JPH09304319A - におい源探知コンパス - Google Patents

におい源探知コンパス

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JPH09304319A
JPH09304319A JP8121996A JP12199696A JPH09304319A JP H09304319 A JPH09304319 A JP H09304319A JP 8121996 A JP8121996 A JP 8121996A JP 12199696 A JP12199696 A JP 12199696A JP H09304319 A JPH09304319 A JP H09304319A
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gas
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Kagaku Gijutsu Shinko Jigyodan
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 2次元又は3次元のにおい源の探知の判定を
迅速・かつ的確に行うことができるにおい源探知コンパ
スを提供する。 【解決手段】 におい源探知コンパスにおいて、支持板
3上に固定される複数のガスセンサ6,7と、この複数
のガスセンサ6,7と一体的に設けられるとともに前記
複数のガスセンサ6,7を隔てる仕切板8と、前記支持
板3と一体的に設けられるとともに前記複数のガスセン
サ6,7に対応して配置される小型ファン10と、前記
支持台3を回転可能な駆動源としてのステッピングモー
タ2を備え、前記小型ファン10で吸引した空気を前記
複数のガスセンサ6,7に当てることにより、におい源
の方向に対応するセンサ応答差を得て、この応答差を利
用してにおい源の方向を探知可能にする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、におい源探知コン
パスに係り、特にカイコガを模倣した、におい源コンパ
スに関するものである。
【0002】
【従来の技術】生物の多くは、においをたどることによ
って、餌や仲間、異性の場所を発見することができる。
このような能力を持つ工学的システムが実現できれば、
危険ガスのガス漏れ場所の探索、火災発生箇所の早期発
見などに有効である。しかし、においをたどって発生源
を探すことは容易ではない。においは風に運ばれ、煙突
からたなびく煙のように広がる。このため、風と平行な
方向の濃度勾配が非常に小さい。また、風には必ず乱れ
があるため、においの分布は、むらのある非常に複雑な
形状になり、その上、不規則に変動する。
【0003】したがって、局所的、瞬間的な濃度勾配
は、必ずしもにおい源の方向を指さない。このため、に
おい源の方向を推定する方法が課題となる。本願発明者
等は、濃度勾配に加えて風向きを用いることによって、
この問題を解決し、ガスセンサと風速センサを用いた、
自走型におい源探知システムを開発した(特願平6−5
5383号)。
【0004】また、Russellらも同様のガス漏れ
探知ロボットを開発した。しかし、室内の微風速を検出
可能な風向きセンサが少なく、風向き検出のために特殊
な構造のセンサを必要とするなどの欠点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本願発明者等
は、新たなにおい源探知システムを開発するため、生物
のメカニズムを模倣することが重要であると考え、カイ
コガの行動観察を行った。雄のカイコガは性フェロモン
のにおいを頼りに歩行して雌を探すが、このとき必ず翅
を激しく羽ばたく。前方に雌がいる場合には、羽ばたき
によって生じた風がフェロモンを引き寄せる。
【0006】逆に、後方に雌がいる時はフェロモンを遠
ざける。このため、触角で受容するフェロモン濃度は雌
の方向を向いた時に最高となり、逆向きで最低となる。
本願発明者等は、カイコガの触角と翅の代わりにガスセ
ンサ1つと小型ファンを用い、におい源の方向を判定す
る能動サンプリング型プローブを開発した(特願平7−
66199号)。
【0007】上記したプローブを用いると、風向きの情
報を用いずに、におい源の方向を得ることができる。し
かしながら、それによれば、プローブを1回転した後に
方向を判定するため、判定に長時間を要するという欠点
があった。本発明は、上記問題点を除去し、2次元又は
3次元のにおい源の探知の判定を迅速・かつ的確に行う
ことができる、におい源探知コンパスを提供することを
目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達
成するために、 〔1〕におい源探知コンパスにおいて、支持板上に固定
される複数のガスセンサと、この複数のガスセンサと一
体的に設けられるとともに前記複数のガスセンサを隔て
る仕切板と、前記支持板と一体的に設けられるとともに
前記複数のガスセンサに対応して配置される小型ファン
と、前記支持台を回転可能な駆動源とを備え、前記小型
ファンで吸引した空気を前記複数のガスセンサに当てる
ことにより、におい源の方向に対応するセンサ応答差を
得て、この応答差を利用してにおい源を探知可能にする
ようにしたものである。
【0009】〔2〕上記〔1〕記載のにおい源探知コン
パスにおいて、前記ガスセンサは2個のガスセンサであ
る。 〔3〕におい源探知コンパスにおいて、基台に支柱を介
して固定される第1の駆動源と、この第1の駆動源の回
転により駆動されるL字型アームと、このL字型アーム
の先端に固定される第2の駆動源と、この第2の駆動源
の回転によって駆動される支持台と、この支持台上に固
定される複数のガスセンサと、この複数のガスセンサを
隔てる仕切板と、前記支持台と一体的に設けられるとと
もに前記複数のガスセンサに対応して配置される小型フ
ァンとを備え、前記小型ファンで吸引した空気を前記複
数のガスセンサに当てることにより、におい源の方向に
対応するセンサ応答差を得て、この応答差を利用してに
おい源を探索可能にするようにしたものである。
【0010】〔4〕上記〔3〕記載のにおい源探知コン
パスにおいて、前記ガスセンサは4個のガスセンサを備
え、これらのガスセンサを個別に隔てる仕切板を配置す
るようにしたものである。ところで、カイコガは片方の
触角に強いフェロモン刺激を受けると、その方向へ体の
向きを回転する。上記した本発明のにおい源探知コンパ
スは、この行動メカニズムを模倣し、複数のガスセンサ
を用い、その複数のガスセンサのセンサ応答を比較しな
がら回転することによって、におい源の方向を方位磁針
のように指すことができる。
【0011】その結果、2次元的ににおい源を探知する
コンパスを得ることができる。更に、3次元におい源探
知コンパスを得ることができ、3次元的な方向判定も可
能である。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明の
第1実施例を示す2次元におい源探知コンパスの概略構
成図である。この図において、1は基台であり、この基
台1に駆動源であるステッピングモータ2が固定され、
このステッピングモータ2によって駆動される支持板3
が配置され、この支持板3上に支柱4,5が設けられ、
この支柱4,5上に半導体ガスセンサ(TGS822,
Figaro技研製)6,7が、支柱4,5間に固定さ
れる仕切板8を挟んで左右に1対配置されている。ま
た、支持板3上に支柱9を介して固定されるとともに、
その仕切板8の側方に小型ファン(RE140,マブチ
モータ)10が配置されている。
【0013】このように、この実施例の、におい源探知
コンパスには、カイコガの触角に対応させて、左右に1
対の半導体ガスセンサ(TGS822,Figaro技
研製)6,7を3.6cmの間隔で取り付けた。ここで
は、ガス中でのセンサ抵抗Rgasと清浄空気中でのセ
ンサ抵抗Rairの比S=Rgas/Rairをセンサ
応答と定義した。このセンサ応答Sは、においやガスの
濃度が低いときには、濃度の増加に対して線形的に減少
するが、その傾きはセンサ毎に異なる。
【0014】におい源探知コンパスでは微少なセンサ応
答差を検出する必要があるため、この線形性を用いて実
験前にセンサ応答の校正を行い、センサ感度を揃える。
また、におい源探知コンパスでは、カイコガの翅の代わ
りに小型ファン10を用いた。小型ファン10を回転す
ると、図1中の矢印のような風が生じ、右から吸引した
空気が右側の半導体ガスセンサ6に、左の空気が左側の
半導体ガスセンサ7に当たる。このため、センサの応答
を比較すれば、においが漂ってくる方向を判定すること
ができる。
【0015】小型ファン10による風の流れを整えるた
め、2つの半導体ガスセンサ6,7の間に、高さ10c
m、長さ8cmのアクリル板を仕切板8として取り付け
た。小型ファン10により生じる風の速さは、小型ファ
ン10の後方30cmの地点で2.87m/sであっ
た。これはこの実験を行った室内の風速(約10〜30
cm/s)に比べて十分に大きい。このため、においの
分布は小型ファン10の起こす風により能動的に変更さ
れる。
【0016】ここでは、ガス漏れ探知を想定し、クリー
ンルーム内で実験を行った。そして、1/4インチステ
ンレスチューブのノズルを用い、バブリングによって得
たエタノール飽和蒸気を流量75ml/minで噴出し
た。以降、このノズルの先端をにおい源と呼ぶ。まず、
小型ファンと仕切板の効果を確かめる実験を行った。
【0017】図2は本発明の実施例の小型ファンと仕切
板の効果を示す図である。この図に示すように、噴出し
たエタノールガス(におい源)は風に運ばれて広がり、
におい源11から風下に向けて雲状にたなびく。この雲
はプルームと呼ばれる。ここでは、におい源11から9
0cm風下のプルーム中心部に、におい源探知コンパス
を設置し、図中に示した方向に向けた。
【0018】まず、小型ファンを停止し、仕切板を取り
外した場合は、図2(a)に示すように左右のセンサ応
答にほとんど差がなかった。これは、風と平行な方向の
濃度勾配が小さいためである。センサ応答の変動は、風
の乱れによりプルームが蛇行し、ガスの濃度分布が不規
則に揺らぐために生じたものである。次に、小型ファン
を停止したまま仕切板を取り付けた。この場合、左側の
センサにガスが到達するのを仕切板が妨げる。このた
め、図2(b)に示すようにセンサ応答に差が生じた
が、その大きさは小さい。しかし、小型ファンを回転す
ることにより、右から高濃度のガスを吸引し、図2
(b)に示すように大きな応答差が得られた。
【0019】したがって、小型ファン10で起こした風
には、センサ応答差を拡大する効果があることが分か
る。また、図2(a)に示すように、仕切板がない場合
は、小型ファンを回転しても応答差が得られなかった。
これは、小型ファンの回転に伴い、空気が渦を巻きなが
ら吸引されるためである。この渦のために、右前方から
吸引した空気が左右のセンサに均等に当たってしまい、
応答差が生じない。
【0020】したがって、仕切板を用いて風の流れを整
えることが必要であることが分かった。次に、図2と同
一の地点でコンパスを360°回転し、センサ応答の差
を測定した。この結果を図3に示す。図3では、コンパ
スが、におい源を向いた時の方向をθ=0°とし、左回
りの角度を正とした。センサ応答差は、ΔS=Sr −S
l と定義した。ただし、Sr、Sl はそれぞれ右側のセ
ンサ、左側のセンサの応答を表す。
【0021】このように角度をとると、0°<θ<18
0°の時には、におい源がコンパスの右側に位置する。
このため、左側のセンサの応答値が小さくなり、図3で
はΔS<0となっている。逆に、180°<θ<360
°の時には、ΔS>0となる。従来の能動サンプリング
型プローブは、ガスセンサ1つのみを用いていたため、
プローブを1回転しないと、におい源の方向を判定でき
なかった。
【0022】これに対して、本発明のにおい源探知コン
パスでは、図3に示す応答差を利用してにおい源が左右
どちらにあるか瞬間的に判定できる。したがって、ΔS
<0の時は右回り、ΔS>0の時は左回りにコンパスを
回転すれば、ΔS=0かつdΔS/dθ<0となるθ=
0°にコンパスの方向を収束させることができる。にお
い源と逆向きのθ=180°でもΔS=0となるが、こ
の近傍では、dΔS/dθ>0となる。このため、コン
パスは180°の方向に停留せずに、この方向から離れ
る向きに回転する。
【0023】しかし、回転速度を増すとセンサ応答に図
3に示すような遅れが生じ、センサ応答差が正しく検出
できなくなる。半導体ガスセンサの応答は、濃度が高い
方へ変化するときは秒オーダで追従するが、濃度が低い
方へ変化するときの時定数は2分程度と非常に遅い。そ
こで、この応答特性を考慮し、以降の実験ではコンパス
の回転速度を2°/sに固定した。
【0024】〔におい源の方向推定結果〕クリーンルー
ムに設置したにおい源の方向を、ΔS=0かつ、dΔS
/dθ<0の条件の下に推定した。このクリーンルーム
の天井には、2つの給気口が、図4の右下と左下の位置
に取り付けられており、ここから風が吹き下ろす。にお
い源は、図4の右下隅に設置し、床からの高さは23.
5cmとした。図中に示したプルームの包絡線は、この
高さにおいてガスセンサ応答の平均値(5分間)が0.
8となった等濃度線を表す。しかし、におい源付近では
風が上から吹き下ろすため、プルームは床面に近い高さ
12cm付近を中心に二次元的に広がった。
【0025】図4(a)は、この高さ、12cmにコン
パスを置き、方向を推定した結果を示す。各測定点にお
いて、毎秒ガスセンサ応答を比較し、濃度の高い方向へ
2°/sでコンパスを回転した。x軸の正の方向を0°
として左回りに角度をとり、コンパスが指した方向θを
10分間測定した。コンパスの初期方向はθ0 =180
°とした。図4中の矢印は後半5分間におけるθの平均
値θavを示し、扇形はその間のθの最大変位を表す。矢
印が示すように、プルーム外ではプルームに向かう方
向、プルーム内ではにおい源の方向が得られた。扇形の
角度は広いが、繰り返し判定を行ってプローブを移動さ
せれば、方向の瞬時値を用いても、におい源に到達する
ことが可能である。
【0026】図4(a)のA、B点におけるガスセンサ
の応答とコンパスの動作を、図5に示す。A点はプルー
ム内、B点はプルーム外の点である。図5より、コンパ
スの方向θが数分でθav付近に収束し、その後およそ±
60°の範囲で変動していることが分かる。収束に要し
た時間は、A点では、図5(a)に示すように、約1分
であった。この実験ではコンパスの初期方向θ0 を、に
おい源と逆向きの180°としたために、収束に長時間
を必要とした。しかし、実際ににおい源の探索を行う際
は、初めに一度だけ数分間、収束を待てばよい。その
後、コンパスを少し動かして方向判定を行う作業を繰り
返せば、コンパスの指す方向が少しずつしか変化しない
ので短い時間で方向が収束できる。
【0027】また、図5(b)に示すように、B点でコ
ンパスの角度が収束するのに要した時間は約3分であ
り、A点の場合よりもさらに長い時間を要した。B点で
は、図5(b)に示すように、ガス濃度が低く、センサ
応答の差が小さいことが分かる。このため方向判定を誤
り易く、t=120s付近では、収束方向θavから離れ
る向きに回転してしまった。しかし、風の乱れによりt
=150s付近でB点までプルームが蛇行してきた結
果、大きなセンサ応答のディップが観測された。この時
のセンサ応答差により、コンパスは正しい方向へ向い
た。
【0028】このように、ガス濃度が低い場所では方向
判定が困難になる。実際に、B点よりも更にプルームか
ら離れたC点〔図4(a)参照〕では、ガスがほとんど
検出されなかったため、図4(a)に示すように、にお
い源の方向が誤って判定された。実際に使うときには、
センサ応答がない場合に方向判定不能である旨を表示す
る必要がある。
【0029】さらに、図4(b)に示すD点のようにプ
ルームと異なる高さにコンパスを置いた場合も、におい
源の方向が推定できなかった。このような場合には、三
次元的に方向を推定する必要があることが分かる。この
ように、現実の環境ではガスが3次元的に広がるため、
3次元的なにおい源探知が必要になることがある。そこ
で、第1実施例の2次元的におい源探知コンパスを発展
させ、三次元におい源探知コンパスを作製した。
【0030】図6は本発明の第2実施例を示す3次元に
おい源探知コンパスの概略構成図である。この図におい
て、21は基台であり、この基台21上に支柱22が設
けられ、この支柱22上に第1の駆動源である第1のス
テッピングモータ23が配置され、この第1のステッピ
ングモータ23の回転駆動により、L字形状のアーム2
4がX軸の回りに回転可能に構成されている。このL字
形状のアーム24の先端には第2の駆動源である第2の
ステッピングモータ25が配置され、この第2のステッ
ピングモータ25の回転駆動により、支持板26がY軸
の回りで回転可能に構成されている。
【0031】その支持板26には支柱27,28が設け
られ、これらの支柱27,28によって仕切板29,3
0が固定されている。これらの仕切板29,30間に個
別的に第1の半導体ガスセンサ31、第2の半導体ガス
センサ32、第3の半導体ガスセンサ33、第4の半導
体ガスセンサ34が隔てて配置されている。更に、支持
板26には支柱35が設けられ、その支柱35上に小型
ファン36が固定されるとともに、第1の半導体ガスセ
ンサ31、第2の半導体ガスセンサ32、第3の半導体
ガスセンサ33、第4の半導体ガスセンサ34に対応し
て配置されている。
【0032】このように、4つの半導体ガスセンサが取
り付けられており、隣接する半導体ガスセンサの間隔は
3cmである。また、第1実施例の2次元コンパスと同
じ大きさの仕切板29,30を2枚取り付けた。この3
次元におい源探知コンパスでは、半導体ガスセンサの応
答差からガス濃度勾配を検出し、この方向に2つのステ
ッピングモータを用いてコンパスを三次元的に回転可能
にしている。すなわち、まず、基台21の支柱22に固
定された第1のステッピングモータ23により、コンパ
スと第2のステッピングモータ25を一緒に仰角方向に
回転する。さらに、第2のステッピングモータ25を回
転することにより、コンパスを三次元の任意の方向へ向
けることができる。
【0033】ここでは、コンパス先端に固定された座標
系(xc 、yc )におけるガス濃度勾配ベクトルv
g を、
【0034】
【数1】
【0035】と定義した。以下の実験では、1秒毎にガ
ス濃度勾配ベクトルvg を測定し、その方向にコンパス
を2°/sで回転することによって、におい源の方向判
定を行った。 〔におい源の方向推定結果〕3次元におい源探知につい
ては、におい源を図4の座標系(x,y)=(100,
20)に置き実験を行った。この位置では、図4(a)
に示すように、2つの給気口から吹き出した風が衝突す
るため、噴出したガスは上方へ舞い上がる。このため、
z軸を床から垂直上向きにとり、yz平面上に図4と同
様に、プルームの包絡線を描くと、図7に示すようにな
る。
【0036】この図7に示すように、プルームが上方に
延びるため、2次元におい源探知コンパスを用いて床面
付近を移動しても、におい源を発見できなかった。ま
た、従来のガスセンサと風速センサを用いた、におい源
探知システムでも、におい源探知に失敗した。図7の実
験環境で3次元的にプローブの位置を変え、におい源の
方向推定を行った結果を図8に示す。この図8内の枠線
は座標系を表すもので、実験に枠が存在するわけではな
い。図8中の矢印は図4と同様に測定の後半5分におけ
るコンパスの方向の平均値を指し示している。コンパス
の初期方向はx軸の正の向きとした。図8に示すように
三次元コンパスを用いた場合には、左隅から上方に向か
うベクトルが得られた。この方向は図7に示すプルーム
の方向に一致する。
【0037】一方、このプルームの中では、におい源付
近で下降するベクトル列が得られた。したがって、この
ベクトル列をたどることによって、におい源に到達する
ことができる。典型的な動作例として、図8中のE点に
おけるコンパスの動作とセンサ応答を図9に示す。図中
のΔθは、コンパスの瞬間的な方向と、図8に示した矢
印の方向のなす角度を表す。図9では約4分でコンパス
の方向が収束しており、コンパスの方向の変動は、図5
に示した二次元の場合と同じく±60°程度であった。
【0038】従来の能動サンプリングプローブで3次元
方向推定を行う場合には、プローブを水平方向と垂直方
向に2回転する必要があった。これに対し、3次元コン
パスの場合には、濃度勾配を検出して直接におい源の方
向へコンパスが回転するので、2次元の場合と同程度の
時間で方向を推定することができた。なお、上記実施例
においては、ガスセンサとしては、半導体ガスセンサに
ついて述べたが、これに限定されるものではなく、弾性
波デバイス、導電性高分子、電気化学電極などからなる
ガスセンサがあり、これらのガスセンサを用いるように
してもよい。
【0039】また、本発明は上記実施例に限定されるも
のではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能
であり、これらを本発明の範囲から排除するものではな
い。
【0040】
【発明の効果】以上、詳細に説明したように、本発明に
よれば、以下のような効果を奏することができる。カイ
コガの行動を模倣し、におい源探知コンパスを開発し
た。複数のガスセンサを仕切板で隔て、そこに小型ファ
ンで吸引した空気を当てることにより、におい源の方向
に対応するセンサ応答差が得られた。におい源探知コン
パスは、この応答差を利用してにおい源の方向を指し示
す。
【0041】カイコガと同様に二次元的に動作するコン
パスと、三次元的に回転するコンパスの2種類を製作し
た結果、どちらのコンパスを用いた場合でも、クリーン
ルーム内のにおい源の方向を推定することができた。コ
ンパスを人間が持って移動するか、あるいは移動ロボッ
トに取り付けることにより、におい源を発見することが
できる。特に、三次元的にガスが広がる場合に、その発
生源を探知することは従来困難であったが、本発明の三
次元コンパスにより三次元的な方向判定が可能となり、
探知能力の向上を図ることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例を示す2次元におい源探知
コンパスの概略構成図である。
【図2】本発明の実施例の小型ファンと仕切板の効果を
示す図である。
【図3】本発明の第1実施例を示す図2と同一の地点で
コンパスを360°回転し、センサ応答の差を測定した
結果を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施例を示すにおい源の方向推
定結果を示す図である。
【図5】図4に示すA、B点におけるガスセンサの応答
とコンパスの動作を示す図である。
【図6】本発明の第2実施例を示す3次元におい源探知
コンパスの概略構成図である。
【図7】本発明の第2実施例を示すプルームの包絡線を
示す図である。
【図8】本発明の第2実施例を示す実験環境で3次元的
にプローブの位置を変え、におい源の方向推定を行った
結果を示す図である。
【図9】図8中のE点におけるコンパスの動作とセンサ
応答を示す図である。
【符号の説明】
1,21 基台 2 ステッピングモータ 3,26 支持板 4,5,9,22,27,28,35 支柱 6,7 半導体ガスセンサ 8,29,30 仕切板 10,36 小型ファン 11 におい源 23 第1のステッピングモータ(第1の駆動源) 24 L字形状のアーム 25 第2のステッピングモータ(第2の駆動源) 31 第1の半導体ガスセンサ 32 第2の半導体ガスセンサ 33 第3の半導体ガスセンサ 34 第4の半導体ガスセンサ

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(a)支持板上に固定される複数のガスセ
    ンサと、(b)該複数のガスセンサと一体的に設けられ
    るとともに前記複数のガスセンサを隔てる仕切板と、
    (c)前記支持板と一体的に設けられるとともに前記複
    数のガスセンサに対応して配置される小型ファンと、
    (d)前記支持台を回転可能な駆動源とを備え、(e)
    前記小型ファンで吸引した空気を前記複数のガスセンサ
    に当てることにより、におい源の方向に対応するセンサ
    応答差を得て、該応答差を利用してにおい源を探知可能
    にすることを特徴とするにおい源探知コンパス。
  2. 【請求項2】 請求項1記載のにおい源探知コンパスに
    おいて、前記ガスセンサは2個のガスセンサであること
    を特徴とするにおい源探知コンパス。
  3. 【請求項3】(a)基台に支柱を介して固定される第1
    の駆動源と、(b)該第1の駆動源の回転により駆動さ
    れるL字型アームと、(c)該L字型アームの先端に固
    定される第2の駆動源と、(d)該第2の駆動源の回転
    によって駆動される支持台と、(e)該支持台上に固定
    される複数のガスセンサと、(f)該複数のガスセンサ
    を隔てる仕切板と、(g)前記支持台と一体的に設けら
    れるとともに前記複数のガスセンサに対応して配置され
    る小型ファンとを備え、(h)前記小型ファンで吸引し
    た空気を前記複数のガスセンサに当てることにより、に
    おい源の方向に対応するセンサ応答差を得て、該応答差
    を利用してにおい源を探索可能にすることを特徴とする
    におい源探知コンパス。
  4. 【請求項4】 請求項3記載のにおい源探知コンパスに
    おいて、前記ガスセンサは4個のガスセンサを備え、こ
    れらのガスセンサを個別に隔てる仕切板を配置するよう
    にしたことを特徴とするにおい源探知コンパス。
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