JPH09291036A - 粉末状キチン質創傷治療剤 - Google Patents

粉末状キチン質創傷治療剤

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JPH09291036A
JPH09291036A JP10794296A JP10794296A JPH09291036A JP H09291036 A JPH09291036 A JP H09291036A JP 10794296 A JP10794296 A JP 10794296A JP 10794296 A JP10794296 A JP 10794296A JP H09291036 A JPH09291036 A JP H09291036A
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chitin
powdery
fine
chitinous
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JP10794296A
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English (en)
Inventor
Toshikazu Yoneda
敏和 米田
Katsumi Oishi
勝己 大石
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SAN FIVE KK
Original Assignee
SAN FIVE KK
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 擦過傷等の平面的で浅い創傷のみならず、膿
瘍・重度の褥瘡・咬傷・裂創等のポケット状若しくは凹
状の創傷、比較的狭い範囲で形成された深い創傷、ある
いは鼻腔内・子宮内等に形成された創傷等についても、
創全体にキチン質を接触させて創を完全に被うことがで
き、滲出液の貯留を起こすことがないと共に、治療過程
における創の観察を妨げない粉末状キチン質創傷治療剤
を提供する。 【解決手段】 微粉末状キチン質と易水溶性物質微粉末
とからなる。前記微粉末状キチン質と易水溶性物質微粉
末の重量混合比が1乃至50:50乃至99である。前
記易水溶性物質微粉末が塩類、単糖類、若しくはオリゴ
糖類、又はこれらの混合物からなる。前記微粉末状キチ
ン質と易水溶性物質微粉末の粒径が500μm以下であ
る。前記微粉末状キチン質が界面活性剤溶液により洗浄
されたキチン質からなる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、N−アセチル−
D−グルコサミンとD−グルコサミンを構成単位とする
多糖であるキチン質を有効成分として含有する粉末状キ
チン質創傷治療剤に関する。
【0002】
【従来の技術】周知のように、生体には、傷を負った場
合にその傷を修復する能力が備わっている。この創傷治
癒の過程ではまず、炎症が発生することによって創の清
浄化が行われ、炎症の終了に伴って組織修復が行われ
る。
【0003】この炎症とは、損傷を負った組織の微小循
環系が一過性に収縮した後、拡大し、通常は閉じている
毛細血管床が開き、血流量が増加し、更に細静脈領域の
血管内皮細胞間隙が開くことにより、この間隙を通じて
血漿成分、多形核白血球、単球、リンパ球等が組織間質
へ浸出する血管透過亢進現象である。この炎症が終了す
ると同時に、組織内に浸出した血漿成分、及び細胞成分
により生成される活性因子系の作用によって、組織細胞
の増殖が促進され、組織が修復へと導かれる。
【0004】また、カニ・エビ等の甲殻類、イカの軟
甲、昆虫等に存在するN−アセチル−D−グルコサミン
を構成単位とするキチン、その脱アセチル化物である脱
アセチル化キチン、及びキトサン等のキチン質には生体
内消化性があり、しかも上記のような創傷治癒過程を促
進する効果等の種々の生物活性があることが知られてい
る。
【0005】このようなキチン質を用いた従来のこの種
の創傷治療剤としては、例えば、フィルム状(特開昭6
0−227761号公報)、繊維シート(特公平4−4
2019号公報、特公平5−26498号公報)、多孔
性成形体(特開昭61−64256号公報、特開昭63
−122458)等に形成された創傷被覆材が提案され
ている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
ような創傷被覆材は、擦過傷、熱傷、採皮創等の平面的
で浅い創傷を被うための人工皮膚的な保護材としては好
適であるが、膿瘍・重度の褥瘡・咬傷・裂創等のポケッ
ト状若しくは凹状の創傷、比較的狭い範囲で形成された
深い創傷、あるいは鼻腔内・子宮内等に形成された創傷
等に使用する場合には、創傷被覆材が創面に全体的に密
着しにくいため、創傷被覆材と密着した創傷部は良好な
治癒促進が見られるが、創傷被覆材と密着していない創
傷部は治癒が遅れたり、感染が起こることがあるという
問題点がある。
【0007】また、創傷被覆材と創傷の間に多量の滲出
液が貯留することがあり、このような場合には創傷の閉
鎖が妨げられるという問題点がある。逆に、創傷被覆材
が滲出液を多量に吸収して乾燥し、創に過度に密着して
貼り付いた場合には、創を観察するために創傷被覆材を
剥がそうとすると、新しい創傷が形成されるという問題
点がある。
【0008】この発明は、上記のような問題点に鑑みて
なされたものであり、擦過傷等の平面的で浅い創傷のみ
ならず、膿瘍・重度の褥瘡・咬傷・裂創等のポケット状
若しくは凹状の創傷、比較的狭い範囲で形成された深い
創傷、あるいは鼻腔内・子宮内等に形成された創傷等に
ついても、創全体にキチン質を接触させて創を完全に被
うことができ、滲出液の貯留を起こすことがないと共
に、治療過程における創の観察を妨げない粉末状キチン
質創傷治療剤を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
の手段とするところは、第1に、微粉末状キチン質と易
水溶性物質微粉末とからなることにある。第2に、前記
微粉末状キチン質と易水溶性物質微粉末の重量混合比が
1乃至50:50乃至99であることにある。第3に、
前記易水溶性物質微粉末が塩類、単糖類、若しくはオリ
ゴ糖類、又はこれらの混合物からなることにある。第4
に、前記微粉末状キチン質と易水溶性物質微粉末の粒径
が500μm以下であることにある。第5に前記微粉末
状キチン質が界面活性剤溶液により洗浄されたキチン質
からなることにある。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施形態につい
て説明する。この実施形態に係る粉末状キチン質創傷治
療剤は、微粉末状キチン質と易水溶性物質微粉末とから
なるものである。
【0011】前記キチン質は、N−アセチル−D−グル
コサミン、又はD−グルコサミンのみからなるホモ多
糖、及びそれらを種々の割合で含む多糖であり、D−グ
ルコサミンの割合が20%以下のキチン、20乃至70
%の脱アセチル化キチン、70%以上のキトサンが含ま
れる。
【0012】このキチン質の製造方法としては、例え
ば、カニ・エビ等の甲殻類のクチクラ、あるいはイカ軟
甲等のキチン質源を、アルカリ洗浄による蛋白の除去、
酸洗浄による灰分の除去を順次行い、必要に応じて色素
の除去等を行ってキチンを抽出及び精製し、あるいは更
にキチンを濃アルカリで洗浄することにより脱アセチル
化して、脱アセチル化キチンやキトサンを製造する方法
等が挙げられる。
【0013】このキチン質を微粉末化して微粉末状キチ
ン質を製造する方法としては、例えば、キチンを塩酸又
は硫酸に溶解後、多量の水を加えることによりコロイド
状キチンを製造する方法(キチン、キトサン実験マニュ
アル,第5頁,「1.2 コロイド状キチンの調製
法」,キチン、キトサン研究会編,技報堂出版株式会
社,1991年3月25日1版1刷発行)、キトサンを
希酸に溶解後、中和することによりコロイド状キトサン
を製造する方法(同上刊行物,第12頁,「2.3コロ
イド状キトサンの調製法」)等の沈殿法や、あるいは、
被粉砕物をジェット気流でミル内壁等に衝突させて粉砕
するジェットミル、高速で回転するピンに被粉砕物を衝
突させて粉砕するピンミル、メディアであるボールを振
動させて被粉砕物を粉砕する振動ボールミル、自転する
ミルを自転軸と平行な公転軸のまわりに大きく公転させ
て被粉砕物を粉砕する遊星ミル、回転するミルの下部で
遠心力を与えられたメディアが静止したミル上部との間
を往復することにより被粉砕物を粉砕する遠心流動化ミ
ル等の乾式粉砕機による粉砕法等の方法が挙げられる。
【0014】前記易水溶性物質としては、例えば、塩化
ナトリウム・炭酸水素ナトリウム・リン酸水素二アンモ
ニウム・クエン酸ナトリウム等の塩類、ソルビトール・
グルコース・フルクトース・マンニトール等の単糖類、
若しくは乳糖・シクロデキストリン等のオリゴ糖類等の
製薬上許容しうる単体、又はこれらの混合物が挙げられ
る。
【0015】この易水溶性物質を微粉末化して易水溶性
物質微粉末を製造する方法としては、例えば、易水溶性
物質を水に溶かして水溶液とした後、この水溶液を、易
水溶性物質の溶解量が小さい溶媒中に投入して微粉末状
の沈殿を得る方法、あるいは上記キチン質の粉砕に使用
する粉砕機等による粉砕法等が挙げられる。
【0016】当該粉末状キチン質創傷治療剤の製造方法
としては、微粉末状キチン質と易水溶性物質微粉末を、
上記のような操作により別々に微粉末化して製造した後
で均一に混合するか、あるいはあらかじめ混合した後で
微粉末化して製造する方法が挙げられる。
【0017】ここで、前記微粉末状キチン質と易水溶性
物質微粉末の重量混合比としては、1乃至50:50乃
至99、好ましくは1乃至30:70乃至99が望まし
く、この場合、当該粉末状キチン質創傷治療剤に生理食
塩水等の分散媒を添加した後、振り混ぜる等の簡単な方
法で、易水溶性物質微粉末の溶解に伴って水不溶性の微
粉末状キチン質をより均一に分散させることができる。
【0018】また、これら微粉末状キチン質と易水溶性
物質微粉末の粒径としては、500μm以下、好ましく
は250μm以下とするのが望ましく、この場合、これ
ら微粉末状キチン質と易水溶性物質微粉末を均一に混合
しておけば、輸送時等において物理的な衝撃が加わる場
合においても、微粉末状キチン質と易水溶性物質微粉末
が偏って分散して不均一になる恐れがないという利点が
ある。
【0019】更に、前記微粉末状キチン質は、微粉末化
される前又は微粉末化された後に、例えば0.1乃至5
%程度の界面活性剤溶液により十分洗浄した後、多量の
洗浄液で界面活性剤を洗い流し、乾燥されていることが
望ましい。なお、特に、微粉末状キチン質を沈殿法によ
って製造した場合には、微粉末化した後に界面活性剤溶
液により洗浄しておくことが望ましい。このように、界
面活性剤溶液により微粉末状キチン質を洗浄しておけ
ば、キチン質の製造の際又は微粉末化の際に付着した付
着物質を除去でき、そのため、この微粉末状キチン質と
易水溶性物質微粉末を混合して分散媒を添加し、キチン
質の分散液を調製する場合におけるこのキチン質の均一
分散性、安定性、及び分散速度をより向上させることが
できる。
【0020】前記界面活性剤としては、例えば、ドデシ
ル硫酸ナトリウム・ステアリン酸ナトリウム・オレイン
酸ナトリウム等の陰イオン界面活性剤、臭化セチルトリ
メチルアンモニウム等の陽イオン界面活性剤、あるいは
ポリオキシエチレングリコール・p−t−オクチルフェ
ニルエーテル・ポリオキシエチレングリコールソルビタ
ンアルキルエステル等の非イオン系界面活性剤等が挙げ
られ、それらを水又はアルコール等の可溶性溶媒に溶解
して洗浄に使用すればよい。
【0021】上記のように構成される粉末状キチン質創
傷治療剤の使用方法としては、例えば、所定量の粉末状
キチン質創傷治療剤に、例えば、その重量の2倍乃至1
000倍、好ましくは5倍乃至200倍程度の蒸留水・
生理食塩水・リンゲル液等の分散媒を添加し、数回乃至
数十回振り混ぜ、微粉末状キチン質とあらかじめ均一に
混合された易水溶性物質微粉末を溶解させることによ
り、分散媒中に微粉末状キチン質を均一に分散させた
後、その分散液を注射器や噴霧器等によって創傷部に散
布、注入、又は注射等を行う方法が挙げられる。
【0022】
【実施例】次に、実施例を挙げてこの発明をより詳しく
説明するが、この発明は係る実施例に限定されるもので
はない。
【0023】実施例1 乾燥したイカの軟甲10kgをフェザーミル(5mmス
クリーン通過)により粉砕し、粉砕物を1規定の水酸化
ナトリウム水溶液に投入し、90℃で3時間保持した
後、洗液が中性になるまで水洗し、次いで0.1規定の
塩酸水溶液に室温で2時間浸漬した。
【0024】次に、再度、洗液が中性になるまで水洗し
た後、更に1規定の水酸化ナトリウム水溶液(90℃)
中に1時間保持し、水洗後、オーブン(50℃)で10
時間乾燥し、精製イカキチン3.2kgを得た。
【0025】この精製イカキチンを粉砕し、最大粒径3
2μm、平均粒径8.2μm(粒度分布の測定:SKレ
ーザPRO−7000S,セイシン企業社製,エタノー
ル中で測定)の微粉末状キチンを製造した。
【0026】得られた微粉末状キチンを1%のドデシル
硫酸ナトリウム水溶液に懸濁させ、40℃で1時間撹拌
して洗浄した後、微粉末状キチンのみを集め、十分に蒸
留水で洗浄し、メタノール、続いてアセトンで洗うこと
により脱水し、50℃のオーブンで乾燥して界面活性剤
で洗浄した微粉末状キチンを製造した。
【0027】この界面活性剤で洗浄した微粉末状キチン
1gにグルコース(和光純薬社製)7gを混合した後
(重量混合比12.5:87.5)、卓上型粉砕機で1
分間粉砕し、更に30号(500μm)のふるいを通し
て微粉末状キチンと微粉末状グルコースとからなる粉末
状キチン質創傷治療剤を製造した。
【0028】得られた粉末状キチン質創傷治療剤100
mg(キチン12.5mg含有)を容量15mlのスク
リューキャップ付き試験管に量り取り、温度50℃、湿
度60%RHの条件で4時間、エチレンオキサイドガス
による滅菌を行った後、生理食塩水10mlを添加し、
十数回振り混ぜてグルコースを溶解させると共に、キチ
ンを分散媒中に均一に分散させた。
【0029】この溶液を注射器に充填し、その3mlを
体重2.2kgのマルチーズ犬の大きさ約2cm2 、深
さ2cmの咬傷に散布して治療を行った。
【0030】その結果、滲出液が貯留することがなく、
また化膿を起こすこともなく、創が閉鎖し、治療開始後
7日目には完全に治癒した。なお、創面に散布した微粉
末状キチンは、治療過程における創の観察を妨げること
がなく、治療開始後2日目には分解され、肉眼的には創
面より消失していた。
【0031】実施例2 カニ殻10kgをフェザーミル(5mmスクリーン通
過)により粉砕し、粉砕物を2規定の塩酸に投入し、室
温で12時間浸漬した後、新たに2規定の塩酸を用意
し、カニ殻を再度、室温で12時間浸漬した。次いで、
カニ殻を回収し、脱イオン水で洗液が中性となるまで充
分洗浄し、灰分を除去したカニ殻4.5kgを得た。
【0032】この灰分を除去したカニ殻4.5kgを1
規定の水酸化ナトリウム中に浸漬し、6時間煮沸後、新
しい1規定の水酸化ナトリウムに交換し、更に30時間
煮沸した。不溶部を回収し、洗液が中性になるまで脱イ
オン水で充分洗浄し、オーブン(50℃)で10時間乾
燥し、精製カニキチン2.3kgを得た。
【0033】得られた精製カニキチン2.3kgを40
%水酸化ナトリウム水溶液中で3時間環流し、不溶部を
集め、洗液が中性となるまで脱イオン水で洗浄し、オー
ブン(50℃)で10時間乾燥し、コロイド滴定による
脱アセチル化度が82%の精製カニキトサン1.9kg
を得た。
【0034】この精製カニキトサンを1%の濃度のドデ
シル硫酸ナトリウムの水溶液に浸漬し、室温で10時間
撹拌して洗浄した後、十分に蒸留水で洗浄し、メタノー
ル、続いてアセトンで洗うことにより脱水し、50℃の
オーブンで乾燥することにより、界面活性剤で洗浄した
精製カニキトサンを製造した。
【0035】この界面活性剤で洗浄した精製カニキトサ
ンを粉砕し、最大粒径29μm、平均粒径3.8μm
(粒度分布測定:SKレーザPRO−7000S,セイ
シン企業社製,エタノール中で測定)の微粉末状キトサ
ンを製造した。
【0036】この微粉末状キトサンと、卓上型粉砕機で
1分間粉砕して60号(250μm)のふるいを通した
種々の易水溶性物質微粉末とを、種々の割合で卓上型粉
体混合機を使用して均一に混合して粉末状キチン質創傷
治療剤を調製した。また、上記と同様の条件で粉砕して
略同じ粒径を有する界面活性剤で洗浄していない微粉末
状キトサンも別途用意し、上記と同様の操作で粉末状キ
チン質創傷治療剤を調製した。
【0037】次いで、これら粉末状キチン質創傷治療剤
を、微粉末状キトサンの量が10mgとなるようにスク
リューキャップ付き試験管に量り取り、生理食塩水10
mlを添加し、15回振り混ぜて微粉末状キトサンの分
散状態を観察した。その結果を次の表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】上記で調製された、界面活性剤で洗浄した
キトサンより製造した微粉末状キトサンと、易水溶性物
質微粉末として乳糖を使用し、これら微粉末状キトサン
と乳糖の重量混合比が60:40と10:90である2
種類の粉末状キチン質創傷治療剤を、感染を伴う長さ約
2cm、深さ約1.5cmの犬の裂創の治療に使用し
た。
【0040】この感染を伴う裂創に、界面活性剤で洗浄
した微粉末状キトサンと乳糖の重量混合比が60:40
の粉末状キチン質創傷治療剤17mg(キトサン10m
g含有)と、該重量混合比が10:90の粉末状キチン
質創傷治療剤100mg(キトサン10mg含有)にそ
れぞれ生理食塩水10mlを添加し、15回振り混ぜて
調製した分散液を注射器を使用してそれぞれ散布したと
ころ、重量混合比が10:90の粉末状キチン質創傷治
療剤は、良好に創面に散布でき、3日目には感染が治ま
ると共に創全体が縮小しており、8日目には創が完全に
閉鎖された。
【0041】これに対し、重量混合比が60:40の粉
末状キチン質創傷治療剤では、微粉末状キトサンが均一
に分散しないために、注射器の針の部分にキトサンの塊
が詰まり、そのため散布が困難であると共に、散布後3
日目で創の縮小が一部見られるが部分的であり、また一
部感染による膿瘍を起こしている部分があり、創が完全
に閉鎖されるまでに15日間を要した。
【0042】また、重量混合比が10:90の粉末状キ
チン質創傷治療剤は、散布後3日目には分解されて、肉
眼的には創部より消失していたが、重量混合比が60:
40の粉末状キチン質創傷治療剤では、創の一部分に微
粉末状キトサンの塊が残存しており、その周辺に多量の
滲出液が見られた。
【0043】実施例3 上記実施例2で調製された界面活性剤で洗浄した微粉末
状キトサンと乳糖の重量混合比が10:90の粉末状キ
チン質創傷治療剤を100mg(キトサン10mg含
有)、容量15mlのスクリューキャップ付き試験管に
量り取り、温度50℃、湿度60%RHの条件で4時
間、エチレンオキサイドによる滅菌を行った後、生理食
塩水10mlを添加し、十数回振り混ぜて乳糖を溶解さ
せると共に、微粉末状キトサンを均一に分散させた。
【0044】この分散液を注射器に充填し、87歳の男
性の臀部に生じた面積約40cm2で、辺縁部にポケッ
ト状の創部を有する感染性の褥瘡に、1週間毎に、全量
散布して治療を行った。
【0045】その結果、化膿を起こすこともなく、ポケ
ット部でも壊死組織の処理と良好な肉芽の盛り上がりが
見られ、30日目には完全に表皮の再生が見られた。な
お、投与後5日目には、散布した微粉末状キトサンは分
解され、肉眼的には創より消失していた。
【0046】比較例1 上記実施例2で調製した精製カニキトサン微粉末100
gに蒸留水1000mlと酢酸8mlを加え、充分に撹
拌混合してキトサンドープを調製した。この溶液を濾過
して不溶部を除いた後、脱泡し、0.1mmの穴より2
0%水酸化ナトリウム中に押し出してキトサン繊維を製
造した。
【0047】このキトサン繊維を洗液が中性になるまで
温水で充分に洗浄し、エタノール中に浸漬して脱水した
後、乾燥した。次いで、このキトサン繊維1gを0.5
cmの長さでカットし、バインダーとして前記キトサン
ドープを0.5mlを加えた蒸留水中に分散させ、ブフ
ナーロート上に設置したテフロン濾紙で濾過し、乾燥さ
せることによってキトサン繊維の不織布(面積約64c
2 )を作製した。
【0048】得られたキトサン繊維の不織布を、温度5
0℃、湿度60%RHの条件で4時間、エチレンオキサ
イドガスによる滅菌を行った後、79歳の男性の臀部に
生じた面積約35cm2 で、辺縁部にポケット状の創を
有する感染性の褥瘡に貼り付けて治療を行った。
【0049】その結果、治療開始後2日目で、創部から
の滲出液が多量貯留しており、ポケット状の創が更に深
くなっていた。なお、10日経過しても、キトサン繊維
の不織布には大多数のキトサン繊維が残存しており、創
の辺縁部にキトサンの不織布が密着して剥離することが
できなかった。
【0050】
【発明の効果】以上のように、請求項1記載の発明によ
れば、キチン質が微粉末化されているので、分散媒を添
加し、振り混ぜることによりキチン質の分散液を調製で
きると共に、この分散液を注射器や噴霧器等により創傷
部に散布、注入、又は注射等することができるので、擦
過傷等の平面的で浅い創傷のみならず、膿瘍・重度の褥
瘡・咬傷・裂創等のポケット状若しくは凹状の創傷、比
較的狭い範囲で形成された深い創傷、あるいは鼻腔内・
子宮内等に形成された創傷等についても、創全体にキチ
ン質を密着させることができる。しかも、従来の創傷被
覆材とは異なり、創傷との間に滲出液を多量に貯留させ
たり、創傷に貼り付いて治療途中での創傷の観察を妨げ
ることがない。
【0051】なお、前記微粉末状キチン質単独では分散
媒を添加して数十回振り混ぜる程度では均一に分散でき
ず、長時間の超音波照射や振盪等が必要であるのに対
し、この粉末状キチン質創傷治療剤は、微粉末状キチン
質と易水溶性物質微粉末とからなるので、これら微粉末
状キチン質と易水溶性物質微粉末を均一に混合しておけ
ば、使用時に分散媒を添加して数回から数十回振り混ぜ
るだけで、良好なキチン質の分散液を調製することがで
きる。
【0052】また、このように、あらかじめキチン質の
分散液を調製しておく必要がないので、乾燥状態で保存
でき、長期保存が可能である。
【0053】請求項2記載の発明によれば、前記微粉末
状キチン質と易水溶性物質微粉末の重量混合比が1乃至
50:50乃至99であるので、生理食塩水等の分散媒
を添加した後、振り混ぜる等の簡単な方法で、易水溶性
物質微粉末の溶解に伴って水不溶性の微粉末状キチン質
をより均一に分散させることができ、そのため、この分
散液を創部に散布した場合に、一部分に偏ることなく、
創部全体に均一に投与することができる。
【0054】請求項3記載の発明によれば、前記易水溶
性物質微粉末が、水に対する溶解速度の大きい製薬上許
容しうる塩類、単糖類、若しくはオリゴ糖類、又はこれ
らの混合物からなるので、分散媒を添加した後、数回か
ら数十回振り混ぜるだけで、前記微粉末状キチン質を分
散媒に均一に分散させることができ、そのため、キチン
質の分散液をあらかじめ調製しておく必要がないと共
に、治療現場での治療時間の短縮を図ることができる。
【0055】請求項4記載の発明によれば、前記微粉末
状キチン質と易水溶性物質微粉末の粒径が500μm以
下であるので、これら微粉末状キチン質と易水溶性物質
微粉末を均一に混合しておけば、輸送時等における物理
的な衝撃が加わる場合においても、微粉末状キチン質と
易水溶性物質微粉末が偏って分散して不均一になる恐れ
がない。そのため、分散媒を添加して分散液を調製した
場合の均一分散性の向上を図ることができることから、
その分散液を創面に散布した場合に物理的な刺激を与え
ることがなく、生体へ投与後、数日のうちに分解されて
創部より消失させることができる。
【0056】請求項5記載の発明によれば、前記微粉末
状キチン質が界面活性剤溶液により洗浄されたキチン質
からなるので、分散媒を添加して分散液を調製した場合
の均一分散性、安定性、及び分散速度を更に向上させる
ことができる。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 微粉末状キチン質と易水溶性物質微粉末
    とからなることを特徴とする粉末状キチン質創傷治療
    剤。
  2. 【請求項2】 前記微粉末状キチン質と易水溶性物質微
    粉末の重量混合比が1乃至50:50乃至99である請
    求項1記載の粉末状キチン質創傷治療剤。
  3. 【請求項3】 前記易水溶性物質微粉末が塩類、単糖
    類、若しくはオリゴ糖類、又はこれらの混合物からなる
    請求項1又は2記載の粉末状キチン質創傷治療剤。
  4. 【請求項4】 前記微粉末状キチン質と易水溶性物質微
    粉末の粒径が500μm以下である請求項1乃至3のい
    ずれか記載の粉末状キチン質創傷治療剤。
  5. 【請求項5】 前記微粉末状キチン質が界面活性剤溶液
    により洗浄されたキチン質からなる請求項1乃至4のい
    ずれか記載の粉末状キチン質創傷治療剤。
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