JPH09310182A - 抗菌性に優れたステンレス鋼またはその加工品の製造方法 - Google Patents
抗菌性に優れたステンレス鋼またはその加工品の製造方法Info
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- JPH09310182A JPH09310182A JP14783296A JP14783296A JPH09310182A JP H09310182 A JPH09310182 A JP H09310182A JP 14783296 A JP14783296 A JP 14783296A JP 14783296 A JP14783296 A JP 14783296A JP H09310182 A JPH09310182 A JP H09310182A
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Abstract
(57)【要約】
【課題】抗菌性に優れたステンレス鋼またはその加工品
の製造方法を提供する。 【解決手段】本発明は、ステンレス鋼またはその加工品
を、Cuイオンを含む溶液に単純に浸漬するか、さらに
これらの溶液中で電解処理を施すことにより、ステンレ
ス鋼の表面を改質し、表層部のCu濃度が抗菌性に有効
な0.10原子%以上とすることでその目的が達成され
る。ここで、pH4未満の溶液としては、非酸化性また
は還元性の酸を含むものが好ましい。また、pH4以上
の溶液としては、ハロゲンイオンもしくは硫化物イオン
の1種または2種以上を含むものを使用することもでき
る。
の製造方法を提供する。 【解決手段】本発明は、ステンレス鋼またはその加工品
を、Cuイオンを含む溶液に単純に浸漬するか、さらに
これらの溶液中で電解処理を施すことにより、ステンレ
ス鋼の表面を改質し、表層部のCu濃度が抗菌性に有効
な0.10原子%以上とすることでその目的が達成され
る。ここで、pH4未満の溶液としては、非酸化性また
は還元性の酸を含むものが好ましい。また、pH4以上
の溶液としては、ハロゲンイオンもしくは硫化物イオン
の1種または2種以上を含むものを使用することもでき
る。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、各種衛生用機器、医療
機器、食品関連の機器、機材等として使用される抗菌性
に優れるステンレス鋼またはその加工品の製造方法に関
する。
機器、食品関連の機器、機材等として使用される抗菌性
に優れるステンレス鋼またはその加工品の製造方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】各種衛生用機器、医療機器、食品関連の
機器、機材等としては、耐食性に優れたステンレス鋼が
広く使用されている。しかし、雑菌の繁殖による汚染や
悪臭、ぬめり等が人体、動物、製品等に与える悪影響を
懸念する傾向が強くなってきている。特に清潔さが要求
される厨房、医療機関、多数の人が集まる建造物等で
は、雑菌に対して抵抗力のある材料に対する要求が強
い。この種の要求に応えるため、抗菌剤を配合した樹脂
をステンレス鋼の表面に塗布積層する方法や、マトリッ
クス中に抗菌剤成分を含むめっきを施す方法等が特開平
5−228202号公報、特開平6−10191号公報
等で紹介されている。
機器、機材等としては、耐食性に優れたステンレス鋼が
広く使用されている。しかし、雑菌の繁殖による汚染や
悪臭、ぬめり等が人体、動物、製品等に与える悪影響を
懸念する傾向が強くなってきている。特に清潔さが要求
される厨房、医療機関、多数の人が集まる建造物等で
は、雑菌に対して抵抗力のある材料に対する要求が強
い。この種の要求に応えるため、抗菌剤を配合した樹脂
をステンレス鋼の表面に塗布積層する方法や、マトリッ
クス中に抗菌剤成分を含むめっきを施す方法等が特開平
5−228202号公報、特開平6−10191号公報
等で紹介されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】抗菌剤を配合した樹脂
をステンレス鋼の表面に塗布積層すると、ステンレス鋼
特有の金属光沢が失われ、商品価値を下げる。しかも、
抗菌性皮膜は、加工時や使用中に割れ、欠損、磨耗等の
損傷を受け、湿潤雰囲気に曝されるとき、抗菌性成分が
溶出し、外観が低下するばかりでなく、本来の抗菌作用
が損なわれる。また、抗菌剤が枯渇したとき、残った皮
膜はかえって雑菌の栄養分となり、繁殖を促進させる原
因にもなる。抗菌剤成分を混入した複合めっきを施した
ものでは、めっき層の密着性が充分でなく、加工性を低
下させる欠点がある。また、皮膜の溶解、磨耗、欠損等
に起因して外観が低下するとともに、抗菌作用が低下す
る場合がある。しかも、いずれの方法も抗菌剤を使用し
ていることから、溶出した抗菌剤が人体や環境に悪影響
を及ぼすおそれがある。そこで、抗菌剤成分を被覆する
方法に代え、ステンレス鋼自体に抗菌性を付与すること
が望まれている。
をステンレス鋼の表面に塗布積層すると、ステンレス鋼
特有の金属光沢が失われ、商品価値を下げる。しかも、
抗菌性皮膜は、加工時や使用中に割れ、欠損、磨耗等の
損傷を受け、湿潤雰囲気に曝されるとき、抗菌性成分が
溶出し、外観が低下するばかりでなく、本来の抗菌作用
が損なわれる。また、抗菌剤が枯渇したとき、残った皮
膜はかえって雑菌の栄養分となり、繁殖を促進させる原
因にもなる。抗菌剤成分を混入した複合めっきを施した
ものでは、めっき層の密着性が充分でなく、加工性を低
下させる欠点がある。また、皮膜の溶解、磨耗、欠損等
に起因して外観が低下するとともに、抗菌作用が低下す
る場合がある。しかも、いずれの方法も抗菌剤を使用し
ていることから、溶出した抗菌剤が人体や環境に悪影響
を及ぼすおそれがある。そこで、抗菌剤成分を被覆する
方法に代え、ステンレス鋼自体に抗菌性を付与すること
が望まれている。
【0004】本発明者等は、このような要求特性を満足
するステンレス鋼を調査・研究した。その結果、ステン
レス鋼にCuを含有させることにより、長期にわたって
優れた抗菌性を維持できるステンレス鋼が得られること
を解明し、特願平7ー21291号、特願平7ー212
92号等として出願した。Cu含有ステンレス鋼はCu
リッチの表層部を形成し、該表層部から溶出するCuイ
オンによって抗菌性を発現している。しかし、ステンレ
ス鋼を製品に加工する工程では各種研磨や機械加工を施
す場合が多く、研磨や機械加工の条件によっては表層部
が変質し、本来の優れた抗菌性が発揮されない場合があ
る。また、ステンレス鋼にCuが含有されない場合には
素材はもとより、その加工品も抗菌性を発現しない。本
発明は、良好な抗菌性を呈するCu含有ステンレス鋼を
さらに改良し、研磨や機械加工によって変質したステン
レス鋼の表層部を除去してCu濃度の高い表面を露出さ
せることにより、ステンレス鋼特有の美麗な外観や加工
性等の諸特性を損なうことなく、比較的安価な製造コス
トでしかも簡便に安定した抗菌性を回復させるととも
に、Cuを含有しないステンレス鋼に対しても抗菌性を
付与させることを目的とする。
するステンレス鋼を調査・研究した。その結果、ステン
レス鋼にCuを含有させることにより、長期にわたって
優れた抗菌性を維持できるステンレス鋼が得られること
を解明し、特願平7ー21291号、特願平7ー212
92号等として出願した。Cu含有ステンレス鋼はCu
リッチの表層部を形成し、該表層部から溶出するCuイ
オンによって抗菌性を発現している。しかし、ステンレ
ス鋼を製品に加工する工程では各種研磨や機械加工を施
す場合が多く、研磨や機械加工の条件によっては表層部
が変質し、本来の優れた抗菌性が発揮されない場合があ
る。また、ステンレス鋼にCuが含有されない場合には
素材はもとより、その加工品も抗菌性を発現しない。本
発明は、良好な抗菌性を呈するCu含有ステンレス鋼を
さらに改良し、研磨や機械加工によって変質したステン
レス鋼の表層部を除去してCu濃度の高い表面を露出さ
せることにより、ステンレス鋼特有の美麗な外観や加工
性等の諸特性を損なうことなく、比較的安価な製造コス
トでしかも簡便に安定した抗菌性を回復させるととも
に、Cuを含有しないステンレス鋼に対しても抗菌性を
付与させることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の抗菌性付与方法
は、ステンレス鋼またはその加工品を、Cuイオンを含
む酸性溶液、中性溶液もしくはアルカリ性溶液のいずれ
かに単純に浸漬するか、さらにこれらの溶液中で電解処
理を施すことにより、ステンレス鋼の表面を改質し、表
層部のCu濃度が抗菌性に有効な0.10原子%以上と
することでその目的が達成される。ここで、pH4未満
の溶液としては、非酸化性または還元性の酸を含むもの
が好ましい。また、pH4以上の溶液としては、ハロゲ
ンイオンもしくは硫化物イオンの1種または2種以上を
含むものを使用することもできる。
は、ステンレス鋼またはその加工品を、Cuイオンを含
む酸性溶液、中性溶液もしくはアルカリ性溶液のいずれ
かに単純に浸漬するか、さらにこれらの溶液中で電解処
理を施すことにより、ステンレス鋼の表面を改質し、表
層部のCu濃度が抗菌性に有効な0.10原子%以上と
することでその目的が達成される。ここで、pH4未満
の溶液としては、非酸化性または還元性の酸を含むもの
が好ましい。また、pH4以上の溶液としては、ハロゲ
ンイオンもしくは硫化物イオンの1種または2種以上を
含むものを使用することもできる。
【0006】
【作用】Cuには抗菌作用のあることが知られており、
Cuが濃化した表面では、付着しているわずかな水分に
よって極微量のCuイオンとしてイオン化する。イオン
化したCuは、細胞の呼吸、代謝酵素と効率よく強く反
応し、細胞や代謝酵素を不活性化させる。その結果、細
菌や雑菌が死滅する。このような抗菌効果は、鋼表層部
のCu濃度を0.10原子%以上とすることにより、顕
著に発現される。
Cuが濃化した表面では、付着しているわずかな水分に
よって極微量のCuイオンとしてイオン化する。イオン
化したCuは、細胞の呼吸、代謝酵素と効率よく強く反
応し、細胞や代謝酵素を不活性化させる。その結果、細
菌や雑菌が死滅する。このような抗菌効果は、鋼表層部
のCu濃度を0.10原子%以上とすることにより、顕
著に発現される。
【0007】そこで、本発明者らは、ステンレス鋼表面
とCuとの相互の挙動について鋭意検討を重ねた結果、
以下に説明する抗菌性付与ならびに回復処理方法を見出
だしたものである。すなわち、ステンレス鋼をCuイオ
ンを含むpH4未満の溶液中に浸漬した場合には、ステ
ンレス鋼材の不動態皮膜が全体的に破壊され、下地鋼の
極表層が溶出し、この状態で溶液中のCuイオンによ
り、比較的多量のCuを含む不動態皮膜が形成され、表
層部のCu濃度が高くなる。
とCuとの相互の挙動について鋭意検討を重ねた結果、
以下に説明する抗菌性付与ならびに回復処理方法を見出
だしたものである。すなわち、ステンレス鋼をCuイオ
ンを含むpH4未満の溶液中に浸漬した場合には、ステ
ンレス鋼材の不動態皮膜が全体的に破壊され、下地鋼の
極表層が溶出し、この状態で溶液中のCuイオンによ
り、比較的多量のCuを含む不動態皮膜が形成され、表
層部のCu濃度が高くなる。
【0008】pH4未満の溶液の中でも硫酸、フッ硝
酸、蓚酸等の非酸化性または還元性の酸を含む溶液が抗
菌性改善に有効である。この理由は定かではないが、酸
化性酸のみを含むpH4未満の溶液にステンレス鋼を浸
漬すると、ステンレス鋼表面は溶出することなく、酸化
されるだけであり、鋼材表面の不動態皮膜にCuの濃化
が生じにくい。これに対して、非酸化性または還元性の
酸を含むpH4未満の溶液にステンレス鋼を浸漬する
と、ステンレス鋼材の不動態皮膜が全体的に破壊され、
下地鋼の極表層が溶出し、この状態で溶液中のCuイオ
ンにより、比較的多量のCuを含む不動態皮膜が形成さ
れ、表層部のCu濃度が高くなる。
酸、蓚酸等の非酸化性または還元性の酸を含む溶液が抗
菌性改善に有効である。この理由は定かではないが、酸
化性酸のみを含むpH4未満の溶液にステンレス鋼を浸
漬すると、ステンレス鋼表面は溶出することなく、酸化
されるだけであり、鋼材表面の不動態皮膜にCuの濃化
が生じにくい。これに対して、非酸化性または還元性の
酸を含むpH4未満の溶液にステンレス鋼を浸漬する
と、ステンレス鋼材の不動態皮膜が全体的に破壊され、
下地鋼の極表層が溶出し、この状態で溶液中のCuイオ
ンにより、比較的多量のCuを含む不動態皮膜が形成さ
れ、表層部のCu濃度が高くなる。
【0009】他方、Cuイオンを含むpH4以上の溶液
中に浸漬すると、pH4未満の溶液中に浸漬する場合と
異なり、ステンレス鋼材の不動態皮膜が多数の箇所で局
所的に破壊され、下地鋼の極表層が溶出し、この状態で
溶液中のCuイオンにより、比較的多量のCuを含む不
動態皮膜が形成され、表層部のCu濃度が高くなる。こ
のpH4以上の溶液中にハロゲンイオンまたは硫化物イ
オンを含有させた場合、ステンレス鋼材の不動態皮膜が
局所的に破壊される頻度が高くなり、表層部のCu濃度
を高める促進効果がある。
中に浸漬すると、pH4未満の溶液中に浸漬する場合と
異なり、ステンレス鋼材の不動態皮膜が多数の箇所で局
所的に破壊され、下地鋼の極表層が溶出し、この状態で
溶液中のCuイオンにより、比較的多量のCuを含む不
動態皮膜が形成され、表層部のCu濃度が高くなる。こ
のpH4以上の溶液中にハロゲンイオンまたは硫化物イ
オンを含有させた場合、ステンレス鋼材の不動態皮膜が
局所的に破壊される頻度が高くなり、表層部のCu濃度
を高める促進効果がある。
【0010】さらに、pH値にかかわらず、いずれの溶
液の場合であっても、溶液中に浸漬して電解処理を施す
と反応速度が高くなり、比較的多量のCuを含む不動態
皮膜の形成が助長されるという効果がある。
液の場合であっても、溶液中に浸漬して電解処理を施す
と反応速度が高くなり、比較的多量のCuを含む不動態
皮膜の形成が助長されるという効果がある。
【0011】pH値にかかわらず、いずれの溶液の場合
であっても、その溶液中への浸漬時間は、工業的に安定
操業する上で10秒以上が望ましく、経済的に5時間以
内であることが好ましい。また、溶液の温度としては、
作業性を考慮すると、常温以上80℃以下が好ましい。
であっても、その溶液中への浸漬時間は、工業的に安定
操業する上で10秒以上が望ましく、経済的に5時間以
内であることが好ましい。また、溶液の温度としては、
作業性を考慮すると、常温以上80℃以下が好ましい。
【0012】このような溶液に、ステンレス鋼またはそ
の加工品を浸漬もしくは浸漬電解し、その表層部のCu
濃度を0.10原子%以上とするとき、優れた抗菌性が
得られる。表層部のCu濃度は、より好ましくは0.2
0原子%以上にする。これにより、通常の環境下でも1
2時間程度の時間で十分な抗菌性が得られる。
の加工品を浸漬もしくは浸漬電解し、その表層部のCu
濃度を0.10原子%以上とするとき、優れた抗菌性が
得られる。表層部のCu濃度は、より好ましくは0.2
0原子%以上にする。これにより、通常の環境下でも1
2時間程度の時間で十分な抗菌性が得られる。
【0013】なお、抗菌性を発現するに十分な表層部の
Cu濃度0.10原子%以上を得るために、溶液中に含
有させるCuイオン濃度としては、特に制限はないが濃
度が低すぎると工業的に不適当な長時間の処理を要する
ため、50ppm以上含ませることが望ましい。
Cu濃度0.10原子%以上を得るために、溶液中に含
有させるCuイオン濃度としては、特に制限はないが濃
度が低すぎると工業的に不適当な長時間の処理を要する
ため、50ppm以上含ませることが望ましい。
【0014】以上のように、製品を生産・加工する際、
または製品使用中の状況に応じて、濃度、浸漬時間、温
度が適正に調整された溶液にステンレス鋼またはその加
工品を浸漬もしくは浸漬電解処理することにより、Cu
濃度が0.10原子%以上に高められた表層部が形成さ
れる。この方法により、本来抗菌性を発現しない材料や
製造もしくは加工の工程において抗菌性を消失するに至
った材料であっても、ステンレス鋼本来の外観を損なう
ことなく、比較的簡便にかつ安価に優れた抗菌性を付
与、改善することができる。なお、本発明法において、
ステンレス鋼またはその加工品の組成は特に限定される
ことなく一般的にステンレス鋼に分類される鋼種に適用
可能であり、また耐熱鋼に分類されているような鋼中の
Cr含有量が10重量%以上のものも対象材料として含
むものである。
または製品使用中の状況に応じて、濃度、浸漬時間、温
度が適正に調整された溶液にステンレス鋼またはその加
工品を浸漬もしくは浸漬電解処理することにより、Cu
濃度が0.10原子%以上に高められた表層部が形成さ
れる。この方法により、本来抗菌性を発現しない材料や
製造もしくは加工の工程において抗菌性を消失するに至
った材料であっても、ステンレス鋼本来の外観を損なう
ことなく、比較的簡便にかつ安価に優れた抗菌性を付
与、改善することができる。なお、本発明法において、
ステンレス鋼またはその加工品の組成は特に限定される
ことなく一般的にステンレス鋼に分類される鋼種に適用
可能であり、また耐熱鋼に分類されているような鋼中の
Cr含有量が10重量%以上のものも対象材料として含
むものである。
【0015】
【実施例】表1に成分を示す各種ステンレス鋼を高周波
真空溶解炉にて12kg溶製した。鋼No. 1および2は
オーステナイト系ステンレス鋼、鋼No. 3および4はフ
ェライト系ステンレス鋼、鋼No. 5はマルテンサイト系
ステンレス鋼である。オーステナイト系ステンレス鋼
は、鋼塊を熱間圧延により板厚3.8mmの熱延板と
し、その後1150℃均熱1分の熱延板焼鈍を施した
後、冷間圧延により板厚1mmの冷延板を作製した。仕
上焼鈍は 1050℃均熱1分で行い、その後各試料の
表面を#400エメリーペーパーで約20μm研磨する
湿式研磨を施し、供試材とした。
真空溶解炉にて12kg溶製した。鋼No. 1および2は
オーステナイト系ステンレス鋼、鋼No. 3および4はフ
ェライト系ステンレス鋼、鋼No. 5はマルテンサイト系
ステンレス鋼である。オーステナイト系ステンレス鋼
は、鋼塊を熱間圧延により板厚3.8mmの熱延板と
し、その後1150℃均熱1分の熱延板焼鈍を施した
後、冷間圧延により板厚1mmの冷延板を作製した。仕
上焼鈍は 1050℃均熱1分で行い、その後各試料の
表面を#400エメリーペーパーで約20μm研磨する
湿式研磨を施し、供試材とした。
【0016】フェライト系ステンレス鋼は、鋼塊を熱間
圧延により板厚3.6mmの熱延板とし、鋼No. 3はそ
の後バッチ式焼鈍による860℃均熱6時間の熱延板焼
鈍を施し、鋼No. 4は1000℃均熱1分の連続焼鈍を
施し、これらを冷間圧延により板厚1mmの冷延板を作
製した。仕上焼鈍は鋼No. 3は850℃均熱1分、鋼N
o.4は1000℃均熱1分で行い、その後各試料の表面
を#400エメリーペーパーで約20μm研磨する湿式
研磨を施し、供試材とした。
圧延により板厚3.6mmの熱延板とし、鋼No. 3はそ
の後バッチ式焼鈍による860℃均熱6時間の熱延板焼
鈍を施し、鋼No. 4は1000℃均熱1分の連続焼鈍を
施し、これらを冷間圧延により板厚1mmの冷延板を作
製した。仕上焼鈍は鋼No. 3は850℃均熱1分、鋼N
o.4は1000℃均熱1分で行い、その後各試料の表面
を#400エメリーペーパーで約20μm研磨する湿式
研磨を施し、供試材とした。
【0017】マルテンサイト系ステンレス鋼は、鋼塊を
熱間圧延により板厚3.6mmの熱延板とし、その後バ
ッチ式焼鈍による800℃均熱6時間の熱延板焼鈍を施
した後、冷間圧延により板厚1mmの冷延板を作製し
た。仕上焼鈍は780℃均熱1分で行い、その後各試料
の表面を#400エメリーペーパーで約20μm研磨す
る湿式研磨を施し、供試材とした。
熱間圧延により板厚3.6mmの熱延板とし、その後バ
ッチ式焼鈍による800℃均熱6時間の熱延板焼鈍を施
した後、冷間圧延により板厚1mmの冷延板を作製し
た。仕上焼鈍は780℃均熱1分で行い、その後各試料
の表面を#400エメリーペーパーで約20μm研磨す
る湿式研磨を施し、供試材とした。
【0018】これらの研磨されたままの供試材およびp
H値の異なる溶液にて種々の条件による処理を施した供
試材の各々について、表面Cu濃度を測定するとともに
抗菌性試験を実施した。表面Cu濃度はX線電子分光分
析装置を使用して、脱脂後の試料表面にMgkαX線を
照射し、各ピークの積分強度から相対感度指数を用いて
算出した。
H値の異なる溶液にて種々の条件による処理を施した供
試材の各々について、表面Cu濃度を測定するとともに
抗菌性試験を実施した。表面Cu濃度はX線電子分光分
析装置を使用して、脱脂後の試料表面にMgkαX線を
照射し、各ピークの積分強度から相対感度指数を用いて
算出した。
【0019】抗菌性試験には、Staphylococcus aureus
(黄色ブドウ球菌)およびPseudomonas aeruginosa(緑
膿菌)それぞれについて普通ブイヨン培地で35℃、1
6〜20間振とう培養し、培養液を用意した。培養液を
滅菌リン酸緩衝液で20,000倍に希釈することによ
り、菌液を調整した。研磨ままの供試材表面および溶液
に浸漬または浸漬電解処理した供試材表面に菌液1ml
滴下し、25℃で12時間保存した。保存後、SCDL
P(日本製薬株式会社製)培地で洗い出し、得られた液
について標準寒天培地を用いた混釈平板培養法(35
℃、2日間培養)により生菌数を測定した。また、試験
に異常のないことを確認するため、対照として滅菌した
ガラス製シャーレに直接菌液を滴下し、同様に生菌数を
測定した。対照の生菌数に大きな増減がないとき、試験
結果が信頼性の高いものと評価される。この試験方法に
よるとき、試験開始前の生菌数より24時間後の生菌数
が減少しているほど抗菌性に優れた材料であるといえ
る。抗菌性の指標としては、減菌率95%以上を抗菌性
ありとして評価した。減菌率は下式により算出した。
(黄色ブドウ球菌)およびPseudomonas aeruginosa(緑
膿菌)それぞれについて普通ブイヨン培地で35℃、1
6〜20間振とう培養し、培養液を用意した。培養液を
滅菌リン酸緩衝液で20,000倍に希釈することによ
り、菌液を調整した。研磨ままの供試材表面および溶液
に浸漬または浸漬電解処理した供試材表面に菌液1ml
滴下し、25℃で12時間保存した。保存後、SCDL
P(日本製薬株式会社製)培地で洗い出し、得られた液
について標準寒天培地を用いた混釈平板培養法(35
℃、2日間培養)により生菌数を測定した。また、試験
に異常のないことを確認するため、対照として滅菌した
ガラス製シャーレに直接菌液を滴下し、同様に生菌数を
測定した。対照の生菌数に大きな増減がないとき、試験
結果が信頼性の高いものと評価される。この試験方法に
よるとき、試験開始前の生菌数より24時間後の生菌数
が減少しているほど抗菌性に優れた材料であるといえ
る。抗菌性の指標としては、減菌率95%以上を抗菌性
ありとして評価した。減菌率は下式により算出した。
【0020】減菌率(%)=[試験開始時の生菌数×
(1−対照の変化率/100)−24時間後の生菌数]
/[試験開始時の生菌数×(1−対照の変化率/10
0)] 対照の変化率(%)=(試験開始時の生菌数−24時間
後の生菌数)/試験開始時の生菌数×100 なお、対照の変化率は、0未満の場合には0として算出
した。
(1−対照の変化率/100)−24時間後の生菌数]
/[試験開始時の生菌数×(1−対照の変化率/10
0)] 対照の変化率(%)=(試験開始時の生菌数−24時間
後の生菌数)/試験開始時の生菌数×100 なお、対照の変化率は、0未満の場合には0として算出
した。
【0021】
【表1】
【0022】実施例1:表2に比較例として各供試ステ
ンレス鋼の研磨まま材料の表面Cu濃度および抗菌性試
験結果を示す。研磨ままの材料はいずれの鋼も、表面C
u濃度がともに0.10原子%未満であり、また減菌率
も95%未満であり、抗菌性がないものと判定された。
ンレス鋼の研磨まま材料の表面Cu濃度および抗菌性試
験結果を示す。研磨ままの材料はいずれの鋼も、表面C
u濃度がともに0.10原子%未満であり、また減菌率
も95%未満であり、抗菌性がないものと判定された。
【0023】
【表2】
【0024】表3に、各供試材を、本発明に基づく、C
uイオンを50〜2000ppm、塩素イオンを500
00ppm以下(無添加の場合を含む)、硫化物イオン
を10ppm以下(無添加の場合を含む)含有し、pH
1.5〜13.0で、温度を80℃に調整した溶液中に
60秒〜3600秒間浸漬した材料の表面Cu濃度およ
び抗菌性試験結果を示す。ここで、溶液のpHの調整
は、純水と約0.5〜2%の硫酸もしくは約0.001
〜0.4%の水酸化ナトリウムにより行った。Cuイオ
ンが添加された溶液中に浸漬することにより、表面Cu
濃度は0.10原子%以上になり、抗菌性も改善されて
いる。また、Cuイオンと塩素イオンもしくは硫化物イ
オンを含むpH4以上の溶液に浸漬することによっても
表面Cu濃度は0.10原子%以上になり、抗菌性も改
善されている。
uイオンを50〜2000ppm、塩素イオンを500
00ppm以下(無添加の場合を含む)、硫化物イオン
を10ppm以下(無添加の場合を含む)含有し、pH
1.5〜13.0で、温度を80℃に調整した溶液中に
60秒〜3600秒間浸漬した材料の表面Cu濃度およ
び抗菌性試験結果を示す。ここで、溶液のpHの調整
は、純水と約0.5〜2%の硫酸もしくは約0.001
〜0.4%の水酸化ナトリウムにより行った。Cuイオ
ンが添加された溶液中に浸漬することにより、表面Cu
濃度は0.10原子%以上になり、抗菌性も改善されて
いる。また、Cuイオンと塩素イオンもしくは硫化物イ
オンを含むpH4以上の溶液に浸漬することによっても
表面Cu濃度は0.10原子%以上になり、抗菌性も改
善されている。
【0025】
【表3】
【0026】実施例2:表4に、各供試材を、本発明に
基づく、Cuイオンを50〜2000ppm、塩素イオ
ンを50000ppm以下(無添加の場合を含む)、硫
化物イオンを10ppm以下(無添加の場合を含む)含
有し、pH1.5〜13.0で、温度を80℃に調整し
た溶液中に60秒〜3600秒間浸漬電解処理を施した
材料の表面Cu濃度および抗菌性試験結果を示す。試験
に使用した各溶液の調整方法は、実施例1の場合と同じ
である。Cuイオンが添加されたpH4未満の溶液中で
電解処理を施すことにより、表面Cu濃度は0.10原
子%以上になり、抗菌性も改善されている。Cuイオン
と塩素イオンもしくは硫化物イオンを含むpH4以上の
溶液中で電解処理を施すことによっても、表面Cu濃度
は0.10原子%以上になり、抗菌性も改善されてい
る。また、表3に示した浸漬のみの場合に比べて、電解
処理を施した場合は、表面Cu濃度がさらに高くなり、
抗菌性も一層向上している。
基づく、Cuイオンを50〜2000ppm、塩素イオ
ンを50000ppm以下(無添加の場合を含む)、硫
化物イオンを10ppm以下(無添加の場合を含む)含
有し、pH1.5〜13.0で、温度を80℃に調整し
た溶液中に60秒〜3600秒間浸漬電解処理を施した
材料の表面Cu濃度および抗菌性試験結果を示す。試験
に使用した各溶液の調整方法は、実施例1の場合と同じ
である。Cuイオンが添加されたpH4未満の溶液中で
電解処理を施すことにより、表面Cu濃度は0.10原
子%以上になり、抗菌性も改善されている。Cuイオン
と塩素イオンもしくは硫化物イオンを含むpH4以上の
溶液中で電解処理を施すことによっても、表面Cu濃度
は0.10原子%以上になり、抗菌性も改善されてい
る。また、表3に示した浸漬のみの場合に比べて、電解
処理を施した場合は、表面Cu濃度がさらに高くなり、
抗菌性も一層向上している。
【0027】
【表4】
【0028】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明法にした
がって得られたステンレス鋼またはその加工品は、長期
に亘り優れた抗菌性を示すことから、人体および環境に
安全な材料として刃物、洋食器、厨房器具、医療用機械
器具、サニタリ−用器具、各種食品の製造・運搬機器、
浴槽、洗濯槽、貯湯槽、ドアノブ、パイプ等多くの用途
において使用することができ、産業上多大な貢献を成し
得るものである。
がって得られたステンレス鋼またはその加工品は、長期
に亘り優れた抗菌性を示すことから、人体および環境に
安全な材料として刃物、洋食器、厨房器具、医療用機械
器具、サニタリ−用器具、各種食品の製造・運搬機器、
浴槽、洗濯槽、貯湯槽、ドアノブ、パイプ等多くの用途
において使用することができ、産業上多大な貢献を成し
得るものである。
フロントページの続き (72)発明者 長谷川 守弘 山口県新南陽市野村南町4976番地 日新製 鋼株式会社技術研究所内
Claims (5)
- 【請求項1】ステンレス鋼またはその加工品をCuイオ
ンを含む溶液に浸漬し、Cuリッチの表層部を形成させ
ることを特徴とする抗菌性に優れたステンレス鋼または
その加工品の製造方法。 - 【請求項2】請求項1に記載のCuイオンを含む溶液
が、pH4未満であり、非酸化性または還元性の酸を含
むものである抗菌性に優れたステンレス鋼またはその加
工品の製造方法。 - 【請求項3】請求項1に記載のCuイオンを含む溶液
が、pH4以上であり、ハロゲンイオンまたは硫化物イ
オンの1種又は2種以上を含むものである抗菌性に優れ
たステンレス鋼またはその加工品の製造方法。 - 【請求項4】請求項1〜請求項3に記載の方法であっ
て、溶液に浸漬して電解処理を施すことを特徴とする抗
菌性に優れたステンレス鋼またはその加工品の製造方
法。 - 【請求項5】請求項1〜請求項4に記載の方法であっ
て、溶液に浸漬後もしくは浸漬・電解処理後のステンレ
ス鋼またはその加工品表層部のCu濃度を0.10原子
%以上とすることを特徴とする抗菌性に優れたステンレ
ス鋼またはその加工品の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP14783296A JPH09310182A (ja) | 1996-05-20 | 1996-05-20 | 抗菌性に優れたステンレス鋼またはその加工品の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP14783296A JPH09310182A (ja) | 1996-05-20 | 1996-05-20 | 抗菌性に優れたステンレス鋼またはその加工品の製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH09310182A true JPH09310182A (ja) | 1997-12-02 |
Family
ID=15439261
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP14783296A Withdrawn JPH09310182A (ja) | 1996-05-20 | 1996-05-20 | 抗菌性に優れたステンレス鋼またはその加工品の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH09310182A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010530476A (ja) * | 2007-06-20 | 2010-09-09 | オウトテック オサケイティオ ユルキネン | 建設材料に機能性金属をコーティングする方法およびその方法によって製造された製品 |
-
1996
- 1996-05-20 JP JP14783296A patent/JPH09310182A/ja not_active Withdrawn
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010530476A (ja) * | 2007-06-20 | 2010-09-09 | オウトテック オサケイティオ ユルキネン | 建設材料に機能性金属をコーティングする方法およびその方法によって製造された製品 |
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20030805 |