JPH09328316A - 磁性を有する複合酸化物粒子及びその製造方法 - Google Patents

磁性を有する複合酸化物粒子及びその製造方法

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JPH09328316A
JPH09328316A JP14438696A JP14438696A JPH09328316A JP H09328316 A JPH09328316 A JP H09328316A JP 14438696 A JP14438696 A JP 14438696A JP 14438696 A JP14438696 A JP 14438696A JP H09328316 A JPH09328316 A JP H09328316A
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magnetic
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JP14438696A
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Noboru Ishibashi
昇 石橋
Hiroshi Kato
寛 加藤
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Tokuyama Corp
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Tokuyama Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 従来、シリカと鉄化合物よりなる磁性を有す
る複合酸化物は知られておらず、単分散性の高い球状粒
子を始め、鱗片状粒子や繊維状粒子など、形状を任意に
コントロールできる方法も知られていなかった。また、
γ−Fe23やFe34等の磁性を有する酸化鉄粒子
は、磁性を発現させるためには雰囲気や温度を精密にコ
ントロールした条件で焼成しなければならず、また70
0℃以上に加熱するとα−Fe23に相転移するため磁
性を失ってしまう等の問題があった。 【解決手段】 加水分解可能な有機ケイ素化合物及び加
水分解可能な有機鉄化合物を共加水分解して複合酸化物
前駆体を形成し、次いで還元性雰囲気下においては40
0℃〜1200℃で、酸化性雰囲気下においては700
℃〜1200℃で焼成することにより、シリカ及び鉄化
合物を主構成成分とする磁性を有する複合酸化物を得
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁性を有する複合
酸化物粒子及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】磁性を有する粒子としては、γ−Fe2
3(マグヘマタイトともいう)やFe34(マグネタ
イトともいう)等の酸化鉄が代表として挙げられるが、
その他にも金属鉄、M2+Fe2 3+4(ここで、MはFe
2+、Ni2+、Co2+、Zn2+、Cd2+等の内、1種また
は2種以上を示す)の化学組成を持つスピネル型フェラ
イト、La3Fe512(ここで、Laは希土類元素を示
す)の化学組成を持つガーネット型フェライト、BaF
1219で代表されるBaフェライト等が挙げられる。
ここでいう磁性を有する粒子とは、一般に磁性体と呼ば
れている工業的に有用な磁性体粒子のことである。これ
らの粒子には、磁場の中に置かれると磁気を帯びるもの
や外部磁場なしでも自発的に磁気を帯びているものもあ
る。このような性質を利用して、磁石、磁気記録材料、
記憶・演算素子、電子写真用磁性キャリヤ、酵素免疫法
診断試薬用の磁性担体等へ利用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来用いられていたγ
−Fe23やFe34等の酸化鉄粒子は、磁性を発現さ
せるためには雰囲気や温度を精密にコントロールした条
件で焼成しなければならず、またγ−Fe23やFe3
4は700℃以上に加熱するとα−Fe23に相転移
するため磁性を失ってしまう等の問題があった。
【0004】ところで、磁性を有するシリカと鉄化合物
よりなる複合酸化物は知られておらず、単分散性の高い
球状粒子を始め、鱗片状粒子や繊維状粒子など、形状を
任意にコントロールできる方法も知られていなかった。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記問題
点を解決すべく鋭意検討した結果、シリカ及び鉄化合物
を主構成成分とすることにより、粒子の形状を任意にコ
ントロール可能で、しかも大気中で焼成するだけでも磁
性体に変換可能で、700℃以上の温度で使用しても磁
性を失うことのない複合酸化物粒子が得られることを見
いだし、本発明を完成するに至った。
【0006】即ち、本発明は、シリカ及び鉄化合物を主
構成成分とし、磁性を有する複合酸化物粒子である。
【0007】他の発明は、加水分解可能な有機ケイ素化
合物及び加水分解可能な有機鉄化合物を共加水分解して
複合酸化物前駆体を形成し、次いで還元性雰囲気下にお
いて400℃〜1200℃で焼成することを特徴とする
前記記載の磁性を有する複合酸化物の製造方法、及び加
水分解可能な有機ケイ素化合物及び加水分解可能な有機
鉄化合物を共加水分解して複合酸化物前駆体を形成し、
次いで酸化性雰囲気下において700℃〜1200℃で
焼成することを特徴とする前記記載の磁性を有する複合
酸化物の製造方法である。
【0008】さらに本発明は、前記記載の磁性を有する
複合酸化物粒子からなる酵素免疫法診断試薬用の磁性担
体である。
【0009】本発明の磁性を有する複合酸化物粒子(以
下、単に磁性複合酸化物粒子ともいう)は、シリカ及び
鉄化合物を主構成成分とする。シリカを主構成成分の一
つとする理由は、球状粒子、鱗片状粒子、針状粒子、不
定形粒子等の様々な形状の粒子が得やすいこと、及び大
気中で焼成するだけでも磁性を有する複合酸化物粒子が
得られること、及び700℃の高温においても磁性を失
わないなどの特徴を有するためである。シリカとはSi
2のことで、その結晶形態については、非晶質、また
は石英、トリジマイト、クリストバライト等の結晶質の
いずれであっても構わない。
【0010】一方、鉄化合物を主構成成分の一つとする
理由は、磁化率が高くシリカと複合化し易いためであ
る。鉄化合物としては、鉄原子を含み磁性を有するもの
であれば特に制限はない。具体的には、金属鉄、γ−F
23やFe34などの鉄の酸化物、さらにM2+Fe2
3+4(ここで、MはFe2+、Ni2+、Co2+、Z
2+、Cd2+等の内、1種または2種以上を示す)の化
学組成を持つスピネル型フェライト、La3Fe5
12(ここで、Laは希土類元素を示す)の化学組成を持
つガーネット型フェライト、BaFe1219で代表され
るBaフェライト等の鉄の複合酸化物が挙げられる。ま
た、鉄化合物としては、磁性を有しない非晶質の鉄化合
物やα−Fe23、β−Fe23、FeOOH、Fe
(OH)3等の結晶を一部含んでいても構わないが、好
ましくは、磁性体であるγ−Fe23やFe34等の鉄
化合物を多く含む方が好ましい。さらにこれらの磁性体
である鉄化合物は、なるべく結晶性が高いものの方が一
般に磁性も高いので好ましい。また、これらの鉄化合物
を2種類以上含んでいても構わない。
【0011】シリカと鉄化合物の比率は特に制限される
ものではないが、全金属原子中の鉄原子の比率[MFe
(MSi+MFe);ここでMはモル濃度を表す]で表わす
と、1〜80モル%、好ましくは1〜50モル%、さら
に好ましくは5〜40モル%の範囲が好ましい。鉄化合
物の比率が1〜80モル%の範囲内であれば、磁性に優
れかつ種々の形状を有する複合酸化物粒子が得易い。さ
らに、単分散性の高い球状粒子を得ようとする場合に
は、鉄化合物の比率は1〜30モル%の範囲が好まし
い。
【0012】本発明の磁性を有する複合酸化物粒子は、
シリカ及び鉄化合物を主構成成分とするが、それ以外に
も第3の元素の酸化物が添加されていても良い。例え
ば、Na2O、K2O等の周期率表第I属の酸化物、Mg
O、CaO、BaO等の周期率表第II属の酸化物、B
23、Al23、Y23等の周期率表第III属の酸化
物、TiO2、ZrO2、GeO2、SnO2等の周期率表
第IV属の酸化物等が挙げられる。上記の添加物の比率
はシリカに対して30モル%以下が好ましい。特に、単
分散性の高い球状粒子を得ようとする場合には、上記比
率は10モル%以下が好ましい。これらの第3の元素の
酸化物は一般にシリカと複合化しシリカ系の複合酸化物
となる。
【0013】本発明の複合酸化物粒子の主構成成分であ
るシリカと鉄化合物は物理的に分離できない。物理的に
分離できない状態とは、シリカと鉄化合物のそれぞれが
単に混合されている状態ではなく、一つの複合酸化物粒
子中において、シリカと鉄化合物が化学的に結合し、分
子レベルあるいは微粒子として均質に分散した状態をい
う。つまり、本発明の複合酸化物粒子は一つ一つの粒子
が均一な組成であるため、どの粒子もほぼ同一の磁性を
有していると言える。
【0014】本発明の複合酸化物粒子の形状は特に制限
されるものではない。具体的な形状を例示すれば、球状
粒子、鱗片状粒子、針状粒子、不定形粒子等を挙げるこ
とができる。中でも球状粒子は、粒子の形状及びその粒
子径まで均一性が高いため、単分散粒子として有用であ
る。このような単分散粒子の単分散性は、粒子径の変動
係数によって表すことができる。例えば、本発明の複合
酸化物粒子を後述する酵素免疫法診断試薬用の磁性担体
粒子などに応用する場合には、単分散性の高いものほど
集磁性が高く有用である。即ち、粒子径の変動係数が3
0%以下、好ましくは20%以下、さらに好ましくは1
0%以下の磁性複合酸化物粒子が好適に使用できる。上
述のような各種の形状の複合酸化物粒子は製造方法を変
えることによって任意に製造可能であるため、用途に合
わせて使用すれば良い。
【0015】本発明の複合酸化物粒子は、以下の方法に
よって同定することができる。複合酸化物粒子の組成
は、化学分析や蛍光X線分析等で調べることができる。
複合酸化物粒子中のシリカ及び鉄化合物の結晶状態につ
いては、X線回折試験や電子線回折試験等によって調べ
ることができる。複合酸化物粒子の形状や大きさについ
ては、電子顕微鏡観察等により調べることができる。複
合酸化物粒子中のシリカ及び鉄化合物の分散状態につい
ては、透過型電子顕微鏡により観察することができる。
複合酸化物粒子の磁性の有無については、磁石に引き付
けられるかどうかによって確認できる。さらに詳しく調
べるためには、磁化率や磁化曲線を調べれば良い。
【0016】次に本発明の磁性複合酸化物の代表的な製
造方法について説明する。
【0017】本発明の製造方法において使用される加水
分解可能な有機ケイ素化合物(以下、有機ケイ素化合物
という)は公知のものが制限なく使用できる。このよう
な有機ケイ素化合物を具体的に例示すると、Si(OC
34、Si(OCH2CH34等のケイ素のアルコキ
シド単量体やこれらの単量体が2〜6分子縮合したオリ
ゴマー、あるいはCH3Si(OCH33、CH3Si
(OCH2CH33、CH3CH2Si(OCH2CH33
等のアルキルアルコキシシラン化合物を挙げることがで
きる。
【0018】一方、本発明において使用される加水分解
可能な有機鉄化合物(以下、有機鉄化合物という)は公
知のものが制限なく使用できる。代表的な有機鉄化合物
を具体的に例示すると、Fe(OCH33、Fe(OC
2CH33、Fe(OCH(CH323、Fe(OC
2CH2CH2CH33等の鉄のアルコキシド、酢酸
鉄、クエン酸鉄などの鉄のカルボン酸塩などを挙げるこ
とができる。
【0019】本発明においては、まず、上述した有機ケ
イ素化合物及び有機鉄化合物を共加水分解して複合酸化
物前駆体を形成するが、共加水分解する前に有機ケイ素
化合物の一部または全部を酸性下で予備加水分解してお
くことが好ましい場合がある。特に、単分散性の高い球
状粒子を得ようとする場合には好ましい。予備加水分解
の方法は、有機ケイ素化合物を、有機鉄化合物の1〜4
倍モル相当の水を含むpH2〜5の含水アルコール中で
数分から数時間、撹拌する方法である。酸性物質として
は塩酸、硫酸、酢酸等が用いられる。このように球状粒
子を得る場合に予備加水分解を行った方が良い理由は、
有機ケイ素化合物を予備加水分解することによって、有
機鉄化合物と混合した際に両化合物が反応、結合し、複
合アルコキシドを生成し、それによって両化合物を共加
水分解する際に均質な複合酸化物前駆体が得られるため
と推測される。
【0020】本発明の製造方法では、一般的に、有機ケ
イ素化合物及び有機鉄化合物はほぼ完全に共加水分解さ
れてシリカと鉄化合物が生成する。そのため、本製造方
法において使用される有機ケイ素化合物と有機鉄化合物
の比率は、前述したように、全金属原子中の鉄原子の比
率[MFe/(MSi+MFe);ここでMはモル濃度を表わ
す]で表わすと、1〜80モル%、好ましくは1〜50
モル%、さらに好ましくは5〜40モル%の範囲が好ま
しい。有機ケイ素化合物と有機鉄化合物の比率が1〜8
0モル%の範囲内であれば、磁性に優れ且つ種々の形状
を有する複合酸化物粒子が得やすくなる。さらに、単分
散性の高い球状粒子を得ようとする場合には、有機鉄化
合物の比率は1〜30モル%の範囲が好ましい。なお、
球状粒子を製造する時のように比較的多量の溶媒を使用
する場合には、仕込み組成と生成物の組成が多少ずれる
ことがあるが、そのような場合は適宜仕込み組成をずら
せて製造すれば良い。
【0021】有機ケイ素化合物と有機鉄化合物は、有機
ケイ素化合物を予備加水分解後、あるいはそのまま混合
し、該混合物をアンモニア、NaOH、KOH、トリエ
チルアミンなどの塩基または塩酸、硝酸、酢酸などの酸
を含んだ含水有機溶媒中で共加水分解させて、複合酸化
物前駆体を得る。ここで使用される有機溶媒は、常温で
液体であり且つ水溶性のものであれば公知のものが制限
なく使用できる。具体的に例示すると、メタノール、エ
タノール、イソプロパノール等の低級アルコール類が好
ましく使用されるが、その他にエチレングリコール、ジ
メチルホルムアミド、アセトン、エーテル、トルエンな
どの有機溶媒を含んでいても良い。
【0022】上記の複合酸化物前駆体は、溶媒を乾燥
後、焼成することによって磁性複合酸化物となる。焼成
時の雰囲気によって2種類の磁性複合酸化物が得られ
る。
【0023】還元性雰囲気下においては、焼成温度は4
00℃〜1200℃の範囲が好ましい。還元性雰囲気と
は、水素、一酸化炭素、アンモニア等の還元性ガス雰囲
気もしくは複合酸化物前駆体に炭素等の還元剤を添加し
これを窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気
で焼成することをいう。上記の雰囲気で焼成した複合酸
化物前駆体は、鉄化合物として金属鉄を含む磁性複合酸
化物となる。上記の場合は、シリカと鉄化合物の比率は
1〜80モル%と広い範囲にわたって磁性複合酸化物が
得られるという特徴がある。焼成温度が400℃未満で
は磁性を示さないので不適当である。1200℃を超え
ると複合酸化物前駆体が焼結し易くなるため好ましくな
い。焼成時間は特に限定されず、1時間以上であれば良
い。
【0024】一方、酸化性雰囲気下においては、焼成温
度は700℃〜1200℃の範囲、好ましくは800℃
〜1100℃の範囲が好ましい。酸化性雰囲気とは、酸
素を含んだ雰囲気のことで、通常は空気中で焼成するこ
とを指す。上記雰囲気で焼成した複合酸化物前駆体は、
鉄化合物として酸化鉄(例えば、γ−Fe23など)を
含む磁性複合酸化物が得られる。なお、酸化性雰囲気で
焼成する場合には、シリカと鉄化合物の比率は1〜50
モル%の範囲が磁性複合酸化物が得られ易く、好まし
い。焼成温度が700℃未満では磁性を示さないので不
適当である。1200℃を超えると複合酸化物前駆体が
焼結し易くなるため好ましくない。焼成時間は特に限定
されず、1時間以上であれば良い。
【0025】ところで、通常、700℃以上の酸化性雰
囲気下において、γ−Fe23等の磁性酸化鉄を得るこ
とはできないと考えられるが、本発明では700℃以上
の酸化性雰囲気下において磁性複合酸化物が得られてい
る。この理由については必ずしも明確ではないが、恐ら
く、シリカリッチな複合酸化物前駆体を焼成すると、酸
化鉄が結晶化する際に結晶がシリカマトリックス中に拘
束されることによって結晶相転位が抑制され、選択的に
磁性を有する酸化鉄相が析出しやすくなっているのでは
ないかと推測される。
【0026】本発明の磁性複合酸化物は、製造方法を様
々に変えることにより、例えば、球状粒子、鱗片状粒
子、不定形粒子、繊維、薄膜、バルク体など種々の形状
のものを得ることができる。
【0027】球状の磁性複合酸化物粒子の製造方法を例
示すると、まず前述したように有機ケイ素化合物を予備
加水分解し、これに有機鉄化合物を混合する。得られた
溶液を送液ポンプで30分〜10時間かけて塩基性の含
水アルコール中に徐々に滴下して有機ケイ素化合物と有
機鉄化合物を共加水分解することにより、球状の複合酸
化物前駆体粒子が得られる。次いで、該前駆体粒子を前
述した条件で焼成することにより、球状の磁性複合酸化
物粒子を得ることができる。該粒子の粒子径は、反応条
件を種々変えることにより、0.05〜2μmの範囲で
制御可能である。また、上記の複合酸化物前駆体粒子を
種粒子として用い、再成長を繰り返すことによって、2
μm以上の粒子を得ることもできる。さらに、上記のよ
うにして複合酸化物前駆体粒子を合成後、引き続いて有
機ケイ素化合物だけを原料にして該粒子をさらに成長さ
せることによって、コア部分はシリカと鉄化合物からな
る磁性を有する複合酸化物、表層部分はシリカからなる
2層構造の粒子にすることも可能である。
【0028】磁性複合酸化物のバルク体及び不定形の磁
性複合酸化物粒子の製造方法を例示すると、まず前述し
たように有機ケイ素化合物と有機鉄化合物からなる原料
溶液を調製する。この溶液を耐熱性の容器に入れ、有機
ケイ素化合物及び有機鉄化合物の総モル量の2〜8倍相
当の水を含む酸性もしくはアルカリ性の含水アルコール
を添加して素早く均一に混合する。なお、このとき系全
体を冷却しても良い。有機ケイ素化合物と有機鉄化合物
は共加水分解されて、数分〜数時間でバルク状の複合酸
化物前駆体が得られる。必要に応じて、ピンホールを開
けた容器中で前記前駆体を30〜200℃の温度でゆっ
くりと加熱することによって加水分解と脱水縮合を進め
ることができる。次いで、該前駆体を前述した条件で焼
成することにより、磁性複合酸化物のバルク体を得るこ
とができる。一方、不定形の複合酸化物粒子は、前記磁
性複合酸化物のバルク体を粉砕するか、または複合酸化
物前駆体のバルク体を粉砕後、前述した条件で焼成する
ことにより、不定形の磁性複合酸化物粒子を得ることが
できる。
【0029】磁性複合酸化物の薄膜は、前述した有機ケ
イ素化合物と有機鉄化合物からなる原料溶液を薄膜状に
キャストしてから共加水分解、脱水縮合を行った後、前
述した条件で焼成することにより得られる。また鱗片状
の複合酸化物粒子は、上記磁性複合酸化物の薄膜を粉砕
することによって得られる。また、磁性複合酸化物の繊
維は、前記原料溶液を紡糸した後、同じく前述した条件
で焼成することによって得られる。
【0030】本発明の磁性複合酸化物粒子は酵素免疫法
診断試薬等の分野では、磁性担体として有用である。酵
素免疫法診断試薬を用いた免疫測定法は、高感度でかつ
測定の自動化が可能であるという特長を有しており、様
々な疾患を診断する方法として幅広く応用されている。
このような測定法では、測定操作の過程において、抗原
抗体反応によって担体に結合できなかった血清または血
漿中の抗原または抗体及びその非結合成分、さらには酵
素などで標識された抗体または抗原のうち抗原抗体反応
によって担体に結合できなかった過剰成分を分離除去す
る操作を必要とする。この操作を一般にBF分離という
が、一般にはデカンテーション、ろ過あるいは遠心分離
法等が用いられている。ところが最近、BF分離の方法
の一つとして、抗原または抗体を磁性担体粒子に固相化
して抗原抗体反応を行わせた後に、該担体粒子を磁石で
集磁させて、該担体粒子に結合しなかった成分を分離除
去するという方法(磁性分離)が注目されている。この
ように磁石で分離することによって分離工程を簡便に且
つ速やかに行うことができるという特徴がある。特に、
単分散性の高い球状粒子を用いると、磁石によって吸い
寄せられる移動速度が粒子間で均一なため極めて好まし
い。
【0031】ところで、上記の方法において、磁性粒子
担体に抗原または抗体を固相化する際には、磁性粒子表
面に抗原または抗体を選択的に吸着あるいは化学的に結
合させる必要があるが、γ−Fe23やFe34等の磁
性酸化鉄はタンパク質に対する非特異的な吸着特性が高
く、選択的な吸着特性が得られにくいという欠点があっ
た。それに対して、シリカ粒子はタンパク質等の選択的
な吸着に適していることが知られており、診断試薬用担
体として使用されている。本発明の磁性を有する複合酸
化物粒子は、シリカと酸化鉄の組成を変えることで磁性
の強さを調節することができる。また、表面層がシリカ
のみからなる2層構造の粒子にすることも可能であり、
従来にない、抗原または抗体を選択的に吸着させる磁性
担体として使用できる。
【0032】
【発明の効果】本発明は、シリカ及び鉄化合物を主構成
成分とし、磁性を有する複合酸化物粒子に関するもので
ある。シリカを主構成成分の一つとすることによって、
従来知られていなかった単分散性の高い球状の磁性粒子
を始め、不定形粒子や鱗片状粒子など任意の形状や粒子
径の磁性粒子を得ることができる。さらに、鉄化合物の
比率が50モル%以下である場合には空気中で焼成して
も磁性を有する複合酸化物が得られ、また700℃以上
の高温で使用しても磁性を失なわないという特徴を有す
る。
【0033】このような特徴を活かして、磁石、磁気記
録材料、記憶・演算素子、電子写真用磁性キャリヤ、酵
素免疫法診断試薬の磁性担体などとして有用である。
【0034】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明
するが、本発明はこれらの内容に限定されるものではな
い。
【0035】実施例1 テトラメチルシリケート(コルコート製、商品名;メチ
ルシリケート39、以下TMSという)109.5gを
三角フラスコに量り取り、攪拌した。0.035重量%
塩酸4.3gをメタノール30.7gに溶かした溶液を
調製し、前記のTMSに加えて15分間攪拌し、予備加
水分解を行った。トリn−ブトキシ鉄(日本曹達製、商
品名;アイアンブチラート、以下TBIという)22.
0gをイソプロパノール(以下IPAという)48.1
gに溶かした溶液を、予備加水分解したTMSに加えて
さらに15分間攪拌して、滴下液を調製した。
【0036】ジャケット付き1リットル反応槽に、IP
A80gとアンモニア水(アンモニア含有量=25重量
%)20gを仕込み40℃に保持しつつ、120rpm
で攪拌した。これを反応液という。滴下液の1/40量
を1時間かけて反応液に滴下し、引続き、滴下液の残り
と25重量%アンモニア水60gを滴下比率を一定にし
て、4時間かけて同時に且つ別々に滴下した。滴下終了
後、さらに1時間攪拌して、複合酸化物前駆体粒子のス
ラリーを得た。
【0037】該スラリーを遠心分離し、上清を取り除い
た。得られた固形分にIPA100gを加えて再分散さ
せ、これを遠心分離することにより固形分の洗浄を行っ
た。上記と同様にして固形分の洗浄を2回行った後、固
形分を乾燥させて黄土色の複合酸化物前駆体粒子を得
た。
【0038】得られた複合酸化物前駆体粒子を管状炉で
空気中1000℃、2時間焼成して複合酸化物粒子を得
た。得られた複合酸化物粒子は茶褐色で、走査型電子顕
微鏡で観察したところ、粒子径が0.3〜0.4μmの
均一な球状粒子であった。上記走査型電子顕微鏡像を画
像解析装置を用いて約100個の粒子像を解析したとこ
ろ、平均粒子径0.35μm、粒子径の変動係数8.7
%の単分散性の高い球状粒子であることがわかった。
【0039】上記複合酸化物粒子の組成を蛍光X線分析
で調べたところ、MFe/(MSi+MFe)=11.5モル
%であった。また、上記複合酸化物粒子の結晶構造をC
uKα線をX線源としたX線回折装置を用いて調べたと
ころ、2θが21°付近にアモルファス物質に特有のハ
ローが現れ、さらにγ−Fe23に特有の35.7°、
63.0°、30.3°の明瞭なピークが確認でき、そ
の他のピークもγ−Fe23に一致した。さらに同粒子
を透過型電子顕微鏡で観察したところ、0.35μmの
球状のシリカ粒子の中に約10nmのγ−Fe23の微
結晶が分散した粒子であることが確認できた。
【0040】次に上記複合酸化物粒子に磁石を近づけた
ところ、該粒子が磁石に引き寄せられることが確認でき
た。さらに3mlのガラス製サンプル瓶に上記複合酸化
物粒子0.1gをイオン交換水1mlに分散させ、超音
波洗浄器を用いて超音波を約30分間照射し、複合酸化
物粒子を分散させた茶褐色のスラリーを作った。このス
ラリーの入ったサンプル瓶を磁石の上に置いたところ、
約30秒で粒子は完全に沈降し溶液が透明になった。比
較のために、焼成前の複合酸化物前駆体粒子を用いて上
記と同様のスラリーを作製し磁石の上に置いたところ、
一時間以上経っても粒子は沈降せずスラリーは透明にな
らなかった。以上のことから、本粒子が磁石に引き寄せ
られる、いわゆる磁性粒子であることがわかった。
【0041】実施例2〜5 実施例1において得られた複合酸化物前駆体粒子を表1
に示す焼成条件で焼成し、実施例1と同様にして評価し
た。なお、実施例4は4%の水素を含む窒素雰囲気中で
2時間焼成した。実施例5は、複合酸化物前駆体粒子1
gに還元剤として50重量%ポリエチレングリコール水
溶液2gを加えて乳鉢で充分に混練、乾燥後、該乾燥物
を窒素雰囲気中で焼成した。
【0042】結果を表1に示すが、このように雰囲気を
変えることにより450〜1100℃の範囲で磁性粒子
が得られることがわかった。また、各実施例における鉄
化合物の結晶構造をX線回折によって解析したところ、
空気中で焼成したときにはγ−Fe23相が、還元雰囲
気で焼成したときには金属鉄相がそれぞれ主な磁性の発
現因子であることがわかった。
【0043】
【表1】
【0044】比較例1 実施例1で得られた複合酸化物前駆体粒子を水素雰囲気
下300℃で2時間焼成した以外は実施例1と同様にし
て複合酸化物粒子を得た。同粒子の磁性の有無を調べた
ところ磁性を有していないことがわかった。
【0045】比較例2 実施例1で得られた複合酸化物前駆体粒子を空気中13
00℃で2時間焼成した以外は実施例1と同様にして複
合酸化物粒子を得た。しかしながら、焼成後の粒子は硬
い焼結体になっており、粉砕後、走査型電子顕微鏡で観
察したところ、もはや球状粒子としては分離不能であっ
た。また、同粒子の磁性の有無を調べたところ磁性を有
していないことがわかった。
【0046】比較例3 実施例1で得られた複合酸化物前駆体粒子を空気中65
0℃で2時間焼成した以外は実施例1と同様にして複合
酸化物粒子を得た。同粒子の磁性の有無を調べたところ
磁性を有していないことがわかった。
【0047】比較例4 ジャケット付き1リットル反応槽に、メタノール84g
とアンモニア水16gを仕込み40℃に加温して反応液
を調製した。反応液を120rpmで攪拌しながら、テ
トラエチルシリケート(コルコート製、商品名;エチル
シリケート28)200gを滴下液とし、その1/40
量を1時間かけて反応液に滴下した。引続き、滴下液の
残りと25重量%アンモニア水80gを滴下比率を一定
にして、それぞれ独立に4時間かけて同時に滴下した。
滴下終了後、さらに1時間攪拌して、平均粒子径0.4
μmのシリカ粒子のスラリーを得た。得られたスラリー
は、遠心分離後、固形分を乾燥して、シリカ粒子を得
た。
【0048】別のジャケット付き1リットル反応槽に、
IPA80gと25重量%アンモニア水20gを仕込み
40℃に加温し、200rpmで攪拌した。これに、T
BI22.0gをIPA48.1gに溶かした溶液を添
加したところ、平均粒子径0.1μmの水酸化鉄の微粒
子スラリーを得た。得られたスラリーは、遠心分離後、
固形分を乾燥して、水酸化鉄粒子を得た。
【0049】シリカ粒子と水酸化鉄粒子をMFe/(MSi
+MFe)=11.5モル%になるようにそれぞれ秤量
し、乳鉢で充分混合した。以上の操作によって、シリカ
と鉄化合物が複合化していないシリカと水酸化鉄の混合
物粒子を得た。
【0050】該混合物を空気中で1000℃、2時間焼
成して得られた粒子は、全く磁性を示さなかった。
【0051】比較例5〜8 比較例4において得られたシリカと水酸化鉄の混合物粒
子を、実施例2〜5と同様の焼成条件で焼成し、実施例
1と同様にして評価した。結果を表2に示すが、このよ
うに空気中で焼成しただけでは磁性粒子は得られなかっ
た。一方、還元雰囲気では磁石に引き寄せられるものが
得られた。しかしながら、実施例1と同様に粒子を分散
させたスラリーを作り、このスラリーの入ったサンプル
瓶を磁石の上に置いたところ、数分後に茶褐色の沈澱が
得られたが上清は白濁していた。沈澱と上清をそれぞれ
調べたところ、沈澱は金属鉄、上清はシリカ粒子が主成
分であった。つまり、有機ケイ素化合物及び有機鉄化合
物を共加水分解することによって得られる複合酸化物前
駆体を経由しなければ、単一の磁性を有する複合酸化物
粒子は得られないことがわかった。
【0052】
【表2】
【0053】実施例6 まず、実施例1と同様にして約0.4μmのシリカと鉄
化合物よりなる複合酸化物前駆体粒子を得、該前駆体粒
子をIPAに分散させたスラリーを調製した。次に、実
施例1と同様にして滴下液と反応液を調製し、前記前駆
体粒子を核粒子として反応液に加えた。実施例1と同様
にして滴下液を反応液に滴下し、核粒子を再成長させて
黄土色の複合酸化物前駆体粒子のスラリーを得た。得ら
れたスラリーを分級、洗浄後、その一部を乾燥させて複
合酸化物前駆体粒子を得た。
【0054】得られた複合酸化物前駆体粒子を管状炉で
空気中1000℃、2時間焼成して複合酸化物粒子を得
た。得られた複合酸化物粒子は茶褐色で、走査型電子顕
微鏡で観察したところ、粒子径が約0.8μmの均一な
球状粒子であった。上記走査型電子顕微鏡像を画像解析
装置を用いて約100個の粒子像を解析したところ、平
均粒子径0.82μm、粒子径の変動係数6.4%の単
分散性の高い球状粒子であることがわかった。
【0055】上記複合酸化物粒子の組成を蛍光X線分析
で調べたところ、MFe/(MSi+MFe)=11.6モル
%であった。
【0056】次に上記複合酸化物粒子に磁石を近づけた
ところ、該粒子が磁石に引き寄せられることが確認でき
た。さらに3mlのガラス製サンプル瓶に上記複合酸化
物粒子0.1gをイオン交換水1mlに分散させ、超音
波洗浄器を用いて超音波を約30分間照射し、複合酸化
物粒子を分散させた茶褐色のスラリーを作った。このス
ラリーの入ったサンプル瓶を磁石の上に置いたところ、
約30秒で粒子は完全に沈降し溶液が透明になった。以
上のことから、本粒子が磁石に引き寄せられる、いわゆ
る磁性粒子であることがわかった。
【0057】実施例7 実施例6で得られた約0.8μmの複合酸化物前駆体粒
子のスラリーを核粒子として用い、実施例6と同様にし
て核粒子を再成長させて複合酸化物前駆体粒子のスラリ
ーを得た。得られたスラリーを分級、洗浄後、上記再成
長の操作を2回繰り返して、その一部を乾燥させて複合
酸化物前駆体粒子を得た。
【0058】得られた複合酸化物前駆体粒子を管状炉で
空気中1000℃、2時間焼成して複合酸化物粒子を得
た。得られた複合酸化物粒子は茶褐色で、走査型電子顕
微鏡で観察したところ、粒子径が約1.6μmの均一な
球状粒子であった。上記走査型電子顕微鏡像を画像解析
装置を用いて約100個の粒子像を解析したところ、平
均粒子径1.57μm、粒子径の変動係数5.1%の単
分散性の高い球状粒子であることがわかった。
【0059】上記複合酸化物粒子の組成を蛍光X線分析
で調べたところ、MFe/(MSi+MFe)=11.3モル
%であった。
【0060】次に上記複合酸化物粒子に磁石を近づけた
ところ、該粒子が磁石に引き寄せられることが確認でき
た。さらに3mlのガラス製サンプル瓶に上記複合酸化
物粒子0.1gをイオン交換水1mlに分散させ、超音
波洗浄器を用いて超音波を約30分間照射し、複合酸化
物粒子を分散させた茶褐色のスラリーを作った。このス
ラリーの入ったサンプル瓶を磁石の上に置いたところ、
約30秒で粒子は完全に沈降し溶液が透明になった。以
上のことから、本粒子が磁石に引き寄せられる、いわゆ
る磁性粒子であることがわかった。
【0061】実施例8 TMS115.7gを三角フラスコに量り取り、攪拌し
た。0.035重量%塩酸2.2gをメタノール15.
4gに溶かした溶液を調製し、前記のTMSに加えて3
0分間攪拌し、予備加水分解を行った。TBI11.0
gをIPA24.0gに溶かした溶液を、予備加水分解
したTMSに加えてさらに30分間攪拌して、滴下液を
調製した。
【0062】次に実施例1と同様にして、複合酸化物前
駆体粒子を合成した。
【0063】得られた複合酸化物前駆体粒子を管状炉で
空気中1000℃、2時間焼成して複合酸化物粒子を得
た。得られた複合酸化物粒子は茶褐色で、走査型電子顕
微鏡像を画像解析装置を用いて約100個の粒子像を解
析したところ、平均粒子径0.63μm、粒子径の変動
係数3.4%の単分散性の高い球状粒子であることがわ
かった。
【0064】上記複合酸化物粒子の組成を蛍光X線分析
で調べたところ、MFe/(MSi+MFe)=5.7モル%
であった。
【0065】次に上記複合酸化物粒子に磁石を近づけた
ところ、該粒子が磁石に引き寄せられることが確認でき
た。さらに3mlのガラス製サンプル瓶に上記複合酸化
物粒子0.1gをイオン交換水1mlに分散させ、超音
波洗浄器を用いて超音波を約30分間照射し、複合酸化
物粒子を分散させた茶褐色のスラリーを作った。このス
ラリーの入ったサンプル瓶を磁石の上に置いたところ、
約1分で粒子は完全に沈降し溶液が透明になった。以上
のことから、本粒子が磁石に引き寄せられる、いわゆる
磁性粒子であることがわかった。
【0066】実施例9 TMS91.3gを三角フラスコに量り取り、攪拌し
た。0.035重量%塩酸10.8gをメタノール7
6.9gに溶かした溶液を調製し、前記のTMSに加え
て15分間攪拌し、予備加水分解を行った。TBI5
5.0gをIPA120gに溶かした溶液を、予備加水
分解したTMSに加えてさらに15分間攪拌して、滴下
液を調製した。
【0067】次に実施例1と同様にして、複合酸化物前
駆体粒子を合成した。
【0068】得られた複合酸化物前駆体粒子を管状炉で
空気中1000℃、2時間焼成して複合酸化物粒子を得
た。得られた複合酸化物粒子は茶褐色で、走査型電子顕
微鏡像を画像解析装置を用いて約100個の粒子像を解
析したところ、平均粒子径0.26μm、粒子径の変動
係数9.7%の単分散性の高い球状粒子であることがわ
かった。
【0069】上記複合酸化物粒子の組成を蛍光X線分析
で調べたところ、MFe/(MSi+MFe)=28.8モル
%であった。
【0070】次に上記複合酸化物粒子に磁石を近づけた
ところ、該粒子が磁石に引き寄せられることが確認でき
た。さらに3mlのガラス製サンプル瓶に上記複合酸化
物粒子0.1gをイオン交換水1mlに分散させ、超音
波洗浄器を用いて超音波を約30分間照射し、複合酸化
物粒子を分散させた茶褐色のスラリーを作った。このス
ラリーの入ったサンプル瓶を磁石の上に置いたところ、
約20秒で粒子は完全に沈降し溶液が透明になった。以
上のことから、本粒子が磁石に引き寄せられる、いわゆ
る磁性粒子であることがわかった。
【0071】実施例10 まず実施例6と同様にして、平均粒子径0.88μmの
複合酸化物前駆体粒子を合成した。該前駆体粒子を洗浄
後、メタノールに分散させた。このときのスラリー濃度
は約11重量%であった。
【0072】次に、ジャケット付き1リットル反応槽
に、前記前駆体粒子を含むメタノールスラリー250g
と25重量%アンモニア水50gを仕込み40℃に加温
して反応液を調製した。反応液を120rpmで攪拌し
ながら、テトラエチルシリケート(コルコート製、商品
名;エチルシリケート28)80gとメタノール60
g、IPA20gよりなる溶液を滴下液とし、その1/
40量を1時間かけて反応液に滴下した。引続き、滴下
液の残りを4時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに
1時間攪拌して、複合酸化物前駆体粒子を得た。該粒子
を走査型電子顕微鏡で観察したところ、平均粒子径1.
08μmの単分散粒子であった。1.08μm近辺以外
の粒子はほとんど見当たらなかったことから滴下したエ
チルシリケートは全て核粒子の表面に析出したものと考
えられる。したがって、シリカでコーティングした層の
厚みは0.1μmと計算された。得られた粒子は、遠心
分離後、固形分を洗浄、乾燥させて複合酸化物前駆体粒
子を得た。
【0073】得られた複合酸化物前駆体粒子を管状炉で
空気中1000℃、2時間焼成して複合酸化物粒子を得
た。得られた複合酸化物粒子は茶褐色で、走査型電子顕
微鏡像を画像解析装置を用いて約100個の粒子像を解
析したところ、平均粒子径1.01μm、粒子径の変動
係数5.9%の単分散性の高い球状粒子であった。上記
複合酸化物粒子の組成を蛍光X線分析で調べたところ、
Fe/(MSi+MFe)=6.1モル%であった。
【0074】次に上記複合酸化物粒子に磁石を近づけた
ところ、該粒子が磁石に引き寄せられることが確認でき
た。さらに3mlのガラス製サンプル瓶に上記複合酸化
物粒子0.1gをイオン交換水1mlに分散させ、超音
波洗浄器を用いて超音波を約30分間照射し、複合酸化
物粒子を分散させた茶褐色のスラリーを作った。このス
ラリーの入ったサンプル瓶を磁石の上に置いたところ、
約30秒で粒子は完全に沈降し溶液が透明になった。以
上のことから、本粒子が磁石に引き寄せられる、いわゆ
る磁性粒子であることがわかった。
【0075】実施例11 TMS68.4gをポリビーカーに量り取り、攪拌し
た。0.035重量%塩酸2gをメタノール50gに溶
かした溶液を調製し、TMSに加えて15分間予備加水
分解した。TBI13.5gをIPA10gに溶かした
溶液を、予備加水分解したTMSに加えてさらに15分
間攪拌した。この溶液に、0.035重量%塩酸16g
とメタノール32gよりなる溶液を加えて攪拌した。該
溶液の一部を素早くテフロン製の45mmφの容器に分
取し、1mmのピンホールの開いた蓋をして放置してお
いたところバルク状の複合酸化物前駆体が得られた。
【0076】該前駆体を容器に入れたまま室温から20
0℃まで0.5℃/分の昇温速度で乾燥させた。次に容
器から取り出し、電気炉中で1℃/分の昇温速度で10
00℃まで昇温させ、さらに1000℃で2時間焼成し
たところ、直径21mmφで厚みが約4mmの茶褐色の
ガラス様の複合酸化物のバルク体が得られた。この複合
酸化物は磁石に引き寄せられることが確認され、磁性を
示すことがわかった。この複合酸化物の組成を蛍光X線
分析で調べたところ、MFe/(MSi+MFe)=10.3
モル%であった。
【0077】実施例12〜15 TMSとTBIの仕込量を表3に示すように種々変えた
以外は実施例11と同様にして鉄化合物の配合比の異な
るバルク状の複合酸化物前駆体を得た。該前駆体を容器
に入れたまま室温から200℃まで0.5℃/分の昇温
速度で乾燥させた。次に容器から取り出し、該前駆体を
ボールミルを用いて粉砕して複合酸化物前駆体粒子を得
た。該前駆体粒子を以下に示す焼成条件でそれぞれ焼成
して、鉄化合物の配合比の異なる複合酸化物粒子を得
た。
【0078】(焼成条件A);複合酸化物前駆体粒子1
gに50重量%のポリエチレングリコール水溶液2gを
混練、乾燥後、窒素中、800℃で2時間焼成した。
【0079】(焼成条件B);空気中、1000℃で2
時間焼成した。
【0080】各複合酸化物粒子の組成を蛍光X線装置を
用いて分析し、磁性の有無を実施例1と同様にして調べ
た。その結果を表3に示す。
【0081】以上のように、焼成条件Aでは、全ての範
囲で磁性を示した。焼成条件Bでは、51.2モル%ま
では磁性を示すことがわかった。各粒子を走査型電子顕
微鏡を用いて観察したところ、粒子径が1〜30μmの
範囲の不定形粒子であった。
【0082】比較例9 実施例15と同じ前駆体粒子を焼成条件Bで焼成した。
結果を表3に示すが、鉄化合物の比率が70モル%を超
えると空気中で焼成するだけでは、磁性を示す粒子は得
られないことがわかった。
【0083】
【表3】
【0084】実施例16 TMS68.4gをポリビーカーに量り取り、攪拌し
た。0.035重量%塩酸2gをメタノール50gに溶
かした溶液を調製し、TMSに加えて15分間予備加水
分解した。次にTBI13.5gをIPA50gに溶か
した溶液を、予備加水分解したTMSに加えてさらに1
5分間攪拌した。この溶液に、0.035重量%塩酸1
6gとメタノール32gよりなる溶液を加えて氷冷しな
がら攪拌した。
【0085】該溶液を素早くスポイトでテフロン板上に
薄く塗布して大気中で乾燥させたところ、薄片状の複合
酸化物前駆体が得られた。得られた前駆体を電気炉中で
1000℃で2時間焼成したところ、茶褐色半透明の薄
片状の複合酸化物が得られた。この複合酸化物は磁石に
引き寄せられ、磁性を有していることがわかった。
【0086】さらに上記薄片状の複合酸化物をボールミ
ルで粉砕したところ厚みが約0.4μm、直径3〜15
μmの鱗片状の複合酸化物粒子が得られた。この複合酸
化物粒子は磁石に引き寄せられ磁性を有することがわか
った。
【0087】この複合酸化物粒子の組成を蛍光X線分析
で調べたところ、MFe/(MSi+MFe)=10.3モル
%であった。
【0088】実施例17 実施例1で得られた磁性を有する複合酸化物粒子を空気
中1000℃で、2時間アニーリングした後、炉冷し
た。走査型電子顕微鏡で観察したところアニーリング前
後での粒子形状の変化は認められなかった。また、アニ
ーリング後の粒子も磁性を示し、空気中での熱履歴に対
して磁性を失わないことがわかった。アニーリング前後
の粒子をX線回折装置で分析したところ両者ともγ−F
23相が確認された。
【0089】比較例10 市販のγ−Fe23粒子(高純度化学研究所製)の磁性
の有無を調べたところ磁性を示した。該粒子を実施例1
7と同様にしてアニーリングしたところ、アニーリング
後の粒子は、磁性を失った。アニーリング後の粒子をX
線回折装置で分析したところ、磁性を示さないα−Fe
23に変わっていた。
【0090】比較例11 市販のFe34粒子(高純度化学研究所製)の磁性の有
無を調べたところ磁性を示した。該粒子を実施例17と
同様にしてアニーリングしたところ、アニーリング後の
粒子は、磁性を失った。アニーリング後の粒子をX線回
折装置で分析したところ、磁性を示さないα−Fe23
に変わっていた。
【0091】以上のように、γ−Fe23やFe34
いった通常入手可能な磁性粒子は高温で使用することに
よって磁性を失うが、本発明の複合酸化物粒子は100
0℃で使用しても磁性を失わないという特徴があること
がわかった。
【0092】実施例18 生理食塩水濃度の0.02Mリン酸緩衝液(pH7.
4。以下、PBSとする)にウサギ由来の抗α−フェト
プロテイン(以下、AFPとする)抗体を1mg/ml
の濃度になるように添加した抗AFP抗体溶液5ml
に、実施例10で得られた複合酸化物粒子50mgを分
散して、室温で1時間該粒子に抗AFP抗体を感作し
た。ウシ血清アルブミン(以下、BSAとする)を含む
PBS溶液(BSA濃度;20mg/ml)を1ml加
えて攪拌した後、室温で1時間ブロッキングを行った。
約1000ガウスの磁石で感作粒子を集めて上清を取り
除き、PBS4mlを加えて十分に分散し再び磁性分離
して上清を取り除くことで、抗AFP抗体感作粒子を洗
浄した。この洗浄操作を計3回繰り返した後、PBS4
mlを加えて十分に分散した。これを抗AFP抗体感作
粒子分散液という。
【0093】ヒトAFP抗原液を段階的にPBSで希釈
し、AFP濃度0〜100ng/mlの標準液を調製し
た。この標準液10μlに、抗AFP抗体感作粒子分散
液200μlを加えて攪拌混合した後、10分間放置し
て抗原抗体反応を行わせた。磁石で抗AFP抗体感作粒
子を集めた後に、上清を取り除いた。該粒子にPBS
0.5mlを加えて十分に分散させた後、磁石で再び集
める操作を3回繰り返して洗浄した。
【0094】西洋ワサビパーオキシターゼ(以下、HR
Pとする)で標識化した抗AFP抗体のPBS溶液(H
RP濃度;0.1μg/ml)200μlを混合し、1
0分間反応させた。該粒子を磁石で集めた後、PBS
0.5mlを加えて分散させ、磁石で再び集める操作を
3回繰り返して洗浄した。
【0095】N−エチル−N−スルホプロピル−m−ア
ニジシンを基質とした比色法により上記洗浄粒子に結合
したHRP標識化AFP抗体の酵素活性を測定した。波
長540nmの吸光度とAFP濃度の関係を図1に示し
た。このように、吸光度からAFP濃度を求めることが
でき、本発明の複合酸化物粒子は酵素免疫法診断測定に
おけるBF分離用担体として使用できることがわかっ
た。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本図は、AFP濃度と吸光度の関係を示す。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 シリカ及び鉄化合物を主構成成分とし、
    磁性を有する複合酸化物粒子。
  2. 【請求項2】 加水分解可能な有機ケイ素化合物及び加
    水分解可能な有機鉄化合物を共加水分解して複合酸化物
    前駆体を形成し、次いで還元性雰囲気下において400
    ℃〜1200℃で焼成することを特徴とする請求項1記
    載の磁性を有する複合酸化物の製造方法。
  3. 【請求項3】 加水分解可能な有機ケイ素化合物及び加
    水分解可能な有機鉄化合物を共加水分解して複合酸化物
    前駆体を形成し、次いで酸化性雰囲気下において700
    ℃〜1200℃で焼成することを特徴とする請求項1記
    載の磁性を有する複合酸化物の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項1記載の複合酸化物粒子からなる
    酵素免疫法診断試薬用磁性担体。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005017013A (ja) * 2003-06-24 2005-01-20 Hitachi Maxell Ltd 生体物質結合用磁性担体
JP2008063200A (ja) * 2006-09-08 2008-03-21 Univ Of Tokyo 分散性の良いε酸化鉄粉末

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