JPH09325164A - 絶縁体の損失電流測定方法 - Google Patents

絶縁体の損失電流測定方法

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JPH09325164A
JPH09325164A JP14128296A JP14128296A JPH09325164A JP H09325164 A JPH09325164 A JP H09325164A JP 14128296 A JP14128296 A JP 14128296A JP 14128296 A JP14128296 A JP 14128296A JP H09325164 A JPH09325164 A JP H09325164A
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waveform
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JP14128296A
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English (en)
Inventor
Hideo Tanaka
秀郎 田中
Yukihiro Yagi
幸弘 八木
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Furukawa Electric Co Ltd
Original Assignee
Furukawa Electric Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 電源高調波による測定誤差を分離除去するこ
とができ、劣化に起因した損失電流中の高調波成分を正
確に測定できるようにすること。 【解決手段】 電流比較型損失電流ブリッジ2により、
試料絶縁体Cx に流れる電流波形から基本波電圧位相に
対して90°進んだ基本波電流成分を除去した電流I、
および、試料絶縁体の静電容量C、 tanδを測定する。
また、分圧器DIVにより、試料絶縁体Cx に印加され
る電圧Vを測定する。波形解析用コンピュータ4は、上
記電圧V、静電容量C、誘電正接 tanδに基づき、上記
電流Iに含まれる上記電圧Vの高調波成分により生ずる
高調波成分を算出する。差動増幅器4は、上記電流Iか
ら算出した高調波成分を差し引くことにより、試料絶縁
体Cx に流れる損失電流を求める。上記分圧器DIVを
設ける代わりに、標準コンデンサCs に流れる電流から
上記電圧Vを復元してもよい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、固体、液体、気体
等より構成される絶縁体材料およびこれらより構成され
る電力ケーブル等に交流電圧が印加された場合に発生す
る損失電流を測定する絶縁体の損失電流測定方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】従来、絶縁体材料およびこれらより構成
される電力ケーブル等に流れる損失電流を測定するに
は、測定対象に並列に損失のない標準コンデンサを配設
し、試料絶縁体に流れる電流成分から、電圧基本位相に
対して90°進んだ基本波電流成分を除去することによ
り行っていた。
【0003】図13は従来の損失電流測定方法を説明す
る図である。同図において、1は高調波成分を殆ど含ま
ない正弦波電圧を発生する電源、2は電流比較型損失電
流ブリッジ、Csは無損失標準コンデンサ、Cx は被測
定試料である。電流比較型損失電流ブリッジ2は周知で
あるので詳細な説明は省略するが、上記電流比較型損失
電流ブリッジ2としては、例えば、図14に示すものを
使用することができる。同図に示すように、電流比較型
損失電流ブリッジ2は直列接続された第1および第2の
巻線N1,N2と、第3の巻線N3を有するトランスT
rと、一端が上記トランスTrの第1の巻線N1の可動
端子Aに接続された抵抗Rと、該抵抗Rに一端が接続さ
れ他端が接地された可変コンデンサCdから構成されて
いる。そして、上記抵抗Rの他端に標準コンデンサCs
が接続され、第2の巻線N2に被測定試料Cx が接続さ
れる。また、トランスTrの第3の巻線N3から測定電
流Iが出力される。
【0004】同図において、試料Cx の損失電流を測定
するには、まず、トランスTrの巻線N3の出力が最小
になるようにトランスTrの巻線N1の可動端子Aの位
置と可変コンデンサCdを調整し、上記可動端子Aの位
置および可変コンデンサCdの値から被測定試料Cx の
静電容量Cと誘電正接 tanδを求める。ついで、可変コ
ンデンサCdの値を0にすることにより、トランスTr
の巻線N3から測定電流出力、すなわち、電圧基本位相
に対して90°進んだ基本波電流成分を除去した被測定
試料に流れる損失電流を得る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】劣化した絶縁体の損失
電流中には、電圧−電流特性の非線形性に基づく高調波
が含まれ、これを利用した電力ケーブル等の絶縁機器の
劣化診断が可能になる。しかし、この高調波成分は通常
微小な信号であるため、試料に加えられる電源電圧に高
調波が含まれる場合、この電源高調波による高調波成分
が、測定しようとする試料の損失電流中の高調波成分に
重畳してしまい、試料の劣化に起因した高調波成分を正
確に測定できない。このため、上記した従来の損失電流
測定方法においては、高調波が極めて少ない純粋の基本
波正弦波からなる電源を用意する必要があった。
【0006】しかし、一般に得られる電圧波形には、基
本波成分だけでなく、第2、第3次等の高調波成分が重
畳してるのが通例である。このため、劣化している試料
が発生する微小な高調波電流を測定しようとしても、上
記微小な高調波電流より電源の高調波によって発生する
信号の方が大きくなり、試料の劣化に起因した高調波成
分を正確に測定できないといった問題があった。これ
は、実系統に接続された電力ケーブル等の絶縁機器の劣
化診断を行う上で非常に大きな障害となっていた。
【0007】本発明は上記した従来技術の問題点を解決
するためになされたものであって、高調波を含む電源電
圧を用いた場合でも、電源高調波による測定誤差を分離
除去することができ、劣化に起因した損失電流中の高調
波成分を正確に測定することができる絶縁体の損失電流
測定方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記した従来方法では、
試料と並列に損失のない標準コンデンサを配置し、試料
に流れる電流信号と標準コンデンサに流れる電流信号を
バランスさせ、試料に流れる電流から電圧基本波の位相
に対して90°進んだ電流を除去した電流信号Iを得て
いる。上記試料となる絶縁体に劣化現象が見られない場
合、絶縁体の等価回路は、図2に示す等価回路で表すこ
とができ、電源電圧Vが次に示す式(1)で表す高調波
成分を含んでいる場合、電気回路理論より次の式(2)
で示す電流Iが測定されることが示される。
【0009】
【数1】
【0010】なお、上記式(1)(2)において、nは
高調波の次数、ω0 は基本波の角周波数、Cは試料の静
電容量、 tanδは試料の誘電正接である。上記式(2)
において、右辺の第1項が絶縁体の基本波電圧に対する
損失電流であり、右辺第2項は電源電圧に重畳した高調
波電圧成分により発生した電流の高調波成分である。劣
化した絶縁体においては、式(2)右辺に示される電流
の他に劣化信号に起因して発生する高調波成分が加わる
ことになるが、電源高調波により生じる高調波成分〔式
(2)の右辺第2項〕が存在すると、上記劣化信号を正
確に測定することができない。
【0011】そこで、本発明においては、試料に印加さ
れる電圧もしくは標準コンデンサCs に流れる電流を測
定することにより、試料に印加される電圧波形の基本波
を含めた高調波成分のスペクトルを求める。同時に前述
の電流比較型損失電流ブリッジにより試料の静電容量
C、および基本波に対する誘電正接 tanδを測定する。
そして、基本波の周波数をf0 とした場合、ω0 =2π
0 なる関係でω0 が与えられるため、上記静電容量
C、誘電正接 tanδから、上記式(2)の{ }内の係
数を求める。そして、先に測定した個々の高調波成分の
係数Vn およびVn * より第n次高調波成分の電圧Vn
〔式(2)においては上にドットが付されている〕を復
元し、これに上記{ }内の係数を乗じて第2次高調波
成分以上の成分の和を取ることによって、除去すべき上
記式(2)の右辺第2項、すなわち電源に重畳した高調
波成分を求める。
【0012】そして、前述したブリッジ回路等で測定し
た電流信号I(試料に流れる電流から電圧基本波の位相
に対して90°進んだ電流を除去した電流信号I)か
ら、上記のようにして求めた波形を差し引く。すなわ
ち、電源電圧に重畳する高調波成分を消去し、本来目的
とする損失電流成分を抽出する。被測定試料が劣化して
いて非線形特性を有しているため、理論的には計算する
ことができない高調波成分の電流が上記測定電流に含ま
れている場合、上記のようにして電源電圧に重畳する高
調波成分を消去することにより、被測定試料の劣化に起
因する微小電流を測定することができるようになる。
【0013】上記原理に基づき、本発明は次のようにし
て前記課題を解決する。 (1)試料絶縁体に流れる電流波形から基本波電圧位相
に対して90°進んだ基本波電流成分を除去した第1の
電流波形を測定するとともに、試料絶縁体の静電容量C
と、基本波に対する誘電正接 tanδを測定し、また、上
記試料絶縁体に並列に接続した分圧器により、試料絶縁
体に印加される電圧波形Vを測定し、上記電圧波形V
と、静電容量Cと、誘電正接 tanδより、上記電圧波形
を試料絶縁体に印加した際に試料絶縁体に流れる電流波
形から、基本波電圧位相に対して90°進んだ基本波電
流成分を除去した第2の電流波形を算出し、上記第1の
電流波形から、第2の電流波形を差し引くことにより試
料絶縁体に流れる損失電流を求める。
【0014】(2)試料絶縁体に流れる電流波形から基
本波電圧位相に対して90°進んだ基本波電流成分を除
去した第1の電流波形を測定するとともに、試料絶縁体
の静電容量Cと、基本波に対する誘電正接 tanδを測定
し、また、上記試料絶縁体に並列に配置された無損失標
準コンデンサに流れる電流を測定し、上記無損失標準コ
ンデンサに流れる電流から求めた試料絶縁体に印加され
る電圧波形と、静電容量Cと、誘電正接 tanδより、上
記電圧波形が試料絶縁体に印加された際に試料絶縁体に
流れる電流波形から、基本波電圧位相に対して90°進
んだ基本波電流成分を除去した第2の電流波形を算出
し、上記第1の電流波形から、第2の電流波形を差し引
くことにより試料絶縁体に流れる損失電流を求める。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例について説
明する。 (1)第1の実施例 図1は本発明の第1の実施例を示すブロック図である。
同図において、1’は電源であり、電源1’としては、
高調波成分を含む電源を使用することができる。Cx は
被測定試料、Cs は測定のための無損失標準コンデンサ
であり、前述したように被測定試料Cx 、無損失標準コ
ンデンサCs の一端が上記電源1’に接続され、他端が
電流比較型損失電流ブリッジ2(以下ブリッジと略記す
る)に接続されている。
【0016】DIVは上記電源1’に接続された分圧器
であり、分圧器DIVの帯域は10Hzから10kHz
まで振幅特性がフラットで、位相回転が極めて少ない理
想的なものである。上記分圧器としては、例えば、図3
に示すように抵抗とコンデンサを直並列に接続したCR
形のものを使用することができる。3は波形解析用コン
ピュータであり、分圧器DIVにより電圧された電源
1’の電圧波形をフーリエ変換することにより前記した
高調波成分を求め、また、上記ブリッジ2により求めた
被測定試料の静電容量C、誘電正接 tanδにより上記式
(2)の{ }内の係数を求め、前記式(2)の右辺を
計算する。4は差動増幅器であり、上記ブリッジ2によ
り求めた測定電流Iと、波形解析用コンピュータ3によ
り計算した前記式(2)の右辺の差を求めて試料絶縁体
の損失電流(劣化に起因した高調波成分を含む)を求め
る。
【0017】次に従来法と本実施例による損失電流測定
の比較例について説明する。 (a) 従来法による損失電流の測定 未劣化試料の損失電流測定 まず、劣化していない架橋ポリエチレン(以下、XLP
Eと記す)シート(厚さ2mm/有効電極半径600m
m)を被測定試料Cx として損失電流の測定を行った。
印加電圧として、第2次高調波の各成分が基本波に対し
てそれぞれ0.3%以下の歪みの極めて少ない、5kV
/50Hzの商用周波電圧を用いた。電圧の歪みは、分
圧器DIVの出力を波形解析用コンピュータ3により高
速フーリエ変換(以下FFTという)処理を行うことで
確認した。
【0018】ブリッジ2での測定結果によれば、基本波
に対して tanδ=0.0282%、静電容量C=117
pFであった。試料の静電容量は理論的に115.2p
Fと計算されるが、これは電極寸法の測定誤差等を考慮
すると、一致した値であるといえる。また、測定された
損失電流は基本波について50.2nAであり、理論値
51.8nAと殆ど一致した。また、ブリッジ2の出力
波形のスペクトル分析をFFTにより行っても第2次以
上の高調波成分は基本波に対して1%以下であり、劣化
等が見られないことが合わせて確認された。
【0019】ついで、前述のものとは異なり高調波が重
畳した電圧(5kV)により同様の測定を試みた。この
電圧波形のスペクトルをコンピュータによりFFT処理
を行って、基本波を100とした%表示を行うと、図4
に示す結果を得た。図4には電源高調波により損失電流
中に生ずる高調波電流理論値(基本波の電流理論値を1
00とした%表示)、および、実測の高調波電流値(基
本波の電流実測値を100とした%表示)をあわせて示
している。上記電流理論値は各高調波毎の各サンプリン
グタイミングにおけるデジタルデータに式(2)の右辺
第2項{ }内の係数を乗じることにより得た。
【0020】なお、この例では第10次高調波までの測
定を行っており、それを越える周波数の測定は行わなか
った。これは、第10次高調波の値自体が小さな値であ
るため、これを越える高調波の測定自身が実用上あまり
意味を持たないためである。上記測定を行うことによ
り、実測値と理論値とはかなり一致を見せることがわか
った。また、本来、歪みの極めて少ない正弦波電圧を印
加しても測定されることが少ない高調波電流が、電源電
圧波形に高調波成分が重畳している場合には大きく測定
され、結果に悪影響を及ぼすことが確認された。同時に
この値が大きな測定誤差となることが示される。
【0021】 劣化試料の測定 今度は、水トリー劣化させたXLPEシートについて同
様の測定を試みた。この測定は先のものと同一サイズの
XLPEシートを水トリー劣化させたものを被測定試料
Cx として、損失電流の測定を行ったものである。 tan
δの測定結果は0.354%であり、未劣化品と比較し
て1桁以上大きな値を示している(未劣化品は0.02
82%)。静電容量Cは114pFであり、これについ
ては未劣化品と殆ど変化がなかった(未劣化品は117
pF)。まず、先に用いた高調波歪みの極めて少ない電
圧波形(5kV)により損失電流の測定を行った。その
結果、図5に示す結果が得られた。図5には図4と同
様、電源高調波により損失電流中に生ずる高調波電流理
論値、および、実測の高調波電流値をあわせて示してい
る。上記理論値以上の測定値は絶縁体の劣化に起因する
高調波成分が現れていることになる。
【0022】図5から未劣化品では観測されることがな
かった損失電流の高調波成分も現れていることがわか
る。これは水トリー劣化したことによる劣化信号が検出
されたものである。ついで、この劣化した試料につい
て、先の高調波成分が重畳している電圧波形(5kV)
により損失電流の測定を行った。その結果、図6に示す
結果が得られた。図6には図4、図5と同様、電源高調
波により損失電流中に生ずる高調波電流理論値、およ
び、実測の高調波電流値をあわせて示している。図6か
ら明らかなように、劣化により発生した高調波成分と、
電源電圧に重畳した高調波成分に基づいて発生した成分
が混ざり合い、何を測定しているのかわからない結果と
なっている。
【0023】(b) 本実施例による損失電流の測定 未劣化試料の損失電流の測定 上記(a) の従来方法で用いたものと同一の劣化してい
ないXLPEシートを被測定試料Cx として、図1に示
した本実施例により損失電流の測定を行った。電源電圧
としては、上記(a) の従来方法で用いた高調波成分が重
畳している波形のものを使用した。印加電圧は上記(a)
と同様5kVである。上記(a) の従来方法と同一の試料
であるため、 tanδおよび静電容量Cの測定値は同一で
あった。また、図1に示すように試料Cx に並列に例え
ば前記図2に示したCR形分圧器DIVを接続し、波形
解析用コンピュータ3により印加電圧波形のFFT解析
を行った。
【0024】図8は上記波形解析用コンピュータ3によ
り行ったFFT解析処理を示す図である。すなわち、分
圧器DIVの測定電圧波形を、同図に示すように、アナ
ログ/デジタル変換器3aによりA/D変換し、これを
FFT処理手段3bによりFFT処理した。FFT処理
の結果、各高調波の成分が分離される。また、上記A/
D変換を行う際には、原波形のサンプリングを行うが、
この測定例ではサンプリング周波数として2000Hz
を採用した。先の(a) の従来方法で述べたように、この
測定では第10次高調波までを解析することとしたた
め、標本化定理によると1000Hzのサンプリングを
行えば充分である。そこで、この2倍の周期まで考慮し
ておけば十二分であると判断した。解析の対象とすべき
高調波は、最低でも第3次以上が必要であり、上限は第
20次までを考慮すれば必要十分である。したがって、
A/D変換の際のサンプリングレートとしては最低で3
00Hz(50Hzの第3次高調波の2倍)、最大でも
2400Hz(50Hzの第20次高調波の2倍)とす
れば問題がないことが種々の高調波の解析から明らかと
なった。
【0025】さて、A/D変換され、FFT処理された
電圧波形は、各周波数成分に分解され、あわせて基本波
の位相に対する各周波数成分の位相のずれも同時に測定
できた。一方、前記図1に示したブリッジ2により tan
δおよび静電容量Cの値を測定し、図8の演算手段3c
により、基本波および各高調波(第2高調波以上)に対
して、先に記した式(2)によって、高調波が電圧波形
に重畳していることにより発生する理論値を考慮した電
圧波形を計算した。これは、各高調波毎のサンプリング
タイミングにおけるデジタルデータに式(2)の右辺に
示した各係数を基本波および各高調波に乗じることによ
り得た。
【0026】次に、各サンプリングタイミングにおける
前述の計算により得た各高調波毎の数値を加算手段3d
により加算し、これを標本化定理に基づいてデジタル/
アナログ変換器3eによりD/A変換するすることによ
り式(2)の右辺に相当する電流波形を求めた。この波
形を図1に示した差動増幅器4によりブリッジ2の測定
電流Iから差し引き、増幅して測定出力を得た。以上の
ようにして得た波形のFFT処理を行ったところ、第2
次以上の高調波は基本波に対して1%以下となり、あわ
せて測定された基本波損失電流は49.7nAと求めら
れた。理論値と比較しても良い一致を見ており、本発明
の効果が確認された。
【0027】 次に、前記(a) の比較例で用いたもの
と同一サイズのXLPEシートを水トリー劣化させたも
のを被測定試料Cx として、本実施例により損失電流の
測定を行った。tanδおよび静電容量Cの測定値は前述
の(a) と同一であり、電源電圧は上記と同じ高調波
成分が重畳した波形のものを用いた。印加電圧は上記
と同様5kVである。測定の要領も上記と同様であ
り、その結果、図7に示す測定結果を得た。この結果
は、前記した図5に示した歪みのない電圧波形で測定し
た結果と良く一致しており、本実施例により電源高調波
の影響が除去されていることがわかる。同時にこのよう
な測定により、高調波成分が重畳した電圧波形において
も、初めて正確に劣化に起因する損失電流の高調波成分
を検出することができることが立証された。
【0028】(2)第2の実施例 図9は本発明の第2の実施例を示すブロック図である。
前記図1に示したものと同一のものには同一の符号が付
されており、1’は電源であり、電源1’としては、第
1の実施例と同様、高調波成分を含む電源を使用するこ
とができる。Cx は被測定試料、Cs は測定のための無
損失標準コンデンサであり、前述したように被測定試料
Cx 、無損失標準コンデンサCs の一端が上記電源1’
に接続され、他端がブリッジ2に接続されている。31
は波形解析用コンピュータであり、波形解析用コンピュ
ータ31には、上記ブリッジ2により測定された、基本
波に対する tanδ、静電容量C、標準コンデンサCs に
流れる電流Is およびブリッジ2の測定電流I(試料C
x に流れる電流から電圧基本波の位相に対して90°進
んだ電流を除去した電流信号)が取り込まれる。
【0029】波形解析用コンピュータ31は、上記電流
IをA/D変換したのち、FFT処理を行い、基本波お
よび各高調波成分に分離した後、基本波および各高調波
成分を加算して、波形解析用コンピュータ31の内部で
電流Iを復元する。また、標準コンデンサCs に流れる
電流Is をA/D変換した後、FFT処理を行い、基本
波および各高調波成分に分離し、それぞれに1/nωC
s (n=1,2,…)を乗じ、位相を90°遅らせるこ
とで電源電圧Vの基本波および各高調波成分を復元す
る。なお、上記nは高調波次数、ωは基本波の角速度、
Cs は標準コンデンサの静電容量である。そして、上記
電源電圧Vの基本波および各高調波成分と上記 tanδ、
静電容量Cにより前記式(2)の右辺を求め、これを波
形解析用コンピュータ2の内部で上記電流Iより差し引
くことにより目的とする試料絶縁体の損失電流(劣化に
起因した高調波成分を含む)を求める。
【0030】次に従来法と本実施例による損失電流の測
定の比較例について説明する。測定試料は、第1の実施
例で用いたものと同一のものを使用した。 (a) 高調波成分を殆ど含まない電源電圧を用いた場合の
従来法と本実施例の測定値の比較 高調波成分を殆ど含まない電源電圧を用いた場合の
従来方法の測定結果 これは図5に示した第1の実施例(a)の測定結果と
同一であった。 高調波成分を殆ど含まない電源電圧を用いた場合の
本実施例の測定結果 次に、上記と同じ水トリー劣化したXLPEシートを被
測定試料Cx として、本実施例の方法により損失電流を
測定した。 tanδ、静電容量Cの値とも上記と同様で
ある。また、印加電圧としては上記と同様、高調波成
分を殆ど含まない5kV/50Hzの商用周波電圧を用
いた。 本実施例では、図9に示したように、 tanδ、静電容量
C、標準コンデンサCs に流れる電流Is およびブリッ
ジ2の測定電流Iを波形解析用コンピュータ31に取り
込み解析を行った。
【0031】図10は上記波形解析用コンピュータ31
により行ったFFT解析処理を示す図である。すなわ
ち、波形解析用コンピュータ31に標準コンデンサCs
に流れる電流信号Is 、および、ブリッジ2の測定電流
Iを取り込み、アナログ/デジタル変換器31a,31
fによりA/D変換し、この離散数値をFFT処理手段
31b,31gによりFFT処理し、第10次高調波ま
での各高調波成分に分離した。
【0032】なお、上記A/D変換のサンプリング周波
数は第1の実施例と同様、2000Hzとした。また、
解析範囲を上記のように第10次高調波(〜500H
z)までとしたのは、前述したように、電源電圧波形に
含まれる高調波を見ると第10次高調波の値が十分小さ
く、これを越える高調波の測定自身が実用上あまり意味
を持たないためである。上記のようにして得た標準コン
デンサCs の電流Is の各高調波成分にそれぞれ1/n
ωCs (n=1,2,…)を乗じ、90°位相を遅らせ
ることで、電源電圧波形の各高調波成分を求めた。そし
て、被測定試料の静電容量C、 tanδを用いて、演算手
段31cにより前記式(2)の右辺の各項を計算し、加
算手段31dにより各高調波成分を加算した。
【0033】一方、ブリッジ測定電流IをFFT処理し
て得た各高調波成分を加算手段31hにより加算してブ
リッジ測定電流Iを復元し、減算手段31eにより、ブ
リッジ測定電流Iと、前記式(2)の右辺の差を求めて
被測定試料の劣化に起因する損失電流を求めた。上記の
ようにして測定した損失電流の基本波に対する各高調波
成分の割合を%表示すると図11に示す結果(図11に
おける本発明品測定値)を得た。図11には図5に示し
た電流測定値を本実施例測定値と対比させるために示し
た。この値と本実施例の測定値はほぼ一致していること
がわかる。
【0034】(b) 高調波成分を含んだ電源電圧を用いた
場合の従来法と本実施例の測定値の比較 高調波を含む電源電圧を用いた場合の従来方法の測
定結果 上記(a) と同じ水トリー劣化したXLPEシートを被測
定試料Cx として、従来方法により損失電流を測定し
た。印加電圧としては高調波成分を含んだ5kV/50
Hzの商用周波電圧を用いた。図12にその測定結果を
示す。 tanδ、静電容量Cの値、損失電流の基本波成分
の値は、上記(a) の理想電源を用いた場合と同等であっ
たが、従来方法においては、基本波成分に対する高調波
成分の割合が理想電源を用いた場合と較べて軒並み増加
している。
【0035】 高調波を含む電源電圧を用いた場合の
本実施例の測定結果 上記(a) と同じ水トリー劣化したXLPEシートを被測
定試料Cx として、本実施例により損失電流を測定し
た。印加電圧としては上記と同様、高調波成分を含ん
だ5kV/50Hzの商用周波電圧を用いた。本実施例
においては、図12に示すように、 tanδ、静電容量C
の値、損失電流の基本波成分の値は、もちろん図5に示
した理想電源を用いた場合と同等であり、かつ、基本波
成分に対する高調波成分の割合も電源高調波の影響を受
けることなく、理想電源とほぼ同じ値を測定できた。
【0036】以上のように、従来方法では電源電圧の高
調波による誤差のため測定値が理想電源を用いた場合と
比較して、すべて大きめの値となり正確な測定ができて
いない。これに対し、本実施例では、電源電圧に高調波
が含まれていても理想電源を用いた場合の測定結果とほ
ぼ一致した結果が得られ、電源電圧の含まれる高調波成
分による誤差の影響を除去できることが確認できた。な
お、以上の説明では、劣化した絶縁体の等価回路とし
て、図2に示すCR直列回路に基づく計算を行ったが、
実際の計算ではCRの並列回路を或いはこれらの複合し
た回路など、実際の劣化形態を考慮して適宜の等価回路
を用いて前記式(2)に相当する高調波成分の補正を行
うことができる。
【0037】
【発明の効果】以上説明したように本発明においては、
試料絶縁体に流れる電流波形から基本波電圧位相に対し
て90°進んだ基本波電流成分を除去した第1の電流波
形を測定し、試料絶縁体に印加される電圧波形Vと、試
料絶縁体の静電容量Cと、誘電正接 tanδより、上記電
圧波形を試料絶縁体に印加した際に試料絶縁体に流れる
電流波形から、基本波電圧位相に対して90°進んだ基
本波電流成分を除去した第2の電流波形を算出し、上記
第1の電流波形から、第2の電流波形を差し引くことに
より試料絶縁体に流れる損失電流を求めているので、以
下の効果を得ることができる。
【0038】(1)電源に高調波成分が重畳している場
合であっても、その影響を取り除き基本波に対する損失
電流成分を正確に測定することができる。 (2)劣化した試料のように、その非線形特性によって
理論値以上に高調波成分が発生する場合、印加電圧に高
調波が重畳していても、試料の劣化に起因する成分のみ
を取り出すことが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例のブロック図である。
【図2】絶縁体の等価回路の一例を示す図である。
【図3】CR形分圧器の一例を示す図である。
【図4】従来方法による測定値を示す図(その1)であ
る。
【図5】従来方法による測定値を示す図(その2)であ
る。
【図6】従来方法による測定値を示す図(その3)であ
る。
【図7】本発明の第1の実施例による測定値を示す図で
ある。
【図8】波形解析用コンピュータ3により行ったFFT
解析処理を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施例のブロック図である。
【図10】波形解析用コンピュータ31により行ったF
FT解析処理を示す図である。
【図11】従来方法と第2の実施例による測定値を示す
図(その1)である。
【図12】従来方法と第2の実施例による測定値を示す
図(その2)である。
【図13】従来の絶縁体の損失電流の測定方法を示す図
である。
【図14】電流比較型損失電流ブリッジの構成の一例を
示す図である。
【符号の説明】
1,1’ 電源 2 電流比較型損失電流ブリッジ 3,31 波形解析用コンピュータ 4 差動増幅器 Cs 標準コンデンサ Cx 試料 DIV 分圧器

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 試料絶縁体に流れる電流波形から基本波
    電圧位相に対して90°進んだ基本波電流成分を除去し
    た第1の電流波形を測定するとともに、試料絶縁体の静
    電容量Cと、基本波に対する誘電正接 tanδを測定し、 また、上記試料絶縁体に並列に接続した分圧器により、
    試料絶縁体に印加される電圧波形Vを測定し、 上記電圧波形Vと、静電容量Cと、誘電正接 tanδよ
    り、上記電圧波形を試料絶縁体に印加した際に試料絶縁
    体に流れる電流波形から基本波電圧位相に対して90°
    進んだ基本波電流成分を除去した第2の電流波形を算出
    し、 上記第1の電流波形から、第2の電流波形を差し引くこ
    とにより試料絶縁体に流れる損失電流を求めることを特
    徴とする絶縁体の損失電流測定方法。
  2. 【請求項2】 試料絶縁体に流れる電流波形から基本波
    電圧位相に対して90°進んだ基本波電流成分を除去し
    た第1の電流波形を測定するとともに、試料絶縁体の静
    電容量Cと、基本波に対する誘電正接 tanδを測定し、 また、上記試料絶縁体に並列に配置された無損失標準コ
    ンデンサに流れる電流を測定し、 上記無損失標準コンデンサに流れる電流から求めた試料
    絶縁体に印加される電圧波形と、静電容量Cと、誘電正
    接 tanδより、上記電圧波形が試料絶縁体に印加された
    際に試料絶縁体に流れる電流波形から基本波電圧位相に
    対して90°進んだ基本波電流成分を除去した第2の電
    流波形を算出し、 上記第1の電流波形から、第2の電流波形を差し引くこ
    とにより試料絶縁体に流れる損失電流を求めることを特
    徴とする絶縁体の損失電流測定方法。
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Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN106249115A (zh) * 2016-08-24 2016-12-21 古恒威 一种准确率高的绝缘子检测仪
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