JPH09317634A - ウェーブカム式圧縮機 - Google Patents

ウェーブカム式圧縮機

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Publication number
JPH09317634A
JPH09317634A JP8130097A JP13009796A JPH09317634A JP H09317634 A JPH09317634 A JP H09317634A JP 8130097 A JP8130097 A JP 8130097A JP 13009796 A JP13009796 A JP 13009796A JP H09317634 A JPH09317634 A JP H09317634A
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JP
Japan
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sliding contact
cam
piston
wave cam
wave
Prior art date
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Pending
Application number
JP8130097A
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English (en)
Inventor
Satoshi Umemura
聡 梅村
Toshiro Fujii
俊郎 藤井
Masayoshi Hori
真嘉 堀
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Toyota Industries Corp
Original Assignee
Toyoda Automatic Loom Works Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 貧潤滑状態においてもシューがウェーブカム
とピストンとの間でロックを起こしにくく、耐久性を向
上可能なウェーブカム式圧縮機を提供する。 【解決手段】 ウェーブカム34とピストン31との間
に一対の介装部材43を介装する。この介装部材43
は、そのウェーブカム34のカム面34a、34bに摺
接する摺接平面43bから中心P0までの高さhを1/
2d≦h≦3/2dの範囲となるように形成する。ここ
で、dは介装部材43のピストン31の保持凹部31a
に摺接する摺接球面43aの半径である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、駆動シャフトに
挿着されたウェーブカムの回転によって、ピストンを往
復動させるようにしたウェーブカム式圧縮機に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】この種の圧縮機としては、既に本願出願
人が、例えば特開平7−189901号公報に記載の構
成を提案している。この圧縮機では、ハウジングの内部
にクランク室を形成するとともに、駆動シャフトが回転
可能に支持されている。その駆動シャフトには、凸曲面
のみのカム面からなるウェーブカムが一体回転可能に挿
着されている。前記ハウジングの一部を構成するシリン
ダブロックには、前記駆動シャフトと平行に複数のシリ
ンダボアが配列され、そのシリンダボア内には、ピスト
ンが往復動可能に挿通されている。そのピストンと前記
ウェーブカムとの間には、前記カム面と摺接する摺接平
面と、前記ピストンの保持凹面と摺接する摺接球面とを
有する介装部材としての半球状をなすシューが介装され
ている。そして、前記ウェーブカムの回転により、シュ
ーを介して前記ピストンがウェーブカム面の変位曲線に
応じて往復動されるようになっている。
【0003】斜板式圧縮機における斜板のサイクル曲線
は正弦波変位曲線であり、1サイクル曲線である。従っ
て、斜板式圧縮機における両頭ピストンは一方の頭にお
いて駆動シャフト一回転に対して一回圧縮するだけであ
る。これに対してウェーブカムのカム面の変位曲線は複
数サイクル曲線であり、両頭ピストンは一方の頭におい
て駆動シャフト一回転に対して複数回圧縮する。従っ
て、ウェーブカム式圧縮機においては一回転あたりの吐
出容量が斜板式圧縮機の場合よりも増大し、小型、軽量
化が容易に実現できる利点がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、圧縮機を長
時間停止させておくと、その圧縮機に接続された外部冷
媒回路内で、周囲の温度変化に応じて冷媒ガスが凝縮さ
れて液冷媒となることがある。このような液冷媒が圧縮
機内に流入すると、圧縮機内に貯留された潤滑油が液冷
媒中に分散される。そして、圧縮機の再起動時の液冷媒
のフォーミングに伴って、潤滑油が大量に外部冷媒回路
に持ち出される、いわゆる液洗い現象が発生することが
ある。この液洗い現象が発生すると、圧縮機内の摺動部
分への潤滑油の供給が困難となり、特に潤滑条件の厳し
いウェーブカム、シュー及びピストンの間で潤滑が不足
がちになるおそれがあった。
【0005】このようなピストンの保持凹面とシューの
摺接球面との間に潤滑油がほとんど介在されない場合に
は、その摺接面間に大きな摩擦力が働くことになる。こ
の摩擦力により、図11に示すように、シュー61がウ
ェーブカム62の回転に追従しなくなり、実線で示す理
想的な傾動状態からずれを生じて、破線で示す傾動状態
となる。これに伴って、ウェーブカム62のカム面62
aとシュー61の摺接平面61aとの接点A1が、摺接
平面61aの中心付近から実接点A2に移動されるとと
もに、シュー61がカム面62aに対して浮き上がった
状態となる。そして、一対のシュー61における中心間
距離が延びることになり、換言すると、シュー61の摺
接球面61bと図示しないピストンの保持凹面との間の
間隙が減少され、その間隙がゼロになるとシュー61が
ウェーブカム62とピストンとの間でロックした状態と
なるおそれがあった。
【0006】この発明の目的は、前記従来構成の最適化
を図るとともに、貧潤滑状態においてもシューがウェー
ブカムとピストンとの間でロックを起こしにくく、耐久
性を向上可能なウェーブカム式圧縮機を提供することに
ある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、請求項1に記載のウェーブカム式圧縮機の発明で
は、介装部材は、摺接球面を有する半球部と、摺接平面
を有するオフセット部とを備えた一体のシューであり、
該摺接平面と半球部中心との距離(オフセット量)h
が、次の式を満たすように形成されているものである。
【0008】1/2d ≦ h ≦ 3/2d ここで、dは、介装部材の摺接球面の半径を示す。請求
項2に記載のウェーブカム式圧縮機の発明では、介装部
材は、前記摺接球面を有する球体と、その球体と摺動自
在に接合されるとともに前記摺接平面を有する球座とを
備え、該摺接平面と球体中心との距離(オフセット量)
hが、次の式を満たすように形成されているものであ
る。
【0009】d ≦ h ≦ 3/2d ここで、dは、介装部材の摺接球面の半径を示す。請求
項3に記載の発明では、請求項1または2に記載のウェ
ーブカム式圧縮機において、前記介装部材は、その摺接
平面と摺接球面中心との距離が前記摺接球面の半径にほ
ぼ等しくなるように形成されているものである。
【0010】従って、本ウェーブカム式圧縮機において
は、介装部材におけるオフセット量の適正化により、ピ
ストンの保持凹面と介装部材の摺接球面との間に潤滑油
がほとんど介在されない場合が生じても、該介装部材の
傾動状態をほぼ理想状態に保つことができ、その摺接面
間(ピストンの保持凹面間に介装部材及びウェーブカム
を介在したときの軸方向における余裕空間)が安定して
確保される。このため、貧潤滑状態においても、介装部
材がウェーブカムとピストンとの間でロックしにくいも
のとなって、圧縮機の耐久性を向上することができる。
【0011】さらに、一対の介装部材における摺接球面
中心間距離の伸びを極力抑えることができるため、ピス
トンの保持凹面間の余裕間隙の設定量を大きくする必要
がなく、ピストンの往復動に伴う騒音や振動の発生を抑
制することができる。
【0012】特に、介装部材のオフセット量を摺接球面
の半径と等しくした場合には、ピストンの保持凹面と介
装部材の摺接球面との間に働く摩擦力の大小に拘わら
ず、前記間隙がほとんど減少しない。つまり、貧潤滑状
態においても介装部材がカム面に対してほとんど浮き上
がることがない。介装部材の摺接平面とウェーブカムの
カム面との接点を、理想の接点とほぼ一致させることが
できて、貧潤滑状態においても安定したウェーブカムの
回転が確保される。
【0013】
【発明の実施の形態】
(第1の実施形態)以下、この発明の第1の実施形態を
図1〜図9に基づいて説明する。
【0014】図1に示すように、ハウジングの一部を構
成する一対のシリンダブロック21は、対向端縁におい
て互いに接合されている。同じくハウジングの一部を構
成するフロントハウジング22は、シリンダブロック2
1の前端面にバルブプレート23を介して接合されてい
る。同じくハウジングの一部を構成するリヤハウジング
24は、シリンダブロック21の後端面にバルブプレー
ト23を介して接合されている。
【0015】複数の通しボルト25は、前記フロントハ
ウジング22から両シリンダブロック21及び両バルブ
プレート23を通して、リヤハウジング24のネジ孔2
6に螺合されている。そして、これらの通しボルト25
により、フロントハウジング22及びリヤハウジング2
4がシリンダブロック21の両端面に締結固定されてい
る。
【0016】駆動シャフト27は、前記シリンダブロッ
ク21及びフロントハウジング22の中心に、一対のラ
ジアルベアリング28を介して回転可能に支持されてい
る。その駆動シャフト27の前端外周とフロントハウジ
ング22との間には、リップシール29が介装されてい
る。そして、この駆動シャフト27は、図示しない車両
エンジン等の外部駆動源に作動連結されて、その外部駆
動源により回転駆動される。
【0017】複数のシリンダボア30は、前記駆動シャ
フト27と平行に延びるように、各シリンダブロック2
1の両端部間に同一円周上で所定間隔おきに貫通形成さ
れている。両頭型のピストン31は、各シリンダボア3
0内に往復動可能に嵌挿支持され、それらの両端面とバ
ルブプレート23との間において、各シリンダボア30
内には圧縮室32が形成される。
【0018】クランク室33は、前記両シリンダブロッ
ク21の中間内部に区画形成されている。ウェーブカム
34は、クランク室33内において駆動シャフト27に
一体回転可能に挿着されている。一対のスラストベアリ
ング35は、ウェーブカム34のボス部36の両端と各
シリンダブロック21の内端との間に介装され、これら
のスラストベアリング35を介して、ウェーブカム34
が両シリンダブロック21間に挟着保持されている。そ
して、圧縮機の運転時に、ウェーブカム34に作用する
スラスト方向の荷重が、これらのスラストベアリング3
5を介してシリンダブロック21で受け止められるよう
になっている。
【0019】吸入室37は、前記フロントハウジング2
2及びリヤハウジング24内の内周部に環状に区画形成
されている。吸入室37は、シリンダブロック21及び
バルブプレート23に形成された吸入通路38を介して
クランク室33に連通されている。クランク室33は、
図示しない吸入口を介して外部冷媒回路に接続される。
吐出室39は、フロントハウジング22及びリヤハウジ
ング24内の外周部に環状に区画形成され、図示しない
吐出マフラー及び吐出口を介して外部冷媒回路に接続さ
れる。
【0020】吸入弁機構40は、前記各バルブプレート
23に形成され、ピストン31の往復動時に、この吸入
弁機構40により、両吸入室37から各シリンダボア3
0の圧縮室32内に冷媒ガスが吸入される。吐出弁機構
41は、各バルブプレート23に形成され、ピストン3
1の往復動時に、この吐出弁機構41により、各シリン
ダボア30の圧縮室32内で圧縮された冷媒ガスが両吐
出室39に吐出される。
【0021】図1及び図2に示すように、前記ウエーブ
カム34には、ピストン31を上死点位置に配置する前
カム面34a上の一対の各最上位34a1、又は後カム
面34b上の一対の各最上位34b1を結ぶ線分内にお
いて、その断面の形状(輪郭)が変化しない曲面、すな
わち同一曲線を導線とする柱面が採用される。
【0022】図1及び図3〜図5に示すように、この実
施形態のウエーブカム34は、放物線を導線とする放物
柱42の一部を円形に切り取った形状を前後(表裏)面
に組み合わせることによって形成されている。前記放物
柱42によって構成される柱面を採用することで、前カ
ム面34aの各最上位34a1と、後カム面34bの各
最上位34b1とは、さらに、前カム面34aの各最下
位34a2と、後カム面34bの各最下位34b2とは
それぞれ180度の角度間隔を以て設定される。また、
前カム面34aの最上位34a1と最下位34a2と
は、さらに、後カム面34bの最上位34b1と最下位
34b2とは90°の角度間隔をもって設定される。つ
まり、前カム面34aの各最下位34a2は、後カム面
34bの各最上位34b1と背中合わせであり、前カム
面34aの各最上位34a1は後カム面34bの各最下
位34b2と背中合わせになる。そして、最下位34a
2、34b2はピストン31の下死点位置に対応する下
死点対応部位置となり、最上位34a1、34b1はピ
ストン31の上死点位置に対応する上死点対応部位置と
なる。従って、後カム面34bは、前カム面34aに対
して90度位相をずらせた状態に配置されることにな
る。
【0023】さらに、前後両カム面34a、34bは放
物柱42の一部を用いることにより、その表面は全て凸
曲面に形成されている。図1、図2及び図6に示すよう
に、前記ウエーブカム34の前後のカム面34a、34
bは、シリンダボア30の中心軸線L1の配列円周面C
0上にて軸方向へ交互に変位を繰り返す2サイクル変位
曲線F1、F2を有する。配列円周面C0の中心は、駆
動シャフト27の軸線L0に一致する。また、ピストン
31の保持凹面31aは、その中心Q1がシリンダボア
30の中心軸線L1上となるように形成されている。そ
して、ピストン31の保持凹面31aとウェーブカム3
4の前後両カム面34a、34bとの間には、介装部材
としての一対のシュー43が介装されている。
【0024】図1及び図7に示すように、前記シュー4
3は、ピストン31の保持凹面31aに摺動可能に係合
する摺接球面43aと、ウエーブカム34の前後各カム
面34a、34bに摺接する摺接平面43bとを有して
いる。また、シュー43は、摺接球面43aを有する半
球部44と、摺接平面43bを有しほぼ円柱状のオフセ
ット部45とから構成されている。この実施形態のシュ
ー43は、摺接平面43bからシュー中心(摺接球面4
3aの中心)P0までの高さ、つまりオフセット部45
の高さ(オフセット量)hが、摺接球面43aつまり半
球部44の半径dと等しくなるように形成されている。
【0025】また、ピストン31の保持凹面間には、シ
ュー43及びウェーブカム34を介在させても軸方向に
対するピストン31の移動を許容する余裕間隙(シュー
クリアランス)が形成されており、常時は潤滑油が満た
される。この間隙の量は、10〜100μmの範囲が望
ましく、50〜100μmの範囲がさらに望ましい。こ
こで、前記間隙が100μmを越えた場合には、前記ピ
ストン31とウェーブカム34との間のガタ付きが大き
くなり、ピストン31の往復動に伴って騒音及び振動を
発生するおそれがある。また、前記間隙を10μm未満
に設定しようとする場合、製造公差上その間隙量の設定
が困難であるとともに、冬場の低温起動時等、圧縮機全
体が縮んでいる場合には所定の間隙量が確保されないお
それがある。
【0026】次に、前記のように構成されたウェーブカ
ム式圧縮機の動作について説明する。この圧縮機におい
て、図示しない車両エンジン等の外部駆動源により駆動
シャフト27が回転されると、ウェーブカム34及びシ
ュー43を介して各ピストン31がシリンダボア30内
で往復動される。それにより、図示しない外部冷媒回路
から同じく図示しない吸入口を介してクランク室33に
冷媒ガスが供給される。クランク室33内の冷媒ガス
は、吸入通路28を経て両吸入室37に導入される。前
記ピストン31の上死点位置から下死点位置への復動動
作に伴って、両吸入室37内の冷媒ガスが、吸入弁機構
40を介して、各シリンダボア30の圧縮室32内に吸
入される。そして、冷媒ガスは、前記ピストン31の下
死点位置から上死点位置への往動動作に伴って、圧縮室
32内で所定の圧力に達するまで圧縮される。圧縮され
た冷媒ガスは、各シリンダボア30の圧縮室32内から
吐出弁機構41を介して両吐出室39に吐出される。両
吐出室39内の圧縮冷媒ガスは、図示しない吐出マフラ
ー及び吐出口を介して外部冷媒回路に供給される。
【0027】ここで、図1、図4及び図5に示すよう
に、ウェーブカム34の回転をピストン31の往復動に
変換する一対のシュー43は、その摺接平面43bが常
にウェーブカム34のカム面34a、34bに対して線
接触(又は、面接触)しながら相対回転を行う。図5
は、図4に対してウェーブカム34が90度回転した状
態を示す平面図である。このとき、シュー43の摺接球
面43aの中心、つまりシュー43の中心P0は前記2
サイクル変位曲線F1、F2に沿って相対変位する。そ
して、そのシュー43の摺接球面43aに、常には潤滑
油が満たされた所定の間隙を介して摺接するピストン3
1の保持凹面31aの中心Q1も、常にサイクル変位曲
線F1、F2に沿って相対変位する。従って、ウエーブ
カム34の回転に伴って往復動するピストン31の往復
動変位は、前記2サイクル変位曲線F1、F2の変位に
一致する。つまり、この圧縮機においては、冷媒ガスの
吸入、圧縮、吐出がウェーブカム34の1回転に対して
2回行われる。
【0028】次に、ピストン31とウェーブカム34と
の間において、前記の液洗い現象等により、潤滑油がほ
とんど介在されなくなった状態でのシュー43の傾動挙
動について説明する。
【0029】貧潤滑状態においては、ピストン31の保
持凹部31aとシュー43の摺接球面43aとの間の摩
擦力により、シュー43がウェーブカム34の回転に追
従しなくなる。そして、シュー43の摺接平面43bと
カム面34a、34bとの接点が、理想の接点P1から
実接点P2にずれが生じる。この状態をモデル的に示し
たものが図8である。ここでは、シュー中心P0を原点
とし、実接点P2におけるカム面34a、34bの接線
に平行なu軸と、同じく実接点P2におけるカム面34
a、34bの法線に平行なv軸との直交座標系で考え
る。
【0030】ところで、理想の接点P1と実接点P2と
の乖離が生じることで、シュー43が図においてさらに
上方に傾いて、シュー中心P0がその理想軌道よりも上
方に移動する。この移動量は、シュー43の摺接球面4
3aとピストン31の保持凹面31aとの間の間隙(シ
ュークリアランス)の減少量に相当する。
【0031】まず、シュー43に作用する力の釣り合い
について考える。シュー43の摺接平面43bとウェー
ブカム34のカム面34a、34bとの実接点P2にお
いては、v軸方向にはカム面34a、34bからの垂直
抗力N0 が、u軸方向にはカム面34a、34bと摺接
平面43bとの間の摩擦力μ0 N0 sinθがそれぞれ
作用している。ここで、θはウェーブカム34の回転
角、μ0 はカム面34a、34bと摺接平面43bとの
間の摩擦係数である。これに対して、シュー43の摺接
球面43aとピストン31の保持凹面31aとの外側接
点P3においては、シュー中心P0に向かう保持凹面3
1aからの垂直抗力Nが、接線方向には保持凹面31a
と摺接球面43aとの間の摩擦力μNsinθが作用し
ている。ここで、μは保持凹面31aと摺接球面43a
との間の摩擦係数である。これらの力が釣り合うのは、
次の2式を満たすときとなる。
【0032】 N0 − Nsinβ − μNsinθcosβ = 0 ・・・(1) μ0 N0 sinθ − Ncosβ + μNsinθsinβ = 0 ・・・(2) ここで、(1)式及び(2)式は、それぞれv軸方向及
びu軸方向についての釣り合い式となっている。また、
βは、ピストン31の保持凹面31aからの垂直抗力N
と、実接点P2における接線と平行な座標軸u軸とのな
す角を示している。
【0033】次に、シュー中心P0を中心とした前記各
力のモーメントの和について考える。シュー中心P0か
らΔuだけ離れたカム面34a、34bからの垂直抗力
N0のモーメントは、N0 Δuとなる。また、シュー中
心P0からシューオフセット量hだけ離れたカム面34
a、34bと摺接平面43bとの間の摩擦力μ0 N0s
inθのモーメントは、μ0 N0 sinθhとなる。さ
らに、シュー中心P0から摺接球面43aの半径dだけ
離れた保持凹面31aと摺接球面43aとの間の摩擦力
μNsinθのモーメントは、−μNsinθdとな
る。そして、これらのモーメントが釣り合うのは、次式
を満たしたときとなる。
【0034】 N0 Δu + μ0 N0 sinθh − μNsinθd = 0 ・・・(3) 図9は、前記の(1)〜(3)式を満たすような条件に
おいて、シューオフセット量hを変化させた時のピスト
ン31の保持凹部31aとシュー43の摺接球面43a
との間の間隙の減少量をプロットしたものである。この
間隙の減少量は、シューオフセット量hを摺接球面43
aの半径dと等しくしたときに極小値を有し、しかもそ
のときの減少量はゼロとなる。つまり、この状態では、
ピストン31の保持凹部31aとシュー43の摺接球面
43aとの間の摩擦力の大小を問わず前記間隙の減少量
がゼロとなる。
【0035】以上のように構成されたこの第1の実施形
態によれば、以下の優れた効果を奏する。 (a) ピストン31の保持凹面31aとシュー43の
摺接球面43aとの間に潤滑油がほとんど介在されず、
シュー43の傾動状態が理想の状態からずれを生じて
も、シュークリアランスが安定的に確保される。このた
め、貧潤滑状態においても、シュー43がウェーブカム
34とピストン31との間でロックすることなく、安定
して傾動される。従って、圧縮機の耐久性を向上するこ
とができる。
【0036】(b) 貧潤滑状態におけるシュー43の
摺接球面43aとピストン31の保持凹面31aとの間
の間隙が、ほとんど減少することがない。このため、シ
ュークリアランスの設定量を大きくする必要がなく、ピ
ストン31の往復動に伴う騒音や振動の発生を抑制する
ことができる。
【0037】(c) 特に、シュー43のオフセット量
hが、摺接球面43aの半径dと等しくなっているた
め、ピストン31の保持凹面31とシュー43の摺接球
面43aとの間に働く摩擦力の大小に拘わらず、シュー
クリアランスがほとんど減少しない。つまり、貧潤滑状
態においてもシュー43がカム面34a、34bに対し
てほとんど浮き上がることがない。従って、シュー43
の摺接平面43bとウェーブカム34のカム面34a、
34bとの接点を、理想の接点P1とほぼ一致させるこ
とができて、貧潤滑状態においても安定したウェーブカ
ム34の回転を確保することができる。
【0038】(第2の実施形態)次に、この発明の第2
の実施形態について図10に基づいて、前記第1の実施
形態と異なる部分を中心に説明する。
【0039】この第2の実施形態においては、ピストン
31とウェーブカム34との間に、介装される介装部材
51の形状が異なっている。この介装部材51は、ピス
トン31の保持凹面31aに摺接する摺接球面52aを
有する球体52と、その球体52と摺動自在に接合され
るとともに、ウェーブカム34のカム面34a、34b
に摺接する摺接平面53aを有する球座53とから構成
されている。この球座53は、例えば円板状をなしてお
り、前記球体52に接合される側面には球体52の摺接
球面52aに対応する凹部53bが形成されている。そ
の凹部53bの中心部分は、その板厚が可及的に小さく
なっている。このため、摺接平面53aから介装部材5
1の中心としての球体52の中心P4までの高さ、つま
りオフセット量hが前記摺接球面52aの半径dとほぼ
一致するようになっている。
【0040】このように構成しても、前記第1の実施形
態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。なお、こ
の発明は以下のように変更して構成することもできる。
【0041】(1) 前記第1の実施形態において、シ
ュー43のオフセット量hを次式の範囲で変更するこ
と。 1/2d ≦ h ≦ 3/2d (2) 前記第2の実施形態において、介装部材51の
オフセット量hを次式の範囲で変更すること。
【0042】d ≦ h ≦ 3/2d これらのように構成しても、貧潤滑状態におけるシュー
クリアランスの減少を抑制することができる。このた
め、前記間隙の設定量を大きくする必要がなく、ピスト
ン31の往復動に伴う騒音や振動の発生を抑制すること
ができる。
【0043】(3) 前記各実施形態において、ウェー
ブカム34のカム面34a、34bを、放物線を導線と
する放物柱42の柱面に替えて、図3のz軸において対
称な凸曲線を導線とする形状、例えば円柱面、楕円柱面
等を採用すること。
【0044】(4) 前記各実施形態において、ウェー
ブカム34のカム面34a、34bを、そのピストン3
1が下死点位置に配置される最下位34a2、34b2
を平面で、そのピストン31が上死点位置に配置される
最上位34a1、34b1を放物柱面、楕円柱面あるい
は円柱面で構成すること。
【0045】これらのように構成しても、前記第1の実
施形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。
【0046】
【発明の効果】以上詳述したように、この発明によれば
以下の優れた効果を奏する。貧潤滑状態においても、介
装部材がウェーブカムとピストンとの間でロックしにく
いものとなって、圧縮機の耐久性を向上することができ
る。
【0047】また、シュークリアランスの設定量を大き
くする必要がなく、ピストンの往復動に伴う騒音や振動
の発生を抑制することができる。特に、介装部材のオフ
セット量を摺接球面の半径とほぼ等しくした場合には、
介装部材の摺接平面とウェーブカムのカム面との接点
を、理想の接点とほぼ一致させることができて、貧潤滑
状態においても安定したウェーブカムの回転が確保でき
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1の実施形態の圧縮機全体を示す断面図。
【図2】 柱面によるウェーブカムの斜視図。
【図3】 放物柱面を示す概略的な斜視図。
【図4】 柱面によるウェーブカムの拡大平面図。
【図5】 図4のウェーブカムを90度回転した状態の
拡大平面図。
【図6】 図1の6−6線断面図。
【図7】 図1のシューを拡大して示す断面図。
【図8】 シューの傾動状態をモデル的に示す説明図。
【図9】 ピストンとシューとの間の間隙の減少量と、
シューのオフセット量との関係を示す説明図。
【図10】 第2の実施形態の圧縮機の要部を示す部分
断面図。
【図11】 従来のシューにおけるピストンとシューと
の間の間隙の減少量に関する説明図。
【符号の説明】
21…ハウジングの一部を構成するシリンダブロック、
22…ハウジングの一部を構成するフロントハウジン
グ、24…ハウジングの一部を構成するリヤハウジン
グ、27…駆動シャフト、30…シリンダボア、31…
ピストン、31a…保持凹面、33…クランク室、34
…ウェーブカム、34a、34b…カム面、43…シュ
ー、43a、52a…摺接球面、43b、53a…摺接
平面、44…半球部、45…オフセット部、51…介装
部材、52…球体、53…球座、P0…半球部中心及び
摺接球面中心としてのシュー中心、P4…摺接球面中心
としての球体中心。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ハウジングの内部にクランク室を形成す
    るとともに、駆動シャフトを回転可能に支持し、その駆
    動シャフトには凸曲面のみのカム面からなるウェーブカ
    ムを一体回転可能に挿着し、前記ハウジングの一部を構
    成するシリンダブロックには前記駆動シャフトと平行に
    複数のシリンダボアを配列し、そのシリンダボア内にピ
    ストンを往復動可能に挿通し、そのピストンと前記ウェ
    ーブカムとの間には、前記カム面と摺接する摺接平面
    と、前記ピストンの保持凹面と摺接する摺接球面とを有
    する介装部材を介装して、前記ウェーブカムの回転によ
    り介装部材を介して前記ピストンを往復動させるように
    したウェーブカム式圧縮機において、 前記介装部材は、前記摺接球面を有する半球部と、前記
    摺接平面を有するオフセット部とを備えた一体のシュー
    であり、該摺接平面と半球部中心との距離(オフセット
    量)hが、次の式を満たすように形成されていることを
    特徴とするウェーブカム式圧縮機。 1/2d ≦ h ≦ 3/2d ここで、dは、介装部材の摺接球面の半径を示す。
  2. 【請求項2】 ハウジングの内部にクランク室を形成す
    るとともに、駆動シャフトを回転可能に支持し、その駆
    動シャフトには凸曲面のみのカム面からなるウェーブカ
    ムを一体回転可能に挿着し、前記ハウジングの一部を構
    成するシリンダブロックには前記駆動シャフトと平行に
    複数のシリンダボアを配列し、そのシリンダボア内にピ
    ストンを往復動可能に挿通し、そのピストンと前記ウェ
    ーブカムとの間には、前記カム面と摺接する摺接平面
    と、前記ピストンの保持凹面と摺接する摺接球面とを有
    する介装部材を介装して、前記ウェーブカムの回転によ
    り介装部材を介して前記ピストンを往復動させるように
    したウェーブカム式圧縮機において、 前記介装部材は、前記摺接球面を有する球体と、その球
    体と摺動自在に接合されるとともに前記摺接平面を有す
    る球座とを備え、該摺接平面と球体中心との距離(オフ
    セット量)hが、次の式を満たすように形成されている
    ことを特徴とするウェーブカム式圧縮機。 d ≦ h ≦ 3/2d ここで、dは、介装部材の摺接球面の半径を示す。
  3. 【請求項3】 前記介装部材は、その摺接平面と摺接球
    面中心との距離が前記摺接球面の半径にほぼ等しくなる
    ように形成されていることを特徴とする請求項1または
    2に記載のウェーブカム式圧縮機。
JP8130097A 1996-05-24 1996-05-24 ウェーブカム式圧縮機 Pending JPH09317634A (ja)

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2017203390A (ja) * 2016-05-10 2017-11-16 三菱電機株式会社 斜板式ピストンポンプ

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