JPH09250360A - エネルギー貯蔵型ガスタービン発電システム - Google Patents

エネルギー貯蔵型ガスタービン発電システム

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JPH09250360A
JPH09250360A JP8057198A JP5719896A JPH09250360A JP H09250360 A JPH09250360 A JP H09250360A JP 8057198 A JP8057198 A JP 8057198A JP 5719896 A JP5719896 A JP 5719896A JP H09250360 A JPH09250360 A JP H09250360A
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  • Engine Equipment That Uses Special Cycles (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】夜間の余剰電力を液体空気の形で貯蔵し、電力
需要のピークに液体空気を加圧してコンバインドサイク
ルの燃焼器に供給することで、同一の発電設備でピーク
の電気出力を増加させ、液体空気の冷熱を貯蔵すること
でエネルギー利用効率を向上させる。 【解決手段】夜間の余剰電力を利用してコンバインドサ
イクルのコンプレッサーだけを稼働させ、生成した高圧
空気を利用して液体空気を製造してタンクに貯蔵する。
そして、電力需要のピークにコンプレッサーの機能を止
め、液体空気を加圧した空気で燃焼器を稼働させるとと
もに、液体空気の冷熱を冷媒に貯蔵し、これを液体空気
の製造に利用する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は石油や天然ガス(L
NG)を燃料とするガスタービン発電システムと、更に
ガスタービンの排熱を利用して発生した高圧蒸気で蒸気
タービンも駆動させることで高効率の発電効率が得られ
るコンバインドサイクル発電システムの両方式におい
て、夜間や休日等の余剰な電気エネルギーを貯蔵し、そ
れを電気を一番必要とする平日の昼間に放出することこ
とを可能にしたエネルギー貯蔵型の発電システムに関す
る。
【0002】
【従来の技術】電気の必要量は昼間と夜間で大きく異な
るので、従来より水力発電所とコンバインドサイクル発
電所は昼間のみ運転しており、更に揚水発電所のように
夜間電力を用いてポンプを駆動し水を高い貯蔵池に移送
して位置エネルギーとして貯蔵し、それを昼間に流下さ
せて発電することで電気の需要と供給をバランスさせて
きた。最近、家庭用エアコン等が普及したために電気の
最大需要量と最低需要量の比が年々大きくなり、特に季
節による需要の違いが増大している。最大需要の必要時
期が真夏の10日ほどと短く、このためだけに大型の発
電設備を設けるのは経済的に引き合わなくなってきてい
る。しかし、大規模な揚水発電所の建設場所が国内に少
なくなっており、大容量のエネルギー貯蔵方式を必要と
している。この対策として、エネルギー貯蔵効率が高い
種々の電池システムの研究が進められているが、設置面
積当たりのエネルギー貯蔵量が少なく、大規模な電力量
の調整が可能にはなっていない。また、特許出願公開:
平4−132837 号「ガスタービン発電機」や特許出願公
開:平4−191419 号「液体空気ガスタービン」において
夜間電力を用いて液体空気を製造しこれを常圧で貯蔵
し、昼間にこの液体空気をポンプで加圧してガスタービ
ンの燃焼器に供給することで、コンプレッサーの動力を
削減して発電量を増大させるエネルギー貯蔵方式が提案
されている。これらの液体空気利用方式はエネルギーの
貯蔵密度は高い利点はあるが、−190℃の液体空気を
製造するのに必要なエネルギーが大きく、エネルギーの
貯蔵効率としては約20%ほどしかないために実際に使
用されてはいない。本発明はこの液体空気の冷熱を有効
に再利用することで、エネルギーの貯蔵効率を約70%
とまで大幅に向上させることで、単位面積当たりの電力
貯蔵量が大きくかつエネルギー貯蔵効率が高いエネルギ
ー貯蔵方式を提供して、夏場や真冬における電力必要量
のピークに容易に対応できることを目的にしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】図3に本発明の主要な
対象であるコンバインドサイクル発電所を示す。先ず、
遠心型のコンプレッサーで大気を10から15気圧まで
加圧して燃焼器に供給する。ここに、石油やLNGを高
圧で噴霧して燃焼させ、得られた高温,高圧の燃焼ガス
をタービンで膨張させる過程で得られる回転エネルギー
から電気を発生させる。タービンの排気ガスは600℃
近い温度があるので、これを排熱回収ボイラーで高圧の
水と熱交換させて、途中で排気ガスに含まれる窒素酸化
物を触媒層を通して無害な酸素と窒素に分解して無害化
させてから、100℃近くまで冷却して高い煙突から大
気に放出する。この排熱回収ボイラーにおける熱交換で
発生した高温・高圧の蒸気は、復水器との圧力差を利用
して蒸気タービンにより電気エネルギーに変換される。
燃焼器で空気に与えられた熱エネルギーは、それぞれの
温度領域に適したガスタービンと蒸気タービンにより電
気エネルギーに変換することで、発電端効率は48%も
の高い値になる。
【0004】ただし、ガスタービンの内部をみると、更
に大幅に出力を増大できる可能性がある。例えば、電気
出力150MWクラスのガスタービンにおいて、高温・
高圧の燃焼ガスによりタービンで発生する機械エネルギ
ーは電気出力の2倍である300MWもあるが、その半
分近くが大気を圧縮するためにコンプレッサーで動力と
して消費されてしまう。蒸気タービン系で高圧蒸気を得
るには、液体状態の水をポンプで加圧するが、これに必
要なエネルギーは蒸気タービンで得られるエネルギーの
高々数%であるのと比較して大きな違いである。これ
は、体積が変化する気体を加圧することに、大きな機械
エネルギーを必要とするためである。このコンプレッサ
ーの必要エネルギーを大幅に減少させると、発電所全体
の電気出力を増大させることになる。このコンプレッサ
ー動力を低減するために、先ず夜間の余剰電力を用いて
空気を液化させ、液体空気の状態で貯蔵しておく。昼間
で特に電気需要が増大したときに、コンプレッサーの入
口または出口のバルブを閉じ、その代わりに貯蔵してお
いた液体空気をポンプで加圧して燃焼器に供給する。ポ
ンプの動力はコンプレッサー動力に比較すれば無視でき
るほどなので、ガスタービンの電気出力が従来の約2倍
に増加できる。
【0005】液体空気の製造方法には、「蒸留工学ハン
ドブック」(朝倉書店:昭和41年)に記載されているよ
うに多くの方式があるが、エネルギー貯蔵の観点から見
るとたかだか20%ほどである。この改善案として、特
許出願公開:平4−191419 号「液体空気ガスタービン」
では燃料であるLNGを気化させるときに放出される冷
熱を利用することを提案しているが、LNGの流量はコ
ンプレッサーで圧縮される空気流量の2%ほどと少ない
ので、大幅な効率改善にはならない。また、特許出願公
開:平4−132837 号「ガスタービン発電機」では、液化
設備の運転と液化空気を用いたガスタービンの運転を同
時に実施するときには、液化空気を気化する時に発生す
る冷熱を液化に利用することで、効率が向上できること
が述べられている。しかし、液化設備の運転と液体空気
を用いたガスタービンの運転を別の時間に実施する場合
には、この方式は適用できない。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、コンプレッサ
ーと燃焼器,タービンで構成されるガスタービン発電シ
ステムを1系統または複数系統保有する発電所で、電力
需要が低下した時に余剰電力を用いて液体空気を製造し
てタンク内に貯蔵し、電気需要が増大した時に液体空気
を加圧して燃焼器に供給することでエネルギー貯蔵でき
るシステムにおいて、液体空気を気化する時に得られる
冷熱を冷媒に貯蔵し、液体空気を製造するときにその冷
媒で空気を冷却することを特徴とする。
【0007】又、1段または多段で高圧空気を膨張させ
た後、最終段または中間段で液体空気から分離した低温
の空気を加圧して、もとの高圧空気に戻すことを特徴と
する。
【0008】又、燃焼器に空気の供給をコンプレッサー
と液体空気の両方を用い、電力需要の増大とともに液体
空気の割合を大きくすることを特徴とする。
【0009】エネルギー貯蔵が目的で、夜間に電力を用
いて液体空気を製造し、昼間に液体空気を加圧してガス
タービンの燃焼器に供給する方式において、液体空気の
冷熱を昼間貯蔵し、夜間にこの冷熱を利用することで、
エネルギー効率を大幅に向上させるものである。
【0010】従来の空気液化装置では臨界圧力である3
8気圧以上に加圧した空気を、飽和温度近くの−150
℃近くまで冷却した後で、大気圧まで減圧させるとjoul
e-Thompson効果による等エンタルピー変化で膨張した空
気の一部が液化する。通常は−150℃まで高圧空気を
冷却する冷熱源が存在しないので、高圧空気の半分以上
を膨張タービンで自由膨張させて冷媒を製造し、この冷
媒で残りの空気を冷却する方式が用いられている。この
ために液化できる空気量が加圧した空気の20%ほどと
少ない。
【0011】そこで、昼間に液体空気の気化過程で生成
する冷熱を、冷媒に吸収させてこれを貯蔵して置き、夜
間に冷媒を用いてと高圧空気を冷却すれば、空気の半分
以上を膨張タービンで減圧して冷媒を作成する必要が無
くなるので、空気製造装置で液化できる空気の割合が従
来の3倍以上に向上することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
[実施例1]本発明の概要図を図8にす。
【0013】コンプレッサー2とコンプレッサー2から
の空気と燃料とが燃焼される燃焼器3,該燃焼器3の排
ガスにより駆動されるガスタービン4が配置される。該
燃焼器の排ガスの排熱は排熱回収ボイラ5と、該ボイラ
により発生した蒸気により駆動される蒸気タービン6及
び復水器7が配置されている。
【0014】(a)については、電力需要が低い時に、
例えば余剰電力を利用して、コンプレッサー2の圧縮空
気の少なくとも一部を液体空気製造設備9により液化空
気を製造して液体空気貯蔵タンク10にて貯蔵してお
く。
【0015】需要増大した際には、液体空気を液体空気
貯蔵タンク10から取り出して、冷媒貯蔵熱交換部30
の媒体と熱交換させて昇温する。その後、燃焼器3に導
入する。
【0016】前記冷媒熱交換部30は、冷媒タンク及び
熱交換部を有している。
【0017】一方、前記燃焼用の空気を昇温する際に得
られる冷熱を冷媒に一旦貯蔵する。そして、再び需要が
低下した際に、液化空気を製造する行程において、液化
するための空気を冷媒貯蔵熱交換部30の冷媒と熱交換
させて冷却する。
【0018】これにより、単に空気を液化して貯蔵し、
必要時に気化して使用するのに比べて、同じ液体空気製
造設備9であってもより多量の液体空気を効率よく製造
できる。また、特に液体空気を製造する時間帯と製造し
た液体空気を気化して使用する時間帯が異なる場合であ
っても液体空気貯蔵効率を高効率にできる。
【0019】前記冷媒は、液体空気の気化及び昇温時及
び空気液化のために空気を冷却する際に熱交換に利用で
き、得た冷熱を貯蔵できるものであれば様々な冷媒を適
用できる。例えば、液体だけでなく、固体或いは気体状
態のものでもよい。実用的には、冷媒としてLNGを使
用することにより、同プラントにおいてガスタービンの
燃料として使用することができ、既存設備を有効に利用
することもできる。
【0020】また、(b)に示すように冷媒貯蔵熱交換
部30は熱交換する温度域を複数に分けて複数の冷媒貯
蔵熱交換部から構成されている。これにより、より効率
よく空気の液化及び気化ができる。
【0021】例えば30a高温媒体貯蔵熱交換部、30
c低温媒体貯蔵熱交換部を備え、必要に応じてさらに中
間温度域の中間温度媒体貯蔵熱交換部30bを設ける。
【0022】例えば、高温媒体として水等が使用でき、
低温媒体としてLNGやプロパン等を使用でき、中間温
度媒体として油類例えば灯油等を使用できる。
【0023】図2を基に、夏場の電力ピークに対応して
コンバインドサイクル発電所に本発明を適用した場合を
説明する。通常のコンバインドサイクル発電所は、図3
に示すようにガスタービン設備と蒸気タービン設備を組
み合わせたシステム1を6系統から12系統ほど保有し
ている。ガスタービン設備はコンプレッサー2と燃焼器
3,ガスタービン4で構成され、蒸気タービン設備は排
熱回収ボイラー5と蒸気タービン6,復水器7で構成さ
れている。図2の例では発電所は6系統のコンバインド
サイクルで構成されており、これらの系統と独立した液
化空気製造設備9と液体空気貯蔵タンク10を付設す
る。コンバインドサイクル発電システムでは燃料として
LNGを用いる場合が多い。LNGは極低温で液体状態
でタンクに保管されているが、貯蔵タンクへの外部から
の熱流入を0にできないので、若干の可燃性LNGガス
が常時生成することが避けられず、このため電気が必要
でない夜間も1系統のコンバインドサイクル発電システ
ムを運転する必要がある。この夜間に生成される余剰電
力を利用して、液化空気製造設備9を運転して液化空気
を製造し、液体空気貯蔵タンク10で貯蔵する。電力需
要が増大した昼間に、液体空気貯蔵タンク10の液体空
気をポンプ11で加圧して液化空気製造設備9で気化さ
せた高圧の空気を、コンバインドサイクルの各系統の燃
焼器3に供給する。高圧空気が供給された分だけ、コン
プレッサー2で圧縮する空気量を低減できるので、発電
機8の出力が増大できる。液化空気製造設備9を出た高
圧空気の温度は20℃ほどであり、通常運転におけるコ
ンプレッサー2出口での高圧空気の温度約400℃と比
較すると低く、このままではガスタービン4の効率が低
下する。そこで、燃焼器入口で高圧空気の温度を測定
し、それに応じて燃焼器3に供給するLNG量を増加さ
せ、ガスタービン4入口での燃焼ガスの温度を通常運転
の時と同一にする。この結果、後段の排熱回収ボイラー
5と蒸気タービン6の運転状態を液体空気を使用しない
場合と同一に維持できる。温度と圧力を同一にする手法
としては、他に燃焼器への液体空気の供給量を低下させ
る方式もある。液体空気の供給量と供給する系統数は任
意に設定することができるので、電気需要の変化に柔軟
に対応して、連続的に発電量を増加することが可能であ
る。
【0024】液化空気製造設備9の詳細を図1に示す。
余剰電力で駆動する電動機20にコンプレッサー21,
22,23が接続しており、大気より吸引する空気を3
段で50気圧まで昇圧する。同一重量の気体を昇圧する
ときには、入口の温度が低く体積が小さいほど、昇圧に
必要な動力が小さくなる。大気圧から1段で50気圧ま
で昇圧すると700℃近くまで温度が上昇するので、途
中で冷却して昇圧する方が少ない動力で昇圧できる。各
段の後に冷却塔24,25,26を設け、上部より水を
細かい水滴で噴霧し、下部より流入する空気が上昇する
過程で、直接接触により冷却水温度まで冷却する。空気
と接触して加温された水は、冷却塔下部より熱交換器2
7に導かれ、海水との熱交換で冷却される。冷却塔2
4,25,26は、冷却するとともに空気に含まれて塵
を除去する機能があり、この塵はフィルター28で除去
する。
【0025】図1の空気液化設備の特徴は冷熱を冷媒で
貯蔵する冷媒貯蔵タンク31a,31b,31cを温度
領域に応じて3段設けたことである。冷却塔26を出た
高圧空気は、交流式の熱交換器32,33,34で、冷
媒貯蔵タンクの冷媒と熱交換して順次冷却される。この
高圧空気に含まれる水分と二酸化炭素は冷却過程で固体
になり、プロセス内の配管等を閉塞させる恐れがあるの
で、フィルター45で除去する。熱交換により加温され
た冷媒は予備タンク35,36,37に貯蔵される。昼
間、逆にコンバインドサイクル発電システムで液体空気
を使用するときに、液体空気で予備タンクに貯蔵されて
いた冷媒を、交流式の熱交換器32,33,34で冷却
して、冷媒貯蔵タンク31a,31b,31cに貯蔵す
る。本実施例では交流式の熱交換器32,33,34
は、高圧空気の冷却と加熱の両方の作用を行える。図1
では冷媒貯蔵タンクの構成は3段の場合を示したが、経
済性とエネルギー貯蔵効率の関係で任意の段数と冷媒の
種類を選択することが可能である。適正な冷媒を選定す
れば、液体空気が常温にもどるまでの冷熱をほぼ100
%回収でき、これを液体空気を製造するときの高圧空気
の冷却に使用することができる。冷熱を回収する方式と
して、破石やセラミックを充填した蓄熱槽を設け、直接
接触で熱を与える方式も考えられるが、この場合蓄熱槽
全体が高圧空気の圧力に持つ強度が必要であり、必要な
貯蔵熱量から考えると蓄熱槽が巨大になり実用的で無
い。本案の場合、冷媒貯蔵タンク31a,31b,31
cと予備タンク35,36,37における冷媒は大気圧
の状態で保持しており、交流式の熱交換器32,33,
34の伝熱管だけが耐圧構造を有れば良いので、液化設
備全体の構成が簡便化できる。
【0026】一般に低温における空気の物性は、図4に
示すように、温度とエントロピーで表現される。図4で
太い実線aと半円bに囲まれた部分が、液体と気体の共
存領域であり、等圧での物性変化は50気圧c,15気
圧d,1気圧eのようになる。50気圧まで昇圧された
空気は、図1の熱交換器32,33,34で冷却される
過程で図4の実線cに沿って点fまで物性が変化する。
ここで膨張弁38を通って減圧されると、実線gに沿っ
て点hまで物性は変化する。点hは液体と気体の混合物
であり、これは図1の分離器39で液体空気と気体空気
に別れ、液体空気は液体空気貯蔵タンク40で保管され
る。液体空気は大気圧の状態で貯蔵するので、液体空気
貯蔵タンク40は強度面や安全上は問題が少ない。液体
空気貯蔵タンク40はステンレス製の大型の円筒型タン
クであり、多重の断熱構造により外部からの熱の流入を
少なくしてある。しかし、若干の熱流入は避けられない
ので、液体空気の蒸発熱で温度上昇を抑制し、生成した
空気は安全弁46を通り大気に放出する。一方、大気圧
で−190℃の極低温の気体空気は、熱交換器41,4
2で高圧空気の冷却に使用した後、ほぼ大気温度になっ
て外部に放出される。図1の実施例で使用する冷媒は、
コンバインドサイクル発電所で容易に入手できる関係か
ら、熱交換器32の冷媒は水、33の冷媒はLNGの一
成分であるプロパン、34の冷媒は燃料のLNGそのも
のを用いている。冷媒としては、他にフレオン等含ハロ
ゲン化合物やアルコール類等、−190℃から常温の範
囲で常圧で液体状態に存在する種々の化合物を組み合わ
せることが可能である。プロパンは大気圧における融点
が−188℃で沸点がー42℃と約150℃の幅広い範
囲で液体であるので、冷媒として使用できる他に不要に
なれば燃焼器3に供給して燃すこともできる。したがっ
て、フレオン類のように、不要になった時の処分方法に
困ることは無い。各冷媒貯蔵タンク31a,31b,3
1cや予備タンク35,36,37は、外部からの熱流
入を抑制する多重構造で製造するが、若干の熱流入は避
けられない。そこで、燃焼器に供給するLNGを各予備
タンクで熱交換器43,44で冷媒と熱交換させること
で、各予備タンク内の冷媒を冷却して気化を抑制する。
【0027】昼間、液体空気を用いてコンビバインドサ
イクルを運転する場合に、なるべく低温のLNGに冷熱
を多く与える方が、空気の液化が効率良くできる。この
場合、LNGの主成分であるメタンの大気圧における沸
点が−161℃なので、−161℃までに液体空気を気
化させて、潜熱をLNGに与えることが望ましい。液体
空気の潜熱はLNGに与えるために、12気圧まで加圧
した状態で液体空気とLNGの熱交換を行わせる。通常
のコンバインドサイクルのガスタービン運転圧力は11
気圧なので、12気圧の高圧空気が得られれば良い。本
実施例では、潜熱の回収は可能であるが、水の融点0℃
とプロパンの沸点−42℃の間では十分な熱回収ができ
ず熱回収率としては90%ほどになる。また、燃焼器で
12気圧の空気を得るのに50気圧まで昇圧した空気が
必要になるので、動力の回収効率として約60%にな
る。したがって、エネルギーの貯蔵効率としては約50
%である。
【0028】ガスタービンの電気出力が150MWの1
系統のコンバインドサイクル発電システムでは、コンプ
レッサー動力が150MWで蒸気タービンの電気出力が
80MWである。夏場のピーク運転時には、コンプレッ
サーからの吸気を無くし100%液体空気で運転する場合
には、1系統当たりの電量が230MWから380MWと
1.65 倍と、6系統全体では1380MWから228
0MWと900MWも発電量が増加する。ガスタービン
の電気出力が2倍になるので、発電機を2倍のものを採
用する以外に発電所の大幅な設計変更は必要としない。
また、既に建設済みの発電所に本案を適用する場合に
は、電気容量が2倍の発電機に変更するのではなく、従
来と同一の発電機をガスタービン軸の反対側に取り付け
ることも考えられる。本実施例により、液化設備におい
て液体空気の冷熱を多段の冷媒に蓄熱することにより、
エネルギーの貯蔵効率が従来の20%から50%以上に
増加できる効果がある。
【0029】[実施例2]本実施例は自家発電用や離島
等で、電力系統から孤立して1系統だけのコンバインド
サイクル発電システムを所有する場合に、その付属施設
として空気液化設備と液体空気貯蔵施設,小型ガスター
ビンを図5のように設けて、昼夜の必要電力量の変動に
対し柔軟に対応する場合について適用したものである。
図5で図1と同一の機器は同一番号で表わした。図2の
コンバインドサイクル発電システムとの違いは、燃料に
LNGの代わりにプロパンを使用していることである。
コンプレッサーには遠心式と往復式の2種類があり、遠
心式の方が大容量の場合に設備費用が安いが、設計条件
から流量が低下すると効率も低下する欠点がある。そこ
で、電力需要の変動により柔軟に対応することを目的に
した図5に記載した方式では、往復式の圧縮機をコンバ
インドサイクルとは別にもうけている。往復式の圧縮機
50,51,52の3段で用い、中間でそれぞれ水洗塔
53,54,55で常温まで冷却して空気の密度を上昇さ
せて、圧縮効率を向上させている。各コンプレッサーで
加圧する空気の圧力条件として、それぞれの動力がほぼ
等しくなるように、コンプレッサー入口の圧力を1気圧
と5気圧,15気圧を選定している。
【0030】コンバインドサイクル発電システムは、夜
も標準の運転条件で連続して運転する。これは流量を減
少させるとコンプレッサーとタービンの効率が大幅に低
下するためである。夜間等で消費電力量が低下すると余
剰な電力を用いて、圧縮機を含む空気液化設備の運転を
行う。余剰電力量の増加に比例して、往復式圧縮機5
0,51,52のストローク数を増加させるので、液体
空気の製造量は余剰電力に比例して増加し、製造された
液体空気は液体空気貯蔵タンク40に貯蔵する。昼間に
電力消費量が、コンバインドサイクルを通常運転の条件
で不足する状況になると、貯蔵していた液体空気を用い
て小型ガスタービン56の運転を開始する。液体空気の
熱回収する冷媒は1種類だけを使用することとし、更に
燃料のプロパンと同一にして設備の簡素化を計ってい
る。プロパンは適用できる温度範囲が広いので、冷媒を
1種類にしても熱回収率を70%以上にできる。プロパ
ンの沸点が高いのでLNGを冷媒として使う場合と異な
り、液体空気で運転するときの圧力を高く設定できるの
で、小型ガスタービンの動作圧力を100気圧と高くし
たために、タービン出口温度が約200℃と15気圧で
の運転と比較して、400℃近くも低くなる。このため
に、排熱回収ボイラーと蒸気タービンを設けなくても、
発電効率に大きな差が生じない。ガスタービンに供給す
る流量は、電気の需要に応じて増加させて発電量を変化
させることが可能である。流量が変動すると効率は変化
するが、ガスタービンはコンプレッサーよりも流量変動
に対する効率変化が小さいので、2倍ほどの発電量調整
は容易である。
【0031】本応用例によれば、昼夜の変動が大きい電
気需要の変化に柔軟に対応しながら、高いエネルギー貯
蔵効率を維持して、連続的に対応することを可能にした
効果がある。
【0032】[実施例3]図6に示す応用例2は、図1
の実施例において空気の液化効率をできるだけ高くした
場合であり、図1と同一機器は同じ番号を付記してい
る。熱効率を高くするには、高温から低温への熱輸送量
を大きくするだけでなく、高温媒体と低温媒体の温度差
を小さくすることが望ましい。空気の比熱は低温ほど大
きく、かつ高圧空気を自由膨張させる温度と常圧の液体
空気温度との差は約40℃あるので、液化温度近くの冷
熱貯蔵量は高圧空気を冷却するのを上回る。更に、図4
に示したように50気圧の高圧空気を膨張させた場合
に、その30〜40%の極低温の空気が生成され、これ
も冷熱源として作用する。この結果、液体空気温度近く
の冷熱量が余剰となり、実効的に常温近くの空気を冷却
することに使われている。そこで、応用例2では高圧空
気の膨張を50気圧から1気圧まで1段で膨張させるの
でなく、2個の膨張弁38,61を用いて、50気圧か
ら5気圧と、5気圧から1気圧までの2段で膨張させ
る。5気圧まで膨張した時点で分離器60で液体と気体
の空気に分離し、液体だけ更に膨張弁61を通して1気
圧まで膨張させる。5気圧の液体空気を1気圧まで膨張
させると、85%が液体空気となり15%が気体とな
る。この極低温の空気は図1と同様に交流式熱交換器4
1,42により、高圧空気を冷却するのに使用される。
一方、5気圧で分離された気体の空気はコンプレッサー
62により再度50気圧まで昇圧されて、熱交換器41
の上流で高圧空気と混合される。気体の圧縮に必要な動
力は、気体が低温で密度が大きいほど少なくて済むの
で、常温の空気を圧縮するより動力は大幅に少なくな
る。このリサイクルラインと、膨張弁38の出口圧力条
件に関しては種々の方式が考えられる。これは、空気の
物性を考慮すると、単に1段のコンプレッサー62で5
0気圧に昇圧するよりも、コンプレッサー21,22,
23、のように多段にコンプレッサーを設けて途中に冷
却工程を設けた方が効率が向上するので、システムの簡
素化と効率の関係でリサイクルラインの条件が決められ
る。冷熱量に余裕が有るときは、全量をリサイクルして
液化することも考えられる。図1と比較して図6では、
62で圧縮される空気量だけ、極低温領域の冷熱が消費
されるので、必要な冷熱量と貯蔵熱量をほぼ同一にする
ことができる。
【0033】図1と比較して冷却に使用する極低温の空
気量が減少するので、常温に近い領域での冷熱量が必要
量を下回る可能性がある。この場合、高圧空気の一部を
膨張タービン64で1気圧まで膨張させて、低温空気を
製造して熱交換器41に供給する。膨張タービンにより
50気圧から1気圧までの膨張仕事はエネルギーとして
発電機65で回収できる。なお、図1では常温近くの冷
媒として水を用いたが、図6では灯油を用い、中段の冷
媒であるプロパンと動作可能範囲が重なるようにする。
また、低温の冷媒もLNGの代わりにプロパンを用い
る。この結果、LNGを用いると沸点が低くコンバイン
ドサイクルに供給する空気の圧力を12気圧と低くする
必要があったが、プロパンは沸点が高いので空気圧力を
50気圧まで上げて、コンバインドサイクルに供給でき
る。
【0034】本応用例2によれば、常温近傍と液体空気
温度近傍の双方で冷熱量と貯蔵熱量をほぼ等しくできる
ので、空気の液化効率を大幅に向上することが可能であ
る。 [実施例4]図7に示す応用例3は、図6において3段
あった冷媒タンクを、プロパンを用いた1段の冷媒貯蔵
タンク31に簡素化したものである。図6で単に冷媒の
段数を減らすと、常温からプロパンが使用できる範囲ま
での冷却をするのが熱損失となる。そこで、図7では5
0気圧まで加圧し冷却塔26で常温まで冷却された空気
を、先ず熱交換器73を通して更に−20℃まで冷却
し、それを膨張タービン71,72で、それぞれ5気圧
と1気圧まで減圧させ、熱交換無しで温度を低下させ
る。5気圧まで膨張させた空気は、更に熱交換器74で
冷却した後、コンプレッサー62で50気圧まで圧縮し
熱交換器75を通して、冷媒であるプロパンと交流式の
熱交換器34で、液体空気温度近くまで冷却した後、膨
張弁38,61で2段に膨張させる。その結果、85%
を液体空気になり、液体空気貯蔵タンク40に移送す
る。
【0035】一方、膨張タービン72で1気圧まで減圧
した空気は、分離器39で得られる極低温の空気と混合
し、熱交換器73,74,75での冷媒として利用す
る。なお、空気と空気の熱交換を行う熱交換器73,7
4,75は、小さい石を充填した熱交換器を用いる。こ
の場合、図7では熱交換器73,74,75は一つの熱
交換で表わしているが、実際は並列した複数の熱交換器
群で構成し、流路を切り替えて熱交換を行わせる。図7
では膨張タービン72で生成した極低温の空気は空気の
冷却に用いたが、冷媒であるプロパンを冷却し、その冷
媒で空気を冷却することも考えられる。一方、膨張の中
間段における分離器60で分離された気体の空気は、コ
ンプレッサー62の入口で、熱交換器74を出た5気圧
の空気と混合する。電力需要が高くなると、液体空気貯
蔵タンク40の液体空気をポンプで50気圧まで昇圧し
た後で、交流式の熱交換器34で冷媒を冷却する。熱交
換器34を出た高圧空気は常温と比較するまで温度が低
いので、コンバインドサイクル発電所内で単に燃焼器に
供給するだけでなく、ガスタービンのブレードや発電機
等の冷却に用いることもできる。
【0036】本応用例3では1種類の冷媒だけで、空気
の液化効率を高くできる効果がある。
【0037】
【発明の効果】コンプレッサーと燃焼器,タービンで構
成されるガスタービン発電システムで余剰電力を用いて
液体空気を製造し、これを電気需要が増大したときにコ
ンプレッサーからの圧縮空気に代わり液体空気を加圧し
て燃焼器に供給する方式において、液体空気の気化熱を
冷媒に貯蔵し、これを液体空気製造の時に空気の冷却に
利用することにより、エネルギーの貯蔵効率を20%か
ら50%に向上できる効果がある。
【0038】更に、液体空気製造装置で高圧空気を自由
膨張させ一部を液化させた後、残りの低温空気を再度加
圧して、高圧空気に戻すと空気の液化効率が改善し、エ
ネルギー貯蔵効率が約70%まで向上できる効果があ
る。
【0039】燃焼器においてコンプレッサーからの高圧
空気と液体空気を加圧したものを任意に混合して用いる
ことで、発電量を連続に変更できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の空気液化設備の既要図。
【図2】本発明をコンバインドサイクル発電所の既要
図。
【図3】従来のコンバインドサイクルの既要図。
【図4】空気の物性説明図。
【図5】応用例の空気液化設備の既要図。
【図6】応用例2の空気液化設備の既要図。
【図7】応用例3の空気液化設備の既要図。
【図8】本発明のシステム既要図。
【符号の説明】
2…コンプレッサー、3…燃焼器、4…タービン、9…
液体空気製造設備、10,40…液体空気貯蔵タンク、
31a,31b,31c…冷媒貯蔵タンク、32,3
3,34…熱交換器、35,36,37…予備タンク、
38,61…膨張弁、62…コンプレッサー。
フロントページの続き (72)発明者 横溝 修 茨城県日立市大みか町七丁目2番1号 株 式会社日立製作所電力・電機開発本部内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】コンプレッサーと燃焼器,タービンで構成
    されるガスタービン発電システムを1系統または複数系
    統保有する発電所で、電力需要が低下した時に余剰電力
    を用いて液体空気を製造してタンク内に貯蔵し、電気需
    要が増大した時に液体空気を加圧して燃焼器に供給する
    ことでエネルギー貯蔵できるシステムにおいて、液体空
    気を気化する時に得られる冷熱を冷媒に貯蔵し、液体空
    気を製造するときにその冷媒で空気を冷却することを特
    徴としたエネルギー貯蔵型ガスタービン発電システム。
  2. 【請求項2】特許請求の範囲第1項の液体空気を製造す
    る装置において、1段または多段で高圧空気を膨張させ
    た後、最終段または中間段で液体空気から分離した低温
    の空気を加圧して、もとの高圧空気に戻すことを特徴と
    したエネルギー貯蔵型ガスタービン発電システム。
  3. 【請求項3】特許請求の範囲第1項において、燃焼器に
    空気の供給をコンプレッサーと液体空気の両方を用い、
    電力需要の増大とともに液体空気の割合を大きくするこ
    とを特徴としたエネルギー貯蔵型ガスタービン発電シス
    テム。
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