するために
なされたものであり、従来の防爆手段では爆縮を防ぐこ
とが困難な陰極線管に対して、特にファンネルのガラス
破片の陰極線管前方への飛散を防止して、十分に安全を
確保できる陰極線管を構成することを目的とする。

【００１４】

【課題を解決するための手段】ガラス製パネルとこのパ
ネルに連設された漏斗状のガラス製ファンネルからなる
真空バルブを有する陰極線管において、ファンネルの径
大部内側に爆縮によるファンネルのガラス破片の陰極線
管前方への飛散を防止する破片飛散防止部材を設けた。

【００１５】また、ガラス製パネルとこのパネルに連設
された漏斗状のガラス製ファンネルからなる真空バルブ
を有し、そのファンネルの径大部内側に内部磁気遮蔽体
が配置されている陰極線管において、内部磁気遮蔽体を
爆縮によるファンネルのガラス破片の陰極線管前方への
飛散を防止する板厚に形成した。

【００１６】さらに、その破片飛散防止部材または内部
磁気遮蔽体の板厚を０．６mm以上とした。

【００１７】

【作用】ガラス製バルブの安全性に関する規格では、陰
極線管の前方にガラス破片が飛出すか否かが問題とされ
る。したがって本来は、爆縮がおきないようにすること
が望ましいが、たとえ爆縮がおきても、ガラス破片が陰
極線管の前方に飛出さないようにすれば、安全上問題は
なくなる。

【００１８】一般に爆縮がおこると、パネルおよびファ
ンネルがともに破壊され、特にファンネルの破片が陰極
線管の前方に飛出す。そこで上記のようにファンネルの
径大部内側に破片飛散防止部材を設けると、爆縮がおき
ても、ファンネルの破片は、この破片飛散防止部材に衝
突して、陰極線管前方への飛出しを防止することができ
る。またファンネルの破片がパネルに衝突したり、また
そのためにパネルが破壊して破片が飛散することも防止
できる。なお、パネル側から破壊が進行し、その破片が
飛散することは避けられないが、特に広偏向角の陰極線
管では、一般に破壊は、ファンネル側から進行するた
め、ファンネルの破片の飛散を防止できれば、十分に安
全性を確保できる。

【００１９】ファンネルの径大部内側に内部磁気遮蔽体
が配置されてなる陰極線管においては、その内部磁気遮
蔽体を破片飛散防止部材として用いることができる。し
かし従来の内部磁気遮蔽体は、板厚が０．１５mm程度と
薄く、ガラス破片の飛散を防止する効果はあまりもたな
い。したがって内部磁気遮蔽体を破片飛散防止部材とし
て用いる場合は、板厚を厚くする必要がある。

【００２０】爆縮によるガラス破片の飛散速度は速いの
で、破片飛散防止部材または内部磁気遮蔽体を破片飛散
防止部材として用いる場合は、そのガラス破片の陰極線
管前方への飛出しを防止する強度が必要である。実験の
結果、板厚を０．６mm以上とすることにより防止可能で
あることが判明した。

【００２１】

【実施例】以下、図面を参照してこの発明を実施例に基
づいて説明する。

【００２２】実施例１．図１に実施例１のカラー受像管
を示す。このカラー受像管は、曲面からなるほぼ矩形状
の有効部１の周辺部にスカート部２が設けられたガラス
製パネル３とそのスカート部２に連設された漏斗状のガ
ラス製ファンネル４とからなるガラス製真空バルブを有
する。そのパネル３の有効部１内面には、青、緑、赤に
発光する３色蛍光体層からなる蛍光体スクリーン６が形
成され、この蛍光体スクリーン６に対向して、その内側
にほぼ矩形状のシャドウマスク７が配置されている。こ
のシャドウマスク７は、上記蛍光体スクリーン６と対向
する面に多数の電子ビーム通過孔の形成されたほぼ矩形
状のマスク本体３０と、このマスク本体３０の周辺部に
取付けられた一端部に内側張出部をもつ断面Ｌ字形のほ
ぼ矩形状のマスクフレーム３１とからなる。シャドウマ
スク７は、このマスクフレーム３１に取付けられた複数
個の弾性支持体３２をパネル３に設けられた複数個のス
タッドピン３３に係止することにより、パネル３の内側
に支持されている。

【００２３】一方、ファンネル４のネック９内に３電子
ビーム１０を放出する電子銃１１が配置されている。ま
たファンネル４の径大部１２内側には、３電子ビーム１
０に対する地磁気などの外部磁界の影響を低減する磁性
材料からなる内部磁気遮蔽体３４が配置されている。こ
の内部磁気遮蔽体３４は、矩形中空台形状に形成され、
その大径開口側が上記シャドウマスク７のマスクフレー
ム３４に取付けられている。さらにパネル３のスカート
部２の外周には、この外周を緊締する補強バンド１６が
装着されている。

【００２４】さらにまた、このカラー受像管において
は、上記内部磁気遮蔽体３４の外側を覆うように、ファ
ンネル４の径大部１２の内側に、その内面に接近して、
爆縮時ファンネル４のガラス片のパネル３前方（カラー
受像管の前方）への飛散を防止する破片飛散防止部材３
５が配置されている。

【００２５】この破片飛散防止部材３５は、上記爆縮時
に飛散するガラス片の衝突に対して十分に耐えられるよ
うに、図２に示すように、軟鋼板など、板厚０．６mm以
上の金属板からなる矩形中空台形状に形成されている。
このような破片飛散防止部材３５は、重量がかなり重く
なるため、その大径開口側の端縁に支持部３６を設け、
この支持部３３を上記シャドウマスク７を支持するスタ
ッドピン３３に係止することにより、ファンネル４の径
大部１２の内側に配置される構造に形成されている。

【００２６】したがってこの破片飛散防止部材３５は、
スタッドピン３３を介して、シャドウマスク７や内部磁
気遮蔽体３４と電気的に接続される。なお、この破片飛
散防止部材３５は、爆縮時に飛散するガラス片に対する
強度からは、板厚を厚くすることが望まれるが、重量の
増加を避けるため、爆縮の規模を勘案して適宜決められ
る。

【００２７】なお、図１において、３７は、ファンネル
４の径大部１２内面からネック９の隣接部内面にかけて
塗布形成された内面導電膜、３８は、ファンネル４の外
側に装着された偏向装置である。

【００２８】ところで、上記のようにファンネル４の径
大部１２内側に、その内面に接近して破片飛散防止部材
３５を配置すると、爆縮時、ファンネル４のガラス片の
パネル３方向へ飛散して、カラー受像管前方への飛出し
を防止することができる。すなわち、一般に爆縮がおこ
ると、パネルおよびファンネルがともに破壊され、特に
ファンネルの破片がカラー受像管の前方へ飛出すが、上
記のように破片飛散防止部材３５を設けると、ファンネ
ル４の破片は、この破片飛散防止部材３５に衝突し、カ
ラー受像管の前方への飛出しを防止することができる。
またファンネル４の破片がパネル３に衝突したり、また
そのために、パネル３が破壊して破片が飛散することも
防止できる。したがってパネル３のスカート部２の外周
に補強バンド１６を装着するとともに、ファンネル４の
径大部１２内側に破片飛散防止部材３５を配置すること
により、爆縮を防止し、かつ万一爆縮が生じても、ファ
ンネル４のガラス破片がカラー受像管の前方への飛散を
防止でき、十分に安全な信頼性の高いカラー受像管とす
ることができる。特に広偏向角管は、構造上、偏向角の
小さい管にくらべて爆縮をおこしやすいが、上記のよう
に破片飛散防止部材３５を設けることにより、ファンネ
ル４の破片のパネル３方向への飛散を防止でき、従来爆
縮防止が困難であった奥行きの短い広偏向角管を実用に
供することができる。

【００２９】実施例２．図３に実施例２のカラー受像管
を示す。このカラー受像管は、内部磁気遮蔽体３４と破
片飛散防止部材３５を除いて、その他の部分は、実施例
１のカラー受像管と同一構造に形成されているので、同
一部分に同一符号を付して、その説明を省略する。内部
磁気遮蔽体３４と破片飛散防止部材３５については、こ
の例のカラー受像管では、従来の内部磁気遮蔽体の板厚
０．１５mmよりも厚く、０．６mm以上として、その磁性
材料からなる内部磁気遮蔽体３４が破片飛散防止作用を
もち、破片飛散防止部材を兼ねている。

【００３０】このように板厚を厚くしたことにより重量
の増加した内部磁気遮蔽体３４を、従来のカラー受像管
と同様にシャドウマスクのマスクフレームに取付ける
と、カラー受像管の輸送時などに加わる衝撃のために、
シャドウマスク７の変形や、パネル３とシャドウマスク
７との位置関係が変化しやすくなる。そのため、このカ
ラー受像管では、図４に示すように、内部磁気遮蔽体３
４の大径開口部に、シャドウマスク７を支持するスタツ
ドピン３３に係止する支持部４０を設け、この支持部４
０を介してスタツドピン３３に支持するように構成され
ている。この場合、内部磁気遮蔽体３４は、その大径開
口部に設けられた内側張出部４１がシャドウマスク７の
マスクフレーム３１に接触する構造に形成されている。

【００３１】このように内部磁気遮蔽体３４を破片飛散
防止部材を兼ねる構造に形成すると、実施例１と同様の
効果をもつカラー受像管とすることができる。しかも格
別に破片飛散防止部材を設けないので、構造を複雑化す
ることがなく、またカラー受像管の組立て作業の複雑化
を避けることができる。

【００３２】なお、上記実施例では、内部磁気遮蔽体を
板厚０．６mm以上の磁性材料で構成して、この内部磁気
遮蔽体に破片飛散防止作用をもたせたが、内部磁気遮蔽
体の外部磁界遮蔽特性は、従来の内部磁気遮蔽体の板厚
（０．１５mm）以上に厚くしても、遮蔽効果はあまり変
わらないので、磁気遮蔽と破片飛散防止の両作用をもつ
内部磁気遮蔽体としては、従来の内部磁気遮蔽体と同程
度の厚さの磁性材料に、たとえばアルミニウムなどの非
磁性材料を張合わせて軽量化することにより、カラー受
像管の重量増加を抑えることができる。

【００３３】なお、上記実施例１および２では、カラー
受像管について説明したが、この発明は、カラー受像管
以外の陰極線管にも適用可能である。

【００３４】

【発明の効果】ファンネルの径大部内側に破片飛散防止
部材を設けるか、あるいはファンネルの径大部内側に配
置される内部磁気遮蔽体の板厚を厚くして破片飛散防止
作用をもたせると、爆縮時のファンネルのガラス破片の
陰極線管前方への飛散を有効に防止することができる。
したがって上記のように破片飛散防止部材を設けるか、
あるいは内部磁気遮蔽体の板厚を厚くすることにより、
従来の防爆手段では爆縮を防止することが困難な現在の
陰極線管よりもさらに偏向角の大きい陰極線管に適用し
て安全性を確保でき、実用に供することが可能となる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明の実施例１のカラー受像管の構成を示
す図である。

【図２】上記実施例１のカラー受像管に配置される破片
飛散防止部材の構造を示す図である。

【図３】この発明の実施例２のカラー受像管の構成を示
す図である。

【図４】上記実施例２のカラー受像管の要部構造を示す
図である。

【図５】従来のカラー受像管の構成を示す図である。

【図６】図６（ａ）ないし（ｃ）はそれぞれ広偏向角陰
極線管のファンネルの形状を説明するための図である。

【符号の説明】

２…スカート部 ３…パネル ４…ファンネル ７…シャドウマスク １２…径大部 １６…補強バンド ３１…マスクフレーム ３４…内部磁気遮蔽体 ３５…破片飛散防止部材 ３６…支持部

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ガラス製パネルとこのパネルに連設され
   た漏斗状のガラス製ファンネルからなる真空バルブを有
   する陰極線管において、 上記ファンネルの径大部内側に爆縮によるファンネルの
   ガラス破片の陰極線管前方への飛散を防止する破片飛散
   防止部材が設けられていることを特徴とする陰極線管。
2. 【請求項２】 ガラス製パネルとこのパネルに連設され
   た漏斗状のガラス製ファンネルからなる真空バルブを有
   し、上記ファンネルの径大部内側に内部磁気遮蔽体が配
   置されている陰極線管において、 上記内部磁気遮蔽体は爆縮による上記ファンネルのガラ
   ス破片の陰極線管前方への飛散を防止する板厚に形成さ
   れていることを特徴とする陰極線管。
3. 【請求項３】 破片飛散防止部材または内部磁気遮蔽体
   の板厚が０．６mm以上であることを特徴とする請求項１
   または請求項２記載の陰極線管。