JPH09300008A - 鋼板の調質圧延用ロール - Google Patents

鋼板の調質圧延用ロール

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JPH09300008A
JPH09300008A JP8140802A JP14080296A JPH09300008A JP H09300008 A JPH09300008 A JP H09300008A JP 8140802 A JP8140802 A JP 8140802A JP 14080296 A JP14080296 A JP 14080296A JP H09300008 A JPH09300008 A JP H09300008A
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Japan
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roll
temper rolling
steel sheet
thermal spray
spray coating
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JP8140802A
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Osamu Kato
治 加藤
Kenichi Ozaki
健一 尾崎
Shinji Suzaki
真二 洲崎
Takenori Yoshimura
武憲 吉村
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Fujiko KK
Fujikoo KK
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Fujiko KK
Fujikoo KK
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ロール基材の周面に調質圧延の接触面圧に耐
え得る高い密着性と耐摩耗性を備えた溶射皮膜を形成す
ることにより耐久性の向上を図ることができる鋼板の調
質圧延用ロールを提供する。 【解決手段】 ロール基材11の周面11aに、液体燃
料を高圧空気又は空気中の酸素含有量より酸素含有量を
高めた高圧ガスで燃焼させる高速フレーム溶射法によ
り、硬質粒子を金属バインダー中に散在させた溶射皮膜
12が設けられている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鋼板を1%〜3%
程度の圧下率で軽圧延する調質圧延用ロールに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、鋼板製造の最終プロセスにおいて
は、プレス加工や塗装等を行う後工程での二次加工性を
改善するため、通常、鋼板の調質圧延(又はスキンパス
という)が行われている。この調質圧延では、通常、
鍛鋼ロールの周面にブラスティングや放電加工等の処理
を行って所定の表面粗さを付与した調質圧延用ロール
や、前記の調質圧延用ロールの周面に硬質クロムメ
ッキ処理を行って周面に硬質クロムメッキ層を設けた調
質圧延用ロール等が使用されている(例えば、「塑性と
加工(第32巻第363号(1991年)第458頁〜
第463頁:出石智也)」や、「塑性と加工(第36巻
第417号(1995年)第1116頁〜第1121
頁:山下道雄)」)。また、特開昭60−87910
号公報等には溶射技術の圧延ロールへの応用例が開示さ
れている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記調
質圧延工程では、調質圧延用ロールの鋼板と接触する周
面に100〜200kg/mm2 程度の接触面圧がかか
るほか、前記鋼板と周面との間の滑り摩擦に依る摩耗が
生じるため、周面にブラスティングや放電加工等を行っ
たままの前記調質圧延用ロールでは、すぐに周面が平
滑化してしまい、調質圧延中に鋼板がスリップして調質
圧延ができなくなる、又は鋼板の表面に所定の品質を付
与できなくなる等の問題が生じ、頻繁に調質圧延用ロー
ルを交換する必要がある。そこで、前記の調質圧延用
ロールでは、前記の調質圧延用ロールの周面に硬質ク
ロムメッキ層を設けて、前記の調質圧延用ロールの数
倍もの寿命延命化を図っているが、それでも、硬質クロ
ムメッキ層自体の耐摩耗性が低いため、数時間〜数日毎
に調質圧延用ロールを交換する必要がある。
【0004】そのような中、圧延ロールの表面に耐摩耗
性に優れるセラミックス等を溶射する技術が注目されて
いるが、十分な効果を挙げるには至っていない。これ
は、溶射皮膜自体の耐摩耗性は優れているが、溶射皮膜
のロール基材への密着性が低いため、溶射皮膜が短期間
で剥離するという問題があるからである。例えば、前記
の公報に溶射技術の圧延ロールへの応用例が開示され
ているが、この技術は溶射皮膜の耐摩耗性に主眼を置き
単に溶射技術を圧延ロールに適用したことを示すのみ
で、肝心の溶射皮膜の密着性については全く触れられて
いない。従って、かかるロールを実際の圧延に用いれば
たちどころに溶射皮膜の剥離が生じ、実用に耐えない。
何となれば詳細な説明の中で、その溶射皮膜の密着力は
JIS法に依ると7kg/mm2 以上あると述べられて
いるが、前記の通り、調質圧延用ロールが受ける接触面
圧は100kg/mm2 〜200kg/mm2 もあるか
らである。
【0005】本発明はこのような事情に鑑みてなされた
もので、ロール基材の周面に調質圧延の接触面圧に耐え
得る高い密着性と耐摩耗性を備えた溶射皮膜を形成する
ことにより耐久性の向上を図ることができる鋼板の調質
圧延用ロールを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記目的に沿う請求項1
記載の鋼板の調質圧延用ロールは、ロール基材の周面
に、液体燃料を高圧空気又は空気中の酸素含有量より酸
素含有量を高めた高圧ガスで燃焼させる高速フレーム溶
射法により、硬質粒子を金属バインダー中に散在させた
溶射皮膜が設けられている。請求項2記載の鋼板の調質
圧延用ロールは、請求項1記載の鋼板の調質圧延用ロー
ルにおいて、前記溶射皮膜の厚さが、20μm〜400
μmである。請求項3記載の鋼板の調質圧延用ロール
は、請求項1又は2記載の鋼板の調質圧延用ロールにお
いて、前記溶射皮膜中の硬質粒子が、WC、又はWCを
主成分としWC以外の炭化物及び/又は硼化物を前記硬
質粒子中0を越え30重量%以下含んでいる。請求項4
記載の鋼板の調質圧延用ロールは、請求項1〜3のいず
れか1項に記載の鋼板の調質圧延用ロールにおいて、前
記溶射皮膜中の金属バインダーが、Co、Ni、Crの
うち1種又は2種以上からなる。請求項5記載の鋼板の
調質圧延用ロールは、請求項1〜4のいずれか1項に記
載の鋼板の調質圧延用ロールにおいて、前記溶射皮膜中
の硬質粒子の含有量が、75重量%〜90重量%の範囲
であって、残部が前記金属バインダーである。
【0007】請求項6記載の鋼板の調質圧延用ロール
は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の鋼板の調質圧
延用ロールにおいて、前記高圧ガスが、窒素を主成分と
する燃焼に寄与しない気体と、酸素とからなる。請求項
7記載の鋼板の調質圧延用ロールは、請求項1〜6のい
ずれか1項に記載の鋼板の調質圧延用ロールにおいて、
前記高圧ガスのガス圧が0.5MPa〜1.5MPaで
ある。請求項8記載の鋼板の調質圧延用ロールは、請求
項1〜7のいずれか1項に記載の鋼板の調質圧延用ロー
ルにおいて、前記高圧ガスの酸素含有量が、21体積%
〜50体積%の範囲である。請求項9記載の鋼板の調質
圧延用ロールは、請求項1〜8のいずれか1項に記載の
鋼板の調質圧延用ロールにおいて、前記高速フレーム溶
射法により前記ロール基材の周面に溶射される粉末粒子
の平均粒径が10μm〜100μmである。請求項10
記載の鋼板の調質圧延用ロールは、請求項9記載の鋼板
の調質圧延用ロールにおいて、前記粉末粒子中に含まれ
る硬質粒子の平均粒径が1μm〜20μmである。
【0008】
【発明の実施の形態】続いて、添付した図面を参照しつ
つ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発
明の理解に供する。ここに、図1は本発明の一実施の形
態に係る鋼板の調質圧延用ロール10の製造方法の説明
図である。図1に示すように、本発明の一実施の形態に
係る鋼板の調質圧延用ロール10は、ロール基材11の
周面11aに形成されたWC−Co系サーメットからな
る溶射皮膜12を有するものである。
【0009】なお、前記溶射皮膜12は、前記周面11
a上に20μm〜400μm、好適には20μm〜20
0μmの厚さ(t)を持って形成されるのが望ましい。
これは、溶射皮膜12の厚さが20μm未満になると後
述する高速フレーム溶射法の原理上、溶射皮膜12の厚
さが不均一になる傾向が現れ、一方、溶射皮膜12の厚
さが200μmを越えると溶射時間が長くなる傾向が現
れ、非経済的となり、特に、400μmを越えるとその
傾向が著しくなるからである。
【0010】また、前記溶射皮膜12は、前記の如くW
C−Co系サーメットからなり、その硬質粒子である炭
化タングステン(WC)の含有量は、溶射皮膜12中、
75重量%〜90重量%の範囲とするのが望ましい。こ
れは、硬質粒子であるWCの含有量が溶射皮膜12中、
75重量%未満になると溶射皮膜12の耐摩耗性が低下
する傾向が現れ、一方、硬質粒子であるWCの含有量が
90重量%を越えると金属バインダーであるCoの含有
量が少なくなって(結合力が弱くなって)溶射皮膜12
が脆くなり、欠落し易くなる傾向が現れるからである。
【0011】これを金属バインダー側から説明すると、
前記溶射皮膜12の金属バインダーであるコバルト(C
o)の含有量は、前記硬質粒子であるWCの含有量に応
じて、25重量%〜10重量%の範囲となっているが、
金属バインダーであるCoの含有量が10重量%未満に
なると金属バインダーとしての役割が十分発揮されず、
前記と同様、溶射皮膜12が脆くなる傾向が現れ、一
方、金属バインダーであるCoの含有量が25重量%を
越えると体積%では溶射皮膜12中に占めるCoの割合
が35体積%以上となるので、硬質粒子である硬質のW
C量が少なくなり、前記と同様、溶射皮膜12の密着性
と耐摩耗性が不十分となる傾向が現れるからである(図
3参照)。
【0012】以上のように構成される本発明の一実施の
形態に係る鋼板の調質圧延用ロール10を製造する場合
は、まず、図1に示すように、溶射機13の燃焼ガス送
給口(図示せず)からケロシン等の液体燃料を吹き込み
ながら、溶射機13の粉末供給口(図示せず)から原材
料となる75重量%〜90重量%WC−25重量%〜1
0重量%Coの粉末粒子を供給すると共に、溶射機13
の高圧ガス供給口(図示せず)から高圧ガスを吹き込
む。これにより、溶射機13のノズルから吹き飛ばされ
た粉末粒子は、溶射機13のノズル先端から噴射された
燃焼ガスに乗って、該粉末粒子中の金属バインダーであ
るCoが全部又は一部融解しながら、高速でロール基材
11の周面11aに叩き付けられ、溶射皮膜12が形成
される。
【0013】なお、前記粉末粒子の平均粒径は10μm
〜100μm、好適には20μm〜90μmとするのが
望ましい。これは、粉末粒子の平均粒径が20μm未満
になると溶射中に粉末粒子が凝集して溶射機13の内壁
に付着してノズルを詰まらせ易くするほか、溶射機13
内で凝集し塊状となった粉末粒子は前記周面11a上で
均質な溶射皮膜12を形成することが困難になる傾向が
現れ、特に、10μm未満になるとその傾向が著しくな
るからである。一方、粉末粒子の平均粒径が90μmを
越えると粉末粒子の飛行速度が不十分となり、溶射皮膜
12のロール基材11への密着性や溶射皮膜12の緻密
性が低下する傾向が現れ、特に、100μmを越えると
その傾向が著しくなるからである。
【0014】また、前記粉末粒子中の硬質粒子の平均粒
径は、鋼板の調質圧延用ロール10の表面10aに要求
される表面粗さに依るが、1μm〜20μmとするのが
望ましい。鋼板の調質圧延用ロール10の表面10aに
要求される表面粗さは、通常、平均粗さで0.3μm〜
3μmの範囲にあるため、例えば、前記表面10aに
要求される平均粗さが0.3μmの場合には1μm〜5
μm、前記表面10aに要求される平均粗さが1.3
μmの場合には4μm〜11μm、前記表面10aに
要求される平均粗さが3μmの場合には10〜20μm
を選択するのが望ましい。
【0015】これは、例えば、前記表面10aに要求
される平均粗さが0.3μmの場合、粉末粒子中の硬質
粒子の平均粒径が1μm未満になると調質圧延に依って
鋼板の調質圧延用ロール10の表面10aの金属バイン
ダーが摩耗して硬質粒子が露出したとき硬質粒子の平均
粒径が小さ過ぎることによって前記平均粗さを満足する
ことができなくなる傾向が現れ、一方、粉末粒子中の硬
質粒子の平均粒径が5μmを越えると前記とは反対に硬
質粒子の平均粒径が大き過ぎることによって前記平均粗
さを満足することができなくなる傾向が現れるからであ
る。なお、他の、の場合も同様である。
【0016】また、前記高圧ガスは、空気中の酸素含有
量より酸素含有量を高めた、窒素を主成分とする燃焼に
寄与しない気体及び酸素を含むものであり、この場合、
高圧ガスの酸素含有量は、21体積%〜50体積%とす
るのが望ましい。これは、高圧ガスの酸素含有量を空気
中の酸素含有量より高めることで、液体燃料を効率よく
燃焼させて燃焼ガスを高温にすることが可能となるが、
高圧ガス中の酸素含有量が50体積%を越えると燃焼ガ
スの温度が高くなり過ぎて溶射皮膜の硬質粒子を形成す
るWCが融解し、溶射皮膜の材質劣化及び耐摩耗性低下
を招く虞れがあるからである。なお、前記気体は炭酸ガ
ス等を含むことが可能である。
【0017】また、前記高圧ガスの最適ガス圧は0.5
MPa〜1.5MPaとするのが望ましい。これは、高
圧ガスのガス圧が0.5MPa未満になると粉末粒子の
飛行速度が不十分となって、ロール基材11の周面11
aに対するアンカー効果や溶射皮膜12の緻密性が低下
し、溶射皮膜12の密着性や耐摩耗性が低下する傾向が
現れ、一方、高圧ガスのガス圧が1.5MPaを越える
とアンカー効果が飽和する傾向が現れ、非経済的となる
からである(図4参照)。従って、高圧ガスのガス圧を
前記の条件とすることにより、溶射皮膜12のロール基
材11への密着性を極めて高くでき、調質圧延用ロール
10が受ける接触面圧に十分耐え得ることが可能とな
る。
【0018】また、前記燃焼ガスの温度は1300℃〜
2500℃とするのが望ましい。これは、燃焼ガスの温
度が1300℃未満になると金属バインダーの融解が起
こり難くなって溶射皮膜12を形成するのが困難となる
傾向が現れ、一方、燃焼ガスの温度が2500℃を越え
ると粉末粒子又は硬質粒子の組成が変化して溶射皮膜1
2の膜質が劣化する傾向が現れるからである。更に、溶
射機13のノズル先端とロール基材11の周面11aと
の距離(L1)は100mm〜500mmとするのが望
ましい。これは、溶射機13のノズル先端とロール基材
11の周面11aの距離(L1 )が100mm未満にな
るとロール基材11の温度が上昇し過ぎる傾向が現れる
一方、溶射機13のノズル先端とロール基材11の周面
11aの距離(L1 )が500mmを越えると粉末粒子
の飛行速度が低下してロール基材11の周面11aに対
するアンカー効果が低下する傾向が現れるからである。
【0019】従って、本発明の一実施の形態に係る鋼板
の調質圧延用ロール10は、ロール基材11の周面11
aに対する密着性や、耐摩耗性に極めて優れた溶射皮膜
12を有するので、たとえ、ロール表面10aに100
〜200kg/mm2 程度の接触面圧がかかる調質圧延
に使用しても、溶射皮膜12の剥離等を抑制して鋼板の
調質圧延用ロール10の耐久性の向上及び長寿命化を図
ることが可能となる。
【0020】
【実施例】続いて、本発明の一実施の形態に係る鋼板の
調質圧延用ロールの溶射皮膜の密着性評価の結果につい
て図面を参照しながら説明する。ここに、図2(a)、
(b)は溶射皮膜の密着性評価のための転動疲労試験の
説明図、図3は膜厚80μmのWC−Co系サーメット
の溶射皮膜のCo量と溶射皮膜が剥離するまでの転動数
の関係を示す特性図、図4はガス圧と溶射皮膜が剥離す
るまでの転動数の関係を示す特性図である。
【0021】まず、図2に示すように、ロール基材の周
面に溶射皮膜を有する外径200mm、幅50mmの試
験片14と、ロール基材の周面に凸クラウンを有する相
手片15を、試験片14である調質圧延用ロールの周面
がスキンパス工程時に受ける応力状態に近い接触面圧P
(最大接触面圧180kg/mm2 )で接触させると共
に、一定回転速度1000rpmで回転させ、溶射皮膜
が剥離するまで転動する。この場合、試験片14と相手
片15のすべりは0とした。
【0022】なお、転動疲労試験を適用した理由は、J
IS H 8664に規定される引張試験等のような機
械材料試験方法を応用したものに比べ、実際の調質圧延
用ロールの周面に働く応力状態に近い力学的条件を再現
できると共に、転動疲労に依って溶射皮膜が剥離するま
での転動数という定量的な指標で評価できるため判定が
一目瞭然だからである。従って、この方法によれば、溶
射皮膜の材質を始め、溶射皮膜の膜厚、溶射条件等が溶
射皮膜の密着性に及ぼす影響を定量的に知ることができ
る。
【0023】この結果、図3から明らかなように、ロー
ル基材の周面に膜厚80μmのWC−Co系サーメット
の溶射皮膜を形成した試験片14で、金属バインダーで
あるCoの含有量を変化させて、溶射皮膜が剥離するま
での転動数を調べた結果、溶射皮膜中のCo含有量が1
0wt%未満では溶射皮膜の欠け落ちが見られた。ま
た、溶射皮膜中のCo含有量が10wt%〜約20wt
%にかけて溶射皮膜が剥離するまでの転動数が最高約1
40万回程度(Co含有量が約20wt%の場合)まで
上昇することが確認された。更に、溶射皮膜中のCo含
有量が約20wt%〜約30wt%にかけて前記転動数
が急激に低下し、溶射皮膜中のCo含有量が約30wt
%程度で前記転動数が約50万回程度しかないことが確
認された。この結果、溶射皮膜中の金属バインダーであ
るCoの含有量は、10重量〜25重量%とするのがよ
いことが確認された。
【0024】また、図4から明らかなように、ロール基
材の周面に膜厚150μmのWC−12Co系サーメッ
トの溶射皮膜を形成した試験片14で、高速フレーム溶
射法の高圧ガスのガス圧を変化させて、溶射皮膜が剥離
するまでの転動数を調べた結果、高圧ガスのガス圧が約
0.25MPa〜約0.8MPaにかけて溶射皮膜が剥
離するまでの転動数が急激に上昇し、それ以降約1.9
MPaまで緩やかではあるが上昇していることが確認さ
れた。この結果、経済性を考慮すると、高圧ガスの最適
ガス圧は、0.5〜1.5MPaとするのがよいことが
確認された。
【0025】次に、ロール基材の一例である直径(φ)
450mm×胴長(L)1800mmの鍛鋼ロールの周
面にそれぞれ高速フレーム溶射法により表1に示す条件
で溶射皮膜を形成し、試験片となる調質圧延用ロール
(実施例1、2比較例1〜3)を製作すると共に、さら
に、比較のため、前記と同様な鍛鋼ロールの表面に硬質
クロムメッキ層を形成した調質圧延用ロール(比較例
4)を製作した後、製鉄所冷延工場の4重調質圧延機に
組み込んで、実際に調質圧延を行った。その結果を表2
に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】表2から明らかなように、金属バインダー
であるCoの含有量を溶射皮膜中27重量%とした比較
例1では、硬質粒子であるWCの含有量が少なくて、鋼
板の板幅方向端部付近と当接する溶射皮膜(以下これを
鋼板端部付近の溶射皮膜という)の剥離が大きく、圧延
距離50km程度でロール交換が必要となった。また、
高速フレーム溶射法の高圧ガスのガス圧を0.45MP
aとした比較例2では、粉末粒子の飛行速度が不十分と
なって、ロール基材の周面に対する食い込み効果が小さ
くなって、前記と同様、鋼板端部付近の溶射皮膜の剥離
が認められ、圧延距離290km程度でロール交換が必
要となった。
【0029】更に、気体燃料を酸素で燃焼する高速フレ
ーム溶射法で粉末粒子を溶射した比較例3では、高圧ガ
ス中の酸素含有量が100体積%であるため、粉末粒子
の温度が高くなり過ぎて、溶射皮膜の膜質が劣化し、こ
の結果、鋼板端部付近の溶射皮膜の剥離が大きくなっ
て、圧延距離65km程度でロール交換が必要となっ
た。更に、ロール基材の周面にクロムメッキ層を設けた
比較例4では、クロムメッキ層の剥離は認められなかっ
たが、摩耗により圧延距離500km程度でロール交換
が必要となった。なお、溶射皮膜の剥離が鋼板端部付近
で生じるのは、鋼板端部付近の接触面圧が、鋼板中央の
接触面圧よりも大きいからである。
【0030】これに対し、実施例1、2では、1700
km、2300km程度の圧延距離を確保することがで
き、溶射皮膜の密着性及び耐摩耗性が比較例1〜4に比
べ優れており、本発明の鋼板の調質圧延用ロールの有効
性が確認された。なお、表2の総合評価は、従来の硬質
クロムメッキ層を設けた調質圧延用ロール、すなわち、
調質圧延用ロールとして使用できるが、耐摩耗性の点で
不十分であるものを基準「△」とし、鋼板の調質圧延用
ロールの周面の早期剥離がないだけでなく、摩耗劣化が
少なくて、長時間の調質圧延が可能で、調質圧延用ロー
ルとして非常に優れた性能を有しているものを「◎」、
溶射皮膜が早期に剥離して、調質用圧延ロールとして不
適当であるものを「×」として評価した。
【0031】以上、本発明の実施の形態を説明したが、
本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではな
く、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用
範囲である。例えば、本実施の形態では、溶射皮膜の硬
質粒子にWCを使用したが、これ以外に、例えば、WC
を主成分としWC以外の炭化物及び/又は硼化物を硬質
粒子中0を越え30重量%以下含むものを使用すること
も可能である。この場合、WCを主成分とする硬質粒子
中にWC以外の炭化物及び/又は硼化物を硬質粒子中最
大30重量%まで含有しても、溶射皮膜の密着性及び耐
摩耗性に大きな変化はないが、前記硬質粒子中のWC以
外の炭化物及び/又は硼化物の含有量が30重量%を越
えると金属バインダーの濡れ性の劣化や、溶射時の粉末
粒子の比重の減少によって、溶射皮膜の密着性も低下す
る傾向が現れる。このため、前記範囲とするのが望まし
い。
【0032】また、溶射皮膜の金属バインダーには、C
o、Ni、Crのうち1種又は2種以上からなるものを
適宜使用してよい。例えば、本実施の形態の如く、Co
はWCの金属バインダーとして、濡れ性等の点で最適で
ある。また、NiやCrは水等に対する耐蝕性がCoよ
り優れ、例えば、WC以外の炭化物及び/又は硼化物の
金属バインダーとしてはCoより適合することもある。
このため、用途に応じてCoの全部又は一部をNi及び
/又はCrに置き換えて使用してもよい。
【0033】更に、本実施の形態では、液体燃料を、空
気中の酸素含有量より酸素含有量を高めた、窒素を主成
分とする燃焼に寄与しない気体及び酸素を含む高圧ガス
で燃焼させたが、高圧空気で燃焼させてもよい。この場
合もガス圧や燃焼ガスの温度、ノズル先端とロール基材
周面の距離(L1 )は前記と同様である。
【0034】
【発明の効果】請求項1〜10記載の鋼板の調質圧延用
ロールは以上の説明からも明らかなように、ロール基材
の周面に、液体燃料を高圧空気等で燃焼させる高速フレ
ーム溶射法により、溶射皮膜が設けられているので、溶
射原料となる粉末粒子の飛行速度が高められ、前記周面
に形成される溶射皮膜のアンカー効果や溶射皮膜の緻密
性が高められることにより、溶射皮膜のロール基材から
の早期剥離を防止することができる。従って、従来の硬
質クロムメッキ層を有する調質圧延用ロールに比べて、
数倍以上の寿命延長(少なくとも半日から三週間程度ま
での延長)が可能となり、ロールの組み替え作業の低減
化、これに基づくロール保有数の低減化等、省力化及び
コストダウンを図ることができる。
【0035】特に、請求項2記載の鋼板の調質圧延用ロ
ールにおいては、溶射皮膜の厚さが、20μm〜400
μmの範囲内なので、膜厚が薄過ぎた場合の溶射皮膜の
耐摩耗性の低下や、膜質の均質性及び膜厚の均一性の低
下を防止できると共に、膜厚が厚過ぎた場合の溶射時間
の長時間化等による経済性の低下を防止できる。従っ
て、均質な溶射皮膜を均一な膜厚で作業時間の遅延化等
を防ぎながら容易に形成することが可能である。特に、
請求項3記載の鋼板の調質圧延用ロールにおいては、溶
射皮膜の硬質粒子がWC、又はWCを主成分とし、WC
以外の炭化物及び/又は硼化物を硬質粒子中0を越え3
0重量%以下含んでいるので、これら硬質な硬質粒子に
よる溶射皮膜の耐摩耗性の向上を図ることができる。
【0036】特に、請求項4記載の鋼板の調質圧延用ロ
ールにおいては、溶射皮膜の金属バインダーがCo、N
i、Crのうち1種又は2種以上からなるので、これら
濡れ性に優れる金属バインダーが高温でその一部又は全
部が融解されることにより、前記硬質粒子を強固に包み
込んで、硬質粒子の欠落を防止することができる。特
に、請求項5記載の鋼板の調質圧延用ロールにおいて
は、溶射皮膜中の硬質粒子含有量が、75重量%〜90
重量%の範囲であって、残部が前記金属バインダーであ
るので、硬質粒子含有量が低下した場合の耐摩耗性の低
化を防止できると共に、金属バインダー含有量が低下し
た場合の結合力低下による硬質粒子の脱落を防止するこ
とができる。
【0037】特に、請求項6記載の鋼板の調質圧延用ロ
ールにおいては、高圧ガスが、窒素を主成分とする燃焼
に寄与しない気体と、酸素とからなるので、溶射皮膜を
安価に製造することができる。特に、請求項7記載の鋼
板の調質圧延用ロールにおいては、高圧ガスのガス圧が
0.5MPa〜1.5MPaの範囲内なので、ロール基
材に対するアンカー効果や緻密性に優れた溶射皮膜を安
価に製造することができる。特に、請求項8記載の鋼板
の調質圧延用ロールにおいては、高圧ガスの酸素含有量
が、21体積%〜50体積%の範囲内なので、酸素含有
量が高過ぎることに起因する硬質粒子の融解による膜質
の劣化及び耐摩耗性低下を防止できる。
【0038】特に、請求項9記載の鋼板の調質圧延用ロ
ールにおいては、高速フレーム溶射法によりロール基材
の周面に溶射される粉末粒子の平均粒径が10μm〜1
00μmの範囲内なので、ロール基材の周面に均質かつ
密着性に優れた溶射皮膜を形成することができる。特
に、請求項10記載の鋼板の調質圧延用ロールにおいて
は、粉末粒子中に含まれる硬質粒子の平均粒径が1μm
〜20μmの範囲内なので、たとえ、鋼板の調質圧延用
ロールの周面が摩耗してもロール交換時まで要求される
表面粗さを保つことができ、良好な鋼板の調質圧延を行
うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る鋼板の調質圧延用
ロールの製造方法の説明図である。
【図2】(a)、(b)は溶射皮膜の密着性評価のため
の転動疲労試験の説明図である。
【図3】膜厚80μmのWC−Co系サーメットの溶射
皮膜のCo量と溶射皮膜が剥離するまでの転動数の関係
を示す特性図である。
【図4】ガス圧と溶射皮膜が剥離するまでの転動数の関
係を示す特性図である。
【符号の説明】
10 鋼板の調質圧延用ロール 10a ロール
表面 11 ロール基材 11a ロール
基材の周面 12 溶射皮膜 13 溶射機 14 試験片 15 相手片
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 洲崎 真二 福岡県北九州市戸畑区牧山新町4−31 株 式会社フジコー北九州工場内 (72)発明者 吉村 武憲 福岡県北九州市戸畑区牧山新町4−31 株 式会社フジコー北九州工場内

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ロール基材の周面に、液体燃料を高圧空
    気又は空気中の酸素含有量より酸素含有量を高めた高圧
    ガスで燃焼させる高速フレーム溶射法により、硬質粒子
    を金属バインダー中に散在させた溶射皮膜が設けられて
    いることを特徴とする鋼板の調質圧延用ロール。
  2. 【請求項2】 前記溶射皮膜の厚さが、20μm〜40
    0μmであることを特徴とする請求項1記載の鋼板の調
    質圧延用ロール。
  3. 【請求項3】 前記溶射皮膜中の硬質粒子が、WC、又
    はWCを主成分としWC以外の炭化物及び/又は硼化物
    を前記硬質粒子中0を越え30重量%以下含んでいるこ
    とを特徴とする請求項1又は2記載の鋼板の調質圧延用
    ロール。
  4. 【請求項4】 前記溶射皮膜中の金属バインダーが、C
    o、Ni、Crのうち1種又は2種以上からなることを
    特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の鋼板の
    調質圧延用ロール。
  5. 【請求項5】 前記溶射皮膜中の硬質粒子の含有量が、
    75重量%〜90重量%の範囲であって、残部が前記金
    属バインダーであることを特徴とする請求項1〜4のい
    ずれか1項に記載の鋼板の調質圧延用ロール。
  6. 【請求項6】 前記高圧ガスが、窒素を主成分とする燃
    焼に寄与しない気体と、酸素とからなることを特徴とす
    る請求項1〜5のいずれか1項に記載の鋼板の調質圧延
    用ロール。
  7. 【請求項7】 前記高圧ガスのガス圧が0.5MPa〜
    1.5MPaであることを特徴とする請求項1〜6のい
    ずれか1項に記載の鋼板の調質圧延用ロール。
  8. 【請求項8】 前記高圧ガスの酸素含有量が、21体積
    %〜50体積%の範囲であることを特徴とする請求項1
    〜7のいずれか1項に記載の鋼板の調質圧延用ロール。
  9. 【請求項9】 前記高速フレーム溶射法により前記ロー
    ル基材の周面に溶射される粉末粒子の平均粒径が10μ
    m〜100μmであることを特徴とする請求項1〜8の
    いずれか1項に記載の鋼板の調質圧延用ロール。
  10. 【請求項10】 前記粉末粒子中に含まれる硬質粒子の
    平均粒径が1μm〜20μmであることを特徴とする請
    求項9記載の鋼板の調質圧延用ロール。
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Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR20020016244A (ko) * 2000-08-25 2002-03-04 신현준 고속 냉연라인에 사용되는 롤의 초경용사 코팅방법
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