JPH09296551A - コンクリート壁の鉄筋組構造およびそれを使用したコンクリート壁の構築工法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 長い鉄筋材の使用を少なくして配筋作業を容
易に行うことができる鉄筋組構造と、この鉄筋組構造を
使用し、かつ軽量で断熱性能の優れた型枠ブロックを用
いて、壁の厚さを自由に設定し、一段づつ積み上げてい
くことができるコンクリート壁の構築工法を提供するこ
とにある。 【解決手段】 略同一水平面上に所定間隔離おきに配筋
される複数の幅筋１３を、該幅筋１３と直交する方向に
配置される各型枠部材１１に移動不能に固定するととも
に、上下方向に隣接する各２本の幅筋１３間あるいは上
下方向に隣接する各２本の布筋２９間に、両端部に係止
部２０を備えた所定長さの縦筋部材１３を掛け渡すよう
にしている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明はコンクリート壁の鉄
筋組構造およびそれを使用したコンクリート壁の構築工
法に関する。

【０００２】

【従来の技術】建築物の壁等を構築する壁構築法の一つ
として、矩形状の型枠ブロックを使用してこれを上下左
右方向に平面状に敷き並べるようにした、いわゆる型枠
ブロック造が一般に知られている。

【０００３】この種の型枠ブロック造における建築物の
壁の従来の一般的な工法の概要を図５及び図６に示す。
同図において、付番１はコンクリート製の基本型枠ブロ
ック（Ｈ形ブロック）で、この型枠ブロック１は、所定
間隔離間して互いに並行に配置された一対の矩形状のパ
ネル部２，３を備え、このパネル部２，３をその対向面
で板状のリブ部４で一体に連結して略Ｈ状に形成されて
いる。

【０００４】前記リブ部４は、その高さがパネル部２，
３の高さｈよりも低く設定されているとともに、長さ方
向の内側に互いに離間して配置されており、これによっ
て、この内部及び左右の突合わせ部に縦筋５の通る中空
部が、上部に横筋６の通る空間がそれぞれ形成されるよ
う構成されている。

【０００５】そして、前記型枠ブロック１を、内部に縦
筋５及び横筋６を配筋しながら上下左右に敷き並べつ
つ、前記空間及び中空部内に現場打ちコンクリート７を
打設し前記縦筋５及び横筋６を該コンクリート７内に埋
設することによって、建築物の壁を構築するようになっ
ている。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来の鉄筋組構造は、縦横に鉄筋材を配筋しつつ、これら
を結束線で連結し、コンクリートの硬化後、突出した鉄
筋端部を切断するなどの端部処理を行なっているため、
長い鉄筋材を多数用意しなければならかった。

【０００７】また、上記従来の壁構造では、そのいずれ
もがコンクリート製のブロックによって主に構成されて
おり、コンクリートは、一般に断熱性能に劣るため、建
物全体を断熱材で覆った断熱構造とする場合には、断熱
材を別途用意して、これを建屋全体を包囲する如く壁の
周囲に取付ける必要があった。また、コンクリート製の
型枠ブロックは、運搬や取扱いの便を図る上で、その大
きさが限定されているのが現状で、例えば、図６に示す
型枠ブロックの場合、その幅ｔは２００ｍｍに設定（規
格化）されているため、これより厚みのある壁あるいは
これより厚みの少ないコンクリート壁を構築することは
困難であった。

【０００８】本発明は上記実情に鑑み、長い鉄筋材の使
用を少なくして配筋作業を容易に行うことができる鉄筋
組構造と、この鉄筋組構造を使用し、かつ軽量で断熱性
能の優れた型枠ブロックを用いて、壁の厚さを自由に設
定することができるコンクリート壁の構築工法を提供す
ることにある。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明は、従来から使用
されている長尺物の長い縦筋の代わりに、両端部にフッ
ク部を備えた短い縦筋部材で上下方向に隣接する布筋間
あるいは幅筋間を連結するようにしている。

【００１０】また、この鉄筋組構造を用いたコンクリー
ト壁の構築工法では、発泡合成樹脂からなる基本型枠部
材をコンクリートの打設幅に相当する長さ分離間させて
互いに対面させて配置し、これらを一段づつ下方から上
方に向かって積み上げていくようにしている。

【００１１】

【発明の実施の形態】本発明の鉄筋組構造では、先ず、
所定長さに切断された幅筋を一組の基本型枠部材の内面
に移動不能に固定することが好ましい。また、フック付
の縦筋部材は、上下に隣接して配置される各２本の幅筋
あるいは上下に隣接して配置される各２本の布筋間に掛
け渡すことが好ましい。このように配筋していくことに
より、発泡合成樹脂からなる基本型枠部材を一段づつ積
み上げていくことが可能になる。

【００１２】

【実施例】以下、図面を参照しながら本発明の実施例に
ついて説明する。図１は本発明の一実施例により使用さ
れる基本型枠部材を示したもので、図２はこの基本型枠
部材に鉄筋を組み込んだ状態を示している。

【００１３】この基本型枠部材１１は、発泡合成樹脂か
らなるもので、左右すなわち横方向に突き合わせなが
ら、あるいは図２に示したように上下方向に突き合わせ
ながら配置される。

【００１４】また、図３に示したように、基本型枠部材
１１をコンクリートの打設幅だけ壁の厚さ方向に離して
互いに対面させて配置することにより、コンクリート壁
のコンクリート型枠１２が構成される。

【００１５】ここに、これら基本型枠部材１１を構成す
る樹脂発泡体は、例えば発泡ポリスチレン、発泡ポリウ
レタン、発泡ポリ塩化ビニルまたは発泡ポリオレフィン
等のように、合成樹脂を発泡させて形成したものであ
り、この発泡倍率は、例えば５〜１００倍、好ましく
は、２０〜８０倍、更に好ましくは、３０〜７０倍程度
である。

【００１６】このように、基本型枠部材１１を発泡合成
樹脂で形成することにより、この軽量化を図るととも
に、コンクリート型枠１２自体に高い断熱性能と吸音効
果を持たせ、更に腐蝕の防止とコストダウンを図ること
ができる。

【００１７】前記基本型枠部材１１の内面側すなわち打
設したコンクリートの外表面を形成する内面には、凸部
１４が所定間隔おきに一体成形されている。これによ
り、凸部１４間に上下方向に連通する中空部１５が形成
されている。

【００１８】前記凸部１４は、所定のピッチｐ₁ で配置
されているとともに、最外方に位置する両凸部１４は、
基本型枠部材１１の端面から前記ピッチｐ₁ の半分の距
離ａ（ｐ₁ ／２）だけ内方に配置され、これによって２
個の基本型枠部材１１を左右方向に突き合わせて配列し
た時、左右方向に隣接する基本型枠部分１２間にも所定
のピッチｐ₁ で中空部１５が構成されるようになってい
る。

【００１９】さらに、この凸部１４は、高さ方向の略中
央に形成されているので、これによって、凸部１４の上
方および下方に横方向に連通する空間１６が構成されて
いる。

【００２０】前記中空部１５は、信号配分のためのＥＰ
Ｓ（電気配管線スペース）、空調ダクトのためのＤＳ
（ダクトスペース）および給排水管路のためのＰＳ（配
管スペース）等として利用される。また、前記空間１６
は、前記中空部１５を互いに連通している。

【００２１】すなわち、基本型枠部材１１を上下左右方
向に順次平面状に積み上げて建築物の壁を構築する時、
この中空部１５、１６内に充填材としての現場打ちコン
クリート２１を打設して該コンクリート２１内に鉄筋材
を埋設するようになっている。

【００２２】また、前記基本型枠１１の外表面には、セ
メントモルタル２４等の外装材を塗ための下地溝２７が
形成されている。この下地溝２７は、略矩形状で並列的
に配列された凹陥部から構成されている。

【００２３】前記凸部１４には、所定長さに切断された
セパレータ兼用の幅筋１３を係止するために、図４に示
したように縦方向に切込み溝１７が形成されるととも
に、この切込み溝１７に連通して縦孔１８が形成されて
いる。この縦孔１８に、上記幅筋１３の端部が係止され
る。

【００２４】幅筋１３は、図３に示したように鉄筋の両
端部を折曲してコ字状に形成したもので、これにより、
凸部１４内に挿入される係止部２０、２０が具備され
る。このように両端部に係止部２０を備えた所定長さの
幅筋１３を対向する凸部１４間に掛け渡すことにより、
コンクリート型枠１２の間隔が設定されるとともに、コ
ンクリート壁内の補強がなされる。なお、壁の厚さを厚
くするには、幅筋１３の長さを長く設定すれば良く、そ
の長さは自由に設定することができる。

【００２５】凸部１４内に係止される幅筋１３の形状
は、図３に示したように両端部が屈曲したコ字状のもの
を例示することができるが、形状はコ字状に何ら限定さ
れず、その両端部が各々基礎型枠１１に固定できる形状
であれば、他の形状であっても良い。また、凸部１４に
形成した切込み溝１７および縦孔１８等も実施例に何ら
限定されず、幅筋１３を差し込むことにより、この幅筋
１３を移動させない形状であれば他の形状で良いことは
勿論である。

【００２６】また、本実施例では、上下方向に隣接して
配置される２本の幅筋１３、１３間を連結するために、
両端部に係止部を備え所定長さに切断された縦筋部材２
５が使用される。縦筋部材２５は通常の鉄筋棒を切断し
て、両端部に例えば略Ｕ字状のフック部２６、２６を具
備させたものである。また、その長さは上下方向に配置
される凸部１４間の長さ、すなわちコンクリート型枠１
２の縦方向の長さに相当する長さになっている。そし
て、このフック部２６により、上下の幅筋１３が係止さ
れる。

【００２７】このような縦筋部材２５は、２本の幅筋１
３間に差し渡すことの他、上下方向に隣接して配置され
る例えば２本の布筋２９間に差し渡しても良い。そし
て、コンクリート型枠１１を後述するように敷き並べた
後、図３に示したように、外表面に例えばセメントモル
タル２４等を塗布して外壁を構築するのであるが、この
ときセメントモルタル２４の一部が、ここに形成されて
いる下地溝２７内に入り込んで下方に流れ出ないように
保持される。

【００２８】また、この実施例では、基本型枠部材１１
を該型枠部材１１自体で相互に位置決めを行い多段に積
み重ねられるように、上下あるいは左右両端面が互いに
略相補的形状に形成されている。これにより、図２に示
したように上下方向、あるいは左右方向にも緊密に並べ
ていくことが可能になっている。

【００２９】以下、このような基本型枠部材１１を使用
してコンクリート壁を構築するときの作業手順について
説明する。先ず、多数の基本型枠部材１１と布筋用の長
い鉄筋材と、両端部にフック部を備えた所定長さの縦筋
部材２５と、両端部が折曲された所定長さの幅筋１３等
をそれぞれ適宜数、用意する。そして、建築物内方側に
配置される基本型枠部材１１と建築物外方側に配置され
る基本型枠部材１１とを、コンクリートの打設幅だけ離
間させて配置するとともに、これらに突き合わせながら
基本型枠部材１１をそれぞれ左右方向に並べていく。こ
の作業を行いながら、互いに対向する基本型枠部材１１
の凸部１４間に、幅筋１３を掛け渡し、対向する一対の
基本型枠部材１１間の間隔を一定に確保する。その後、
長尺ものの布筋２９を水平方向に差し渡して配置する。
そして、幅筋１３と布筋２９との交叉部の所定箇所を結
束線３０で結束する。

【００３０】このようにして、最初の一段目の基本型枠
部材１１の敷設が終了する。次いで、さらにこの上段に
もう一段他の基本型枠部材１１を嵌合させるのである
が、この場合も上記と同様に互いに対向する一対の基本
型枠部材１１、１１を下位の基本型枠部材１１、１１の
上部に嵌合させるとともに、幅筋１３を凸部１４間に差
し渡す。そして、一段目の基本型枠部材１１と２段目の
基本型枠部材１１とが互いに連結されて外れないよう
に、この２段目の幅筋１３と一段目の幅筋１３との間に
縦筋部材２５を掛け渡す。この場合、縦筋部材２５の一
方のフック部２６を、例えば今掛けようといている上位
の幅筋１３に引っ掛けておくとともに、その状態から縦
筋部材２５の他方側を下方に引き下げながら、この引き
下げられた他方のフック部２６を下段の幅筋１３に引っ
掛ける。あるいは、下方の幅筋１３を若干持ち上げてか
ら引っ掛けても良い。なお、このような縦筋部材２５の
両端部のフック部２６を、２本の幅筋１３間に簡単に引
っ掛けることができるように、フック部２６の開口をや
や大きくすることもできる。

【００３１】以下、同様にして、左右方向に所定間隔お
きに突設された他の凸部１４間に差し渡された幅筋１３
と、その下方に隣接して位置する幅筋１３間に縦筋部材
２５を掛け渡していく。

【００３２】なお、縦筋部材２５を掛け渡す位置は、一
つおきでも良く、図２に示したように全ての幅筋１３間
に配筋することもできる。上記のようにして、上位の基
本型枠１１と下位の基本型枠１１との間が互いに連結さ
れることになる。そして、この上にもう一段、さらにそ
の上にもう一段と基本型枠部材１１を嵌合させて壁の高
さを延ばしていけば、所定の高さの壁を構築することが
できる。なお、縦筋部材２５と、布筋２９との交叉部も
結束線３０で結束することが好ましい。また、上下に隣
接する幅筋１３間だけでなく、上下に隣接する布筋２９
間にも縦筋部材２５を掛け渡しても良い。

【００３３】このようにして、上下左右方向に基本型枠
部材１１を組み込んだ後、図３に示したように、中空部
１５および空間１６内にコンクリート２１を打設し、し
かる後、室内側および室外側の下地溝２７内にセメント
モルタル２４等の壁材を塗布し、さらに外装板あるいは
内装板を取り付けることによって建築物の壁を構築する
ことができる。

【００３４】これによって、通常の型枠ブロックと略同
じ要領で、しかも発泡合成樹脂からなるコンクリート型
枠１１は、軽量でそれ自体が高い断熱性能を有している
ため、かなり大型の壁用型枠を使用して、断熱構造の壁
を迅速かつ容易に構築することができる。

【００３５】なお、上記実施例では、コンクリート型枠
を２つの発泡合成樹脂からなる基本型枠部材１１、１１
で構成しているが、発泡合成樹脂に代えて木材からなる
型枠部材で構成しても良い。

【００３６】

【発明の効果】以上、説明したように、本発明に係るコ
ンクリート壁の鉄筋組構造およびそれを使用したコンク
リート壁の構築方法によれば、長尺ものの鉄筋材を大量
に使用しなくても、所定長さに切断し規格化した長さの
鉄筋部材を用いて、容易に配筋作業を行っていくことが
できる。また、この鉄筋組構造を使用したコンクリート
壁の構築方法では、型枠部材を下方から上方に向かって
一段づつ積み上げていくことができる。

【００３７】また、同じ材料を用いて同一形状の縦筋部
材および同一形状の幅筋が多数使用されるので、加工の
準備に手間がかかることもない。

【図面の簡単な説明】

【図１】図１は本発明の一実施例に係る基本型枠部材に
布筋の一方を係止した状態で示す斜視図である。

【図２】図は同実施例の基本型枠部材を上下方向に並べ
たときの斜視図である。

【図３】図３は同実施例の基本型枠部材にコンクリート
を打設した状態の横断面図である。

【図４】図４は同実施例の基本型枠部材の一部を拡大し
て示す斜視図である。

【図５】図５は従来の工法で使用されている型枠ブロッ
クを示す斜視図である。

【図６】図６は図５に示す型枠ブロックを使用して壁を
構築する時の状態を示す斜視図である。

【符号の説明】

１１ 基本型枠部材 １３ 幅筋 ２０ 係止部 ２５ 縦筋部材 ２９ 布筋 ３０ 結束線

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 略同一水平面上に所定間隔離おきに配筋
   される複数の幅筋を、該幅筋と直交する方向に配置され
   る各型枠部材に移動不能に固定するとともに、上下方向
   に隣接する各２本の幅筋間あるいは上下方向に隣接する
   各２本の布筋間に、両端部に係止部を備えた所定長さの
   縦筋部材を掛け渡し、さらに、前記幅筋、前記布筋およ
   びこれらに直交する縦筋部材の交叉部を、結束線で連結
   するようにしたことを特徴とするコンクリート壁の鉄筋
   組構造。
2. 【請求項２】 発泡合成樹脂からなる略矩形状の基本型
   枠部材の端部を突き合わせつつ上下あるいは左右方向に
   並べて所定間隔はなして互いに対面させることにより、
   コンクリート壁のコンクリート型枠を構成するととも
   に、内部に縦筋、幅筋、布筋等の鉄筋材を配設してコン
   クリート壁を構築するようにしたコンクリート壁の構築
   工法であって、 少なくとも前記幅筋の両端部を前記各基本型枠部材に移
   動不能に固定するとともに、上下方向に隣接する前記２
   本の幅筋間あるいは上下方向に隣接する前記２本の布筋
   間に、両端部に係止部を備えた所定長さの縦筋部材を掛
   け渡すことにより、前記基本型枠部材を下方から上方に
   向かって一段づつ積み上げ得るようにしたことを特徴と
   するコンクリート壁の構築工法。