JPH09259A - β−ガラクトシダーゼ産生プラスミド及びβ−ガラクトシダーゼの製造法 - Google Patents

β−ガラクトシダーゼ産生プラスミド及びβ−ガラクトシダーゼの製造法

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JPH09259A
JPH09259A JP7175583A JP17558395A JPH09259A JP H09259 A JPH09259 A JP H09259A JP 7175583 A JP7175583 A JP 7175583A JP 17558395 A JP17558395 A JP 17558395A JP H09259 A JPH09259 A JP H09259A
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JP
Japan
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galactosidase
plasmid
bacillus subtilis
dna
gene
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JP7175583A
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Toru Iino
透 飯野
Takashi Morishita
隆 森下
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Yakult Honsha Co Ltd
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Yakult Honsha Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 ストレプトコッカス・サーモフィルス由来の
β−ガラクトシダーゼ遺伝子を枯草菌形質転換体株の細
胞内で効率よく発現し、ストレプトコッカス・サーモフ
ィルスのβ−ガラクトシダーゼを多量に生産させること
のできるβ−ガラクトシダーゼ産生プラスミドを得る。 【構成】 ストレプトコッカス・サーモフィルス由来の
β−ガラクトシダーゼ産生遺伝子を、枯草菌テンペレー
トファージSP02由来のプロモータの下流に連結した
β−ガラクトシダーゼ産生プラスミドを枯草菌に導入
し、その培地中で培養し、培養菌体中にβ−ガラクトシ
ダーゼを蓄積させて、β−ガラクトシダーゼを採取する
ものである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は枯草菌(Bacillus subtil
is) に導入されて効率よくβ−ガラクトシダーゼを産生
するプラスミドに関し、更に前記プラスミドを用いて枯
草菌中でβ−ガラクトシダーゼを産生する方法に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】近年、組換えDNA実験技術を中心とす
る遺伝子操作技術は急速に発展してきた。この組換えD
NA実験技術を用い、バチルス・ステアロサーモフィル
ス(Bacillus stearothermophilus) 、サーマス・アクア
ティカス(Thermus quaticus)、ラクトバチルス・ブルガ
リカス(Lactobacillus bulgaricus)等のβ−ガラクトシ
ダーゼ遺伝子がクローニングされている(特開昭61−
81788号、特開昭62−208285号、特開平2
−5878号)。
【0003】β−ガラクトシダーゼはラクトースの分解
並びにガラクトース転移反応等を行う酵素であるが、手
軽に活性を測定できるので、分子生物学では殆ど一般的
な手法の一つとなっている。即ち、タンパク質や遺伝子
融合の検定を行う上で、反応の進行状況をβ−ガラクト
シダーゼが生合成されるように仕組んだ実験を利用して
判断されている。これは、外来性DNA断片をβ−ガラ
クトシダーゼの産生に寄与する遺伝子領域に挿入すると
β−ガラクトシダーゼの産生がなくなることを利用する
ものであり、培地中に5−ブロモ−4−クロロ−3−イ
ンドリル−β−D−ガラクトピラノシド(以下、X−g
alと記す)を添加しておけば、外来性DNA断片が挿
入されていないものは、これを分解して5−ブロモ−4
−クロロ−3−インディゴを形成し、菌体を染めて青い
コロニーを作るのに対し、外来性DNA断片を挿入した
組換え体を持つ菌では、酵素を産生できず、コロニーは
無色で容易に選別できるものである。
【0004】例えば、発酵乳の乳酸菌スターターの1つ
として用いられるストレプトコッカス・サーモフィルス
(Streptococcus thermophilus)のβ−ガラクトシダーゼ
についても遺伝子がクローニングされている(アール・
イー・ハーマン、等;アプライド エンヴァイロメンタ
ル ミクロバイオロジー 52巻 45−50頁(1986年)
(R.E.Herman,et al;Applied and Environmental Microb
iology,52,45-50(1986)):以下、単に「資料1」と記
す)。
【0005】しかしながら、ストレプトコッカス・サー
モフィルス菌の培養菌体中から得られるβ−ガラクトシ
ダーゼの量は少ないため、本酵素の分離精製操作も煩雑
となり、ストレプトコッカス・サーモフィルスを用いて
β−ガラクトシダーゼを生産することは困難である。
【0006】そこで、本発明者らは、先に、組換えDN
A技術を利用して、ストレプトコッカス・サーモフィル
スのβ−ガラクトシダーゼ遺伝子を大腸菌で強力なプロ
モータ活性を有するtacプロモータの下流に連結した
ことを特徴とするプラスミドpTI−ST−βを作製
し、これを導入した大腸菌組換え体を培養することによ
り、この大腸菌の菌体内にβ−ガラクトシダーゼを蓄積
させることに成功した。この遺伝子組換え大腸菌(E.co
li K12 JM109(pTI-ST-β) 微工研菌寄第12447号)
の培養によるβ−ガラクトシダーゼの製造法を完成し、
提案した(特開平5−103668号:以下、単に「資
料2」と記す)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】資料2の方法によれ
ば、ストレプトコッカス・サーモフィルス由来のβ−ガ
ラクトシダーゼを大腸菌組換え体の細胞内で効率よく生
産することができる。しかしながら、工業的には更に本
酵素の生産性の向上が望まれるため、本発明をするに至
った。
【0008】本発明は、ストレプトコッカス・サーモフ
ィルス由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子を枯草菌形質
転換体株の細胞内で効率よく発現し、ストレプトコッカ
ス・サーモフィルスのβ−ガラクトシダーゼを多量に生
産させることのできるβ−ガラクトシダーゼ産生プラス
ミドを得ることを目的とし、更に遺伝子組換え技術を応
用したβ−ガラクトシダーゼの経済的な製造方法を確立
することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本請求項1に記載された
発明に係るβ−ガラクトシダーゼ産生プラスミドは、ス
トレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus the
rmophilus)由来のβ−ガラクトシダーゼ産生遺伝子を、
枯草菌テンペレートファージSP02由来のプロモータ
の下流に連結したものである。
【0010】本請求項2に記載された発明に係るβ−ガ
ラクトシダーゼの製造法は、前記請求項1に記載のβ−
ガラクトシダーゼ産生プラスミドを導入した枯草菌(Bac
illus subtilis) を培地中で培養し、培養菌体中にβ−
ガラクトシダーゼを蓄積させて、β−ガラクトシダーゼ
を採取するものである。
【0011】
【作用】本発明では、ストレプトコッカス・サーモフィ
ルス由来のβ−ガラクトシダーゼ産生遺伝子を、枯草菌
テンペレートファージSP02由来のプロモータの下流
に連結したβ−ガラクトシダーゼ産生プラスミドを枯草
菌に導入し、その培地中で培養し、培養菌体中にβ−ガ
ラクトシダーゼを蓄積させて、β−ガラクトシダーゼを
採取するため、β−ガラクトシダーゼを枯草菌形質転換
体株の細胞内で効率よく、大量に発現させることができ
る。
【0012】前記枯草菌テンペレートファージSP02
由来のプロモータとは、枯草菌にクローニングしたクロ
ラムフェニコール耐性遺伝子(クロラムフェニコールア
セチルトランスフェラーゼ)やジヒドロ葉酸還元酵素遺
伝子を発現した例が知られており、塩基配列が明らかに
されている(ロナルド・スコーナ、等;ジーン 22巻47
−57頁(1983年)(Ronald G.Schoner.et al.Gene,22,47
-57(1983)))。これらの実験に用いられたプロモータを
含むDNA断片は 0.3kbの EcoRI断片で、この領域内に
3個のプロモータ様配列が存在する。
【0013】また、本発明に使用されるβ−ガラクトシ
ダーゼ遺伝子の取得法は、前述の資料1の方法又は資料
2の方法が可能であるが、既に微工研に寄託済の大腸菌
組換え体(E.coli K12 JM109(pTI-ST-β) 微工研菌寄第
12447号)のプラスミド(pTI-ST-β) より取得でき
る。
【0014】枯草菌テンペレートファージSP02のプ
ロモータを含む 0.3kbのDNA断片の取得は、ファージ
SP02から通常の方法でファージDNAを分離し、こ
れをEcoRIで切断することで得ることが可能であるが、
このDNA断片を含むプラスミドpPL608(ディ・エム・
ウイリアムス、等;ジーン 16巻 199− 206頁(1981
年)(D.M.Williams,et al.Gene,16,199-206(1981)))
(ATCC(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレク
ション) No.37108)より取得できる。
【0015】取得したβ−ガラクトシダーゼ遺伝子を含
むDNA断片及びプロモータを含むDNA断片は制限酵
素で消化した後又は末端へのリンカーの付加を行った
後、同じ制限酵素で切断したベクターDNAにT4DN
Aリガーゼを用いて連結することにより、β−ガラクト
シダーゼ遺伝子やプロモータを組込んだプラスミドが得
られる。このとき、ベクターとして大腸菌と枯草菌の何
れにおいても複製可能な、所謂シャトルベクターを用い
れば、大腸菌,枯草菌のどちらにもプラスミドを導入す
ることができるので、β−ガラクトシダーゼ遺伝子やプ
ロモータを連結したプラスミドを構築する過程は大腸菌
を宿主として行うことができる。
【0016】上記のようにして得た組換え体プラスミド
を、β−ガラクトシダーゼ遺伝子の欠損した大腸菌に形
質転換する。ストレプトコッカス・サーモフィルスのβ
−ガラクトシダーゼ遺伝子を含むDNA断片の組み込ま
れたプラスミドを保持する大腸菌の形質転換体はX−g
alと形質転換体選択のための薬剤を添加した寒天平板
培地で培養した後、X−galがβ−ガラクトシダーゼ
の分解によって青色を呈したコロニーを選択することに
より得られる。
【0017】また、β−ガラクトシダーゼ遺伝子の組込
まれたプラスミドにプロモータを含むDNA断片を更に
組込む場合は、プラスミドのβ−ガラクトシダーゼ遺伝
子の上流にある制限酵素サイトに更にプロモータを含む
DNA断片を連結し、再び、上記と同様に大腸菌を形質
転換する。
【0018】ついで、得られた組換え体からのプラスミ
ドの分離は以下の方法で行なう。プラスミドを保持する
大腸菌を培養集菌する。菌体よりアルカリ法やクリアー
ドライゼート法、等によりプラスミドDNAを得る。得
られたプラスミドDNAは、枯草菌を形質転換できる。
またこのプラスミドDNAから大腸菌由来のDNA部分
を制限酵素で切除することで枯草菌のみを形質転換でき
るプラスミドを得ることができる。上記のようにして得
たプラスミドを保持する枯草菌の形質転換体を液体培地
で培養し、超音波破砕器などで破砕することによって、
ストレプトコッカス・サーモフィルスのβ−ガラクトシ
ダーゼの粗酵素液を効率よく得ることができる。粗酵素
液からβ−ガラクトシダーゼは通常の手段で精製するこ
とができる。
【0019】尚、本発明に係るβ−ガラクトシダーゼ産
生プラスミドは、枯草菌の形質転換体(B.subtilis ISW
1214(pHYBP3))として、平成07年06月06日に付け
で寄託済である(微工研菌寄第14975号)。
【0020】
【実施例】以下に本発明を実施例により更に明確にす
る。図1は本発明の一実施例のプラスミドpHYβP3
の作成過程を示した説明図である。1.プラスミドpTI−ST−βからのβ−ガラクトシ
ダーゼ遺伝子の分離 1μgのpTI−ST−β(特開平5−103668号
参照)を PstIで消化した。これを0.7%アガロースゲル
で電気泳動し、ストレプトコッカス・サーモフィルスの
β−ガラクトシダーゼ遺伝子( ST-β-gal)を含む7k
bのDNA断片をゲルから回収した。抽出したDNAは
フェノール抽出、エタノール沈殿を行い、精製した。精
製した7kbのDNA断片を10μlの滅菌水に溶解さ
せた。T4DNAポリメラーゼで処理し、このDNA断
片の両端末を平滑末端にした後、DNA断片の末端に8
塩基のBamHIリンカーd(pCGGATCCG )をT4DNAリ
ガーゼで連結させた。このDNAをBamHIと SalIで消
化し、DNA断片の末端に余分に連結したリンカーを切
除した。また同時にβ−ガラクトシダーゼ遺伝子の下流
側に SalIサイトを露出させた。
【0021】2.プロモータ(P(SP02))断片の
取得 1μgのpPL608(アメリカン・タイプ・カルチャ
ー・コレクションより取得、No.37108)を Eco
RIで処理し、これを1.4%アガロースゲルで電気泳動し
た。このゲルより約 0.3kbのDNAバンドを切りだし、
DNA断片を回収した。このDNA断片をT4DNAポ
リメラーゼで処理後、BamHIリンカーd(pCGGATCCG )
を加えて、T4DNAリガーゼ処理を施した。この操作
により末端にBamHIサイトを有するプロモータ断片P
(SP02)が得られた。
【0022】3.枯草菌と大腸菌間のシャトルベクター
pHY320PLK の脱リン酸化 ベクターpHY320PLK(特開昭63−01631
1号)1μgに対し、BamHIと SalIを各々10ユニット
加え、37℃で3時間完全消化した。フェノール抽出、
エーテル抽出、エタノール沈殿によって回収したDNA
を真空下で乾燥させた。これを 100mM Tris-HCl (pH
8.0)溶液 100μlに溶解し、5ユニットのアルカリホ
スファターゼを加え37℃で1時間反応した後、フェノ
ール抽出、エーテル抽出、エタノール沈殿でDNAを回
収した。回収したプラスミドは水に溶解した。
【0023】4.ベクターDNAへのβ−ガラクトシダ
ーゼ遺伝子の挿入 上記1.のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子を担う 6.5kbの
DNA断片と上記3.のベクターDNAを混合し、66mM
Tris-HCl (pH 7.5)、 6.6mM MgCl2、1mMDTT、1
mM ATP、5ユニットのT4−DNAリガーゼを加
え、16℃で16時間反応した。
【0024】5.組換え体プラスミドによる大腸菌の形
質転換 上記4.の反応液を、大腸菌JM108株のコンピテン
トセルと混合し、氷中に、20分間放置した後、42℃
で2分間処理し、再び氷中に戻した。これを3mlのL
B培地(塩化ナトリウム 0.5%、トリプトン 1%、酵
母エキス 0.5%)に接種し、37℃で1時間振盪培養し
た。遠心により菌を集め、これをアンピシリン(100
μg/ml)、X−gal(40μg/ml)を含むL
B寒天培地に塗抹し、37℃で一昼夜培養することによ
ってアンピシリン耐性の形質転換株を選択した。ここで
得られたアンピシリン耐性の大腸菌形質転換体の殆どは
β−ガラクトシダーゼを産生するようになったため、寒
天培地中のX−galを分解し、青色を呈するよう形質
転換されていた。青色を呈する株の一つを以降に使用し
た。
【0025】6.β−ガラクトシダーゼ遺伝子を担うプ
ラスミドの精製 上記5.によって選択した菌株を100μg/mlのア
ンピシリンを添加したLB培地100mlに接種し、培
養集菌後アルカリ法によりプラスミドを精製した。即
ち、菌体を2mlのA溶液(25mM Tris-HCl (pH8.
0),10mM EDTA,15% ショ糖、2mg/m
l リゾチーム)に懸濁し、0℃で10分間処理した
後、4mlのB溶液(0.2M 水酸化ナトリウム、1
%SDS)を加え0℃で10分間処理した。これに2.
5mlの3M 酢酸ナトリウムを加え、0℃で20分間
処理した後、遠心により沈殿を除き、分取した上澄にリ
ボヌクレアーゼAを50μg/mlになるように添加し
て、37℃で30分間処理した。
【0026】フェノール抽出,フェノール/クロロホル
ム(1:1)抽出後、水層を分取した。水層に2倍量の
エタノールを加えて、エタノール沈殿を行なった。沈殿
を0.8mlの水に溶解し、4Mの食塩0.2ml,1
3%のポリエチレングリコール6000 1mlをそれ
ぞれ加え混合して0℃に1時間放置した。15000×
g 10分間の遠心によってDNAの沈殿を集め、この
沈殿を80%のエタノールで洗浄したのち真空下で乾燥
した。沈殿を水に溶解した。このプラスミドをpHYβ
とした。
【0027】7.pHYβのBamHIによる切断と脱リン
酸化 pHYβ1μgに対し、BamHIを10ユニット加え、3
7℃で3時間消化した。フェノール抽出、エーテル抽
出、エタノール沈殿によって回収したDNAを真空化で
乾燥させた。これを100mM Tris−HCl(pH
8.0)溶液100μlに溶解し、5ユニットのアルカ
リホスファターゼを加え、37℃で1時間反応した後、
フェノール抽出、エーテル抽出、エタノール沈殿でDN
Aを回収した。回収したプラスミドは水に溶解した。
【0028】8.pHYβへのプロモータP(SP0
2)の挿入 上記2のプロモータP(SP02)のDNA断片と、上
7.のプラスミドを混合し、66mM Tris-HCl (pH
7.5)、6.6mM MgCl2 ,1mM DTT,1mM
ATP,5ユニットのT4DNAリガーゼを加え、1
6℃で16時間反応した。
【0029】9.組換え体プラスミドによる大腸菌の形
質転換 上記8.の反応液を、大腸菌JM108株のコンピテン
トセルに添加し、氷中に20分間放置した後、42℃で
2分間処理し、再び氷中に戻した。これを3mlのLB
培地(塩化ナトリウム0.5%,トリプトン1%,酵母
エキス 0.5%)に接種し、37℃で1時間振盪培養
した。遠心により集めた菌を、アンピシリン(100μ
g/ml)、X−gal(40μg/ml)を含むLB
寒天培地に塗抹し、37℃で一昼夜培養することによっ
てアンピシリン耐性とβ−ガラクトシダーゼ活性の両方
を有する青色を呈するコロニーを選択した。
【0030】ここで得た青色コロニーより4株を無作為
に選び、 No.1,2,3,4と名付けた。この4株とp
HYβを保持するコントロール株とをアンピシリン(1
00μg/ml)を添加したLB培地にそれぞれ接種して、
37℃で一昼夜培養した。培養液より0.1mlを試験
管に分取し、β−ガラクトシダーゼ活性測定用の合成基
質であるo−ニトロフェニル−β−D−ガラクトシド
(ONPG)を用いる方法(エクスペリメンツ・イン・
モレキュラー・ジェネティクス(Experiments inMolecul
ar Genetics), J.H.Miller p403(1972))に従って発色
反応を行った。 No.1の培養液では、反応液は濃黄色を
示したが、 No.2,3,4とコントロール株との培養液
では薄い黄色しか示さなかった。即ち、 No.1の培養菌
体は、 No.2,3,4やコントロールの株に比べてβ−
ガラクトシダーゼ活性が高いことが示された。 No.1
は、β−ガラクトシダーゼ遺伝子に対しP(SP02)
が正方向に連結されたプラスミドを保持する株であると
予想された。
【0031】続いて、No.1の株より、上記6.と同
様の方法にて、プラスミドDNAを抽出した。
【0032】プラスミドDNAは水に溶解し、制限酵素
BamHIにより消化した後、アガロースゲル電気泳動を行
った。この結果、P(SP02)の 0.3kbの挿入をもつ
ことが判った。抽出されたプラスミド即ちP(SP0
2)プロモータに対して順方向にβ−ガラクトシダーゼ
遺伝子が連結されたプラスミドを、pHYβPRとし
た。
【0033】10.プラスミドの小型化 上記9.で得たプラスミドpHYβPRのDNA 1μ
gを10ユニットの AflIIで2時間消化した。65℃で
10分間保温することで AflIIを失活させた後、10ユ
ニットの SalIで更に2時間消化した。フェノール抽
出、エーテル抽出、エタノール沈殿でDNAを回収し
た。回収したDNAはT4DNAポリメラーゼで末端を
平滑化した。フェノール抽出、エーテル抽出、エタノー
ル沈殿によりDNAを回収し、66mM Tris-HCl (pH
7.5),6.6mMMgCl2 ,1mMDTT,1mM A
TP,5ユニットのT4DNAリガーゼを加え、4℃で
16時間反応した。
【0034】11.枯草菌の形質転換 枯草菌(Bacillus subtilis ISW1214 hsrM1,leuA8,metB
5,TcS )(Ishiwa等,Jpn.J.Genet.,61,515-528(1986))
を培地I(スピザイゼン ミネラル培地)(Spizizen m
ineral medium : K2HPO4 1.4%, KH2PO4 0.6%, (NH4)2SO
4 0.2%, クエン酸ナトリウム 0.1%, MgSO4・7H2O 0.02%,
グルコース 0.5% に対してカゼイン加水分解物 0.02
%,酵母エキス 0.1% ,L−ロイシン50μg/ml,
L−メチオニン50μg/mlを加えたもの)に、1×
108 /ml程度接種した。これを37℃で振盪培養し
て、約4時間経過後、静止期に入った段階で培地II(培
地Iのカゼイン加水分解物を除き、酵母エキスを 0.02
%,L−ロイシンを5μg/ml,L−メチオニンを5
μg/mlとし、5mM MgClを加えたもの)中で、
10倍に薄めて培養を続行した。培養液中の菌は90分
後に、コンピテント(Competent) 状態に達した。このコ
ンピテント細胞90μlに上記10.の反応液10μl
を加えて37℃で、90分間振盪培養しながら形質転換
を行った。
【0035】12.形質転換体の検出 DNAを取り込ませた形質転換体を20μg/mlのテ
トラサイクリンと40μg/mlのX−galを含むL
B−寒天平板上に塗布して、37℃で24時間培養し
た。この寒天培地上に生じた濃青色のコロニーを選択し
た。選択したコロニーを20μg/mlのテトラサイク
リンを含むLB液体培地10mlに接種し、37℃で一
昼夜振盪培養し、上記6.に示した方法でプラスミドD
NAを回収した。但し、各反応に用いた薬剤は全て10
分の1の体積で行った。得られたプラスミドの大きさを
0.7%のアガロースゲルで電気泳動し調べた。大きさ
は約10kbであったことから操作10.により、pH
YβPR(12.16kb)より、大腸菌中での複製・
選択に必要な AflII-SalI DNA断片が除去されpH
YβP3が得られたことを確認した。
【0036】13.枯草菌組換え体の培養 上記12.で得た組換え体を100μg/mlのテトラ
サイクリンと0.5mg/mlのL−メチオニンと0.5m
g/mlのL−ロイシンを加えたA培地(Journal of Bacter
iology, 165 ,796-804,1986)100mlに接種し、24
時間又は48時間,37℃で強く振盪しながら培養し
た。また、対照としてpHY320PLKで形質転換さ
れた枯草菌B.subtilis(pHY320PLK)を同じ条
件で培養した。表1に培地1による結果を示した。
【0037】一方、上記12.で得た組換え体を合成培
地でも培養した。即ち、Syntheticmedium (Biotechnol.
Bioeng.,28,204-209(1986))より、チアミン−HCl,
L−スレオニン,L−トリプトファン,L−ヒスチジ
ン,アンピシリンを除いたものに5mg/mlのポリペ
プトン,0.5mg/mlのL−メチオニン,100μ
g/mlのテトラサイクリンを加え、L−ロイシンの濃
度を0.5mg/mlに変更した組成の培地100ml
12.で得た組換え体を接種し、37℃で強く振盪し
ながら24時間又は48時間培養した。また対照とし
て、pHY320PLKで形質転換された枯草菌B.subt
ilis(pHY320PLK)を同じ条件で培養した。表
1に培地2の結果を示した。
【0038】
【表1】
【0039】14.ストレプトコッカス・サーモフィル
スの培養 100mlの変法Rogosa培地(1%乳糖を含む)
にストレプトコッカス・サーモフィルス ATCC19258 を
接種して37℃で24時間もしくは48時間静置培養し
た。培養液を6000×g 10分の遠心にかけ、菌体
を集めた。
【0040】15.培養液のβ−ガラクトシダーゼ活性
の測定 上記13.および14.にて得た培養液のうち1部を超
音波破砕機にかけ菌体を破砕した。 100,000×g,30
分の遠心により沈殿を除き、上澄を用いてβ−ガラクト
シダーゼ活性を測定した。β−ガラクトシダーゼ活性は
合成基質であるO−ニトロフェニル−β−D−ガラクト
シド(ONPG)を用いる方法(エクスペリメンツ・イ
ン・モレキュラー・ジェネティクス(Experiments in M
olecular Genetics),J.H.Miller p403(1972))に従って
測定した。
【0041】酵素活性はONPGの加水分解により生じ
るニトロフェノール分子の吸光度を420nmの波長で
検出し、37℃、1分間に1μmolのニトロフェノー
ルを遊離する活性強度を1ユニットとした。表1に示し
た結果より、本発明の組換え体大腸菌を用いた場合の方
が、得られるβ−ガラクトシダーゼの活性が高いことが
明らかである(ストレプトコッカス・サーモフィルスの
数10倍から100倍)。
【0042】16.β−ガラクトシダーゼの精製 上記13.で得られた菌体を破砕し、常法に従い処理を
行い。β−ガラクトシダーゼを得た。
【0043】
【発明の効果】本発明は以上説明したとおり、ストレプ
トコッカス・サーモフィルス由来のβ−ガラクトシダー
ゼ産生遺伝子を、枯草菌のテンペレートファージSP0
2由来のプロモータの下流に連結したβ−ガラクトシダ
ーゼ産生プラスミドを枯草菌に導入し、その枯草菌を培
地中で培養し、培養菌体中にβ−ガラクトシダーゼを蓄
積させて、β−ガラクトシダーゼを採取するため、スト
レプトコッカス・サーモフィルスの培養菌体を用いた場
合に比べ、β−ガラクトシダーゼを枯草菌形質転換体株
の細胞内で効率よく、大量に発現させることができると
いう効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】プラスミドpHYβP3の作成過程を示した説
明図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12R 1:46) (C12N 9/38 C12R 1:125) (C12N 1/21 C12R 1:125)

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ストレプトコッカス・サーモフィルス(S
    treptococcus thermophilus)由来のβ−ガラクトシダー
    ゼ産生遺伝子を、枯草菌テンペレートファージSP02
    由来のプロモータの下流に連結したことを特徴とするβ
    −ガラクトシダーゼ産生プラスミド。
  2. 【請求項2】 前記請求項1に記載のβ−ガラクトシダ
    ーゼ産生プラスミドを導入した枯草菌(Bacillus subtil
    is) を培地中で培養し、培養菌体中にβ−ガラクトシダ
    ーゼを蓄積させて、β−ガラクトシダーゼを採取するβ
    −ガラクトシダーゼの製造法。
JP7175583A 1995-06-20 1995-06-20 β−ガラクトシダーゼ産生プラスミド及びβ−ガラクトシダーゼの製造法 Pending JPH09259A (ja)

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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US9314041B2 (en) 2005-03-03 2016-04-19 Meiji Co., Ltd. Immune function modulating agents
CN111363714A (zh) * 2020-04-07 2020-07-03 齐鲁工业大学 一种食品级嗜热链球菌表达载体的构建方法
JP2022535648A (ja) * 2020-04-27 2022-08-10 江南大学 ゲンチオオリゴ糖の製造における耐熱性β-グルコシダーゼの使用

Cited By (4)

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CN111363714A (zh) * 2020-04-07 2020-07-03 齐鲁工业大学 一种食品级嗜热链球菌表达载体的构建方法
CN111363714B (zh) * 2020-04-07 2022-06-28 齐鲁工业大学 一种食品级嗜热链球菌表达载体的构建方法
JP2022535648A (ja) * 2020-04-27 2022-08-10 江南大学 ゲンチオオリゴ糖の製造における耐熱性β-グルコシダーゼの使用

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