JPH09288116A - 液中観察用原子間力顕微鏡及び試料表面の液中観察方法 - Google Patents

液中観察用原子間力顕微鏡及び試料表面の液中観察方法

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JPH09288116A
JPH09288116A JP8122176A JP12217696A JPH09288116A JP H09288116 A JPH09288116 A JP H09288116A JP 8122176 A JP8122176 A JP 8122176A JP 12217696 A JP12217696 A JP 12217696A JP H09288116 A JPH09288116 A JP H09288116A
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cantilever
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liquid
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JP8122176A
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English (en)
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Shunji Watanabe
俊二 渡辺
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 分解能を向上させる。 【解決手段】 探針13aを先端側に有するレバー部1
3bを備えたカンチレバー13であって、圧電又は電歪
特性を有する薄膜及び該薄膜に励振信号を供給するため
の電極部をレバー部13bに備えたカンチレバーを用い
る。試料12の表面を液体11に浸しかつ探針13aを
試料12の表面を対向するように液体11中に浸す。前
記電極部に励振信号を与えてレバー部13bを振動させ
た状態において、制御部21による圧電アクチュエータ
16の制御下で、レバー部13bの振動状態を検出して
その検出信号に基づいて探針13aと試料11の表面と
の間に作用する原子間力が一定になるようにZ方向に探
針13aを試料12に対して相対的に移動させつつ、探
針13aを試料11の表面上を相対的に走査させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、試料表面及びカン
チレバーの探針を液体に浸した状態において、前記探針
を試料表面上で走査させつつ試料表面の形状情報を測定
する液中観察用原子間力顕微鏡及び試料表面の液中観察
方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の液中観察用原子間力顕微鏡につい
て、図6を参照して説明する。図6は従来の液中観察用
原子間力顕微鏡の要部を模式的に示す構成図である。
【0003】この従来の液中観察用原子間力顕微鏡で
は、液中セル1内に液体2が収容され、試料3及びカン
チレバー4が液体2中に浸されている。カンチレバー4
は、先端側に探針4aを有するレバー部4bと、該レバ
ー部4bを支持する支持体4cとを備えている。液中セ
ル1は、試料3が搭載される試料台となる平板状の下側
部材1bと、下方が開口したカップ状の透明材料からな
る上側部材1aと、その内部に収容した液体2の漏れを
阻止するパッキン1cと、を備えている。上側部材1a
の内側の側壁にはカンチレバーホルダー5が設けられ、
該カンチレバーホルダー5にカンチレバー4の支持体4
cを取り付けることにより探針4aが試料3の表面と対
向するようになっている。カンチレバーホルダー5には
圧電板6が設けられており、該圧電板6によりカンチレ
バー4を振動させることができるようになっている。液
中セル1の上側部材1aは図示しないベースに対して固
定され、液中セル1の下側部材1bはこれをX,Y,Z
方向(X方向は水平面内の方向、Y方向は水平面内の方
向であってX方向と直交する方向、Z方向は鉛直方向で
あり、XY平面は試料3の表面と略一致しており、以下
同じである。)に移動させる(走査させる)チューブス
キャナ等の圧電アクチュエータ7に取り付けられてい
る。また、カンチレバー4の振動状態を検出する振動検
出部として光てこ法による検出部が設けられている。す
なわち、この検出部は、カンチレバー4のレバー部4b
に照射光を照射するレーザ光源等の光源8と、該照射光
によるレバー部4bからの反射光を受光する2分割フォ
トダイオード等の光検出器9とから構成されている。
【0004】この従来の液中観察用原子間力顕微鏡によ
れば、いわゆるタッピングモード又はノンコンタクトモ
ードによる動作により試料3の表面の形状データを得
る。すなわち、いわゆるタッピングモード又はノンコン
タクトモードの場合、カンチレバー4の固有振動数に相
当する周波数付近の周波数の交流電圧である励振信号を
カンチレバーホルダー5の圧電板6に与えてカンチレバ
ー4を振動させる。そして、図示しない制御部から圧電
アクチュエータ7にX−Y走査信号を与えて探針4aを
試料3に対して相対的にXY平面内で移動させる。この
とき、探針4aと試料3の表面との間に作用する原子間
力は試料3の表面と探針4aとの間の距離に応じて変化
し、前記原子間力に応じてカンチレバー4のレバー部4
bの共振周波数がシフトし、前記原子間力が変化すると
光検出器9からの検出信号が変化する。したがって、前
記光検出器9からの検出信号に基づいて、前記原子間力
が一定になるように、前記制御部から圧電アクチュエー
タ7にZ方向サーボ信号(Z制御信号)を与えて、試料
3とカンチレバー4との間の距離を相対的に上下方向に
移動させる。このようにすると、試料3とカンチレバー
4の振動の中心との間の距離は一定になるため、前記X
−Y走査信号及びZ方向サーボ信号に基づいて試料3の
表面の形状データを得ることができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記従
来の液中観察用原子間力顕微鏡では、試料表面及びカン
チレバーを液体に浸さないで大気又は真空中で動作する
原子間力顕微鏡に比べて分解能が落ちていた。
【0006】本発明は、このような事情に鑑みてなされ
たもので、分解能を向上をさせることができる液中観察
用原子間力顕微鏡及び試料表面の液中観察方法を提供す
ることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】従来は、前述した従来の
液中観察用原子間力顕微鏡においていわゆるタッピング
モード又はノンコンタクトモードの場合に分解能が低下
する原因は、液体2のダンピング効果でカンチレバー4
のレバー部4bのQ値が低下するためであると考えられ
ていた。
【0008】本発明者らは、以下の点に新たに注目し
た。すなわち、前記従来の液中観察用原子間力顕微鏡に
おいて、液体2中でカンチレバー4を振動させるために
使用している圧電板6は、カンチレバーホルダー5に設
けられ、カンチレバー4の支持体4cを振動させてカン
チレバー4の全体を振動させることによりカンチレバー
4のレバー部4bを振動させており、この圧電板6の面
積は小さくとも10mm2とレバー部4bの面積と比べ
例えば100倍以上も大きい。そのため、励振用圧電板
6がレバー部4bを励振するのに必要なエネルギーは、
圧電板6が供給するエネルギーの数万分の1以下であ
る。圧電板6が供給するエネルギーの残りは、液体2や
他の部材(カンチレバー4のレバー部4c等)を駆動し
ていたことになる。つまり、前述した従来の液中観察用
原子間力顕微鏡では、ほとんどのエネルギーをレバー部
4b以外に放出していたことになる。
【0009】レバー部4bの振動の試料表面との相互作
用による変化の感度が原子間力顕微鏡の感度である。圧
電板6が供給するエネルギーのうちレバー部4c以外に
放出されてしまうエネルギーによって液体2が励振され
ることにより、本来ならば固体伝播のみによるエネルギ
ーに加え、液体2からのエネルギーがレバー部4cに供
給されてしまう。このため、前記従来の液中観察用原子
間力顕微鏡では、通常の大気、真空中で動作する原子間
力顕微鏡の場合に比べかなり大きな相互作用を生じなけ
れば、レバー部4bの振動状態は変化できなくなり、結
果として前記従来の原子間力顕微鏡の感度低下ひいては
分解能低下が生じるのである。
【0010】本発明は、このような本発明者らによる新
たな知見に基づいてなされたものである。
【0011】本発明の第1の態様による液中観察用原子
間力顕微鏡は、液体に浸される試料表面と対向するよう
に前記液体中に浸される探針を先端側に有するレバー部
を備えたカンチレバーと、前記カンチレバーを振動させ
る振動手段と、前記カンチレバーの振動状態を検出する
振動検出手段と、前記試料表面と略平行な面の方向に前
記探針を前記試料に対して相対的に移動させるととも
に、前記試料表面と略垂直な方向に前記探針を前記試料
に対して相対的に移動させる移動手段と、前記振動検出
手段からの検出信号に基づいて前記カンチレバーの前記
探針と前記試料表面との間に作用する原子間力が一定に
なるように前記移動手段を制御しつつ、前記探針が前記
試料表面上を走査するように前記移動手段を制御する制
御手段と、を備えた液中観察用原子間力顕微鏡におい
て、前記振動手段が、前記レバー部に形成された圧電又
は電歪特性を有する薄膜と、前記レバー部に形成され該
薄膜に励振信号を供給するための電極手段と、を備えた
ものである。
【0012】この第1の態様によれば、振動手段が、カ
ンチレバーのレバー部に形成された、圧電又は電歪特性
を有する薄膜及び該薄膜に励振信号を供給するための電
極手段とを備えているので、該電極手段に励振信号を与
えるとカンチレバーの全体ではなくカンチレバーのレバ
ー部のみが振動することになる。したがって、前述した
従来の液中観察用原子間力顕微鏡に比べて、レバー部を
励振するのに必要な供給エネルギーが非常に小さくなる
ので、液体に放出されてしまうエネルギーが非常に小さ
くなる。このため、カンチレバーのレバー部が液体から
受けるエネルギーも非常に小さくなるので、前記従来の
液中観察用原子間力顕微鏡に比べて、レバー部の振動の
試料表面との相互作用が小さくてもレバー部の振動状態
が変化でき、これにより、分解能が著しく向上する。
【0013】本発明の第2の態様による液中観察用原子
間力顕微鏡は、前記第1の態様による液中観察用原子間
力顕微鏡において、前記振動検出手段が、前記レバー部
に形成された圧電又は電歪特性を有する薄膜と、前記レ
バー部に形成され該薄膜から前記検出信号を得るための
電極手段と、を備えたものである。
【0014】この第2の態様によれば、光てこ法等によ
る振動検出手段を設けなくてすむので、液中セルを用い
る場合、光てこ法によるときには照射光の導入及び反射
光の導出のため透明な窓(この光学特性は当該光の波長
により制限される)を液中セルが有している必要がある
のに対し、そのような窓の必要がなくなるので、液中セ
ルの材料選択が自由となり、例えば、試料の分光や励起
などを行うのに適した光学特性を持った窓を用いたり波
長フィルタや偏光フィルタを自由に用いることが可能と
なる。また、前記第2の態様によれば、光てこ法等によ
る振動検出手段を設けなくてすむことから液体の面が揺
れても振動検出に支障を来さないので、液中セルを用い
ずに、例えば、試料表面上に液体を滴下し、その滴下し
た液体中にカンチレバーの探針を浸してもよく、構成が
簡単になる。なお、光てこ法による振動検出手段を採用
した場合には、液体面が揺れることにより反射光ビーム
の方向に揺らぎが生じて適切な振動検出を行うことがで
きないため、液体面の揺らぎを防止するために液中セル
を使用しなければならない。また、光てこ法による振動
検出手段を採用した場合には、液体を満たすことで大気
中、真空中動作での検出のための光線の軌跡が大きく変
化し、設計が困難なだけでなく、通常大気観察後に液を
満たす場合が多いが、その時に再びレーザ、検出用フォ
トディテクタのアライメントをやり直すという煩わしい
作業があり、また、大気中と違い液中の場合には対流の
影響が大きく光学的なアライメントが非常に難しかっ
た。前記第2の態様によれば、これらの問題からも解放
される。もっとも、前記第1の態様では、前記振動検出
手段として、光てこ法や光干渉法などによる任意の振動
検出手段を採用することができる。
【0015】本発明の第3の態様による液中観察用原子
間力顕微鏡は、前記第1又は第2の態様による液中観察
用原子間力顕微鏡において、前記液体を収容する液中セ
ルを更に備えたものである。
【0016】本発明の第4の態様による試料表面の液中
観察方法は、探針を先端側に有するレバー部を備えたカ
ンチレバーであって、圧電又は電歪特性を有する薄膜及
び該薄膜に励振信号を供給するための電極手段を前記レ
バー部に備えたカンチレバーを用い、試料表面を液体に
浸しかつ前記探針を前記試料表面と対向するように前記
液体中に浸すとともに前記電極手段に励振信号を与えて
前記レバー部を振動させた状態において、前記レバー部
の振動状態を検出してその検出信号に基づいて前記探針
と前記試料表面との間に作用する原子間力が一定になる
ように前記試料表面と略垂直な方向に前記探針を前記試
料に対して相対的に移動させつつ、前記探針を前記試料
表面上を相対的に走査させて前記試料表面の形状情報を
得るものである。この第4の態様によれば、前記第1の
態様と同様の利点が得られる。
【0017】本発明の第5の態様による試料表面の観察
方法は、探針を先端側に有するレバー部を備えたカンチ
レバーであって、圧電又は電歪特性を有する第1の薄膜
及び該第1の薄膜に励振信号を供給するための第1の電
極手段、並びに、圧電又は電歪特性を有する第2の薄膜
及び該第2の薄膜から前記レバー部の振動状態を示す検
出信号を得るための第2の電極手段を、前記レバー部に
備えたカンチレバーを用い、試料表面を液体に浸しかつ
前記探針を前記試料表面と対向するように前記液体中に
浸すとともに前記電極手段に励振信号を与えて前記レバ
ー部を振動させた状態において、前記第2の電極手段か
らの前記検出信号に基づいて前記探針と前記試料表面と
の間に作用する原子間力が一定になるように前記試料表
面と略垂直な方向に前記探針を前記試料に対して相対的
に移動させつつ、前記探針を前記試料表面上を相対的に
走査させて前記試料表面の形状情報を得るものである。
この第5の態様によれば、前記第2の態様と同様の利点
が得られる。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明による液中観察用原
子間力顕微鏡及び試料表面の液中観察方法について、図
面を参照して説明する。
【0019】図1は、本発明の一実施の形態による液中
観察用原子間力顕微鏡を模式的に示す構成図である。
【0020】本実施の形態による液中観察用原子間力顕
微鏡は、図1に示すように、液体11に浸される試料1
2の表面と対向するように液体11中に浸される探針1
3aを先端側に有するレバー部13bと、該レバー部1
3bを支持する支持体13cとを備えたカンチレバー1
3を持っている。
【0021】ここで、図2及び図3を参照して、カンチ
レバー13の一例について説明する。図2はカンチレバ
ー13の一例を示す図であり、図2(a)はその概略平
面図、図2(b)はその概略断面図である。図3は、図
2に示すカンチレバーの製造工程の一例を示す概略断面
図である。
【0022】本例によるカンチレバー13では、レバー
部13bは、図2に示すように、窒化珪素膜31,3
2、該窒化珪素膜32上に形成されたタンタル層33、
該タンタル層33上に形成された下部電極としての白金
層34、該白金層34上に形成された圧電又は電歪特性
を有する薄膜としてのPZT(ジルコニウム酸チタン酸
鉛)膜35、該PZT膜35上に形成された互いに分割
された上部電極としての白金層36,37とから構成さ
れている。本例では、白金層34,36がPZT膜35
に励振信号を供給するための電極手段を構成しており、
PZT膜35における白金層34,36間に挟持された
部分と白金層34,36が、レバー部13bを振動させ
る振動手段に相当している。また、白金層34,37が
PZT膜35からレバー部13bの振動状態を示す検出
信号を得るための電極手段を構成しており、PZT膜3
5における白金層34,37間に挟持された部分と白金
層34,37が、レバー部13bの振動状態(変位)を
検出する振動検出手段に相当している。なお、使用に際
しては、白金層34が接地され、白金層36に励振信号
が与えられ、白金層37から前記検出信号を得る。な
お、前記膜35の材料としては、PZTに代えて、チタ
ン酸ジルコニウム酸塩−酸化ランタン固溶体、ニオブ酸
マグネシウム酸鉛−チタン酸鉛固溶体、チタン酸バリウ
ムなどを用いてもよい。下部電極34としては、薄膜形
成時の熱処理に耐えること、窒化珪素膜32等のレバー
部13bの基材と強固に結合することなどが要求される
ため、前述したように白金を主原料とすることが好まし
い。さらにこれらの2つの条件に関して特性を向上させ
るため、バッファ層として前記タンタル層33(タンタ
ルに代えてチタン等でもよい)を形成することが好まし
い。
【0023】また、本例によるカンチレバー13では、
探針13bは、前記窒化珪素膜32の一部から構成され
ている。また、本例では、支持体13cは、シリコン層
38と、該シリコン層38上に延在した窒化珪素膜3
1,32等の部分と、シリコン層38下面の窒化珪素膜
39,40とから構成されている。
【0024】次に、図2に示すカンチレバー13の製造
方法の一例について、図3を参照して説明する。まず、
(100)面方位のシリコン基板38の両面にCVD法
により窒化珪素膜31,39を0.5μmの厚さに成膜
し、この膜31の一部に反応性ドライエッチングにより
窓31aを開け、この窓31aから水酸化カリウムを用
いた異方性エッチングによりシリコン基板38にピット
38aを作る(図3(a))。次に、図3(a)に示す
状態の基板の両面にCVD法により再び窒化珪素膜3
2,40を0.5μmの厚さに成膜する(図3
(b))。その後、窒化珪素膜32上にフォトリソグラ
フィによりタンタル層33を0.1μmの厚みで形成
し、さらにその上に白金層34を0.1μmの厚みで形
成する。次いで、この上にスパッタ法によりPZT膜3
5を1μmの厚みで形成した後に、白金層36,37を
形成する(図3(c))。その後、窒化珪素膜31,3
2,39,40を所望の形状にパターニングし(図3
(d)、異方性エッチングにてシリコン基板38を支持
体13cに相当する部分以外を除去する。これにより、
図2に示すカンチレバーが完成する。
【0025】再び図1を参照すると、本実施の形態によ
る液中観察用原子間力顕微鏡では、液体11は液中セル
14内に収容されている。液中セル14は、試料12が
搭載される試料台となる平板状の下側部材14aと、下
方が開口したカップ状の透明材料からなる上側部材14
bと、その内部に収容した液体11の漏れを阻止するパ
ッキン14cと、を備えている。上側部材14bの内側
の側壁にはカンチレバーホルダー15が設けられ、該カ
ンチレバーホルダー15にカンチレバー13の支持体1
3cを取り付けることにより探針13aが試料12の表
面と対向するようになっている。本実施の形態では、従
来と異なり、カンチレバーホルダー15には圧電板は設
けられていない。液中セル14の上側部材14bは図示
しないベースに対して固定され、液中セル14の下側部
材14aはこれをX,Y,Z方向(X方向は水平面内の
方向、Y方向は水平面内の方向であってX方向と直交す
る方向、Z方向は鉛直方向であり、XY平面は試料12
の表面と略一致しており、以下同じである。)に移動さ
せる(走査させる)チューブスキャナ等の圧電アクチュ
エータ16に取り付けられている。
【0026】また、本実施の形態による液中観察用原子
間力顕微鏡は、図1に示すように、カンチレバー13の
前記上部電極36にカンチレバー13の固有振動数に相
当する周波数付近の周波数の交流電圧である励振信号を
与える励振信号発生器17と、カンチレバー13の上部
電極37からの検出信号をI−V変換して増幅する増幅
回路18と、該増幅回路18の出力を整流する整流回路
19と、整流回路19の出力の低域周波数成分のみを通
過させるローパスフィルタ20と、制御部21と、形状
データ形成部22と、CRT23とを備えている。
【0027】本実施の形態による液中観察用原子間力顕
微鏡によれば、いわゆるタッピングモード又はノンコン
タクトモードによる動作により試料12の表面の形状デ
ータを得る。すなわち、励振信号発生器17からカンチ
レバー13の上部電極36に前記励振信号が与えられ、
カンチレバー13がPZT膜35のd31逆圧電効果に
より上下方向に振動する。そして、制御部21から圧電
アクチュエータ16にX−Y走査信号が与えられ、探針
13aが試料12に対して相対的にXY平面内で移動さ
れる。このとき、探針13aと試料12の表面との間に
作用する原子間力は試料12の表面と探針13aとの間
の距離に応じて変化し、前記原子間力に応じてカンチレ
バー13のレバー部13bの共振周波数がシフトし、前
記原子間力が変化するとカンチレバー13の上部電極3
7からの検出信号が変化する。本実施例では、レバー部
13bの共振周波数がシフトした場合に検出信号の振幅
が変化することから、増幅回路18、整流回路19及び
ローパスフィルタ20にて検出信号をDC化する信号処
理を行い、これにより、ローパスフィルタ20から、カ
ンチレバー13の探針13aと試料12の表面と間に作
用する原子間力すなわちその間の距離に対応するレベル
の直流出力を得ている。もっとも、本発明では、他の信
号処理方式を採用してもよい。そして、制御部21は、
ローパスフィルタ20からの出力に基づいて(すなわ
ち、前記検出信号に基づいて)、前記原子間力が一定に
なるように、制御部21から圧電アクチュエータ16に
Z方向サーボ信号(Z制御信号)を与えて、試料12と
カンチレバー13との間の距離を相対的に上下方向に移
動させる。このようにすると、試料12とカンチレバー
13のレバー部13bの振動の中心との間の距離は一定
になるため、前記X−Y走査信号及びZ方向サーボ信号
に基づいて試料12の表面の形状データを得ることがで
きる。形状データ形成部22はこれらの信号に基づいて
試料12の表面の形状データを得、CRTはこれを画像
表示する。
【0028】そして、本実施の形態によれば、カンチレ
バー13のレバー部13bに設けた圧電又は電歪特性を
有する薄膜35でカンチレバーを13のレバー部13b
のみを励振することで、この薄膜35の面積は、図6中
の従来の励振用圧電板6に比べ面積比だけでも従来比較
で例えば1/1000になる。それに加え、薄膜35
は、直接カンチレバー13のレバー部13b上にあり、
振動エネルギーを損失なく伝えるため、損失は更に小さ
い。液体11に伝わっていたエネルギーは従来の例えば
1/1000以下になり、液体11から供給されていた
振動エネルギーはほとんどなくなる。周辺雑音が、数桁
低下するのと同じ効果である。そのため、分解能が向上
する。
【0029】また、本実施の形態によれば、従来と異な
り、光てこ法等による振動検出部を設けていないので、
照射光の導入及び反射光の導出のため透明な窓(この光
学特性は当該光の波長により制限される)を液中セル1
4が有している必要がなくなるので、液中セル14の材
料選択が自由となり、例えば、試料の分光や励起などを
行うのに適した光学特性を持った窓を用いたり波長フィ
ルタや偏光フィルタを自由に用いることが可能となる。
【0030】また、本実施の形態によれば、光てこ法等
による振動検出部を設けなくてすむことから液体11の
面が揺れても振動検出に支障を来さないので、図4に示
すように、液中セル14を用いずに、試料12の表面上
に液体11を滴下し、その滴下した液体11中にカンチ
レバー13の探針13aを浸してもよく、構成が簡単に
なる。なお、光てこ法による振動検出部を採用した場合
には、液体11の面が揺れることにより反射光ビームの
方向に揺らぎが生じて適切な振動検出を行うことができ
ないため、液体11の面の揺らぎを防止するために液中
セル14を使用しなければならない。なお、図4に示す
ように液中セル14を使用しない場合、液体11の蒸発
により気化熱が奪われ、結果として温度ドリフトが生じ
るので、ドリフト低減のため、蒸気圧の低い液体を使用
するが好ましい。また、光てこ法による振動検出部を採
用した場合には、液体11を満たすことで大気中、真空
中動作での検出のための光線の軌跡が大きく変化し、設
計が困難なだけでなく、通常大気観察後に液を満たす場
合が多いが、その時に再びレーザ、検出用フォトディテ
クタのアライメントをやり直す煩わしい作業があった。
本実施の形態では、これらの問題からも解放される。
【0031】もっとも、本発明では、振動検出手段とし
て、光てこ法や光干渉法などによる任意の振動検出手段
を採用することができる。この場合には、例えば、図2
において上部電極を2つの電極36,37に分割せずに
1つにして、この上部電極に励振信号を与えるようにす
ればよい。
【0032】なお、本実施の形態では、PZT膜35と
して前述したようにスパッタ法により作製されたPZT
膜が用いられているが、この膜35として、圧電定数が
劣りかつ不安定なゾルゲル法により作製されたPZT膜
や、物性的に圧電定数が低いZnOを用いても、大きな
駆動電圧が必要になり電気的効率は落ちるが、同様な効
果が得られる。
【0033】以上、本発明の一実施の形態について説明
したが、本発明はこの実施の形態に限定されるものでは
ない。
【0034】例えば、図1中のカンチレバー13とし
て、図2に示すカンチレバーに代えて、図5に示すカン
チレバーを採用することもできる。図5は、カンチレバ
ー13の他の例の製造工程の一例を示す概略断面図であ
る。
【0035】まず、(100)面方位のシリコン基板5
1の両面にCVD法により窒化珪素膜52,53を0.
5μmの厚さに成膜し、この膜52の一部に反応性ドラ
イエッチングにより窓を開け、この窓から水酸化カリウ
ムを用いた異方性エッチングによりシリコン基板51に
ピットを作り、この部分を酸化して探針13aとなる酸
化珪素膜54を形成し、窒化珪素膜52上にフォトリソ
グラフィにより白金層55を形成する(図5(a))。
次に、この上に相境界組成のジルコニウム酸チタン酸鉛
(PZT)56をスパッタ法により0.5μmの厚さに
成膜し、この上に白金層57を形成する。さらに、この
上に窒化珪素膜58をCVD法で0.5μm形成し、こ
の上に白金層59を形成する(図5(b))。その後、
この上にもう一度、0.5μmのPZT膜60を形成
し、更に白金層61を形成する。最後に反応性ドライエ
ッチングにより下面の窒化珪素膜53を除去し、支持体
13cを構成するガラスブロック62を静電圧着して、
カンチレバー13が完成する(図5(c)(d))。な
お、図5(d)は、図5(c)中のA−A矢視図であ
る。
【0036】図5に示すカンチレバー13では、白金層
55,57がPZT膜56に励振信号を供給するための
電極手段を構成しており、白金層55,57及びPZT
膜56がレバー部13bを振動させる振動手段に相当し
ている。また、白金層59,61がPZT膜60からレ
バー部13bの振動状態を示す検出信号を得るための電
極手段を構成しており、白金層59,61及びPZT膜
60がレバー部13bの振動状態(変位)を検出する振
動検出手段に相当している。勿論、逆に、白金層55,
57及びPZT膜56を振動検出手段として用いるとと
もに白金層59,61及びPZT膜60を振動手段とし
て用いることもできる。
【0037】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
高分解能で試料表面を液中観察することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態による液中観察用原子間
力顕微鏡を模式的に示す構成図である。
【図2】本発明で用いられるカンチレバーの一例を示す
図であり、図2(a)はその概略平面図、図2(b)は
その概略断面図である。
【図3】図2に示すカンチレバーの製造工程の一例を示
す概略断面図である。
【図4】液中セルを用いずに試料表面及びカンチレバー
の探針を液中に浸した例を示す概略斜視図である。
【図5】本発明で用いられる他の例によるカンチレバー
の製造工程の一例を示す概略断面図である。
【図6】従来の液中観察用原子間力顕微鏡の要部を模式
的に示す構成図である。
【符号の説明】
11 液体 12 試料 13 カンチレバー 13a 探針 13b レバー部 13c 支持体 14 液中セル 15 カンチレバーホルダー 16 圧電アクチュエータ 17 励振信号発生器 18 増幅回路 19 整流回路 20 ローパスフィルタ 21 制御部 22 形状データ形成部 23 CRT 34,36,37,55,57,59,61 白金層
(電極) 35,56,60 PZT膜

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 液体に浸される試料表面と対向するよう
    に前記液体中に浸される探針を先端側に有するレバー部
    を備えたカンチレバーと、前記カンチレバーを振動させ
    る振動手段と、前記カンチレバーの振動状態を検出する
    振動検出手段と、前記試料表面と略平行な面の方向に前
    記探針を前記試料に対して相対的に移動させるととも
    に、前記試料表面と略垂直な方向に前記探針を前記試料
    に対して相対的に移動させる移動手段と、前記振動検出
    手段からの検出信号に基づいて前記カンチレバーの前記
    探針と前記試料表面との間に作用する原子間力が一定に
    なるように前記移動手段を制御しつつ、前記探針が前記
    試料表面上を走査するように前記移動手段を制御する制
    御手段と、を備えた液中観察用原子間力顕微鏡におい
    て、 前記振動手段が、前記レバー部に形成された圧電又は電
    歪特性を有する薄膜と、前記レバー部に形成され該薄膜
    に励振信号を供給するための電極手段と、を備えたこと
    を特徴とする液中観察用原子間力顕微鏡。
  2. 【請求項2】 前記振動検出手段が、前記レバー部に形
    成された圧電又は電歪特性を有する薄膜と、前記レバー
    部に形成され該薄膜から前記検出信号を得るための電極
    手段と、を備えたことを特徴とする請求項1記載の液中
    観察用原子間力顕微鏡。
  3. 【請求項3】 前記液体を収容する液中セルを更に備え
    たことを特徴とする請求項1又は2記載の液中観察用原
    子間力顕微鏡。
  4. 【請求項4】 探針を先端側に有するレバー部を備えた
    カンチレバーであって、圧電又は電歪特性を有する薄膜
    及び該薄膜に励振信号を供給するための電極手段を前記
    レバー部に備えたカンチレバーを用い、 試料表面を液体に浸しかつ前記探針を前記試料表面と対
    向するように前記液体中に浸すとともに前記電極手段に
    励振信号を与えて前記レバー部を振動させた状態におい
    て、前記レバー部の振動状態を検出してその検出信号に
    基づいて前記探針と前記試料表面との間に作用する原子
    間力が一定になるように前記試料表面と略垂直な方向に
    前記探針を前記試料に対して相対的に移動させつつ、前
    記探針を前記試料表面上を相対的に走査させて前記試料
    表面の形状情報を得る、 ことを特徴とする試料表面の液中観察方法。
  5. 【請求項5】 探針を先端側に有するレバー部を備えた
    カンチレバーであって、圧電又は電歪特性を有する第1
    の薄膜及び該第1の薄膜に励振信号を供給するための第
    1の電極手段、並びに、圧電又は電歪特性を有する第2
    の薄膜及び該第2の薄膜から前記レバー部の振動状態を
    示す検出信号を得るための第2の電極手段を、前記レバ
    ー部に備えたカンチレバーを用い、 試料表面を液体に浸しかつ前記探針を前記試料表面と対
    向するように前記液体中に浸すとともに前記電極手段に
    励振信号を与えて前記レバー部を振動させた状態におい
    て、前記第2の電極手段からの前記検出信号に基づいて
    前記探針と前記試料表面との間に作用する原子間力が一
    定になるように前記試料表面と略垂直な方向に前記探針
    を前記試料に対して相対的に移動させつつ、前記探針を
    前記試料表面上を相対的に走査させて前記試料表面の形
    状情報を得る、ことを特徴とする試料表面の液中観察方
    法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008309630A (ja) * 2007-06-14 2008-12-25 National Univ Corp Shizuoka Univ 液中測定装置及び液中測定方法
JP2009257913A (ja) * 2008-04-16 2009-11-05 Sii Nanotechnology Inc 液中観察用センサ及び液中観察装置
JP2010127754A (ja) * 2008-11-27 2010-06-10 Sii Nanotechnology Inc 自己変位検出型カンチレバーおよび走査型プローブ顕微鏡

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