JPH09328170A - 紙製緩衝材の乾式製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 軽量であって、かつ圧縮荷重に対して強度が
高く、しかも成形時に破れない紙製緩衝材を得ることで
ある。 【解決手段】 上下二層の紙シートの間に切込みを備え
た切り込み付シートを介在させ、加熱圧搾することより
切り込み付シートを切込みを境にして伸張させつつ、三
層の紙シートを一体に成形することにより、成形型に倣
わせ膨張部を備えた紙製緩衝材の主体部分を成形し、前
記した膨張部の開口縁に別の紙シートを貼付させること
により膨張部の内側に空気室を設けるようにした紙製緩
衝材の製造方法である。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明は、紙製緩衝材の乾
式による製造方法に関する。さらに詳しくは、軽量であ
って、かつ圧縮荷重に対する強度を高くできる紙製緩衝
材の乾式製造方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】発明者が知っているこの種の緩衝材の製
造方法は、せいぜい複数の段ボールの波状部の方向を相
互に交差させて積層する方法にすぎない。

【０００３】また、紙材を乾式の製造方法により成形す
る方法として特公昭５７−３４９２号公報に記載された
発明が知られている。この発明は、原紙を乾式の成形方
法により食品用トレーなどの深絞り紙成形品を加工する
方法として知られている。

【０００４】さらにこの従来例を詳しくいえば、樹脂加
工が施された原紙をコルゲート機により加工することに
よって、常温で波形が復元しない波形屈曲原紙を得るこ
とにより、該原紙に延性や展性を付与させ、他方、成形
時における該原紙の逃がしのための空隙を備えた金型に
より乾式成形し、食品用トレーなどの深絞り紙成形品を
得る方法である。

【０００５】したがって、前者の従来例では、手軽に製
造できる有利性を有するものの、緩衝機能を得ようとす
れば甚だ重量が大きくなり、かつ肉厚が高くなるという
欠点があった。その上、波状部は圧潰し易く圧縮荷重に
対する強度に弱いという欠点があった。

【０００６】後者の従来例では、原紙を波形屈曲原紙と
して加工することにより波状の屈曲部を成形することに
よって原紙を延ばし、乾式により成形できるようにした
点で評価できるものの、波状の屈曲部は、屈曲部の両側
に延ばすことはできても、屈曲部の延長方向には延性や
展性が一切ないため、成形時における原紙の亀裂の発生
が依然として残り、逃がし用の空隙を金型に設けて成形
してもなお亀裂を回避できなかった。

【０００７】その上、熱可塑性合成樹脂が含浸され、常
温でその波形が復元しない波形屈曲原紙を予め生産する
煩雑さがあり、市販品の紙類はもとより故紙を利用する
ことは一切不可能であり、生産工程の複雑化を回避でき
ないことのほか、故紙はもとより汎用の原紙を利用でき
ないため、生産コストが高くなるという経済性について
も問題が残った。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】この発明が解決しよう
とする課題は、重量が高く、圧縮荷重に対する強度が弱
いこと、また、波形屈曲原紙を予め生産した上、成形し
てもなお、亀裂を抑制することに困難性があることなど
の点である。

【０００９】そこで、この発明の目的は、軽量であっ
て、かつ圧縮荷重に対する強度の増加を図ること、ま
た、成形時に原紙に発生しがちな亀裂を抑制しつつ成形
の容易性を図ることなどである。

【００１０】

【課題を解決するための手段及び作用効果】この発明の
第１番目の紙製緩衝材の製造方法は、非切り込み部分を
残存させ、切り込みを多数設けた切り込み付紙シートの
少なくとも一枚を成形型内において上下の紙シート間に
積層させ、加熱圧搾することにより該切り込みを境にし
てその両側に切り込み付紙シートを伸張させつつ、切り
込み付紙シートを上下の紙シートとともに一体に成形す
ることにより膨出部を備えた紙製緩衝材用本体を成形
し、紙製緩衝材用本体の膨出部の開口側を被覆材を介し
て閉鎖させ、紙製緩衝材用本体の膨出部の内側に空気室
を設けることを特徴とするものである。

【００１１】したがって、紙製緩衝材用本体が少なくと
も三層の紙材からなるものではあるものの、上下二層の
間には非切り込み部分を残存させ、切り込みを多数設け
た切り込み付紙シートが介在しているから、成形時にこ
の切り込み付紙紙シートが切り込みを境にしてその両側
に自由に伸張するため、従来の方法のように亀裂を発生
することがない。

【００１２】とくに、上下二層の紙シートに切り込みを
設けなくても、前記した切り込み付紙シートに圧搾応力
が吸収され、その圧搾応力は上下二層の紙シートに及ぶ
ことなく成形され、上下二層の紙シートに亀裂を発生す
ることがない。

【００１３】よって、このような方法により膨出部を備
えた緩衝材用本体を設け、その膨出部の開口側を被覆材
により閉鎖することにより、膨出部の内側に空気室を得
ることができる。

【００１４】その結果、緩衝材用本体が紙製であるもの
の、従来経験しなかった密封状態の空気室を備えた紙製
緩衝材が得られるので、使用に際してこの膨出部に圧縮
荷重が作用しても膨出部の内側に形成される空気室の圧
縮空気は膨張するので、膨出部は容易に復元し圧潰する
ことがない。このため、軽量であって、かつ圧縮荷重に
対して強度の強い紙製緩衝材を得ることができる。

【００１５】この発明の第２番目の紙製緩衝材の製造方
法は、被覆材が紙シートであることを特徴とするもので
ある。

【００１６】したがって、前記した第１番目の発明が奏
する作用効果のほか、被覆材が紙シートであるから、空
気室を備えたプラスチックス製緩衝材に代わる紙製緩衝
材を得ることができるので、プラスチックス製緩衝材と
比較して焼却が容易である。

【００１７】

【発明の実施の形態】この発明の実施の形態を図面を参
照して以下に説明する。この明細書において、切り込み
付紙シート１４とは、紙片単独の素材のほか、紙片の表
面にプラスチックスフィルムがラミネートされたもの、
紙片にプラスチックスが含浸されたものなども含まれる
が、紙類の種類について制限する趣旨ではなく、追って
説明する切り込み付紙シート１４には故紙も採用される
（図１を参照）。

【００１８】紙片は固有の物性上、延性や展性に欠ける
から、そのままの形態で成形しても亀裂が発生して破れ
ることはいうまでもない。そこで、この発明では多数の
切り込み１２を設けた切り込み付紙シート１４を予め設
けることにより、成形時の圧搾応力を吸収して切り込み
付紙シート１４が亀裂したり、破れることなく自由に伸
張するように配慮してある。

【００１９】まず、この発明の実施の形態の切り込み１
２を備えた切り込み付紙シート１４について説明する。
図１を参照して明らかなように、紙に非切り込み部分を
残存させ、切り込み１２を設けられている。

【００２０】非切り込み部分を残存させることにより、
切り込み１２を多数有するものの、成形したときにこの
切り込み付紙シート１４の全体が千切れることのないよ
うに配慮されている。

【００２１】切り込み１２（スリット）に代えて細長い
穴を多数設けることにより切り込み付紙シート１４を細
長い穴の両側に伸張させるようにしてもよい。

【００２２】図１に示される切り込み１２群は不連続の
ものであるが、切り込み付紙シート１４の両側や中央部
に非切り込み部分を切り込み１２の方向と直角方向に残
存させ、非切り込み部分の内側に連続的な切り込みを設
けるようにしてもよい。

【００２３】切り込み付紙シート１４の原紙として故紙
が特に有利である。故紙のリサイクル化が社会的にも要
請されているが、この発明では単に新聞紙などの故紙に
前記した切り込み１２を設けることによって利用できる
し、とりわけ、上下の二層の紙シート１４間に積層して
使用できるから、故紙による切り込み付紙シート１４で
あっても、外観上露呈しないから違和感も発生しない。

【００２４】そこで、前記した切り込み付紙シート１４
を採用して包装用緩衝材４０を得る例の実施の形態を説
明する（図２を参照）。多数の切り込み１２を備えた切
り込み付紙シート１４を一枚と種類について制限しない
紙シート−１６、１６を二枚用意する。

【００２５】この発明では成形型による成形により包装
用緩衝材４０に膨出部３２を設け、追って説明するよう
に膨出部３２の開口側を被覆材２６により閉鎖させ、紙
製緩衝材用本体の膨出部３２の内側に空気室３０を設け
ることを意図しているから、紙製緩衝材用本体の形態に
対応した成形型を用意する（図３を参照）。

【００２６】成形型は、上型１８ａと下型１８ｂからな
るものであって、上型１８ａには図示を省略したが、紙
製緩衝材用本体の膨出部３２の形態に対応する成形用凸
部が設けられている。

【００２７】他方、下型１８ｂには上型１８ａの成形用
凸部に対応した成形用凹部２０が設けられている。もっ
とも、前記の例と反対に成形用凸部と成形用凹部を互い
に下型１８ｂ、上型１８ａに設けるようにすることは自
由である。

【００２８】そこで、成形型内に前記した上下二枚の紙
シート１６、１６の間に切り込み付紙シート１４を積層
させて装入し、好ましくは加熱しつつ圧搾することによ
り、該切り込み１２を境にしてその両側に切り込み付紙
シート１４伸張させつつ、切り込み付紙シート１４を上
下の紙シート１６、１６と一体に成形型に倣わせること
により、膨出部３２を備えた紙製緩衝材用本体を成形す
る。

【００２９】そして、紙製緩衝材用本体の膨出部３２の
開口側を被覆材２６により閉鎖させ、紙製緩衝材用本体
の膨出部３２の内側に空気室３０を設けることにより紙
製緩衝材４０が得られる。

【００３０】前記の実施の形態では、比較大きな膨出部
３２が２個設けられている例であるが、もちろんエンボ
スシートのように小さな膨出部を多数設けることは自由
である。

【００３１】被覆材２６の種類を制限するものではない
から、クラフト紙などの紙類のほか、プラスチックスフ
イルムを採用することも予定される。また、膨出部３２
を備えた紙製緩衝材用本体に紙シートやプラスチックス
フイルムを装着させることにより、紙製緩衝材４０を得
ることのほか、被覆材２６として段ボール箱６０の側片
２８を利用してもよい（図４、図５を参照）。

【００３２】つまり、図４、図５を参照して明らかなよ
うに、膨出部３２の開口側に被覆材２６を装着させて空
気室３０を形成するに先立って、紙製緩衝材用本体の膨
出部３２の開口側を段ボール箱６０の側片２８の内側に
向け、その開口側を側片２８に貼付することによっても
膨出部３２の内側に空気室３０を備えた紙製緩衝材を得
ることができる。

【００３３】また、図６に示されるように、二個の紙製
緩衝材用本体を予め成形した後、膨出部３２の開口側を
互いに向き合わせ、開口部の周縁を接着剤を介して接着
することにより、内側に空気室３０を備えた膨出部３２
の大きい紙製緩衝材５０を得ることができる。

【００３４】成形時に成形圧力を利用して切込み１２を
介して切り込み付紙シート１４は伸張するが、成形に先
立って切り込み付紙シート１４を予め伸張させた上成形
することにより切り込み付紙シート１４は一層成形し易
い。また、図示を省略したが、段ボール用の中芯に見ら
れるような波状の屈曲部を多数備えた切り込み付紙シー
トを採用することにより、一層成形を実施し易い利点が
あるし、一層亀裂を発生するおれがなく成形できる。

【００３５】二枚の紙シート１６、１６の間に一枚の切
り込み付紙シート１４を積層させる例について説明した
が、もとより二枚以上挿入させることは自由である。二
枚以上挿入させる場合、切り込み１２の方向が相互に交
差するように切り込み付紙シート１４を積層させること
が有利である。圧搾時にその応力が奏する際、伸張方向
が交差することになるから、切り込み付紙シート１４が
切り込み１２を境にして破れることを抑制できるからで
ある。

【００３６】また、空気室３０を得る場合、図示を省略
したが、プラスチックスフィルムにより被覆するように
すれば空気漏れのない空気室３０を得ることができる。
図２に示す紙製造緩衝材４０についていえば、空気室３
０を囲む紙シート１６と被覆材２６の内側面にプラスチ
ックスフィルムを設けることにより、空気漏れのない空
気室３０が得られる。

【００３７】このことは、段ボール箱６０の場合では、
側片２８の内側面と空気室３０側の紙シートの内側面に
プラスチックスフィルムを設け（図５を参照）、また、
図６に示す緩衝材５０の場合では、空気室３０側の紙シ
ート１６、１６の表面にプラスチックスフィルムを設け
ることにくより、空気室３０を一層密封状態にすること
ができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】切り込みが不連続に多数設けられた切込み付シ
ートの斜視図である。

【図２】紙製緩衝材の要部断面図である。

【図３】製造工程を示す概略斜視図である。

【図４】他の実施の形態と使用状態を示す斜視図であ
る。

【図５】図４の一部断面図である。

【図６】さらに他の実施の形態による紙製緩衝材の断面
図である。

【符号の説明】

１２ 切り込み １４ 切り込み付シート １６ 紙シート ２６ 被覆材 ３０ 空気室 ３２ 膨出部 ４０ 紙製緩衝材 ５０ 紙製緩衝材

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 非切り込み部分を残存させ、切り込みを
   多数設けた切り込み付紙シートの少なくとも一枚を成形
   型内において上下の紙シート間に積層させ、 加熱圧搾することにより該切り込みを境にしてその両側
   に切り込み付紙シートを伸張させつつ、切り込み付紙シ
   ートを上下の紙シートとともに一体に成形することによ
   り膨出部を備えた紙製緩衝材用本体を成形し、 紙製緩衝材用本体の膨出部の開口側を被覆材を介して閉
   鎖させることにより、紙製緩衝材用本体の膨出部の内側
   に空気室を設けることを特徴とする紙製緩衝材の乾式製
   造方法。
2. 【請求項２】 被覆材が紙シートであることを特徴とす
   る紙製緩衝材の乾式製造方法。