JPH09314373A - レーザビーム溶接方法 - Google Patents

レーザビーム溶接方法

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JPH09314373A
JPH09314373A JP8131669A JP13166996A JPH09314373A JP H09314373 A JPH09314373 A JP H09314373A JP 8131669 A JP8131669 A JP 8131669A JP 13166996 A JP13166996 A JP 13166996A JP H09314373 A JPH09314373 A JP H09314373A
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welding
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Abstract

(57)【要約】 【課題】溶け落ち防止用裏当金が不要なレーザビーム溶
接方法を提供する。 【解決手段】サイドシールドガスを下記およびの条
件で供給する。 溶接線に沿って溶接進行方向の上流側から下流側に向
けて被溶接材料表面に対してほぼ平行な状態で供給する
こと。 被溶接材料の肉厚をt(mm)としたとき、溶融池直
上でのガス流速v(m/s)を被溶接材料肉厚tの2.
2倍以上とすること。 【効果】極めて簡便な手段で溶け落ち発生を確実に防ぐ
ことが可能で、健全な溶接継手を得ることができる。ま
た、溶接補助具のメンテナンスが事実上不要であるの
で、長時間連続的に溶接を実施する必要がある製管溶接
のようなプロセスへも容易に適用できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、レーザビーム溶接
方法に係わり、より詳細にはサイドシールドガスを用い
た場合における溶け落ち防止を図ったレーザビーム溶接
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】レーザビーム溶接は、高エネルギー密度
ビームによる溶接であるために低入熱で板材などの被溶
接材をワンパスで貫通溶接可能であり、高能率かつ高品
質の溶接法として、多方面で利用されている。
【0003】ところが、肉厚がおよそ6mmを超えるよ
うな板材をワンパスで貫通溶接すると、溶融金属が裏面
側に落ち込んで表面が凹状になる、いわゆる溶け落ち、
もしくは垂れ落ちと称される欠陥が発生しやすくなる。
この欠陥は、溶融池の重量をその表面張力のみで保持で
きなくなるために発生する。
【0004】従来、上記の欠陥(溶け落ち)を防止する
方法としては、次に示すような方法が利用されてきた。
【0005】(1) 被溶接材料である板材の裏面側に、溶
融池の落ち込みを防止する裏当金と称される金属板を配
置する方法(例えば、特開平6−315798号公
報)。
【0006】(2) 溶融池にかかる重力が溶け落ちの発生
原因にならないように、縦向き上進あるいは横向きで溶
接する方法(例えば、特公昭57−37435号公
報)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかし、(1) の方法
は、特別に裏当金を用いるのみならず、この裏当金の耐
久性に問題があるので頻繁なメンテナンスが必要であ
る。また、その配置位置の制約も極めて厳しい。このた
め、裏当金のメンテナンスが極めて困難であり、かつ長
時間連続的に溶接を実施する必要がある製管溶接のよう
なプロセスには適用できないという欠点がある。また、
(2) の方法は、レーザビームを上向きに照射するので、
その適用プロセスが特殊なものに限定されるという欠点
がある。
【0008】このため、下向き溶接の際に裏当金を用い
ることなく溶け落ち発生を防止し得る簡便かつ耐久性の
あるレーザビーム溶接方法の開発が望まれていた。
【0009】本発明は、上記の実情に鑑みてなされたも
ので、その課題は、裏当金を用いずとも溶け落ちの発生
を防ぐことのできる簡便かつ耐久性あるレーザビーム溶
接方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課
題を解決すべく多くの実験を行った結果、次のことを知
見し、本発明をなすに到った。
【0011】すなわち、レーザビーム溶接時に用いるサ
イドシールドガスを、溶接線に沿って溶接進行方向の上
流側から下流側に向けて被溶接材料の表面に略平行に供
給するとともに、その溶融池直上における流速を所定値
以上にすればよいことを見いだした。
【0012】上記の知見に基づく本発明の要旨は、次の
レーザビーム溶接方法にある。
【0013】センターシールドガスとサイドシールドガ
スを用いるレーザビーム溶接において、前記サイドシー
ルドガスを下記およびの条件で供給することを特徴
とするレーザビーム溶接方法。
【0014】溶接線に沿って溶接進行方向の上流側か
ら下流側に向けて被溶接材料表面に対してほぼ平行な状
態で供給すること。
【0015】被溶接材料の肉厚をt(mm)としたと
き、溶融池直上でのガス流速v(m/s)を被溶接材料
肉厚tの2.2倍以上とすること。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明の方法を、添付図面
を参照して詳細に説明する。
【0017】図1は本発明の実施態様の一例を示す模式
的縦断面図、図2は溶融池に対する作用力を説明するた
めの模式的拡大縦断面図、図3は図1のI−I線矢視拡
大横断面図である。
【0018】図1ないし図3において、符号1はレーザ
ビーム、2は被溶接材料、3はセンターシールドノズ
ル、4はサイドシールドノズル、5はセンターシールド
ガス流、6はサイドシールドガス流、7はキーホール、
8は溶融池、9は溶融後凝固して形成された溶接金属、
10はサイドシールドガス流6と溶融池8表面との間の
摩擦力によって発生する溶融金属を後方へ押しやろうと
する力、11はサイドシールドガス流6による圧力低下
によって発生する溶融金属を上方へ吸い上げようとする
力を示している。
【0019】また、図1および図2中の9’部分は、6
mm超の厚肉材料をレーザビーム溶接した場合に一般的
に認められる肉厚中央付近の溶融金属が優先的に凝固し
た先行凝固部である。
【0020】図1に示すように、本発明の方法において
は、センターシールドノズル3の溶接進行方向の上流側
(図中の左方)に、サイドシールドノズル4が配置され
る。
【0021】このサイドシールドノズル4は、溶接線の
真上に被溶接材料2の表面2aに対してほぼ平行になる
ように配置されている。そして、溶接進行方向の上流側
から下流側(図中の右方)に向け、溶融池8に対してほ
ぼ水平なサイドシールドガス流6を形成させるようにな
っている。
【0022】上記のようにしてサイドシールドガス流6
を形成させた場合には、図2に示すように、溶融池8の
溶融金属に対して押し流し力10と吸引力11とが作用
するようになる。すなわち、溶融池8の溶融金属を溶接
進行方向の下流側へ押しやる力、換言すれば被溶接材料
2の裏面側近傍の溶融金属を先行凝固部9’の上に乗り
上げさせる力となる押し流し力10と、溶融金属全体を
上方へ引き上げる吸引力11とが作用する。
【0023】従って、溶融池8は、溶融金属の表面張力
と上記2つの押し流し力10および吸引力11の3つの
力によって保持されることになるので、その保持力が上
昇する。このため、溶融池8が被溶接材料2の裏面2b
から大きくたれ落ちることがなくなり、図3に示すよう
に、溶け落ちのない健全な溶接継手が形成されるように
なる。
【0024】ここで、溶け落ちを確実に防止するために
必要な上記押し流し力10および吸引力11を得るため
には、上記したように、そのサイドシールドガス流6
を、溶接線に沿い、かつ被溶接材料2の表面2aに対し
てほぼ平行な状態で溶接進行方向の上流側から下流側に
向けて供給する必要がある。また、その流速について
は、溶融池8の直上における流速v(m/s)を、被溶
接材料の肉厚t(mm)の2.2倍以上にする必要があ
る。その理由は、次のとおりである。
【0025】(サイドシールドガス流6の向きと方向に
ついて)溶け落ちの発生を防止するには、前述したよう
に、上記押し流し力10によって被溶接材料2の裏面側
近傍の溶融金属を先行凝固部9’の上に乗り上げさせる
必要がある。このため、サイドシールドガス流6は、溶
接線に沿って、溶接進行方向の上流側から下流側に向け
て流すことが必要なのである。
【0026】また、サイドシールドガス流6の傾きは、
これが被溶接材料2の表面2aに対して下向きである
と、溶融池8を下方に押し下げる分力が発生し、上記先
行凝固部9’上方への溶融金属の乗り上げ効果が低下す
る。
【0027】なお、その傾きを被溶接材料2の表面2a
に対して若干上向きにした場合には、下方に押し下げる
力が溶融池8に作用しないので、溶け落ちを防止する観
点からは何らの問題もない。しかし、その傾きを上向き
に大きくし過ぎると、センターシールドガス流5を乱す
ことになる。また、その装置構成上、サイドシールドノ
ズル4がセンターシールドノズル3および被溶接材料2
と干渉する。よって、その上向き角度はせいぜい5°程
度にまでしか大きくできなが、この範囲であればその傾
きを上向きにしてもよい。
【0028】従って、サイドシールドガス流6は、その
傾きが下向きであってはならず、被溶接材料2の表面2
aに対してほぼ平行でなければならないのである。
【0029】(流速について)上記センターシールドガ
ス流5は、溶融池8の直上における流速v(m/s)が
被溶接材料2の肉厚t(mm)の2.2倍以上でなけれ
ばならない。これは、表1に示す実験結果から明らかで
ある。
【0030】
【表1】
【0031】表1は、被溶接材料として、肉厚が6.5
mm、9mmおよび12mmの3種類の炭素鋼製板材を
対象にレーザビーム溶接を行った結果を示す表である。
【0032】すなわち、出力25kWの炭酸ガスレーザ
溶接機を用い、溶接速度4m/minで、前述のの条
件、すなわちHeガスからなるサイドシールドガスを溶
接線に沿って溶接進行方向の上流側から下流側に向けて
被溶接材料表面に対してほぼ平行な状態で供給するとと
もに、その流速を種々変えたサイドシールドガス流を形
成させた場合における、溶融池直上のガス流速と溶け落
ち発生との関係を示している。
【0033】なお、センターシールドノズル3として
は、本体部の内径が30mm、先端部の内径が15mm
のものを用いた。また、センターシールドガスとして
は、Heガスを用い、このガスを100N(ノルマル)
リッター/minで供給してセンターシールドガス流5
を形成させた。
【0034】溶け落ち発生の有無は、図4に示す基準に
よって判定した。すなわち、図4(a)に示すように、
健全な形状の溶接金属9が得られた場合についてのみ、
溶け落ち発生無しとした。これに対し、図4(b)に示
すように、母材2の表面2aと溶接金属9の表面の最低
高さ部分とを比較し、溶接金属9の表面の最低高さ部分
の方が低く、落差Hが生じた場合には、その絶対値の如
何に係わらず、溶け落ち発生有りとした。
【0035】表1に示す結果から明らかなように、溶融
池8直上におけるサイドシールドガス流6の流速vが、
肉厚6.5mmの板材では10m/s以下、肉厚9mm
の板材では15m/s以下、肉厚12mmの板材では2
5m/s以下である場合には、いずれも溶け落ちが発生
している。これに対し、上記の流速vが、肉厚6.5m
mの板材では15m/s以上、肉厚9mmの板材では2
0m/s以上、肉厚12mmの板材では28m/s以上
の場合には、いずれも溶け落ちは発生していない。この
ことから、サイドシールドガス流6の流速は、溶融池8
直上における流速vを被溶接材料肉厚tの2.2倍以上
とする必要があるのである。
【0036】なお、上記の流速vは、速ければ速いほど
よく、その上限を定める必要は特にない。しかし、流速
vをあまり速くし過ぎると、溶融池8が吹き飛ばされ、
溶接部の表面形状が凹凸になるなどの不都合を招く。こ
のため、その上限は、サイドシールドノズル4の内径に
よって異なるが、例えば内径4mmのサイドシールドノ
ズル4を用いる場合では260m/min(ガス流量で
200N(ノルマル)リットル/min)程度に抑える
のが望ましい。
【0037】サイドシールドノズル4としては、その内
径dが2〜10mm程度のもので十分である。そして、
その配置位置は、被溶接材料2の表面2aから内径dの
下端までの離間距離hが5mm以下で、その先端とレー
ザビーム1の光軸心との離間距離Lが1〜10mmとな
る程度の位置に配置すれば十分である(図1参照)。
【0038】このサイドシールドノズル4は、上記した
ように、センターシールドノズル3に対して溶接進行方
向の上流側に配置されるので、溶接熱影響をほとんど受
けることがなく、溶損することがほとんどない。従っ
て、その寿命が極めて長寿命であるので、そのメンテナ
ンスが事実上不要である。
【0039】サイドシールドガス流6を形成させるガス
としては、HeやArなどの不活性ガスであればいずれ
のガスであってもかまわない。
【0040】なお、サイドシールドガス流6は、周囲の
大気を巻き込んで、溶融池8中の溶融金属の酸化や窒化
などを促進し、溶融金属を汚染させやすい。しかし、本
発明では、図1に示すように、センターシールドノズル
3からセンターシールドガス流5を形成させて溶接部を
シールドする。そして、このセンターシールドガス流5
の形成域内にその先端が位置するように配置したサイド
シールドノズル4によってサイドシールドガス流6を形
成させる。このため、サイドシールドガス流6による大
気巻き込みは全く生じないので、健全な品質の溶接部が
得られる。
【0041】
【実施例】肉厚が6.5mm、9mm、12mmおよび
15mmの炭素鋼製の板材(母材)を対象に、定格出力
25kWの炭酸ガスレーザ溶接機を用いてレーザビーム
溶接を行った。この際、いずれの肉厚の板材について
も、サイドシールドガス流6を形成させない場合と、流
速vを2通りに変えたサイドシールドガス流6を形成さ
せた場合の3通りの条件で貫通溶接を行い、溶け落ち発
生の有無を調べた。
【0042】この時、センターシールドノズル3として
は、本体部の内径が30mm、先端部の内径が15mm
のものを用いた。また、センターシールドガスとして
は、Heガスを用い、このガスを100N(ノルマル)
リッター/minで供給してセンターシールドガス流5
を形成させた。さらに、サイドシールドノズル4として
は、内径dが4mmの銅管を用いた。そして、この銅管
を、溶接線の真上に、図1中のhとLとがそれぞれ1m
mと5mmとなる位置に配置し、母材の表面に平行なサ
イドシールドガス流6を形成させた。
【0043】また、溶け落ち発生の有無は、前述の図4
に示したと同様の方法で評価した。
【0044】その結果を、溶接条件と併せて、表2に示
した。
【0045】
【表2】
【0046】表2に示す結果から明らかなように、サイ
ドシールドガス流6を形成させなかった場合には、いず
れの肉厚も溶け落ちが発生した。また、サイドシールド
ガス流6を形成させたものの、溶融池直上における流速
vが母材肉厚の2.2倍未満である場合には、いずれの
肉厚も溶け落ちが発生した。
【0047】これに対し、形成させたサイドシールドガ
ス流6の溶融池直上における流速vが母材肉厚の2.2
倍以上の場合には、いずれの肉厚も溶け落ちは発生しな
かった。
【0048】
【発明の効果】本発明の方法によれば、センターシール
ドノズルに対して溶接進行方向上流側の溶接線の真上に
サイドシールドノズルを配置し、このノズルを用いて一
定流速以上のサイドシールドガス流を形成させるとい
う、極めて簡便な手段で溶け落ちが発生するのを確実に
防ぐことが可能である。この結果、健全な溶接継手を得
ることができる。また、溶接補助具のメンテナンスが事
実上不要であるので、長時間連続的に溶接を実施する必
要がある製管溶接のようなプロセスへも容易に適用でき
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のレーザビーム溶接方法の実施態様を示
す模式的縦断面図である。
【図2】溶融池に対する作用力を説明するための模式的
拡大縦断面図である。
【図3】図1のI−I線矢視拡大横断面図である。
【図4】溶け落ち発生の判定基準を示す図で、同図
(a)は溶け落ちがない場合、同図(b)は溶け落ちが
発生した場合、をそれぞれ示す模式的横断面図である。
【符号の説明】
1:レーザビーム、 2:被溶接材料、 3:センターシールドノズル、 4:サイドシールドノズル、 5:センターシールドガス流、 6:サイドシールドガス流、 7:キーホール、 8:溶融池、 9:溶接金属、 9’:先行凝固部、 10:押し流し力、 11:吸引力。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 下村 義信 大阪府大阪市中央区北浜4丁目5番33号住 友金属工業株式会社内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】センターシールドガスとサイドシールドガ
    スを用いるレーザビーム溶接において、前記サイドシー
    ルドガスを下記およびの条件で供給することを特徴
    とするレーザビーム溶接方法。 溶接線に沿って溶接進行方向の上流側から下流側に向
    けて被溶接材料表面に対してほぼ平行な状態で供給する
    こと。 被溶接材料の肉厚をt(mm)としたとき、溶融池直
    上でのガス流速v(m/s)を被溶接材料肉厚tの2.
    2倍以上とすること。
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