JPH09327509A - 人工血管 - Google Patents
人工血管Info
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- JPH09327509A JPH09327509A JP8147148A JP14714896A JPH09327509A JP H09327509 A JPH09327509 A JP H09327509A JP 8147148 A JP8147148 A JP 8147148A JP 14714896 A JP14714896 A JP 14714896A JP H09327509 A JPH09327509 A JP H09327509A
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- blood vessel
- artificial blood
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 移植初期から長期に渡って高い開存性を維持
できる人工血管を提供する。 【解決手段】 高分子材料からなる多孔質チューブの壁
内に、無機塩によってイオン架橋する酸性物質とヘパリ
ンの混合物を充填した人工血管、または高分子材料から
なる多孔質チューブの少なくとも血液が接触する表面
に、酸性物質を化学的に結合し、該酸性物質にヘパリン
を無機塩でイオン架橋させた人工血管。
できる人工血管を提供する。 【解決手段】 高分子材料からなる多孔質チューブの壁
内に、無機塩によってイオン架橋する酸性物質とヘパリ
ンの混合物を充填した人工血管、または高分子材料から
なる多孔質チューブの少なくとも血液が接触する表面
に、酸性物質を化学的に結合し、該酸性物質にヘパリン
を無機塩でイオン架橋させた人工血管。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、人工血管に関し、
更に詳しくは大動脈、冠状動脈、末梢血管などの疾患の
治療に好ましく用いられる人工血管に関する。
更に詳しくは大動脈、冠状動脈、末梢血管などの疾患の
治療に好ましく用いられる人工血管に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、ポリエステル繊維の織物また
は編物のチューブや、延伸ポリテトラフルオロエチレン
(以下、ePTFE)のチューブが人工血管として用い
られている。ePTFEチューブは、素材であるポリテ
トラフルオロエチレン自体が抗血栓性に優れる上、延伸
によって得られる繊維−結節からなる多孔質構造が生体
適合性に優れるため、ポリエステルに比較して、より小
口径の人工血管に適用されてきた。
は編物のチューブや、延伸ポリテトラフルオロエチレン
(以下、ePTFE)のチューブが人工血管として用い
られている。ePTFEチューブは、素材であるポリテ
トラフルオロエチレン自体が抗血栓性に優れる上、延伸
によって得られる繊維−結節からなる多孔質構造が生体
適合性に優れるため、ポリエステルに比較して、より小
口径の人工血管に適用されてきた。
【0003】しかしながら、ePTFEでも抗血栓性が
十分ではなく、内径5mm以下、特に内径4mm以下の
人工血管では十分な開存率は得られていない。そこでこ
れらを解決する方法として、従来より、人工血管を移
植後に、内面に抗血栓性を有する組織造りを促すように
工夫する方法、人工血管内に、抗血栓性を有する組織
を培養(播種)する方法、材料自体の抗血栓性を高め
る方法が検討されている。
十分ではなく、内径5mm以下、特に内径4mm以下の
人工血管では十分な開存率は得られていない。そこでこ
れらを解決する方法として、従来より、人工血管を移
植後に、内面に抗血栓性を有する組織造りを促すように
工夫する方法、人工血管内に、抗血栓性を有する組織
を培養(播種)する方法、材料自体の抗血栓性を高め
る方法が検討されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】具体的には、の方法
としては、コラーゲンやフィブロネクチン等の細胞接着
性蛋白を塗布後に架橋した人工血管が提案されている
(ルンドグレンら、トランザクションズ・オブ・アサイ
オ,32,346(1986)など)。の方法として
は、人工血管内面に血管内皮茶房を播種する方法が検討
されている(高木ら、人工臓器、17、679、(19
88)、特開平1−170466号報など)。の方法
としてはミクロ相分離構造の抗血栓性高分子材料や抗血
栓剤固定化材料の開発が検討されている(野一色ら、ト
ランザクションズ・オブ・アサイオ,23,253(1
977)など)。
としては、コラーゲンやフィブロネクチン等の細胞接着
性蛋白を塗布後に架橋した人工血管が提案されている
(ルンドグレンら、トランザクションズ・オブ・アサイ
オ,32,346(1986)など)。の方法として
は、人工血管内面に血管内皮茶房を播種する方法が検討
されている(高木ら、人工臓器、17、679、(19
88)、特開平1−170466号報など)。の方法
としてはミクロ相分離構造の抗血栓性高分子材料や抗血
栓剤固定化材料の開発が検討されている(野一色ら、ト
ランザクションズ・オブ・アサイオ,23,253(1
977)など)。
【0005】しかし、の方法は、内皮細胞で被覆され
るまでの初期に血栓性を逆に高めること、の方法は、
ヒトの血管内皮細胞の確保が困難で、かつ培養に数週間
かかることが問題であり、実用化されていない。の方
法は、特に抗血栓物質を有効に活かせることができない
ことが主な原因で十分な結果は得られていない。例え
ば、抗凝固物質であるヘパリンを用いる場合、(1)高
分子チューブにコラーゲンゲルとヘパリンの混合物をコ
ーティングする方法(特公昭61−58196号公
報)、(2)高分子チューブにヘパリンを共有結合させ
る方法(R.D.Falbら、Ann.N.Y.Acad.Sc
i.,283,396,1977)、(3)プロタミンな
どの塩基性の物質を介してヘパリンをイオン架橋した物
をコーティングする方法が報告されている(特公昭63
−20143号公報、特開昭50−93793号公
報)。しかしながら、(1)のように単に高分子ゲル内
にヘパリンを混合するだけでは、拡散によって即時にヘ
パリンが流出し、十分な期間放出させることはできな
い。(2)ではヘパリンの活性が低下するほかに、長期
間使用する人工血管の場合、ヘパリンが組織治癒を阻害
するという問題がある。(3)は(1)、(2)の問題
点を改善するであろうと考えられるが、実際は陽性荷電
物質とヘパリンとをイオン結合させることによる放出性
制御は困難であり、(1)と同様に短期間にヘパリンが
全て放出されたり、(2)と同様に長期間残存してしま
うことが問題となっている。さらなる問題点として、血
液は塩基性の担体に接触すると、血栓の形成が促進する
ことや組織治癒の阻害などが生じることがあげられる。
るまでの初期に血栓性を逆に高めること、の方法は、
ヒトの血管内皮細胞の確保が困難で、かつ培養に数週間
かかることが問題であり、実用化されていない。の方
法は、特に抗血栓物質を有効に活かせることができない
ことが主な原因で十分な結果は得られていない。例え
ば、抗凝固物質であるヘパリンを用いる場合、(1)高
分子チューブにコラーゲンゲルとヘパリンの混合物をコ
ーティングする方法(特公昭61−58196号公
報)、(2)高分子チューブにヘパリンを共有結合させ
る方法(R.D.Falbら、Ann.N.Y.Acad.Sc
i.,283,396,1977)、(3)プロタミンな
どの塩基性の物質を介してヘパリンをイオン架橋した物
をコーティングする方法が報告されている(特公昭63
−20143号公報、特開昭50−93793号公
報)。しかしながら、(1)のように単に高分子ゲル内
にヘパリンを混合するだけでは、拡散によって即時にヘ
パリンが流出し、十分な期間放出させることはできな
い。(2)ではヘパリンの活性が低下するほかに、長期
間使用する人工血管の場合、ヘパリンが組織治癒を阻害
するという問題がある。(3)は(1)、(2)の問題
点を改善するであろうと考えられるが、実際は陽性荷電
物質とヘパリンとをイオン結合させることによる放出性
制御は困難であり、(1)と同様に短期間にヘパリンが
全て放出されたり、(2)と同様に長期間残存してしま
うことが問題となっている。さらなる問題点として、血
液は塩基性の担体に接触すると、血栓の形成が促進する
ことや組織治癒の阻害などが生じることがあげられる。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは鋭意研究し
た結果、様々な塩基性の担体を介し、高分子材料にイオ
ン結合したヘパリンの徐放制御を難しくしている原因
は、使用するヘパリンの分子量が数千〜数万の広い範囲
にあり、イオン結合によるヘパリン1分子当たりの架橋
数が一様ではないためであることを発見した。すなわ
ち、従来技術では、低分子量のヘパリンは解離しやす
く、高分子量のヘパリンは解離せずに長期間残存するこ
とは避けられなかった。また、塩基性の物質を用いる
と、血栓形成を促進させたり、治癒阻害させてしまう。
これらの知見に基づき、本発明者らはヘパリンの放出を
制御する新規な方法を見いだした。
た結果、様々な塩基性の担体を介し、高分子材料にイオ
ン結合したヘパリンの徐放制御を難しくしている原因
は、使用するヘパリンの分子量が数千〜数万の広い範囲
にあり、イオン結合によるヘパリン1分子当たりの架橋
数が一様ではないためであることを発見した。すなわ
ち、従来技術では、低分子量のヘパリンは解離しやす
く、高分子量のヘパリンは解離せずに長期間残存するこ
とは避けられなかった。また、塩基性の物質を用いる
と、血栓形成を促進させたり、治癒阻害させてしまう。
これらの知見に基づき、本発明者らはヘパリンの放出を
制御する新規な方法を見いだした。
【0007】第1に、本発明は、高分子材料からなる多
孔質チューブの壁内(壁中の孔内)に、無機塩によって
イオン架橋する酸性物質(担体)とヘパリンの混合物を
充填した人工血管を提供する。これにより、担体によっ
て、血栓の形成が促進されたり、組織治癒を阻害するこ
とはなく、さらにこの担体に生体分解性の物を使用する
ことにより、低分子量のヘパリンは徐々に解離して放出
され、高分子量のヘパリンは、担体が分解されることに
よって徐々に放出させることが可能で、適当な期間にわ
たって、適当量のヘパリンを放出させることができる。
孔質チューブの壁内(壁中の孔内)に、無機塩によって
イオン架橋する酸性物質(担体)とヘパリンの混合物を
充填した人工血管を提供する。これにより、担体によっ
て、血栓の形成が促進されたり、組織治癒を阻害するこ
とはなく、さらにこの担体に生体分解性の物を使用する
ことにより、低分子量のヘパリンは徐々に解離して放出
され、高分子量のヘパリンは、担体が分解されることに
よって徐々に放出させることが可能で、適当な期間にわ
たって、適当量のヘパリンを放出させることができる。
【0008】第2に、本発明は、高分子材料からなる多
孔質チューブの少なくとも血液が接触する表面に、酸性
物質(担体)を化学的に結合し、該高分子物質にヘパリ
ンを無機塩でイオン架橋させた人工血管を提供する。こ
の人工血管では、高分子材料の多孔質チューブに酸性物
質が担体に結合され、これにヘパリンがイオン架橋によ
り結合されるので、担体による血栓形成および組織治癒
阻害はなく、さらに、生体分解性物質を担体に使用すれ
ば、低分子量のヘパリンは徐々に解離され放出され、一
方、高分子量のヘパリンは担体が分解されることによっ
て徐々に放出させることが可能で、適当な期間にわたっ
て、適当量のヘパリンを放出させることができる上、酸
性物質の存在により、ヘパリン溶出後にも血栓形成が促
進されたり、治癒阻害が生じることがない。
孔質チューブの少なくとも血液が接触する表面に、酸性
物質(担体)を化学的に結合し、該高分子物質にヘパリ
ンを無機塩でイオン架橋させた人工血管を提供する。こ
の人工血管では、高分子材料の多孔質チューブに酸性物
質が担体に結合され、これにヘパリンがイオン架橋によ
り結合されるので、担体による血栓形成および組織治癒
阻害はなく、さらに、生体分解性物質を担体に使用すれ
ば、低分子量のヘパリンは徐々に解離され放出され、一
方、高分子量のヘパリンは担体が分解されることによっ
て徐々に放出させることが可能で、適当な期間にわたっ
て、適当量のヘパリンを放出させることができる上、酸
性物質の存在により、ヘパリン溶出後にも血栓形成が促
進されたり、治癒阻害が生じることがない。
【0009】
【発明実施の形態】人工血管を構成する多孔質チューブ
としては、ポリウレタン、フッ素ゴム等の多孔質エラス
トマー、ポリエステル繊維の織物、ePTFEが例示で
きる。以下、ePTFEチューブを例にして、本発明を
説明する。ePTFEチューブに酸性物質とヘパリンを
固定する方法としては、酸性物質とヘパリンと無機塩の
混合物を単に壁中の孔内に注入する方法、または、eP
TFEの壁中の孔内表面(孔を形成するPTFE繊維の
表面)に酸性物質を化学的に固定した後、ヘパリンを無
機塩によりイオン結合させる方法を用いればよい。
としては、ポリウレタン、フッ素ゴム等の多孔質エラス
トマー、ポリエステル繊維の織物、ePTFEが例示で
きる。以下、ePTFEチューブを例にして、本発明を
説明する。ePTFEチューブに酸性物質とヘパリンを
固定する方法としては、酸性物質とヘパリンと無機塩の
混合物を単に壁中の孔内に注入する方法、または、eP
TFEの壁中の孔内表面(孔を形成するPTFE繊維の
表面)に酸性物質を化学的に固定した後、ヘパリンを無
機塩によりイオン結合させる方法を用いればよい。
【0010】より詳細に説明すると、ePTFEチュー
ブの壁内に、蒸留水中で酸性物質にヘパリンをイオン結
合させ、この溶液を、チューブ内腔側から圧力をかける
か、外側を陰圧にすることにより、壁内に注入すればよ
い。この時、孔径が小さいePTFEチューブである
と、注入に要する内腔・外面間の差圧は大きくなり、チ
ューブが変形することがある。このような場合、予めe
PTFEチューブ壁内の空気をPTFEと親和性のある
エタノール等で置換しておけば、比較的に小さな差圧で
も注入することができる。
ブの壁内に、蒸留水中で酸性物質にヘパリンをイオン結
合させ、この溶液を、チューブ内腔側から圧力をかける
か、外側を陰圧にすることにより、壁内に注入すればよ
い。この時、孔径が小さいePTFEチューブである
と、注入に要する内腔・外面間の差圧は大きくなり、チ
ューブが変形することがある。このような場合、予めe
PTFEチューブ壁内の空気をPTFEと親和性のある
エタノール等で置換しておけば、比較的に小さな差圧で
も注入することができる。
【0011】また、ePTFEチューブに酸性物質を化
学的に固定した後、無機塩を介してヘパリンをイオン結
合させるができる。ePTFEに酸性物質を化学的に固
定するには、アルカリ金属化合物による化学処理による
方法、あるいはγ線や電子線などの放射線放射やコロナ
放電、グロー放電処理などの物理的処理による方法を用
いて脱フッ素化した後に、分子内にカルボキシル基、水
酸基、アミノ基、エポキシ基等を有する化合物を反応さ
せることで官能基を導入し、この官能基に酸性物質を結
合させる。
学的に固定した後、無機塩を介してヘパリンをイオン結
合させるができる。ePTFEに酸性物質を化学的に固
定するには、アルカリ金属化合物による化学処理による
方法、あるいはγ線や電子線などの放射線放射やコロナ
放電、グロー放電処理などの物理的処理による方法を用
いて脱フッ素化した後に、分子内にカルボキシル基、水
酸基、アミノ基、エポキシ基等を有する化合物を反応さ
せることで官能基を導入し、この官能基に酸性物質を結
合させる。
【0012】化学処理に用いるアルカリ金属化合物とし
ては、例えばメチルリチウム、n−ブチルリチウム、t
−ブチルリチウム、ナトリウム−ナフタレン、ナフタレ
ン−ベンゾフェノン、ビニルリチウムなどが挙げられ、
これらを溶液として使用する。ナトリウム−ナフタレ
ン、ナトリウム−ベンゾフェノンは、処理によってeP
TFE表面に黒褐色の層を形成する上、ePTFE表面
を均一に処理することが困難であるので、本発明の人工
血管を作成するには、メチルリチウム、n−ブチルリチ
ウム、t−ブチルリチウムを用いることが望ましい。メ
チルリチウム、n−ブチルリチウム、t−ブチルリチウ
ムはこれ自体ではフッ素を引き抜く作用が弱いので、キ
レート試薬であるヘキサメチルホスホリックトリアミド
やN,N,N,N−テトラメチルエチレンジアミン等を
添加することが望ましい。
ては、例えばメチルリチウム、n−ブチルリチウム、t
−ブチルリチウム、ナトリウム−ナフタレン、ナフタレ
ン−ベンゾフェノン、ビニルリチウムなどが挙げられ、
これらを溶液として使用する。ナトリウム−ナフタレ
ン、ナトリウム−ベンゾフェノンは、処理によってeP
TFE表面に黒褐色の層を形成する上、ePTFE表面
を均一に処理することが困難であるので、本発明の人工
血管を作成するには、メチルリチウム、n−ブチルリチ
ウム、t−ブチルリチウムを用いることが望ましい。メ
チルリチウム、n−ブチルリチウム、t−ブチルリチウ
ムはこれ自体ではフッ素を引き抜く作用が弱いので、キ
レート試薬であるヘキサメチルホスホリックトリアミド
やN,N,N,N−テトラメチルエチレンジアミン等を
添加することが望ましい。
【0013】分子内に水酸基、カルボキシル基、エポキ
シ基またはアミノ基を含有する物質としては、グリセロ
ール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メ
タ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)ア
クリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレ
ート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アク
リル酸、アリルアミン、2−アミノエチル(メタ)アク
リレート、アクリルアミド等が挙げられる。また、無水
マレイン酸等の無水物を付加し、その後に加水分解して
もよい。
シ基またはアミノ基を含有する物質としては、グリセロ
ール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メ
タ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)ア
クリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレ
ート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アク
リル酸、アリルアミン、2−アミノエチル(メタ)アク
リレート、アクリルアミド等が挙げられる。また、無水
マレイン酸等の無水物を付加し、その後に加水分解して
もよい。
【0014】より具体的には、アルゴン雰囲気下にeP
TFEチューブをメチルリチウムなどのジエチルエーテ
ル溶液に浸漬しておき、ここにヘキサメチルホスホリッ
クトリアミドなどを添加して−10〜0℃で30分〜6
0分間放置してPTFEからフッ素原子を引き抜いた
後、溶液を除去し、アクリル酸などの水溶液を加えて8
0〜90℃で4〜10時間反応させる。反応後に余剰の
アクリル酸などとその重合体を洗浄除去してアクリル酸
のグラフト体を得る。
TFEチューブをメチルリチウムなどのジエチルエーテ
ル溶液に浸漬しておき、ここにヘキサメチルホスホリッ
クトリアミドなどを添加して−10〜0℃で30分〜6
0分間放置してPTFEからフッ素原子を引き抜いた
後、溶液を除去し、アクリル酸などの水溶液を加えて8
0〜90℃で4〜10時間反応させる。反応後に余剰の
アクリル酸などとその重合体を洗浄除去してアクリル酸
のグラフト体を得る。
【0015】ePTFEにこれらの官能基を導入するた
めにγ線や電子線などの放射線照射やグロウ放電を用い
てもよい。しかし公知の事実より、放射線による処理で
は、ePTFEの結晶内部までPTFEが分解されるた
めPTFEの分子量が低下し強度が著しく低下するの
で、人工血管として実用に供するのは困難である。また
グロー放電処理では延伸PTFEの多孔質内部まで処理
を施すことは困難である。
めにγ線や電子線などの放射線照射やグロウ放電を用い
てもよい。しかし公知の事実より、放射線による処理で
は、ePTFEの結晶内部までPTFEが分解されるた
めPTFEの分子量が低下し強度が著しく低下するの
で、人工血管として実用に供するのは困難である。また
グロー放電処理では延伸PTFEの多孔質内部まで処理
を施すことは困難である。
【0016】これに対しアルカリ金属処理によれば、厚
さ約数百オングストロームのごく表層だけが処理される
ため、高分子チューブの強度の低下はなく、更にePT
FEのような多孔質体であっても均一に処理することが
可能である。
さ約数百オングストロームのごく表層だけが処理される
ため、高分子チューブの強度の低下はなく、更にePT
FEのような多孔質体であっても均一に処理することが
可能である。
【0017】ePTFEにグラフト重合させた物質が酸
性であれば、無機塩ヘパリンを架橋できる場合もある
が、通常は、所望の酸性物質を、導入した官能基に化学
結合させるのがよい。その方法は、その官能基に適した
方法を選択すればよい。例えば水酸基、カルボキシル基
およびアミノ基に対しては脱水縮合により、エポキシ基
に対しては付加反応により共有結合を形成させる。水酸
基に対しては、そのままカルボジイミドを触媒として脱
水縮合により結合させてもよいし、水酸基に例えばトリ
フルオロメタンスルホニル基等の脱離基を導入して反応
性を上げておいてから組織誘導性物質のアミノ基と反応
させてもよい。またカルボキシル基に対しては、そのま
まカルボジイミド等の脱水縮合触媒を用いて結合しても
よいし、N−ヒドロキシコハク酸イミドを反応させて活
性エステルを導入して反応性を上げておいてからアミノ
基と反応させてもよい。
性であれば、無機塩ヘパリンを架橋できる場合もある
が、通常は、所望の酸性物質を、導入した官能基に化学
結合させるのがよい。その方法は、その官能基に適した
方法を選択すればよい。例えば水酸基、カルボキシル基
およびアミノ基に対しては脱水縮合により、エポキシ基
に対しては付加反応により共有結合を形成させる。水酸
基に対しては、そのままカルボジイミドを触媒として脱
水縮合により結合させてもよいし、水酸基に例えばトリ
フルオロメタンスルホニル基等の脱離基を導入して反応
性を上げておいてから組織誘導性物質のアミノ基と反応
させてもよい。またカルボキシル基に対しては、そのま
まカルボジイミド等の脱水縮合触媒を用いて結合しても
よいし、N−ヒドロキシコハク酸イミドを反応させて活
性エステルを導入して反応性を上げておいてからアミノ
基と反応させてもよい。
【0018】複合化する酸性物質としては、例えばグル
ロン酸を豊富に含有するアルギン酸などが挙げられる。
アルギン酸はカルシウム塩を介してヘパリンを多量に結
合でき、アルギン酸1μgに対しヘパリン約2.5μg
(約0.5unit)が結合する。
ロン酸を豊富に含有するアルギン酸などが挙げられる。
アルギン酸はカルシウム塩を介してヘパリンを多量に結
合でき、アルギン酸1μgに対しヘパリン約2.5μg
(約0.5unit)が結合する。
【0019】無機塩としては、カルシウム、マグネシウ
ム、バリウムなどの金属の塩、例えば塩化物(塩化カル
シウム、塩化マグネシウム、塩化バリウムなど)が例示
できる。中でも、安全性を考えると、血液中にも多量に
存在するカルシウムの塩、特に塩化物が好ましい。
ム、バリウムなどの金属の塩、例えば塩化物(塩化カル
シウム、塩化マグネシウム、塩化バリウムなど)が例示
できる。中でも、安全性を考えると、血液中にも多量に
存在するカルシウムの塩、特に塩化物が好ましい。
【0020】
【実施例】実施例1 内径2.0mm、外径3.0mm、長さ20mm、平均
(結節間)繊維長30μm、空隙率75%のePTFE
チューブを、アルゴン雰囲気下、メチルリチウムのエー
テル溶液(1.4M)20mlとヘキサメチルホスホリ
ックアミド2mlの混合溶液に30分間浸漬した後、溶
液だけを除去し、アクリル酸1gの水20ml中溶液を
加え、80℃で10時間反応させた。この後、余剰のア
クリル酸とグラフトしていないポリアクリル酸を洗浄除
去し、アクリル酸グラフトチューブを得た。重量変化の
測定値から計算したところ、アクリル酸のグラフト量は
チューブ1cmあたり約250μgであった。
(結節間)繊維長30μm、空隙率75%のePTFE
チューブを、アルゴン雰囲気下、メチルリチウムのエー
テル溶液(1.4M)20mlとヘキサメチルホスホリ
ックアミド2mlの混合溶液に30分間浸漬した後、溶
液だけを除去し、アクリル酸1gの水20ml中溶液を
加え、80℃で10時間反応させた。この後、余剰のア
クリル酸とグラフトしていないポリアクリル酸を洗浄除
去し、アクリル酸グラフトチューブを得た。重量変化の
測定値から計算したところ、アクリル酸のグラフト量は
チューブ1cmあたり約250μgであった。
【0021】このチューブの壁内に、1%ヘパリン水溶
液を注入後、2M塩化カルシウム水溶液に1時間漬けた
後、蒸留水で洗浄し、ヘパリンをイオン結合させた。重
量変化の測定値から計算したところ、ヘパリンの結合量
はチューブ1cmあたり23unit/cmであった。
液を注入後、2M塩化カルシウム水溶液に1時間漬けた
後、蒸留水で洗浄し、ヘパリンをイオン結合させた。重
量変化の測定値から計算したところ、ヘパリンの結合量
はチューブ1cmあたり23unit/cmであった。
【0022】実施例2 実施例1で用いたのと同じePTFEチューブをエタノ
ールに漬けた後、内腔より0.5%アルギン酸/1%ヘ
パリンの混合水溶液をチューブ壁内に注入した。このチ
ューブを2M塩化カルシウム水溶液に1時間漬けてチュ
ーブ壁内でアルギン酸とヘパリンをイオン結合させた
後、蒸留水で洗浄した。このチューブの重量変化の測定
値から計算したところ、アルギン酸・ヘパリン混合物の
結合量は383μg/cmであった。(別途行った結合比率
の実験データより、ヘパリン量は50unit/cm程度と推
定される。)
ールに漬けた後、内腔より0.5%アルギン酸/1%ヘ
パリンの混合水溶液をチューブ壁内に注入した。このチ
ューブを2M塩化カルシウム水溶液に1時間漬けてチュ
ーブ壁内でアルギン酸とヘパリンをイオン結合させた
後、蒸留水で洗浄した。このチューブの重量変化の測定
値から計算したところ、アルギン酸・ヘパリン混合物の
結合量は383μg/cmであった。(別途行った結合比率
の実験データより、ヘパリン量は50unit/cm程度と推
定される。)
【0023】比較例1 実施例1で用いたのと同じePTFEチューブをそのま
ま用いた。
ま用いた。
【0024】比較例2 実施例1で用いたのと同じePTFEチューブをアルゴ
ン雰囲気下でメチルリチウムのエーテル溶液(1.4
M)20mlとヘキサメチルホスホリックアミド2ml
の混合溶液に30分間浸漬した後、溶液だけを除去し、
アクリル酸1gの水20ml中溶液を加え、80℃で1
0時間反応させた。この後、余剰のアクリル酸とグラフ
トしていないポリアクリル酸を洗浄除去し、アクリル酸
グラフトチューブを得た。重量変化の測定値から計算し
たところ、アクリル酸のグラフト量はチューブ1cmあ
たり約250μgであった。
ン雰囲気下でメチルリチウムのエーテル溶液(1.4
M)20mlとヘキサメチルホスホリックアミド2ml
の混合溶液に30分間浸漬した後、溶液だけを除去し、
アクリル酸1gの水20ml中溶液を加え、80℃で1
0時間反応させた。この後、余剰のアクリル酸とグラフ
トしていないポリアクリル酸を洗浄除去し、アクリル酸
グラフトチューブを得た。重量変化の測定値から計算し
たところ、アクリル酸のグラフト量はチューブ1cmあ
たり約250μgであった。
【0025】比較例3 内径2.0mm、外径3.0mm、長さ20mmのePT
FEチュ−ブをエタノール、続いて水に浸漬した後に、
20%のプロタミン水溶液に浸漬して1時間放置後、1
%グルタールアルデヒド水溶液に浸漬して架橋した。こ
のチューブを10%ヘパリン水溶液に浸漬し、ヘパリン
をイオン結合固定した。チューブの重量変化から計算し
たところ、プロタミンの固定量は115μg/cm、ヘパリ
ンの固定量は30unit/cmであった。
FEチュ−ブをエタノール、続いて水に浸漬した後に、
20%のプロタミン水溶液に浸漬して1時間放置後、1
%グルタールアルデヒド水溶液に浸漬して架橋した。こ
のチューブを10%ヘパリン水溶液に浸漬し、ヘパリン
をイオン結合固定した。チューブの重量変化から計算し
たところ、プロタミンの固定量は115μg/cm、ヘパリ
ンの固定量は30unit/cmであった。
【0026】実施例及び比較例の人工血管(各5本)を
ウサギの頚動脈に置換移植した。結果を表1に示す。何
も処理を施さないePTFEチューブ(比較例1)と単
にメタクリル酸を固定しただけのePTFEチューブ
(比較例2)に比べ、ヘパリンを複合化したePTFE
チューブの開存率は高く、特に酸性物質に塩化カルシウ
ムを介してヘパリンを架橋させたePTFEチューブ
(実施例1及び2)は1カ月後でも開存率が高かった。
また病理学的観察を行った結果では、比較例3では1カ
月においてもチューブ壁内に好中球・マクロファージが
多く存在し、コラーゲン成分も希薄であったが、実施例
1及び2ではチューブ壁内の孔は繊維芽細胞主体のコラ
ーゲン組織で満たされていた。開存性には、このような
治癒性も大きく関わっているものと思われる。
ウサギの頚動脈に置換移植した。結果を表1に示す。何
も処理を施さないePTFEチューブ(比較例1)と単
にメタクリル酸を固定しただけのePTFEチューブ
(比較例2)に比べ、ヘパリンを複合化したePTFE
チューブの開存率は高く、特に酸性物質に塩化カルシウ
ムを介してヘパリンを架橋させたePTFEチューブ
(実施例1及び2)は1カ月後でも開存率が高かった。
また病理学的観察を行った結果では、比較例3では1カ
月においてもチューブ壁内に好中球・マクロファージが
多く存在し、コラーゲン成分も希薄であったが、実施例
1及び2ではチューブ壁内の孔は繊維芽細胞主体のコラ
ーゲン組織で満たされていた。開存性には、このような
治癒性も大きく関わっているものと思われる。
【0027】
【表1】
【0028】
【発明の効果】これまでも、ePTFEチューブが人工
血管として用いられている。しかしながら、この材料自
体は抗血栓性が十分ではなく、特に内径4mm以下の小
口径領域では血栓による閉塞が頻発する。本発明の人工
結果では、ePTFEチューブの壁内に無機塩によって
イオン架橋する酸性物質とヘパリンの混合物が充填され
ている、あるいはePTFEチューブの表面に酸性物質
が化学的に結合され、それにヘパリンがイオン架橋され
ているので、移植初期から長期に渡って高い開存性を維
持できる。
血管として用いられている。しかしながら、この材料自
体は抗血栓性が十分ではなく、特に内径4mm以下の小
口径領域では血栓による閉塞が頻発する。本発明の人工
結果では、ePTFEチューブの壁内に無機塩によって
イオン架橋する酸性物質とヘパリンの混合物が充填され
ている、あるいはePTFEチューブの表面に酸性物質
が化学的に結合され、それにヘパリンがイオン架橋され
ているので、移植初期から長期に渡って高い開存性を維
持できる。
Claims (6)
- 【請求項1】 高分子材料からなる多孔質チューブの壁
内に、無機塩によってイオン架橋する酸性物質とヘパリ
ンの混合物を充填した人工血管。 - 【請求項2】 高分子材料からなる多孔質チューブの少
なくとも血液が接触する表面に、酸性物質を化学的に結
合し、該酸性物質にヘパリンを無機塩でイオン架橋させ
た人工血管。 - 【請求項3】 酸性物質が生体内分解性物質である請求
項1又は2に記載の人工血管。 - 【請求項4】 酸性物質がアルギン酸である請求項1又
は2に記載の人工血管。 - 【請求項5】 無機塩がカルシウムの塩である請求項1
又は2に記載の人工血管。 - 【請求項6】 多孔質チューブが延伸ポリテトラフルオ
ロエチレンからなるチューブである請求項1又は2に記
載の人工血管。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP8147148A JPH09327509A (ja) | 1996-06-10 | 1996-06-10 | 人工血管 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP8147148A JPH09327509A (ja) | 1996-06-10 | 1996-06-10 | 人工血管 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH09327509A true JPH09327509A (ja) | 1997-12-22 |
Family
ID=15423675
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP8147148A Pending JPH09327509A (ja) | 1996-06-10 | 1996-06-10 | 人工血管 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH09327509A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2003024429A (ja) * | 2001-07-18 | 2003-01-28 | Kansai Tlo Kk | 生体適合性被覆材料 |
KR20210157023A (ko) | 2020-06-19 | 2021-12-28 | 대구가톨릭대학교산학협력단 | 혈전 용해능을 갖는 인공혈관 및 이의 제조방법 |
-
1996
- 1996-06-10 JP JP8147148A patent/JPH09327509A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2003024429A (ja) * | 2001-07-18 | 2003-01-28 | Kansai Tlo Kk | 生体適合性被覆材料 |
KR20210157023A (ko) | 2020-06-19 | 2021-12-28 | 대구가톨릭대학교산학협력단 | 혈전 용해능을 갖는 인공혈관 및 이의 제조방법 |
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