JPH09252790A - 発酵法によるピルビン酸の製造方法 - Google Patents

発酵法によるピルビン酸の製造方法

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JPH09252790A
JPH09252790A JP6454296A JP6454296A JPH09252790A JP H09252790 A JPH09252790 A JP H09252790A JP 6454296 A JP6454296 A JP 6454296A JP 6454296 A JP6454296 A JP 6454296A JP H09252790 A JPH09252790 A JP H09252790A
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Hisafumi Saeki
尚史 佐伯
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 糖類を出発原料として、ピルビン酸を発酵法
により、高い収率で製造する新規な方法の提供。 【解決手段】 ピルビン酸生産能を有し、且つピルビン
酸資化能の低下又は欠失したヤロイア(Yarrowia)属に
属する変異株を、糖類を添加した培地で培養し、該培地
中にピルビン酸を生成蓄積せしめ、該培地よりピルビン
酸を分離採取することからなる発酵法によるピルビン酸
の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、発酵法によりピル
ビン酸を製造する方法に関する。具体的には、糖類を資
化・代謝して、その代謝過程で生成する代謝中間産物の
ピルビン酸を分泌する能力、即ちピルビン酸生産能を有
し、ピルビン酸資化能の低下又は欠失したヤロイア(Ya
rrowia)属に属する変異株を用いて、糖類を原料として
ピルビン酸を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】種々の発酵を行なう微生物は、それぞれ
炭水化物代謝系を有しており、基質となる該炭水化物か
ら一連の代謝経路を経て、最終生成物として代謝物質を
生成する。この代謝物質も、有用なものとなる場合が多
いが、その代謝経路の途中段階で生成する中間体、即ち
代謝中間体自体も有用なものであることもある。例え
ば、糖類、特にはグルコ−スから乳酸(乳酸発酵)又は
エタノ−ル(アルコ−ル発酵)を生成する解糖系におけ
る主要な代謝中間体であるピルビン酸は、それ自体反応
性に富む2−ケトカルボン酸であるゆえ、各種α−アミ
ノ酸製造原料、医薬品合成原料、或いは代謝促進物質と
して高い有用性を有する。一般に、炭水化物代謝系の代
謝中間体となる化合物の多くは、当該微生物が生合成す
る有用物の原料として利用することもあり、これら天然
の有用物に類似する化合物を人工的に合成する際、中間
原料として利用されることも多い。従来より、これら有
用な代謝産物の一つであるピルビン酸を分泌する微生物
を用いて、発酵法により基質の炭水化物からピルビン酸
を調製する方法が研究され、報告されている。特に、糖
類を基質としてピルビン酸を発酵的な手法により、高収
率で且つ廉価に製造する試みは幾つかある(特公昭 57-
796号公報、特開昭 62-275688号公報 などを参照)。従
来の方法において、ピルビン酸生産能を有する微生物と
しては、ビタミンや特定のアミノ酸等の栄養要求性を有
する微生物、例えば、チアミン要求性の酵母類などが知
られている。
【0003】これら従来方法の大半は、その菌体生育に
必要とするアミノ酸やビタミンなどの合成を行なう能力
を欠き、ビタミンや特定のアミノ酸等の栄養要求性とな
った微生物を利用するものであった。従って、これら栄
養要求性の微生物が必要とする特定の栄養素、即ち、ビ
タミンや特定のアミノ酸を適量、培地に添加する必要が
あった。加えて、微生物の生育に伴い、これら特定の栄
養素が培地に欠乏すると、菌体の生育に阻害が生ずるた
め、結果として、目的とする代謝中間体ピルビン酸の収
率の低下、生産速度が高くないなどの問題を残すもので
あった。
【0004】発酵法を応用して、上記する従来方法の生
産性における限界を超える、一層の高い収率、高い生産
速度を達成することができる、新規なピルビン酸の製造
方法の開発が望まれている。具体的には、ピルビン酸の
発酵による生産において、一層の高い収率、高い生産速
度を達成することができる新規な微生物、或いは新規な
変異株の提供と、それら新規な微生物を利用し、より高
い収率、高い生産速度が得られる菌体反応条件の選択が
望まれている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、糖類
などの炭水化物を出発原料として、ピルビン酸を発酵法
により製造する新規な方法を提供することにある。即
ち、ピルビン酸生産能とピルビン酸資化能をともに有す
る、既知親株、野生株を変異誘導処理して、そのピルビ
ン酸資化能を欠損又は低下する新規な変異株を創製し、
これを提供するとともに、該新規な変異株を利用して、
より高い収率、高い生産速度が得られるピルビン酸の製
造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するべく、種々の炭水化物、特に糖類の代謝系を
保持する微生物の既知親株、野生株から変異誘導処理し
て得られる変異株を多数調製し、これら変異株の性質の
研究を鋭意進めた。その研究の過程において、ヤロイア
(Yarrowia)属に属し、糖類の資化能を有する既知親
株、野生株から変異誘導処理して得られる変異株から、
代謝産物としてピルビン酸を生産・分泌するピルビン酸
生産能は保持する一方、ピルビン酸の資化能は低下又は
欠損する変異株を選択することができることを見出し
た。加えて、かかる選択された変異株は、糖類など炭水
化物、或いは炭化水素を唯一の炭素源として含む培地に
おいて、生育可能であることを見い出した。即ち、これ
ら変異株を、糖類を添加した培地で培養すると、当該糖
類を原料として、目的とする代謝中間体であるピルビン
酸の著量を生産蓄積することが可能であることを見い出
した。本発明は、かかる知見に基づき、完成されたもの
である。
【0007】即ち、本発明は、ピルビン酸生産能を有
し、且つピルビン酸資化能の低下又は欠失したヤロイア
(Yarrowia)属に属する変異株を、糖類を添加した培地
で培養し、該培地中にピルビン酸を生成蓄積せしめ、該
培地よりピルビン酸を分離採取することからなる発酵法
によるピルビン酸の製造方法である。
【0008】上記ピルビン酸生産能を有し、且つピルビ
ン酸資化能の低下又は欠失したヤロイア(Yarrowia)属
に属する変異株としてはヤロイア・リポリチカ(Yarrow
ia lipolytica)に属する変異株が挙げられ、さらに前
記変異株としてヤロイア・リポリチカ(Yarrowia lipol
ytica)に属する菌株がヤロイア・リポリチカ No. 3-8
株が挙げられる。なお、上記糖類とは、単糖類(グリコ
−ス)、その置換・誘導体など、これら単糖類を構成単
位とする種々の多糖類、オリゴ糖類を意味する。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明の方法に用いられる、上記
のヤロイア属(Yarrowia)に属する変異株は、次の方法
により創成することができる。
【0010】まず、糖類を資化・代謝して、その代謝過
程で生成する代謝中間産物のピルビン酸を分泌する能
力、即ちピルビン酸生産能、また、菌体外のピルビン酸
を取り込み・利用する能力、即ちピルビン酸資化能、こ
のピルビン酸生産能、ピルビン酸資化能をともに有する
ヤロイア属に属する既知の野性株をUV照射、N−メチ
ル−N’−ニトロソグアニジン処理、或いはエチルメタ
ンスルホネ−ト処理などの常法により変異処理し、得ら
れる菌体から、次の選別手段により、ピルビン酸生産能
を有し、且つピルビン酸資化能の低下又は欠失した菌株
を選別する。
【0011】先ず、変異処理された菌体を、その親株の
培養に適する炭素源、例えば、炭化水素などを唯一の炭
素源として含有する培地上に塗布接種し、培養を行い生
育する菌株をコロニ−として、単離・採取する。特に
は、ピルビン酸を代謝中間体として生成しない、ノルマ
ルパラフィン等を炭素源とすると更に好ましい。次い
で、ピルビン酸を唯一の炭素源として含有する培地上
に、コロニ−として単離・採取した菌株をレプリカし
て、培養を行い、正常な生育の見られるコロニ−と、生
育しない又は生育が僅かであるコロニ−とを弁別する。
このとき、生育しない又は生育が僅かであるコロニ−と
判定された菌株は、その親株の有するピルビン酸資化能
が低下又は欠損した変異株である。
【0012】この選別で得られたピルビン酸資化能が低
下又は欠損した変異株複数について、そのピルビン酸生
産能を調べる。例えば、その親株自体が、良好な生育を
し、糖類からピルビン酸を生産する培養条件(培地組
成、培養温度)で、選別された変異株を培養して、生産
蓄積されるピルビン酸量を比較し、親株より優れた蓄積
量を示す変異株を選択する。
【0013】上述したヤロイア属に属する既知の野性株
自体は、糖類を唯一の炭素源として含有する培地におい
て生育増殖が可能な菌株であり、即ち、これら炭水化物
の代謝系を有しており、その代謝中間体としてピルビン
酸を生産・分泌する微生物である。従って、上述する人
為的な手段で変異誘導され、ピルビン酸資化能が低下又
は欠損した変異株として選別される人為的変異株は、そ
の親株である既知の株、野性株の有するピルビン酸生産
能を保持しており、一旦生成したピルビン酸の資化能が
低下又は欠損するので、培養中に生産されるピルビン酸
は、当該変異株自体により消費されることはなく、結果
として高い収率でピルビン酸を回収することができる。
【0014】この人為的な変異株の創製に用いる親株自
体は、糖類の代謝系において、その代謝中間体としてピ
ルビン酸を生産する微生物であることを選択の条件とし
て、ヤロイア属に属する既知菌株から適宜選ぶことがで
きる。その例として、ヤロイア属に属する既知菌株種々
のうち、ヤロイア・リポリチカに分類される菌種が好ま
しい。特には、 ヤロイア・リポリティカ ATCC 20363
の菌株(米国、AMERICAN TYPECULTURE COLLECTION に寄
託される公知株) は、その生育に炭化水素を好適に利用
することができる点から、より好ましいものである。
【0015】なお、既知菌株を親株として人為的な変異
誘導を施して得られる変異株は、その菌学的性質は、当
該変異して付随して変化する特性を除き、その親株と同
じ菌学的性質を有することは勿論のことである。従っ
て、その変異株の帰属は、親株と同一の属、種となり、
また、既知である親株の帰属・同定をなしたと同じ手段
により、まさしく同一の属、種に属することを確認する
ことができる。
【0016】本発明において、好適な変異株の一例とし
て、ヤロイア・リポリチカ(Yarrowia lipolytica) N
o. 3-8を挙げることができる。この変異株は、公知株、
ヤロイア・リポリティカ ATCC 20363 を親株としてこれ
より変異誘導されたものである。即ち、前記親株にUV
照射による変異処理を施し、ピルビン酸資化能の低下・
欠損する変異株として、選別されたものである。なお、
この変異株は、ヤロイア・リポリチカ (Yarrowia lipo
lytica) No. 3-8として、平成8年3月6日付けで工業
技術院生命工業技術研究所に受託されており、その寄託
番号は FERM P-15498 である。
【0017】なお、上述の人為的な変異誘導により創製
される変異株のみならず、ヤロイア属に属する天然変異
株から、同様の選別を行い採取・単離される、ピルビン
酸生産能を有し、且つピルビン酸資化能の低下又は欠失
した天然変異株を用いてもよいのは勿論のことである。
【0018】本発明のピルビン酸の製造方法に用いる発
酵用培地は、当該変異株の由来するヤロイア属に属する
親株を培養する際、通常用いられる組成の菌体生育用培
地に、原料となる糖類、例えばグルコ−スの所定量を添
加したものを用いるとよい。なお、菌体生育用培地自体
の組成は、当該ヤロイア属の親株の培養に通常使用され
る、炭素源、窒素源、無機塩類、ビタミン類などをほど
よく含有するものであれば良い。窒素源としては、硫
安、硝安、硝酸ソ−ダ、硝酸カリ、尿素、ペプトン、肉
エキス等の、有機の窒素化合物並びに無機の窒素化合物
が使用される。当該親株菌が生育に必要とする金属種を
含有する無機塩類として、例えば、リン酸カリウム、硫
酸マグネシウム、硫酸鉄、硫酸マンガン、その他無機塩
類が用いられる。加えて、該親株菌の生育を促進する物
質、例えば、酵母エキス、コ−ンスチ−プリカ−その他
の天然物を、必要に応じて添加するとよい。
【0019】当該変異株が、ピルビン酸資化能を全く欠
損するものである場合には、原料として添加する糖類に
加えて、微生物の生育に利用される炭素源として、該親
株菌が資化し得る、有機酸やアルコ−ル類、炭化水素な
どを用いるとよい。特に、酢酸又はノルマルパラフィン
類を、炭素源として添加するとより好ましい。一方、当
該変異株が、ピルビン酸資化能が単に低下したものであ
る場合にも、微生物の生育に利用される炭素源として、
有機酸やアルコ−ル類、炭化水素などを用いると好まし
いが、原料として添加する糖類自体を、一部菌体の生育
に利用してもよい。
【0020】培養中に生成するピルビン酸が培地に蓄積
する伴って、培地のpHの低下が引き起こされる。かか
るpHの低下が生ずる場合には、炭酸カルシウム又は苛
性ソ−ダ、苛性カリなどのアルカリを適宜添加して、培
地をpH3〜8の範囲に、好ましくはpH4〜7の範囲
に調整することが好ましい。当該変異菌株の培養に適す
るpH範囲に保持することで、ピルビン酸を高収率で生
産することができ有効である。一方、培養中の温度は、
一般に、該変異菌株の生育が可能な範囲である限り適宜
選択することもできるが、通常、25〜35℃の範囲に
選択するのが好ましい。 培養を終了させた後、培地に
蓄積するピルビン酸は、培地に共存する菌体及びその他
の不溶性不純物を固液分離により除去し、得られる培養
上清から単離・回収する。培養上清から単離・回収は、
溶媒抽出、クロマトグラフィ−法による分離、不溶化処
理による沈殿分離、結晶化による分離等の手段を用いる
とよい。例えば、先ず、培養液を濾過又は遠心分離し
て、菌体及びその他の不溶性不純物を除去する。次い
で、得られた濾液を塩酸酸性にした後、ピルビン酸をエ
−テル抽出を行い、分取したエ−テル相に苛性ソ−ダ又
は苛性カリを加えてpH6前後に調整した後、50℃以
下で減圧濃縮する。この濃縮液に、エタノ−ルを加える
とピルビン酸ナトリウム又はピルビン酸カリウムが結晶
として得られる。或いは、一旦フェニルヒドラゾン化し
て沈殿単離する方法を用いてもよい。
【0021】本発明の方法においては、該変異株の菌体
生育と並行して、当該変異株の有する代謝系を利用する
発酵法により、ピルビン酸の生産蓄積を行うのが通常で
あるが、例えば、予め該原料の糖類を含有しない培地で
培養して菌体を調製した後、該菌体を窒素源を除いた、
糖類を含有する反応培地に移し、菌の生育を実質的に伴
わない、酵素反応を行わせ、ピルビン酸の蓄積を行う態
様をとってもよい。
【0022】更には、原料となる糖類は、培養の開始時
に培地に添加するのが適当であるが、予め菌体の生育に
利用される炭素源として、炭化水素などを添加した培地
で菌体の生育を進め、その後に原料となる糖類を添加す
る構成をとることもできる。或いは、培養継続中に、連
続的に、或いは間歇的に糖類を供給し、本発明の菌体反
応により、ピルビン酸を生成・蓄積する構成をとっても
よい。なお、原料となる糖類として、グルコ−スを用い
ると特に好ましい。
【0023】
【実施例】以下に、本発明の方法を実施例により具体的
に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定さ
れるものではない。
【0024】〔実施例1〕 ピルビン酸高生産性変異株
の取得 炭化水素資化性菌であるヤロイア・リポリチカ ATCC 20
363 を親株として、下記の手段で変異誘導処理を施し、
当該親株の保持する解糖系において、該糖代謝の代謝中
間体であるピルビン酸を代謝する能力を欠損する変異株
を選別した。即ち、変異誘導処理で調製される種々のヤ
ロイア・リポリチカに分類される変異株群より、親株で
ある該ヤロイア・リポリチカ ATCC 20363 株の有する炭
化水素資化能を保持し、且つ該糖代謝系の代謝中間体ピ
ルビン酸の代謝能を欠損する変異株を選別した。
【0025】ヤロイア・リポリチカ ATCC 20363 の菌体
を常法によりUV処理( 波長254nm、照射距離 3.5cm、
照射時間 20 〜50秒) した後、炭化水素としてノルマル
ヘキサデカンを唯一の炭素源として添加した、表1に示
す組成の寒天培地にプレ−トアウトし、30℃で5日間
培養した。この寒天培地上で生育しコロニ−を形成した
菌株を、次いで、ピルビン酸を唯一の炭素源として添加
した表1に示す組成の寒天培地にレプリカ(約30,0
00コロニ−)し、30℃で2日間培養した。その後、
ピルビン酸を唯一の炭素源とする、レプリカ上では生育
しない、或いは、親株と比較して、生育が極度に遅くな
った菌株を選別、分離した。即ち、ピルビン酸資化能の
欠損又は低下した変異株、計79株を選別した。なお、
上述のUV処理における親菌株の死滅率は90〜99%と算
定された。
【0026】
【表1】
【0027】次に、上記の一次選別により、分離した菌
株79株について、基質グルコ−スからのピルビン酸の
生産能を調べた。その結果、これら79株の変異株は何
れも、ピルビン酸の生産能を示すことが確認された。即
ち、これら変異株は、基質グルコ−スの代謝系である解
糖系において、その代謝中間体であるピルビン酸の代謝
能は欠損又は低下するものの、該ピルビン酸に到る経路
は保持することが確認された。次いで、下記の培養条件
で、糖類からピルビン酸の生産を行わせ、前記79株の
変異株中で、親株の持つピルビン酸生産能を超え、最も
ピルビン酸の蓄積能の高い変異株数株を最終的に選別
し、その一つである変異株ヤロイア・リポリチカ No.3-
8 を取得した。この変異株は先に述べたとおり工業技術
院生命工業技術研究所に FERM P-15498 として寄託され
ている。
【0028】親株のヤロイア・リポリチカ ATCC 20363
と変異株ヤロイア・リポリチカ No.3-8 (FERM P-15498)
を、n−ヘキサデカンを唯一の炭素源として添加した
1の組成の寒天培地に薄く塗布し、30℃で4日間培養
し、その生育状態を比較した。同時に、ピルビン酸を唯
一の炭素源として添加した表1の組成の寒天培地に薄く
塗布し、30℃で4日間培養し、その生育を比較した。
表2に示す通り、変異株ヤロイア・リポリチカ No.3-8
(FERM P-15498)は、親株のヤロイア・リポリチカ ATCC
20363 と比較して、n−ヘキサデカンを唯一の炭素源と
する場合には、生育に差違は無いが、ピルビン酸を唯一
の炭素源する場合には、生育は大きく劣ることが確認さ
れた。即ち、変異株ヤロイア・リポリチカ No.3-8 (FER
M P-15498)は、親株のヤロイア・リポリチカ ATCC 2036
3 と比較して、ピルビン酸の資化能が著しく低下するこ
とが明らかになった。
【0029】
【表2】
【0030】〔実施例2〕 ピルビン酸の生産 この変異株ヤロイア・リポリチカ No.3-8 (FERM P-1549
8)とその親株ヤロイア・リポリチカ ATCC 20363 につい
て、糖類であるグルコ−スから、解糖系の代謝中間体で
あるピルビン酸の生産、培地への蓄積能を比較した。先
ず、該変異株ヤロイア・リポリチカ No.3-8 (FERM P-15
498)とその親株ヤロイア・リポリチカ ATCC 20363 をそ
れぞれ、表3に示す組成の前培養用培地で、30℃、4
8時間振盪培養し、菌液を調製した。次いで、表4に示
す組成の基本培地に炭素源として当該菌 ヤロイア・リ
ポリチカ が好適に資化するグルコ−スを添加した培地
2.5 Lに、予め前培養した菌液 200ml を接種し、30
℃、96時間培養した。この培養は、ジャ−ファ−メン
タ−の中でpHをpH5.5に保ちつつ行なった。
【0031】
【表3】
【0032】
【表4】
【0033】培養終了後、培養液より菌体を除き、培養
液中に存在するピルビン酸量を分析したところ、表5に
示したピルビン酸が生成蓄積していた。なお、培養液中
のピルビン酸量は、乳酸脱水素酵素を用いたNADHの
吸光度測定法による常法により定量した。
【0034】
【表5】
【0035】表5の比較結果から、驚くべきことに変異
株ヤロイア・リポリチカ No.3-8 (FERM P-15498)のピル
ビン酸蓄積量は親株であるヤロイア・リポリチカ ATCC
20363 のそれの 2.35 倍であり、かかる変異株のピルビ
ン酸産生量がきわめて高く、優れたものであることが判
る。
【0036】
【発明の効果】本発明の方法によれば、原料の糖類、特
にグルコ−スからピルビン酸を簡便且つ高い収率で製造
することができる。更には、本発明は親株から変異誘導
した変異株を用いるので、原料の糖類他に、該変異株の
生育に好適な炭化水素を炭素源として加えた培地を用い
ることで、菌体の生育を速やかに行うことができ、ピル
ビン酸の生成速度を一層高いものとすることができる。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ピルビン酸生産能を有し、且つピルビン
    酸資化能の低下又は欠失したヤロイア(Yarrowia)属に
    属する変異株を、糖類を添加した培地で培養し、該培地
    中にピルビン酸を生成蓄積せしめ、該培地よりピルビン
    酸を分離採取することを特徴とする発酵法によるピルビ
    ン酸の製造方法。
  2. 【請求項2】 ピルビン酸生産能を有し、且つピルビン
    酸資化能の低下又は欠失したヤロイア(Yarrowia)属に
    属する変異株がヤロイア・リポリチカ(Yarrowia lipol
    ytica)に属する菌株であることを特徴とする請求項1
    記載の発酵法によるピルビン酸の製造方法。
  3. 【請求項3】 ヤロイア・リポリチカ(Yarrowia lipol
    ytica)に属する菌株がヤロイア・リポリチカ No. 3-8
    株であることを特徴とする請求項2に記載の発酵法によ
    るピルビン酸の製造方法。
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Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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