JPH09320590A - リチウムイオン二次電池用負極材及びその製造方法 - Google Patents

リチウムイオン二次電池用負極材及びその製造方法

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JPH09320590A
JPH09320590A JP8157416A JP15741696A JPH09320590A JP H09320590 A JPH09320590 A JP H09320590A JP 8157416 A JP8157416 A JP 8157416A JP 15741696 A JP15741696 A JP 15741696A JP H09320590 A JPH09320590 A JP H09320590A
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fiber
pitch
less
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JP8157416A
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Hiroshi Ejiri
宏 江尻
Norimune Yamazaki
典宗 山崎
Hideyuki Nakajima
秀行 中嶋
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Abstract

(57)【要約】 【解決手段】 2400℃以上の熱処理で得られる
ピッチ系黒鉛質繊維ミルド(A)と550〜1300℃
の熱処理で得られるピッチ系炭素質繊維ミルド(B)の
両方を含み、(A)と(B)ともa)平均粒径=10〜
30μm、b)X線光電子分光法(ESCA)による表
面酸素濃度(O/C原子数比)=0.05以下、d)電
子スピン共鳴によるスピン濃度(spins /mg)=1×
1017以下、e)カールフィッシャー法による吸着水分
率=1.5wt%以下のリチウムイオン二次電池用負極
材。 (A)/(B)=95/5〜40/60である
こと。 ピッチ系不融化繊維を250〜1300℃で
炭化後、ミルド化し、塩化水素ガス含有不活性雰囲気
下、400〜1300℃で熱処理する炭素質繊維ミルド
(B)の製法。 【効果】 それぞれ単独で用いるよりも安定化時の容量
が大きく、初期の充放電効率が高く、充放電サイクル特
性に優れている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、炭素質繊維ミルド
及び黒鉛質繊維ミルドを主成分とするリチウムイオン二
次電池用負極材及びその製造方法に関する。更に、本発
明は、熱処理(炭化・黒鉛化)温度の異なる2種以上の
易黒鉛化性ピッチ系繊維ミルド、特に2400℃以上で
黒鉛化されたピッチ系黒鉛質繊維ミルド(A)と、55
0℃以上1300℃以下で炭化されたピッチ系炭素質繊
維ミルド(B)とを主体とするリチウムイオン二次電池
用負極材に関する。更には、本発明は、ピッチ系黒鉛質
繊維ミルド(A)及びピッチ系炭素質繊維ミルド(B)
を単独で用いた場合よりも、安定化時の充放電容量が大
きく、高エネルギー密度を有し、且つ充放電サイクル特
性に優れているリチウムイオン二次電池用負極材及びそ
の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、アルカリ金属、例えばリチウム
を負極活物質として用いた二次電池は、高エネルギー密
度及び高起電力である他、非水電解液を用いるために作
動温度範囲が広く、長期保存に優れ、さらに軽量小型で
ある等の多くの利点を有している。従って、このような
非水電解液リチウムイオン二次電池は、携帯用電子機器
電源をはじめとして、電気自動車、電力貯蔵用などの高
性能電池としての実用化が期待されている。
【0003】また、このリチウムイオン二次電池用負極
材として、炭素材或いは黒鉛材を利用することが検討さ
れている。炭素材としては、石炭、コークス、PAN系
炭素繊維、等方性ピッチ系炭素繊維、有機物の炭化(低
温熱処理)品等が検討されており、黒鉛材としては、天
然黒鉛、人造黒鉛、合成黒鉛、メソカーボンマイクロビ
ーズ、有機物の黒鉛化(高温熱処理)品、黒鉛繊維等が
検討されている。
【0004】また一般的に、炭素系負極材は、充電容量
には優れるが、初期充放電効率が低く、またサイクル特
性に劣り、一方、黒鉛系負極材は、サイクル特性に優れ
るが、初期充電容量が炭素系に較べ低く、充放電速度が
遅いという問題点があり、それらを補完する目的で、種
々の炭素系材料と黒鉛系材料を2種以上混合使用するこ
とが研究されている。例えば、特開平6−111818
号公報には、球状の黒鉛粒子と黒鉛化炭素短繊維(気相
成長炭素繊維を黒鉛化したもの)とを適当量混合するこ
とで電極シートの導電性が向上し高容量が発現でき、ま
た、電極強度も向上し、炭素材の脱落や集電基体からの
脱落などが防止でき、サイクル寿命が延長できることが
開示されているが、条件によっては放電容量が低下し、
混合の効果が不十分であった。
【0005】また、特開平5−283061号公報に
は、炭素粒子と炭素繊維とを複合化することで、導電性
の向上とバルキーな構造となるため気孔を通じて電解液
の拡散が向上することにより、充放電速度、出力密度及
びサイクル特性に優れたリチウム二次電池が開示されて
いるが、放電容量が270mAh/gと低くまだ不十分
なものである。また、特開平7−161347号公報に
は、比抵抗の小さい高温炭化の高結晶性PAN系炭素繊
維と、比抵抗の大きな低温炭化の低結晶性PAN系炭素
繊維とを、等量混合することにより、両者の欠点をそれ
ぞれ補充し、高い放電容量を有し、且つ初期容量損失が
低い負極材を与えることが開示されているが、初期放電
容量が240mAh/g程度とまだ低く、また初期充放
電効率が依然として55%程度と低く、実用に耐えるも
のでなかった。
【0006】また、負極材の表面を処理し電池の性能を
改善することも検討されており、例えば、炭素材の表面
改質方法として、特開平7ー105978号公報にはL
iAlH4 等水素化物を還元剤として含む有機溶媒を用
いて、カーボン表面に存在する含酸素官能基を還元除去
して、負極材の劣化、負極表面上での電解質や有機溶媒
の分解を抑制することが開示されているが、この処理で
は電池特性において放電容量の向上がみられていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、炭素系材料
と黒鉛系材料を混合した負極材の課題である、未だ充放
電容量が小さく、初期の充放電効率が低く、充放電速度
が遅く、さらにサイクル寿命が短い点を解決することを
目的とする。通常、リチウムイオン二次電池負極材に要
求される特性としては、 1)充放電容量が大きいこと、 2)負極材の内部或いは表面でリチウムイオンが不活性
化する量が少ないこと(不可逆容量が少ないこと)、 3)電解液を分解させないこと、 4)サイクル特性として、負極材自身の構造を破壊させ
ないこと、等を挙げることができる。
【0008】これらの諸特性を満足させる炭素系及び黒
鉛系の負極材料の研究・開発、及びそれら負極材料のリ
チウムイオンの充放電機構の解析が盛んに行われてい
る。炭素系及び黒鉛系の材料は、いわゆる無定形炭素、
規則的構造を有する黒鉛、及びダイヤモンド等と種々の
構造をとり、更に無定形炭素から完全な黒鉛結晶までの
間には色々な中間的構造が存在し、極めて複雑であり、
構造自体完全には明らかにされていない。
【0009】一般に、炭素系材料と呼ぶものは、構造
上、無定形炭素から完全な黒鉛結晶までの中間にあるも
のを言い、多結晶体であることを意味している。これら
炭素系材料の構造は炭素前駆体の種類或いは処理方法等
によって様々に異なると言える。そして、リチウムイオ
ンの充放電機構もまた炭素材の種類によって様々と言え
る。また、炭素系材料は、高温で熱処理(黒鉛化)する
とその構造は変化し、黒鉛構造に近づく。
【0010】完全な黒鉛結晶におけるリチウムイオンの
充放電機構は、炭素原子の六角網平面積層面の間に入り
込んだり出たりする、いわゆるリチウムイオンの黒鉛層
間(層間距離0.3354nm)へのインターカレーシ
ョン、デインターカレーションという機構で説明され、
その理論容量は、常温、常圧でLiがインターカレート
され安定化するC6 Liの状態の時の電気容量であっ
て、372mA/gとなる。また、黒鉛材は放電容量が
大きく、且つLiの不可逆容量も少ないためサイクル特
性が良いが、電解液を分解させるだけでなく、Liイオ
ンの充放電の繰り返しによって黒鉛層間は膨張・収縮を
繰り返すことになり、構造破壊をきたすことが報告され
ている。
【0011】黒鉛層構造が未発達の炭素材の場合は、リ
チウムイオンの充電において広い層間スペースにリチウ
ムイオンがクラスター(凝集状態)で存在すると言われ
ている。また、炭素材料は電解液を分解させず、構造破
壊もきたさないが、初回の充放電効率が低く(Liの不
可逆容量が大きい)、サイクル特性が低下するという欠
点があった。この原因については炭素材料自身の構造と
密接に関連している。つまり、炭素材料は結晶構造が未
発達のため、その内部や表面において構造の欠陥部が黒
鉛材料より多く存在しているのみならず、表面では炭素
原子が空気や水分によって酸化を受け、より多くの含酸
素官能基(水酸基、カルボキシル基等)が存在してい
る。
【0012】また、含酸素官能基が多いと空気中の水分
を吸着し易い。そのため、Liイオンのインターカレー
ション、デインターカレーションの際に、その構造欠陥
部の炭素ラジカルにトラップされたり、含酸素官能基や
水分と反応して水酸化リチウムや炭酸リチウム等の無機
物を生成し、これが初回の充放電効率やサイクル特性の
低下を引き起こしているものと考えられる。
【0013】本発明者はこの考えに基き、内部或いは表
面に存在する欠陥部のラジカル濃度を減少させ、且つ、
主に表面に存在する含酸素官能基や吸着水分を除去する
ことによって、Liの不可逆容量を少なくし、初回の充
放電効率やサイクル特性を著しく向上させることを見出
した。また、上記改質処理を施した炭素材料と黒鉛材料
とを混合することによって、更に放電容量が大きく、電
解液の分解を抑え、サイクル特性の優れた負極材となる
ことを見出した。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を
種々検討し、出発原料の選択、製造方法等をふくめた炭
素系及び黒鉛系の適切な材料の選定、その形態、その組
み合わせ方、配合比率等を研究した結果、同一のピッチ
系易黒鉛化材料から製造され、且つ黒鉛化度(焼成温度
で調整)の相違する、ピッチ系炭素質繊維ミルドとピッ
チ系黒鉛質繊維ミルドを主体に混合することにより、従
来の炭素材と黒鉛材との混合負極材の課題を解決できる
ことを見出すとともに、さらに混合する炭素材と黒鉛材
の内部或いは表面に存在するラジカルや含酸素官能基や
吸着水分を減少させることで、従来の混合負極材の放電
容量やサイクル特性を向上させることを見出し、本発明
を完成するに至った。
【0015】即ち、本発明による負極材は、 2400℃以上の熱処理温度で得られるピッチ系黒
鉛質繊維ミルド(A)と550℃以上1300℃以下の
熱処理温度で得られるピッチ系炭素質繊維ミルド(B)
の両方を含み、かつ、(A)及び(B)の両方とも a、平均粒径が10μm以上30μm以下であり、 b、X線光電子分光法(ESCA)による表面分析で得
られる表面酸素濃度(O/C原子数比)が0.05以下
であり、 c、電子スピン共鳴を用いて定量化されるスピン濃度
(spins /mg)が1×1017以下であり、 d、カールフィッシャー法で測定される吸着水分率が
1.5wt%以下である、リチウムイオン2次電池用負
極材を提供する。また、
【0016】 (A)と(B)との混合割合(重量
比)(A)/(B)が95/5以下40/60以上であ
る点にも特徴を有する。また、 (A)が550℃以上1300℃以下の温度で炭化
後ミルド化し、更に2400℃以上の熱処理温度で黒鉛
化したものである点にも特徴を有する。また、 (B)が250℃以上1300℃以下の熱処理温度
で炭化後、ミルド化し、更に塩化水素ガスを含有する不
活性雰囲気下、400℃以上1300℃以下の温度で熱
処理されてなる点にも特徴を有する。
【0017】なお、本発明においてミルド化(粉砕)さ
れた繊維を繊維ミルドと称し、さらに炭素系の繊維ミル
ドを炭素質繊維ミルド、黒鉛系の繊維ミルドを黒鉛質繊
維ミルドと称す。このように、本発明におけるリチウム
イオン二次電池用負極材は、ピッチ系炭素前駆体を原料
とし、紡糸して繊維化し、不融化後、炭素化したもの及
び黒鉛化したものであり、更に繊維形態のまま細かくミ
ルド化された、特定の粒径及び粒度分布を持つ主に円柱
状の繊維ミルドを主体とするものであり、かつ、繊維ミ
ルドの表面改質されたものであり以下の利点を有す。 1)ピッチ、特にメソフェーズピッチを原料とすること
により、芳香環ピッチ分子の配向が繊維内部まで促進さ
れ、負極材のリチウムイオンの出入りが容易となる。
【0018】2)両方とも同種の原料であるため、ミル
ド化した際の粒度分布をほぼ同一に調整することが容易
で、比較的に均一な混合が容易となり、電池特性のバラ
ツキを少なくできる。 3)両方とも繊維ミルドとすることにより、表面積が大
きくでき、かつ繊維ミルドが繊維の特徴である円柱形状
を保持するので、リチウムイオンの出入りが容易とな
る。すなわち、ピッチ系繊維ミルドは、ピッチ分子が配
向し、リチウムイオンの出入口としての層間空隙を周面
及び上下端面の全面に有しており、天然黒鉛又はピッチ
や有機高分子を炭化或いは黒鉛化して粉砕したもの、或
いはピッチや有機高分子の粉体を炭化或いは黒鉛化した
ものとは本質的に異なる特性を持つものである。
【0019】4)両方とも繊維ミルドとすることによ
り、例えばシート状に負極材を形成する場合、二次元的
配向がしやすく、シート化が容易であると共にシートの
充填密度を上げられる。 5)繊維(特に炭素質繊維ミルド)表面のラジカルや含
酸素官能基や吸着水分を低減させることにより、電池の
充放電容量及びサイクル特性がより向上できる。
【0020】以下、本発明を具体的に説明する。 (I)繊維ミルドについて: <原料ピッチ>本発明に用いる炭素質繊維ミルドあるい
は黒鉛質繊維ミルドの出発原料は、石油ピッチ系、石炭
ピッチ系、合成ピッチ系のいずれに限定されるものでは
ないが、特に易黒鉛化質であるメソフェーズ系ピッチと
することが好ましい。該メソフェーズ系ピッチとしては
紡糸可能ならば特に限定されるものでないが、メソフェ
ーズ含有量100%のものが望ましい。原料ピッチの軟
化点は特に限定されるものではないが、紡糸温度との関
係から、軟化点が低くて且つ不融化反応速度の速いもの
が、製造コスト及び安定性の面から有利である。従っ
て、原料ピッチの軟化点は230℃以上350℃以下、
好ましくは250℃以上310℃以下である。
【0021】<紡糸>原料ピッチを溶融紡糸する方法は
特に限定されるものではなく、メルトスピニング、メル
トブロー、遠心紡糸等種々の方法を使用することが出来
るが、紡糸時の生産性や得られる繊維の品質の観点か
ら、メルトブロー法が好ましい。この時の紡糸孔の大き
さは、0.1mmφ以上0.5mmφ以下、好ましくは
0.15mmφ以上0.3mmφ以下である。また、紡
糸速度は毎分500m以上、好ましくは毎分1,500
m以上、より好ましくは毎分2,000m以上である。
【0022】紡糸温度は使用する原料ピッチにより幾分
変更されるが、原料ピッチの軟化点以上でピッチが変質
しない温度であれば良く、300℃以上400℃以下、
好ましくは300℃以上380℃以下である。なかで
も、本発明に用いる原料ピッチは、数十ポイズ以下とい
う低粘度で紡糸し、且つ、高速冷却することにより、黒
鉛層面が繊維表面に開口するように配列されるためにメ
ソフェーズ系ピッチの使用が最も好ましい。このように
して製造されたピッチ繊維から得られた炭素繊維は、黒
鉛層面が繊維表面に開口しつつも、黒鉛層面が繊維円周
に沿った疑似オニオン層が繊維表層に形成され、充放電
速度を早くしても容量低下が少なく、さらに、充放電を
繰り返しても容量低下は殆どないと言う長所を示す。
【0023】<不融化>不融化方法としては、二酸化窒
素や酸素等の酸化性ガス雰囲気中で加熱処理する方法
や、硝酸やクロム酸等の酸化性水溶液中で処理する方
法、さらには、光やγ線等による重合処理方法も可能で
ある。より簡便な不融化方法は、空気中で200〜35
0℃で一定時間加熱処理する方法であり、その時の平均
昇温速度は3℃/分以上、好ましくは5℃/分以上であ
る。
【0024】<炭化、ミルド化、黒鉛化> (a)ピッチ繊維の炭化:不融化したピッチ繊維は、不
活性ガス中や或いは酸化性ガスの非存在下で加熱処理す
ることにより炭素質繊維とすることができる。この時の
昇温速度や保持時間は特に限定されるものでない。ピッ
チ繊維の炭化は常法に従って、不活性ガス雰囲気下25
0℃以上2000℃以下の温度で実施することができ
る。
【0025】ただし、本発明の炭素質繊維ミルドの場
合、炭化と、後述の塩化水素の熱処理の両方またはいず
れかにおいて、550℃以上1300℃以下、好ましく
は650℃以上1200℃以下で熱処理されることを要
する。550℃未満の熱処理では、炭素質繊維ミルド自
体が未だ水素や酸素あるいはその他の炭素以外の元素を
多く含み、電気化学的に不安定であるとともに導電性に
劣るためサイクル特性が問題となる。このため、炭化の
温度が550℃未満の場合は、後述の塩化水素ガスの熱
処理温度を550℃以上とし、炭化を促進させることを
要する。
【0026】一方、1300℃を超えて高温熱処理され
た炭素質繊維ミルドの場合、繊維のほとんどが炭素元素
のみとなり化学安定性や導電性の観点では優れた炭素材
となるが、リチウムの受入れ量が小さく本発明に対して
は好ましくない。このように550℃以上1300℃以
下で炭化された炭素質繊維の結晶化程度をX線回折デー
タで示すと、黒鉛層間距離(d002 )が0.350nm
以上、C軸方向の結晶子の大きさ(Lc)が5nm以下
となっている。
【0027】(b)ミルド化:ピッチ系炭素質繊維は、
電池の容量を向上させるため、後述の粒径及び粒度分布
になるようにミルド化(粉砕)することが要求される。 (i)ピッチ系炭素質繊維のミルド化:本発明のピッチ
系炭素質繊維ミルドを製造する方法としては、メソフェ
ーズピッチを紡糸し不融化しさらに要求される所定の温
度で不活性ガス中で炭化した後、ビクトリーミル、ジェ
ットミル、クロスフローミル等でミルド化することが有
効である。
【0028】なお、繊維のミルド化を効率良く実施する
ためには、上記方法に共通することであるが、例えばプ
レートを取り付けたローターを高速に回転することによ
り、繊維軸に対し直角方向に繊維を寸断する方法が適切
である。ミルド化されたピッチ系炭素質繊維に適する繊
維長は、ローターの回転数、プレートの角度及びロータ
ーの周辺に取り付けられたフィルターの目の大きさ等を
調整することによりコントロールすることが可能であ
る。該ミルド化には、ヘンシェルミキサーやボールミ
ル、擂潰機等による方法もあるが、これらの方法による
と繊維の直角方向への加圧力が働き、繊維軸方向への縦
割れの発生が多くなり好ましくない。また、この方法は
ミルド化に長時間を要し、適切なミルド化方法とは言い
難い。
【0029】(ii)ピッチ系黒鉛質繊維ミルドの製
造:通常、熱処理(特に黒鉛化)を効率よく行うために
は、容積当りの充填量を高くすることが良い。すなわ
ち、ミルド化処理した後に黒鉛化処理することが焼成コ
ストを低減させる上で有利である。このため、ピッチ系
黒鉛質繊維ミルドを製造する方法としては、黒鉛化後ミ
ルド化する方法も考えられるが、不融化処理したまま、
あるいは不融化後に250℃以上1500℃以下、より
好ましくは550℃以上1300℃以下の温度で不活性
ガス中で炭化した後、ミルド化し黒鉛化する方法が有利
である。
【0030】また、塩化水素ガスを含有する不活性雰囲
気下で表面改質された炭素質繊維ミルドを、さらに黒鉛
化し黒鉛質繊維ミルドとして使用することも可能であ
る。特に本発明の場合、550℃以上1300℃以下で
炭化処理した後ミルド化し、さらに黒鉛化処理すること
によりミルド化後の繊維の縦割れが防げると共に、ミル
ド化時に新たに表面に露出した黒鉛層面がより高温の黒
鉛化時に縮重合・環化反応が進み、その表面の活性度が
低下することも、電解液の分解を阻止する上で効果があ
る。1300℃を越えた温度で不活性ガス中で熱処理し
て黒鉛化した後にミルド化すると、繊維軸方向に発達し
た黒鉛層面に沿って開裂が発生し易くなり、製造された
ミルド化された黒鉛繊維の全表面積中に占める破断面表
面積の割合が大きくなり、破断黒鉛層面における電子の
局在化による電解液の分解が起こり好ましくない。
【0031】(c)ピッチ系炭素質繊維ミルドの表面改
質;比較的に低温度で炭化され、その後ミルド化された
繊維には、切断面が多く存在し、構造欠陥部が露出しや
すい。この構造欠陥部に存在する活性な炭素原子(ラジ
カル)は空気や水分によって酸化され、水酸基やカルボ
キシル基等含酸素官能基として存在する場合が多い。こ
のような炭素材をリチウムイオン2次電池用負極材に用
いると、活性な炭素原子とリチウムイオンが反応した
り、含酸素官能基と反応し水酸化リチウムや炭酸リチウ
ム等の無機物を生成したりして、Liの不可逆容量を増
加させる。
【0032】また、水分の吸着も見られ、これに起因し
水酸化リチウムが生成し、同様にLiの不可逆容量を増
加させる。このことが、初回の充放電効率及び、サイク
ル特性が高くならない原因ともなっている。従って、こ
れらの構造欠陥部あるいは含酸素官能基を極力減少させ
ることが、電池の性能をより向上させる上で重要となっ
てくる。
【0033】本発明者は、これらを減少させる方法とし
て、種々表面の処理方法を研究した結果、繊維ミルド
(特に炭素質繊維ミルド)を塩化水素を含有する不活性
雰囲気中で熱処理することが、効果があることを見出し
本発明を完成するに至った。これは、塩化水素が、炭素
表面或いは内部に存在する炭素ラジカルに対し、縮重合
・環化反応を促進させる効果があり、かつ含酸素官能基
に対して、脱離させ、炭素ラジカルを発生させると共に
同様に縮重合・環化を促進させる効果があるためと考え
られ、この処理によって、炭素質繊維ミルド表面の炭素
ラジカルや含酸素官能基が減少される。
【0034】これらは、表面酸素濃度(O/C原子数
比)、スピン濃度、吸着水分率等を測定することで確認
が可能である。表面酸素濃度(O/C原子数比)は、含
酸素官能基の存在割合を表し、本発明ではX線光電子分
光法(ESCA)で測定される。スピン濃度は、活性な
炭素原子(ラジカル)の存在状態を表し、本発明では電
子スピン共鳴分析法により定量化される。吸着水分率
は、水分の吸着量を表し、本発明ではカールフィッシャ
ー法により200℃の温度で測定される。
【0035】電池の性能を向上させるためには、いずれ
も低いほど好ましく、特に本発明においては、X線光電
子分光法による表面酸素濃度(O/C原子数比)を0.
05以下、電子スピン共鳴分析法によるスピン濃度(sp
ins /mg)を1×1017以下、カールフィッシャー法に
よる吸着水分率を1.5wt%以下と、繊維ミルドの表
面状態をすべてこの範囲にすることが肝要であり、いず
れかが外れた場合は、電池の性能向上効果が小さいもの
であった。このような範囲の繊維ミルドは、処理する繊
維ミルドの性状(原料の種類、紡糸方法、不融化方法、
炭化方法(特に炭化温度)、ミルド化方法等で変化)に
合わせ、塩化水素ガスの濃度、熱処理の温度及び処理時
間を調整することにより得ることができる。
【0036】ちなみに、このような処理を行わない場
合、本発明の炭素質繊維ミルドは、550℃から130
0℃の炭化(熱処理)温度の範囲において、表2及び表
3の炭素質繊維ミルド(C)の欄に示すような表面特性
を示した。低温の炭化では、一部を除き各特性とも満足
せず、また、炭化温度が高くなるにつれ各特性が向上
し、一部の特性を満足させるあるものの、炭素材料とし
て電池性能を満足させるために要求される1300℃以
下の炭化温度では、上記特性範囲をすべて満足させるこ
とは困難であり、本発明のようになんらかの処理が要求
される。
【0037】また、本発明は、炭素ラジカルの生成及び
再結合の過程で、炭素以外の元素、例えばFe、Ni等
金属元素や窒素、イオウ等ヘテロ元素等を効率的に除去
することができ、炭素材の純度を向上させることができ
る。また、表面の改質方法には、不活性雰囲気中、ある
いは減圧下で熱処理することも考えられるが、炭素ラジ
カルの減少効果が少なく、含酸素官能基や吸着水分率に
ついては熱処理によって増加したものもあり、その電池
特性においても、初回の充放電効率は若干向上したもの
の、サイクル特性の向上が全く認められなかった。
【0038】本発明における塩化水素ガスを含有する不
活性雰囲気での熱処理温度は400℃以上1300℃以
下、好ましくは400℃以上1000℃以下の温度であ
る。熱処理温度が400℃未満では、本発明の表面改質
を得るのに非常に長時間を要すか、または改質が不十分
となり上記特性とならないので好ましくない。また、1
300℃を越える場合、前述のように炭素質繊維ミルド
の炭化が促進し、電池の初期容量が減少すること及びコ
ストも高くなるので好ましくない。
【0039】なお、このことより、繊維の炭化温度を5
50℃以下に低下させても、その後ミルド化し、塩化水
素ガスを含有する不活性雰囲気で550℃以上で熱処理
することで炭化を促進し、本発明の要求を満たすことが
可能である。また、本発明では、炭素質繊維ミルドは4
00℃以上950℃以下の比較的低温で炭化したもの
が、950℃以上で炭化されたものより表面改質の効果
が大きい。この原因については、炭化温度の上昇ととも
に炭素質繊維ミルドの結晶化度が発達し、950℃以上
で炭化されたものでは、Liイオンのインターカレーシ
ョン、デインターカレーションの機構がクラスター的な
ものからより黒鉛的な機構に変化するためと考えられ
る。
【0040】このため、本発明の塩化水素ガス熱処理
は、Liイオンのインターカレーション、デインターカ
レーションの機構がより広い層間スペースをもつ炭素材
の、よりクラスター(凝集状態)的に行われる炭素材に
より有効な改質方法であるといえる。また、塩化水素ガ
スの含有量については、特に限定されるものでないが、
処理の効率性、装置への腐食性、排ガス処理及び経済性
の観点から、0.5vol%以上10vol%以下が好
ましい。また、不活性雰囲気としては、爆発性を有する
ガス(塩化窒素等)を生成しない雰囲気が好ましく、特
に、希ガス、なかでもアルゴン雰囲気が好ましい。
【0041】(d)黒鉛化:ピッチ系炭素質繊維の黒鉛
化は、通常2000℃以上の温度で実施されるが、電池
の容量を高容量化させるためには、本発明で使用するよ
うなピッチ系炭素繊維の場合、より黒鉛化を進める(熱
処理温度を高くする)ことが要求され。このため、本発
明ではピッチ系炭素質繊維を2400℃以上、好ましく
は2500℃以上の温度で黒鉛化したものを使用するこ
とが好適である。また、より黒鉛化が進んだものの方
が、炭素系の材料との混合効果が性質の差が大きくなる
ためか、発現し易く好ましい。このように、黒鉛化温度
は、高い方が容量等の点で好ましいが、生産コストが黒
鉛化温度とともに急激に高くなり、また3000℃を超
える熱処理温度では、黒鉛化を行う炉材の耐久性の観点
で商業的に安定的生産することが困難となるため、その
目的に合わせ適宜選択する必要がある。
【0042】また、黒鉛化度をより発達させるために
は、ホウ素化合物等を添加して黒鉛化する方法も使用で
きる。このようにして製造されたピッチ系黒鉛質繊維ミ
ルドの結晶化程度をX線回折データで示すと、黒鉛層間
距離(d002 )が0.338nm以下、C軸方向の結晶
子の大きさ(Lc)が35nm以上、a軸方向の結晶子
の大きさ(La)が50nm以上、(101)回折ピー
クと(100)回折ピークのピーク比(P101
100 )が1.0以上である。
【0043】ここで、X線回折法とは、CuKαをX線
源、標準物質に高純度シリコンを使用し、炭素繊維に対
し回折パターンを測定するものである。そして、その0
02回折パターンのピーク位置、半値幅から、それぞれ
黒鉛層間距離d(002) 、c軸方向の結晶子の大きさLc
(002) 、及び110回折パターンのピーク位置、半値幅
からa軸方向の結晶子の大きさLa(110) を算出する。
算出方法は学振法に基づき算出する。101/100の
ピーク比の測定は、得られた回折線図にベースラインを
引き、このベースラインから101(2θ≒44.
5)、100(2θ≒42.5)の各ピークの高さを測
定し、101の回折ピーク高さを100回折ピーク高さ
で除して求める。
【0044】また、このように炭化後、ミルド化され、
更に黒鉛化されたピッチ系黒鉛質繊維ミルドの表面特性
は、高温で熱処理されているためか、原料ピッチ、繊維
ミルドの製造条件、黒鉛化条件を適宜選択することで、
X線光電子分光法によって定量化される表面酸素濃度
(O/C原子数比)は0.05以下、電子スピン共鳴に
よって定量化されるスピン濃度(spins /mg)は1.0
×1017以下、カールフィッシャー法で測定される吸着
水分率は1.5wt%以下とすることが出来る。このた
め、黒鉛質繊維ミルドにおいては、塩化水素ガス含有雰
囲気の熱処理は特に要求されないが、塩化水素ガス処理
前の炭素質繊維ミルドと混合し、合わせて塩化水素ガス
含有雰囲気で熱処理することが、黒鉛繊維ミルドの幾分
の改質効果と、品質管理上より最終製品に近いほうでの
処理となるため好ましく、その処理方法については、電
池の性能及びコスト等を勘案し適宜選択すれば良い。
【0045】(e)繊維ミルドの粒径、粒度分布:この
ようにして製造された炭素質繊維ミルド(B)及び黒鉛
質繊維ミルド(A)の平均粒径及び粒度分布を同程度の
範囲にすることが好ましく、且つ、レーザー回折方式に
よる粒度分布で表示すると、平均粒径は10〜30μm
の範囲であり、10%、50%、90%の累積径がそれ
ぞれ8〜15μm、10〜20μm、30〜60μmの
範囲であることが好ましい。黒鉛質繊維ミルド(A)の
平均粒径等がこの範囲を下回ると、高活性な微粒状の黒
鉛質繊維ミルドの存在量が増加し、電解液の分解を引き
起こすので好ましくない。またそれぞれの平均粒径等が
この範囲を越えると、本発明において電池の性能が低下
する傾向にあり、かつ、粒径の増加により電池の充填密
度の低下も招くので好ましくない。
【0046】さらに、繊維長が125μm以上の繊維ミ
ルドは、シート化時に厚みむらを引き起こす原因となる
ので、存在する割合は1wt%以下、好ましくは検出さ
れないことが要望され、この面からも平均粒径等がこの
範囲を越えることは好ましくない。なお、平均粒径や粒
度分布を調整する際、ミルド化処理、混合処理等の任意
の段階で、必要に応じ、分級機、篩い等による処理を行
うことができる。また、炭素質繊維ミルド(B)と黒鉛
質繊維ミルド(A)の両方とも同程度の平均粒径及び粒
度分布とすることにより均一な混合、分散となり、充填
密度の向上並びに均一な厚みの電極の電極シートを製造
することができ好ましい。
【0047】また、負極特性において、均一に分散され
ているシートでは、局部的な分極は起こり難く、炭素質
繊維ミルド(B)及び黒鉛質繊維ミルド(A)の持つ性
能を十分に発現できる。その意味においては、同程度の
平均粒径等を持たせるには、黒鉛質繊維ミルド(A)の
製造に際し、混合使用する炭素質繊維ミルド(B)と同
じものを、更に黒鉛化することが最適となる。これらよ
り、炭素質繊維ミルド(B)の平均粒径等の範囲の下限
も黒鉛質繊維ミルド(A)に合わせることが好ましい。
また、これにより製造の簡素化も図れコストの低下が期
待でき好ましい。なお、炭素質繊維ミルドを、更に黒鉛
化した場合、黒鉛化処理により繊維直径が細くなり、比
表面積も小さくなる傾向が見られるが粒度分布に対して
は顕著な差は見られず、同程度の粒度分布範囲を保つこ
とが可能である。
【0048】(II)負極の構成:本発明により得られ
た各繊維ミルド及びそれらの混合繊維ミルドは、通常の
手法により負極とすることが出来る。すなわち、ポリエ
チレンやポリテトラフルオロエチレン等のバインダーを
添加し、有機溶媒あるいは水溶媒を用いスラリー状と
し、厚さ10〜50μmの銅、ニッケル等からなる金属
箔上の片面または両面に塗布し、これを圧延、乾燥を行
い、厚さ50〜200μm程度のシート状物とする方法
が広く用いられている。その後、所定の幅・長さにスリ
ットし、正極及びセパレーターと共に巻取り製缶する方
法が一般的である。
【0049】各繊維ミルドを混合使用する際の混合割合
としては、焼成温度が2,400℃以上のピッチ系黒鉛
質繊維ミルド(A)/焼成温度が550℃以上1,30
0℃以下のピッチ系炭素質繊維ミルド(B)が重量比で
95/5以下40/60以上、好ましくは90/10以
下60/40以上である。混合割合(A)/(B)が4
0/60未満では、黒鉛系の配合比率の低下に伴なつて
黒鉛系の利点の発現が急激に低下し、初期効率が低くな
ると共にサイクル特性にも劣るようになる。一方、混合
割合(A)/(B)が、95/5を越えると混合の効果
が薄れるとともに、黒鉛系の性能により近づき放電終了
直前まで電位が平坦となり、容量表示のが困難な点が何
等改善されない。なお、(A)及び(B)は、それぞれ
の条件が満足すれば、それぞれ単独(1種類)であって
も、2種類以上であってもよく、電池性能面と製造面を
勘案し適宜選択すればよい。
【0050】(III)電池:本発明による各繊維ミル
ド及びそれらの混合繊維ミルドを負極に用い、リチウム
イオン二次電池を作製する場合には、電解液としてはリ
チウム塩を溶解し得るものであればよいが、特に非プロ
トン性の誘電率が大きい有機溶媒が好ましい。このよう
にして作られた繊維ミルドからの負極は、単位体積当た
りの充放電容量が大きく、電池の小型化に好適である。
また、上記有機溶媒としては、例えば、プロピレンカー
ボネート、エチレンカーボネート、テトラヒドロフラ
ン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキソラン、4
−メチル−ジオキソラン、アセトニトリル、ジメチルカ
ーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカー
ボネート等を挙げることができる。これらの溶媒を単独
あるいは適宜混合して用いることが可能である。
【0051】電解質としては、安定なアニオンを生成す
るリチウム塩、例えば、過塩素酸リチウム、ホウフッ化
リチウム、六塩化アンチモン酸リチウム、六フッ化アン
チモン酸リチウム(LiPF6 )等が好適である。ま
た、リチウムイオン二次電池の正極としては、例えば、
酸化クロム、酸化チタン、酸化コバルト、五酸化バナジ
ウム等の金属酸化物や、リチウムマンガン酸化物(Li
Mn2 4 )、リチウムコバルト酸化物(LiCo
2 )、リチウムニッケル酸化物(LiNiO2 )等の
リチウム金属酸化物;硫化チタン、硫化モリブデン等の
遷移金属のカルコゲン化合物;及びポリアセチレン、ポ
リパラフェニレン、ポリピロール等の導電性を有する共
役系高分子物質等を用いることが出来る。
【0052】これらの正極と負極との間に合成繊維製又
はガラス繊維製の不織布、織布やポリオレフィン系多孔
質膜、ポリテトラフルオロエチレンの不織布等のセパレ
ータを設ける。本発明の二次電池は、前記セパレータ、
集電体、ガスケット、封口板、ケース等の電池構成要素
と本発明の特定の負極を用い、常法に従って円筒型、角
型或いはボタン型等の形態のリチウムイオン二次電池に
組立てることができる。
【0053】
【実施例】本発明を以下の実施例により更に具体的に説
明するが、これらは本発明の範囲を制限するものではな
い。 (実施例1)ナフタレンを主成分としてフッ化水素触媒
を用いて合成された、光学的異方性で比重1.25のメ
ソフェーズピッチを原料として、幅3mmのスリットの
中に直径0.2mmφの紡糸孔を一列に500個有する
口金を用い、スリットから加熱空気を噴出させて、溶融
ピッチを牽引して平均直径13μmのピッチ繊維を製造
した。この時、紡糸温度は360℃、吐出量は0.8g
/H・分であった。
【0054】紡出されたピッチ繊維を、捕集部分が20
メッシュのステンレス製金網で出来たベルトの背面から
吸引しつつベルト上に捕集した。この捕集したマットを
空気中、室温から300℃まで平均昇温速度6℃/分で
昇温して不融化処理を行った後、650℃で炭化処理
し、さらに、この炭素質繊維をクロスフローミルで粉砕
し、炭素質繊維ミルド(C)とした。この粉体を島津製
作所製のレーザー回折法による粉体粒度測定装置、SA
LD−3000を用い、粒子の屈折率を1.80−0.
20iとして粒度を測定した結果、平均粒径19.5μ
m、10%、50%及び90%累積径がそれぞれ11.
0μm、17.5μm及び45.2μmであった。
【0055】また、この炭素質繊維ミルド(C)の表面
特性は、X線光電子分光法による表面酸素濃度(O/C
原子数比)0.108、電子スピン共鳴によって定量化
されるスピン濃度2.0×1017spins /mg、カールフ
ィッシャー法を用いた吸着水分率は200℃の測定温度
で0.90wt%であった。上記炭素質繊維ミルド
(C)の一部を、アルゴン雰囲気下、600℃まで3℃
/min の速度で昇温し、アルゴンガスのみから塩化水素
ガスを2vol%含有するアルゴンガスに切り替え、更
に600℃で2時間保持し、またアルゴンガスのみに切
り替え、常温まで冷却した。この表面改質処理を施した
繊維ミルドを炭素質繊維ミルド(B)とした。
【0056】この炭素質繊維ミルド(B)の表面特性
は、X線光電子分光法による表面酸素濃度(O/C原子
数比)0.041、電子スピン共鳴によって定量化され
るスピン濃度9.7×1015spins /mg、カールフィッ
シャー法を用いた吸着水分率は200℃の測定温度で
0.66wt%であった。また粒度分布は、平均粒径1
9.3μm、10%、50%及び90%累積径がそれぞ
れ11.6μm、17.4μm及び45.0μmであ
り、処理前とほぼ同じ値であった。
【0057】また、上記炭素質繊維ミルド(C)の一部
を、2900℃まで3℃/分の速度で昇温し、更に29
00℃で1時間保持し、黒鉛化して黒鉛質繊維ミルド
(A)を得た。この黒鉛質繊維ミルド(A)の表面特性
は、X線光電子分光法による表面酸素濃度(O/C原子
数比)0.029、電子スピン共鳴によって定量化され
るスピン濃度3.2×1015spins /mg、カールフィッ
シャー法を用いた吸着水分率は200℃の測定温度で
0.55wt%であった。この粉体を同様に粉体粒度測
定装置を用い、粒度を測定した結果、平均粒径17.3
μm、10%、50%及び90%累積径がそれぞれ8.
7μm、16.0μm及び44.8μmであった。
【0058】このようにして得られたピッチ系黒鉛質繊
維ミルド(A)とピッチ系炭素質繊維ミルド(B)を重
量比で50:50の割合で均一に混合した後、ポリテト
ラフルオロエチレンを繊維ミルドに対して3wt%添加
混練しペレットを作製し負極とした後、それぞれ3極セ
ルで充放電試験を行った。試験は、陽極に金属リチウム
を用い、エチレンカーボネート(EC)/ジメチルカー
ボネート(DMC)を容量比で1/1に調整した混合炭
酸エステル溶媒に、電解質として過塩素酸リチウム(L
iClO4 )を1モルの濃度で溶解させた電解液中で実
施し、充放電容量特性を測定した。充放電容量特性の測
定は、100mA/gの定電流で行い、放電容量は電池
電圧が2Vに低下するまでの容量とし、10回繰返し測
定とした。その測定結果を表1に示す。
【0059】(比較例1)実施例1で得られた黒鉛質繊
維ミルド(A)と実施例1で得られた表面改質前の炭素
質繊維ミルド(C)とを重量比で50:50の割合で混
合したもの、実施例1で得られた表面改質前の炭素質繊
維ミルド(C)及び表面改質後の炭素質繊維ミルド
(B)それぞれ単独で使用したものの計3種の材料を使
用し、実施例1と同様に負極を作製し充放電試験を行っ
た。電極特性の測定結果を合わせて表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】(実施例2)表2に示すように炭化温度の
みを変化させた以外、実施例1と同様にして表面改質し
た炭素質繊維ミルド(B)を4種作製した。各炭素質繊
維ミルドの表面特性も表2に示す。これら4種の炭素質
繊維ミルド(B)と実施例1で得られた黒鉛質繊維ミル
ド(A)をそれぞれ50:50の割合で均一に混合した
後実施例1と同様に負極を作製し充放電試験を行った。
電極特性の測定結果を合わせて表2に示す。
【0062】
【表2】
【0063】(実施例3)実施例1で得られた炭化温度
650℃の改質前の炭素質繊維ミルド(C)を、塩化水
素ガスの熱処理温度と処理時間を表3に示すように40
0℃から1000℃の間で変化させて、炭素質繊維ミル
ド(B)を4種作製した。各炭素質繊維ミルド(B)の
表面特性も表3に示す。このようにして得られた炭素質
ミルド(B)と実施例1で得られた黒鉛質繊維ミルド
(A)とを重量比で50:50でそれぞれ均一に混合し
た後、実施例1と同様にして負極材を作製し充放電試験
を行った。電極特性の結果を合わせて表3に示す。
【0064】
【表3】
【0065】(比較例2)実施例1と同様にして得た表
4に示すように炭化温度の異なる2種の炭素質繊維ミル
ド(C)に対して、表4に示す条件にて塩化水素ガスの
熱処理を行い、炭素質繊維ミルド(B)を2種得た。こ
のようにして得られた炭素質繊維ミルド(B)と実施例
1で得られた黒鉛質繊維ミルド(A)とを重量比で5
0:50でそれぞれ均一に混合した後、実施例1と同様
にして負極材を作製し充放電試験を行った。各炭素質繊
維ミルドの表面特性および電極特性を表4に示す。
【0066】(比較例3)実施例1で得られた表面改質
前の炭素質繊維ミルド(C)に対し、窒素雰囲気中、同
様に塩化水素ガスを使用せず600℃ー2時間の熱処理
を行い、炭素質繊維ミルド(B)を得た。この炭素質繊
維ミルド(B)の表面特性を表4に示す。この炭素質繊
維ミルド(B)と実施例1で得られた黒鉛質繊維ミルド
(A)をそれぞれ50:50の割合で均一に混合した後
実施例1と同様に負極を作製し充放電試験を行った。電
極特性の測定結果を合わせて表4に示す。
【0067】
【表4】
【0068】
【発明の効果】本発明により、ピッチ系黒鉛質繊維ミル
ド(A)とピッチ系炭素質繊維ミルド(B)を混合する
ことにより、それぞれ単独で用いるよりも安定化時の容
量が大きく、さらに、初期の充放電効率が高く、且つ充
放電サイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池用負
極に適した炭素材を提供することを可能にした。さら
に、特に炭素質繊維ミルドの表面を改質することで、よ
り電池性能の向上効果が見られた。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 2400℃以上の熱処理温度で得られる
    ピッチ系黒鉛質繊維ミルド(A)と550℃以上130
    0℃以下の熱処理温度で得られるピッチ系炭素質繊維ミ
    ルド(B)の両方を含み、かつ(A)及び(B)の両方
    とも a)平均粒径が10μm以上30μm以下であり、 b)X線光電子分光法(ESCA)による表面分析で得
    られる表面酸素濃度(O/C原子数比)が0.05以下
    であり、 d)電子スピン共鳴を用いて定量化されるスピン濃度
    (spins /mg)が1×1017以下であり、 e)カールフィッシャー法で測定される吸着水分率が
    1.5wt%以下であることを特徴とする、リチウムイ
    オン二次電池用負極材。
  2. 【請求項2】 黒鉛質繊維ミルド(A)と炭素質繊維ミ
    ルド(B)との混合割合(重量比)(A)/(B)が9
    5/5以下40/60以上であることを特徴とする、請
    求項1記載のリチウムイオン二次電池用負極材。
  3. 【請求項3】 黒鉛質繊維ミルド(A)が550℃以上
    1300℃以下の温度で炭化後ミルド化し、更に240
    0℃以上の熱処理温度で黒鉛化したものであることを特
    徴とする、請求項1又は2記載のリチウムイオン二次電
    池用負極材。
  4. 【請求項4】 ピッチ系不融化繊維を250℃以上13
    00℃以下の熱処理温度で炭化後、ミルド化し、次いで
    塩化水素ガスを含有する不活性雰囲気下、400℃以上
    1300℃以下の温度で熱処理することを特徴とする、
    請求項1〜3のいずれかに記載の炭素質繊維ミルド
    (B)の製造方法。
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