JPH0932088A - 気液混相汚水管の閉塞防止構造 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 真空式下水道システムにおいて、気液混相汚
水を流下させるのに使用される気液混相汚水管の閉塞を
防止するとともに、布設作業性を向上させ、気液混相汚
水管と通気管の配管を障害物の上側に設定して布設作業
を容易にし、構造の簡略化を図るとともに、通気管の配
管長さを短縮する。 【解決手段】 障害物１の上流側に設置された上流側気
液混相汚水管２と障害物１の下流側に設置された下流側
気液混相汚水管３とを、障害物１を跨いで設置したサイ
ホン管４によって互いに接続し、サイホン管４の頂上部
４Ａと上流側気液混相汚水管２におけるサイホン管４の
リフト部４Ｂよりも少し上流の位置とを通気管５によっ
て接続し、この通気管５に常開第１弁６を介設するとと
もに、通気管５における常開第１弁６の介設位置の上流
側に常閉第２弁７を介設した空気取込管８を分岐接続し
てある。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、真空式下水道シス
テムにおいて、気液混相汚水を流下させるのに使用され
る気液混相汚水管の閉塞を防止する気液混相汚水管の閉
塞防止構造に関する。

【０００２】

【従来の技術】真空式下水道システムは、家庭から排出
される汚水を自然流下管により真空弁付き汚水マスに自
然流下させ、汚水マスの水位が所定のレベルまで上昇し
た時、この水位を水位検知管によって検知し、水位検知
管からの検知信号に基づいて真空弁を弁開することによ
り、汚水マスに溜まった汚水を真空下水管路に吸い込ん
で排水させる。真空弁は汚水マスの汚水を吸い終わって
も所定時間弁開されている。この間に真空下水管路に空
気が吸い込まれれる。これにより、真空下水管路内の汚
水は膨脹する空気に押されて気液混相状態になって流
れ、真空ポンプ場内の集水タンクに集められる。集めら
れた汚水は汚水ポンプで下水処理場に送り出されるよう
になっている。

【０００３】このような真空式下水道システムにおい
て、真空下水管路の途中に河川などの障害物が存在する
場合、真空下水管路、つまり気液混相汚水管は障害物の
上側もしくは下側に回避させて布設される。しかし、障
害物の上側を跨ぐように気液混相汚水管を布設したり、
あるいは障害物の下側を潜るように気液混相汚水管を布
設した場合、前者には障害物の上流側にリフト部と称さ
れる立ち上げ部が形成され、後者には障害物の下流側に
立ち上げ部が形成される。ところが、これら立ち上げ部
において真空度を低下させるリフト損失が生じ、真空式
下水道システムの汚水収集可能範囲を狭めている。すな
わち、障害物を回避して気液混相汚水管を布設した場
合、リフト損失によって真空度を低下させ、汚水収集可
能範囲を狭めていた。

【０００４】また、通常は気液混相汚水管に形成したリ
フト部の手前に一定量の汚水が溜まった状態で満管とな
らず、汚水Ｗが局部的に停止している。したがって、下
流側の真空圧が気液混相汚水管内上部の空気層を介して
上流側に伝わる。しかし、一時的に多量の汚水が流下し
てくると、前記空気層がなくなり、気液混相汚水管が汚
水によって完全に塞がれ、下流側の真空圧が上流側に伝
わらなくなり、上流側に接続されている真空弁（図示省
略）が弁開しなくなる。

【０００５】そこで、障害物を回避して気液混相汚水管
が配管布設された場合に生じる真空度の低下を防止し、
汚水収集可能範囲の拡大を図るとともに、リフト部の閉
塞を防止する技術が特開平６−１７３３２６号公報およ
び特開平６−２２９００１号公報によって提案されてい
る。

【０００６】ところが、前者（特開平６−１７３３２６
号公報）の技術は、障害物の下側を潜らせて気液混相汚
水管が布設されるので、煩雑な掘削工事を必要とし布設
作業性に劣る。しかも、通気管は障害物の上側を跨いで
配管しなければならない。つまり、障害物の上下に分離
して配管する必要があるため布設作業がきわめて煩雑な
欠点を有している。

【０００７】一方、後者（特開平６−２２９００１号公
報）の技術は、障害物の上側を跨いで気液混相汚水管お
よび通気管が布設されるので、掘削工事が容易になる。
したがって、前者の技術と比較して気液混相汚水管の布
設作業性が向上する。しかし、障害物の上流側気液混相
汚水管と通気管との接続部に気液分離槽を設けたり、障
害物の上側を跨ぐサイホン管の頂部に空気溜めを設ける
必要があるため、構造が複雑になるとともに、下流側気
液混相汚水管と通気管との接続部が汚水中の固形物によ
って閉塞される虞れを有している。下流側気液混相汚水
管と通気管との接続部が閉塞されると、下流側気液混相
汚水管の真空圧が通気管を介して上流側気液混相汚水管
に作用しなくなって、上流側気液混相汚水管に接続され
ている真空弁が弁開しなくなる。また、障害物の上側を
跨いで通気管が配管されるので、通気管の配管長さが長
くなる難点もある。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】従来の気液混相汚水管
の閉塞防止構造において、気液混相汚水管が障害物の下
側を潜らせて布設されるものは、煩雑な掘削工事を必要
とし布設作業性に劣る上、気液混相汚水管と通気管は上
下に分離して配管されるので、布設作業がきわめて煩雑
な欠点を有している。また、気液混相汚水管が障害物の
上側を跨いで布設されるものは、布設作業性が向上する
ものの、気液分離槽を設けたり、空気溜めを設ける必要
があるため、構造が複雑になるとともに、下流側気液混
相汚水管と通気管との接続部が汚水や汚水中の固形物に
よって閉塞されると、下流側気液混相汚水管の真空圧が
上流側気液混相汚水管に作用しなくなって、上流側気液
混相汚水管に接続されている真空弁が弁開しなくなり、
真空弁マスより汚水が溢れる。しかも、障害物の上側を
跨いで通気管が配管されるので、通気管の配管長さが長
くなる難点を有していた。したがって、請求項１記載の
発明は、汚水や固形物による通気管の閉塞を回避するこ
とで、上流側気液混相汚水管に真空圧が伝わらなくなる
のを防止することは勿論、煩雑な掘削工事を不要にし
て、布設作業性を向上させ、気液混相汚水管と通気管の
配管を障害物の上側に設定して、布設作業を容易にし、
かつ気液分離槽や空気溜めの設置を不要にして構造の簡
略化を図るとともに、通気管の配管長さを短縮できる気
液混相汚水管の閉塞防止構造を提供することを目的とし
たものである。

【０００９】

【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、請求項１記載の発明は、障害物を跨いで横断し、か
つ該障害物の上流側に設置された上流側気液混相汚水管
と障害物の下流側に設置された下流側気液混相汚水管と
を接続するサイホン管と、上流側気液混相汚水管とサイ
ホン管の頂上部とを接続する通気管を備え、この通気管
に常開第１弁が介設されているとともに、通気管の常開
第１弁介設位置の上流側に常閉第２弁を介設した空気取
込管が分岐接続されていることを特徴としたものであ
る。上流側気液混相汚水管を流下してきた汚水がサイホ
ン管上流側のリフト部の手前で一定量溜まった状態にお
いて、上流側の真空弁が弁開すると、上流側から流下し
てくる空気と混合してスラグ流となって、前記サイホン
管上流側のリフト部をかけ登る。つまり、汚水が吸い上
げられて障害物を乗り越え下流側気液混相汚水管に達
し、下流側気液混相汚水管内を流下する。また、下流側
に位置するサイホン管の真空圧が通気管を介して上流側
に位置する上流側気液混相汚水管に伝えられ同圧力とな
る。したがって、サイホン管上流側リフト部の閉塞によ
る真空度の低下をほぼなくすことができる。その結果、
一時的、部分的にリフト部が汚水で閉塞されても、上流
側気液混相汚水管に介設されている真空弁を弁開させる
のに必要な真空圧が確保できる。このため、真空弁が弁
開するにつれてリフト部を閉塞している汚水を徐々に流
下させて、リフト部の閉塞を解消することができる。一
方、通気管の下流側接続位置がサイホン管の頂上部に設
定されていることにより、通気管の下流側接続位置が汚
水や固形物によって閉塞されることはない。さらに、サ
イホン管の上流側リフト部が一時的に多量の汚水や固形
物によって閉塞された場合、この閉塞を短時間で解除し
たい場合には、常開第１弁を弁閉し、常閉第２弁を弁開
する。その結果、空気取込管から取り込んだ空気（大
気）は、通気管を通って上流側気液混相汚水管に送り込
まれ、この送り込まれた空気圧によりサイホン管の上流
側リフト部に溜まっている汚水を押上げて流下させ、リ
フト部の閉塞を解消することができる。

【００１０】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
に基づいて説明する。図１は請求項１記載のの発明の実
施の形態を示す断面図であり、この図において、障害物
１の上流側には上流側気液混相汚水管２が設置され、障
害物１の下流側には下流側気液混相汚水管３が設置され
ている。そして、上流側気液混相汚水管２と下流側気液
混相汚水管３は、障害物１を跨いで横断するサイホン管
４を介して互いに接続され、サイホン管４によって汚水
が上流側気液混相汚水管２から下流側気液混相汚水管３
に流下するように構成されている。なお、汚水がサイホ
ン管４内を上流側気液混相汚水管２から下流側気液混相
汚水管３に向かって流れるのに必要な水頭に相当する分
だけ、サイホン管４の頂上部における上流側気液混相汚
水管２側Ｐ３を下流側気液混相汚水管３側Ｐ４よりも高
位置に配置されている。また、上流側気液混相汚水管
２、下流側気液混相汚水管３およびサイホン管４は、そ
れぞれ地中に埋設されている。

【００１１】サイホン管４における頂上部４Ａと上流側
気液混相汚水管２におけるサイホン管４のリフト部４Ｂ
よりも少し上流の位置は、地中に埋設された通気管５に
よって接続されており、この通気管５によって下流側気
液混相汚水管３およびサイホン管４内の真空圧が上流側
気液混相汚水管２に伝達されるようになっている。下流
側気液混相汚水管３の下流側は、図示していない真空ポ
ンプ場に接続されており、下流側気液混相汚水管３を所
定の真空圧に保持している。

【００１２】通気管５には常開第１弁６が地中埋設状態
で介設されている。そして、常開第１弁６の上流側に常
閉第２弁７を地中埋設状態で介設した空気取込管８が分
岐接続されている。

【００１３】前記構成において、気液二相の状態で上流
側気液混相汚水管２を流れてきた汚水Ｗが、図２に示す
ように、サイホン管４の上流側のリフト部４Ｂの手前で
一定量溜まった状態において、上流側気液混相汚水管２
に介設されている真空弁（図示省略）が弁開すると、上
流側気液混相汚水管２から流下してくる空気と汚水Ｗが
混合して図３に示すスラグ流Ｓとなってリフト部４Ｂを
かけ登る。つまり、汚水Ｗが吸い上げられて障害物１を
乗り越え下流側気液混相汚水管３に達し、下流側気液混
相汚水管３内を流下する。

【００１４】ところで、一時的、部分的に多量の汚水Ｗ
か流下してくると、図４に示すように、リフト部４Ｂが
汚水Ｗによって閉塞された満管状態になり、下流側気液
混相汚水管３の真空圧がサイホン管４を介して上流側気
液混相汚水管２に伝わらなくなる。しかし、下流側気液
混相汚水管３およびサイホン管４の真空圧は通気管５を
介して上流側気液混相汚水管２に伝えられるため、サイ
ホン管４の上流側リフト部４Ｂの閉塞による真空度の低
下をほぼなくすことができる。その結果、一時的、部分
的にリフト部４Ｂが汚水で閉塞されても、上流側気液混
相汚水管２に介設されている真空弁を弁開させるのに必
要な真空圧が確保できる。このため、真空弁が弁開する
につれてリフト部４Ｂを閉塞している汚水を徐々に流下
させて、リフト部４Ｂの閉塞を解消することができる。

【００１５】通気管５の下流側接続位置Ｐ１がサイホン
管４の頂上部４Ａに設定されているので、通気管５の下
流側接続位置Ｐ１が汚水Ｗや固形物によって閉塞される
ことはない。しかも、通気管５の下流側接続位置Ｐ１を
サイホン管４の頂上部４Ａに設定することで、通気管５
の配管長さを短縮することができる。つまり、障害物１
を跨いで配管されていた従来の通気管の配管長さと比較
して大幅に短くできる。また、頂上部４Ａから下流側気
液混相汚水管３へは自然下がり勾配がついているので、
頂上部４Ａが満管になることはない。

【００１６】また、図４のように、サイホン管４の上流
側リフト部４Ｂが一時的に多量の汚水Ｗや固形物によっ
て閉塞された場合、この閉塞を短時間で解除したい場合
には、常開第１弁６を弁閉し、常閉第２弁７を弁開す
る。その結果、空気取込管８から取り込んだ空気（大
気）は、通気管５を通って上流側気液混相汚水管２に送
り込まれ、この送り込まれた空気圧によりサイホン管４
の上流側リフト部４Ｂに溜まっている多量の汚水Ｗや固
形物を押上げて流下させ、リフト部４Ｂの閉塞を解消す
ることができる。すなわち、常開第１弁６と常閉第２弁
７の開閉を切替える簡単な操作により、リフト部４Ｂの
閉塞を確実に解消することができる。

【００１７】本発明は、障害物１を跨いで横断するサイ
ホン管４を介して、上流側気液混相汚水管２と下流側気
液混相汚水管３を互いに接続しているので、障害物１を
潜って上流側気液混相汚水管と下流側気液混相汚水管を
互いに接続している従来の構造と比較して、煩雑な掘削
工事が不要になり布設作業性を向上させることができ
る。また、サイホン管４と通気管５の両者の配管を障害
物１の上側に設定しているので、サイホン管４と通気管
５を上下に分離して配管していた従来の構造と比較して
布設作業が容易になる。さらに、気液分離槽や空気溜め
の設置が不要になるので構造の簡略化を図ることができ
るとともに、通気管５の下流側接続位置Ｐ１をサイホン
管４の頂上部４Ａに設定することによって、通気管５の
下流側接続位置Ｐ１が汚水や固形物により閉塞されるの
を回避できるから、上流側気液混相汚水管２へ確実に真
空圧を伝えて、リフト損失を低く抑え汚水収集可能範囲
の拡大を図ることができる。しかも、サイホン管４の上
流側リフト部４Ｂが一時的に多量の汚水Ｗや固形物によ
って閉塞されたとしても、空気取込管８から取り込んだ
空気圧によって閉塞状態を容易に解消し、スムーズに汚
水を流下させることが可能である上、障害物１を跨いで
横断する通気管を設置している従来の構造と比較して、
通気管５の配管長さを短縮することができる。

【００１８】なお、前記実施の形態では、サイホン管
４、通気管５、常開第１弁６および常閉第２弁７などを
地中に埋設した例で説明しているが、サイホン管４の頂
上部４Ａを含む一部、通気管５、常開第１弁６および常
閉第２弁７を地上に設置してもよい。

【００１９】

【発明の効果】以上説明したように、請求項１記載の発
明によれば、障害物を潜って上流側気液混相汚水管と下
流側気液混相汚水管を互いに接続している従来の構造と
比較して、煩雑な掘削工事が不要になり布設作業性を向
上させることができる。また、サイホン管と通気管の両
者の配管を障害物の上側に設定しているので、サイホン
管と通気管を上下に分離して配管していた従来の構造と
比較して布設作業が容易になる。さらに、気液分離槽や
空気溜めの設置が不要になるので構造の簡略化を図るこ
とができるとともに、通気管の下流側接続位置をサイホ
ン管の頂上部に設定することによって、通気管の下流側
接続位置が汚水や固形物により閉塞されるのを回避でき
るから、上流側気液混相汚水管へ確実に真空圧を伝え
て、リフト損失を低く抑え、汚水収集可能範囲の拡大を
図ることができる。しかも、サイホン管の上流側リフト
部が一時的に多量の汚水や固形物によって閉塞されたと
しても、空気取込管から取り込んだ空気圧によって閉塞
状態を容易に解消し、スムーズに汚水を流下させること
が可能である上、障害物を跨いで横断する通気管を設置
している従来の構造と比較して、通気管の配管長さを短
縮することもできる。

【図面の簡単な説明】

【図１】請求項１記載の発明の実施の形態を示す断面図
である。

【図２】通常の汚水溜まり状態を示す説明図である。

【図３】スラグ流がリフト部をかけ登る状態の説明図で
ある。

【図４】リフト部が多量の汚水で閉塞された状態の説明
図である。

【符号の説明】

１ 障害物 ２ 上流側気液混相汚水管 ３ 下流側気液混相汚水管 ４ サイホン管 ４Ａ サイホン管の頂上部 ５ 通気管 ６ 常開第１弁 ７ 常閉第２弁 ８ 空気取込管 Ｗ 汚水

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 障害物を跨いで横断し、かつ該障害物の
   上流側に設置された上流側気液混相汚水管と障害物の下
   流側に設置された下流側気液混相汚水管とを接続するサ
   イホン管と、上流側気液混相汚水管とサイホン管の頂上
   部とを接続する通気管を備え、この通気管に常開第１弁
   が介設されているとともに、通気管の常開第１弁介設位
   置の上流側に常閉第２弁を介設した空気取込管が分岐接
   続されていることを特徴とする気液混相汚水管の閉塞防
   止構造。