JP2789066B2 - 電力ケーブルの絶縁劣化診断法 - Google Patents

電力ケーブルの絶縁劣化診断法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、活線状態の送電線路に
効果的に利用できる電力ケーブルの絶縁劣化診断法に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】CVケーブル等のゴム・プラスチック絶
縁ケーブルを、水分が存在する環境下で長期間使用して
いると、水トリー劣化による絶縁体の絶縁破壊強度の低
下が起こり、これが著しい場合には、ケーブル使用中の
絶縁破壊事故の原因になることが知られている。電力の
安定供給を行うためには、このような劣化を事故の未然
に検出し、その劣化状態を的確に診断することが極めて
重要な課題となっている。
【0003】水トリー劣化診断手法としては、従来から
種々の方法が提案されているが、その1つとして、絶縁
体に流れる交流電流の誘電正接(tanδ) を判定する方法
がある。この tanδの測定は、古くから誘電・絶縁材料
の電気絶縁性能を評価する方法として既に確立された手
法であり、ブリッジ回路などを用いると極めて正確な測
定が可能となる。しかしながら、絶縁体の tanδは絶縁
破壊強度の著しい低下を伴わない加熱老化(酸化劣化)
等によっても増大し、このような別要因との区別が困難
なことから、 tanδによる水トリー劣化診断はその信頼
性に欠けるという問題が残されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上述のように、 tanδ
測定による水トリー劣化診断には、絶縁劣化と無関係な
要因の区別が難しいという問題がある。ここで、 tanδ
の物理的な意味を考察すると、絶縁体に交流電圧Vを印
加した場合、絶縁体に流れる交流電流Iは電圧Vに対し
て、90°進み位相の容量電流成分Icと電圧Vと同相の
損失電流成分Irに分解することができ、次の(1) 式で表
せるように、 tanδは容量電流成分の大きさ|Ic|に対
する損失電流成分の大きさ|Ir|の割合を示している。
更に、絶縁体の静電容量をCx、絶縁体の交流コンダクタ
ンスをGx(交流抵抗Rxの逆数)、印加電圧の角周波数を
ωとすると、 tanδは交流コンダクタンスと静電容量Cx
の比に比例する量であることが分かる。 tanδ=|Ir|/|Ic|=Gx|V|/ωCx|V|=Gx/ωCx …(1)
【0005】通常、水トリー劣化が発生すると、絶縁体
の tanδのみならず静電容量Cxも増大するが、静電容量
Cxの増加の割合は tanδよりも遥かに小さいために、 t
anδの増大は近似的に交流コンダクタンス即ち交流導電
率の増加を意味することになる。このように、 tanδに
よる劣化診断とは、劣化による交流損失電流成分Ir或い
は交流導電率の増加現象を観測していることと等価にな
る。
【0006】商用周波交流電圧の周波数帯域における絶
縁体の損失電流成分Irの発生要因としては、絶縁体中に
含まれる極性分子の配向分極に伴う分極損失と、絶縁体
中の交流電界下でのキャリア(電荷担体)の移動に伴う
導電損失の2種類があると云われている。
【0007】配向分極による損失電流成分の発生は、電
界の変化に対する極性分子の双極子回転運動に対する周
囲分子からの粘性抵抗による分極遅れに基ずくものであ
り、この電流成分は電圧にほぼ比例し、 tanδは電界に
よって殆ど変化しない。前述の水トリー劣化診断の妨げ
となる絶縁体の加熱老化による tanδの増大は、酸化生
成物としてのカルボニル基等の極性分子の発生によるも
のであり、この場合の損失電流の増大は主として上述の
分極損失によるものである。
【0008】一方、キャリアの導電損失による損失電流
成分は、電流密度をJ、導電率をσC 、電界をE、キャ
リアの電荷量をe、キャリアの密度をn、移動度をμと
すると、(2) 式によって表すことができる。 J=σC ・E=e・n・μ・E …(2)
【0009】一般に、絶縁体の導電率σC は低電界の場
合には電界に対してほぼ一定であるが、高電界になると
導電率σC は電界と共に増大する特性となる。導電率σ
C が電界によって増大する場合には、キャリアの伝導に
よる損失電流成分Irは電圧に対して非線形に急増するこ
とになり、分極損失の場合とは異なった電圧特性を示す
ことになる。即ち、 tanδの電圧特性或いは損失電流の
電圧特性の測定から、分極損失と導電損失の区別が可能
になる場合がある。
【0010】通常の未劣化CVケーブル絶縁体の場合に
は、直流伝導電流が極めて小さいことなどの間接的な実
験事実から、交流使用電界程度の低電界での導電損失は
極めて小さいことが推定される。一方、水トリー劣化絶
縁体の場合には、キャリアの発生に影響を及ぼす水分が
多量に含まれていることから、導電性の損失電流が優勢
に現れる可能性があり、またその電界依存性も非線形な
特性を示す可能性がある。
【0011】そこで、交流使用電圧を上限とする低電界
の範囲で水トリー劣化状態の異なる種々のCVケーブル
の tanδの電圧特性を測定したところ、通常の未劣化ケ
ーブルの tanδは電圧によって増大する傾向は全く現れ
ないが、水トリー劣化の場合には劣化の進展が著しい絶
縁体ほど tanδが電圧と共に増大する傾向が顕著になる
ことが確認された。
【0012】また、水トリー劣化ケーブルの場合には、
tanδと同様に、静電容量も電圧と共に増大する特性が
確認された。一方、加熱老化を施したケーブルについて
も同様な測定を行ったところ、未劣化ケーブルと同様
に、 tanδ及び静電容量の電圧による増大減少は全く認
められなかった。
【0013】ここで、静電容量は温度、電界等によって
殆ど変化しない材料固有の誘電率に比例した値である。
しかしながら、導電率の異なる複合材料から構成された
絶縁材料の場合には、それらの界面等にキャリアの伝導
過程に現われる空間電荷の蓄積などによって、見掛けの
静電容量が電界によって変化する場合がある。水トリー
劣化絶縁体は水分を多量に含む部分と健全な部分の複合
材料と考えることができるので、上述の静電容量の電圧
依存性は、結局のところ、キャリアの伝導現象に関連し
ていると考えることもできる。
【0014】上述に示した実験結果のように、 tanδ或
いは交流損失電流の測定による絶縁劣化診断において
は、その電圧特性を測定すれば、より正確な劣化診断が
可能となる。また、使用電圧程度の電界においても、水
トリー劣化絶縁体の tanδ及び静電容量が電圧依存性を
示す事実は、電圧に対して電流が非線形応答を示すこと
を意味しており、正弦波交流電圧が印加された場合もそ
の電流波形には高調波歪が発生することが示唆される。
【0015】交流損失成分Irの電圧特性の測定方法とし
ては、上述の実験のように tanδの電圧特性から求める
方法があり、この方法は既存のシェーリングブリッジな
どを用いれば容易に測定が可能である。しかしながら、
tanδ測定はその測定原理上、印加電圧周波数と同じ周
波数成分の電流のみが検出されることになり、非線形応
答の結果として現れる高調波電流成分が除去されてしま
う。
【0016】一方、交流損失電流の電圧特性を得る別の
方法としては、一定の交流電圧Vを印加した状態の下
で、その1周期中の種々の時刻tにおける電圧の瞬時値
V(t)と損失電流成分Irの瞬時値Ir(t) を測定し、瞬時値
V(t)に対するIr(t) の電圧特性を比較する方法が考えら
れる。この方法は、印加電圧の大きさを変化させる必要
がないので活線劣化診断にも適用できるだけでなく、水
トリー劣化絶縁体に特有の非線形応答を直接的に検出で
きる利点がある。
【0017】本発明の目的は、交流損失瞬時値の交流瞬
時値電圧に対する電流−電圧特性の非線形応答を考慮し
た、精度が高く、信頼性のある電力ケーブルの絶縁劣化
診断法を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するた
めの本発明に係る電力ケーブルの絶縁劣化診断法は、試
験ケーブルに電流検出用の第1の抵抗素子を介して交流
電圧を印加し、基準コンデンサに第2の抵抗素子を介し
て前記交流電圧を印加し、電圧波形検出用の分圧器に前
記交流電圧を印加し、前記第1の抵抗素子の電圧と前記
第2の抵抗素子の電圧の差動電圧を求め、前記分圧器で
検出される前記交流電圧の零点と前記差動電圧の零点と
が時間的に一致するように、前記第2の抵抗素子の抵抗
値を調整することにより絶縁劣化を診断することを特徴
とする。
【0019】
【作用】上述の構成を有する電力ケーブルの絶縁劣化診
断法は、ケーブル絶縁体の損失電流と課電電圧を測定す
ることにより、絶縁劣化を損失電流の電圧依存性から絶
縁劣化を判定をする。
【0020】
【実施例】本発明を図示の実施例に基づいて詳細に説明
する。図1は診断に用いる回路図を示し、試験ケーブル
Cはケーブル導体Caを交流電源Vに接続したまま、遮蔽
層Cbの接地を外して回路を形成する。交流電源Vには分
圧用の抵抗R1、R2の直列接続による分圧器を結線し、接
地側の抵抗R2の電圧vを電圧測定器VMのX入力と切換ス
イッチSW2 の接点b2に接続する。試験ケーブルCの遮蔽
層Cbは抵抗R3を介して接地し、抵抗R3の電圧は差動増幅
器DAの正入力に接続する。なお、試験ケーブルCは交流
絶縁抵抗Rxと静電容量Cxの並列回路と見做している。ま
た、抵抗R1、R2と並列に、交流電源Vに基準コンデンサ
Csと可変抵抗R4を直列に結線したものを接続し、接地側
の抵抗R4の電圧を差動増幅器DAの負入力に接続する。
【0021】差動増幅器DAに必要とされる周波数特性
は、少なくとも印加電圧周波数fの5倍程度の範囲まで
平坦な特性が必要となる。その理由は、劣化ケーブル絶
縁体の交流抵抗Rxと静電容量Cxには電圧と共に増大する
特性があるために、絶縁体Ccの交流抵抗Rxを流れる損失
電流成分Irの瞬時値波長は、印加電圧Vと同一の基本波
形成分fに奇数次の高調波成分3f、5f、7f、・・
・、が重畳された歪波形となり、これらの高調波成分の
概ね第5調波5f程度までを正確に検出すれば、真の損
失電流波形と大差ない結果が得られるからである。
【0022】そして、差動増幅器DAの出力Vdは切換スイ
ッチSW1 の接点a1と、切換スイッチSW2 の接点a2に接続
し、切換スイッチSW2 の共通接点を成分除去フィルタBE
F の入力に接続し、この成分除去フィルタBEF の出力を
狭域フィルタBPF を介して切換スイッチSW1 の接点b1に
接続し、切換スイッチSW1 の共通接点を電圧測定器VMの
Y入力に接続する。ここで、可変抵抗R4の大きさは、 R3・Cx=R4・Cs …(3) の関係が成立するようにその調整範囲を予め選定してお
く。この(3) 式は基準コンデンサCsに流れる電流によっ
て抵抗R4に生ずる電圧と絶縁体Ccに流れる電流の容量電
流成分、即ち静電容量Cxに流れる電流に依って抵抗R3に
生ずる電圧の位相と大きさが等しくなるための条件であ
る。
【0023】また、基準コンデンサCsに流れる電流の位
相誤差の発生を防ぐため、抵抗R3は、 R3≪Rx及びR3≪1/(ω・Cx) …(4) を満たし、絶縁体Ccに流れる電流の位相誤差の発生を防
ぐため、 R4≪1/(ω・Cs) …(5) を満たすように選択しておく。
【0024】商用周波交流電圧の周波数帯域における絶
縁体の損失電流成分の発生要因としては、絶縁体中に含
まれる極性分子の配向分極に伴う分極損失と、絶縁体中
の交流電界下でのキャリア(電荷担体)の移動に伴う誘
電損失の2種類があると云われている。
【0025】ここで、第1の切換スイッチSW1 をa1側に
接続して、差動増幅器DAの出力電圧Vdをオシロスコープ
或いはデジタルメモリ等の2現象の瞬時値電圧を同時に
測定できる電圧測定器VMの一方のチャンネルに入力す
る。電圧測定器VMの他方のチャンネルには抵抗R2の出力
電圧vを入力する。この電圧測定器VMを用いて、抵抗R2
の出力電圧vの瞬時値v(t)と差動増幅器DAの出力電圧の
瞬時値Vd(t) を測定し、抵抗R2の出力電圧の瞬時値v(t)
が零になる時間に、差動増幅器DAの出力電圧の瞬時値Vd
(t) が零になるように抵抗R4の値を調整する。
【0026】以上の調整が完了すると、前述の(3) 式の
平衡条件が満足され、差動増幅器DAの出力電圧Vdは試験
ケーブルCの絶縁体Ccに流れる交流損失電流Irに比例し
た値となる。この平衡条件を達成した状態で、1周期中
の各時間tにおける抵抗R2の出力電圧の瞬時値v(t)と差
動増幅器DAの出力電圧の瞬時値Vd(t) を電圧測定器VMに
よって測定すれば、印加電圧Vの瞬時値v(t)に対するケ
ーブル絶縁体の損失電流Irの瞬時値Ir(t) の電圧特性が
得られることになる。
【0027】以上は本発明の基本部分であるが、印加電
圧に対する絶縁体Ccの損失電流の非線形応答の結果とし
て現れる高調波成分の検出も劣化診断に有効である。そ
こで、上述の平衡条件が達成された状態で、第2の切換
スイッチSW2 をa2側に接続して差動増幅器DAの出力電圧
Vdの基本波を成分除去フィルタBEF で除き、狭域フィル
タBPF で第3高調波成分Vd3 のみを抽出し、第1の切換
スイッチSW1 をb1側に接続して電圧測定器VMで第3高調
波成分Vd3 と抵抗R2の出力電圧vを同時に測定する。
【0028】最後に、第2の切換スイッチをb2側に接続
することによって、抵抗R2の出力電圧vを成分除去フィ
ルタBEF と狭域フィルタBPF を通過させて第3高調波電
圧V3を抽出し、第1の切換スイッチSW1 をb1側に接続し
て電圧測定器VMで抵抗R2の出力電圧vとその第3高調波
成分V3を測定する。
【0029】ここで、差動増幅器DAの出力電圧Vdの高調
波成分の中の第3高調波成分Vd3 を検出する理由として
は、波形歪を有する損失電流Irの高調波成分の中では第
3高調波が最も大きいことと、我国での送配電系統の商
用周波電圧に含まれる高調波成分としては第3高調波よ
りも第5高調波のほうが大きいことを考慮したものであ
る。
【0030】また、差動増幅器DAの出力電圧の第3高調
波Vd3 のみならず、抵抗R2の出力電圧vとその第3高調
波成分V3も測定する理由は、抵抗R2の出力電圧vとその
第3高調波成分V3の大きさの割合から電源に含まれる第
3高調波成分の割合を算出し、電源電圧Vに対する第3
高調波成分V3の相対的な位相のずれの測定から両者の位
相差を求めて、電源電圧Vに含まれる第3高調波電圧V3
によって生ずる劣化と無関係な損失電流Ir中の第3高調
波成分Vd3 を補正するためのものである。
【0031】本発明で最も重要な点は、上述の可変抵抗
R4による平衡調整において、抵抗R2の出力電圧瞬時値v
(t)が零になる時間に差動増幅器DAの出力電圧の瞬時値V
d(t)が零になる時間が一致するように調整することにあ
る。この平衡調整の物理的な意味は、(3) 式の平衡条件
が達成されると、ケーブル絶縁体Ccに流れる交流電流中
の印加電圧に対して、90°進み位相の容量電流成分Ic
と基準コンデンサCsに流れる電流とが同じ大きさでかつ
同位相になり、これらが差動操作で打ち消されることに
よって、絶縁体Ccの損失電流成分Irのみが抽出されるこ
とにあるが、絶縁体Ccの静電容量Cxが瞬時値電圧に対し
て変化する場合には、或る特定の瞬時値電圧で平衡が達
成された場合でも、他の時間の異なる値の瞬時値電圧に
対しては平衡が取れないことになる。
【0032】前述のように、水トリー劣化絶縁体の場合
には静電容量Cxが電圧と共に増大する特性がある。い
ま、一例として静電容量の電圧依存性を有する絶縁体
に、正弦波電圧v(t)=V1・sin(ωt)が印加された場合に
は、次の(6) 式のようになる。 Cx=Cxo +Cxv …(6)
【0033】ただし、Cxo は絶縁体の静電容量の電圧に
依存しない成分、(v(t)=0のときCx=Cxo ) Cxv (|v(t)|)は絶縁体の静電容量の電圧による増加
成分、(v(t) =0のときCxv =0、v(t)≠0のときCxv
>0)
【0034】この静電容量Cxに流れる容量電流成分Icの
瞬時値Ic(t) は、 Ic(t) =d(Cx・v(t)/dt =Cx・ dv(t)/dt +v(t)・dCx/dt =Cx・ dv(t)/dt +v(t)・dv(t)/dt・dCx/dv(t) =Cxo ・dv(t)/dt+{Cxv+v(t)・dCxv/dv(t)}・dv(t)/dt =ωCxo ・V1・sin(ωt +π/2) +ω{Cxv +V1・sin(ωt)・dCxv/dv(t)}・V1・sin(ωt +π/2)…(7) となる。
【0035】ここで、瞬時値電圧v(t)が零の時間で基準
コンデンサ電流Icとの差動の平衡調整を行うと、静電容
量Cx中のCxo 成分による容量電流成分を取り除くことは
できるが、(7) 式の第2項の電流ω{Cxv +V1・sin(ω
t)・dCxv/dv(t)}・V1・sin(ωt+π/2)は補償できず、こ
の電流成分は見掛けの損失電流成分として、交流抵抗Rx
に基づく損失電流成分に重畳されることになる。
【0036】v(t)=0のときにはCxv =0で、v(t)≠0
のときにはCxv >0となる条件があるために、この見掛
けの損失電流成分は、印加電圧の瞬時値v(t)が零の時間
に波高値が零となり、印加電圧の瞬時値v(t)が零から波
高値の間の時間に最大値が現れ、更に電圧の上昇時には
電圧と同極性で電圧下降時には電圧と逆極性となる。
【0037】従って、この見掛けの損失電流成分が抵抗
Rxに基づく電流成分に重畳された全ての損失電流成分Ir
の検出電流波形としては、電圧下降中よりも電圧上昇中
の損失電流の値が大きくなり、また印加電圧の波高値が
現れる以前の時間に損失電流の最大値が現れることにな
る。
【0038】本発明では、抵抗による非線形特性と共
に、静電容量Cxによる非線形特性をも劣化診断に利用し
ようとしている。従って、この見掛けの損失電流成分が
平衡操作によっても打ち消されない結果は望ましい結果
を与える。ここで、仮に瞬時値電圧v(t)が零とならない
条件で平衡操作を行った場合には、検出される損失電流
Irの瞬時値の零点が印加電圧の瞬時値の零点に一致しな
いと云う不都合が生ずることのみならず、損失電流Irの
最大値を小さく検出してしまうという問題が生ずる。
【0039】図2は本発明による損失電流波形の測定例
を示したものである。殆ど水トリー劣化が進展していな
いCVケーブルの損失電流波形Ib(t) は、印加電圧波形
v(t)とほぼ相似形の損失電流波形となっているが、水ト
リー劣化が著しいCVケーブルの損失電流波形Ia(t)
は、電圧の下降中よりも電圧上昇中の損失電流の値が大
きくなり、また、印加電圧の波高値が現れる以前の時間
に損失電流の最大値が現れている。
【0040】図3は上述のケーブルの損失電流の瞬時値
電圧に対する電流−電圧特性をリサージュ図形で示した
ものである。曲線Ibは殆ど水トリー劣化が進展していな
いケーブルの結果であり、損失電流の瞬時値が電圧に対
してほぼ線形な関係にあり、また、電圧上昇時と下降時
の損失電流の値がほぼ一致している。
【0041】一方、曲線Iaは水トリー劣化が著しいケー
ブルの結果であり、波高値電圧よりも低い電圧で損失電
流の最大値が現れ、また、電圧上昇時と下降時の電流−
電圧特性が一致しない結果が示されている。
【0042】このように本発明に係る診断法は、交流損
失電流の非線形応答を利用して、交流損失電流瞬時値Ir
(t) と印加電圧瞬時値v(t)の関係がIr(t) =G・V(t)
(G:定数)なる線形な関係から逸脱する程度によっ
て、劣化状態を判定している。
【0043】更に、損失電流の第3高調波の測定結果に
おいても、水トリー劣化が著しいケーブルの場合には、
電源電圧に含まれる第3高調波の割合よりも遥かに大き
な第3高調波電流が検出されている。
【0044】
【発明の効果】以上説明したように本発明に係る電力ケ
ーブルの絶縁劣化診断法は、課電電圧と損失電流の関係
を求めることにより、絶縁抵抗の電圧依存性を利用した
劣化検出が容易であり、課電電圧波形の歪の影響が少な
く精度の高い劣化診断が実施できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】測定のための回路図である。
【図2】交流損失電流の測定波形例の説明図である。
【図3】瞬時値電圧に対する交流損失電流の瞬時値の電
流−電圧特性の測定例の説明図である。
【符号の説明】
C 試験ケーブル Ca ケーブルの導体 Cb ケーブル遮蔽層 Cs 基準コンデンサ V 交流電源 R1〜R4 抵抗 DA 差動増幅器 VM 電圧測定器
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G01R 31/12

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 試験ケーブルに電流検出用の第1の抵抗
    素子を介して交流電圧を印加し、基準コンデンサに第2
    の抵抗素子を介して前記交流電圧を印加し、電圧波形検
    出用の分圧器に前記交流電圧を印加し、前記第1の抵抗
    素子の電圧と前記第2の抵抗素子の電圧の差動電圧を求
    め、前記分圧器で検出される前記交流電圧の零点と前記
    差動電圧の零点とが時間的に一致するように、前記第2
    の抵抗素子の抵抗値を調整することにより絶縁劣化を診
    断することを特徴とする電力ケーブルの絶縁劣化診断
    法。
  2. 【請求項2】 得られた損失電流の瞬時値を印加電圧の
    瞬時値に比較した場合に得られる電流−電圧特性の非線
    形を利用して絶縁劣化を診断する請求項1に記載の電力
    ケーブルの絶縁劣化診断法。
  3. 【請求項3】 前記交流電圧波形検出用分圧器によって
    検出された印加電圧の瞬時値が零となる時間に、前記第
    1の抵抗素子の検出電流と前記第2の抵抗素子の検出電
    流の差動電流の瞬時値が零となるように、前記第2の抵
    抗素子の値を調整した場合の差動電流の第3高調波成分
    の測定を行う請求項1に記載の電力ケーブルの絶縁劣化
    診断法。
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