JPH09286759A - 高純度テレフタル酸の製造方法 - Google Patents
高純度テレフタル酸の製造方法Info
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Abstract
れたテレフタル酸結晶の酢酸溶媒スラリーを水溶媒スラ
リーに母液置換した後、接触水素化処理を行う高純度テ
レフタル酸の製造方法において、高純度テレフタル酸製
造装置のプロセスフローの短縮化、投資額の節減と運転
に係わる費用の低減化を実現する。 【解決手段】母液置換塔上部に該酢酸溶媒スラリーを導
入し、テレフタル酸結晶の沈降によって塔下部にテレフ
タル酸結晶の堆積層を形成して塔底部から該堆積層を抜
き出すようにし、塔内部に水の上昇流を形成するに足る
置換水を、堆積層内部からと、堆積層抜出部からの二系
統で供給する。
Description
の製造方法に関し、更に詳しくは液相酸化反応によって
得られた粗テレフタル酸結晶の酢酸溶媒スラリーの母液
を水で置換する母液置換法に関する。
るp−アルキルベンゼン等のp−フェニレン化合物の液
相酸化反応によって製造されるが、通常は酢酸を溶媒
(母液)としてコバルト、マンガン等の触媒を使用し、
またはこれに臭素化合物、アセトアルデヒドのような促
進剤を加えた触媒が用いられる。しかし、この反応生成
物には4ーカルボキシベンズアルデヒド(4CBA)や
パラトルイル酸や種々の着色性不純物を含むため、高純
度テレフタル酸を得るにはかなり高度の精製技術を必要
とする。
精製する方法としては、粗テレフタル酸を水溶媒で高温
・高圧下に溶解し、接触水素化処理、酸化処理、再結晶
処理あるいはテレフタル酸結晶が一部溶解したスラリー
状での高温浸漬処理等の種々の方法が知られている。特
に粗テレフタル酸を水に溶解して高温・高圧下に第VIII
族貴金属触媒を用いて接触水素化処理工程を行う方法
は、高純度テレフタル酸製造の大規模な商業的プロセス
として数十年の歴史を有している。
行う方法では、プロセスフローが長いことが大きな問題
点の一つに挙げられる。すなわち該プロセスでは、溶媒
回収や触媒回収等の複雑なしかも煩わしいユニットを除
いた主要なプロセスフローだけを列挙してみても1ない
しは2段以上の酸化反応器、数個の粗製系逐次的晶析
器、粗製系分離機、粗製系ドライヤー、再溶解槽、接触
水素化反応器、数個の精製系逐次的晶析器、精製系分離
機、精製系ドライヤーと連なっている。
な要因としては、酸化によって粗テレフタル酸を製造す
る反応の溶媒が酢酸であり、接触水素化処理によって精
製する反応の溶媒が水である点が挙げられる。このよう
な溶媒置換を行うには、酸化で生成した粗テレフタル酸
を一旦酢酸溶媒から完全に分離し、次に水溶媒で再溶解
しなければならない。もし粗テレフタル酸と酢酸の分離
が不完全で、粗テレフタル酸に溶媒酢酸が付着したまま
接触水素化処理工程に供給されると、酢酸自体は接触水
素化処理によって化学的変化を受けることは殆どないの
で、粗テレフタル酸に付着した溶媒酢酸は接触水素化処
理の水溶媒に混入して系外に排出されることになる。こ
れは酢酸という有価物が流出して失われることであり、
また流出される酢酸は環境に対して無害化しなければな
らないので、その経済的損失は大きい。
工程からの結晶を含むスラリーより母液を分離する粗製
系分離機と粗製系ドライヤーを組み合わせて接触水素化
工程へ送る粗テレフタル酸に酢酸が付着して同伴するこ
とをほぼ完全に遮断することが必要であり、現行の商業
的規模の装置ではこのような分離機とドライヤーを組み
合わせたフローが用いられている。結晶を含むスラリー
から母液を分離する方法として最も一般的に用いられる
のは遠心分離機や回転式バキュームフィルターであり、
粗テレフタル酸結晶スラリーから母液を分離する場合も
この両者が広範に使用されている。
中に原料の酢酸スラリーを導入し母液を上部からオーバ
ーフローさせ、結晶は下部へ誘導する方法であり、高速
回転させるという遠心分離機の構造上の制約から保全、
保守が煩雑であることが欠点である。また粗テレフタル
酸結晶のリンスが簡単にできないので母液を完全に除く
ことができず、そのために遠心分離工程の下流に乾燥工
程を設けて粗テレフタル酸結晶に付着残存している酢酸
を除去する必要がある。
と共にハウジングの底部に貯まっている粗テレフタル酸
結晶が濾材に付着して上昇・回転し、一般的にはリンス
ポイントを通過後、結晶をケーキとして剥離するもので
ある。この方式においては高速回転を要しないために、
保全や保守は比較的容易であるが、粗テレフタル酸結晶
に付着した母液を完全にリンスで除去することは難しい
ため、下流にドライヤーを必要とするのは遠心分離機と
同様である。
に代わる結晶の分離、母液の除去方法として、特公昭3
3−5410号には粗テレフタル酸を水で再結晶したス
ラリーを高温(165℃以上)で垂直管に通し、高温水
の緩慢な上昇流に抗してテレフタル酸結晶を重力で沈降
させ、付着母液を洗浄する方法が記載されている。この
方法はテレフタル酸結晶を水溶媒で再結晶した後、結晶
と母液の分離を高温(加圧下)で行っているが、基本的
にはテレフタル酸スラリーの母液を新鮮な溶媒に置き換
える母液置換法である。
いるので、特別の動力を必要としない点で優れており、
使用される装置自体がシンプルな点も魅力的である。し
かし母液置換率が低いことと、実験結果をそのままスケ
ールアップすることが難しいという欠点を持っている。
母液置換率を向上させるためには高温水の上昇流を大き
くすれば良いが、このためには大量の溶媒(水)を使用
しなければならず、また上昇流を大きくすると結晶の沈
降速度が低下し、小粒径の結晶が大量に垂直菅の頂部か
ら溢流することになる。
57−53431号では、多数の孔をもった複数個の横
方向の仕切り板で分割されたテレフタル酸結晶の重力沈
降工程と粒子輸送工程を組み合わせた母液置換法を提案
している。このような仕切り板は装置内流体のチャンネ
リングまたはバックミキシングを防止して母液置換率を
高めるためのものであるが、しかしスラリーを扱う重力
沈降を利用した母液置換においてこのような仕切り板を
設けることは、仕切り板への結晶の堆積、開口部の閉塞
やバルキングが起こり、運転の安定化に多大な労力を要
する。
向に仕切られた多数の棚段を設け、各棚段上を比較的ゆ
っくりと回転する掻き取り羽根でテレフタル酸結晶を落
下させる構造の母液置換塔を提案しており、該置換塔を
用いて粗テレフタル酸の酢酸溶媒(母液)を水で置換し
た実施例で99%以上と推定される高水準の母液置換率
を達成している。しかしながら該実施例は実験室規模で
の装置で供給テレフタル酸スラリー量が約1トン/hで
あり、これを商業的規模にスケールアップすれば、おお
よそ該実施例の100倍量のテレフタル酸スラリーを処
理しなければならず、この処理量に見合った母液置換塔
の大きさを想定すると、該実施例の置換塔に比較して約
100倍の断面積が必要になる。すなわちテレフタル酸
結晶が装置内を沈降する速度は、重力と溶媒の特性によ
って規定されるので、母液置換塔の大きさには関係なく
一定である条件において母液置換塔の断面積を約100
倍にしなければならず、上記のごとき高水準の母液置換
塔を達成するためには、巨大な母液置換塔が必要とな
る。
得られた粗テレフタル酸結晶の酢酸溶媒スラリーの母液
を母液置換塔を用いて水に置換し、得られた粗テレフタ
ル酸の水スラリーを接触水素化処理装置に導けば、現行
プロセスフローでの酸化工程からのスラリーより母液を
分離する分離機とドライヤーを不要とすることができ
る。しかしながら以上の如く高純度テレフタル酸を製造
する一連の商業的規模での母液置換法、すなわち現行の
プロセスフローにおいて粗テレフタル酸の母液分離機と
ドライヤーの機能を代替できる実際的な技術は未だ完成
をみていない。本発明の目的は、液相酸化反応によって
得られた粗テレフタル酸結晶の酢酸溶媒スラリーの母液
を水で置換し、得られた粗テレフタル酸の水スラリー
を、機械的な抜き出し方法を用いることなく安定的に堆
積層からスラリーを抜き出して接触水素化処理装置に送
る方法を提供し、高純度テレフタル酸製造装置のプロセ
スフローの短縮化、ひいては投資額の節減と運転に係わ
る費用の低減化を実現することである。
による経済的損失の境界線をどこに設定するかは製造工
場のおかれている様々な経済的環境によって判断しなけ
ればならないので厳密な線引きは難しいが、一般的には
母液置換率が99%以上であれば商業的規模での実施の
可能性があると判断される。そして母液置換率が99.
9%を超える水準を達成できれば、実施の可能性が確実
になってくると判断される。従って本発明の具体的な目
標は、従来の母液置換法に比し効率的な母液置換法を完
成し、99%以上、望ましくは99.9%以上の母液置
換率を達成することにある。
行する数十年にもわたる技術的発想と進歩、またそれら
の技術的障害を乗り越えるべく長年の研究を重ねた結
果、母液置換塔の下部にテレフタル酸結晶の堆積層を形
成し、その底部より水を供給することにより、小型でシ
ンプルな装置で99%以上の高い母液置換率を達成する
ことができることを見出し、特許出願を行った(特願平
7−118299号)。この方法はベッド式母液置換塔
を用いてテレフタル酸結晶の酢酸溶媒スラリーの母液を
新鮮な水に置換するもので、テレフタル酸結晶と母液の
分離が容易に高置換率で達成できる。しかしながらこの
母液置換法では堆積層のスラリー濃度が非常に濃くなる
ため、底部の抜き出し方法に特別の工夫が必要になる。
討した結果、置換水を堆積層内部からと、堆積層抜出部
からの二系統に分けて供給することにより、ベッド式母
液置換塔の運転性が飛躍的に向上すること、また置換水
を二系統に分けたことにより系統毎に温度を設定するこ
とが可能になり、プロセスにおける低温の熱源を有効に
利用でき、使用エネルギーが削減されプロセスの低コス
ト化が図れることを見出し、本発明に到達した。
相酸化によって得られたテレフタル酸結晶の酢酸溶媒ス
ラリーを水溶媒スラリーに母液置換した後、接触水素化
処理を行う高純度テレフタル酸の製造方法において、母
液置換塔上部に該酢酸溶媒スラリーを導入し、テレフタ
ル酸結晶の沈降によって塔下部にテレフタル酸結晶の堆
積層を形成して塔底部から該堆積層を抜き出すように
し、塔内部に水の上昇流を形成するに足る置換水を、堆
積層内部からと、堆積層抜出部からの二系統で供給する
ことを特徴とする高純度テレフタル酸の製造方法であ
る。
粗テレフタル酸結晶の酢酸溶媒スラリーは、p−アルキ
ルベンゼン等のp−フェニレン化合物、代表的にはパラ
キシレンを酸化して製造され、通常はコバルト、マンガ
ン等の重金属塩触媒、またはこれに臭素化合物、或いは
アセトアルデヒドのような促進剤を加えた触媒が用いら
れる。溶媒には3〜20%程度の水分を含有した酢酸を
用いる。分子状酸素としては通常空気または酸素が用い
られ、一般に温度170〜230℃、圧力10〜30気
圧で1ないしは2段以上で反応が行われる。
出物中にはテレフタル酸結晶以外に4CBA、パラトル
イル酸、触媒その他種々の不純物を含有している。この
反応流出物を1または2段以上にわたる粗製系逐次的晶
析器に導き、逐次降温させながら溶媒に溶解していたテ
レフタル酸を更に結晶化させ、所定の温度まで降温させ
る。その後、テレフタル酸結晶の酢酸溶媒スラリーは母
液置換塔に供給され、塔内の水の上昇流中に導き、酸化
反応母液は少量の微細テレフタル酸結晶と共に水の上昇
液流にともなって上方へ、大部分のテレフタル酸結晶は
塔内を沈降する。
て塔底部より抜き出されるが、本発明では塔下部に堆積
層を形成し、この堆積層に対して二系統に分けて置換水
を供給する。一系統目の置換水は堆積層内部に供給さ
れ、母液置換塔内(堆積層)を主として上昇流となって
流れ、上部から沈降してくるテレフタル酸結晶と向流接
触し酸化反応母液と共に塔頂部から排出される。更に堆
積層中でのこの置換水の分散を良くして置換水のチャン
ネリングや偏流を防ぐために、堆積層中に設けたアーム
式攪拌翼を介してあたかもスプリンクラーのように供給
する方法や堆積層内に設けたリングヘッダーを介して供
給する方法を採用すると効果的である。
スラリー化ノズルまたは混合器を用いて堆積層抜出部に
導入され、連続的に塔下部より抜き出される。その結
果、堆積層の個々のテレフタル酸結晶は下方へ移動す
る。それに対して塔内には水の上昇流が存在するので、
テレフタル酸結晶と水が向流に接触し、結晶表面に付着
していた酢酸溶媒および酢酸溶媒に含まれる種々の酸化
反応副生不純物等が効率よく洗浄されることになる。こ
れにより塔底部からは酢酸溶媒を殆ど含まないテレフタ
ル酸結晶の水溶媒スラリーが抜き出され、このスラリー
は何等の追加的な処理を加えることなく既に公知である
種々の精製方法、一般的には水溶媒スラリーを高温・高
圧下で溶解し、第VIII族貴金属触媒を使って接触水素化
処理工程を経て高純度テレフタル酸を製造する工程に送
ることができる。
て以下に述べる。母液置換塔における母液置換率は99
%以上、望ましくは99.9%以上の達成が要求される
が、その為の主要な条件はテレフタル酸結晶堆積層の流
動性を保持することである。またテレフタル酸結晶堆積
層の長さ(高さ)と塔内を上昇する水の線速度(上昇線
速度)を適当に取る必要がある。
スラリーの供給速度、塔底部からの水の供給速度、テレ
フタル酸スラリー抜き出し速度などの複数の操作因子の
結果として決定されるが、実際の運転操作においては母
液置換塔内の沈降部分と堆積層の界面を検出し、それを
所定の位置に保つようにテレフタル酸結晶の堆積層抜き
出し速度を調整することで達成される。この堆積層が長
くなれば洗浄効果が増して母液置換率がアップし、反対
に短くなれば母液置換率が低下するので、堆積層の長さ
はできるだけ長い方が好ましいが、あまり長すぎるとテ
レフタル酸結晶自身の静圧のためにブロッキングが発生
する恐れがあるので不必要なまでの長さは避けなければ
ならない。また母液置換率は塔径の関数としても示さ
れ、99%以上の母液置換率を達成するためには、堆積
層の長さを母液置換塔の直径の5分の1以上とする必要
がある。
対して向流的に上昇する水の流量を表し、便宜的に堆積
層部分の空塔基準で定義される。我々の経験によれば上
昇線速度を大きくすると母液置換率も上昇するが、おお
よそ3m/hを越えると急速に母液置換率が低下する。
従って母液置換塔の設計においては上昇線速度の下限は
0を越えた値、つまり実質的に上昇流が形成されれば良
く、上限はおおよそ3m/hである。上昇線速度をこの
上限より大きな値に設定することは置換率の低下を招く
ばかりでなく、一部のテレフタル酸結晶が十分に沈降せ
ず上昇液流と共に上方へ取り出されることとなり、更に
水の使用量が増加して塔頂部から回収される酢酸母液中
の水濃度の上昇を引き起こすことにもなる。
高純度テレフタル酸製造装置全体に関わるいくつかの要
素を勘案する必要がある。その一つは、より高温で母液
置換を行うことは得られるテレフタル酸の品質を向上さ
せる効果がある。すなわち一般的なテレフタル酸製造装
置では、酸化反応器から粗製系逐次的晶析器へ導入され
る時点では、反応によって生成したテレフタル酸の大部
分は既に結晶として存在している。晶析器では逐次降温
することにより、母液中に溶けていた残りの部分のテレ
フタル酸が逐次晶析してくる。温度の高い部分で得られ
た結晶はより低温で得られた結晶よりも純度が高いこと
は一般的な現象であるが、テレフタル酸の晶析の場合
は、不純物として存在している4CBAはテレフタル酸
と共晶析することが知られており、共晶析してくる割合
は温度が低くなるほど急速に大きくなる性質をもってい
る。従って母液置換をより高温で行うならば、得られる
水スラリー中の粗テレフタル酸の純度が向上し、接触水
素化処理工程を経て得られる高純度テレフタル酸の品質
向上につながる利点がある。
高温、具体的には250℃を越える温度で行われている
ので、母液置換をより低い温度で実施することは熱エネ
ルギーの損失となる。酸化反応は概ね200℃近辺で行
われるので、それよりも大幅に低い温度で母液置換を実
施すれば、降温と昇温を繰り返す必要からエネルギーの
損失となり、従って母液置換塔を酸化反応とできるだけ
近い温度で行うことが望ましい。
装置で、かつ動力部分が少ないので高温、高圧での実施
が容易である。しかしながら温度が高いと、母液置換塔
の頂部から流出する酢酸溶媒母液中へのテレフタル酸溶
解量が必然的に多くなる。この母液は再び酸化反応の溶
媒として循環使用されるので、テレフタル酸の損失には
直結しないが、反応器の実質的な生産量低下を招くこと
になる。これらの諸条件を勘案すれば、母液置換工程の
温度は概ね酸化反応温度より120℃以内の低温、すな
わち80〜180℃程度とするのが好ましい。母液置換
塔の圧力は酢酸や水の温度を維持する圧力であり、温度
が決まれば自動的に下限の圧力が決定され、0〜15k
g/cm2 G程度となる。
層については、その流動性を保持することが重要であ
る。これはテレフタル酸結晶が沈降してできる堆積層が
完全な圧密状態になるとスラリーとしての特性が失わ
れ、工学的な手法によって母液置換塔から抜き出すこと
が出来なくなるからである。これを防ぐためにはテレフ
タル酸結晶の堆積層を常に流動させることが必要とな
る。また堆積層の流動性を保持することにより供給置換
水の分散が促進され、更に置換水がテレフタル酸結晶の
堆積層中を偏流して上昇したり、チャンネリングするこ
とを防止できる。
ける物質移動が促進されるため、母液置換塔の精製能
力、即ち母液置換率が低下してしまう。母液置換率を必
要以上に低下させないためには堆積層の流動性を微小に
抑えることが必須となる。堆積層に微小な流動性を与え
る方法としてはアーム式攪拌翼が最も効果的である。ま
た何らかの方法により堆積層に脈動を与えることも効果
がある。アーム式攪拌翼としては、アームが攪拌軸から
水平方向に延びるものなら何でも良く、攪拌軸上方向か
ら見た時アームが一文字、十文字、巴型などアームの本
数や形状には特に制約はない。アームの段数は堆積層の
高さによって決まり、またアームの断面については丸、
三角、菱形など堆積層を剪断するのに著しく動力を要す
るものでなければ特に制約はない。アーム式攪拌翼の回
転数は毎分0.1〜20回転が好ましく、更に好適には
毎分0.5〜10回転である。アーム式攪拌翼の翼径に
ついてはテレフタル酸結晶の堆積層全体を流動化させる
長さが必要とされる。実際の装置では母液置換塔塔径の
0.7〜0.99倍の翼径が好ましく、更に好適には母
液置換塔塔径の0.8〜0.99倍の翼径である。堆積
層に脈動を与える方法としては、供給置換水を供給時、
停止時と間欠的に繰り返す方法、供給置換水のラインに
パルサーを付けて脈動を与える方法、母液置換塔の底
部、つまりテレフタル酸結晶が堆積している部分に直に
パルサーを設置して脈動を与える方法等がある。
換水の温度は基本的には塔上部に供給されるテレフタル
酸結晶スラリーと同じ温度に設定されるが、それよりも
低温に設定しても良く、この置換水の温度を低めに設定
することにより置換水の加熱にかかる費用が低減され
る。しかしながら塔内を上昇流となって流れる置換水と
塔上部に供給されるテレフタル酸結晶スラリーの温度差
を大きくするには限界があり、この限界を越えると色々
な問題が生ずる。すなわちテレフタル酸結晶が析出して
塔内の壁面に付着したり、詰まりを起こし易くなり、運
転の安定性が損なわれる。またテレフタル酸結晶の沈降
速度が小さくなるので、母液置換塔の塔径を大きくする
必要があり、設備投資額の増加につながる。
部に供給されるテレフタル酸結晶スラリーと同温または
100℃以内の低い温度とする。一方、二系統目の置換
水は堆積層のテレフタル酸を安定的に抜き出すために用
いられるので、テレフタル酸の結晶が析出して詰まりを
起こさなければ良く、一系統目の置換水の温度と同じ
か、またはそれよりも5〜100℃低い温度とすること
が好ましい。置換水を二系統に分けたことにより系統毎
に温度を設定することが可能になり、プロセスにおける
低温の熱源を有効に利用でき、使用エネルギーが削減さ
れプロセスの低コスト化が図れる
明する。ただし本発明はこれらの実施例により制限され
るものではない。
原料スラリーである粗テレフタル酸結晶の酢酸溶媒スラ
リーの母液を水で置換する実験を行った。図1において
母液置換塔1はSUS製容器である。母液置換塔の上部
には原料スラリー導入管3があり、原料スラリー供給ポ
ンプ2に連結されている。塔頂部には母液排出管4があ
る。母液置換塔の底部は半楕円の皿型構造になってお
り、スラリー抜き出し管7が連結されている。スラリー
抜き出し管7の根元、つまり母液置換塔1との連結部の
近傍に二系統目の置換水導入管が接続されている。母液
置換塔1の中央部に横方向に示した漣線aはテレフタル
酸結晶堆積層の上面であり、漣線aからスラリー抜き出
し管7の連結部までが堆積層の長さ(高さ)となる。
し、系内に100℃の水を張り込んだ。母液排出管4か
ら水がオーバーフローし始めてからスラリー抜き出しポ
ンプ10を作動させた。更にモーター9を作動させてア
ーム式攪拌翼8を毎分4回転の速度で回転させた。次に
原料スラリー供給ポンプ2を作動して、原料スラリー導
入管3を経由して150℃の原料スラリーを供給した。
原料スラリーには商業的規模で製造されたテレフタル酸
の酢酸溶媒スラリーを用いた。該原料スラリーはパラキ
シレンを酸化反応触媒としてコバルト、マンガン、臭素
化合物を用い、反応温度195℃で含水酢酸溶媒中に空
気を吹き込んで酸化した反応生成物である。該反応生成
物を数段の逐次的に降温された晶析器を経由して150
℃まで冷却されたスラリーとし、このスラリーを母液置
換塔1に供給した。
堆積層の高さが所定の位置に保たれるように、粉面検出
器で監視しながらスラリー抜きだしポンプ10を調節し
た。この条件にける塔内の水の上昇線速度は空塔基準で
0.63m/hとなる。系内が定常状態になった後、そ
れぞれの流量を次のように調節設定した。 原料スラリー供給ポンプ2 794kg/h(結晶濃度33.1%) スラリー抜きだしポンプ10 786kg/h(結晶濃度33.5%) 水供給ポンプ11 一系統目 159kg/h 二系統目 420kg/h
々の点でサンプル採取を行って、各組成を分析した結果
は下記の通りであった。 原料スラリーの母液(原料スラリー供給ポンプ2から
採取したサンプルを室温まで冷却し、静置した上澄み
液) 酢酸 85.5% 水 14.1% 不明分 0.4% 抜き出しスラリー(スラリー抜きだしポンプ13から
採取したサンプルを室温まで冷却し、静置した上澄み
液) 酢酸 0.099% これより酢酸基準の母液置換率を計算すると99.9%
となる。
g/h、二系統目の置換水供給量を0kg/hとして運
転を行ったところ、堆積層の流動性が無くなり置換水の
上昇流のチャンネリングが発生し、更に塔底部でバルキ
ングが起こり塔底部からの結晶の抜き出しが不安定にな
り、運転できなくなった。
いては、極めて高い母液置換率が得られ、かつ母液置換
塔底部の堆積層中に供給する置換水を二系統に分けるこ
とによって機械的な抜き出し方法を用いることなく安定
的に堆積層からスラリーを抜き出すことができる。この
母液置換法により液相酸化反応によって得られた粗テレ
フタル酸の母液分離機とドライヤーが不要になる。ま
た、この母液置換塔は小型でシンプルな装置であり、実
験室規模の装置から商業的規模の装置へのスケールアッ
プが容易である。また該母液置換塔は、高温高圧での運
転が容易であるので、より高品質の高純度テレフタル酸
を得ることができ、粗テレフタル酸の晶析器数を減らす
こともできる。このため従来の高純度テレフタル酸製造
法における大きな問題点の一つであったプロセスフロー
の短縮が行われ、高純度テレフタル酸製造における建設
費が著しく削減されると共に運転操作が容易となる。ま
た本発明の高純度テレフタル酸製造法においては、粗テ
レフタル酸の母液分離機とドライヤーで消費されていた
用役費用が削減されることとなると共に、極めて高い母
液置換率が得られることから、液相酸化反応の溶媒であ
る酢酸の流出量が削減され排水処理にかかる負荷の増加
はほとんど発生していない。従って本発明により商業的
に極めて有利な高純度テレフタル酸の製造を行うことが
できる。
る。
Claims (5)
- 【請求項1】p−アルキルベンゼンの液相酸化によって
得られたテレフタル酸結晶の酢酸溶媒スラリーを水溶媒
スラリーに母液置換した後、接触水素化処理を行う高純
度テレフタル酸の製造方法において、母液置換塔上部に
該酢酸溶媒スラリーを導入し、テレフタル酸結晶の沈降
によって塔下部にテレフタル酸結晶の堆積層を形成して
塔底部から該堆積層を抜き出すようにし、塔内部に水の
上昇流を形成するに足る置換水を、堆積層内部からと、
堆積層抜出部からの二系統で供給することを特徴とする
高純度テレフタル酸の製造方法。 - 【請求項2】テレフタル酸結晶の堆積層中に攪拌翼を設
け、該攪拌翼を回転させることを特徴とする請求項1記
載の高純度テレフタル酸の製造方法。 - 【請求項3】堆積層内部からの置換水を堆積層中に設け
られたリングヘッダーより供給する請求項1〜2項記載
の高純度テレフタル酸の製造方法。 - 【請求項4】堆積層内部からの置換水を堆積層中に設け
られた攪拌翼より供給する請求項2記載の高純度テレフ
タル酸の製造方法。 - 【請求項5】底部抜出部からの置換水を、堆積層内部か
らの置換水よりも5〜100℃低い温度で供給する請求
項1〜4項記載の高純度テレフタル酸の製造方法。
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