JPH0939234A - プリンタ装置 - Google Patents

プリンタ装置

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JPH0939234A
JPH0939234A JP19220195A JP19220195A JPH0939234A JP H0939234 A JPH0939234 A JP H0939234A JP 19220195 A JP19220195 A JP 19220195A JP 19220195 A JP19220195 A JP 19220195A JP H0939234 A JPH0939234 A JP H0939234A
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  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 吐出ノズルの微細ピッチ化を図り、高解像度
を実現する。 【解決手段】 圧電素子7への電圧の印加により、圧力
室3内に満たされた吐出媒体を吐出ノズル1より吐出す
るようにしたプリンタ装置である。このプリンタ装置に
おいて、圧力室3の圧力付与に寄与する本圧電素子7
と、圧力室3の圧力付与に寄与しないダミー圧電素子7
を、圧力室3の列方向Xと、これに垂直な方向Yに対し
て、周期性をもって配置する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、圧電素子と振動板
とのバイモルフ効果により圧力室に満たされる吐出媒体
を、吐出ノズルより吐出させて記録媒体に画像を印画す
るプリンタ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、いわゆるオンデマンド型インクジ
ェットプリンタは、記録信号に応じてインク液滴をノズ
ルより吐出して、紙やフィルムなどの記録媒体に記録す
るプリンタであり、小型化、低コスト化が可能なため近
年急速に普及しつつある。
【0003】一方、近年、特にオフィスにおいて、デス
クトップパブリッシングと呼ばれるコンピュータを用い
た文書作成が盛んに行われるようになり、最近では文字
や図形だけではなく写真等のカラーの自然画像を文字や
図形とともに出力するという要求が増加してきている。
このように、高品位な自然画像をプリントするために
は、中間調の再現が重要である。
【0004】このオンデマンド型インクジェットプリン
タにおいて、インク液滴を吐出するためには、例えばピ
エゾ素子を用いる方法や発熱素子を用いる方法が一般的
である。ピエゾ素子を用いる方法というのは、ピエゾ素
子の変形によりインクに圧力を与えノズルより吐出させ
る方法である。一方、発熱素子を用いる方法というの
は、発熱素子によりインクを加熱沸騰させて発生する泡
の圧力でインクを吐出させる方法である。
【0005】また、中間調を再現するためには、ピエゾ
素子または発熱素子に与える電圧やパルス幅を変化さ
せ、吐出する液滴サイズを制御することで印字ドットの
径を可変として諧調を表現するものや、ドット径は変化
させずに1画素を、例えば4×4のドットよりなるマト
リクスで構成し、このマトリクス単位でいわゆるディザ
法を用いて諧調表現を行うものがある。
【0006】ところで、ピエゾ素子の変形によりインク
に圧力を与えノズルより吐出させる方法には、何層にも
積層された圧電素子を直線的に変位させ振動板を押す方
法と、振動板に貼り合わされた単板あるいは2層に積層
された圧電素子に電圧を与えることにより振動板を湾曲
させる方法がある。
【0007】図27及び図28には、単板型の圧電素子
を用いたプリンタ装置におけるプリントヘッドを示す。
このプリントヘッドは、例えば感光性ガラス等からなる
基台101と、この基台101に取り付けられる振動板
102と、この振動板102上に設けられる圧電素子1
03と、吐出ノズル104が形成されたオリフィスプレ
ート105とからなる。
【0008】基台101には、図27に示すように、イ
ンクを導入するためのインク導入孔106と、該インク
を収容する圧力室107とが形成されている。振動板1
02は、これらインク導入孔106と圧力室107を覆
うようにして、基台101に取り付けられている。圧電
素子103は、図28に示すように、厚み方向の上下面
にそれぞれ電極108,109を有し、圧力室107と
対応した位置の振動板102上に接着剤等によって接合
されている。オリフィスプレート105は、基台101
の振動板102が設けられる面とは反対側の面に設けら
れている。このオリフィスプレート105に設けられた
吐出ノズル104は、圧力室107と連通するようにな
っている。
【0009】このプリントヘッドでは、圧電素子103
に電圧が印加されると、バイモルフ効果によって当該圧
電素子103が変形し、その変位が振動板102を介し
て圧力室107に伝達される。すると、この圧電素子1
03の変位によって、圧力室107の体積が減少し、該
圧力室107内に満たされていたインクが吐出ノズル1
04より吐出される。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記のよう
に、振動板に貼り合わされた単板あるいは2層に積層さ
れた圧電素子に電圧を与えることにより振動板を湾曲さ
せる方法では、切断された圧電素子を振動板上に貼り合
わせるに際して、微細ピッチを達成するのが困難である
という問題がある。また、振動板上にペースト状の圧電
素子を印刷等の手段により配置し、配置後に焼成する場
合には、振動板の耐熱性のために焼成温度を1000℃
以上にすることが困難であり、圧電材料の特性を十分に
発揮することができないという欠点がある。さらに、振
動板に圧電素子を貼り合わせた後に切断を行う方法にお
いては、振動板を傷つけることなく、圧電素子のみを切
断することが困難であるとともに、絶えず一定な深さで
切断をすることは工具の摩耗および工作機械の位置精度
を踏まえると容易でない。
【0011】この一方、何層にも積層された圧電素子を
直線的に変位させ振動板を押す方法では、圧電素子自
体、高価なものとなり、コストの面で不利である。
【0012】本発明は、上述の問題点に鑑みて提案され
たものであり、単板あるいは2層に積層された圧電素子
を用いてコストを抑えると共に、プロセスの安定化およ
び圧電材料特性の発揮、さらには微細ピッチに対応した
プリンタ装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記課題
を解決すべく鋭意検討した結果、振動板を単層ではなく
2層以上の積層構造とし、そのうちの1層を本来の振動
板として機能させると共に、圧電素子を切断する際に機
械加工により本来の振動板として機能させる振動板まで
は切断せず、その一歩手前の切断部分に残った他の振動
板をエッチング等により除去することで、本来有する圧
電材料の特性の発揮、微細ピッチの実現がなされること
を見い出した。また、複数の圧電素子のうち、圧力室の
圧力付与に寄与する圧電素子と、圧力室の圧力付与に寄
与しない圧電素子を、当該圧力室の列方向と、これに垂
直な方向に対して周期的に配置することで、解像度の向
上が図れることを見い出した。
【0014】すなわち、本発明に係るプリンタ装置は、
吐出ノズルを複数有してなるオリフィスプレートと、こ
の吐出ノズルに連通し、各吐出ノズルに対応して設けら
れた圧力室を有してなる基台と、圧力室を全て覆うよう
にされる振動板と、圧電素子をマスクとして除去されて
当該圧電素子と略同一幅とされてなる振動板とからなる
2層以上の積層振動板と、この積層振動板上に配置され
る複数の圧電素子とを備える。そして、このプリンタ装
置では、これら複数の圧電素子のうち、圧力室の圧力付
与に寄与する圧電素子と、圧力室の圧力付与に寄与しな
い圧電素子とが、圧力室の配列方向に対して周期的に配
置される。
【0015】また、本発明に係るプリンタ装置は、吐出
ノズルが2列以上に複数配置されたオリフィスプレート
と、この吐出ノズルに連通し、各吐出ノズルに対応して
2列以上に配列して設けられた圧力室を有してなる基台
と、圧力室を全て覆うようにされる振動板と、圧電素子
をマスクとして除去されて当該圧電素子と略同一幅とさ
れてなる振動板とからなる2層以上の積層振動板と、こ
の積層振動板上に所定間隔で配置される複数の圧電素子
とを備える。そして、このプリンタ装置では、これら複
数の圧電素子のうち、圧力室の圧力付与に寄与する圧電
素子と、圧力室の圧力付与に寄与しない圧電素子とが、
当該圧力室の列方向と、これに垂直な方向に対して周期
的に配置される。
【0016】本発明に係るプリンタ装置においては、振
動板を2層以上とし、そのうちの1層を圧力室を全て覆
うようにし、残りの層の振動板を圧電素子をマスクとし
て除去して、当該圧電素子と同一幅としているので、変
位力を発生する領域に対して、負荷として働く領域は少
なくなり、少ない電圧の印加により大きな変位が得られ
る。
【0017】また、このプリンタ装置では、圧力室の圧
力付与に寄与する圧電素子と、圧力室の圧力付与に寄与
しない圧電素子とが、圧力室の配列方向に対して周期的
に配置されているので、この圧力付与に寄与しない圧電
素子が、機械的強度を高める役目をする。
【0018】さらに、このプリンタ装置では、これら複
数の圧電素子のうち、圧力室の圧力付与に寄与する圧電
素子と、圧力室の圧力付与に寄与しない圧電素子とが、
当該圧力室の列方向と、これに垂直な方向に対して周期
的に配置されるので、解像度の高い印画が望める。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明を適用したプリンタ
装置の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明す
る。
【0020】実施の形態1 図1及び図2に、本発明に係るプリンタ装置におけるプ
リントヘッド部分の縦断面図と横断面図を示す。
【0021】このプリントヘッドは、複数の吐出ノズル
1を有してなるオリフィスプレート2と、この吐出ノズ
ル1に連通し、該吐出ノズル1に対応して設けられた圧
力室3を有してなる基台4と、この基台4に取り付けら
れる振動板5,6と、この振動板5,6上に配置される
複数の圧電素子7とを備えてなる。
【0022】オリフィスプレート2は、図1及び図2に
示すように、吐出媒体であるインクを吐出する吐出ノズ
ル1を複数有した基板として形成され、基台4の振動板
5が設けられる面とは反対側の面に取り付けられてい
る。このオリフィスプレート2に設けられる吐出ノズル
1は、基台4に形成された各圧力室3にそれぞれ相対向
して設けられると共に、それぞれの圧力室3に連通する
ようになっている。吐出ノズル1の出口形状は、インク
の表面張力により球形になろうとするので、丸形または
長方形のどちらでもよい。この例では、図3に示すよう
に、吐出ノズル1の出口形状を円形としている。
【0023】基台4には、図1及び図2に示すように、
インクを吐出ノズル1へと導くための流路が形成されて
いる。かかる流路は、主として図3に示すように、平面
長方形をなすインク収容部である圧力室3と、この圧力
室3に連通するインク供給路8とからなる。圧力室3に
は、インク導入部9から分岐されるインク供給路8を介
してインクが導入されるようになっている。
【0024】振動板5,6は、図1及び図2に示すよう
に、2つの振動板が重ね合わされた2層構造とされてい
る。一方の振動板5は、基台4に設けられた全ての圧力
室3を覆うようにして、該基台4のオリフィスプレート
2が設けられる面とは反対側の面に設けられている。他
方の振動板6は、後述の製造プロセスで示すように、圧
電素子7をマスクとして除去されることにより、当該圧
電素子7と略同一幅とされている。
【0025】圧電素子7は、焼成されたセラミックの上
下面に電極を形成したバイモルフ素子からなり、電圧の
印加による変形で圧力室3内の圧力を可変し、吐出媒体
であるインクを吐出ノズル1より吐出させる役目をする
ものである。この圧電素子7は、図3に示すように、平
面長方形として形成され、振動板6に対して接着層10
を介して接合されている。
【0026】振動板5,6上に所定間隔で配置された複
数の圧電素子7のうち、図1及び図3中、斜線で示す圧
力室3と対応する位置に設けられた圧電素子7は、イン
クを吐出させる際の当該圧力室3の圧力付与に寄与する
本来の圧電素子7(以下、これを本圧電素子7と称す
る。)として機能する。これに対して、圧力室3と対応
しない位置に設けられる圧電素子7は、当該圧力室3の
圧力付与に寄与しない,いわゆるダミーの圧電素子(以
下、これをダミー圧電素子7と称する。)として機能す
る。このダミー圧電素子7は、後述する製造プロセスで
述べるように、基台4やオリフィスプレート2を振動板
5,6に接合する際の接合信頼性及び機械的強度を高め
る役目をする。なお、この例では、本圧電素子7とダミ
ー圧電素子7は、交互に配列されている。
【0027】このように構成されたプリントヘッドにお
けるインクの吐出動作は、次の通りである。図4に示す
初期状態から図5に示すように、本圧電素子7に電圧を
与えると、該本圧電素子7と積層された振動板5,6と
のバイモルフ効果により、これら本圧電素子7と振動板
5,6が湾曲する。このため、本圧電素子7に対応した
圧力室3に圧力が加わり、該圧力室3に満たされていた
インク11が吐出ノズル1より吐出することとなる。
【0028】このプリントヘッドでは、バイモルフ効果
は、積層された2層の振動板5,6と本圧電素子7によ
って発生される。そして、圧力室3の圧力を高めるため
に必要な変位を得るにあたる負荷としては、当該圧力室
3を覆って設けられる最下層の振動板5のみとなってい
る。図示すると、図4(a)に示すように、図中Cで示
す部分が変位力を発生し、同図中Dで示す部分が負荷と
して働く。
【0029】したがって、従来のインクジェットヘッド
の構成において変位強度を弱くするために広く設けられ
ていた圧力室3の幅Bを、圧電素子7の幅Aに比較して
狭くすることができる。その結果、このプリントヘッド
においては、圧力室3の大きさを小さくすることが可能
となり、当該圧力室3の配置密度を高めることができ、
最終的に圧力室3に連通する吐出ノズル1の間隔を小さ
くすることができることとなる。
【0030】また、このプリントヘッドでは、接着層1
0の厚さ誤差は負荷に影響しないという利点がある。図
4(a)中、圧電素子7の厚みをt(piezo) 、接着層1
0の厚みをt(adh) 、上層の振動板6の厚みをt1 、下
層の振動板5の厚みをt2 としたときに、負荷の影響の
度合いは、Δt(adh) /(t(piezo) +t(adh) +t
1 )で表せる。つまり、接着剤の厚さの誤差は、ほぼ1
乗でしか影響しない。
【0031】以上のように構成されたプリントヘッドを
製造するには、次のようなプロセスに従って行う。
【0032】先ず、図6に示すように、2層構造を有す
る振動板5,6と圧電素子7を準備する。2層よりなる
振動板5,6としては、上層の振動板6を溶解する溶液
に対して、下層の振動板5がエッチングされない材料を
選択する。また、下層の振動板5は、ピット(微小な
穴)が存在し難い材料を選択する。さらに、上層及び下
層の振動板5,6は、共に導電性であることが望まし
い。
【0033】より具体的には、上層の振動板6を板厚2
0μm以上の銅を主成分とする金属箔とし、下層の振動
板5を板厚15μm以下のニッケルを主成分とする。ま
た、これら振動板5,6の積層方法としては、これらが
強固に接合していればよく、上層の振動板6に下層の振
動板5をメッキにより形成する方法、あるいは下層の振
動板5に上層の振動板6をメッキにより形成する方法、
さらには上層の振動板6と下層の振動板5を接合する方
法、より具体的には真空雰囲気中において荷重を加える
ことにより接合する方法等が存在する。
【0034】一方、圧電素子7は、焼成したセラミック
の上下面にそれぞれ電極を形成したものである。図6に
は、電極を省略して示してある。この圧電素子7の厚み
としては、板厚が200μm以下とすることが望まし
い。なお、この例では、圧電素子7は単層のものについ
て説明を行うが、積層された圧電素子であっても構わな
い。
【0035】また、下層の振動板5には、メッキにより
形成された材料よりも圧延により形成された材料の方が
後のピットが存在する可能性が少ないので、圧延により
形成された材料を用いることが望ましい。さらには、振
動板5,6を構成する全ての材料が圧延箔により形成さ
れていることがより望ましい。
【0036】次に、図7に示すように、積層された振動
板5,6のうち上層の振動板6に接着剤10を塗布す
る。あるいは、圧電素子7の表面、さらには圧電素子7
と振動板6の両側に接着剤10を塗布してもよい。接着
剤10は、後の圧電素子5,6の切断プロセスにおい
て、剥離することがないように耐え得る強度を有してい
れば良い。さらにこの接着剤10は、導電性を有してい
ることが望ましい。より具体的には、エポキシ接着剤
に、金属などの導電性粒子を混合したものでよい。
【0037】続いて、図8に示すように、振動板5,6
と圧電素子7をより強固に接着できるように、および接
着剤10の厚さを薄くして接着ができるように、圧電素
子7側より圧力Pを加えてプレスを行う。なお、この例
では、プレスを加えているが、プレスを行わなくても接
着剤10の厚さが安定し、さらに強固に圧電素子7と振
動板5,6とが固定される方法を用いた場合には、プレ
ス工程は必要でない。
【0038】またここで、接着剤10の塗布を安定させ
るために、上層の振動板6の上にさらに下地層を設けて
もよい。例えば、酸化シリコンなどを数10nm設ける
ことにより、塗布時に接着剤中に含まれる可能性のある
泡を減らすことも有効である。
【0039】次に、図9に示すように、接着剤10とし
てエポキシ系を用いた場合においては、接着剤の熱硬化
を行う。
【0040】次いで、図10に示すように、振動板5,
6上に固定された圧電素子7を回転ブレードによるダイ
シングにより切断する。ここで、切断を行うピッチは、
吐出ノズルに連通する圧力室の大きさに対応した大きさ
となるように切断加工を行うこととする。また、圧力室
3に対応しない部分にもダミー圧電素子7を残すように
する。この圧電素子7の切断工程において、切断手段
は、ダイシングの代わりにダイヤモンド粒子を含む砥石
加工とすることが可能である。
【0041】切断を行うに際しては、圧電素子7は完全
に切断し、刃物の底が下層の振動板5までには至らない
ようにする。つまり、下層の振動板5の直前で切断を止
める。下層の振動板5の直前というのは、例えば上層の
振動板6を5〜10μm残す程度とする。
【0042】次に、図11に示すように、振動板5,6
に接合した圧電素子7を、上層の振動板6のみを溶解あ
るいはエッチングし、下層の振動板5および圧電素子7
は溶解あるいはエッチングしない溶液に浸す。すると、
切断されて残った圧電素子7をマスクとして、切断部分
に残された下層の振動板5以外の振動板6が除去され
る。この結果、切断部分に残された上層の振動板6が除
去され、底面には下層の振動板5が露出することにな
る。
【0043】ここで、上層の振動板6として銅を主成分
とする材料を用い、下層の振動板5として、ニッケルを
主成分とした材料を用いた場合においては、5〜40%
の塩化第2鉄水溶液に数分あるいは数10秒浸すことに
より、図11に示すごとく、切断されることにより残さ
れた圧電素子7をマスクとしてエッチングを行うことが
できる。このようにすることで、ダイシングによる振動
板の板厚誤差を無くすことができ、厚み精度の高い振動
板を得ることができる。
【0044】次に、図12に示すように、先の工程で得
られた圧電素子7と振動板5,6の接合体を、圧力室3
とインク供給路が形成された基台であるインク流路形成
部材12に接合する。接合するに際しては、本圧電素子
7に相対向する位置に、圧力室3が対応するようにす
る。このとき、上記接合体には本圧電素子7の他にダミ
ー圧電素子7が設けられているため、接着する際に加え
る圧力を均等なものとすることができる。したがって、
接合信頼性が向上するとともに、機械的強度が高まる。
【0045】そしてさらに、圧力室3に連通し、この圧
力室3と対応して設けられた吐出ノズル1を有してなる
オリフィスプレート(図示は省略する)を圧力室3と対
応する位置に取り付ける。これにより、図1及び図2に
示すプリントヘッドが完成する。
【0046】このようなプロセスを経て製造されたプリ
ントヘッドにおいては、バイモルフ効果は、上下の振動
板5,6と本圧電素子7によって発生されることとなっ
ており、圧力室3の圧力を高めるために必要な変位を得
るにあたる負荷としては下層の振動板5のみとすること
ができる。
【0047】さらに、このバイモルフ効果により振動板
5,6を変形させる場合において、負荷として働くもの
は、下層の振動板5の断面2次モーメントであり、振動
板の厚さの3乗に比例する負荷となる。ここで、上記し
たプロセスにおいては、図11に示した如く溶解あるい
はエッチングにより、この断面2次モーメントを規定す
ることとなる。したがって、多数存在する吐出ノズル1
に対して、対応して存在する圧力室3に対して、均一な
圧力を発生させることができることとなる。
【0048】ここで例えば、上記プロセスにおいて、圧
電素子7をマスクとした溶解あるいはエッチングによる
除去を行わず切断工程が終了したのみで、振動板を構成
した場合においては、切断時における刃物の摩耗、およ
び切断機の性能に起因する刃物の高さ精度により、振動
板の厚さが決定されることとなる。仮に、その精度が例
えば1μm以下であったとしても、振動板の板厚の目標
値が10μmの場合には、該振動板の厚さが10%程度
にばらついてしまうこととなり、結果的に断面2次モー
メントは厚さの3乗に比例するので、30%程度のばら
つきを有してしまうこととなる。つまり30%のばらつ
きが振動板の負荷として存在する場合には、結果的にプ
リンタ装置を構成した場合において、インクの吐出量が
著しくばらついてしまうこととなる。
【0049】しかしながら、上記プロセスを採用するこ
とにより、インク吐出時の振動板を変位させる場合の負
荷となる振動板5の厚さを薄く、さらに安定に製造する
ことができる。したがって、このプロセスによって製造
されたプリントヘッドにおいては、圧力室3の大きさを
小さくすることが可能となり、当該圧力室3の配置密度
を高めることができ、結果的に圧力室3に連通する吐出
ノズル1の間隔を小さくすることができることとなる。
【0050】さらに、振動板5,6として導電性を有す
る材料を用いることにより、本圧電素子7に電圧を与え
る場合において、この振動板5,6を共通電極とするこ
とが可能となる。すなわち、共通電極の端子を設ける場
所の節約と端子数の省略に効果を発揮することができ
る。またさらに、導電性の接着剤10を用いることによ
り、結果的に圧電素子7の表面に直接電界を与えること
ができることとなるので、接着剤10の厚さに応じた量
の電圧を低くすることができる。
【0051】またさらに、複数個に分割された圧電素子
7を、圧力室3の圧力付与に寄与する本圧電素子7と、
圧力室3の圧力付与に寄与しないダミー圧電素子7と
が、圧力室3の配列方向に対して周期性をもって配置す
ることにより、図12に示すインク流路形成部材12と
の固着工程において、圧力の付与を容易にすることがで
きる。
【0052】そしてさらに、複数個に分割された圧電素
子7を、圧力室3の圧力付与に寄与する本圧電素子7
と、圧力室3の圧力付与に寄与しないダミー圧電素子7
とが、圧力室3の配列方向に対して周期性をもって配置
することにより、圧電素子7の切断工程において、切削
抵抗の少ない幅の狭い刃を使用することができ、切削条
件が安定する。より具体的には、吐出ノズル1のノズル
ピッチが0.6mm程度であり、本圧電素子7の幅が
0.2mm程度である場合においては、約0.1mm程
度の刃物を用いればよい。これに対して、本圧電素子7
とダミー圧電素子7が圧力室3の配列方向に対して周期
性をもって配置しない場合には、0.4mm程度の刃物
を用いる必要があり、切削により除去する体積が大きく
なり、切断加工が面倒となる。
【0053】以上が、図1及び図2に示したプリントヘ
ッドの製造方法であるが、この他、次のように製造する
こともできる。
【0054】先ず、図13に示すように、2層構造を有
する振動板5,6と圧電素子7を準備する。2層よりな
る振動板5,6としては、上層の振動板6を溶解する溶
液に対して、下層の振動板5がエッチングされない材料
を選択する。また、下層の振動板5は、ピット(微小な
穴)が存在しにくい材料を選択する。さらに、下層及び
上層の振動板5,6は、共に導電性であることが望まし
い。
【0055】より具体的には、上層の振動板6を板厚2
0μm以上の銅を主成分とする金属箔とし、下層の振動
板5を板厚15μm以下のニッケルを主成分とする。ま
た、これら振動板5,6の積層方法としては、これらが
強固に接合していればよく、上層の振動板6に下層の振
動板5をメッキにより形成する方法、あるいは下層の振
動板5に上層の振動板6をメッキにより形成する方法、
さらには上層の振動板6と下層の振動板5を接合する方
法、より具体的には真空雰囲気中において荷重を加える
ことにより接合する方法等が存在する。
【0056】また、圧電素子7は、焼成したセラミック
の上下面にそれぞれ電極を形成したものである。図13
には、電極を省略して示してある。この圧電素子7の厚
みとしては、板厚が200μm以下とすることが望まし
い。なお、この例では、圧電素子7は単層のものについ
て説明を行うが、積層された圧電素子であっても構わな
い。また、下層の振動板5には、メッキにより形成され
た材料よりも圧延により形成された材料の方が後のピッ
トが存在する可能性が少ないので、圧延により形成され
た材料を用いることが望ましい。さらには、振動板5,
6を構成する全ての材料が圧延箔により形成されている
ことがより望ましい。
【0057】次に、図14に示すように、積層された振
動板5,6のうち上層の振動板6にガリウムを成分とす
る液体金属接着剤13を塗布する。あるいは、圧電素子
7の表面、さらには圧電素子7と振動板6の両側に液体
金属接着剤13を塗布してもよい。この液体金属接着剤
13は、ガリウムと、インジウムあるいは錫あるいは亜
鉛の1つ以上を有する2元以上の成分を有し、室温近傍
あるいは100℃以下の温度において液体となり、さら
に上層の振動板6に対して、拡散反応を生じ、合金化が
なされるものである。あるいは、上記液体金属に、金、
銀、パラジウムのうち1種以上を成分として有する金属
粉末を添加した金属接着剤を用い、室温近傍あるいは1
00℃以下の温度において、上層の振動板6に対して、
拡散反応を生じ、合金化がなされるものである。
【0058】続いて、図15に示すように、振動板5,
6と圧電素子7をより強固に接着できるように、および
液体金属接着剤13の厚さを薄くして接着できるよう
に、プレスあるいはローラー処理を行う。
【0059】なお、この例においては、プレスあるいは
ローラー処理を行い、液体金属接着剤13の厚さを5μ
m以下とした。さらに、強固に圧電素子7と振動板5,
6とが固定される方法を用いた場合には、プレス工程あ
るいはローラー工程は必要でない。
【0060】またここで、液体金属接着剤13の塗布を
安定させるために、上層の振動板6の上にさらに下地層
を設けてもよい。例えば、酸化シリコンなどを数10n
m設けることにより、塗布時に接着剤中に含まれる可能
性のある泡を減らすことも有効である。
【0061】次に、図16に示すように、液体金属接着
剤13の拡散合金化反応を終了させるまで室温あるいは
200℃以下の温度にて保持する。なおここで、上層の
振動板6として銅を主成分とする金属を用いた場合にお
いては、拡散合金化反応により、融点が300℃以上の
銅とガリウムの合金が徐々に生成される。さらに保持時
間を十分に設けた場合においては、液体金属が完全に固
体金属中に拡散し、全てが高融点の合金となり、圧電素
子と振動板が強固に接合される。このように、振動板5
の表面の領域においては合金層14が生成されるため、
圧電素子7と振動板5とが強固に固定されることにな
る。
【0062】次いで、図17に示すように、振動板5,
6上に固定された圧電素子7を回転ブレードによるダイ
シングにより切断する。ここで、切断を行うピッチは、
吐出ノズルに連通する圧力室の大きさに対応した圧電素
子7の大きさとなるように切断加工を行うこととする。
この圧電素子7の切断工程において、切断手段は、ダイ
シングの代わりにダイヤモンド粒子を含む砥石加工とす
ることが可能である。
【0063】切断を行うに際しては、圧電素子7は完全
に切断し、刃物の底が下層の振動板5までには至らない
ようにする。つまり、下層の振動板5の直前で切断を止
める。下層の振動板5の直前というのは、例えば上層の
振動板6を5〜10μm残す程度とする。
【0064】次に、図18に示すように、振動板5,6
に接合した圧電素子7を、上層の振動板6のみを溶解あ
るいはエッチングし、下層の振動板5および圧電素子7
は溶解あるいはエッチングしない溶液に浸す。すると、
切断されて残った圧電素子7をマスクとして、切断部分
に残された下層の振動板5以外の振動板6が除去され
る。この結果、切断部分に残された上層の振動板6が除
去され、底面には下層の振動板5が露出することにな
る。
【0065】ここで、上層の振動板6として銅を主成分
とする材料を用い、下層の振動板5として、ニッケルを
主成分とした材料を用いた場合においては、5〜40%
の塩化第2鉄水溶液に数分あるいは数10秒浸すことに
より、図18に示すごとく、切断されることにより残さ
れた圧電素子7をマスクとしてエッチングを行うことが
できる。このようにすることで、ダイシングによる振動
板の板厚誤差を無くすことができ、厚み精度の高い振動
板を得ることができる。
【0066】次に、図19に示すように、先の工程で得
られた圧電素子7と振動板5,6の接合体を、圧力室3
とインク供給路が形成された基台であるインク流路形成
部材12に接合する。接合するに際しては、圧電素子7
に相対向する位置に、圧力室3が対応するようにする。
そしてさらに、圧力室3に連通し、この圧力室3と対応
して設けられた吐出ノズル1を有してなるオリフィスプ
レート(図示は省略する)を圧力室3と対応する位置に
取り付ける。これにより、図1及び図2に示すプリント
ヘッドが完成する。
【0067】このようにして製造されたプリントヘッド
においては、先の方法で製造されたものと同一の効果が
得られることはもちろんのこと、次のような点において
有利である。すなわち、液体金属接着剤13として強固
な合金層14が存在するので、エポキシ等の樹脂系の接
着剤11を用いた場合に比較して、より高いバイモルフ
効果が得られることとなる。さらに、合金層14は、樹
脂系の接着剤11と比較して、変位を吸収し難いので、
より高く得られたバイモルフ効果を有効に圧力室3に伝
達することができる。すなわち、樹脂系の接着剤11を
用いた場合に比較して、圧電素子7に与える電圧を低く
しても、インクを吐出することができることとなる。
【0068】さらに、この場合には、接着層として加熱
処理を必要とすることなく室温状態を保った状態を継続
するのみであっても、強固な合金層14を形成すること
ができるので、圧電素子7を形成する材料との熱膨張率
が大きく異なる振動板の材料を選択したとしても、振動
板5,6あるいは圧電素子7にそり等を発生させること
がない。つまり、圧電素子7あるいは振動板5,6の材
料を選定する場合において、その自由度を高める効果が
得られることとなる。
【0069】なお、この例のプリントヘッドでは、基台
4に圧力室3を形成したが、振動板自体に圧力室3を形
成するようにしても構わない。すなわち、積層振動板と
して3層以上の構成を有する振動板を用い、そのうち最
下層の振動板にエッチング等の方法により圧力室を形成
し、これにオリフィスプレートを固着する等して構成す
るようにしても構わない。
【0070】実施の形態2 この例におけるプリントヘッドは、図20に示すよう
に、本圧電素子7とダミー圧電素子7を、圧力室3の列
方向Xのみならず、これに垂直な方向Yに対しても周期
的に配置したものである。
【0071】このプリントヘッドでは、図1及び図2に
示したプリントヘッドと同様の構成であり、圧電素子7
の配列のみが異なる。したがって、ここでは先の例のプ
リントヘッドと同じ部材には同一の符号を付し、異なる
部材には別の符号を付するものとし、同一部分の説明は
省略する。また、本例のプリントヘッドにおけるインク
吐出動作及び製造方法は、先のプリントヘッドと同じで
あるのでその説明は省略する。
【0072】このプリントヘッドは、図20に示すよう
に、中央に設けられるインク導入部9を幹として、この
インク導入部9から上下にそれぞれ分岐して設けられる
インク供給路8に接続される複数の圧力室3を有し、こ
の圧力室3と対向して設けられる本圧電素子7と、圧力
室3に対向しないダミー圧電素子7とが周期的に配列さ
れた構成とされている。
【0073】すなわち、図20中、インク導入部9を境
として上方に配列される本圧電素子7(同図中、斜線で
示す。)とダミー圧電素子7は、左から順に本圧電素子
7、ダミー圧電素子7、本圧電素子7、ダミー圧電素子
7と、交互に所定間隔をもって配列されている。一方、
インク導入部9を境として下方に配列される本圧電素子
7とダミー圧電素子7は、左から順にダミー圧電素子
7、本圧電素子7、ダミー圧電素子7、本圧電素子7
と、交互に所定間隔をもって配列されている。これを全
体から見ると、上方に配列される本圧電素子7の間に下
方に配列される本圧電素子7が位置するようにされた,
いわゆる千鳥状パターンとして配列されている。
【0074】これを逆の見方をすると、インク導入部9
を境として上方に配列されるノズル列aにおけるダミー
圧電素子7の長手方向の延長線上に、下方に配列される
ノズル列bにおける本圧電素子7が配置された形とされ
ている。
【0075】このように配列することにより、ノズル列
aに関する圧電素子の分割工程において、ノズル列bに
関する圧電素子の分割が同時に行うことが可能となる。
さらに、ノズル列a,bの吐出ノズル1は交互に配置さ
れているために、当該吐出ノズル1の高密度化がなされ
ることとなる。
【0076】なお、図21に示すように、ノズル列a,
bに関して圧力上昇に寄与する圧電素子列A,Bの他
に、圧力上昇に寄与しない圧電素子列X,Y,Zが存在
しても構わない。
【0077】この他、本圧電素子7とダミー圧電素子7
の配列としては、例えば図22に示すようなパターンが
考えられる。ここでは、インク導入部9からそれぞれ分
岐して設けられるインク供給路8に接続されてなる圧力
室3に対向して設けられる本圧電素子7と、圧力室3に
対向しないダミー圧電素子7を配列したノズル群を、縦
方向に3つ並べ、これら3つのノズル群の本圧電素子7
とダミー圧電素子7を、圧力室3の列方向Xと、これに
垂直な方向Yに対して周期的に配置したものである。
【0078】具体的には、図22中上段に位置するノズ
ル群の本圧電素子7とダミー圧電素子7は、左から順に
本圧電素子7、ダミー圧電素子7、ダミー圧電素子7、
本圧電素子7、ダミー圧電素子7、ダミー圧電素子7、
本圧電素子7と、2つおきに本圧電素子7が所定間隔を
もって配列されている。
【0079】一方、中段に位置するノズル群の本圧電素
子7とダミー圧電素子7は、左から順にダミー圧電素子
7、本圧電素子7、ダミー圧電素子7、ダミー圧電素子
7、本圧電素子7と、やはり2つおきに本圧電素子7が
所定間隔をもって配列されている。
【0080】そして、下段に位置するノズル群の本圧電
素子7とダミー圧電素子7は、左から順にダミー圧電素
子7、ダミー圧電素子7、本圧電素子7、ダミー圧電素
子7、ダミー圧電素子7、本圧電素子7と、やはり2つ
おきに本圧電素子7が所定間隔をもって配列されてい
る。
【0081】これを全体から見ると、上段に配列される
2つの本圧電素子7の間に、中段と下段にそれぞれ設け
られる本圧電素子7が互い違いとなるように配置され
た,いわゆる千鳥状パターンとして配列されている。
【0082】これを逆の見方をすると、上段と中段のノ
ズル列a、bにおけるダミー圧電素子7の長手方向の延
長線上に、下段に配列されるノズル列cにおける本圧電
素子7が配置されると共に、上段と下段のノズル列a、
cにおけるダミー圧電素子7の長手方向の延長線上に、
中段に配列されるノズル列bにおける本圧電素子7が配
置された形とされている。
【0083】このように配列することにより、ノズル列
aに関する圧電素子の分割工程において、ノズル列bお
よびノズル列cに関する圧電素子の分割が同時に行うこ
とが可能となる。さらに、ノズル列a,b,cの吐出ノ
ズル1は交互に配置されているために、当該吐出ノズル
1のさらなる高密度化がなされることとなる。
【0084】またこの他、図23に示すように、各ノズ
ル群の吐出ノズル1を千鳥状となすと共に、1つの圧力
室3に2つの本圧電素子7を配置するようにしてもよ
い。なお、上述の例ではノズル列の数を3列としたが、
4列以上としても同様に吐出ノズル1のさらなる高密度
化を図ることができる。
【0085】実施の形態3 ここでは、上述したプリントヘッドを実際に搭載したプ
リンタ装置について説明する。
【0086】プリントヘッドは、例えば図24に示すよ
うなシリアル型のプリンタ装置に搭載される。被印刷物
としてのプリント紙15は、ドラム軸方向に平行に設け
られた紙圧着ローラ16により、ドラム17に圧着保持
されている。そのドラム17の外周近傍には、送りネジ
18がドラム軸方向に平行に設けられている。そして、
この送りネジ18には、プリントヘッド19が保持され
ている。かかるプリントヘッド19は、送りネジ18の
回転によってドラム17の軸方向に移動するようになさ
れている。
【0087】一方、ドラム17は、プーリ20、ベルト
21、プーリ22を介してモータ23により回転駆動さ
れる。さらに、送りネジ18及びモータ23の回転とプ
リントヘッド19の駆動は、駆動制御部24により印画
データ及び制御信号25に基づいて駆動制御される。
【0088】上記の構成においては、プリントヘッド1
9が移動して1行分の印字を行うと、ドラム17を1行
分だけ回転させて次の印字を行う。プリントヘッド19
が移動し印画する場合は、一方向の場合と往復方向の場
合とがある。
【0089】図25は、ライン型の構成例である。この
場合は、図24に示すシリアル型のプリントヘッド19
及び送りネジ18の代わりに多数のヘッドがライン状に
配置されたラインヘッド26が軸方向に固定して設けら
れている。この構成では、ラインヘッド26で1行分の
印字が同時に行われ、印字が完了するとドラム17を1
行分だけ回転させて次の行の印字を行う。この場合、全
ラインを一括して印字したり、複数ブロックに分割した
り、1行おきに交互に印字する方法も考えられる。
【0090】図26には、印字及び制御系のブロック図
を示す。印字データなどの信号26は、信号処理制御回
路27に入力され、この信号処理制御回路27において
印字順番に揃えられて、ドライバ28を介してヘッド2
9に送られる。印字順番は、ヘッド29や印字部の構成
で異なり、また印字データの入力順番との関係もあり、
必要に応じてラインバッファメモリや1画面メモリなど
のメモリ30に一旦記録してから取り出す。ヘッド29
には、諧調信号や吐出信号を入力する。
【0091】なお、マルチヘッドでノズル数が非常に多
い場合には、ヘッド29にICを搭載して、当該ヘッド
29に接続する配線数を減らすようにする。また、信号
処理制御回路27には、補正回路31が接続されてお
り、γ補正、カラーの場合の色補正、各ヘッドのばらつ
き補正などを行う。
【0092】補正回路31には、予め決められた補正デ
ータをROMマップ形式で格納しておき、外部条件、例
えばノズル番号、温度、入力信号などに応じて取り出す
ようにするのが一般的である。信号処理制御回路27
は、CPUやDSP構成としてソフトウエアで処理する
ことが一般的であり、処理された信号は各種制御部32
に送られる。
【0093】各種制御部32では、ドラム17及び送り
ネジ18を回転駆動するモータの駆動、同期、ヘッド1
9,26のクリーニング、プリント紙15の供給、排出
などの制御を行う。また、信号には、印字データ以外の
操作部信号や外部制御信号が含まれることは言うまでも
ない。
【0094】
【発明の効果】以上の説明からも明かなように、本発明
によれば、バイモルフ効果を用いて、インクを吐出する
際に圧力室の圧力を高めるために必要な変位を得るにあ
たり、負荷として存在する振動板の薄板部分を、エッチ
ングあるいは溶解により形成し、さらに薄板部分の板厚
を規定できるため、この断面2次モーメントを規定する
ことができ、多数存在するノズルに対応して存在するイ
ンク室に対して、均一な圧力を発生させることができ
る。
【0095】すなわち、従来の薄板部分の形成をダイシ
ングのみにより行う従来の工程と比較して、薄板部分の
板厚制御の精度を高めることができ、結果的に高精度の
ダイシング装置を用いることなく、高精度の板厚管理を
行うことができる。つまり、本発明により、インク吐出
時の振動板を変位させる場合の負荷となる振動板の厚さ
を薄く、さらに安定に製造することが可能となるので、
圧力室の大きさを小さくすることが可能となり、当該圧
力室の配置密度を高めることができ、結果的に圧力室に
連通するノズル間隔を小さくすることができることとな
る。したがって本発明のプリンタ装置では、安価な単板
あるいは2層に積層された圧電素子を用いて、微細ピッ
チのノズル配置を実現することができることとなる。
【0096】また、本発明によれば、焼成された圧電素
子を用いることができるので、圧電材料の特性を十分に
発揮することができる。またさらに、振動板として3層
以上の材料よりなる振動板を用いることにより、圧力室
さらには吐出ノズルをもエッチングあるいは溶解工程に
より形成することができるので、圧力室さらには吐出ノ
ズルと圧電素子との位置合わせ精度を格段に向上させる
ことができ、結果的に振動板を変形させる場合におい
て、負荷として働く振動板の断面2次モーメントの値の
みでなく、振動板の変形がなされる長さまでも安定に形
成することができ、さらに吐出ノズルの形成も位置合わ
せ精度よく形成することができることとなる。
【0097】さらに、接着層として液体金属を用いた場
合においては、接着層に強固な合金が存在するので、高
いバイモルフ効果が得られることとなる。さらに、合金
層は樹脂系の接着剤と比較して、変位を吸収しにくいの
で、より高く得られたバイモルフ効果を有効に圧力室に
伝達することができる。すなわち、接着剤として樹脂系
の接着剤を用いた場合に比較して、圧電素子に与える電
圧を低くしても、インクを吐出することができることと
なる。
【0098】さらに、加熱処理を必要とすることなく室
温状態を保った状態を継続するのみであっても強固な合
金層を形成することができるので、圧電素子を形成する
材料との熱膨張率が大きく異なる振動板の材料を選択し
たとしても、振動板あるいは圧電素子にそりなどを発生
させることがない。つまり、圧電素子あるいは振動板の
材料を選定する場合においてその自由度を高める効果が
得られることとなる。
【0099】さらに、本発明によれば、振動板として導
電性の材質を用いることにより、圧電素子に電圧を与え
る場合において、振動板を共通電極とすることが可能と
なり、共通電極の端子を設ける場所の節約と端子数の省
略に効果を発揮することができる。
【0100】またさらに、本発明によれば、圧力室の圧
力付与に寄与する圧電素子と、圧力室の圧力付与に寄与
しない圧電素子とが、圧力室の配列方向に対して周期性
をもって配置されているので、基台との固着工程におい
て圧力の付与を容易にすることができると共に、圧電素
子の切断工程において切削抵抗の少ない幅の狭い刃を使
用することができ、切削条件を安定なものとすることが
できる。
【0101】さらに、複数のノズル列を有するプリンタ
装置においては、ノズル列が単列である場合と比較して
工程数をさほど増加させることなく、他のノズル列に関
する圧電素子の分割が同時に行え、ノズル列を増加させ
ることによるノズルの高密度化、多数化が容易に実現で
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用したプリントヘッドの横断面図で
ある。
【図2】本発明を適用したプリントヘッドの縦断面図で
ある。
【図3】本発明を適用したプリントヘッドの平面図であ
る。
【図4】本発明を適用したプリントヘッドのインク吐出
待機状態を示す断面図である。
【図5】本発明を適用したプリントヘッドのインク吐出
状態を示す断面図である。
【図6】本発明を適用したプリントヘッドの製造方法を
示すもので、振動板に圧電素子を接合する前の状態を示
す断面図である。
【図7】本発明を適用したプリントヘッドの製造方法を
示すもので、振動板に接着剤を塗布した状態を示す断面
図である。
【図8】本発明を適用したプリントヘッドの製造方法を
示すもので、振動板に圧電素子を接着した状態を示す断
面図である。
【図9】本発明を適用したプリントヘッドの製造方法を
示すもので、接着剤を熱硬化した状態を示す断面図であ
る。
【図10】本発明を適用したプリントヘッドの製造方法
を示すもので、圧電素子をダイシングした状態を示す断
面図である。
【図11】本発明を適用したプリントヘッドの製造方法
を示すもので、エッチングにより振動板の厚みを規定し
た状態を示す断面図である。
【図12】本発明を適用したプリントヘッドの製造方法
を示すもので、インク流路形成部材を接合した状態を示
す断面図である。
【図13】本発明を適用したプリントヘッドの他の製造
方法を示すもので、振動板に圧電素子を接合する前の状
態を示す断面図である。
【図14】本発明を適用したプリントヘッドの他の製造
方法を示すもので、振動板に液体金属接着剤を塗布した
状態を示す断面図である。
【図15】本発明を適用したプリントヘッドの他の製造
方法を示すもので、振動板に圧電素子を接着した状態を
示す断面図である。
【図16】本発明を適用したプリントヘッドの他の製造
方法を示すもので、液体金属接着剤の拡散合金化反応が
終了した状態を示す断面図である。
【図17】本発明を適用したプリントヘッドの他の製造
方法を示すもので、圧電素子をダイシングした状態を示
す断面図である。
【図18】本発明を適用したプリントヘッドの他の製造
方法を示すもので、エッチングにより振動板の厚みを規
定した状態を示す断面図である。
【図19】本発明を適用したプリントヘッドの他の製造
方法を示すもので、インク流路形成部材を接合した状態
を示す断面図である。
【図20】本発明を適用したプリントヘッドの他の例を
示す平面図である。
【図21】本発明を適用したプリントヘッドのさらに他
の例を示す平面図である。
【図22】本発明を適用したプリントヘッドのさらに他
の例を示す平面図である。
【図23】本発明を適用したプリントヘッドのさらに他
の例を示す平面図である。
【図24】シリアル型プリンタ装置の概略構成図であ
る。
【図25】ライン型プリンタ装置の概略構成図である。
【図26】制御系のブロック図である。
【図27】従来のプリントヘッドの縦断面図である。
【図28】従来のプリントヘッドの横断面図である。
【符号の説明】
1 吐出ノズル 3 圧力室 5,6 振動板 7 圧電素子 10 接着剤 13 液体金属接着剤 14 合金層

Claims (23)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 吐出ノズルを複数有してなるオリフィス
    プレートと、 この吐出ノズルに連通し、各吐出ノズルに対応して設け
    られた圧力室を有してなる基台と、 圧力室を全て覆うようにされる振動板と、圧電素子をマ
    スクとして除去されて当該圧電素子と略同一幅とされて
    なる振動板とからなる2層以上の積層振動板と、 この積層振動板上に配置される複数の圧電素子とを備
    え、 これら複数の圧電素子のうち、圧力室の圧力付与に寄与
    する圧電素子と、圧力室の圧力付与に寄与しない圧電素
    子とが、圧力室の配列方向に対して周期的に配置されて
    いることを特徴とするプリンタ装置。
  2. 【請求項2】 圧力室の圧力付与に寄与する圧電素子
    と、圧力室の圧力付与に寄与しない圧電素子が、交互に
    配置されていることを特徴とする請求項1記載のプリン
    タ装置。
  3. 【請求項3】 圧電素子は、単板のピエゾ素子であるこ
    とを特徴とする請求項1記載のプリンタ装置。
  4. 【請求項4】 2層以上よりなる積層振動板のうち、1
    層以上を金属材料としたことを特徴とする請求項1記載
    のプリンタ装置。
  5. 【請求項5】 2層以上よりなる積層振動板のうち、除
    去される振動板を、銅を主成分とする金属材料とするこ
    とを特徴とする請求項1記載のプリンタ装置。
  6. 【請求項6】 2層以上よりなる積層振動板のうち、圧
    力室を全て覆うようにされる振動板を、ニッケルを主成
    分とする金属材料とすることを特徴とする請求項1記載
    のプリンタ装置。
  7. 【請求項7】 2層以上よりなる積層振動板を、それぞ
    れ別個に圧延された素材を真空中における接合により形
    成した材料とすることを特徴とする請求項1記載のプリ
    ンタ装置。
  8. 【請求項8】 2層以上よりなる積層振動板と圧電素子
    との界面に、導電性の接着剤が配置されていることを特
    徴とする請求項1記載のプリンタ装置。
  9. 【請求項9】 2層以上よりなる積層振動板と圧電素子
    との界面に、ガリウムを成分として有する合金層が存在
    することを特徴とする請求項1記載のプリンタ装置。
  10. 【請求項10】 2層以上よりなる積層振動板と圧電素
    子との界面に、ガリウムと、インジウムあるいは錫のう
    ち1成分以上を成分として有する合金層が存在すること
    を特徴とする請求項1記載のプリンタ装置。
  11. 【請求項11】 2層以上よりなる積層振動板と圧電素
    子との界面に、ガリウムと、銅、銀、金、パラジウムの
    うち1成分以上を成分として有する合金層が存在するこ
    とを特徴とする請求項1記載のプリンタ装置。
  12. 【請求項12】 2層以上よりなる積層振動板と圧電素
    子との界面に、酸化物よりなるアモルファス層が形成さ
    れていることを特徴とする請求項1記載のプリンタ装
    置。
  13. 【請求項13】 吐出ノズルが2列以上に複数配置され
    たオリフィスプレートと、 この吐出ノズルに連通し、各吐出ノズルに対応して2列
    以上に配列して設けられた圧力室を有してなる基台と、 圧力室を全て覆うようにされる振動板と、圧電素子をマ
    スクとして除去されて当該圧電素子と略同一幅とされて
    なる振動板とからなる2層以上の積層振動板と、 この積層振動板上に所定間隔で配置される複数の圧電素
    子とを備え、 これら複数の圧電素子のうち、圧力室の圧力付与に寄与
    する圧電素子と、圧力室の圧力付与に寄与しない圧電素
    子とが、当該圧力室の列方向と、これに垂直な方向に対
    して周期的に配置されていることを特徴とするプリンタ
    装置。
  14. 【請求項14】 圧電素子は、単板のピエゾ素子である
    ことを特徴とする請求項13記載のプリンタ装置。
  15. 【請求項15】 2層以上よりなる積層振動板のうち、
    1層以上を金属材料としたことを特徴とする請求項13
    記載のプリンタ装置。
  16. 【請求項16】 2層以上よりなる積層振動板のうち、
    除去される振動板を、銅を主成分とする金属材料とする
    ことを特徴とする請求項13記載のプリンタ装置。
  17. 【請求項17】 2層以上よりなる積層振動板のうち、
    圧力室を全て覆うようにされる振動板を、ニッケルを主
    成分とする金属材料とすることを特徴とする請求項13
    記載のプリンタ装置。
  18. 【請求項18】 2層以上よりなる積層振動板を、それ
    ぞれ別個に圧延された素材を真空中における接合により
    形成した材料とすることを特徴とする請求項13記載の
    プリンタ装置。
  19. 【請求項19】 2層以上よりなる積層振動板と圧電素
    子との界面に、導電性の接着剤が配置されていることを
    特徴とする請求項13記載のプリンタ装置。
  20. 【請求項20】 2層以上よりなる積層振動板と圧電素
    子との界面に、ガリウムを成分として有する合金層が存
    在することを特徴とする請求項13記載のプリンタ装
    置。
  21. 【請求項21】 2層以上よりなる積層振動板と圧電素
    子との界面に、ガリウムと、インジウムあるいは錫のう
    ち1成分以上を成分として有する合金層が存在すること
    を特徴とする請求項13記載のプリンタ装置。
  22. 【請求項22】 2層以上よりなる積層振動板と圧電素
    子との界面に、ガリウムと、銅、銀、金、パラジウムの
    うち1成分以上を成分として有する合金層が存在するこ
    とを特徴とする請求項13記載のプリンタ装置。
  23. 【請求項23】 2層以上よりなる積層振動板と圧電素
    子との界面に、酸化物よりなるアモルファス層が形成さ
    れていることを特徴とする請求項13記載のプリンタ装
    置。
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