JPH09257737A - 食品の品質検知用ガスセンサ - Google Patents

食品の品質検知用ガスセンサ

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JPH09257737A JP8090631A JP9063196A JPH09257737A JP H09257737 A JPH09257737 A JP H09257737A JP 8090631 A JP8090631 A JP 8090631A JP 9063196 A JP9063196 A JP 9063196A JP H09257737 A JPH09257737 A JP H09257737A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 食品工業分野においてスープ類等の食品の品
質評価を簡便、迅速、かつ安価に行う。 【解決手段】 硫酸リチウム(Li2SO4)又は硫酸ナ
トリウム(Na2SO4)を酸化インジウム(In23
に分散し、これを素子材料として半導体ガスセンサを構
成する。そして、この半導体ガスセンサによってスープ
類等の食品に含まれるにおい成分である二硫化ジメチル
を検出する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、食品工業分野にお
いてスープ類等の加工食品の品質管理、製造管理に有効
に使用される食品の品質検知用ガスセンサに関し、さら
に詳しくは、食品のフレーバー画分に見い出される成分
である二硫化ジメチルに優れた応答特性を示すガスセン
サに関する。
【0002】
【従来の技術】加工食品であるスープ類は、脂肪族炭化
水素、芳香族炭化水素、アルデヒド、ケトン、フラン
類、エステル、硫黄化合物、窒素化合物、フェノール、
油脂等の種々の呈味成分、におい成分を含有する。例え
ばコンソメスープでは、重要なにおい成分として、畜肉
中に含まれるエステル類、野菜を煮込んだ際に発生する
ケトン類、肉を煮込んだ際に発生するアルデヒド類、肉
の香ばしいにおい成分であるピラジン類、野菜を煮込ん
だ際の爽やかな香り成分である硫黄化合物が含まれてい
る。これらの各グループについては、それぞれ酢酸エチ
ル、アセトン、カプロンアルデヒド、2−メチルピラジ
ン、二硫化ジメチルといった代表的成分が挙げられ、こ
れらの成分が混合されてコンソメスープ独特のにおいを
形成している。
【0003】スープ類の製造においては、その呈味性、
香気性を的確に評価し、その結果に基づいて各工程を管
理することが重要である。従来、スープ類等の加工食品
の製造工程における味やにおいに対する品質管理は、人
間の感覚に頼る官能試験を中心とし、これに糖度や透視
度等を測定するといった評価法を併用しているのが現状
である。
【0004】しかし、近年、加工食品の品質については
厳しい要求がなされるようになっており、従来のような
評価法では十分な品質管理を行うことが困難になってい
る。特に味やにおいの官能試験については、客観的に評
価しようとすれば、専門パネルの養成あるいはそれらの
複数の人による評価が必要であり、製造工程での即時的
対応は難しいこととなり、いわゆる味のプロが長年の勘
に頼っているのが現状である。また、官能試験では個人
差や体調などにも左右され、味やにおいの正確な判定を
行うことが難しい。
【0005】一方、味やにおいの代表的成分を機器類で
分析することにより、食品の品質を管理することも考え
られる。味の分析手段としては、高速液体クロマトグラ
フや、酵素センサ、微生物センサ等のうまみ成分用セン
サがあり、においの分析手段としては、ガスクロマトグ
ラフ等がある。しかし、高速液体クロマトグラフやガス
クロマトグラフは装置が複雑かつ大型で高価な上、操作
が煩雑で測定に時間を要するため、現場での管理に用い
るには不適である。また、上記のうまみ成分用センサで
は寿命や感度での問題が見られ、十分な結果が得られて
いない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記事情に
鑑みてなされたもので、スープ類等の加工食品の品質評
価を簡便、迅速、かつ安価に行うことが可能な食品の品
質検知用ガスセンサを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、スープ類
に含まれるにおい成分の検討を行い、このにおい成分が
スープ類の官能評価に大きな影響を与えること、したが
ってスープ類に含まれるにおい成分に高感度に応答する
ガスセンサを開発すれば、スープ類の品質管理を簡便に
精度良く行なえることに着目した。そして、スープ類の
フレーバー画分に見い出される成分である二硫化ジメチ
ルに優れた応答特性を示す半導体ガスセンサ材料を探索
した。
【0008】この場合、金属酸化物を素子材料とした硫
黄系ガス用センサとして、これまで硫化水素用センサと
メルカプタン用センサが提案されており、そのセンサ素
子材料としては、硫化水素用では酸化錫、メルカプタン
用では酸化インジウムを用いることが提案されている
(T.Maekawa et al,Chemistry Letters,pp.575-578.199
1、前川他,九州大学大学院総合理工学研究科報告,第15
巻,第3号,273-279,平成5年12月、T.Maekawa et al,Jour
nal of Material Chemistry,1994,4(8),1259-1262)。
一方、食品の香気成分の1つである二硫化ジメチルに応
答するセンサとしては、プラセオジウムを添加した酸化
鉄系材料をセンサ素子材料としたものが提案されている
が、このセンサは感度、選択性が十分でなかった(阿武
他,表面化学,第16巻,第8号,474-479,1995)。そこで、
本発明者らは、これらの知見をもとに、有機硫黄化合物
に応答性のある酸化インジウムを用いて二硫化ジメチル
用センサの開発を行った。
【0009】その結果、本発明者らは、硫酸リチウム
[Li2SO4]又は硫酸ナトリウム[Na2SO4]を分
散した酸化インジウム[In23]をセンサ素子材料と
して用いた場合、二硫化ジメチル[(CH3S)2]に対
して優れた応答特性を示し、スープ類等の品質評価のた
めのセンサとして有用な半導体ガスセンサが得られるこ
とを知見し、本発明をなすに至った。
【0010】したがって、本発明は、硫酸リチウム又は
硫酸ナトリウムを分散してなる酸化インジウムをセンサ
素子材料とし、二硫化ジメチル応答性を有することを特
徴とする食品の品質検知用ガスセンサを提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明において、酸化インジウム
に対する硫酸リチウム又は硫酸ナトリウムの分散量
[(硫酸リチウム又は硫酸ナトリウム)/{酸化インジ
ウム+(硫酸リチウム又は硫酸ナトリウム)}]は、
0.1〜10重量%、特に1〜5重量%とすることが好
ましい。硫酸リチウム又は硫酸ナトリウムの分散量を
0.1〜10重量%とすることにより、二硫化ジメチル
に対する応答特性が極めて良いセンサを得ることができ
る。この場合、酸化インジウムへの硫酸リチウム又は硫
酸ナトリウムの分散は、含浸法、コロイド吸着法、共沈
法等の公知の方法で行うことができる。また、本発明セ
ンサの構造に限定はなく、通常の半導体ガスセンサと同
様の構造とすることができる。なお、硫酸リチウム及び
硫酸ナトリウムは併用することもでき、この場合の硫酸
リチウム及び硫酸ナトリウムの酸化インジウムに対する
添加量は合計量が前記範囲となるようにすればよい。
【0012】
【実施例】次に、実施例により本発明を具体的に示す。
以下に述べるように種々の半導体ガスセンサを作製し、
スープ類中のにおい成分に対するこれらセンサの特性を
調べた。
【0013】(1)センサ素子の作製 In23をベース材料とし、これに12種類の硫酸塩を
それぞれ添加して粉末試料(センサ素子材料)を調製し
た。得られた粉末試料を用いてセンサ素子を作製した。
【0014】粉末試料の調製 In23の粉末(ベース材料)に硫酸塩を添加して粉末
試料を調製した。ベース材料のIn23は、InCl3
を28%NH3水溶液で加水分解し、得られた沈殿を濾
過・水洗・乾燥した後、空気中において850℃で5時
間焼成し、さらにボールミルで粉砕して得た。硫酸塩の
添加は含浸法により行った。まず、硫酸塩をベース材料
に対して所定の割合になるように混合した。さらに蒸留
水を加え、攪拌しながら試料がペースト状になるまで水
を蒸発させ、105〜110℃に保たれた乾燥器中で1
2時間乾燥させた。その後、粉砕して空気中において7
00℃で5時間焼成した。このようにして添加した硫酸
塩は、Li2SO4、Na2SO4、K2SO4、MgS
4、CaSO4、SrSO4、BaSO4、Al2(S
43、CdSO4、ZnSO4、Ag2SO4、Ce(S
42である。ベース材料に対する硫酸塩の添加量[硫
酸塩/(ベース材料+硫酸塩)]は、いずれの粉末試料
でも5重量%とした。
【0015】センサ素子の作製 図1に示すように、アルミナ絶縁管(内径0.4mm、
外径1.2mm)に電極として2本のPt線(0.3m
mφ)を3.0mmの間隔で巻き付けたものに、水で練
ってペースト状にしたセンサ材料(粉末試料)を塗布
し、室温で乾燥後、空気中において700℃で4時間焼
成してセンサ素子を作製した。
【0016】(2)センサ特性の測定 測定方法 イ.装置 センサ素子の応答は、回路の基準抵抗の両端の出力電圧
を求める方法(電流検出法)により測定した。この場
合、センサ素子を図2に示す測定回路に組み込みんだ。
なお、センサ素子はスポット溶接により素子ホルダに接
続し、その素子ホルダを反応管に装着した。素子ホルダ
を装着した反応管を図3に示す。
【0017】ロ.手順 素子ホルダを装着した反応管に空気を200cm3/分
の流速で流通させた。この場合、測定温度に進む前に6
00℃×30分の乾燥空気による前処理を行った。その
後、湿潤空気雰囲気として測定温度まで冷却し、湿潤空
気中における素子抵抗の定常値(Ra)を求め、さらに
キャリヤガス(湿潤空気)中に目的ガス成分を導入した
被検ガスを流通させ、素子抵抗の定常値(Rg)を求め
た。その後、ガスを湿潤空気に切り換え、素子抵抗があ
る程度定常値に回復した後に、乾燥空気中600℃×3
0分の処理を行ってから次の測定へと進んだ。この場
合、目的成分を導入するキャリヤガスを湿潤空気とした
のは、実際のスープなどの食品サンプルから発生するガ
スを被検ガスとして測定を行うとすると、水蒸気の影響
は避けられないと考えられるからである。
【0018】ハ.ガス感度の解析 測定時に得られるセンサの応答曲線の一例を図4に示
す。この図の空気中及び被検ガス中の出力電圧を求める
と、以下の2式を用いてそれぞれの素子抵抗Rを求める
ことができる。 Ra=r(E/Va−1) Rg=r(E/Vg−1) ここで、rは基準抵抗、Eは印加電圧、Vは出力電圧、
添字a、gはそれぞれ空気中、ガス中を示す。さらに、
ガス感度Sは空気中の素子抵抗に対する被検ガス中の素
子抵抗の比で表される。 S=Ra/Rg
【0019】目的ガスに対するセンサ特性の測定 イ.In23単独素子及び硫酸塩(5重量%)を添加し
たIn23素子の二硫化ジメチルに対する感度を測定温
度200℃、300℃、400℃でそれぞれ測定した。
二硫化ジメチルの気相濃度は20ppmとした。結果を
図5に示す。図5より、湿潤空気中の二硫化ジメチルに
対する感度は、300℃前後の温度域においてLi2
4−In23が最も良く、400℃前後の温度域にお
いてNa2SO4−In23が最も良いことがわかった。
【0020】ロ.In23単独素子、Li2SO4−In
23素子及びNa2SO4−In23素子の二硫化ジメチ
ル感度の二硫化ジメチル濃度依存性を調べた。測定温度
は、In23単独素子は200℃、Li2SO4−In2
3素子は300℃、Na2SO4−In23素子は40
0℃とした。結果を図6に示す。二硫化ジメチル濃度の
対数値と二硫化ジメチル感度の対数値との間に良好な直
線性が得られており、Li2SO4−In23素子及びN
2SO4−In23素子は良好な濃度依存性を示し、か
つIn23単独素子より感度が高いことがわかった。な
お、図6における感度は、固有の値を乗じることにより
二硫化ジメチル濃度を与える値である。
【0021】ハ.Li2SO4−In23素子及びNa2
SO4−In23素子の二硫化ジメチル(DMDS)、
メチルピラジン(MP)、アセトン(Ac)、カプロン
アルデヒド(CA)、エタノール(EtOH)、エチル
アセテート(EA)に対する選択性を調べた。センサ温
度は300℃又は400℃、目的成分の気相濃度は20
ppmとした。300℃で測定を行った結果を図7、4
00℃で測定を行った結果を図8に示す。図7、8よ
り、Li2SO4−In23素子及びNa2SO4−In2
3素子は、二硫化ジメチルに対しては高感度に応答す
るが、他のにおい成分に対してはかなり感度が低く、特
にNa2SO4−In23素子を400℃で使用した場合
には選択性が非常に良いことがわかった。
【0022】ニ.Na2SO4−In23素子の二硫化ジ
メチルに対する応答速度及び再現性を調べた。センサ温
度は400℃、二硫化ジメチルの気相濃度は20pp
m、測定回数は5回とした。その結果、90%応答時間
は77秒、再現性は4.78%CVであり、Na2SO4
−In23素子は、二硫化ジメチル測定における応答速
度及び再現性が良好であることが認められた。このとき
の応答曲線の一例を図9に示すが、応答特性、回復特性
はいずれも良好であることが認められる。
【0023】[実験例]同一の試料(スープ)中の二硫
化ジメチル濃度を本発明ガスセンサ及びガスクロマトグ
ラフを用いてそれぞれ測定した。本発明ガスセンサのセ
ンサ素子としてはNa2SO4−In23素子(Na2
4添加量5重量%)を用い、センサ温度は400℃と
した。
【0024】被検ガスは、図10の試料導入装置を用い
てキャリヤガス(湿潤空気)中に目的ガス成分を導入す
ることにより調製した。図10の試料導入装置は、試料
液注入口を有する密閉可能な試料注入セルと、試料液注
入セル内に配置され、試料液注入口から注入された試料
液(スープ)が含浸される濾紙とを備え、試料注入セル
内で濾紙に含浸した試料液を気化させるとともに、この
気化試料をキャリヤガスに混合して反応管に導入するも
のである。この装置を用いることにより、測定環境のに
おい成分の影響をカットし、清浄なキャリヤガスを得る
ことができるため、目的成分であるスープ由来の二硫化
ジメチルを正確に測定することが可能となる。
【0025】測定値の相関を図11に示す。その結果、
Na2SO4−In23素子を用いた本発明ガスセンサに
よる測定値は、ガスクロマトグラフによる測定値と良好
な相関を示した。また、センサ素子としてLi2SO4
In23素子(Li2SO4添加量5重量%)を用い、セ
ンサ温度を300℃として同様の測定を行ったところ、
やはり測定値はガスクロマトグラフによる測定値と良好
な相関を示した。したがって、本実験により本発明ガス
センサの信頼性が確認された。
【0026】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の食品品質
検知用ガスセンサは、食品に含まれるにおい成分である
二硫化ジメチルに対する応答特性に優れ、特にコンソメ
スープ等のスープ類の品質管理、製造管理に有効に使用
することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】センサ素子の一例を示す一部切欠斜視図であ
る。
【図2】センサ素子特性の測定回路を示す回路図であ
る。
【図3】センサ素子特性の測定に用いた反応管を示す概
略図である。
【図4】センサ素子の応答曲線の一例を示すグラフであ
る。
【図5】In23単独素子及び硫酸塩を添加したIn2
3素子の二硫化ジメチルに対する感度を示すグラフで
ある。
【図6】In23単独素子、Li2SO4−In23素子
及びNa2SO4−In23素子における二硫化ジメチル
濃度の対数値と二硫化ジメチル感度の対数値との関係を
示すグラフである。
【図7】Li2SO4−In23素子及びNa2SO4−I
23素子の300℃における各種ガスに対する感度を
示すグラフである。
【図8】Li2SO4−In23素子及びNa2SO4−I
23素子の400℃における各種ガスに対する感度を
示すグラフである。
【図9】Na2SO4−In23素子の応答曲線の一例を
示すグラフである。
【図10】センサ素子を設置した反応管への被検ガス導
入装置の一例を示す概略図である。
【図11】本発明ガスセンサで測定した二硫化ジメチル
濃度とガスクロマトグラフで測定した二硫化ジメチル濃
度との相関を示すグラフである。
フロントページの続き (72)発明者 山添 ▲のぼる▼ 福岡県春日市松ヶ丘4−32 (72)発明者 三浦 則雄 福岡県福岡市中央区平尾3−17−5−301 (72)発明者 船崎 菜穂美 東京都武蔵野市吉祥寺北町4丁目13番14号 電気化学計器株式会社内 (72)発明者 浅野 泰一 東京都武蔵野市吉祥寺北町4丁目13番14号 電気化学計器株式会社内 (72)発明者 林 研司 千葉県船橋市夏見台3−11−1 ニチレイ 船橋ハイム308号 (72)発明者 小塚 彦明 千葉県八千代市八千代台北16−16−29

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 硫酸リチウム又は硫酸ナトリウムを分散
    してなる酸化インジウムをセンサ素子材料とし、二硫化
    ジメチル応答性を有することを特徴とする食品の品質検
    知用ガスセンサ。
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