JPH09304266A - 光放射圧による微粒子の保持方法および変位測定方法 - Google Patents

光放射圧による微粒子の保持方法および変位測定方法

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JPH09304266A
JPH09304266A JP8125488A JP12548896A JPH09304266A JP H09304266 A JPH09304266 A JP H09304266A JP 8125488 A JP8125488 A JP 8125488A JP 12548896 A JP12548896 A JP 12548896A JP H09304266 A JPH09304266 A JP H09304266A
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高廣 伊藤
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 保持する対象に応じた高効率の光放射圧によ
る微粒子の保持方法、およびトラップされた微粒子の変
位を高速にかつ高分解能で測定できる変位測定方法を提
供することを目的とする。 【解決手段】 平行光ビームを変倍レンズ群を通過させ
た後に光軸上で対向させた2つのコーンレンズからなる
コーンレンズ組を通過させることにより、光軸を中心と
する中央部の光強度分布がその周辺部よりも小さいリン
グ形状ビームにし、この変倍レンズ群の倍率またはコー
ンレンズ組のレンズ間距離を変化させることによりリン
グ形状のトラッピング用光ビームのリング幅またはビー
ム径を可変とした。また、トラッピング用光ビームと変
位測定用光ビームに異なる波長を持ったビームを用い、
臨界角法によって微粒子の変位を測定することとした。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、被測定物に付着さ
れた微粒子を光放射圧による光バネで保持し、その保持
された微粒子の変位の測定や、被測定物との相互作用に
よって微粒子に働く微弱な力の測定を計測する分野に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、光放射圧によりトラップした微粒
子または微小物体(以下、微粒子という)の変位測定と
しては、文献1(Karel Svobada、Christoph F. Schmid
t、Bruce J. Schnapp、Steven M. Blockが発表した論
文、「Direct observation of kinesin stepping by op
tical trapping interferometry (光トラッピング干渉
系によるキネシン分子ステッピングの直接観察)」(Na
ture,Vol.365,21 October (1993)721-727)) が知
られている。これは、筋肉細胞など生体微小器官の運動
を微粒子を付着させて観測する方法であり、図9(a)
にその構成を示す。ここでは、マイクロチューブ201
上をステッピング運動しているキネシン分子202が試
料である。このキネシン分子202に球形微粒子203
を付着させ、この球形微粒子203の変位を測定するこ
とにより、キネシン分子202のステッピング運動を調
べている。
【0003】球形微粒子203を保持するためには、ト
ラッピング用光ビームとして偏光レーザビームを用いて
いる。球形微粒子の変位測定には、この偏光レーザビー
ムを2ビームに分けた後、お互いにわずかにずして球形
微粒子203に集中照射して干渉光を得る。そして、そ
の干渉光を再び2ビームに分け、これらの強度を比較・
演算することにより、球形微粒子203の光軸中心から
のズレ(変位)δを測定している。図9(b)に球形微
粒子203の変位と検出信号の関係をあらわすグラフの
例を示す。
【0004】以上の変位測定方法では、球形微粒子20
3のトラッピングと変位測定に同一のビームを用いて球
形微粒子203の変位に応じて生じる干渉光の変化に基
づいて測定を行うため、測定できる変位の方向が制限さ
れている。また、通常のトラッピング用レーザビームの
光強度分布は、図10に示すような光軸を中心とする中
央部の強度がその周辺部よりも大きいガウシアン分布に
近い分布をなしている。この場合、トラップの対象物の
形状や屈折率にもよるものの、トラッピングの効率から
してみてもこの中央部の光はトラッピングには有効では
ない。
【0005】これに対し、文献2(杉浦忠男、河田聡、
南茂夫による「アキシコンプリズム照明系を用いたレー
ザー顕微鏡トラッピング」(第39回応用物理関係連合
講演会予稿集、p.787(1992)))、あるいは
文献3(塩谷達也、高谷裕浩、三好隆志らによる文献
「レーザトラッピングを用いたナノ3次元検出プローブ
に関する研究−プローブの基本特性−」(1996年度
精密工学会春期大会学術講演会講演論文集))には、光
軸を中心とする中央部の強度がその周辺部よりも小さい
光強度分布をもつリング形状ビームを用いてトラッピン
グを行った場合にトラッピングの効率が向上した旨が記
載されている。
【0006】リング形状光ビームを用いてトラッピング
を行う場合、トラッピングにより形成される光バネの光
軸方向およびこの光軸方向に直角方向の力がそのリング
形状光ビームのビーム径やリング幅に大きく依存してい
ることは、たとえば文献4(A. Ashlinの「Forces of a
single-beam gradient laser trap on a dielectricsp
here in the ray optics regime」(Biophysical Journ
al, Vol.61 (1992)569-582))に既に記載されてい
る。
【0007】たとえば、リング形状の光ビームを用いて
トラッピングした場合の光軸方向および光軸方向に垂直
な方向のトラッピング力とリング形状光ビームのリング
幅との関係を図11に示す。ここでは比較のために、光
強度分布がガウシアン分布の通常の光ビームであって、
上述のリング形状ビームと同じ発光パワーを持つトラッ
ピング用光ビームを、同じ開口数(NA)のレンズで集
光して同じ球形状の微粒子をトラップした場合のトラッ
ピング力も併せて表示されている。図11によれば、リ
ング形状光ビームを用いた場合、ガウシアン分布を持つ
通常の光ビームに対してそのリング幅が小さいほど光軸
方向のトラップ力は向上することがわかる。一桁近く大
きくなる場合もある。しかしながら、光軸に垂直な方向
のトラッピング力は、リング幅が小さくなるにともなっ
て低下する。すなわち、光軸方向および光軸に垂直な方
向の両方向でほどほどに大きいトラップ力が得られる最
適なリング幅が存在することがわかる。また、同様のこ
とがビーム径についてもいえる。
【0008】加えて、集光レンズの開口度(NA)が大
きすぎる場合には、トラップ対象物体と集光レンズとの
間のギャップが2〜300μmしかとれなくなり、障害
物があるなかでのトラッピングが困難になる場合があっ
た。したがって、種々のトラッピングにおいて効率の良
いトラッピングを行うためには、トラップする対象とな
る物体の形状や屈折率、集光レンズ(対物レンズ)のN
Aなどに応じてリング形状光ビームのビーム径およびリ
ング幅の値を最適に選ぶ必要がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来の測定装
置はそのビーム径やリング幅を可変とする構造とはなっ
ていなかったため、最適なトラッピングを行うために
は、それぞれの対象に応じて光学系を設計し直さなけれ
ばならないという問題があった。
【0010】また、光放射圧により保持した微粒子の変
位を微粒子に照射する参照光とその微粒子から反射する
反射光の干渉を用いて測定する従来の方法は、トラッピ
ング用ビームが変位測定用ビームとが互いにノイズとな
るという問題もあった。さらに、従来の方法では複雑な
演算処理や画像処理を必要とする場合があり、測定速度
が遅いという欠点があった。特に生体の分野における応
用では、細胞への損傷を与えずに変位や力の計測をしな
ければならず、高効率のトラッピングと迅速な測定が望
まれていた。
【0011】そこで本発明は、光放射圧による微粒子の
保持においては保持する対象に応じた高効率のトラッピ
ング方法を提供し、その変位測定においてはトラッピン
グ用ビームと変位測定用ビームが互いにノイズとならな
いようにして、トラップされた微粒子の変位を迅速(高
速)にかつ高分解能で測定できる変位測定方法を提供す
ることを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するた
めに、本発明にかかる光放射圧による微粒子の保持方法
は、トラッピング用光ビームを集光レンズで絞って微粒
子に照射する光放射圧による微粒子の保持方法におい
て、トラッピング用光ビームを得る際に、平行光ビーム
を変倍レンズ群を通過させた後に光軸上で対向させた2
つのコーンレンズからなるコーンレンズ組を通過させる
ことにより、光軸を中心とする中央部の光強度分布がそ
の周辺部よりも小さいリング形状ビームにし、この変倍
レンズ群の倍率またはコーンレンズ組のレンズ間距離を
変化させることによりリング形状のトラッピング用光ビ
ームのリング幅またはビーム径を可変とすることを特徴
としている。トラッピング用光ビームをリング形状と
し、かつそのビーム径を可変とすることによって、集光
レンズで微粒子に集光する際に微粒子へ向かうビームが
光軸となす角度を可変とすることができる。さらに、リ
ング形状ビームのリング幅を可変とすることで、トラッ
プする微粒子に合わせてリング幅とビーム径を最適に選
ぶことができ、効率の高いトラッピングができる。この
高効率トラッピングが可能となることで、トラッピング
用光ビームの光出力を小さくして、生体微小器官などに
損傷を与えることを避けることが可能となる。
【0013】また、本発明にかかる光放射圧による微粒
子の保持方法は、光軸を中心とする円周上に配置した複
数の半導体レーザ若しくはLEDを光源とする平行光ビ
ーム束をトラッピング用光ビームとして用いることを特
徴とする。これにより、トラッピング用光ビームを集光
レンズで微粒子上に集光する際にビーム束が光軸となす
角度を可変とすることができ、高効率のトラッピングを
行うことができる。また、光源に発光出力の比較的小さ
い半導体レーザやLEDを使用して、装置の小型化を図
ることが可能となる。
【0014】また、本発明にかかる光放射圧による微粒
子の変位測定方法は、光放射圧によって保持された微粒
子の変位を測定する方法であって、上述の光放射圧によ
る微粒子の保持方法において第1の波長を持つトラッピ
ング用光ビームで微粒子を保持したうえで、第2の波長
を持つ変位測定用光ビームを集光レンズでこの微粒子の
表面に結像させ、微粒子表面で反射される変位測定用光
ビームの反射光を集光レンズで平行光にしてこれを第2
の波長のみを通過させるフィルターを通した後、臨界角
プリズムとして機能する全反射ミラーによって反射し、
この反射光を光軸を中心にして割り振られた複数の光検
出器をもって検出し、この検出信号から微粒子の変位を
求めることを特徴とする。トラッピング用光ビームと変
位測定用光ビームに異なる波長を持ったビームを用いる
ことによって、変位測定の際にノイズとなるトラッピン
グ用光ビームの反射光を除去するようにした。これによ
り、分解能の高い変位測定ができる。また、変位測定に
臨界角法を採用したことにより、迅速な測定ができる。
【0015】また、本発明にかかる光放射圧による微粒
子の変位測定方法は、第2の波長を持つ変位測定用光ビ
ームが第1の波長を持つリング形状トラッピング用光ビ
ームまたはトラッピング用光ビーム束の内側を通ること
を特徴とする。トラッピング用光ビームの内側、すなわ
ち第1の波長の光がほとんど存在しない領域を変位測定
用光ビームが通ることにより、二つのビーム間の干渉を
抑えてノイズを低減するようにした。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実
施の形態について詳述する。図1は、本発明にかかる微
粒子の保持および変位測定方法を実施する装置の一例を
示している。ここで、トラップしたい微粒子4(たとえ
ば筋肉細胞に付着させたSiO2微小球)を保持するため
に、光軸5を中心とする中央部分の光の強度がその周囲
よりも低いリング形状のトラッピング用ビーム101
を、集光レンズとして作用する対物レンズ3によって微
粒子4の内部に集光させている。このリング形状トラッ
ピング用ビーム101を得るために、レーザダイオード
(以下、LDという)励起Nd:YAGレーザ1を光源
とする波長1.06μmの光を平行光ビーム100にコ
リメートし、これを後述する変倍レンズ群21およびコ
ーンレンズ組22からなる光学レンズ系2を通過させて
いる。
【0017】図2(a)にリング形状のトラッピング用
ビーム101を得るために用いる変倍レンズ群21およ
びコーンレンズ組22の一例を示す。変倍レンズ群21
とコーンレンズ組22を組み合わせたことにより、リン
グ形状光ビーム101のビーム径およびリング幅を独立
に可変とすることができる。すなわち、図2(b)に示
すように、互いに対向し、コーンレンズ組22を構成す
る二つのコーンレンズ間の距離を変化させることによ
り、リング形状光ビームのリング幅はそのままで、ビー
ム径を変化させることができる。これによって、集光レ
ンズ(図1の対物レンズ3に対応)を通過した後のビー
ムと光軸とのなす角度、すなわち集光レンズの開口度
(NA)と関係する角度を適切に変化させることができ
る。また、図2(c)に示すように、変倍レンズ群21
のレンズ間距離を変化させることで、コーンレンズ組2
2に入射する平行ビームのビーム径を変化させ、対向す
るコーンレンズから射出されるリング形状光ビーム10
1のビーム径をそのままに、リング幅を可変とすること
ができる。このように、トラッピング対象物から離れた
場所で、微粒子4を保持するのに適したビーム径とリン
グ幅を持ったリング形状光ビームを作りだし、高効率の
トラッピングを実現している。
【0018】たとえば、図6に示すように、光の強度分
布が光軸を中心とするガウシアン分布となる通常のビー
ムを用いてトラッピングを行った場合と比較して、本発
明の保持方法を用いれば、同等のトラッピング力を得る
のに必要なエネルギーは約1/8の程度で済む。このこ
とは、レーザパワーPが同じ光源を用いても本発明の保
持方法を用いることによって大きなトラッピング力Fを
得ることが可能であることを意味している。
【0019】なお、光ビーム100をリング形状光ビー
ム101に成形するために、リング状の孔のあいたアパ
ーチュアを用いて光軸5の中心付近の光をカットするこ
とも考えられる。このアパーチュアを用いる方法は簡単
ではあるが、リング形状光ビームのビーム径あるいはリ
ング幅を可変とすることが困難であるのに加え、光ビー
ム100の最もエネルギーの高い光軸付近の光をカット
してしまうのでエネルギーの無駄がある。したがって、
高効率のトラッピングが必要なときには、以下に述べる
ように変倍レンズ群21とコーンレンズ組22を用いる
ことが有効である。
【0020】次に、上述のようにして保持された微粒子
4の変位を測定するためには、図1に示すように、アル
ゴンレーザ6を光源とする変位測定用ビーム600(波
長0.5μm、出力5mW)を、リング形状のトラッピ
ング用ビーム101の強度の低い光軸5付近を通るよう
に入射し、これを対物レンズ3によって微粒子4の表面
付近に結像させる。このとき、変位測定用ビーム600
の一部は微粒子4の表面で反射される。そこで、変位測
定用ビーム600の光軸7付近を通る反射光601を1
/4波長板9と偏光ビームスプリッタ(PBS)10と
からなる光アイソレータによって分離し、フィルタ11
を通して波長0.5μmの変位測定用ビームの成分のみ
を取り出した後、これを全反射ミラー12に入射し、臨
界角法を用いて微粒子4の変位を求める。
【0021】すなわち、変位測定用ビーム600の結像
点8が微粒子4の表面にあるとき、その反射光601が
全反射ミラー12に到達する際に平行光線になるように
しておく。また、全反射ミラー12をこの平行光線が全
反射の臨界角で全反射されるように調整しておく。そし
て、臨界角プリズムとしての機能を有する全反射ミラー
12で反射光601を反射させて、光軸を中心に割り振
られた二つのフォトダイオード13、14で検出する。
【0022】したがって、変位測定用ビーム600の結
像点8が微粒子4の表面にある場合には、全反射ミラー
12に到達した反射光601のすべては全反射されて二
つのフォトダイオード13、14に入力される。フォト
ダイオード13、14の検出信号を演算装置15に入力
し、出力信号強度の差を求め、このときの値を基準値と
する。これに対し、微粒子4の表面が結像点8から若干
変位した場合、図3に示すように、全反射ミラー12に
入射する反射光601は平行光ではなくなり、臨界角を
満足しなくなった反射光601の一部は全反射せずに屈
折光602として全反射ミラー12から外部にでてしま
う。その結果、二つのフォトダイオード13、14から
得られる出力信号強度の差は、変位測定用ビームの結像
点8から微粒子4の表面までの変位δの関数として得ら
れる。その関係は、図4(a)に示すように、一定範囲
内の変位δに対しては直線関係として得られた。
【0023】微粒子4の変位測定の際には、トラッピン
グ用ビーム101も微粒子4上で反射されるが、このト
ラッピング用ビーム101は、上述のようにコーンレン
ズ組22によって光軸付近の光ビームの強度が低い若し
くはカットされたリング形状となっているため、その反
射光が変位測定用ビームと重複することはほとんどな
く、二つのビームの干渉を避けることができる。さら
に、トラッピング用ビームと変位測定用ビームの波長が
異なっているため、図1中に示されたフィルタ11によ
って、全反射ミラー12に入射する反射光の中からトラ
ッピング用ビーム101による成分を完全にカットする
ことができる。その結果、トラッピング用ビームが変位
測定においてノイズとなることを抑えることができ、し
たがって変位測定の分解能を向上させることができる。
【0024】これを光軸付近の光の強度が高い通常の光
ビームを用いてトラッピングを行う従来の方法と比較す
ると、たとえトラッピング用ビームと異なる波長を持っ
た変位測定用ビームを用い、かつ、トラッピング用ビー
ムの反射光をカットするフィルターを挿入したとして
も、本実施の形態にある変位測定方法の方が従来の方法
よりもノイズの影響を小さくすることができる。たとえ
ば、図4(b)に示すように、従来の方法ではノイズが
大きく、その測定精度は数10nmしか得られなかった
のに対し、リング形状の光ビームを用いてトラッピング
をした場合には、その測定分解能は1nm以下の0.7
nmを得ることができた。
【0025】なお、本実施の形態では、図1に示すよう
に、トラッピング用ビーム101と変位測定用ビーム6
00を微粒子4に対して同じ側から入射しているが、こ
れを対向させて行った場合でも、これら二つのビームの
波長が異なること、および光軸7付近にはトラッピング
光が存在しないことから、変位測定用ビームの光軸付近
の反射光のみを分離することができる。したがって、ト
ラッピング用ビームがノイズにならず、変位測定の分解
能を向上させることができるという結果を得た。
【0026】なお、上述の第1の実施の形態では、トラ
ッピング用ビームおよび変位測定用ビームにそれぞれY
AGレーザおよびアルゴンレーザを光源として用いた
が、これは、波長が異なる光源を用いる限り、光源の種
類を限定するものではない。このとき、トラップする微
粒子の材質によって吸収の少ない波長を持つ光源を選択
することが望ましい。
【0027】次に、トラッピング用ビームの光源として
YAGレーザに代えて2個の半導体レーザ(LD)を使
用した第2の実施の形態を図5に示す。この第2の実施
の形態では、トラッピング用ビームはリング形状にはな
らず、図5に示すように、外周部に2つのビーム102
が形成される。ここでも上述の第1の実施例と同様に、
図5に示した変倍レンズ群21とコーンレンズ組22を
用いることにより、光軸5の周囲に配置された複数のト
ラッピング用光ビーム102の間隔を変えることができ
る。したがって、集光レンズで微粒子に集光する際に、
光軸5とこれら複数のトラッピング用光ビーム102の
なす角度を変えることができるようになり、光軸方向と
光軸に垂直な方向のトラッピング力を最適に選ぶことで
高効率のトラッピングが可能となる。その結果、発光パ
ワーの小さい光をトラッピングに用いることが可能とな
る。なお、本実施の形態ではLDを2個用いて2本のビ
ームを使用しているが、これを3本以上にすることがで
きることはいうまでもない。また、光源として半導体レ
ーザに代えてLEDを用いることも可能である。
【0028】以上二つの実施の形態では、変倍レンズ群
として凹レンズと凸レンズを組み合わせたものを利用し
ているが、これをズームレンズと呼ばれる同様の機能を
もつ他のものを利用しても差し支えない。また、トラッ
プする微粒子には、ポリスチレン微粒子やPMMA微粒
子、金微粒子、磁性微粒子等のほか、たとえば特開平6
−148560号公報「マイクロ回転体およびその製造
方法」に記載されたマイクロマシニングで作製した微粒
子などを使用することができる。
【0029】一方、光放射圧による微粒子のトラッピン
グは、等価的にその微粒子をバネで保持したことにな
り、図7に示すように、トラッピング力Fと変位δの関
係が線形となる領域が存在する。バネ係数Kはそのとき
の勾配F/δで表される。図7は、同じレーザ出力のト
ラッピング用ビームにおいても微粒子の変位の方向、す
なわちトラッピング用ビームの光軸方向とその光軸に垂
直な方向によって、そのバネ係数K1 、K2 が異なって
いることを示している。したがって、トラップ微粒子に
たとえば微小球を用いて、光軸方向とその光軸に垂直な
方向の変位のみならずその微粒子に働く力を測定するこ
とも可能である。この場合、本発明による高い変位測定
分解能はそのまま高精度の力測定を可能とした。たとえ
ば、従来の方法では、せいぜい10nm程度の精度でし
か変位測定が行えなかったため、これに相当する力であ
る0.2pNが力測定の分解能であった。これに対し、
本発明によれば0.7nmの変位が測定可能であるの
で、0.02pN以下の力を測定することが可能とな
る。
【0030】また、トラッピングにリング形状の光ビー
ムを用いることにより、図8に示すように、被測定物の
表面において反射されたトラッピング光がその被測定物
に付着した微粒子におよぼす影響をなくすことが可能と
なる。したがって、微粒子と被測定物間の相互作用、た
とえば摩擦力、表面電位、磁気力などを精度良く測定す
ることが可能となる。
【0031】
【発明の効果】本発明にかかる微粒子の保持方法によれ
ば、微粒子の保持装置の光学系を設計し直すことなく、
トラッピング用ビームのビーム径およびリング幅を適切
に選ぶことができる。したがって、高効率のトラッピン
グを行うことができる。したがって、これまでよりも低
いエネルギーの光をトラッピング用光ビームとして使用
することが可能となった。したがって、トラッピング用
光ビームの光源としては、半導体レーザのみならず、L
EDのようなある程度の波長域をもつものも使用でき
る。その結果、開口数(NA)の小さい集光レンズでも
微粒子をトラップすることが可能となる。さらに、トラ
ップした微粒子への光吸収によるダメージを大幅に減少
させることができる。
【0032】本発明にかかる微粒子の変位測定方法によ
れば、光軸付近の光の強度を低くしたトラッピング用光
ビームを用いた微粒子のトラッピング方法に臨界角法に
よる変位測定を組み合わせることにより、ノイズの少な
い変位測定ができ、変位測定の分解能を格段に向上させ
ることができる。
【0033】また、本発明の変位測定方法は、複雑な演
算処理や画像処理を必要としないため、微粒子の変位の
測定を高速に行うことができる。さらに、これまで測定
できなかった微粒子に加わる微小な力を高速に測定する
こともできるようになった。これにより、たとえば生体
の分野における応用において、細胞への損傷を与えずに
変位や力の計測を行うことが可能となる。
【0034】さらに、光アイソレータで取り出した変位
測定用ビームの反射光を、たとえばハーフミラーで二つ
に分け、これらをそれぞれ互いに直交する方向に配置さ
れた二つの臨界角プリズムに入射させることにより、微
粒子の変位測定用ビームの光軸方向とそれに垂直な方向
の変位を測定することが可能となり、ビームに対して測
定できる変位の方向の制限をなくすことが可能である。
すなわち、たとえば保持された微粒子が微小球のような
場合、光軸方向のみならず光軸に垂直な方向の変位を同
時に測定することもできる。
【0035】また、本発明にかかる変位測定方法、また
はそれを応用した力測定方法を用いて微粒子と被測定物
間の相互作用、たとえば摩擦力、表面電位、磁気力など
を精度良く測定することができるので、これらの相互作
用を高感度で検知し、また走査することによって、被測
定物上の摩擦力、表面電位、磁気力などの物性情報の空
間分布を測定する走査型プローブ顕微鏡としての利用も
可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明にかかる微粒子の保持および変位測定
方法の第1の実施の形態を表す図である。
【図2】 変倍レンズ群とコーンレンズ組からなる光学
レンズ系を表す図である。
【図3】 変位測定に用いる臨界角法を説明する図であ
る。
【図4】 変位とフォトダイオードの出力信号差の関係
を示すグラフである。
【図5】 本発明の第2の実施の形態を示す図である。
【図6】 トラッピング効率を比較するグラフである。
【図7】 トラッピング力Fと変位δの関係を示すグラ
フである。
【図8】 被測定物の表面において反射されたトラッピ
ング光が微粒子におよぼす影響を表す概念図である。
【図9】 従来の光放射圧によりトラップした微粒子の
変位測定を表す図である。
【図10】 通常の光ビームの光強度分布を示すグラフ
である。
【図11】 リング形状トラッピング用光ビームのリン
グ幅とトラッピング力の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1…LD励起Nd:YAGレーザ、2…光学レンズ系、
3…集光レンズを兼ねた対物レンズ、4…微粒子、5…
トラッピング用光ビームの光軸、6…アルゴンレーザ、
7…変位測定用光ビームの光軸、8…変位測定用ビーム
の結像点、9…1/4波長板、10…偏光ビームスプリ
ッタ、11…フィルタ、12…全反射ミラー、13、1
4…フォトダイオード、15…演算装置、21…変倍レ
ンズ群、22…コーンレンズ組、100…平行光ビー
ム、101…リング形状ビーム、102…トラッピング
用光ビーム、600…変位測定用ビーム、601…変位
測定用ビームの反射光、602…屈折光。
フロントページの続き (72)発明者 中田 宏 東京都新宿区西新宿三丁目19番2号 日本 電信電話株式会社内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 トラッピング用光ビームを集光レンズで
    絞って微粒子に照射する光放射圧による微粒子の保持方
    法において、 前記トラッピング用光ビームは、 平行光ビームを変倍レンズ群を通過させた後に光軸上で
    対向させた2つのコーンレンズからなるコーンレンズ組
    を通過させて光軸を中心とする中央部の光強度分布がそ
    の周辺部よりも小さいリング形状ビームにし、 前記変倍レンズ群の倍率または前記コーンレンズ組のレ
    ンズ間距離を変化させることにより前記リング形状ビー
    ムのリング幅またはビーム径を可変とすることを特徴と
    する光放射圧による微粒子の保持方法。
  2. 【請求項2】 トラッピング用光ビームを集光レンズで
    絞って微粒子に照射する光放射圧による微粒子の保持方
    法において、 前記トラッピング用光ビームは、 光軸を中心とする円周上に配置した複数の半導体レーザ
    若しくはLEDを光源とする平行光ビーム束を変倍レン
    ズ群を通過させた後に光軸上で対向させた2つのコーン
    レンズからなるコーンレンズ組を通過させ、 前記変倍レンズ群の倍率または前記コーンレンズ組のレ
    ンズ間距離を変化させることにより前記平行光ビーム束
    の光軸からの距離を可変とすることを特徴とする光放射
    圧による微粒子の保持方法。
  3. 【請求項3】 光放射圧によって保持された微粒子の変
    位を測定する方法であって、 請求項1または請求項2記載の光放射圧による微粒子の
    保持方法において第1の波長を持つトラッピング用光ビ
    ームで前記微粒子を保持し、 第2の波長を持つ変位測定用光ビームを集光レンズで前
    記微粒子の表面に結像させ、 前記微粒子表面で反射される変位測定用光ビームの反射
    光を前記集光レンズで平行光にし、 前記反射光を前記第2の波長のみを通過させるフィルタ
    ーを通した後、全反射ミラーに導き、 前記全反射ミラーで反射された前記反射光を光軸を中心
    にして割り振られた複数の光検出器をもって検出し、 前記光検出器の検出信号から前記微粒子の変位を求める
    ことを特徴とする光放射圧による微粒子の変位測定方
    法。
  4. 【請求項4】 請求項3記載の光放射圧による微粒子の
    変位測定方法であって、 第2の波長を持つ変位測定用光ビームは、第1の波長を
    持つリング形状トラッピング用光ビームまたはトラッピ
    ング用光ビーム束の内側を通ることを特徴とする光放射
    圧による微粒子の変位測定方法。
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