JPH09263965A - Fe−Ni−O 系皮膜を有する合金化溶融亜鉛メッキ鋼板の製 造方法 - Google Patents

Fe−Ni−O 系皮膜を有する合金化溶融亜鉛メッキ鋼板の製 造方法

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JPH09263965A
JPH09263965A JP7074696A JP7074696A JPH09263965A JP H09263965 A JPH09263965 A JP H09263965A JP 7074696 A JP7074696 A JP 7074696A JP 7074696 A JP7074696 A JP 7074696A JP H09263965 A JPH09263965 A JP H09263965A
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恭紀 大崎
Yoichi Miyagawa
洋一 宮川
Shigeru Inoue
茂 井上
Michitaka Sakurai
理孝 櫻井
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 Fe-Ni-O系皮膜の付着量変動を低減すること
の可能なFe-Ni-O系皮膜を有する合金化溶融亜鉛メッキ
鋼板の製造方法を提供する。 【解決手段】 鋼板に、溶融亜鉛メッキを施した後、合
金化処理、調質圧延、次いでFe-Ni-O 系皮膜形成処理を
施してFe-Ni-O 系皮膜を有する合金化溶融亜鉛メッキ鋼
板を製造するに際して、合金化処理後のメッキ鋼板の表
面状態を、合金化処理条件から推定し、この推定した表
面状態の情報に基づいて、調質圧延の圧延条件のフィー
ドフォワード制御を行ない、調質圧延後のメッキ鋼板の
表面状態が所定範囲になるように調質圧延を行ない、Fe
-Ni-O 系皮膜を有する合金化溶融亜鉛メッキ鋼板を製造
する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、プレス成形性、
または必要に応じてさらにスポット溶接性、接着性、化
成処理性に優れ、あるいはさらに溶接散り等の溶融金属
が付着し難い合金化溶融亜鉛メッキ鋼板の製造方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】亜鉛系メッキ鋼板は種々の優れた特徴を
有するために、各種の防錆鋼板として広く使用されてい
る。この亜鉛系メッキ鋼板を自動車用防錆鋼板として使
用するためには、耐食性、塗装適合性等のほかに、車体
製造工程において要求される性能として、プレス成形
性、スポット溶接性、接着性および化成処理性に優れて
いること等が重要である。
【0003】また、スポット溶接時に発生する溶接散り
などの高速で飛散する溶融金属が表面に付着し難いこと
が要求される場合もある。
【0004】ところで、亜鉛系メッキ鋼板は、一般に冷
延鋼板に比べてプレス成形性が劣るという欠点を有す
る。これは亜鉛系メッキ鋼板とプレス金型との摺動抵抗
が、冷延鋼板の場合に比較して大きいことが原因であ
る。即ち、この摺動抵抗が大きいので、ビードと亜鉛系
メッキ鋼板との摺動抵抗が著しく大きい部分で、亜鉛系
メッキ鋼板がプレス金型に流入しにくくなり、鋼板の破
断が起こりやすくなる。
【0005】亜鉛系メッキ鋼板のプレス成形性を向上さ
せる方法としては、一般に高粘度の潤滑油を塗布する方
法が広く用いられている。しかし、この方法では、潤滑
油の高粘性のために、塗装工程で脱脂不良による塗装欠
陥が発生したり、またプレス時の油切れにより、プレス
成形性が不安定になる等の問題がある。従って、亜鉛系
メッキ鋼板のプレス成形性が改善されることが強く要請
されている。
【0006】一方、亜鉛系メッキ鋼板は、スポット溶接
時に電極の銅と溶融した亜鉛が反応して脆い合金層を形
成しやすいために、銅電極の損耗が激しく、その寿命が
短く、冷延鋼板に比べて連続打点性が劣るという問題が
ある。
【0007】更に、自動車車体の製造工程においては、
車体の防錆、制振等の目的で各種の接着剤が使用される
が、近年になって亜鉛系メッキ鋼板の接着性が冷延鋼板
の接着性に比較して劣ることが明らかになってきた。
【0008】上述した問題を解決する方法として、特開
昭53-60332号公報および特開平2-190483号公報は、亜鉛
系メッキ鋼板の表面に電解処理、浸漬処理、塗布酸化処
理、または加熱処理を施すことにより、ZnOを主体とす
る酸化膜を形成させて溶接性、または加工性を向上させ
る技術(以下先行技術1という)を開示している。
【0009】特開平4-88196 号公報は、亜鉛系メッキ鋼
板表面に、リン酸ナトリウム5 〜60g/l を含むpH2 〜6
の水溶液中にメッキ鋼板を浸漬するか、電解処理、ま
た、上記水溶液を散布することにより、P 酸化物を主体
とした酸化膜を形成して、プレス成形性および化成処理
性を向上させる技術(以下先行技術2という)を開示し
ている。
【0010】特開平3-191093号公報は、亜鉛系メッキ鋼
板の表面に電解処理、浸漬処理、塗布処理、塗布酸化処
理または加熱処理により、Ni酸化物を生成させることに
より、プレス成形性および化成処理性を向上させる技術
(以下、先行技術3という)を開示している。
【0011】特開昭58-67885号公報は、亜鉛系メッキ鋼
板の表面に、例えば、電気メッキまたは化学メッキによ
り、NiおよびFe等の金属を生成させて耐食性を向上させ
る技術(以下、先行技術4という)を開示している。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
た先行技術には下記の問題がある。
【0013】先行技術1は、上述した各種処理により、
メッキ層表面にZnOを主体とする酸化物を生成させる方
法であるため、プレス金型とメッキ鋼板との摺動抵抗の
低減効果は少なく、プレス成形性の改善効果は少く、ま
た、ZnO主体の酸化物がメッキ層表面に存在すると接着
性が劣化するという問題を有する。
【0014】先行技術2は、P酸化物を主体とした酸化
膜を亜鉛系メッキ鋼板の表面に形成する方法であるた
め、プレス成形性および化成処理性の改善効果は大きい
が、スポット溶接性、接着性が劣化するという問題を有
する。
【0015】先行技術3は、Ni酸化物単相の皮膜を生成
させる方法であるため、耐食性は向上するが、接着性が
低下するという問題がある。
【0016】先行技術4は、Ni等の金属のみを形成させ
る方法であるため、耐食性は向上するが、皮膜の金属的
性質が強いため、プレス成形性の改善効果が十分ではな
い。更に、金属の接着剤に対する濡れ性が低く、十分な
接着性が得られないと言う問題がある。
【0017】従って、プレス成形性に優れ、さらに必要
に応じて適宜スポット溶接性、接着性、化成処理性にも
優れる亜鉛系メッキ鋼板は存在していない。
【0018】また、現時点では、スポット溶接時に発
生、飛散する溶接散り等の付着を抑制できる亜鉛系メッ
キ鋼板の開発はなされていない。
【0019】本発明者らは、上述した問題を解決すべ
く、鋭意研究を重ねた結果、亜鉛系メッキ鋼板のメッキ
層の表面に、Fe-Ni-O系の適正な皮膜を形成することに
より、プレス成形性に加えて、スポット溶接性、接着性
および化成処理性を改善できることを見出し、プレス成
形性に優れ、さらに必要に応じてスポット溶接性、接着
性および化成処理性に優れた亜鉛系メッキ鋼板について
特願平6-257499号により出願した。また、前記したFe-N
i-O 系皮膜が、溶接時に発生、飛散する溶接散り等の付
着を低減できることも見出した。
【0020】前記鋼板においては、亜鉛系メッキ鋼板の
少なくとも一方のメッキ層表面に、求められる性能に応
じて、下記により規定されるような所定のFe-Ni-O系皮
膜を形成する。
【0021】(1)プレス成形性に優れるためには、Fe-
Ni-O系皮膜の付着量(以下、皮膜付着量という):Fe-Ni
-O 系皮膜中の金属元素の合計量換算で、10〜1500mg/m
2 、Fe-Ni-O系皮膜の酸素含有量(以下、皮膜の酸素
含有量という):0.5〜30wt%未満とする。
【0022】(2)プレス成形性とスポット溶接性に優れ
るためには、皮膜付着量: 10〜1500mg/m2 、皮膜の
酸素含有量: 0.5 〜30wt% 未満、 Fe-Ni-O 系皮膜中
のFe含有量(wt%) とNi含有量(wt%) との和に対するFe含
有量(wt%) の比率( 以下、皮膜中Fe/Fe+Niという):0超
〜0.9 とする。
【0023】(3)プレス成形性と接着性に優れるために
は、皮膜付着量: 10〜1500mg/m2 、皮膜の酸素含有
量: 0.5 〜30wt% 未満 、皮膜中Fe/Fe+Ni:0.05 〜1.
0 未満とする。
【0024】(4)プレス成形性、スポット溶接性、接着
性および化成処理性に優れるためには、皮膜付着量:
10〜1500mg/m2 、皮膜の酸素含有量: 0.5 〜10wt% 未
満、皮膜中Fe/Fe+Ni:0.05 〜0.9 とする。
【0025】(5)上記の(4) において、さらにプレス成
形性および接着性に優れるためには、皮膜付着量: 10
〜1200mg/m2 、皮膜の酸素含有量: 0.5 〜10wt% 未
満、皮膜中Fe/Fe+Ni:0.1〜0.3 とする。
【0026】(6)スポット溶接時に発生、飛散する溶接
散り等の溶融金属の付着を抑制するためには、皮膜付
着量: 50 〜10000mg/m2、皮膜の酸素含有量: 皮膜中
Fe/Fe+NiをFec とした場合、0.5 〜9×Fec+21の範囲と
する。
【0027】前記したFe-Ni-O系の皮膜の作用について
は以下のように考えている。従来の亜鉛系メッキ鋼板
は、プレス成形性において、冷延鋼板に比較して劣る。
それは、亜鉛系メッキ鋼板とプレス金型との摺動抵抗が
大きいからである。その原因は、高面圧下において、低
融点の亜鉛と金型が凝着現象を起こすためである。これ
を防ぐためには、亜鉛系メッキ鋼板のメッキ層の表面
に、亜鉛または亜鉛合金メッキ層より硬質で、且つ高融
点の皮膜を形成することが有効である。前記したFe-Ni-
O系皮膜は硬質かつ高融点であるから、亜鉛系メッキ鋼
板の表面に、Fe-Ni-O系皮膜を形成することにより、プ
レス成形時におけるメッキ層表面とプレス金型との摺動
抵抗が低下し、亜鉛系メッキ鋼板がプレス金型へ滑り込
み易くなり、プレス成形性が向上する。
【0028】従来の亜鉛系メッキ鋼板は、スポット溶接
における連続打点性において、冷延鋼板に比較して劣
る。その原因は、溶接時に溶融した亜鉛が電極の銅に拡
散して脆弱な合金層を生成するために、合金層の剥離に
よる電極先端径の拡大を生じるためである。従って、亜
鉛系メッキ鋼板の連続打点性を改善する方法としては、
メッキ層表面に、高融点の皮膜を形成し、メッキ金属と
銅電極との反応を抑制することが有効である。亜鉛系メ
ッキ鋼板のスポット溶接性を改善するために、各種の皮
膜について検討した結果、NiあるいはNi酸化物皮膜が特
に有効であることを見出した。この理由は明らかでない
が、非常に高融点のNi酸化物が亜鉛の銅電極への拡散を
抑制し、銅電極の損耗を低減する、あるいは、NiがZnと
反応し高融点のZn-Ni合金を形成し、亜鉛と銅電極との
反応を抑制することによるものと推定される。
【0029】従来の亜鉛系メッキ鋼板の接着性が、冷延
鋼板に比較して劣ることは知られていたが、この原因は
明らかになっていなかった。そこで、この原因について
調査した結果、鋼板表面の酸化皮膜の組成により、接着
性が支配されることが明らかになった。すなわち、冷延
鋼板の場合には鋼板表面の酸化皮膜はFe酸化物主体とな
るのに対し、亜鉛系メッキ鋼板では主にZn酸化物が主体
となる。この酸化皮膜の組成により接着性が異なってお
り、Zn酸化物はFe酸化物に比べて接着性が劣っていた。
従って、亜鉛系メッキ鋼板の表面に前記したFe酸化物皮
膜を形成することによって、接着性を改善できる。
【0030】従来の亜鉛系メッキ鋼板の化成処理性が、
冷延鋼板に比較して劣るのは、鋼板表面のZn濃度が高い
ために、形成されるリン酸塩結晶が粗大で不均一となる
こと、および、リン酸塩結晶の質が異なることに起因す
る。鋼板表面のZn濃度が高い場合には、リン酸塩結晶は
ホパイトが主体となり、塗装後の温水2次密着性に劣
る。これは、リン酸塩結晶中のFe濃度が低いため、塗装
後湿潤環境下に曝されると、化成処理皮膜が復水し、鋼
板との密着力を失うことが原因である。
【0031】化成処理皮膜の復水を抑制するためには、
リン酸塩結晶中にFeおよびNi等の金属を含有させること
が有効である。前記のFe-Ni-O系皮膜を形成することに
より、化成処理の際に皮膜中のNiおよびFeがリン酸塩結
晶中に取り込まれ、良好な密着性を有する化成処理皮膜
となり、また、緻密で均一なリン酸塩結晶が形成され、
温水2次密着のみならず、耐食性も向上する。
【0032】また、スポット溶接時に飛散する溶接散り
等の溶融金属が鋼板表面に付着する現象は次のような理
由によるものと考えた。即ち、従来の亜鉛系メッキ鋼板
では表面メッキ層の亜鉛が変形しやすいため、高速で飛
来する溶融金属によりメッキ層が変形し、凹凸が形成さ
れる。また、この溶融金属はメッキ層融点が低い場合、
メッキ層を溶融させて合金層を形成しながら急速に冷却
され凝固、付着する。したがって、鋼板表面層の融点が
低い状態で、しかも降伏応力が低く変形し易い状態にな
っていると溶融金属が付着、凝固しやすくなる。
【0033】前記のFe-Ni-O系皮膜は、高硬度で高融点
であるので、亜鉛系メッキ層の表面に高速で飛来する溶
融金属による変形、溶融を防ぐので、溶接時に発生する
高速で飛来する溶融金属が付着し難くなると考えられ
る。
【0034】さらに、亜鉛系メッキ層の上に、Feイオン
とNiイオンとを必須成分として含む処理液を用いて、浸
漬処理や電解処理により前記した構成のFe-Ni-O系皮膜
を形成する亜鉛系メッキ鋼板の製造方法について検討し
た。その結果、FeイオンとNiイオンとを必須成分として
含む硫酸・硝酸浴の水溶液を用いた浸漬処理による方法
( 特願平7-303132号) 、塩化浴水溶液を用いた浸漬処理
による方法(特願平7-216589号) 、硫酸浴の水溶液を用
いた電解処理による方法( 特願平7-303131号等) の各種
の処理液、処理法により、前記した亜鉛系メッキ鋼板を
製造することができることを見出した。
【0035】前記した特願平7-216589号による塩化浴水
溶液を用いた浸漬処理による方法は、FeCl2 およびNiCl
2 を含有し、Fe含有量(g/l) とNi含有量(g/l) との和に
対するFe含有量(g/l) の比率が、0.004 〜0.9 の範囲内
にあり、pHが2.0 〜3.5 の範囲内、且つ温度が20〜70℃
の範囲内に調整した水溶液、あるいはこの水溶液にさら
に酸化剤を含有させた水溶液により亜鉛系メッキ鋼板を
処理、あるいはさらに前記の水溶液で処理した後、さら
に、酸化性雰囲気中で500 〜600 ℃の温度域に加熱する
ことにより、Fe-Ni-O系皮膜を有する亜鉛系メッキ鋼板
を製造する方法である。
【0036】また、特願平7-303131号による硫酸浴を用
いた電解処理による方法は、硫酸ニッケルおよび硫酸第
一鉄を含む水溶液中において、亜鉛系メッキされた鋼板
を陰極として電解するに際して、前記水溶液中の硫酸ニ
ッケルおよび硫酸第一鉄の合計濃度が0.1 〜2.0mol/lの
範囲内とし、ニッケルイオン濃度と第一鉄イオン濃度と
の和:M(mol/l) と、メッキ液の平均流速U:(m/s) と、前
記電解における電流密度:Ik (A/dm2) との間に、 Ik /
(U1/2×M)=50 〜150 の関係を満足するようにして電解
処理を行なうことにより、前記したFe-Ni-O系皮膜を有
する亜鉛系メッキ鋼板を製造する方法である。
【0037】ところで、本発明者らが、連続式亜鉛メッ
キラインにおいて、溶融亜鉛メッキ後、鋼板を加熱して
メッキ層を鉄を7 〜17wt% 程度含む亜鉛−鉄合金メッキ
層とした合金化溶融亜鉛メッキ鋼板について、前記に記
載したようなFeイオンとNiイオンとを必須成分として含
む処理液を用いて、浸漬処理や電解処理により、前記し
た構成のFe-Ni-O系皮膜を形成した場合、皮膜付着量の
変動が大きい場合が認められた。
【0038】また、皮膜付着量が多い場合、皮膜形成後
の鋼板表面が褐色系黒色化することが判明した。鋼板表
面が黒色化すると、有害な小粒ドロス欠陥や微小押疵等
の欠陥の検出が困難となり、製品品質保証上のトラブル
が発生する。また、皮膜の付着量変動が大きい場合、得
られた製品ロット間で外観が異なるという弊害もある。
【0039】一方、スポット溶接される場合、スポット
溶接時の溶接散りの鋼板への付着を防止するためには、
Fe-Ni-O 系皮膜付着量を200mg/m2以上とする方がより有
利であるため、ある程度の皮膜付着量を確保したい場合
もある。
【0040】即ち、安定した品質の確保という観点か
ら、Fe-Ni-O 系皮膜の付着量変動を低減できる方が有利
であり、また、皮膜の付着量変動が低減できるようにな
り、例えば、皮膜付着量が200 〜500mg/m2の範囲内にあ
るものを安定製造できれば、プレス成形性、スポット溶
接性、接着性、化成処理性、溶接時に発生、飛散する溶
接散りの付着防止といった効果を兼ね備えた合金化溶融
亜鉛メッキ鋼板の安定提供が可能となり、同一の鋼板を
多用途に使用することができるようになるという利点が
ある。
【0041】従って、Fe-Ni-O系皮膜を形成した合金化
溶融亜鉛メッキ鋼板の製造に際しては、形成されるFe-N
i-O系皮膜の付着量変動を低減できれば有益である。
【0042】本発明は、前記した事情を考慮してなされ
たものであり、前記したFe-Ni-O系皮膜を有する合金化
溶融亜鉛メッキ鋼板を製造するに際して、Fe-Ni-O系皮
膜の付着量変動を低減することの可能な合金化溶融亜鉛
メッキ鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
【0043】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、浸漬処理
や電解処理により合金化溶融亜鉛系メッキ鋼板のメッキ
層の上に形成したFe-Ni-O系皮膜の付着量変動要因につ
いて検討した。
【0044】その結果、以下のことを知見した。 浸漬方式、電解方式の何れの方法においても、形成さ
れるFe-Ni-O系皮膜の付着量は、Fe-Ni-O系皮膜を形成す
る前のメッキ鋼板の表面状態(酸化皮膜の状態、表面粗
さ)と調質圧延条件に大きく影響される。これは、以下
の理由によるものと考えられる。
【0045】例えば、浸漬処理により、Fe-Ni-O系皮
膜を形成する場合、皮膜形成の主たる反応は、処理液内
の金属イオンと亜鉛メッキ皮膜中のZnとの置換反応であ
り、調質圧延によりメッキ層の最表層の酸化皮膜が破壊
される程、Fe-Ni-O系皮膜の付着量が多く安定的に形成
される。合金化溶融亜鉛メッキ鋼板について、塩化浴の
処理液を用いた浸漬処理で、同一の浸漬処理条件による
場合、酸化皮膜の破壊の程度の面積比B(%)と、形成され
るFe-Ni-O 系皮膜付着量W との間には、図4 に示される
ような関係が認められる。
【0046】なお、酸化皮膜の破壊の程度の面積比B(%)
は、調質圧延後のメッキ鋼板表面を走査型電子顕微鏡(S
EM) により、2 ×2mm の範囲を500 倍に拡大し、酸化膜
の破壊された部分を目視判定し、n=3 以上の平均値とし
て求めた。
【0047】また、電解処理により、Fe-Ni-O系皮膜
を形成する場合、電解反応の反応効率は、電解電流密度
により影響を受ける。表面粗さが小さく表面が平坦な場
合、電解反応面近傍の電流密度が大きくなるので、皮膜
付着量が多くなる。合金化溶融亜鉛メッキ鋼板につい
て、硫酸浴の処理液を用いた電解処理で、同一の電解処
理条件による場合、表面粗さRaと、形成されるFe-Ni-O
系皮膜付着量との間には、図5 に示されるような関係が
認められる。
【0048】従って、Fe-Ni-O系皮膜の付着量を一定
に保ち、安定した品質の製品を製造するためには、処理
前のメッキ鋼板の表面状態( 酸化皮膜の状態、表面粗
さ) を一定範囲内に制御する必要がある。
【0049】しかし、合金化溶融亜鉛メッキ鋼板の合
金化処理後の表面粗さは、鋼成分、鋼板寸法、合金化処
理条件等、特に合金化処理温度により大きく左右され
る。鋼成分、鋼板寸法、合金化処理条件の異なる合金化
溶融亜鉛メッキ鋼板のFe-Ni-O系皮膜を形成する前の鋼
板の表面粗さを常に一定範囲内にすることは困難であ
る。また、酸化膜の破壊程度については、これまで全く
考慮されていない。
【0050】なお、Fe-Ni-O系皮膜形成処理前のメッ
キ鋼板の表面状態に応じて、Fe-Ni-O系皮膜形成の処理
条件を変更することにより、対応することも考えられ
る。しかし、この場合、Fe-Ni-O系皮膜形成の処理条件
として、処理液温度、pH、液濃度・液組成、処理時間等
の処理液条件を変更することが必要になる。処理液条件
の変更に時間がかかり、応答性に欠けるため、処理を施
すコイル毎に迅速に処理液条件を変更してて制御するこ
とは、現実的には不可能である。
【0051】合金化溶融亜鉛メッキ鋼板の表面粗さ
は、メッキ浴への侵入板温と合金化処理温度に大きく影
響される。
【0052】メッキ浴への侵入板温と表面粗さとの間に
は、図6 に示す関係がある。侵入板温が高温になるほ
ど、メッキ浴内における結晶の生成核が多く形成される
ため結晶粒が細粒化され合金化後の表面凹凸は小さく、
即ち表面粗さが小さくなる。
【0053】また、合金化処理温度と表面粗さとの間に
は、図7 に示す関係がある。合金化処理温度が500 ℃以
下では、柱状で粗い結晶構造をしたζ相が形成されるた
め、合金化処理後のメッキ鋼板の表面凹凸が大きくな
る。一方、500 ℃を超えた温度域で合金化処理を行なう
と、塊状で細かい結晶構造をしたδ1 相が形成されるた
め、メッキ鋼板の表面凹凸は小さく、即ち、表面粗さが
小さくなる。
【0054】合金化溶融亜鉛メッキ鋼板について調質
圧延後の表面粗さ、酸化皮膜の破壊の程度について、種
々の検討を行なったところ、これらが調質圧延の圧延荷
重と相関があり、圧延荷重を制御することにより、鋼板
の表面粗さ、酸化膜の破壊の程度を制御できることがわ
かった。
【0055】図8 は、圧延荷重(Ton/mm)と調質圧延後の
メッキ鋼板の表面粗さの関係を示す図であり、圧延荷重
の増加とともに表面粗さが減少している。図9 は、圧延
荷重(Ton/mm)と調質圧延後のメッキ層表面の酸化皮膜の
破壊された部分の面積比(%)との関係を示す図であり、
圧延荷重の増加に従い、酸化皮膜の破壊された部分の面
積比(%) が増大している。圧延荷重を適切に制御するこ
とにより、調質圧延後の鋼板表面粗さ、酸化皮膜の破壊
の程度を所要の範囲に制御することができる。
【0056】また、調質圧延の圧延荷重はメッキ層の
合金化度により影響を受けることもわかった。メッキ層
の合金化度と調質圧延の圧延荷重との関係を図10に示
す。メッキ層中のFe濃度が増加すると圧延荷重が増加す
る。これは、Fe濃度の増加により、メッキ層そのものが
硬質化するとともに、硬くて脆いΓ相の比率が増大する
ためである。
【0057】従って、メッキ浴への侵入鋼板温度と合金
化処理温度に基づき、調質圧延前の鋼板表面粗さを予測
し、この予測値と実測した合金化度に基づいて、調質圧
延の圧延荷重をフィードフォワード制御することによ
り、調質圧延後のメッキ鋼板表面を所定範囲の表面状態
にできる。この表面状態が所定範囲にされた鋼板にFe-N
i-O 系皮膜形成処理を施すことによって、形成されるFe
-Ni-O 系皮膜付着量の変動を低減することができる。
【0058】本発明は、上記の知見に基づくものであ
り、その特徴とする構成は以下の通りである。
【0059】(1) 鋼板に、溶融亜鉛メッキを施した後、
合金化処理、調質圧延、次いでFe-Ni-O 系皮膜形成処理
を施してFe-Ni-O 系皮膜を有する合金化溶融亜鉛メッキ
鋼板を製造するに際して、合金化処理後のメッキ鋼板の
表面状態を、合金化処理条件から推定し、この推定した
表面状態の情報に基づいて、調質圧延の圧延条件のフィ
ードフォワード制御を行なうことにより、調質圧延後の
メッキ鋼板の表面状態が所定範囲になるように調質圧延
を行なうFe-Ni-O 系皮膜を有する溶融亜鉛系メッキ鋼板
の製造方法。
【0060】(2) 前記(1) に記載のフィードフォワード
制御により、Fe-Ni-O 系皮膜付着量が200 〜500mg/m2
Fe-Ni-O 系皮膜を有する合金化溶融亜鉛メッキ鋼板を製
造するに際して、調質圧延後のメッキ鋼板の表面状態を
示す指数である、表面粗さRaが0.5 〜1.5 μm の範囲
内、且つ表面粗さRaと調質圧延によりメッキ層が潰され
て酸化皮膜が破壊された部分の面積比との関係が、下記
の(2) 式を満足する表面状態になるように調質圧延条件
を制御するFe-Ni-O 系皮膜を有する合金化溶融亜鉛メッ
キ鋼板の製造方法。
【0061】1 ≦(A/B) ×100 ≦3 ・・・(2) 但し、 A: 調質圧延後の合金化溶融亜鉛メッキ鋼板の表面粗さR
a( μm) B: 調質圧延により合金化溶融亜鉛メッキ層が潰されて
酸化皮膜が破壊された部分の面積比(%)
【0062】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態について、図
2 により説明する。
【0063】図2は、連続式溶融亜鉛メッキラインの要
部を示す図である。図2 において、1 は焼鈍炉、2 は亜
鉛メッキ浴、3 はワイピングノズル、4 は合金化炉、5
は調質圧延機、6 はFe-Ni-O 系皮膜処理装置、7 は亜鉛
メッキ浴に侵入する鋼板の侵入板温を測定する鋼板温度
計、8は合金化処理温度を測定する合金化処理温度計、
9は合金化度計、10はラインコンピューター、11は
調質圧延機コントローラー、12は鋼板である。15は調質
圧延機入側のブライドルロール、16は調質圧延機出側の
ブライドルロール、17a 、17b はワークロール、18a 、
18b はバックアップロールである。
【0064】この装置を用いて、Fe-Ni-O 系皮膜を有す
る合金化溶融亜鉛メッキ鋼板を製造する場合について説
明する。
【0065】図示されていない入側コイル巻戻し装置か
ら巻き戻して送りだされ、焼鈍炉1で所定の焼鈍を施さ
れた鋼板12は、亜鉛メッキ浴2 への侵入板温が鋼種、鋼
板寸法、操業速度等により決まる所定温度になるように
鋼板温度計7 により制御され、メッキ金属を溶融保持す
る亜鉛メッキ浴2 中に浸漬されメッキされる。溶融した
メッキ金属を付着して亜鉛メッキ浴2 から出た鋼板は、
亜鉛メッキ浴2 上に設けられたワイピングノズル3 によ
り所定のメッキ付着量に調整され、次いで、合金化炉4
で加熱されて、母材鋼板からメッキ層中に鉄を拡散さ
せ、メッキ層中の鉄濃度が7 〜17wt% 程度の亜鉛−鉄合
金メッキ層とした後、図示されていない冷却装置により
冷却される。合金化処理に際しては、合金化炉出口の設
けられた合金化処理温度計8 により処理温度が鋼種、鋼
板寸法、操業速度、メッキ付着量等により決まる所定温
度になるように制御される。
【0066】冷却された鋼板は、調質圧延機5 により、
形状矯正、表面外観の改善、表面の平滑化、あるいは機
械的性質の改善等を目的にした調質圧延が施される。
【0067】鋼板温度計7 により測定した亜鉛メッキ浴
2 に侵入する鋼板の侵入板温情報、合金化処理温度計8
により測定した合金化処理情報、合金化度計9 により測
定したメッキ層の合金化度情報をラインコンピューター
10に出力する。
【0068】ラインコンピューター10では、前記の入力
された情報に基づき、鋼成分組成、鋼板寸法、材質グレ
ード、メッキ層の合金化度、目標伸び率、操業速度等に
応じて予め作成された演算式あるいはテーブルに基づい
て、調質圧延後のメッキ鋼板の表面状態が所定範囲にな
るように、圧延荷重、張力、延び率等を演算し、これら
を調質圧延機コントローラー11に指示する。
【0069】調質圧延条件の調整は次のように行なう。
合金化処理後のメッキ鋼板の表面粗さは、メッキ浴への
侵入板温や合金化処理温度と図6 や図7 に示す関係があ
るので、予めメッキ浴への侵入板温と合金化処理温度に
よる合金化処理後のメッキ鋼板の表面粗さの関係を、各
鋼種成分系毎に、重回帰分析により両者の関係式を求め
たり、両者の関係をテーブル化しておくことができる。
【0070】図11は、鋼板のメッキ浴への侵入板温と合
金化処理温度による合金化処理後のメッキ鋼板の表面粗
さを推定するために作成されたラインコンピューター内
に設定されたテーブルの一例であり、メッキ浴への侵入
板温と合金化処理温度の組み合わせに対応する表面粗さ
の推定値が記載されている。このテーブルは各鋼種成分
系毎に作成されている。
【0071】圧延荷重P は、鋼種、鋼板寸法、目標伸長
率、操業条件( 操業速度、調質圧延機入出張力) 、メッ
キ層の合金化度等により影響される。例えば、圧延荷重
P は、下記の(3) 式により、各製造条件に基づいて設定
される。
【0072】 P = a0 + a1t + a2 ω+ a3T E+ + a4TD + a5ε + a6V + a7S・・・(3) 但し、t:板厚(mm)、ω: 板幅(mm)、 TE : 調質圧延機入
側張力(kg)、T D : 調質圧延機出側張力(kg)、ε: 目標
伸び率(%) 、V:操業速度(mpm) 、S:メッキ層中のFe濃度
(wt%) a0〜a7: 定数で、鋼種の成分系毎に、ラインコンピュー
ター内にテーブルで設定される。
【0073】ところで、上記により設定される圧延荷重
P と、調質圧延後の表面粗さA(Ra:μm)と酸化皮膜の破
壊された部分の面積比B(%)との比、A/B ×100 との関係
は、図12に示されるような関係があり、F=A/B ×100 を
F とすると、F とP の関係は下記の(4) 式で表される。
【0074】F=k1/P ・・・(4) k1は、調質圧延前の合金化処理後のメッキ鋼板の表面粗
さにより決定される定数であり、メッキ浴への侵入板
温、合金化処理条件により変化するため、鋼種の成分系
毎に、前記した図11に示したテーブルに設定されている
( 以下、k1を原板粗さ定数k1という)。
【0075】ラインコンピューターに入力されたメッキ
浴への侵入板温、合金化処理温度に基づいて、図12と図
11に示したテーブルから推定される調質圧延前の合金化
処理後の鋼板の表面粗さより、A/B ×100 の値が推定さ
れる。圧延荷重P とA/B ×100 の関係は、図13に示され
るような関係があるので、前記により推定したA/B ×10
0 の値が目標値になるように圧延荷重ΔP の補正を行な
う。
【0076】これらの手順を図14のフローシートにより
説明する。先ず、(3) 式に基づいて、初期荷重P0を演算
する。次いで、メッキ浴への侵入板温情報、合金化処理
温度情報に基づいて、図11に示されるテーブルにより、
合金化処理後の鋼板表面粗さ、および原板粗さ定数k1
求め、さらにA/B ×100 の値を推定する。次いで、図13
から、推定したA/B ×100 の値が目標とするA/B ×100
の値になるように圧延荷重をΔP0だけ修正し、補正後圧
延荷重P1を演算する。次いで、補正後推定荷重P1から、
調質圧延後の推定鋼板表面粗さA1を推定する。次いで、
推定鋼板表面粗さA1が、所定の鋼板表面粗さの範囲内に
あるか否かチェックする。推定鋼板表面粗さA1が、所定
の鋼板鋼板表面粗さの範囲内にあるときは、前記で求め
た圧延荷重P1を圧延荷重P として設定する。
【0077】また、推定鋼板表面粗さA1が、所定の鋼板
表面粗さの範囲内にないときは、図13に示されるよう
に、さらに、A/B ×100 の値が目標とするA/B ×100 の
値の範囲内にあるようにして、圧延荷重をΔP1だけ修正
し、補正後圧延荷重P2を演算する。次いで、補正後推定
荷重P2から、調質圧延後の推定鋼板表面粗さA2を推定す
る。次いで、推定鋼板表面粗さA2が、所定の鋼板表面粗
さの範囲内にあるか否かチェックする。推定鋼板表面粗
さA2が、所定の鋼板鋼板粗さの範囲内にあるときは、前
記で求めた圧延荷重P2を圧延荷重P として設定する。ま
た、推定鋼板表面粗さA2が、所定の鋼板表面粗さの範囲
内にないときは、さらに、前記の演算を続行して、調質
圧延後の鋼板表面粗さA の値およびA/B ×100 の値が所
定の範囲になる圧延荷重P を求める。
【0078】調質圧延機5 において、調質圧延機コント
ローラー11は、バックアップロール18a 、18b に前記で
指示された所定の圧延荷重P を加えるとともに、このバ
ックアップロールによりバックアップされたワークロー
ル17a 、17b により、調質圧延後のメッキ鋼板の表面状
態が所定範囲になるように調質圧延を施す。また、調質
圧延機コントローラー11は、プロセスコンピュター10か
らの指示に基づき、入側ブライドルロール15、出側ブラ
イドルロール16の軸端におのおの設けられたパルス発振
器により調質圧延における鋼板の延び率を演算し、この
延び率が一定になるように、入側ブライドルロール、出
側ブライドルロール間の張力を制御する。
【0079】次いで、Fe-Ni-O 系皮膜処理装置6 におい
て、調質圧延が施された鋼板に、所定成分組成の処理液
を用いて、浸漬方式、電解方式により、所定条件でFe-N
i-O系皮膜処理を施し、所定付着量のFe-Ni-O 系皮膜を
形成した後、図示されていない出側コイル巻取り装置に
より巻き取られる。
【0080】このような制御を行なうことにより、形成
されるFe-Ni-O 系皮膜付着量の変動を低減できる。
【0081】さらに、前記の場合において、調質圧延後
のメッキ鋼板の表面状態を示す指数である、表面粗さRa
が0.5 〜1.5 μm の範囲内、且つ表面粗さRaをA(μm)、
調質圧延によりメッキ層が潰されて酸化皮膜が破壊され
た部分の面積比をB(%)とした場合、A/B ×100 が1 〜3
を満足する表面状態に調質圧延条件を制御することによ
り、Fe-Ni-O 系皮膜付着量が200 〜500mg/m2のFe-Ni-O
系皮膜を有する溶融亜鉛系メッキ鋼板を安定製造でき
る。
【0082】この範囲に限定した理由は下記の通りであ
る。表面粗さRaは、0.5 〜1.5 μm にすることが望まし
い。自動車部品等の用途に使用される場合、一般に小板
にブランキング加工された後プレス成形等の加工が施さ
れる場合が多い。表面粗さRaが0.5 μm 未満になると、
ブランキング加工の際に、鋼板がスリップし易くなり、
ブランキング後の長さの寸法精度不良を発生する。ま
た、表面粗さRaが、1.5 μm を超えると、表面粗さが大
き過ぎるため、プレス成形性が低下する。
【0083】A/B ×100 が1 未満では、表面粗さRaが小
さく、且つ調質圧延により酸化膜の破壊された部分の面
積比B が大きくなり、形成される皮膜付着量が多く成り
過ぎる。
【0084】また、A/B ×100 が3 を超えると表面粗さ
Raが大きく、且つ調質圧延による酸化膜の破壊が不十分
となり、所定の皮膜付着量を得ることができなくなる。
【0085】図1 の斜線により囲まれる範囲が前記の限
定範囲に相当する。なお、鋼板温度計7 、鋼板温度計8
としては、公知の温度計をを用いることができる。
【0086】また、合金化度計は公知の合金化度計を用
いることができる。
【0087】
【実施例】
(実施例1)板厚が0.60〜1.20mm、板幅が 914〜1524mmで
引張強さが30〜40kgf/mm2 レベルのIF鋼を素材とし、メ
ッキ付着量が片面当たり32〜67g/m2でメッキ層中のFe濃
度が7.8 〜15.5wt% の溶融合金化亜鉛メッキ鋼板につい
て、目標Fe-Ni-O 系皮膜付着量範囲を200 〜500mg/m2
して、Fe/(Fe+Ni):0.004〜0.9 の塩化浴の水溶液を用い
て、pH: 2.0 〜3.5 、温度: 20〜70℃の浸漬処理による
Fe-Ni-O 系皮膜形成処理を行った。
【0088】その際、鋼板温度計7 により測定した亜鉛
メッキ浴2 に侵入する侵入板温情報、合金化処理温度計
8 により測定した合金化処理情報、合金化度計9 により
測定したメッキ層の合金化度情報に基づき、前記の発明
の実施の形態において説明した圧延荷重の調整を行い、
調質圧延後のメッキ鋼板の表面状態を、表面粗さRaが0.
5 〜1.5 μm の範囲内、且つ表面粗さRaをA(μm)、調質
圧延によりメッキ層が潰されて酸化皮膜が破壊された部
分の面積比をB(%)とした場合、A/B ×100 を1〜3 を満
足するように調質圧延の圧延条件を制御して調質圧延を
行なった。
【0089】前記の制御を行なった場合のコイルミドル
部( 定常部) の皮膜付着量の変動状況を表1 に示す。ま
た、比較のために、前記の制御を行なわないで、調質圧
延機の入側ブライドルと出側ブライドル間の張力を一定
として、伸び率制御を圧延荷重を制御することにより行
なった場合の皮膜付着量の変動状況を表1 に併せて記載
する。
【0090】また、前記の場合における付着量公差外れ
率の推移を図3 に示す。
【0091】
【表1】
【0092】表1 から、従来技術による比較例の場合70
mg/m2 前後ある標準偏差が、本発明例の場合40mg/m2
で低減されている。
【0093】また、図3 から、従来技術では2%程度あっ
た付着量公差外れ率が、本発明例では0 .5% 程度に低減
されている。
【0094】なお、前記の実施例は、FeイオンとNiイオ
ンとを含む塩化浴の処理液を用いた浸漬処理の場合であ
るが、本発明はこの処理法に限定されるものではなく、
FeイオンとNiイオンとを含む水溶液を用いて、浸漬処
理、電解処理によりFe-Ni-O 系処理皮膜を形成する場合
においても同様の結果を得ることができる。
【0095】
【発明の効果】本発明によれば、Fe-Ni-O 系皮膜付着量
変動を低減した溶融亜鉛系メッキ鋼板が製造できるの
で、Fe-Ni-O 系皮膜付着量の目標範囲が狭い場合におい
ても、付着量外れ率を大幅に改善することができ、その
結果、歩留り向上を図ることができる。また、プレス成
形性、スポット溶接性、接着性および化成処理性の全て
の性能に優れ、更に、溶接散り等の溶融金属が付着しに
くいFe-Ni-O 系皮膜を有する合金化溶融亜鉛メッキ鋼板
であるFe-Ni-O 系皮膜付着量が200 〜500mg/m2の付着量
範囲にある合金化溶融亜鉛メッキ鋼板を安定して製造す
るとも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における鋼板表面粗さと酸化皮膜の破壊
された部分の面積比の範囲を説明する図。
【図2】連続式溶融亜鉛メッキラインの要部を示す図。
【図3】Fe-Ni-O 系皮膜の付着量公差外れ率の推移を示
す図。
【図4】メッキ層表面の酸化皮膜が破壊された部分の面
積比と皮膜付着量との関係を説明する図。
【図5】メッキ鋼板の表面粗さRaと皮膜付着量との関係
を説明する図。
【図6】亜鉛メッキ浴への侵入板温と合金化処理された
鋼板の表面粗さとの関係を説明する図。
【図7】合金化処理温度と合金化処理された鋼板の表面
粗さとの関係を説明する図。
【図8】圧延荷重と調質圧延後の表面粗さとの関係を説
明する図。
【図9】圧延荷重と調質圧延後の酸化皮膜の破壊された
部分の面積比との関係を説明する図。
【図10】調質圧延の圧延荷重に及ぼす合金化度の影響を
説明する図。
【図11】合金化処理後( 調質圧延前) の鋼板表面粗さを
推定するテーブルを示す図。
【図12】圧延荷重、合金化処理後( 調質圧延前) の鋼板
表面粗さおよび調質圧延後の鋼板のA/B の値との関係を
説明する図。
【図13】圧延荷重の修正を説明する図。
【図14】圧延荷重設定の手順を説明するフロー図。
【符号の説明】
1 焼鈍炉 2 亜鉛メッキ浴 3 エアワイピングノズル 4 合金化炉 5 調質圧延機 6 Fe-Ni-O 系皮膜処理装置 7 亜鉛メッキ浴に侵入する鋼板温度計 8 合金化処理温度計 9 合金化度計 10 ラインコンピューター 11 調質圧延機コントローラー 12 鋼板
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 櫻井 理孝 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼板に、溶融亜鉛メッキを施した後、合
    金化処理、調質圧延、次いでFe-Ni-O 系皮膜形成処理を
    施してFe-Ni-O 系皮膜を有する合金化溶融亜鉛メッキ鋼
    板を製造するに際して、合金化処理後のメッキ鋼板の表
    面状態を、合金化処理条件から推定し、この推定した表
    面状態の情報に基づいて、調質圧延の圧延条件のフィー
    ドフォワード制御を行ない、調質圧延後のメッキ鋼板の
    表面状態が所定範囲になるように調質圧延を行なうこと
    を特徴とするFe-Ni-O 系皮膜を有する合金化溶融亜鉛メ
    ッキ鋼板の製造方法。
  2. 【請求項2】 請求項1 に記載のフィードフォワード制
    御により、Fe-Ni-O系皮膜付着量が200 〜500mg/m2のFe-
    Ni-O 系皮膜を有する合金化溶融亜鉛メッキ鋼板を製造
    するに際して、調質圧延後のメッキ鋼板の表面状態を示
    す指数である、表面粗さRaが0.5 〜1.5 μm の範囲内、
    且つ表面粗さRaと調質圧延によりメッキ層が潰されて酸
    化皮膜が破壊された部分の面積比との関係が、下式(1)
    を満足する表面状態になるように調質圧延条件を制御す
    ることを特徴とするFe-Ni-O 系皮膜を有する合金化溶融
    亜鉛メッキ鋼板の製造方法。 1 ≦(A/B) ×100 ≦3 ・・・(1) 但し、 A: 調質圧延後の合金化溶融亜鉛メッキ鋼板の表面粗さR
    a( μm) B: 調質圧延により合金化溶融亜鉛メッキ層が潰されて
    酸化皮膜が破壊された部分の面積比(%)
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