JPH09328432A - スプレー剤 - Google Patents

スプレー剤

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JPH09328432A
JPH09328432A JP14393796A JP14393796A JPH09328432A JP H09328432 A JPH09328432 A JP H09328432A JP 14393796 A JP14393796 A JP 14393796A JP 14393796 A JP14393796 A JP 14393796A JP H09328432 A JPH09328432 A JP H09328432A
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chitin
spray
propellant
acid
agent
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JP14393796A
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English (en)
Inventor
Akihiko Hasegawa
明彦 長谷川
Keiji Okada
圭史 岡田
Masaya Yoshimura
昌也 吉村
Nobuyuki Tanimoto
信行 谷本
Ryoichi Tsuruya
良一 鶴谷
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Unitika Ltd
Original Assignee
Unitika Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 迅速な止血が要求される出血、各種皮膚疾患
及び皮膚欠損等に対し、簡易に適用でき、優れた止血効
果、抗炎症効果及び創傷治癒効果を示すスプレー剤を提
供する。 【解決手段】 キチンと噴射剤をエアゾール容器に収納
してなるスプレー剤。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はスプレー剤に関する
ものであり、さらに詳しくは、切創、擦過創、剥削創、
削皮創等の外傷、各種皮膚疾患、手術等による出血部位
及び創部に対して、優れた止血効果、抗炎症効果及び創
傷治癒効果を有するスプレー剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】本発明者等は、既にキチン繊維を不織布
状に加工した創傷被覆保護材(商品名:ベスキチンW)
を開発しており、この保護材は熱傷や採皮創等の皮膚欠
損創の治療に広く用いられている。ベスキチンWの臨床
報告では、その特徴として良好な鎮痛効果及び密着性、
良好な表皮形成効果及び肉芽形成効果、止血効果、炎症
の低減及び創傷治癒効果を有することが報告されてい
る。すなわち、ベスキチンWを被覆した創面では出血も
なく良好な治癒が達成される。また、本発明者等は既に
脱アセチル化キチンを塩酸塩化した止血剤を開発してい
る(特開昭63−211232号公報)。この止血剤は、ピンセ
ット等に付着し難く、操作が容易であり、出血部位に対
して強い付着力を有し、迅速に止血することができ、優
れた止血効果を有するので、結紮又は通常の止血操作に
よる止血が困難又は無効な場合の止血に広く用いられて
いる。このように、キチンは止血効果、抗炎症効果及び
創傷治癒効果を有することが確認されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ベスキ
チンW及び上記止血剤は単位量ずつ滅菌包装されてお
り、また包装単位が限定されているため、必要量を無駄
なく簡易な操作で適用することが困難であり、迅速な処
置が重要な外傷治療や手術時の使用に際しては、必ずし
も十分なものではなかった。また、傷口の洗浄、消毒、
化膿防止を目的とする、抗生物質、局所麻酔薬等を含有
したスプレー剤が開発されているが、キチンを含有した
スプレー剤や、止血効果、抗炎症作用、創傷治癒効果を
総合的に兼ね備えたスプレー剤は存在しなかった。本発
明は、迅速な止血が要求される出血、各種皮膚疾患及び
皮膚欠損等に対し、簡易に適用でき、優れた止血効果、
抗炎症効果及び創傷治癒効果を示すスプレー剤を提供す
ることを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記課題
を解決するために鋭意検討を重ねた結果、キチンと噴射
剤をエアゾール容器に封入したものが、上記目的を達成
することを見いだし、本発明に到達した。すなわち、本
発明は、キチンと噴射剤をエアゾール容器に収納してな
るスプレー剤を要旨とするものである。
【0005】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
本発明におけるキチンとは、甲殻類又は甲虫類等の外骨
格、イカの甲、あるいはカビ・キノコ等菌類の細胞壁を
塩酸並びに苛性ソーダ等で処理することにより脱石灰、
脱蛋白等されて得られるポリ−N−アセチル−D−グル
コサミン又はその誘導体をいう。誘導体としては、脱ア
セチル化キチン又はキトサン、さらには、ポリ−N−ア
セチル−D−グルコサミン、脱アセチル化キチン又はキ
トサンのグルコサミン残基のアミノ基、−OH基、また
は−CH2 OH基がアルキル化、サクシニル化、ヒドロ
キシアルキル化、アルキルカルボニル化、ヒドロキシア
ルキルカルボニル化されたものが含まれる。またキチン
の脱アセチル化されたアミノ基が有機酸や無機酸と塩を
形成しているものも含まれる。本発明のスプレー剤は有
効成分として上記のキチンを1種又は2種以上含有させ
てもよい。
【0006】キチンの脱アセチル化はキチンをアルカリ
処理するという周知の方法により行うことができる。こ
の際、使用するアルカリ濃度、処理温度、処理時間等を
適宜変えることにより脱アセチル化度を容易に調整する
ことが可能である。本発明のスプレー剤に含有されるキ
チンは、脱アセチル化度が0%〜90%のものが好まし
い。また、スプレー剤に含有させるキチンとしては、異
なる脱アセチル化度を有するキチンを2種以上含有させ
てもよい。
【0007】ここで、脱アセチル化度とは以下に示す方
法で測定した値をいう。
【0008】試料約2gを2N−塩酸水溶液 200ml中に
投入し、室温で30分間撹拌する。次に、ガラスフィルタ
ーで濾過し、塩酸水溶液を除去した後、 200mlのメタノ
ール中に投入して30分間撹拌し、ガラスフィルターで濾
過後、フレッシュなメタノール 200ml中に投入し、30分
間撹拌する。このメタノールによる洗浄操作を4回繰り
返した後、風乾及び真空乾燥する。乾燥後、約0.2gを精
秤し、 100mlの三角フラスコに取り、イオン交換水40ml
を加えて30分間撹拌する。次いで、この溶液をフェノー
ルフタレインを指示薬として0.1 N−苛性ソーダ水溶液
で中和滴定する。脱アセチル化度(A)は次式によって
求められる。
【0009】A(%)=〔(2.03×f×b×10-2)/
(a+0.055 ×f×b×10-2)〕×100
【0010】ただし、aは試料の重量(g)、fは0.1
N−苛性ソーダ水溶液の力価、bは0.1 N−苛性ソーダ
水溶液の滴定量(ml)である。
【0011】本発明に用いるキチンの無機酸塩として
は、塩酸、リン酸、硫酸、硝酸等の酸類と塩を形成して
いるものが挙げられるが、特にこれらに限定されるもの
ではない。このようなキチンの無機酸塩を形成する方法
としては、例えば、キチンを酸で処理して塩にする方法
や、塩化水素等のガスに暴露する方法等が挙げられる。
キチンを酸で処理して塩にするには、例えば、キチンを
0.1〜10Nの酸に浸漬した後、濾過を行い、余分な酸を
除去した後、メタノールやエタノール等のアルコール類
で洗浄し、乾燥させればよい。
【0012】本発明に用いるキチンの有機酸塩として
は、酢酸、コハク酸、リンゴ酸、乳酸、酪酸、フマル
酸、マロン酸、イタコン酸、グルコン酸等の有機酸と塩
を形成しているものが挙げられるが、特にこれらに限定
されるものではない。これらのうち、酢酸、乳酸、酪酸
を塩とするキチンの有機酸塩又はキチン誘導体の有機酸
塩は、出血部位に対する付着力が特に強く、また、酢
酸、乳酸、酪酸は常温で液体であるので、キチンやキチ
ン誘導体を有機酸塩化処理した後の過剰の有機酸の洗浄
除去操作が容易であり、特に好ましい。
【0013】本発明に用いるキチンの有機酸塩を調製す
るには、キチン又はキチンの誘導体を上記の有機酸で処
理することにより得ることができる。例えば酢酸塩を作
製するには、キチン又はキチン誘導体を3〜10Nの酢酸
水溶液に浸漬し撹拌した後、濾過を行い、余分な酢酸を
除去した後、エタノールやメタノール等のアルコール類
で洗浄、乾燥することにより作製することができ、ま
た、乳酸塩を作製するには、キチン又はキチン誘導体を
5〜10Nの乳酸水溶液に浸漬し撹拌した後、濾過を行
い、余分な乳酸を除去した後、エタノールやメタノール
等のアルコール類で洗浄、乾燥することにより作製する
ことができ、さらに、酪酸塩を作製するにはキチン又は
キチン誘導体を4〜10Nの酪酸水溶液に浸漬し撹拌した
後、濾過を行い、余分な酪酸を除去した後、エタノール
やメタノール等のアルコール類で洗浄、乾燥することに
よって作製することができる。
【0014】本発明のスプレー剤は、キチンと噴射剤
(液体又は粉末を噴出させるために必要な蒸気圧を持つ
高圧の液化ガス又は圧縮ガス)を噴射用のノズルを有す
る耐圧容器に充填したものである。
【0015】本発明のスプレー剤に含まれるキチンの形
態としては、特に限定されるものではないが、患部に適
用する際の分散性、噴射口の通過性等を考慮すると、粉
末、顆粒、ビーズ、繊維を微細にしたもの等が好まし
い。
【0016】本発明のスプレー剤に含まれるキチンの大
きさは創傷の種類や症状により適宜調整すればよいが、
一般には1〜 500メッシュ通過、好ましくは30〜 300メ
ッシュ通過、さらに好ましくは100 〜250 メッシュ通過
である。このような粒度のキチンは、粉砕等の既知の方
法で調製することができる。キチンの粒度を調整する工
程は、脱アセチル化の前でも後でもよく、また、酸の塩
作製の前でも後でもよい。
【0017】本発明のスプレー剤は、乳化、懸濁化、分
散を目的として、保湿剤、界面活性剤、増粘添着剤等を
添加してもよい。保湿剤としては、例えば、マクロゴー
ル(ポリエチレングリコール)、ポリビニルアルコー
ル、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトー
ル、グリセリンモノステアリルエーテル、ステアリン酸
モノエタノールアミド等が挙げられる。界面活性剤とし
ては、例えば、アルキルスルホン化物、アルキルアリル
スルホン化物、アミドスルホン化物等のアニオン性活性
剤、ソルビタンモノラウレート(Span 20 )、ソルビタ
ンモノオレート(Span 80 )、ソルビタンモノパルミテ
ート(Span 40 )、ソルビタンモノステアレート(Span
60 )、ソルビタントリオレート(Span 85 )、ポリオ
キシエチレンソルビタンモノラウレート(Tween20)、
ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート(Tween 8
0)、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート
(Tween 40)、ポリオキシエチレンソルビタンモノステ
アレート(Tween 60)、ポリオキシエチレンソルビタン
トリオレート(Tween 85)、多価アルコールエステル、
ポリエチレングリコールエステル等の非イオン系活性
剤、テゴ等の両性活性剤、カチオン性活性剤等が挙げら
れる。増粘添着剤としては、例えば、ポリビニルアルコ
ール、カルボキシメチルセルロース、ペクチン、アルギ
ン酸ナトリウム等が挙げられる。また、噴霧液が泡状に
なるステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸のナトリウ
ム塩又はカリウム塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の発泡
剤を混合してもよい。さらに、必要に応じて適宜、カン
フル、ユーカリ油、ハッカ油等の植物性香料、シンナミ
ルアルコール等のアルコール類、ベンジルアセテート等
のエステル類、ヒドロキシシトロネラール等のアルデヒ
ド類、イオノン等のケトン類等の合成香料を加えてもよ
い。
【0018】本発明のスプレー剤は、所定量のキチンを
各種添加剤と共に無菌下でエアゾール容器に入れ、次い
でエアゾール容器にバルブ部分を通じ噴射剤を加圧充填
することにより調製すればよい。キチンや各種添加剤及
び噴射剤は滅菌及び殺菌を行うことが望ましい。滅菌及
び殺菌は、容器に充填する前にあらかじめ、又は製造工
程中に適宜実施すればよい。滅菌及び殺菌にはエチレン
オキサイドガス等によるガス滅菌、無菌水による洗浄、
紫外線、ガンマ線、電子線を照射する方法等が挙げら
れ、これらの方法を単独、又は適宜組み合わせて用いれ
ばよい。
【0019】キチンと噴射剤の混合率は特に制限される
ものではないが、重量比で1:2〜1:500 が好まし
い。キチンや各種添加剤及び噴射剤をエアゾール容器に
充填する際、好ましくは25℃における内圧が0.5 〜5kg
(ゲージ圧)になるように充填すればよい。
【0020】噴射剤としては、特に限定はないが、エア
ゾール用噴射剤等を用いればよい。噴射剤の例として
は、ジクロロジフルオロエタン、モノクロロジフルオロ
メタン、モノクロロジフルオロエタン、ジフルオロエタ
ン、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン、1,1,
1,2−テトラフルオロエタン、ジクロロジフルオロメ
タン、ジクロロテトラフルオロエタン、モノクロロペン
タフルオロエタン、ジフルオロエタンとジクロロフルオ
ロメタンの共沸混合物、モノクロロジフルオロメタンと
モノクロロペンタフロロエタンの共沸混合物等のフロン
類、プロパン、ブタン、イソブタン等の飽和脂肪族低級
炭化水素、ジメチルエーテル、液化石油ガス、塩化ビニ
ルガス、クロールメチルガス、炭酸ガス、亜酸化窒素、
窒素、アルゴン及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0021】噴射剤のうち、液化ガス等のように、加圧
下の容器内で液体であるものを用いると、大気中で急速
に蒸発する際に奪う蒸発潜熱により、噴射された表面が
冷却される。このことにより、出血部表面の血管が収縮
し、止血及び抗炎症効果が一層増強されるという付随的
な効果も期待できる。
【0022】本発明のスプレー剤のエアゾール容器の材
質は、金属、ガラス、プラスチック等、一般にエアゾー
ル容器として用いられるものならばいかなるものでも用
いることができる。金属としては鉄、アルミニウム、ブ
リキ、ステンレススチール等、プラスチックとしては、
メラミン、ナイロン、ポリアセタール、ポリスチレン、
ポリ塩化ビニリデン、ポリプロピレン、高密度ポリエチ
レン、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリ
エチレンテレフタレート等が挙げられる。また、上記材
質の表面をナイロン、ポリエチレン、ポリエステル、ポ
リプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカ
ーボネート、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレ
フタレート等のフィルムでコーティングしてもよい。
【0023】本発明のスプレー剤は、患部に散布するこ
とにより、止血効果、抗炎症効果及び創傷治癒効果を示
す。擦過傷等、表皮の損傷で比較的浅い創面に本発明の
スプレー剤を散布した場合は、スプレー剤の散布のみで
患部を放置しておいてもよい。採皮創や熱傷の創面の場
合は、本発明のスプレー剤を散布した上から局方ガー
ゼ、抗菌剤含有ガーゼ(商品名:ソフラチュール)等の
抗菌剤含有ワセリンガーゼ、キチン不織布(商品名:ベ
スキチンW)等の被覆材で被覆し、包帯等で固定すれば
よい。また、絆創膏による固定を行うこともできる。止
血に用いる場合は、出血部を覆うように一様な厚さで本
発明のスプレー剤を散布して止血が確認された後、洗浄
して除去するとよい。いずれの場合も、創部の状況に応
じて追加して散布してもよい。
【0024】本発明のスプレー剤は、薬剤をエアゾール
容器に収納したものであるが、このように容器に収納し
たことにより、有効成分が密封され、気密に保持されて
おり、容器内に存在する酸素も極めて微量であるため、
保存中に酸化されたり、湿気、光線等に暴露されて品質
を劣化させることがない。また、保存中に溶剤が蒸発し
て乾燥することがないので、好適であり、さらに、殺菌
して封入することにより、使用し終わるまでの期間中、
細菌汚染の心配がない。また、エアゾール製品では不活
性の噴射剤が空気と置換しているので変質、変色の心配
がない。さらに、密封されているので容器の転倒等によ
り中身がこぼれることがないので無駄を生じない。さら
にまた、携帯に便利であり、直接患部に手や器具を触れ
ることなく散布できるため、細菌二次感染の心配がな
い。患部への散布は容易であり、目的の場所に確実に投
与できるものである。
【0025】本発明のスプレー剤は、外傷及び手術後の
創傷治癒促進及び止血、皮膚疾患の治療のために、上記
の出血部位や創部に投与すると、迅速な止血を行うこと
ができ、疼痛を抑え、皮膚の欠損に対しては早期の上皮
化を達成し、スムーズな治癒に導く。
【0026】
【実施例】次に、本発明を実施例によって具体的に説明
する。
【0027】実施例1、比較例1 (剥削創への適用)粗キチン粉末(三栄工業社製、 150
メッシュ)を1N−塩酸にて4℃、1時間処理し、さら
に3%苛性ソーダ水溶液中で90℃、3時間加熱処理し
て、粗キチン粉末中に含まれているカルシウム分及びタ
ンパク質を除去した。このキチン粉末の脱アセチル化度
は 5.2%であった。次に、この脱アセチル化キチンを、
30%苛性ソーダ水溶液中で80℃、3時間加熱処理し、再
び脱アセチル化し、次いで水洗を繰り返した後、乾燥し
て脱アセチル化度が71.2%の脱アセチル化キチン(以
下、DAc71 と略す)を得た。また、上記脱アセチル化度
5.2%の脱アセチル化キチンを、20%苛性ソーダ水溶液
中で80℃、3時間加熱処理し、再脱アセチル化し、次い
で水洗を繰り返した後、乾燥して脱アセチル化度が45.0
%の脱アセチル化キチン(以下、DAc45 と略す)を得
た。得られた2種類の脱アセチル化キチン粉末各10gを
各々1リットルの2N−塩酸に浸漬し、20℃で30分間処
理した。処理後、吸引式濾過ビンで余分の塩酸を除去し
た後、約25℃のメタノールを用いて20分間の洗浄を3回
繰り返した後、乾燥し、DAc71 塩酸塩とDAc45 塩酸塩の
粉末を得た。得られたDAc71 塩酸塩、DAc45 塩酸塩の粉
末をエチレンオキサイドガスにより1.5時間滅菌した
後、同様に滅菌したジエチルエーテルに、DAc71 塩酸塩
が2重量%、DAc45 塩酸塩が2重量%となるように無菌
下で混合し、外径が45mmで円筒部分の長さが 110mmのガ
ラス製容器に圧力が 2.4kg/cm2(25℃)となるように常
法により充填してスプレー剤を作製し、これに電子線を
20秒間照射した(実施例1)。
【0028】得られたスプレー剤の性能を以下の方法に
より評価した。体重 5.8kgの雑種成犬の背部の体毛を剃
毛した後、グラインダーにより縦1cm、横2cm、厚み1
mmの剥削創を背部正中線に対称に片側3カ所、計6カ所
作製し出血させた。出血部位の片側に実施例1のスプレ
ー剤を2秒間噴射し、もう一方の出血部位には微線維性
コラーゲン止血剤(商品名:アビテン、比較例1)を適
用した。比較例1の止血剤の投与量は出血部を覆うに十
分な量であった。実施例1のスプレー剤及び比較例1の
止血剤を投与すると有効成分がゲル化し、出血部位を覆
うような状態になった。
【0029】実施例1のスプレー剤を散布した部位は出
血がおさまるまでの時間が平均7分であったが、比較例
1の止血剤を適用した部位は滲み出る程度の出血が続
き、止血するまでに12分を要した。実施例1のスプレー
剤の操作性は比較例1の止血剤と比較して優れており、
有効成分の創部への付着も良好であった。次に、そのま
まの状態で30分間放置した後、創の状態を観察したとこ
ろ、実施例1のスプレー剤及び比較例1の止血剤を投与
した創は共に止血された状態を維持しており、再出血等
は認められなかった。また止血に関与していない余剰な
キチン粉末を生理食塩液を用いて洗浄、除去しても創は
止血されたままであった。13日後、実施例1のスプレー
剤により処置した創面は上皮化が完成していたのに対
し、比較例1の止血剤で処置した創面は上皮化が完成し
ておらず上皮化までに21日間を要した。
【0030】実施例2、比較例2 (熱傷潰瘍への適用)実施例1で得た脱アセチル化キチ
ン粉末( DAc71、 DAc45)をエチレンオキサイドガスに
より 1.5時間滅菌した後、同様に滅菌したジエチルエー
テルに、 DAc71が0.5 重量%、 DAc45が1.5 重量%とな
るように無菌下で混合し、外径が45mmで円筒部分の長さ
が110mm のアルミニウム製容器に圧力が3.5kg/cm2 (25
℃)となるように常法により充填してスプレー剤を作製
し、これに電子線を20秒間照射した(実施例2)。
【0031】得られたスプレー剤の性能を以下の方法に
より評価した。なお、対照には硫酸ポリミキシンB軟膏
〔硫酸ポリミキシンB(50万単位/Vial) 100万単位と
流動パラフィン5gを含み、白色ワセリンで全量を100g
としたもの〕を用いた(比較例2)。熱傷潰瘍を作製し
た体重3.8kg の雑種成犬に本発明のスプレー剤による処
置を行なった。受傷部は左前足、深在性II度の熱傷であ
り、創の寸法は28mm×64mmであった。受傷後5日で、創
部は滲出液の多い状況を呈し、Staphylococcus aureus
(スタフィロコッカス・アウレウス)の感染がみられ
た。創面を等面積の二つの部分に分け、実施例2のスプ
レー剤及び比較例2の軟膏を、混合しないように適用し
た。その後ガーゼを当てて包帯処置を行なった。2日ご
とにガーゼ及び包帯を交換し、その際ごとに実施例2の
スプレー剤及び比較例2の軟膏を最初と同じ部位に適用
した。2週間後、実施例2のスプレー剤で処置した創面
は上皮化が完成していたのに対し、比較例2の軟膏で処
置した創面は上皮化が完成しておらず、上皮化までに20
日間を要した。本発明のスプレー剤は軟膏より投与時の
痛みが少なそうであった。
【0032】実施例3 (褥瘡への適用)実施例1で得られた脱アセチル化キチ
ン粉末( DAc71、 DAc45)を各々2N塩酸水溶液に浴比
1: 300で20℃、30分間浸潰した後、ブフナー漏斗及び
アスピレータを用いて吸引濾過し、メタノールを用いて
10分間の洗浄を5回繰り返した。30℃で24時間乾燥させ
DAc71塩酸塩及び DAc45塩酸塩の粉末を得た。次に、実
施例1と同様の方法で、DAc71 塩酸塩が1.0 重量%、 D
Ac45塩酸塩が1.0重量%となるように液化石油ガスと混
合し、外径が45mmで円筒部分の長さが110mmのステンレ
ス製容器に圧力が 2.4kg/cm2(25℃)となるように常法
により充填して脱アセチル化キチン塩酸塩粉末のスプレ
ー剤を作製した。
【0033】得られたスプレー剤の性能を以下の方法に
より評価した。ウサギを長期間仰臥させることにより背
部に褥瘡を作製した。黄色期の褥瘡であり、創部の寸法
は21mm×27mmであった。創部は滲出液の多い状況を呈し
ていた。壊死組織及び不良肉芽を外科的に除去し、上記
方法により得られたスプレー剤を散布した。その後、ワ
セリンガーゼを当てて包帯処置を行なった。滲出液の多
い最初の1週間は毎日、次の週は滲出液が少なくなった
ので2日〜3日おきにガーゼ及び被覆ガーゼを交換し、
その際ごとにスプレー剤を3秒間ずつ散布した。
【0034】1週間後、創面には良質の肉芽が増生し、
2週間後上皮化が完成していた。
【0035】実施例4 (皮膚潰瘍への適用)実施例1で得た脱アセチル化キチ
ン粉末( DAc71、 DAc45)を、それぞれ8N酢酸水溶液
で25℃、30分間処理した。処理後、吸引式濾過ビンで余
分の酢酸を除去した後、約25℃のメタノールを用いて約
30分間の洗浄を2回繰り返した後、乾燥してDAc71 酢酸
塩とDAc45 酢酸塩を得た。次に、実施例1と同様の方法
で、ジエチルエーテルに DAc71酢酸塩が 0.5重量%、 D
Ac45酢酸塩が 1.5重量%となるように加えて混合し、外
径が45mmで円筒部分の長さ 110mmのアルミニウム製容器
に圧力が 3.0kg/cm2(25℃)となるように充填してスプ
レー剤を作製した。
【0036】このスプレー剤を馬の右後肢の潰瘍の治療
に使用した。患部に2週間ゲンタシン軟膏を塗布してい
たが、全く効果がなかった。そこで上記方法により得ら
れたスプレー剤の適用に切り替えたが、そのときの所見
は4cm×7cmの潰瘍であり、深さは脂肪組織に達してい
た。肉芽形成はなく、中等度の紅斑と分泌物があった。
スプレー剤適用1週間後には肉芽形成が認められ、紅斑
並びに分泌物が軽度となった。2週間後には表皮形成が
促進され、紅斑及び分泌物は全く消失し、略治の状態と
なった。本発明のスプレー剤は動きやすい関節部に適用
しても、良好な付着性を示した。
【0037】実施例5、比較例3 (剥削創への適用)実施例3で得られたDAc71 塩酸塩と
DAc45 塩酸塩の粉末を用いて、噴射剤がモノクロロジフ
ルオロエタンである他は実施例4と同様の条件でスプレ
ー剤(実施例5)を作製した。
【0038】このスプレー剤を雑種猫の背部削皮創に対
して使用した。創の寸法は25mm×50mm、深さは10/1000
インチであった。創面を体軸に平行な境界で二つの部分
に分け、一方に実施例5のスプレー剤を散布し、もう一
方に凍結乾燥豚真皮(比較例3)を貼付した。その上か
らガーゼを被覆し、サージカルテープで固定した。10日
後、創面を観察したところ、実施例5のスプレー剤によ
り処置した部位は良好な上皮化がみられたのに対し、比
較例3の凍結乾燥豚真皮で処置した創面は被覆材と創面
の密着が悪く、ずれがみられ、上皮化が完成していなか
った。5週間後の観察では、実施例5のスプレー剤で処
置した部位は表皮に瘢痕が見られなかったが、比較例3
の凍結乾燥豚真皮で処置した部位の表皮には瘢痕が見ら
れた。
【0039】実施例6 (擦過傷への適用)実施例1で得られた脱アセチル化キ
チン粉末( DAc71、 DAc45)に対して3N酪酸水溶液を
使用した他は実施例3と同様の条件で脱アセチル化キチ
ンの酪酸塩を作製した。次に、実施例1と同様の方法
で、ジエチルエーテルにDAc71 酪酸塩が0.5 重量%、DA
c45 酪酸塩が1.5 重量%となるように加えて混合し、外
径が45mmで円筒部分の長さが 110mmのアルミニウム製容
器に圧力が 3.0kg/cm2(25℃)となるように充填してス
プレー剤を作製した。
【0040】背部皮膚を剃毛したモルモットにグライン
ダーで擦過傷を作製した。出血部位の直径は18mmで、し
み出る程度の出血があった。出血部位に上記方法により
得られたスプレー剤を約2秒間散布した。5分後、スプ
レー剤を散布した部位は出血が収まっていた。創部を生
理食塩水で洗浄し、ガーゼと包帯で処置を行った。6日
後、創部は良好な治癒状況を呈していた。
【0041】実施例7、実施例8、比較例4、比較例5 (保存性の比較)実施例1で得られた脱アセチル化度が
5.2%の脱アセチル化キチンを25%苛性ソーダ水溶液中
で80℃、3時間加熱処理し、再脱アセチル化し、次いで
水洗を繰り返した後、乾燥して脱アセチル化度が65.8%
の脱アセチル化キチン(以下、DAc66 と略す)を得た。
これを4N塩酸水溶液及び7N酪酸水溶液に各々浴比
1:200で25℃、30分間浸潰した後、ブフナー漏斗及び
アスピレータを用いて吸引濾過し、エタノールを用いて
10分間の洗浄を5回繰り返した。その後、30℃で24時間
乾燥させ脱アセチル化キチンの塩酸塩及び酪酸塩粉末を
得た。次に、実施例1と同様の方法で、 DAc66塩酸塩粉
末(実施例7)、 DAc66酪酸塩粉末(実施例8)を1,
1,1,2−テトラフルオロエタンを噴射剤として外径
が45mmで円筒部分の長さが 110mmのガラス製容器に圧力
が 2.8kg/cm2(25℃)となるように充填してスプレー剤
を作製した。得られたスプレー剤と、これに含まれるの
と同量の DAc66塩酸塩粉末(比較例4)、 DAc66酪酸塩
粉末(比較例5)を、それぞれ20℃、相対湿度65%の標
準状態で保存した。
【0042】分子量低下率を指標として、これらの試料
の保存安定性を比較した。分子量は各試料0.1 gを1%
酢酸25mlに溶解し、その粘度を回転粘度計で測定するこ
とにより算出した。測定は製造直後、6カ月後及び1年
後に実施した。その結果を表1に示した。実施例7、実
施例8の分子量低下率は、比較例4、比較例5と比較し
て小さく、脱アセチル化キチンの塩をエアゾール容器に
収納することにより保存性が向上することが確認され
た。
【0043】
【表1】
【0044】また、上記各実施例において無菌試験を行
い、無菌状態の比較を行なった。各試料を培地中に浸漬
して培養し、菌の発育を認めないことによって無菌性の
判定を行なった。培地及びその調製法、培養法、判定等
は全て日局一般試験法の無菌試験法に従って行った。そ
の結果、実施例7、実施例8では無菌状態は維持された
ままであったが、比較例4、比較例5では菌の発育が認
められた。
【0045】(血小板の誘発物質への作用)次に、実施
例3で得られた DAc71塩酸塩粉末、コラーゲン止血剤
(比較例6)、綿花(セルロース、比較例7)をそれぞ
れ血小板と接触させて、血小板の誘発物質の放出能を比
較し、その結果を表2に示した。実施例3で得られた D
Ac71塩酸塩粉末ではβ−スロンボグロブリン(β−TG)
、血小板第4因子(PF4)の放出量が比較例と比べて1
0倍近く大きいことが分かった。
【0046】
【表2】
【0047】以上の結果から、本発明のスプレー剤は優
れた止血効果を有することが確認された。
【0048】
【発明の効果】本発明のスプレー剤は、迅速な止血が要
求される出血、各種皮膚疾患及び皮膚欠損等に対し、簡
易に適用でき、優れた止血効果、抗炎症効果及び創傷治
癒効果を示し、治癒の促進に寄与する。また、本発明の
スプレー剤は、携帯に便利であり、簡易な操作で、必要
量を迅速に、目的部位に確実に散布することができる。
さらに、本発明のスプレー剤は、従来の貼付剤が適用し
にくかった凹凸のある部位、曲面や動きやすい部分にも
良好な付着性を有する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 谷本 信行 京都府宇治市宇治小桜23番地 ユニチカ株 式会社中央研究所内 (72)発明者 鶴谷 良一 京都府宇治市宇治小桜23番地 ユニチカ株 式会社中央研究所内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 キチンと噴射剤をエアゾール容器に収納
    してなるスプレー剤。
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