JP3092772B2 - 電力ケーブルの絶縁劣化診断方法 - Google Patents

電力ケーブルの絶縁劣化診断方法

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JP3092772B2
JP3092772B2 JP05330054A JP33005493A JP3092772B2 JP 3092772 B2 JP3092772 B2 JP 3092772B2 JP 05330054 A JP05330054 A JP 05330054A JP 33005493 A JP33005493 A JP 33005493A JP 3092772 B2 JP3092772 B2 JP 3092772B2
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哲 山口
重喜 吉田
中 坂本
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、CVケーブルなどの水
トリー劣化などを検出する電力ケーブルの絶縁劣化診断
方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、CVケーブルなどの高分子絶縁
体を用いた電力ケーブルでは、布設後の使用期間中に経
年劣化により絶縁体の電気絶縁性能が低下する。特に、
水分が存在する環境下でCVケーブルなどのゴム・プラ
スチックケーブルを長期間使用していると、絶縁体内部
の局部的な電界集中部に水分が集中して微小の水ボイド
集団が形成され、これが電界の方向に成長・進展する所
謂水トリー劣化が発生し、この水トリーが絶縁体の絶縁
強度を著しく低下させて、絶縁破壊事故の原因となるこ
とが知られている。従って、このような劣化を事故発生
以前に発見し、劣化の程度を的確に診断することが極め
て重要な課題になっている。
【0003】このような水トリー劣化診断方法として
は、従来から絶縁体の誘電・絶縁特性を利用した種々の
方法が検討されており、誘電正接を測定する tanδ測定
法等があるが、微小電流検出の難しさ、或いは実線路へ
の適用性の問題、更には劣化とは無関係な要因による類
似信号との区別の難しさなどの問題もあり、十分な信頼
性を有する診断技術とはなっていない。
【0004】ところで、水トリー劣化絶縁体に交流電圧
を印加した場合に流れる交流電流中の印加電圧と同相の
損失電流は、劣化の進行と共に増大し、かつ電圧に対し
て非線形な応答を示すことが知られており、この非線形
な応答によって損失電流波形には奇数次の高調波歪が発
生する。そこで、損失電流の第3高調波成分などを検出
して、この大きさを劣化信号とすれば、劣化とは無関係
な要因による非線形特性を有しない損失電流との区別が
可能となり、信頼性の高い劣化診断が可能となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、実際に
損失電流の第3高調波成分の検出による絶縁劣化診断を
試みると、確かに従来の tanδ測定法等に比べて絶縁劣
化診断の信頼性は飛躍的に向上するが、例えば絶縁劣化
としては殆ど悪影響のない軽度な絶縁劣化が多数存在し
ている場合と、絶縁劣化として深刻な影響を持つ重度な
絶縁劣化が少数存在している場合とでは、同等の電流値
が検出されるため、両者の区別ができないという問題点
がある。
【0006】つまり、従来の交流電圧を印加した電力ケ
ーブルの絶縁体に流れる損失電流の第3高調波成分の検
出による絶縁劣化診断においては、多数の軽度劣化が存
在する場合と重度劣化が散在する場合の区別ができず、
この区別は従来例のように損失電流の第3高調波成分の
大きさのみを劣化診断に用いている限り不可能である。
【0007】本発明の目的は、上述の問題点を解消し、
交流電圧を印加した電力ケーブルの絶縁体に流れる交流
電流中の損失電流において、その第3高調波成分の位相
を使用した信頼性の高い電力ケーブルの絶縁劣化診断方
法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するた
めの本発明に係る電力ケーブルの絶縁劣化診断方法は、
交流電圧が印加された電力ケーブルの絶縁体に流れる電
流を検出して、検出した前記電流から交流印加電圧の基
本波成分に対してπ/2進み位相の電流成分を取り除い
た残りの損失電流成分を抽出し、該検出電流成分中から
印加基本波成分の3倍の周波数を有する第3高調波成分
を抽出して行う電力ケーブルの絶縁劣化診断法におい
て、前記交流印加電圧の基本波成分の瞬時値の極性が負
から正に変化する時刻を第3高調波成分の位相原点とし
て、該第3高調波成分の前記位相原点を基準とする位相
から絶縁劣化状態を診断することを特徴とする。
【0009】
【作用】上述の構成を有する電力ケーブルの絶縁劣化診
断方法は、交流電圧が印加された電力ケーブルの絶縁体
に流れる損失電流の第3高調波成分を抽出し、この第3
高調波成分の位相から絶縁劣化診断を行う。
【0010】
【実施例】本発明を図示の実施例に基づいて詳細に説明
する。絶縁劣化ケーブルの損失電流の実測波形を損失電
流の瞬時値の電流−電圧特性として整理すると、大きな
ヒステリシスが発生しているものとそうでないもの、或
いは損失電流波高値の現れる時刻が印加電圧波高値の現
れる時刻よりも早くなるものと遅くなるもの等、絶縁劣
化の進展状態によって損失電流の歪波形が微妙に変化し
ていることが認められる。
【0011】このような損失電流の歪波形の差異が本質
的に劣化の進展に伴うもので、かつその変化に一定の法
則性があれば、これらの歪波形情報を絶縁劣化診断に利
用できることになり、更に同一の大きさの信号電流が検
出された場合でも、この歪波形情報の比較によってそれ
ら電流の発生起源の違いを推定できることになる。
【0012】絶縁劣化ケーブルの絶縁体中の損失電流に
歪波形が発生する現象について、図1の絶縁体の等価回
路の回路構成図に従って以下に説明する。絶縁劣化ケー
ブルの絶縁体は、抵抗Rを持つ抵抗要素1と静電容量C
を持つ静電容量要素2を直列に接続した等価回路に置き
換えることができる。この場合の誘電正接はtanδ1≡ω
1 CRとなる。
【0013】ここで、交流電圧源3から絶縁劣化ケーブ
ルに、正弦波交流電圧v(t)=|V1|sin(ω1 t)が印
加されると、絶縁体に流れる交流電流中には印加電圧v
(t)と同相成分の損失電流が含まれることになる。即
ち、図1の等価回路において、仮に抵抗要素1が存在し
ない場合には、この等価回路に流れる電流ix(t) は印加
電圧v(t)に対してπ/2だけ位相の進んだ容量電流IC
みとなるが、抵抗要素1が存在すると緩和時定数τ=C
Rによって電圧変化に対する電流の応答遅れが生じ、次
の(1) 式に示す電流ix(t) ≡Ixが流れる。
【0014】 Ix={tan2 δ1 /(1+ tan2 δ1)} ・(V1/R) +j{tanδ1 /(1+ tan2 δ1)} ・(V1/R) …(1)
【0015】ここで、(1) 式の右辺第1項が損失電流
IR、第2項が容量電流ICとなる。また、V1は周波数ω1
の交流電圧を表しており、 tanδ1 は図1の等価回路に
流れる電流の誘電正接、Rは抵抗要素1の抵抗値、Cは
静電容量要素2の静電容量を表している。
【0016】図1の等価回路の誘電正接tanδ1 ≡ω1
CRは、絶縁体の交流特性を決定する重要な指針とな
る。しかしながら、図1の等価回路では抵抗要素1と静
電容量要素2の直列回路と並列に存在する瞬時分極など
による等価静電容量Coの存在を無視しており、実際に
はこの等価静電容量Coに流れる容量電流が存在するた
めに、 tanδ1 を直接的に検出することはできない。ま
た、多くの場合にケーブル絶縁体の劣化はケーブルの長
さ方向に対して不均一に発生するので、健全部絶縁体の
大きな容量電流の影響によって、測定される誘電正接は
tanδ1 とは遥かに異なった値となって検出される。
【0017】更に、(1) 式は図1の絶縁体の等価回路で
抵抗値Rと静電容量Cが印加電圧v(t)に対して一定であ
ると仮定したものであるが、このような仮定では、劣化
したケーブル絶縁体の誘電正接 tanδが印加電圧v(t)と
共に増大する現象、或いは印加電圧v(t)と異なる周波数
成分の電流の発生、即ち正弦波形である印加電圧からの
波形歪の発生などを説明することができない。
【0018】ところが、図1の絶縁体の等価回路で印加
電圧v(t)の瞬時値に対して緩和時定数τが変化すると仮
定すると、上記の現象を問題なく説明することができ
る。この仮定は必ずしも非現実的なものではなく、実際
の水トリー劣化ケーブル絶縁体には、導電率が電圧と共
に増大する非線形特性が認められるので、図1の絶縁体
の等価回路の抵抗要素1がその部分の分担電圧VR(t) に
対して非線形特性を有すると考えると、緩和時定数τは
印加電圧v(t)の瞬時値に対して変化することになる。
【0019】ここで、抵抗要素1に電圧依存性がある場
合には、図1の絶縁体の等価回路に流れる電流ix(t) を
簡単な方程式で表すことはできない。しかしながら、抵
抗要素1の電圧依存性を簡単な近似関数で与えれば、次
の(2) 式、(3) 式に示す回路条件から数値計算によって
電流ix(t) を算出することができる。更に、実際の損失
電流測定と同様にして、算出されたix(t) 中から、印加
電圧v(t)と同じ周波数成分でπ/2進み位相の電流、即
ち基本波成分の容量電流を除去すれば損失電流iR(t) を
求めることができる。
【0020】v(t)=VR(t) +VC(t) …(2) ix(t) =VR(t) /{R(VR(t))}=C{dVC(t) /dt} …(3)
【0021】ここで、v(t)は印加電圧瞬時値を表してお
り、VR(t) は抵抗要素1の分担電圧、VC(t) は静電容量
要素2の分担電圧、R(VR(t)) は抵抗要素1の抵抗値、
Cは静電容量要素2の静電容量を表している。
【0022】そこで、抵抗要素1の電圧依存性を与える
近似関数として、交流コンダクタンスGが電圧と共に増
大する次の(4) 式を仮定して損失電流iR(t) を算出し、
更にiR(t) を周波数分解して高調波歪波形の解析を行
う。また、その場合の tanδ1は次の(5) 式のように表
される。
【0023】 G(VR(t))≡1/{R(VR(t))}=A|VR(t) |k …(4) tan δ1 =ω1 CR=(ω1 C/A)・|VR(t) |-k …(5)
【0024】ここで、Aは定数を表しており、kは定数
(k≧1の実数)、|VR(t) |は抵抗要素1の分担電圧
の絶対値を表している。
【0025】以上に示した電流波形計算において、(4)
式の交流コンダクタンスGの非線形特性を与える定数k
と交流コンダクタンスGの基本的な大きさを与える定数
A、及び抵抗要素1と直列に存在する静電容量要素2の
静電容量Cを適当な値に選択すると、従来得られていた
誘電正接 tanδの電圧依存性の測定結果、或いは損失電
流の実測波形の特長などを良好に再現する結果が得ら
れ、図1の絶縁体の等価回路に抵抗要素1の非線形性を
与えたモデルが、絶縁体の損失電流波形解析に有効であ
ることが確認された。
【0026】このモデルによって計算された損失電流波
形iR(t) は、抵抗要素1の非線形特性を与える定数kの
みならず、ω1 C/Aによっても大きく変化する。そこ
で、(4) 式の定数kを固定した条件下で、ω1 C/Aを
種々に変化させた場合の損失電流波形iR(t) を算出した
ところ、損失電流波形iR(t) 及び損失電流の第3高調波
成分の位相θ3 について、以下の結果が得られた。ここ
で、ω1 C/Aは絶縁体のC−R直列回路モデルにおけ
る誘電正接の大きさを表しており、劣化の進展と共にω
1 C/Aが増加すると考えることができる。
【0027】先ず、損失電流波形iR(t) については、交
流印加電圧波高値の現れる時刻をtV、つまり印加電圧波
形のπ/2点とし、また損失電流の最大値が現れる時刻
をtiとすると、ω1 C/Aが小さい場合には時刻tV付近
で損失電流が急増するが、時刻tiは時刻tVよりも僅かに
遅れる(tV−ti=+0)。また、ω1 C/Aの増大と共
にtVに対するtiの遅れ時間が増加してゆき、電圧の瞬時
値の極性が反転する時刻、つまり印加電圧波形のπ点ま
でtiが遅れると、損失電流波形iR(t) には時刻tVよりも
早い時刻と遅い時刻に値の等しい2つの波高値が発生す
る。更に、ω1C/Aが増大してゆくと、電流波形の時
刻tVよりも早い側のピークが最大値となり、電流の最大
値の現れる時刻tiは時刻tVに徐々に漸近してゆく。
【0028】次に、損失電流の第3高調波成分の位相θ
3 については、交流印加電圧の基本波成分の位相零点を
原点にとると、位相θ3 はω1 C/Aが小さい場合には
θ3=+(π−0)となり、+πよりも稍々小さい値と
なる。また、ω1 C/Aの増大と共にθ3は減少してゆ
き、−π側に漸近してゆく。
【0029】従って、上記のω1 C/Aの増加に伴う損
失電流の波形iR(t) の波高値発生時刻の変化特性、或い
は損失電流の第3高調波成分の位相θ3 の変化特性は劣
化の進展に伴う現象と解釈することができ、これらを劣
化診断に利用できることになる。
【0030】図2は本発明の方法を実施するためのブロ
ック回路構成図である。絶縁体試料11と無損失の標準
コンデンサ12を交流電圧源13に並列に接続し、交流
電圧Vを印加する。絶縁体試料11に流れる電流は電流
/電圧変換器14によって検出し、また標準コンデンサ
12に流れる電流は電流/電圧変換器15によって検出
する。更に、電流/電圧変換器14の出力は差動増幅器
16に接続し、電流/電圧変換器15の出力は増幅器1
7を介して差動増幅器16に接続すると共に、位相調整
器18に接続する。差動増幅器16の出力はA/D変換
器19を介して波形観測装置20及び波形解析装置21
に接続する。また、位相調整器18の出力はA/D変換
器22を介して波形観測装置20及び波形解析装置21
に接続する。
【0031】絶縁体試料11と標準コンデンサ12に交
流電圧源13から交流電圧Vを印加すると、絶縁体試料
11には印加電圧と同相の損失電流成分IRと印加電圧よ
りもπ/2だけ位相の進んだ容量電流成分ICが合成され
た交流電流IX=IR+ICが流れ、また標準コンデンサ12
には印加電圧よりもπ/2だけ位相の進んだ容量電流成
分のみの交流電流ISが流れる。これらの電流を電流/電
圧変換器14、15によって、電流IXを検出電圧VXに変
換し、また電流ISを検出電圧VSに変換する。ここで、電
流/電圧変換器14、15の挿入による電流位相の変化
が無視できるようにするために、電流/電圧変換器1
4、15としては入力抵抗が零に近いものを採用する。
【0032】増幅率kが可変の増幅器17では検出電圧
VSをk倍に増幅し、k・VSとして差動増幅器16に出力
する。差動増幅器16では検出電圧VXとk・VSの差分を
検出し、VX−k・VSとしてA/D変換器19に出力す
る。A/D変換器19では信号をデジタル信号に変換し
た後に、波形観測装置20及び波形解析装置21に出力
する。
【0033】位相調整器18は入力信号の位相をπ/2
だけ遅らすものであり、印加電圧に対してπ/2だけ位
相の進んだ検出電圧VSを印加電圧Vに対して位相差のな
い電圧VDに変換して出力する。電圧VDはA/D変換器2
2を経てデジタル信号に変換された後に、波形観測装置
20及び波形解析装置21に出力される。
【0034】次に、波形観測装置20によって印加電圧
波形に相当する電圧VDと差動増幅器16の出力信号VX
k・VSの波形を観測し、VX−k・VSが電圧VDと同相にな
るように増幅器17の増幅率kを変化させる。この平衡
操作によって、検出電圧VX中の容量電流成分に相当する
電圧が検出電圧VSによって消去され、VX−k・VSが損失
電流IRに比例した電圧となり、損失電流IRが検出され
る。
【0035】この平衡が達成された状態で、波形解析装
置21によってVX−k・VSと電圧VDの高調波解析を行
い、それぞれの基本波及び第3高調波の大きさと位相を
抽出し、抽出されたVX−k・VS中の電圧VDの基本波成分
の位相零点を原点とした第3高調波成分の位相θ3 を検
出し、位相θ3 による劣化診断を行う。また、波形観測
装置20によって電圧VD及びVX−k・VSの瞬時値波形の
最大波高値の発生時刻tV、tiをそれぞれ読み取り、それ
ぞれの最大波高値の発生時刻の時間差による劣化診断を
行うこともできる。
【0036】図3〜図6は、図2に示すブロック回路構
成図によって検出したケーブル試料A〜Dの損失電流実
測波形iR(t) を示すものである。また、表1は図3〜図
6の損失電流波形iR(t) から抽出した損失電流の第3高
調波成分iR3 (t) の大きさ|IR3 |とその位相θ3 を示
すものである。なお、位相θ3 は印加電圧の基本波成分
の零点を位相原点としている。なお、試料ケーブルとし
ては6.6kVのCVケーブルを使用し、印加電圧とし
ては50Hzの交流電圧を印加している。
【0037】 表1 試料 絶縁厚 印加電圧 印加電圧の最大値が 損失電流の第3高調波成 [mm] [KV]rms 現れる時刻tvと損失 分 電流最大値が現れる 大きさ 位相 時刻tiとの差tv−ti |IR3 | φ3 [μA/m] [deg.] A 3.5 4 約0ms 0.010 約+180 (ti≒tv) B 4.5 4 約−2ms 0.40 −12 (ti<tv) C 4.0 4 約−1.6ms 3.3 −88 (ti<tv) D 2.5 2 約−0.2ms 12.8 −141 (ti≦tv)
【0038】試料Aは加熱老化による損失電流の特徴を
調べる目的で、新品ケーブルに130℃で20日の加熱
老化を施したものであり、電圧性能は殆ど低下していな
い。試料Bと試料Cは長期間実使用後に撤去されたケー
ブルであり、両試料共に顕著な水トリー劣化が発生して
いるが、試料Bに比較すると試料Cの劣化がより進展し
ている。試料Dは試料Cと同一の撤去ケーブルから採取
した試料であるが、内導水トリー部と直列に存在する健
全絶縁体部分を削除して、水トリーが電極間で橋絡状態
になるように処理したものであり、水トリー劣化の中で
最も劣化が進展した状態を模擬している。
【0039】図3に示す加熱老化を施した試料Aの損失
電流波形iR(t) には、水トリー劣化が発生していないに
も拘わらず、印加電圧の波高値付近で電流が急増する高
調波歪が現れて、僅かではあるが第3高調波も発生して
いる。従って、損失電流の第3高調波の大きさのみから
の劣化診断では、軽微な劣化が多数個存在した結果によ
るものか、或いは少数の重度劣化によるものかの判断が
できない。しかし、損失電流の最大値が現れる時刻ti
印加電圧波形の最大値が現れる時刻tVはほぼ一致してお
り、表1に示す損失電流第3高調波成分の位相θ3 もほ
ぼ+180°(+π)となっていることなどから、この
第3高調波成分は重度の劣化が伴うものではないことが
分かる。
【0040】顕著な水トリー劣化が認められる試料Bの
図4に示す損失電流波形iR(t) には、印加電圧の波高値
の前後に2つのピークが認められ、早く現れるピークの
方が遅いピークよりも稍々大きな値となっている。この
試料Bの損失電流及び印加電圧の最大値が発生する時刻
ti及びtvを比較すると、損失電流の最大値が現れる時刻
tiの方が早いこと、又は表1に示すように損失電流の第
3高調波成分の位相θ3 が−12°となり、明らかに位
相θ3 が+πから−π側に減小していることから、試料
Bに観測される第3高調波成分は加熱老化等の類似現象
によるものではなく、水トリー劣化の進展によるもので
あると判断することができる。
【0041】試料Bよりも劣化の著しい試料Cの図5に
示す損失電流波形iR(t) にも、印加電圧の波高値前後に
2つのピークが認められるが、早く現れるピークの方が
遅いピークよりも遥かに大きな値を示している。表1に
示す損失電流の第3高調波成分の位相θ3 は−88°と
なり、この結果を試料Bと比較すると、試料の位相θ3
は試料Bよりも−π側に近付いており、試料Cは試料B
よりも更に劣化が進展していることが分かる。
【0042】電極間橋絡水トリーを模擬した試料Dの図
6に示す損失電流波形iR(t) は、印加電圧瞬時値と共に
損失電流が急増し、一見して加熱老化のみを施した試料
Aと似た特性を示している。しかしながら、損失電流波
形iR(t) の特徴としては、損失電流の最大値が現れる時
刻tiは印加電圧の最大値が現れる時刻tVよりも若干早
く、また表1に示す損失電流の第3高調波成分の位相θ
3 も−141°となり、θ3 が−πに最も近い値を示し
ている。更に、この場合に流れる損失電流は他の劣化状
況の試料A〜試料Cに比べて著しく大きいことから、劣
化が極度に進行している状態であることが容易に推定さ
れる。
【0043】このように、図3〜図6に示した劣化状況
が異なるケーブルの損失電流の波形実測結果は、図1の
絶縁体の等価回路を用いた数値計算から推定した前述の
高調波歪波形と劣化状況との対応関係にほぼ一致してお
り、この高調波歪波形情報を利用した絶縁劣化診断が有
効であることを示している。
【0044】
【発明の効果】以上説明したように本発明に係る電力ケ
ーブルの絶縁劣化診断方法は、従来のtanδ測定法や損
失電流の第3高調波による検出では利用されていなかっ
た損失電流の第3高調波成分の位相を使用するので、別
個の装置を新たに用意することなく、従来の方法に比べ
てより的確な水トリー劣化検出が可能となる。また、従
来の劣化信号の大きさのみによる劣化診断方法では不可
能であった多数の微小劣化が存在する場合と少数の極度
劣化が存在する場合の区別を可能にすることができる。
更に、印加電圧として交流電源のみを使用するので、活
線絶縁劣化診断としても利用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】絶縁体の交流特性を示す等価回路図である。
【図2】実施例のブロック回路構成図である。
【図3】試料Aの損失電流波形とその電流−電圧特性実
測結果である。
【図4】試料Bの損失電流波形とその電流−電圧特性実
測結果である。
【図5】試料Cの損失電流波形とその電流−電圧特性実
測結果である。
【図6】試料Dの損失電流波形とその電流−電圧特性実
測結果である。
【符号の説明】
1 抵抗要素 2 静電容量要素 3 交流電源 11 絶縁体試料 12 標準コンデンサ 13 交流電圧源 14、15 電流/電圧変換器 16 差動増幅器 17 増幅器 18 位相調整器 19、22 A/D変換器 20 波形観測装置 21 波形解析装置
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 坂本 中 埼玉県熊谷市新堀1008番地 三菱電線工 業株式会社 熊谷製作所内 (72)発明者 森 浩一 埼玉県熊谷市新堀1008番地 三菱電線工 業株式会社 熊谷製作所内 (56)参考文献 特開 平5−256894(JP,A) 特開 平3−172777(JP,A) 特開 平2−122284(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01R 31/12

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 交流電圧が印加された電力ケーブルの絶
    縁体に流れる電流を検出して、検出した前記電流から交
    流印加電圧の基本波成分に対してπ/2進み位相の電流
    成分を取り除いた残りの損失電流成分を抽出し、該検出
    電流成分中から印加基本波成分の3倍の周波数を有する
    第3高調波成分を抽出して行う電力ケーブルの絶縁劣化
    診断法において、前記交流印加電圧の基本波成分の瞬時
    値の極性が負から正に変化する時刻を第3高調波成分の
    位相原点として、該第3高調波成分の前記位相原点を基
    準とする位相から絶縁劣化状態を診断することを特徴と
    する電力ケーブルの絶縁劣化診断方法。
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