JPH09301788A - 炭素系構造物 - Google Patents

炭素系構造物

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JPH09301788A
JPH09301788A JP11396396A JP11396396A JPH09301788A JP H09301788 A JPH09301788 A JP H09301788A JP 11396396 A JP11396396 A JP 11396396A JP 11396396 A JP11396396 A JP 11396396A JP H09301788 A JPH09301788 A JP H09301788A
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Katsuaki Kosaka
坂 勝 明 小
Katsuhiro Kishi
克 宏 岸
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高温の酸化雰囲気下で使用される場合の耐酸
化性により一層優れている炭素系構造物を提供する。 【解決手段】 耐酸化コーティングを施して表面に耐酸
化層3,4,5が形成された炭素系構造物1において、
表面の耐酸化層3,4,5の最表面に、高温に曝された
際に耐酸化層3,4,5に形成された粗大結晶粒界やピ
ンホール部などのすき間部分を塞ぐガラスシール6とし
てリン酸アルミニウム被覆を設けた構成とした。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高温の酸化雰囲気
下で使用された場合の耐酸化性に優れている炭素系構造
物に関し、とくに、耐酸化コーティングを施して表面に
耐酸化層が形成された炭素系構造物において耐酸化性を
より一層向上させて、高温の酸化雰囲気下で使用された
場合の重量減少率が著しく少ない耐酸化性に優れた炭素
系構造物に関するものである。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】宇宙航空分野において
使用される地球回収型カプセルのノーズコーンには、例
えば、石英(SiO)のマイクロバルーンを含有して
低密度化したフェノール樹脂の複合材や、フェノール樹
脂をシリカ(SiO)繊維によるクロス材によって強
化した複合材などが、アブレーション材として用いられ
ている。
【0003】しかしながら、このようなアブレーション
材を使用した場合に、アブレーション材だけでカプセル
重量の10%以上を占めるため、カプセルに搭載する実
験器具等の重量が限定されてしまうこととなるので、軽
量化の観点から、炭素系構造材に耐酸化コーティングを
施し、表面に耐酸化層が形成されたものとして、ノーズ
コーンに使用することが検討されている。
【0004】従来、このような耐酸化コーティングとし
ては、炭化珪素(SiC)系のものが主体であったが、
近年、火星への突入機など、炭化珪素の耐酸化性能の限
界温度とされる1800℃以上の高温に曝されることも
考慮して、酸化ハフニウム(HfO)、酸化アルミニ
ウム(Al)、ストロンチウムジルコネート(S
rZrO)、イットリア(Y)などの高融点酸
化物系のコーティング技術の研究が進められている。
【0005】しかしながら、この種の高融点酸化物より
なる耐酸化層が最外層となる構造とした場合には、高温
に曝されたときに結晶成長(粗大化)が始まり、最外層
では結晶粒界にピンホールが発生し、このピンホールか
ら酸素が侵入するために、内部の炭素/炭素複合材は長
時間高温状態に保持することができないという問題点が
あった。
【0006】
【発明の目的】本発明は、このような従来の問題点に着
目してなされたものであって、高温の酸化雰囲気下で使
用された場合の耐酸化性により一層優れている炭素系構
造物を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明に係わる炭素系構
造物は、請求項1に記載しているように、耐酸化コーテ
ィングを施して表面に耐酸化層(および/または耐エロ
ージョン層)が形成された炭素系構造物において、表面
の耐酸化層(および/または耐エロージョン層)に、高
温に曝された際に耐酸化層(および/または耐エロージ
ョン層)に形成された粗大結晶粒界やピンホール部など
のすき間部分を塞ぐガラスシールを設けた構成としたこ
とを特徴としている。
【0008】そして、本発明に係わる炭素系構造物の実
施態様においては、請求項2に記載しているように、耐
酸化層は酸素原子1対陽イオン原子1(MO)から酸素
原子3対陽イオン原子2(M)までの比率の範囲
にある高融点酸化物、例えば、酸化アルミニウム(Al
)、ストロンチウムジルコネート(SrZr
)、イットリア(Y)などよりなるものとす
ることができる。
【0009】同じく、本発明に係わる炭素系構造物の実
施態様においては、請求項3に記載しているように、ガ
ラスシールはリン酸アルミニウムを主体とするものであ
るようになすことができ、請求項4に記載しているよう
に、ガラスシールはリン酸アルミニウムを主体とするも
のであってゾルゲル法で耐酸化層の上に含浸されてなる
ものとすることができる。
【0010】同じく、本発明に係わる炭素系構造物の実
施態様においては、請求項5に記載しているように、炭
素系構造物の基材は炭素/炭素複合材料よりなるものと
することができ、請求項6に記載しているように、基材
炭素/炭素複合材の表面に、イリジウム−炭素混合層よ
りなる熱応力緩和層(および/または界面密着強化層)
と、酸素の透過バリアー層であるイリジウム被膜と、耐
酸化層(および/または耐エロージョン層)である高融
点酸化物層と、ガラスシール層が順次外表面に向けて形
成されているものとすることができる。
【0011】
【発明の効果】本発明に係わる炭素系構造物は、請求項
1に記載しているように、耐酸化コーティングを施して
表面に耐酸化層(および/または耐エロージョン層)が
形成された炭素系構造物において、表面の耐酸化層(お
よび/または耐エロージョン層)に、高温に曝された際
に耐酸化層(および/または耐エロージョン層)に形成
された成長結晶粒界やピンホール部などのすき間部分を
塞ぐガラスシールを設けた構成としたから、例えば、2
000℃程度の高温酸化(大気等)雰囲気中に曝された
場合に耐酸化層(および/または耐エロージョン層)に
おいて結晶成長(粗大化)が始まり、最外層において結
晶粒界にピンホールが発生したときでも、表面エネルギ
ーの関係で結晶粒界やピンホール部にガラスシールが集
まってくることによって、結晶粒界やピンホールがガラ
スシールによってシールされるので、酸素が内部に侵入
しようとするのが阻止されることから、炭素系構造物が
酸素に接触して反応を生じることにより炭素系構造物が
消失するのが防止されて、炭素系構造物を高温の酸化
(大気等)雰囲気中に長時間保持することが可能になる
という耐酸化性の著しく優れたものにできる顕著な効果
がもたらされる。
【0012】そして、請求項2に記載しているように、
耐酸化層は酸素原子1対陽イオン原子1(MO)から酸
素原子3対陽イオン原子2(M)までの比率の範
囲にある高融点酸化物であるものとすることによって、
炭素系構造物の耐酸化性能の限界温度をより一層高める
ものとすることが可能であり、請求項3に記載している
ように、ガラスシールはリン酸アルミニウムを主体とす
るものであるようになすことによって、高融点酸化物の
結晶粒粗大化を防止することが可能であると共に高融点
酸化物が高温に曝されて結晶粒がたとえ粗大化してピン
ホールが形成されたときでも、このリン酸アルミニウム
は表面エネルギーの関係で粗大結晶粒界やピンホールに
集まってくることにより粗大結晶粒界やピンホールの部
分をシールするので、内部への酸素の侵入を阻止するこ
とが可能であるという著しく優れた効果がもたらされ
る。
【0013】そして、請求項4に記載しているように、
ガラスシールはリン酸アルミニウムを主体とするもので
あってゾルゲル法で耐酸化層の上に含浸されてなるもの
とすることによって、請求項3の構成による効果に加え
て、高融点酸化物の表面にリン酸アルミニウムを良好に
含浸させることが可能であるという著しく優れた効果が
もたらされる。
【0014】さらにまた、請求項5に記載しているよう
に、炭素系構造物の基材は炭素/炭素複合材料よりなる
ものとすることによって、耐熱性に優れそしてまた軽量
である炭素/炭素複合材の耐酸化性能をより一層向上さ
せることが可能であるという著しく優れた効果がもたら
される。
【0015】さらにまた、請求項6に記載しているよう
に、基材炭素/炭素複合材の表面に、イリジウム−炭素
混合層よりなる熱応力緩和層と、酸素の透過バリアー層
であるイリジウム被膜と、耐酸化・耐エロージョン層で
ある高融点酸化物層と、ガラスシール層が順次外表面に
向けて形成されているものとすることによって、耐熱
性,耐酸化性,耐エロージョン性に優れると共に層間の
密着強度が大で熱応力によって容易には剥離を生じがた
い耐高温特性に著しく優れた炭素系構造物を提供するこ
とが可能であるという著大なる効果がもたらされる。
【0016】
【実施例】本発明に係わる炭素系構造物の実施例につい
て比較例と共に説明するが、本発明はこの実施例にのみ
限定されるものでないことは言うまでもない。
【0017】実施例1 図1に示すように、この実施例1による炭素系構造物1
では、ピッチ粉末をマトリックス前躯体とする石油ピッ
チ系の高弾性繊維(縦糸2Aおよび横糸2B)による炭
素/炭素複合材2を基材とし、そのうえに、熱応力緩和
層および界面密着強化層として機能する30体積%イリ
ジウム−炭素混合層(30体積%Ir−C混合層)3を
形成し、さらにこのうえに、酸素の透過バリアー層とし
て機能するイリジウム被覆(Ir被覆)4を設け、さら
にこのうえに耐酸化・耐エロージョン層として機能する
SrZrO高融点酸化物層5を設け、さらにその上
に、ガラスシールとして機能するリン酸アルミニウム被
覆6をゾルゲル法によって高融点酸化物層5に含浸付着
させたものとした。
【0018】次いで、このようにして得た炭素系構造物
1において、後記する温度2000℃での大気中曝露試
験を行った後における試料の表面および断面を走査顕微
鏡によって観察したところ、それぞれ図2および図3に
示した結果であった。
【0019】この結果、温度2000℃での大気曝露試
験後においては、図2および図3に示すように、コーテ
ィング層ならびに基材である炭素/炭素複合材のいずれ
においてもほとんど問題は認められなかった。
【0020】また、後記する比較例2の図6および図7
と比較して明らかであるように、リン酸アルミニウムを
被覆することによって、高融点酸化物であるストロンチ
ウムジルコネート(SrZrO)の結晶粒粗大化挙動
も明らかに小さいことが認められた。これはリン酸アル
ミニウムがストロンチウムジルコネートの結晶微細化剤
としても働くためであると考えられた。
【0021】比較例1 図4に示すように、この比較例1による炭素系構造物1
1では、ピッチ粉末をマトリックス前躯体とする石油ピ
ッチ系の高弾性繊維(縦糸12Aおよび横糸12B)に
よる炭素/炭素複合材12を基材とし、表面の耐酸化コ
ーティングは施さないものとした。
【0022】比較例2 図5に示すように、この比較例2による炭素系構造物2
1では、ピッチ粉末をマトリックス前躯体とする石油ピ
ッチ系の高弾性繊維(縦糸22Aおよび横糸22B)に
よる炭素/炭素複合材22を基材とし、そのうえに、熱
応力緩和層および界面密着強化層として機能する30体
積%イリジウム−炭素混合層(30体積%Ir−C混合
層)23を形成し、さらにこのうえに、酸素の透過バリ
アー層として機能するイリジウム被覆(Ir被覆)24
を設け、さらにこのうえに耐酸化・耐エロージョン層と
して機能するSrZrO高融点酸化物層25を設けた
ものとした。
【0023】次いで、このようにして得た炭素系構造物
21において、後記する温度2000℃での大気中曝露
試験を行った後における試料の表面および断面を走査顕
微鏡によって観察したところ、それぞれ図6および図7
に示した結果であった。
【0024】この結果、温度2000℃での大気曝露試
験後においては、図6および図7に示すように、コーテ
ィング層は残存しているものの、基材である炭素/炭素
複合材はほとんど消失していた。
【0025】評価試験例 この評価試験では、図8に示すように、クセノンランプ
31、楕円形鏡面32、放射温度計33,34、試料3
5Sを支持する試料台35、電子天秤(熱天秤)36、
ガス供給器37、ガラス分析計38などをそなえたクセ
ノンランプ集光炉39を使用し、このクセンノンランプ
集光炉39内において、試料35Sを大気雰囲気中で2
000℃に曝し、電子天秤36によって重量減少の時間
経過による変化を測定した。この結果を図9に示す。
【0026】図9に示すように、本発明実施例の場合に
は、耐酸化層の最外層にガラスシール材としてリン酸ア
ルミニウム被膜を施すことによって、高融点酸化物層の
結晶粗大化を防止することができるだけでなく、結晶粒
界部やピンホール部にもリン酸アルミニウムが集積する
ため、結晶粒界部やピンホール部から侵入しようとする
酸素の拡散を防止することができるので、これによっ
て、重量減少がほとんどみられず、すこぶる優れた耐酸
化性を有し、大気中において2000℃域での使用が可
能である炭素系構造物の耐酸化コーティングを形成する
ことができ、例えば、火星突入型カプセルのノーズコー
ンなど酸化雰囲気中2000℃域での使用が可能である
炭素質構造材料を提供することが可能であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例による炭素系構造物の断面を
模型的に示す説明図である。
【図2】図1に示した炭素系構造物に対して大気中20
00℃での曝露試験を行ったのちの表面走査電子顕微鏡
観察結果を示す模写図である。
【図3】図1に示した炭素系構造物に対して大気中20
00℃での曝露試験を行ったのちの断面走査電子顕微鏡
観察結果を示す模写図である。
【図4】比較例1による炭素系構造物の断面を模型的に
示す説明図である。
【図5】比較例2による炭素系構造物の断面を模型的に
示す説明図である。
【図6】図5に示した炭素系構造物に対して大気中20
00℃での曝露試験を行ったのちの表面走査電子顕微鏡
観察結果を示す模写図である。
【図7】図5に示した炭素系構造物に対して大気中20
00℃での曝露試験を行ったのちの断面走査電子顕微鏡
観察結果を示す模写図である。
【図8】評価試験例で使用したクセノンランプ集光炉の
概略構成を示す説明図である。
【図9】評価試験により得た経過時間による重量減少率
の変化を例示するグラフである。
【符号の説明】
1 炭素系構造物 2 炭素/炭素複合材 3 イリジウム−炭素混合層(耐酸化層) 4 イリジウム被覆層(耐酸化層) 5 高融点酸化物層(耐酸化・耐エロージョン層) 6 リン酸アルミニウム被覆(ガラスシール)

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 耐酸化コーティングを施して表面に耐酸
    化層が形成された炭素系構造物において、表面の耐酸化
    層に、高温に曝された際に耐酸化層に形成された粗大結
    晶粒界やピンホール部などのすき間部分を塞ぐガラスシ
    ールを設けたことを特徴とする炭素系構造物。
  2. 【請求項2】 耐酸化層は酸素原子1対陽イオン原子1
    (MO)から酸素原子3対陽イオン原子2(M
    までの比率の範囲にある高融点酸化物である請求項1に
    記載の炭素系構造物。
  3. 【請求項3】 ガラスシールはリン酸アルミニウムを主
    体とするものである請求項1または2に記載の炭素系構
    造物。
  4. 【請求項4】 ガラスシールはリン酸アルミニウムを主
    体とするものであってゾルゲル法で耐酸化層の上に含浸
    されてなる請求項3に記載の炭素系構造物。
  5. 【請求項5】 炭素系構造物の基材は炭素/炭素複合材
    料よりなる請求項1ないし4のいずれかに記載の炭素系
    構造物。
  6. 【請求項6】 基材炭素/炭素複合材の表面に、イリジ
    ウム−炭素混合層よりなる熱応力緩和層と、酸素の透過
    バリアー層であるイリジウム被膜と、耐酸化・耐エロー
    ジョン層である高融点酸化物層と、ガラスシール層が順
    次外表面に向けて形成されている請求項5に記載の炭素
    系構造物。
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Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS4926308A (ja) * 1972-07-05 1974-03-08
JPH0543364A (ja) * 1991-08-12 1993-02-23 Kawasaki Steel Corp 耐酸化性炭素繊維強化炭素複合材料及びその製造方法
JPH0859377A (ja) * 1994-08-18 1996-03-05 Tokai Carbon Co Ltd 炭素繊維強化炭素複合材の耐酸化処理法

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