JPH09291342A - 鋭敏化度の小さいFe−Cr合金 - Google Patents
鋭敏化度の小さいFe−Cr合金Info
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- JPH09291342A JPH09291342A JP10728896A JP10728896A JPH09291342A JP H09291342 A JPH09291342 A JP H09291342A JP 10728896 A JP10728896 A JP 10728896A JP 10728896 A JP10728896 A JP 10728896A JP H09291342 A JPH09291342 A JP H09291342A
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 C,Nの低減やTi、Nb、Moなどの元素添加
に依存することなく、安価に鋭敏化を抑制したFe−Cr合
金を提供する。 【解決手段】C:0.1 wt%以下、Si:1.0 wt%以下、M
n:1.0 wt%以下、Cr:5〜60wt%、Al:0.2 wt%以
下、N:0.10wt%以下を含み、SとHの量が、S+16H
≦0.013 wt%を満たして含有し、残部はFeおよび不可避
的不純物からなり、結晶粒界に存在する析出物の形状と
Cr欠乏領域の巾とからなるパラメータDCr・(d1/d2 )
1/2 を100 nm以下に制御する。ただし、 DCr:楕円近似した析出物の長軸と短軸の交点から、粒
界に垂直な方向の楕円軸の方向に測定したCr欠乏領域の
巾(nm) d1:楕円近似した析出物の長軸方向長さ d2:楕円近似した析出物の短軸方向長さ
に依存することなく、安価に鋭敏化を抑制したFe−Cr合
金を提供する。 【解決手段】C:0.1 wt%以下、Si:1.0 wt%以下、M
n:1.0 wt%以下、Cr:5〜60wt%、Al:0.2 wt%以
下、N:0.10wt%以下を含み、SとHの量が、S+16H
≦0.013 wt%を満たして含有し、残部はFeおよび不可避
的不純物からなり、結晶粒界に存在する析出物の形状と
Cr欠乏領域の巾とからなるパラメータDCr・(d1/d2 )
1/2 を100 nm以下に制御する。ただし、 DCr:楕円近似した析出物の長軸と短軸の交点から、粒
界に垂直な方向の楕円軸の方向に測定したCr欠乏領域の
巾(nm) d1:楕円近似した析出物の長軸方向長さ d2:楕円近似した析出物の短軸方向長さ
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、結晶粒界の鋭敏化
度が小さく、特に湾岸環境など厳しい腐食環境において
も、優れた耐粒界腐食性を有するFe−Cr合金。
度が小さく、特に湾岸環境など厳しい腐食環境において
も、優れた耐粒界腐食性を有するFe−Cr合金。
【0002】
【従来の技術】フェライト系ステンレス鋼に代表される
Fe−Cr合金は耐候性、耐食性に優れるうえ、オーステナ
イト系ステンレス鋼に比べて安価なことから、湾岸地域
など厳しい腐食環境における外装材、屋根等の使途に広
く用いられている。しかしながら、Fe−Cr合金は、溶接
などのように、高温加熱後冷却した場合、あるいは、そ
の後さらに500 〜700 ℃加熱した場合に、炭窒化物など
の析出物が結晶粒界に析出し、その周辺部にはCr欠乏領
域が発生し、鋭敏化を起こすことが知られている。した
がって、Fe−Cr合金といえども、この鋭敏化が著しくな
ると、塩素濃度の高い湾岸地域などで使用する際には、
粒界腐食を招くという問題がある。
Fe−Cr合金は耐候性、耐食性に優れるうえ、オーステナ
イト系ステンレス鋼に比べて安価なことから、湾岸地域
など厳しい腐食環境における外装材、屋根等の使途に広
く用いられている。しかしながら、Fe−Cr合金は、溶接
などのように、高温加熱後冷却した場合、あるいは、そ
の後さらに500 〜700 ℃加熱した場合に、炭窒化物など
の析出物が結晶粒界に析出し、その周辺部にはCr欠乏領
域が発生し、鋭敏化を起こすことが知られている。した
がって、Fe−Cr合金といえども、この鋭敏化が著しくな
ると、塩素濃度の高い湾岸地域などで使用する際には、
粒界腐食を招くという問題がある。
【0003】ところで、Fe−Cr合金の鋭敏化を防止する
方法としては、従来から一般に、C, Nを低減し、Nb,
Ti等の安定化元素を添加する方法が採用れている。しか
しながら、C,Nの低減化は、溶鋼精錬時間の延長を必
要とし、精錬炉の耐火レンガの損傷を早め、コストアッ
プを招く。またTi, Nb等の添加も、当然ながら、原料コ
ストの上昇をまねく。なお、特開昭62−267450号公報に
は、Ti, Nbの代わりに、Moを添加することにより、耐粒
界腐食性を改善する技術が開示されている。しかし、Mo
添加による方法でも、Ti, Nb添加による場合と同様に、
コストアップの要因となることに変わりはない。
方法としては、従来から一般に、C, Nを低減し、Nb,
Ti等の安定化元素を添加する方法が採用れている。しか
しながら、C,Nの低減化は、溶鋼精錬時間の延長を必
要とし、精錬炉の耐火レンガの損傷を早め、コストアッ
プを招く。またTi, Nb等の添加も、当然ながら、原料コ
ストの上昇をまねく。なお、特開昭62−267450号公報に
は、Ti, Nbの代わりに、Moを添加することにより、耐粒
界腐食性を改善する技術が開示されている。しかし、Mo
添加による方法でも、Ti, Nb添加による場合と同様に、
コストアップの要因となることに変わりはない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】以上述べたように、Fe
−Cr合金の鋭敏化を抑制するための従来技術は、C,N
の低減化、あるいはTi、Nb、Moなどの元素添加などによ
る方法であり、いずれもコストの上から不利になるとい
う問題があった。そこで、本発明の目的は、従来技術が
抱えていた上記問題を解決することにあり、C,Nの特
別な低減やTi、Nb、Moなどの元素添加に依存することな
く、安価に鋭敏化を抑制したFe−Cr合金を提供すること
にある。
−Cr合金の鋭敏化を抑制するための従来技術は、C,N
の低減化、あるいはTi、Nb、Moなどの元素添加などによ
る方法であり、いずれもコストの上から不利になるとい
う問題があった。そこで、本発明の目的は、従来技術が
抱えていた上記問題を解決することにあり、C,Nの特
別な低減やTi、Nb、Moなどの元素添加に依存することな
く、安価に鋭敏化を抑制したFe−Cr合金を提供すること
にある。
【0005】
【課題を解決するための手段】発明者らは、上記の課題
を解決するために、特にFe−Cr合金の鋭敏化と粒界にお
ける炭窒化物などの析出挙動との関連に着目して鋭意研
究したところ、析出物の析出形態と鋭敏化度との間に深
い関係があることを知見した。またさらに、S,Hをあ
る関係の下に低減することにより、一層鋭敏化度を低下
させ、耐粒界腐食性を向上させることが可能であること
を知見した。本発明は、上記知見に基づいて完成された
ものであり、その要旨構成は次のとおりである。
を解決するために、特にFe−Cr合金の鋭敏化と粒界にお
ける炭窒化物などの析出挙動との関連に着目して鋭意研
究したところ、析出物の析出形態と鋭敏化度との間に深
い関係があることを知見した。またさらに、S,Hをあ
る関係の下に低減することにより、一層鋭敏化度を低下
させ、耐粒界腐食性を向上させることが可能であること
を知見した。本発明は、上記知見に基づいて完成された
ものであり、その要旨構成は次のとおりである。
【0006】(1) C:0.1 wt%以下、Si:1.0 wt%以
下、Mn:1.0 wt%以下、Cr:5〜60wt%、Al:0.2 wt%
以下、N:0.10wt%以下を含み、SとHの量が、S+16
H≦0.013 wt%を満たして含有し、残部はFeおよび不可
避的不純物からなり、結晶粒界に存在する析出物の形状
とCr欠乏領域の巾とが下記関係式を満足することを特徴
とする鋭敏化度の小さいFe−Cr合金。 記 DCr・( d1/d2 )1/2 ≦100 ただし、 DCr:楕円近似した析出物の長軸と短軸の交点から、粒
界に垂直な方向の楕円軸の方向に測定したCr欠乏領域の
巾(nm) d1:楕円近似した析出物の長軸方向長さ d2:楕円近似した析出物の短軸方向長さ
下、Mn:1.0 wt%以下、Cr:5〜60wt%、Al:0.2 wt%
以下、N:0.10wt%以下を含み、SとHの量が、S+16
H≦0.013 wt%を満たして含有し、残部はFeおよび不可
避的不純物からなり、結晶粒界に存在する析出物の形状
とCr欠乏領域の巾とが下記関係式を満足することを特徴
とする鋭敏化度の小さいFe−Cr合金。 記 DCr・( d1/d2 )1/2 ≦100 ただし、 DCr:楕円近似した析出物の長軸と短軸の交点から、粒
界に垂直な方向の楕円軸の方向に測定したCr欠乏領域の
巾(nm) d1:楕円近似した析出物の長軸方向長さ d2:楕円近似した析出物の短軸方向長さ
【0007】(2) C:0.1 wt%以下、Si:1.0 wt%以
下、Mn:1.0 wt%以下、Cr:5〜60wt%、Al:0.2 wt%
以下、N:0.10wt%以下を含み、かつ、Ti:0.5 wt%以
下、Nb:0.5 wt%以下、B:0.005 wt%以下およびMo:
5wt%以下から選ばれる1種または2種以上を含有し、
さらに、SとHの量が、S+16H≦0.013 wt%を満たし
て含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、結
晶粒界に存在する析出物の形状とCr欠乏領域の巾とが下
記関係式を満足することを特徴とする鋭敏化度の小さい
Fe−Cr合金。 記 DCr・( d1/d2 )1/2 ≦100 ただし、 DCr:楕円近似した析出物の長軸と短軸の交点から、粒
界に垂直な方向の楕円軸の方向に測定したCr欠乏領域の
巾(nm) d1:楕円近似した析出物の長軸方向長さ d2:楕円近似した析出物の短軸方向長さ
下、Mn:1.0 wt%以下、Cr:5〜60wt%、Al:0.2 wt%
以下、N:0.10wt%以下を含み、かつ、Ti:0.5 wt%以
下、Nb:0.5 wt%以下、B:0.005 wt%以下およびMo:
5wt%以下から選ばれる1種または2種以上を含有し、
さらに、SとHの量が、S+16H≦0.013 wt%を満たし
て含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、結
晶粒界に存在する析出物の形状とCr欠乏領域の巾とが下
記関係式を満足することを特徴とする鋭敏化度の小さい
Fe−Cr合金。 記 DCr・( d1/d2 )1/2 ≦100 ただし、 DCr:楕円近似した析出物の長軸と短軸の交点から、粒
界に垂直な方向の楕円軸の方向に測定したCr欠乏領域の
巾(nm) d1:楕円近似した析出物の長軸方向長さ d2:楕円近似した析出物の短軸方向長さ
【0008】
【発明の実施の形態】発明者らは、Fe−Cr合金の鋭敏化
に及ぼす要因として、析出物形状とCr欠乏領域とからな
るパラメータである、DCr・( d1/d2 )1/2 なる概念を
導入し、このパラメータと鋭敏化との間の関係を調査し
た。なお、析出物としては、炭化物、窒化物、酸化物、
硫化物などが含まれる。図1は、Fe−Cr合金の鋭敏化度
(Ir/Ia)に及ぼすDCr・( d1/d2 )1/2 の影響を示す
ものである。この鋭敏化度Ir/Iaは、JIS G0580 に基づ
く動電気化学的再活性化率(EPR)であり、鋭敏化度
の指標として一般的に用いられているものである。図1
に示すように、両者の間には良い相関があることがわか
った。
に及ぼす要因として、析出物形状とCr欠乏領域とからな
るパラメータである、DCr・( d1/d2 )1/2 なる概念を
導入し、このパラメータと鋭敏化との間の関係を調査し
た。なお、析出物としては、炭化物、窒化物、酸化物、
硫化物などが含まれる。図1は、Fe−Cr合金の鋭敏化度
(Ir/Ia)に及ぼすDCr・( d1/d2 )1/2 の影響を示す
ものである。この鋭敏化度Ir/Iaは、JIS G0580 に基づ
く動電気化学的再活性化率(EPR)であり、鋭敏化度
の指標として一般的に用いられているものである。図1
に示すように、両者の間には良い相関があることがわか
った。
【0009】ここで、本発明で取り入れた上記概念のパ
ラメータ中の各変数の定義について説明する。図2は、
粒界に析出した析出物を摸式的に示したものであり、析
出物は、通常このようにその長手方向が粒界に一致する
ように析出する。この析出物を図中の点線のように楕円
近似し、楕円近似した析出物の長軸方向長さをd1、楕円
近似した析出物の短軸方向長さをd2とする。また、図3
は、図2における長軸と短軸との交点から、粒内に向か
う方向、具体的には、粒界に垂直な方向である楕円軸の
方向(一般には、短軸方向)における、Cr濃度の変化を
摸式的に示したものである。このように、Cr濃度は、粒
界では極めて高く、粒界から遠ざかるに従っていったん
低下するが、さらに遠ざかるとCr濃度は増加し母材の濃
度と一致するようになる。そこで、本発明では、このCr
濃度曲線において、母材のCr濃度よりも0.5 wt%以上低
い領域をCr欠乏領域と定め、その巾を「Cr欠乏領域の
巾」DCrと定義する。すなわち、このCr欠乏領域の巾
は、粒界に垂直な方向に相当する楕円軸の方向(一般に
は、短軸方向)に測定したCr欠乏領域の巾である。
ラメータ中の各変数の定義について説明する。図2は、
粒界に析出した析出物を摸式的に示したものであり、析
出物は、通常このようにその長手方向が粒界に一致する
ように析出する。この析出物を図中の点線のように楕円
近似し、楕円近似した析出物の長軸方向長さをd1、楕円
近似した析出物の短軸方向長さをd2とする。また、図3
は、図2における長軸と短軸との交点から、粒内に向か
う方向、具体的には、粒界に垂直な方向である楕円軸の
方向(一般には、短軸方向)における、Cr濃度の変化を
摸式的に示したものである。このように、Cr濃度は、粒
界では極めて高く、粒界から遠ざかるに従っていったん
低下するが、さらに遠ざかるとCr濃度は増加し母材の濃
度と一致するようになる。そこで、本発明では、このCr
濃度曲線において、母材のCr濃度よりも0.5 wt%以上低
い領域をCr欠乏領域と定め、その巾を「Cr欠乏領域の
巾」DCrと定義する。すなわち、このCr欠乏領域の巾
は、粒界に垂直な方向に相当する楕円軸の方向(一般に
は、短軸方向)に測定したCr欠乏領域の巾である。
【0010】このDCrの意味を端的に言い換えれば、粒
界からのCr欠乏度の強さといえる。従って、DCrの大き
いもの程、鋭敏化度が大きいものと一般に理解しやすい
が、実際には、これでは不十分であることが分かった。
すなわち、元素の拡散係数は、一般には結晶粒内よりも
粒界の方が高いため、Fe−Cr合金の鋭敏化度は、粒界の
方がより高いと考えられる。このとき考慮すべき点は、
結晶粒界における析出物の形態であり、粒界垂直方向よ
りも粒界方向に成長した析出物ほど、粒内でのCr欠乏の
程度も大で、結果としてCr合金の鋭敏化度を高めるもの
と考えた。このような観点から、DCr・( d1/d2 )1/2
をパラメータとして採用したところ、鋭敏化度Ir/Iaと
の間に、上述したような良好な相関があることがわかっ
たのである。
界からのCr欠乏度の強さといえる。従って、DCrの大き
いもの程、鋭敏化度が大きいものと一般に理解しやすい
が、実際には、これでは不十分であることが分かった。
すなわち、元素の拡散係数は、一般には結晶粒内よりも
粒界の方が高いため、Fe−Cr合金の鋭敏化度は、粒界の
方がより高いと考えられる。このとき考慮すべき点は、
結晶粒界における析出物の形態であり、粒界垂直方向よ
りも粒界方向に成長した析出物ほど、粒内でのCr欠乏の
程度も大で、結果としてCr合金の鋭敏化度を高めるもの
と考えた。このような観点から、DCr・( d1/d2 )1/2
をパラメータとして採用したところ、鋭敏化度Ir/Iaと
の間に、上述したような良好な相関があることがわかっ
たのである。
【0011】一方、鋭敏化度Ir/Iaは、湾岸環境曝露試
験における粒界腐食の有無と良好な相関があり、Ir/Ia
が35%以下であれば粒界腐食を生じない。したがって、
鋭敏化度Ir/Ia:35%以下を満たし、優れた耐粒界腐食
性のCr合金を得るためには、図1から、DCr・( d1/d2
)1/2 は100nm 以下とすることが必要である。なお、好
ましいDCr・( d1/d2 )1/2 は80nm以下である。
験における粒界腐食の有無と良好な相関があり、Ir/Ia
が35%以下であれば粒界腐食を生じない。したがって、
鋭敏化度Ir/Ia:35%以下を満たし、優れた耐粒界腐食
性のCr合金を得るためには、図1から、DCr・( d1/d2
)1/2 は100nm 以下とすることが必要である。なお、好
ましいDCr・( d1/d2 )1/2 は80nm以下である。
【0012】DCr・( d1/d2 )1/2 を上記の値以下に制
御するためには、DCr、d1およびd2をそれぞれ制御する
必要がある。本発明のd1, d2, DCrは実施例に示すごと
く、それぞれの成分に応じて適切な加熱 (溶接も含む)
および冷却を行うことによって得ることができる。
御するためには、DCr、d1およびd2をそれぞれ制御する
必要がある。本発明のd1, d2, DCrは実施例に示すごと
く、それぞれの成分に応じて適切な加熱 (溶接も含む)
および冷却を行うことによって得ることができる。
【0013】次に、成分組成について説明する。 C:0.1 wt%以下 Cは、靱性および伸び特性を低下させる。とくに 0.1wt
%を超えると影響が顕著であるので、0.1wt%以下、好
ましくは0.03wt%以下とする。
%を超えると影響が顕著であるので、0.1wt%以下、好
ましくは0.03wt%以下とする。
【0014】Si:1.0 wt%以下 Siは、脱酸に有効であるが、過剰添加は冷間加工性の低
下を招く。したがって、1.0 wt%以下、好ましくは0.5
wt%以下とする。
下を招く。したがって、1.0 wt%以下、好ましくは0.5
wt%以下とする。
【0015】Mn:1.0 wt%以下 Mnは、鋼中Sを析出固定し、熱間圧延性を保つのに有効
だが、過剰添加は冷間加工性の低下を招く。したがっ
て、1.0 wt%以下、好ましくは0.5 wt%以下とする。
だが、過剰添加は冷間加工性の低下を招く。したがっ
て、1.0 wt%以下、好ましくは0.5 wt%以下とする。
【0016】Cr:5〜60wt% Crは、耐候性、耐食性を高めるのに有効な元素である。
その効果を得るには、5wt%以上の添加が必要である
が、60wt%を超えて含有すると効果が飽和し、経済的に
も不利となる。したがって、Cr含有量は5〜60wt%、好
ましくは10wt%〜40wt%の範囲とする。
その効果を得るには、5wt%以上の添加が必要である
が、60wt%を超えて含有すると効果が飽和し、経済的に
も不利となる。したがって、Cr含有量は5〜60wt%、好
ましくは10wt%〜40wt%の範囲とする。
【0017】Al:0.2 wt%以下 Alは、脱酸のために有効であるが、過剰添加はAl系介在
物の発生により表面疵を招くので、0.2 wt%以下、好ま
しくは0.1 wt%以下とする。
物の発生により表面疵を招くので、0.2 wt%以下、好ま
しくは0.1 wt%以下とする。
【0018】N:0.10wt%以下 Nは、靱性に悪影響を及ぼすので0.10wt%以下の添加と
する。好ましくは0.03wt%以下とする。
する。好ましくは0.03wt%以下とする。
【0019】S+16H≦0.013 SとHは、ともに粒界偏析により粒界腐食を助長する。
とくにこの粒界腐食に対し、S+16Hをパラメータとす
ると良好な関係が得られた。とくに、S+16Hが0.013 w
t%を超えと粒界腐食が顕れるようになるので、S+16H
は0.013 wt%以下、好ましくは0.010 wt%以下とす
る。
とくにこの粒界腐食に対し、S+16Hをパラメータとす
ると良好な関係が得られた。とくに、S+16Hが0.013 w
t%を超えと粒界腐食が顕れるようになるので、S+16H
は0.013 wt%以下、好ましくは0.010 wt%以下とす
る。
【0020】Ti:0.5 wt%以下 Tiは、加工性向上のために有用な元素であり、必要に応
じて、0.5 wt%以下の範囲で添加する。
じて、0.5 wt%以下の範囲で添加する。
【0021】Nb:0.5 wt%以下 Nbは、加工性向上のために有用な元素であり、必要に応
じて、0.5 wt%以下の範囲で添加する。
じて、0.5 wt%以下の範囲で添加する。
【0022】B:0.005 wt%以下 Bは、耐二次加工脆性を向上させる効果があり、必要に
応じて、0.005 wt%以下の範囲で添加する。
応じて、0.005 wt%以下の範囲で添加する。
【0023】Mo:5wt%以下 Moは、耐食性を向上のために有用な元素であり、必要に
応じて、5wt%以下の範囲で添加する。なお、本発明効
果は、冷延板, 熱延板どちらでも有効であり、その効果
は表面仕上げ (2B,BA, ヘアライン, 研磨など) に
よっても変わらず発揮される。
応じて、5wt%以下の範囲で添加する。なお、本発明効
果は、冷延板, 熱延板どちらでも有効であり、その効果
は表面仕上げ (2B,BA, ヘアライン, 研磨など) に
よっても変わらず発揮される。
【0024】
【実施例】表1に示す成分組成からなる板厚1mmの冷
延板に、表1に示す種々の熱履歴を与えた。なお、表1
中で、ACは空冷、WQは水冷、溶接はTIG溶接部を
それぞれ表している。得られたこれらを供試材として、
EPR法により鋭敏化度(Ir/Ia)を測定した。その条
件は、0.5 mol/l H2SO4 +0.01 mol/l KSCN,電位送り 1
00 mV/min 、不動態化 500mV −2min (Ag/AgCl) とし
た。また、これらの供試材について、それぞれ30点づつ
の粒界析出物の電子顕微鏡観察を行い、画像処理によ
り、これらの析出物を楕円近似した場合の楕円の長軸d
1 (粒界方向)、短軸d2 (粒界垂直方向)の長さをそ
れぞれ測定した。さらに、同様な測定点について、短軸
と長軸の交点から粒界垂直方向に5nmの間隔でEDXに
てCr濃度を測定した。そしてCr濃度の測定値から、母材
より0.5wt%以上Cr量が少ない領域をCr欠乏領域DCrと
して求めた。このようにして測定したd1 、d2 および
DCrからそれぞれの平均値を求め、DCr・( d1/d2 )
1/2を算出した。以上の結果を、表2にまとめて示す。
延板に、表1に示す種々の熱履歴を与えた。なお、表1
中で、ACは空冷、WQは水冷、溶接はTIG溶接部を
それぞれ表している。得られたこれらを供試材として、
EPR法により鋭敏化度(Ir/Ia)を測定した。その条
件は、0.5 mol/l H2SO4 +0.01 mol/l KSCN,電位送り 1
00 mV/min 、不動態化 500mV −2min (Ag/AgCl) とし
た。また、これらの供試材について、それぞれ30点づつ
の粒界析出物の電子顕微鏡観察を行い、画像処理によ
り、これらの析出物を楕円近似した場合の楕円の長軸d
1 (粒界方向)、短軸d2 (粒界垂直方向)の長さをそ
れぞれ測定した。さらに、同様な測定点について、短軸
と長軸の交点から粒界垂直方向に5nmの間隔でEDXに
てCr濃度を測定した。そしてCr濃度の測定値から、母材
より0.5wt%以上Cr量が少ない領域をCr欠乏領域DCrと
して求めた。このようにして測定したd1 、d2 および
DCrからそれぞれの平均値を求め、DCr・( d1/d2 )
1/2を算出した。以上の結果を、表2にまとめて示す。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】また、上記熱履歴を経た供試材について、
#1000研磨後、東京湾岸から20mの位置で、3カ月間大
気中に曝露し、粒界腐食の有無の調査をした。得られた
結果から、DCr・( d1/d2 )1/2 、鋭敏化度(Ir/Ia)
および暴露試験による粒界腐食の状況をまとめて図1に
示す。図中、○印は粒界腐食を示さなかったものであ
り、●印は粒界腐食を示したものである。図1から、D
Cr・( d1/d2 )1/2 ≦100 (nm)を満たす発明合金は鋭敏
化度を表すIr/Ia値が35%以下であり、曝露においても
優れた耐粒界腐食性を有することがわかった。
#1000研磨後、東京湾岸から20mの位置で、3カ月間大
気中に曝露し、粒界腐食の有無の調査をした。得られた
結果から、DCr・( d1/d2 )1/2 、鋭敏化度(Ir/Ia)
および暴露試験による粒界腐食の状況をまとめて図1に
示す。図中、○印は粒界腐食を示さなかったものであ
り、●印は粒界腐食を示したものである。図1から、D
Cr・( d1/d2 )1/2 ≦100 (nm)を満たす発明合金は鋭敏
化度を表すIr/Ia値が35%以下であり、曝露においても
優れた耐粒界腐食性を有することがわかった。
【0028】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
粒界における析出物形状およびCr欠乏領域を制御し、所
定の成分に調整することにより、C,Nを特別に低減す
ることなく、またTi、Nb、Moといった高価な元素添加に
依存することなく、鋭敏化度を減じせしめ、耐粒界腐食
に優れたFe−Cr合金を提供することが可能となる。
粒界における析出物形状およびCr欠乏領域を制御し、所
定の成分に調整することにより、C,Nを特別に低減す
ることなく、またTi、Nb、Moといった高価な元素添加に
依存することなく、鋭敏化度を減じせしめ、耐粒界腐食
に優れたFe−Cr合金を提供することが可能となる。
【図1】鋭敏化度Ir/IaとDCr・( d1/d2 )1/2 との関
係を示すグラフである。
係を示すグラフである。
【図2】楕円近似した析出物の長軸方向長さと短軸方向
長さとを示す模式図である。
長さとを示す模式図である。
【図3】粒界近傍におけるCr濃度の変化とCr欠乏領域を
示す模式図である。
示す模式図である。
フロントページの続き (72)発明者 宇城 工 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社千葉製鉄所内 (72)発明者 佐藤 進 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社千葉製鉄所内
Claims (2)
- 【請求項1】 C:0.1 wt%以下、Si:1.0 wt%以下、
Mn:1.0 wt%以下、Cr:5〜60wt%、Al:0.2 wt%以
下、N:0.10wt%以下を含み、SとHの量が、S+16H
≦0.013 wt%を満たして含有し、残部はFeおよび不可避
的不純物からなり、結晶粒界に存在する析出物の形状と
Cr欠乏領域の巾とが下記関係式を満足することを特徴と
する鋭敏化度の小さいFe−Cr合金。 記 DCr・( d1/d2 )1/2 ≦100 ただし、 DCr:楕円近似した析出物の長軸と短軸の交点から、粒
界に垂直な方向の楕円軸の方向に測定したCr欠乏領域の
巾 (nm) d1:楕円近似した析出物の長軸方向長さ d2:楕円近似した析出物の短軸方向長さ - 【請求項2】 C:0.1 wt%以下、Si:1.0 wt%以下、
Mn:1.0 wt%以下、Cr:5〜60wt%、Al:0.2 wt%以
下、N:0.10wt%以下を含み、かつ、Ti:0.5wt%以
下、Nb:0.5 wt%以下、B:0.005 wt%以下およびMo:
5wt%以下から選ばれる1種または2種以上を含有し、
さらに、SとHの量が、S+16H≦0.013wt%を満たし
て含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、結
晶粒界に存在する析出物の形状とCr欠乏領域の巾とが下
記関係式を満足することを特徴とする鋭敏化度の小さい
Fe−Cr合金。 記 DCr・( d1/d2 )1/2 ≦100 ただし、 DCr:楕円近似した析出物の長軸と短軸の交点から、粒
界に垂直な方向の楕円軸の方向に測定したCr欠乏領域の
巾(nm) d1:楕円近似した析出物の長軸方向長さ d2:楕円近似した析出物の短軸方向長さ
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP10728896A JPH09291342A (ja) | 1996-04-26 | 1996-04-26 | 鋭敏化度の小さいFe−Cr合金 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP10728896A JPH09291342A (ja) | 1996-04-26 | 1996-04-26 | 鋭敏化度の小さいFe−Cr合金 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH09291342A true JPH09291342A (ja) | 1997-11-11 |
Family
ID=14455302
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP10728896A Pending JPH09291342A (ja) | 1996-04-26 | 1996-04-26 | 鋭敏化度の小さいFe−Cr合金 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH09291342A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP1498508A1 (en) * | 2003-07-17 | 2005-01-19 | Sumitomo Metal Industries, Ltd. | Stainless steel and stainless steel pipe having resistance to carburization and coking |
JP2016164309A (ja) * | 2015-02-27 | 2016-09-08 | ポスコ | 耐粒界腐食性に優れたフェライト系ステンレス鋼 |
-
1996
- 1996-04-26 JP JP10728896A patent/JPH09291342A/ja active Pending
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP1498508A1 (en) * | 2003-07-17 | 2005-01-19 | Sumitomo Metal Industries, Ltd. | Stainless steel and stainless steel pipe having resistance to carburization and coking |
US7396597B2 (en) | 2003-07-17 | 2008-07-08 | Sumitomo Metal Industries, Ltd. | Ni-Cr-Fe alloy and Ni-Cr-Fe alloy pipe having resistance to carburization and coking |
JP2016164309A (ja) * | 2015-02-27 | 2016-09-08 | ポスコ | 耐粒界腐食性に優れたフェライト系ステンレス鋼 |
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