JPH09328858A - 床振動減衰器およびそれを備えた鋼製床構造 - Google Patents

床振動減衰器およびそれを備えた鋼製床構造

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JPH09328858A
JPH09328858A JP14693596A JP14693596A JPH09328858A JP H09328858 A JPH09328858 A JP H09328858A JP 14693596 A JP14693596 A JP 14693596A JP 14693596 A JP14693596 A JP 14693596A JP H09328858 A JPH09328858 A JP H09328858A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 人の飛び跳ねや走行などの衝撃によって生じ
る床面の鉛直方向の衝撃振動を速やかに低減し得る床振
動減衰器およびそれを備えた鋼製床構造を提供する。 【解決手段】 鋼製床構造の鋼製部材3に、錘7と粘弾
性体6とからなる床振動減衰器5をその積層方向が振動
方向に一致するように鉛直方向に取り付けて、床板の振
動を低減する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、人の飛び跳ねや走
行などの衝撃によって生じる床面の鉛直方向の衝撃振動
を速やかに低減し得る床振動減衰器およびそれを備えた
鋼製床構造に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、床板を支持する根太部材は振動減
衰の大きい木質系材料が多く用いられ、適当な断面剛性
を持つ材料を使用すれば、振動による不快感は問題とさ
れていなかった。ところが、木質系材料では乾燥収縮に
より部材間に隙間が生じてきしみ音の原因となったり、
節などの存在で品質にばらつきが大きいこと、梁に鋼製
材料を用いる工業化住宅では梁と木製根太との接合に工
夫を要することなどから、床材の支持に鋼製材料を用い
ることが求められている。
【0003】通常の鋼製材料は振動減衰が小さいことが
難点であり、これを解決する手段としてたとえば特開平
5−302643号公報には、図10に示したように、複数の板
バネ21を粘弾性体により層状に接合するとともに、端部
に錘22を取り付けた動吸振器23を鋼製枠(または鋼製
桟)24に固定し、床パネルの振動を低減する手段が開示
されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
特開平5−302643号の場合は、板バネ21に接合された粘
弾性体の物性を一定に保つ必要があり、特別な装置によ
って製造しないかぎり、安価に板バネ21と粘弾性体との
複合体を得ることが困難であり、板バネ21と錘22などの
接合工程も必要で、総合的に動吸振器23の製作には高い
コストとなる欠点があった。
【0005】本発明は、上記のような従来技術の有する
課題を解決すべくなされたものであって、製作費が安価
で、鋼製材料によって支持された床板の振動を低減し得
る床振動減衰器およびそれを備えた鋼製床構造を提供す
ることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】減衰が起こりにくい一質
点系の主構造物に、比較的減衰定数が大きいバネと質量
が比較的小さい錘からなる動吸振器を取り付けて二質点
系の構造とすると、もとの主構造物の振動振幅が早期に
減衰することが知られている。本発明はこの現象に着目
し、減衰が起こりにくい鋼製材料を床支持材に用いて主
構造物とした場合でも、減衰定数が大きいゴムなどの粘
弾性体と鋼の錘など簡単で安価な材料からなる制振器を
床材または床支持部材に取り付けることで、床面の振動
を早期に減衰させることが可能となる。
【0007】すなわち、本発明の床振動減衰器は、鋼製
床板とこの床板を支持する鋼製部材とからなる鋼製床構
造に取り付けられる床振動減衰器であって、前記鋼製部
材に、錘と粘弾性体とをその積層方向が振動方向に一致
するように直列に取り付けてなることを特徴とする。な
お、前記錘および粘弾性体系の固有振動数が、前記床板
の固有振動数の0.7〜1.0 倍の範囲になるように前記錘
の重量と前記粘弾性体のバネ定数を決定するのがよい。
【0008】また、本発明の鋼製床構造は、鋼製床板と
この床板を支持する鋼製部材とからなり、前記鋼製部材
に上下2段の水平フランジを有するC形鋼または溝形鋼
を用い、その両フランジ間の空間に錘と粘弾性体とから
なる床振動減衰器を装着して構成することを特徴とす
る。なお、前記両フランジ間に鋼棒を差し渡し、前記床
振動減衰器の錘と粘弾性体に貫通穴を設け、該貫通穴に
前記鋼棒を貫通させて取り付けるのがよく、また、前記
鋼製部材に山谷を有する波形状鋼板を用いることもでき
る。
【0009】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の好適な実施の形
態について、図面を参照して詳しく説明する。図1は本
発明の一実施例に係る住宅用床パネルを示す斜視図であ
り、図2は同床パネルへの床振動減衰器の取り付け状態
を示す斜視図、図3は本発明の床振動減衰器の一例を示
す側面図である。
【0010】これらの図において、1は鋼製枠2の上に
根太とされるC形鋼の鋼製部材3と床板4とからなる鋼
製床パネルである。5は鋼製部材3の上下の水平フラン
ジ間に取り付けられる床振動減衰器で、下水平フランジ
の上にゴムなどの粘弾性体6と錘7が載置され、振動方
向に一致するように鉛直方向に積層して取り付けて構成
される。なお、下水平フランジと粘弾性体6、粘弾性体
6と錘7とは接着剤(または粘着剤)8でそれぞれ接合
される。
【0011】このように構成することにより、床面に加
わる衝撃は以下のようにして速やかに減衰される。すな
わち、鋼製部材3および床板4の鉛直方向の変位、有効
質量、等価バネ定数、減衰定数をそれぞれx1 ,m1
1 ,h1 とし、粘弾性体6と錘7の鉛直方向の変位、
有効質量、等価バネ定数、減衰定数をそれぞれx2 ,m
2 ,k2 ,h2 とすると、F(t) なる加振力が作用した
ときの振動方程式は、床面のみの場合は(1) 式で、また
床面および錘を複合させた場合は(2a), (2b)式で表すこ
とができる。
【0012】
【数1】
【0013】そして、m2 /m1 =0.09、√(k1 /m
1)=140(1/秒) 、h1 =0.06、h2=0.20として、錘、
粘弾性体系の固有振動数n2 と床面のみの固有振動数n
1 との比n2 /n1 を0.5 〜1.2 に変化させて、上記式
を解くと、衝撃振動が加わってから所定の時間t0 秒後
の変位振幅は表1のようになる。なお、n1 およびn 2
は下記の(3) , (4) 式で表されるものとする。
【0014】 n1 =(1/2π) √ (k1/m1) ………………(3) n2 =(1/2π) √ (k2/m2) ………………(4)
【0015】
【表1】
【0016】そこで、錘7を取り付る粘弾性体6のバネ
定数すなわち錘、粘弾性体系の固有振動数を適切に設定
した床振動減衰器5を取り付けることにより、床面のみ
の場合のt0 秒後の変位振幅を1/20程度にまで低減さ
せることが可能となる。また、錘、粘弾性体系の固有振
動数n2 を床面のみの固有振動数n1 の0.7 倍から1.0
倍とすると、もっとも効果的に減少させることができ
る。
【0017】なお、上記実施例では、床板4の根太とさ
れる鋼製部材3にC形鋼を使用するとして説明したが、
本発明はこれに限るものではなく、たとえば図4(a) に
示すように溝形鋼3Aを用いてもよく、あるいは図4
(b) ,(c) に示すように山谷を有する波形状のデッキプ
レート3Bを用いるようにしてもよい。なお、図4(c)
中の3Cはデッキプレート取付板である。
【0018】一方、床振動減衰器5の取り付けの仕方に
ついては、図5(a) ,(b) に示すように、鋼製部材3の
上下の水平フランジ3a,3bの間に粘弾性体6を2個
用いてその間に錘7を挿着するようにすれば、特に接着
剤8で接合する必要がない。図6(a) ,(b) はデッキプ
レート3Bに適用した場合を示したもので、同様に構成
することができる。
【0019】また、図7(a) ,(b) に示すように、上下
の水平フランジの間に鋼棒9を差し渡し、一方粘弾性体
6および錘7に貫通穴を設け、この貫通穴に鋼棒9を貫
通させて取り付けるようにすれば、床振動減衰器5の振
動を鉛直方向のみに限ることができ、より効果的な制振
効果を得ることができる。
【0020】
【実施例】図8に示す鋼製枠2の上に波形状のデッキプ
レート3Bと床板4とを配置した鋼製床パネル1に、本
発明の床振動減衰器5を前出図4(b) に示したように、
床パネルの中心位置に1個取り付けて振動実験を行っ
た。このとき用いた鋼製床パネル1の寸法は、鋼製枠長
さ:3640mm,デッキプレート長さ:1820mmで、その特性
はm1 =0.15 kgf・(sec)2/cm ,k1 =3500kgf/cm,h
1 =0.06程度である。また、用いられた床振動減衰器5
の特性は、m2 =0.01 kgf・(sec)2/cm ,k2=140kgf/
cm ,h2 =0.15程度とした。
【0021】そして、この鋼製床パネル1に鉛直方向に
ピーク加振力 65kgf,15Hz,半波の加振力F(t) を加え
て所定時間ごとの変位振幅を測定した結果を図9に実線
で示した。この図からわかるように、所定時間t0 (1
秒以下)後の変位振幅が20μm 程度であった。なお、比
較例として、床振動減衰器5を取り付けない状態の同じ
鋼製床パネル1に、同じ条件の加振力F(t) を加えた結
果は、同図に点線で示したように、所定時間t0 後の変
位振幅は40μm 程度であった。
【0022】これらの結果からわかるように、本発明の
床振動減衰器5を取り付けた場合の変位振幅は、床振動
減衰器5を取り付けなかった場合に比べてほぼ半減して
おり、その効果は明らかである。なお、本発明の床振動
減衰器5の取り付け個数については、鋼製床パネル1の
寸法によっても異なるが、1または2個あれば十分であ
る。実施例の床構成材の寸法諸元では、床パネルの振動
は鋼製枠の振動が大部分であり、鋼製枠の中央、デッキ
プレート中央位置に1個、または2本の鋼製枠の中央に
1個ずつ取り付ければ十分な効果が期待できる。
【0023】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
錘と粘性弾性体とを組み合わせた床振動減衰器を鋼製床
パネルに取り付けるようにしたので、安価な製作費で、
かつ高い制振効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る住宅用床パネルを示す
斜視図である。
【図2】本発明の床振動減衰器の取り付け状態を示す斜
視図である。
【図3】本発明の床振動減衰器の一例を示す側面図であ
る。
【図4】(a) 〜(c) は本発明の床振動減衰器の取り付け
状態の別の例を示す側面図である。
【図5】(a) ,(b) は本発明の床振動減衰器の他の構成
を示す側面図である。
【図6】(a) ,(b) は本発明の床振動減衰器の他の構成
を示す側面図である。
【図7】(a) ,(b) は本発明の床振動減衰器の他の構成
を示す側面図である。
【図8】本発明の床振動減衰器の適用に係る住宅用床パ
ネルを示す斜視図である。
【図9】本発明の床振動減衰器の振動実験の結果を示す
特性図である。
【図10】従来例を示す側面図である。
【符号の説明】
1 鋼製床パネル(鋼製床構造) 2 鋼製枠 3 鋼製部材 3A 溝形鋼 3B デッキプレート(波形状鋼板) 4 床板 5 床振動減衰器 6 粘弾性体 7 錘 8 接着剤 9 鋼棒

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼製床板とこの床板を支持する鋼製部材
    とからなる鋼製床構造に取り付けられる床振動減衰器で
    あって、 前記鋼製部材に、錘と粘弾性体とをその積層方向が振動
    方向に一致するように直列に取り付けてなることを特徴
    とする床振動減衰器。
  2. 【請求項2】 前記錘および粘弾性体系の固有振動数
    が、前記床板の固有振動数の0.7 〜1.0 倍の範囲になる
    ように前記錘の重量と前記粘弾性体のばね定数を決定し
    たことを特徴とする請求項1に記載の床振動減衰器。
  3. 【請求項3】 鋼製床板とこの床板を支持する鋼製部材
    とからなる鋼製床構造であって、前記鋼製部材に上下2
    段の水平フランジを有するC形鋼または溝形鋼を用い、
    その両フランジ間の空間に錘と粘弾性体からなる床振動
    減衰器を装着してなることを特徴とする鋼製床構造。
  4. 【請求項4】 前記両フランジ間に鋼棒を差し渡し、前
    記床振動減衰器の錘と粘弾性体に貫通穴を設け、該貫通
    穴に前記鋼棒を貫通させて取り付けてなることを特徴と
    する請求項3記載の鋼製床構造。
  5. 【請求項5】 前記鋼製部材に山谷を有する波形状鋼板
    を用いることを特徴とする請求項3または4に記載の鋼
    製床構造。
  6. 【請求項6】 前記床振動減衰器の固有振動数が前記床
    板の固有振動数の0.7 〜1.0 倍の範囲であることを特徴
    とする請求項3ないし5のいずれかに記載の鋼製床構
    造。
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