JPH09241867A - 耐熱部材 - Google Patents

耐熱部材

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JPH09241867A
JPH09241867A JP5357096A JP5357096A JPH09241867A JP H09241867 A JPH09241867 A JP H09241867A JP 5357096 A JP5357096 A JP 5357096A JP 5357096 A JP5357096 A JP 5357096A JP H09241867 A JPH09241867 A JP H09241867A
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JP
Japan
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layer
base material
heat
coating layer
metal
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JP5357096A
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English (en)
Inventor
Hirotaka Inagaki
浩貴 稲垣
Kunihiko Wada
国彦 和田
Seiichi Suenaga
誠一 末永
Kazuhiro Yasuda
一浩 安田
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Toshiba Corp
Original Assignee
Toshiba Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】金属基材の表面近傍の再結晶層の生成が抑制さ
れ、金属基材と金属被覆層との十分な密着性が確保され
た、高温強度と耐腐食・耐酸化性に優れる耐熱部材を提
供すること。 【解決手段】金属基材と、粗粒子の凝集体層が前記金属
基材側に配置され、微粒子の凝集体層が部材表面側に配
置された金属被覆層とを具備することを特徴とする耐熱
部材による。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ガスタービンの動
・静翼の構成材やジェットエンジンのタービン翼のよう
に、高温環境下において長時間の高温強度、耐酸化性お
よび耐腐食性が要求される耐熱部材に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、ガスタービンに代表されるエネル
ギー機器の高効率化が精力的に進められている。そし
て、このような高効率化を達成するために、機器の使用
温度は上昇の一途をたどっており、これに伴って、エネ
ルギー機器の構成材料に要求される材料特性は一層過酷
になりつつある。エネルギー機器は、高温や腐食環境下
に晒されるため、その構成材料に要求される材料特性と
して、高温強度や耐腐食・耐酸化性等は非常に重要であ
る。
【0003】しかしながら、従来の鉄基合金、ニッケル
基合金、コバルト基合金等の耐熱合金単体では、高温強
度と耐腐食・耐酸化性とを同時に満たすことは困難であ
るため、これら金属基材への金属被覆層を施し、耐腐食
・耐酸化皮膜とする技術が開発され、かなりの実績を挙
げている。このような金属被覆層を構成する材料として
は、 M-Cr-Al-Y合金(MはNi、CoおよびFeから選ばれる少
なくとも 1種の元素を示す)が一般的に用いられてい
る。
【0004】M-Cr-Al-Y合金は、高温強度および金属基
材となる合金との整合性に優れた主成分である M合金
と、耐腐食・耐酸化性の高い皮膜を形成するためのAlや
Crと、金属被覆層を補強して強度を維持するための Yと
から構成されている。一方、上記金属被覆層を結合層と
し、結合層上にさらにセラミックス被覆層を施し、耐熱
性を向上させることも行われている。 M-Cr-Al-Y合金に
よる金属被覆層の形成方法としては、プラズマ溶射法、
PVD法、CVD法等の様々な方法が検討されてきた
が、厚い膜を容易に形成することができることから、金
属被覆層の最も有効な形成方法として、プラズマ溶射法
が最も一般的に利用されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】プラズマ溶射法を用い
た金属被覆技術では、例えば、 M-Cr-Al-Y合金により金
属基材を被覆する際に、金属基材と M-Cr-Al-Y合金との
密着性を確保するための前処理として、金属基材の表面
を粗面化することが必須である。例えば、アルミナグリ
ッド等によるサンドブラスト処理により、金属基材の表
面を粗面化することが行われている。
【0006】しかしながら、近年、ガスタービン等に用
いる構造部材には、金属基材として−方向凝固合金ある
いは単結晶合金といった、結晶制御合金が適用されつつ
あるが、サンドブラスト処理によって、結晶制御合金か
らなる金属基材の表面近傍において再結晶層が形成さ
れ、この再結晶層の粒界が結晶制御合金の亀裂の生成サ
イトとなる等、次世代の金属基材の使用にあたって、非
常に大きな問題となっていた。
【0007】すなわち、金属基材に対して、サンドブラ
スト処理を行うと、金属基材の表面近傍にかなりの歪み
が導入されるため、その後の熱処理により、金属基材の
表面近傍の数十μmにおよぶ領域で多結晶の再結晶層が
形成され、耐熱部材の高温強度が著しく低下するという
問題があった。また、PVD法やCVD法による金属被
覆技術においても熱処理は必須となるが、その熱処理に
よって金属基材と金属被覆層との間に拡散層が形成され
るため、耐熱部材の高温強度が著しく低下するという問
題があった。
【0008】本発明は、このような問題に対処するため
になされたもので、金属基材の表面近傍の再結晶層の生
成が抑制され、金属基材と金属被覆層との十分な密着性
が確保された、高温強度と耐腐食・耐酸化性に優れる耐
熱部材を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本願の第1の発明による
耐熱部材は、金属基材と、粗粒子の凝集体層が前記金属
基材側に配置され、微粒子の凝集体層が部材表面側に配
置された金属被覆層とを具備することを特徴としてい
る。
【0010】第1の発明による耐熱部材においては、金
属基材に被覆される金属被覆層が粗粒子の凝集体層と微
粒子の凝集体層との少なくとも2層により構成されてお
り、粗粒子の凝集体層が金属基材側に、微粒子の凝集体
層が金属基材に対して最も遠位に配置されている。それ
により、金属基材と金属被覆層間の良好な密着力および
熱応力の緩和効果を得た上で、金属結合層の耐酸化性や
耐腐食性を向上させることができる。すなわち、金属基
材の亀裂やこの亀裂による金属基材と金属被覆層との剥
離等が防止できる。また、耐熱部材の酸化や腐食等によ
る劣化を長時間防止することが可能となる。
【0011】また、本願の第2の発明による耐熱部材
は、金属基材と、前記金属基材を覆うセラミック被覆層
と、前記金属基材とセラミック被覆層との間に設けら
れ、前記金属基材側に配置された粗粒子の凝集体層と前
記セラミック被覆層側に配置された微粒子の凝集体層と
を少なくとも有する金属結合層とを具備することを特徴
としている。
【0012】第2の発明による耐熱部材においては、金
属基材とセラミック被覆層間に形成される金属結合層
を、金属基材側に配置した粗粒子の凝集体層とセラミッ
ク被覆層側に配置した微粒子の凝集体層との少なくとも
2層により構成している。よって、セラミック被覆層と
金属結合層間および金属基材と金属結合層間の良好な密
着力および熱応力の緩和効果を得た上で、金属結合層の
耐酸化性や耐腐食性を向上させることができる。すなわ
ち、金属基材の亀裂やこの亀裂による金属基材と金属結
合層との剥離等が防止できる。また、耐熱部材の酸化や
腐食等による劣化を防止することが可能となる。
【0013】発明者らは、プラズマ溶射法により形成さ
れた金属被覆層と金属基材との密着性に関して研究を行
った結果、プラズマ溶射法により形成される金属被覆層
は、原料粉末の粒径等の施工条件により、その性質を以
下に示すように変えることを確認した。
【0014】一般に、粒径の小さい金属粉末で形成され
る金属被覆層は、緻密で気孔と酸化物の混入が少なく耐
腐食・耐酸化性に優れる反面、密着性には劣る。一方、
粒径の大きい金属粉末で形成される金属被覆層は、気孔
と酸化物とを数パーセント含み、熱応力の緩和効果が大
きく、施工時の凹凸も大きいことから、金属被覆層と基
材との密着性に優れた性質を示す反面、耐腐食・耐酸化
性が劣るという欠点がある。
【0015】したがって、プラズマ溶射法により形成し
た従来の金属被覆層においては、金属基材との密着性と
耐酸化・腐食性との両立は困難であった。
【0016】しかしながら、本願の第1および第2の発
明による耐熱部材によれば、金属基材側に配置した粗粒
子の凝集体層により熱応力の緩和が可能となり、また、
基材との密着性も良好である。さらに、微粒子の凝集体
層により耐酸化・腐食性を向上させることができるの
で、プラズマ溶射法によっても、金属被覆層と金属基材
との密着性と耐酸化・腐食性との両立が可能となった。
【0017】本願の第1および第2の発明による耐熱部
材において、金属被覆層のうち、金属基材側に配置され
る粗粒子の凝集体層は、平均粒径が45〜 300μm の範囲
にある粗粒子の凝集体層であることが望ましい。このよ
うな凝集体層は、金属からなる平均粒径が45〜 300μm
程度の粗粒子粉末を用いて、プラズマ溶射することによ
り得られる。粗粒子粉末を用いたプラズマ溶射によれ
ば、用いた粉末粒径とほぼ同等の粒径を有する粒子(構
成粒子)の凝集体層、すなわち粗粒子の凝集体層が得ら
れる。
【0018】このような粗粒子の凝集体層は、金属被覆
層と金属基材との界面に発生する熱応力を緩和する効果
に優れる。さらに、表面粗さが大きくなるため、金属基
材に対してアンカー効果を発揮し、金属被覆層と金属基
材との密着力の向上に寄与する。これらにより、金属被
覆層の剥離が防止される。粗粒子の凝集体層の構成粒子
の平均粒径が45μm 未満であると、上記熱応力緩和効果
やアンカー効果を十分に得ることができない。また、 3
00μm を超えると、耐腐食・耐酸化性が大きく低下し、
さらに欠陥を連結した割れにより金属被覆層の剥離が生
じやすくなる。ここで、プラズマ溶射による場合、粗粒
子の凝集体層を構成する粒子は溶射方向(厚さ方向)に
押し潰された形状となることが多い。このような偏平形
状の粒子の粒径は、図3に示すように、偏平形状粒子P
1 を球状粒子P2 に換算した際の直径dを指すものとす
る。すなわち、凝集体層の断面において、偏平形状粒子
1 の凝集体層の厚さ方向に直交する方向の最大長さを
a、厚さ方向の最大長さをbとする。偏平形状粒子P1
を長さaおよび長さbの断面を有する円柱で近似させ、
上記円柱の体積を求める。この円柱の体積と等しい体積
を有する球状粒子P2 の直径dを、偏平形状粒子P1
換算粒径とする。上述した粗粒子の凝集体層の構成粒子
の平均粒径は、換算粒径dから求めた値である。なお、
微粒子の凝集体層についても同様である。
【0019】粗粒子の凝集体層をプラズマ溶射で形成す
る際に用いる粗粒子粉末は、上述したように平均粒径が
45〜 300μm の範囲であると共に、平均粒径の±20μm
の範囲内に少なくとも70体積% の粒子が含まれることが
好ましい。粉末の粒度分布が広すぎると、上述したよう
な効果が再現性よく得られないおそれがある。粗粒子の
凝集体層を形成する際に用いる粗粒子粉末は、平均粒径
の±20μm の範囲内に少なくとも80体積% の粒子が含ま
れることがさらに好ましい。
【0020】粗粒子の凝集体層は、10〜50μm 程度の厚
さで形成することが好ましい。粗粒子の凝集体層の厚さ
が10μm 未満であると、熱応力の緩和効果等を十分に得
ることができないおそれがある。一方、50μm を超える
と、凝集体層内の熱応力が大きくなり、これにより粗粒
子の凝集体層の剥離が生じやすくなる。さらに、粗粒子
の凝集体層の表面粗さは、最大高さ(Rmax )が75〜 1
00μm の範囲で、10点平均高さ(Rz )が56〜70μm の
範囲であることが好ましい。これらの範囲内において、
粗粒子の凝集体層による熱応力の緩和効果やアンカー効
果がより良好に発揮される。
【0021】金属被覆層のうち、部材表面側に配置され
る微粒子の凝集体層は、平均粒径が1〜44μm の範囲に
ある微粒子の凝集体層であることが望ましい。このよう
な凝集体層は、例えば、金属からなる平均粒径が 1〜44
μm の微粒子粉末を用いて、プラズマ溶射することによ
り得られる。このような微粒子粉末を用いたプラズマ溶
射によれば、用いた粉末粒径とほぼ同等の粒径を有する
粒子(構成粒子)の凝集体層、すなわち微粒子の凝集体
層が得られる。
【0022】上述したような平均粒径を有する微粒子の
凝集体層は緻密であり、主に耐高温酸化性や耐高温腐食
性を担うものである。微粒子の凝集体層の構成粒子の平
均粒径が 1μm 以下であると、凝集体層が著しく緻密に
なり、熱衝撃や熱疲労特性が低下し、さらに生産性も悪
い。一方、平均粒径が44μm を超えると、結果的に気孔
等が増大して、耐酸化性や耐腐食性を十分に得ることが
できない。
【0023】微粒子の凝集体層をプラズマ溶射で形成す
る際に用いる微粒子粉末は、上述したように平均粒径が
1〜44μm の範囲であると共に、平均粒径の±10μm の
範囲内に少なくとも70体積% の粒子が含まれることが好
ましい。粉末の粒度分布が広すぎると、上述したような
効果が再現性よく得られないおそれがある。微粒子の凝
集体層5を形成する際に用いる粉末は、平均粒径の±10
μm の範囲内に少なくとも80体積% の粒子が含まれるこ
とがさらに好ましい。
【0024】微粒子の凝集体層は、50〜 200μm 程度の
厚さで形成することが好ましい。微粒子の凝集体層の厚
さが50μm 未満であると、耐高温酸化性や耐高温腐食性
を十分に得ることができないおそれがある。一方、 200
μm を超えると、凝集体層の内部で熱応力が大きくな
り、被膜剥離の原因となるおそれがある。さらに、微粒
子の凝集体層の表面粗さは、最大高さ(Rmax )が30〜
45μm の範囲で、10点平均高さ(Rz )が25〜35μm の
範囲であることが好ましい。これらの範囲内において、
微粒子の凝集体層の機能がより良好に発揮される。
【0025】本願の第1および第2の発明による耐熱部
材において、金属被覆層の構成材料としては、耐高温酸
化性や耐高温腐食性に優れ、かつ金属基材あるいは金属
基材とセラミック被覆層との間の熱膨張差を緩和し得る
材料、具体的には中間の熱膨張係数を有する材料や高延
性材料が好ましい。このような材料としては、例えばM-
Cr-Al-Y合金(MはNi、CoおよびFeから選ばれる少なくと
も 1種の元素を示す)が挙げられる。
【0026】M-Cr-Al-Y合金の好ましい組成としては、
1〜20重量% のAl、10〜35重量% のCr、 0.1〜 1.5重量%
の Yを含み、残部が実質的に M元素からなる組成が挙
げられる。AlおよびCrは、いずれも耐酸化性および耐腐
食性を担う元素である。これらの元素の組成比が上記範
囲内であると、耐腐食・耐酸化性能を十分に得ることが
できる。AlおよびCrのより好ましい組成比は、Alは 5〜
15重量% の範囲、Crは15〜30重量% の範囲である。 Yは
保護性酸化被膜の補強および強度維持用元素である。 Y
の組成比が上記範囲内であると、上記効果を十分に得る
ことができる。Yのより好ましい組成比は 0.3〜 1重量%
の範囲である。
【0027】本願の第1および第2の発明による耐熱部
材において、金属被覆層の形成方法は特に限定されない
が、容易に厚膜が形成できることから、プラズマ溶射法
で形成すると好ましい。溶射時の雰囲気の圧力として
は、 1×10-5〜 1×107 Paの範囲であればいずれでもよ
いが、金属被膜層の緻密性を向上させるためには、 1×
10-5〜 1×102 Paの減圧雰囲気下で、また、金属基材と
金属被膜層との間で熱応力の緩和効果を向上させるため
には、 1×105 〜 1×107 Paの大気圧近くの雰囲気下で
溶射することが好ましい。
【0028】一般に、減圧雰囲気で形成される金属被覆
層は、緻密で気孔と酸化物の混入が少なく耐腐食・耐酸
化性に優れる反面、熱応力の緩和効果が小さく、熱疲労
や熱衝撃に弱いという欠点がある。一方、大気圧雰囲気
で形成される金属被覆層は、気孔と酸化物とを数パーセ
ント含み、熱応力の緩和効果が大きく、施工時の凹凸も
大きいことから、金属被覆層とセラミックス層の密着性
に優れた性質を示す反面、耐腐食・耐酸化性に劣るとい
う欠点がある。したがって、目的に応じて大気圧を調整
する必要がある。
【0029】また、金属被膜層の構成材料からなる金属
粉末の粒径と、溶射時の圧力との調整を図ることで、さ
らに優れた効果を有する金属被膜層の形成が期待でき
る。
【0030】すなわち、粗粒子の凝集体層を、平均粒径
が44〜 300μm の金属粉末を用い、1×105 〜 1×107 P
aの雰囲気下で形成し、微粒子の凝集体層を、平均粒径
が 1〜44μm の金属粉末を用い、 1×10-5〜 1×102 Pa
の減圧雰囲気下で形成することで、より優れた効果を有
する金属被膜層を形成することができる。
【0031】さらに、基材との密着性は良好であるの
で、サンドブラスト処理は基本的には不要であるが、金
属基材への加工の歪みが発生しない程度に施してもよ
い。このとき、金属基材の表面粗さは、Ra< 3μm で十
分であるが、ブラスト感受性の高い金属基材に対して
は、Ra< 2μm 程度としてもよい。
【0032】本願の第1および第2の発明による耐熱部
材において、金属基材には、用途等に応じて一般に使用
されている種々の金属材料、例えば耐熱合金を使用する
ことができる。具体的には、Ni、CoおよびFeから選ばれ
る少なくとも 1種の元素を主成分とする耐熱合金が例示
される。特に厳しい熱環境下で使用する場合には、 IN7
38、Mar- M247、 IN939等のNi基耐熱合金や、 FSX-41
4、HS-188、 MM509等のCo基耐熱合金を用いることが有
効である。
【0033】また、本願の第1および第2の発明による
耐熱部材においては、金属被覆層を必ずしも微粒子の凝
集体層と粗粒子の凝集体層の2層のみとする必要はな
く、微粒子の凝集体層と粗粒子の凝集体層との間に、微
粒子と粗粒子の混合凝集体層を設けてもよい。混合凝集
体層を設けることによって、微粒子の凝集体層と粗粒子
の凝集体層間の密着性や熱応力緩和効果等の向上を図る
ことができる。
【0034】混合凝集体層に用いられる微粒子および粗
粒子は、微粒子の凝集体層および粗粒子の凝集体層の構
成粒子にそれぞれ準ずるものである。すなわち、微粒子
の凝集体層の形成に用いる微粒子粉末と、粗粒子の凝集
体層の形成に用いる粗粒子粉末との混合粉末を、プラズ
マ溶射することによって、微粒子と粗粒子の混合凝集体
層を形成することができる。
【0035】微粒子と粗粒子の混合凝集体層は、微粒子
と粗粒子の混合比を一定として形成してもよいし、また
微粒子と粗粒子の混合比を連続的または段階的に変化さ
せて形成してもよい。微粒子と粗粒子の混合比を変化さ
せる場合、微粒子の凝集体層側に微粒子の比率が高く、
かつ粗粒子の凝集体層側に粗粒子の比率が高くなるよう
に、混合比を変化させることが好ましい。このような混
合比を変化させた混合凝集体層は、プラズマ溶射時に微
粒子粉末と粗粒子粉末の混合比を連続的または段階的に
変化させることにより形成することができる。このよう
な混合比を変化させた混合凝集体層を形成することによ
って、さらに金属被覆層と金属基材間の熱応力の緩和効
果を向上させることができる。
【0036】さらに、本願の第2の発明による耐熱部材
においては、微粒子の凝集体層とセラミック被覆層との
間に、第2の粗粒子の凝集体層を形成することができ
る。
【0037】ここで、セラミック被覆層側に配置される
第2の粗粒子の凝集体は、金属基材側に配置される粗粒
子の凝集体層と同様に構成されたものである。
【0038】すなわち、セラミック被覆層側に配置され
る第2の粗粒子の凝集体は、前述した金属基材側に形成
された粗粒子の凝集体層と同様に、耐腐食・耐酸化性合
金の粗粒子粉末をプラズマ溶射することにより得られ、
その構成粒子の平均粒径も同様に45〜 300μm 程度とす
ることが好ましい。厚さについても、同様に10〜50μm
程度とすることが好ましい。このような第2の粗粒子の
凝集体層をセラミック被覆層側にも配置することによっ
て、セラミック被覆層と金属被覆層間の熱応力緩和効果
や密着力をより向上させることができる。
【0039】この場合にも、上述したように、第2の粗
粒子の凝集体層と微粒子の凝集体層との間に、微粒子と
粗粒子の混合凝集体層を設けることができる。
【0040】混合凝集体層の構成は、前述した通りであ
る。すなわち、微粒子と粗粒子の混合凝集体層は、微粒
子と粗粒子の混合比を一定として形成してもよいし、ま
た微粒子と粗粒子の混合比を連続的または段階的に変化
させて形成してもよい。微粒子と粗粒子の混合比を変化
させる場合、第2の粗粒子の凝集体層側に粗粒子の比率
が高く、かつ微粒子の凝集体層側に微粒子の比率が高く
なるように、混合比を変化させることが好ましい。
【0041】金属被覆層全体の厚さは、上記したような
混合凝集体層を形成する場合を含めて、70〜 250μm の
範囲とすることが好ましい。金属被覆層の厚さが70μm
未満であると、熱応力の緩和効果やアンカー効果が低下
したり、また耐腐食・耐酸化性が低下するおそれがあ
る。一方、 250μm を超えると、金属被覆層の剥離が生
じやすくなる。
【0042】本願の第2の発明による耐熱部材において
は、金属基材の表面は、金属被覆層を介して設けられた
セラミック被覆層により覆われており、これらにより耐
熱部材が構成されている。セラミック被覆層には、各種
の耐熱性セラミック材料を用いることができる。耐熱性
セラミック材料としては、部分安定化 ZrO2 、 SiC、Si
3 N 4 、WC、 TiC、 TiO2 、Al2 O 3 、 CaO、 SiO2
CaO-SiO2 系、CaO-Al2 O 3 系、 CaO-P2 O 5 系等が例
示される。これらの内でも、熱伝導度が小さくかつ熱膨
張係数が大きい、言い換えると熱膨張係数が金属材料に
近い部分安定化ZrO2 、特に Y安定化 ZrO2 が有効であ
る。なお、部分安定化 ZrO2 の安定化成分としては、 Y
2 O 3 以外に MgO、 CaO、 CeO2 等を用いることができ
る。
【0043】セラミック被覆層は、50〜 500μm 程度の
厚さで形成することが好ましい。また、その形成方法と
しては、大気プラズマ溶射法や低圧雰囲気プラズマ溶射
法等の溶射法、PVD法、CVD法等を用いることがで
きる。実用上は溶射法、特に大気プラズマ溶射法を用い
ることが好ましい。これにより、金属被覆層との密着力
が向上し、本発明の効果が顕著となる。
【0044】
【発明の実施の形態】以下、本発明を実施するための形
態について説明する。図1は、本願の第1の発明による
耐熱部材の一実施形態を示す断面図である。
【0045】図1において、1は金属基材であり、使用
用途等に応じて上述したような各種公知の耐熱合金を適
宜選択して使用することができる。すなわち、CMSX-2、
CM247LC、 IN738等のNi基耐熱合金や、FSX414、MM509
等のCo基耐熱合金等を用いることができる。特に、CMSX
-2、 CM247LC等に代表される一方向凝固合金や単結晶合
金といった結晶制御合金において顕著な効果が得られ
る。
【0046】金属基材1上には、平滑な基材表面に直
接、プラズマ溶射法により形成された粗粒子の凝集体層
2と、同じくプラズマ溶射法により粗粒子の凝集体層2
を介して形成された微粒子の凝集体層3とからなる金属
被覆層4が形成されている。なお、金属基材1の表面の
粗さは、Ra< 3μm を選択してある。
【0047】粗粒子の凝集体層2は、NiおよびCoから選
ばれる少なくとも 1種の元素を主成分とし、さらに、Al
およびCr等を含む粗粒子合金粉末をプラズマ溶射するこ
とにより、10〜50μm 程度の厚さに形成されている。こ
のとき使用する粗粒子合金粉末としては、金属基材1と
の密着性を向上させるために、構成粒子の平均粒径が45
〜 300μm の範囲のものを用いた。さらに、溶射時の圧
力は、 1×105 〜 1×107 Paとした。
【0048】微粒子の凝集体層3は、NiおよびCoから選
ばれる少なくとも 1種の元素を主成分とし、さらに、Al
およびCr等を含む粗粒子合金粉末をプラズマ溶射するこ
とにより、 150〜 200μm 程度の厚さに形成されてい
る。このとき使用する粗粒子合金粉末としては、金属被
覆層4の耐腐食・耐酸化性を向上させるために、構成粒
子の平均粒径が 1〜44μm の範囲のものを用いた。さら
に、溶射時の圧力は、 1×10-5〜 1×102 Paとした。溶
射時の圧力については、真空度が高いほど形成される微
粒子の凝集体層3中に気孔や酸化物等の混入が抑えられ
るので、耐腐食・耐酸化性に優れた緻密な微粒子の凝集
体層を形成することができ、したがって、耐腐食・耐酸
化性に優れた金属被覆層4が形成できる。
【0049】こうして、溶射前処理として金属基材1に
サンドブラスト処理を施さずとも、金属基材1との密着
性に優れた金属被覆層4が形成でき、耐腐食・耐酸化性
にも優れた効果を示す耐熱部材を得ることができる。
【0050】図2は、本願の第2の発明による耐熱部材
の一実施形態を示す断面図である。図2において、5は
金属基材であり、使用用途等に応じて上述したような各
種公知の耐熱合金を適宜選択して使用することができ
る。実用的には、CMSX-2、 CM247LC、 IN738等のNi基耐
熱合金や、FSX414、MM509 等のCo基耐熱合金等を用いる
ことができる。特に、CMSX-2、 CM247LC等に代表される
一方向凝固合金や単結晶合金といった結晶制御合金にお
いては、顕著な効果が得られる。
【0051】金属基材5上には、第1の粗粒子の凝集体
層6がプラズマ溶射法により形成されており、粗粒子の
凝集体層6を介して微粒子の凝集体層7が同じくプラズ
マ溶射法により形成されている。さらに、微粒子の凝集
体層7上に第2の粗粒子の凝集体層8がプラズマ溶射法
によって形成され、金属被覆層9となっている。そし
て、第2の粗粒子の凝集体層8上にセラミックス被覆層
10が形成され、耐熱部材が構成されている。なお、金
属基材5の表面の粗さは、Ra< 3μm を選択してある。
【0052】粗粒子の凝集体層6は、NiおよびCoから選
ばれる少なくとも 1種の元素を主成分とし、さらに、Al
およびCr等を含む粗粒子合金粉末をプラズマ溶射するこ
とにより、10〜50μm 程度の厚さに形成されている。こ
のとき使用する粗粒子合金粉末としては、金属基材5と
の密着性を向上させるために、構成粒子の平均粒径が45
〜 300μm の範囲のものを用いた。さらに、溶射時の圧
力は、 1×105 〜 1×107 Paとした。
【0053】微粒子の凝集体層7は、NiおよびCoから選
ばれる少なくとも 1種の元素を主成分とし、さらに、Al
およびCr等を含む粗粒子合金粉末をプラズマ溶射するこ
とにより、50〜 150μm 程度の厚さに形成されている。
このとき使用する粗粒子合金粉末としては、金属被覆層
9の耐腐食・耐酸化性を向上させるために、構成粒子の
平均粒径が 1〜44μm の範囲のものを用いた。さらに、
溶射時の圧力は、 1×10-5〜 1×102 Paとした。溶射時
の圧力については、真空度が高いほど形成される微粒子
の凝集体層7中に気孔や酸化物等の混入が抑えられるの
で、耐腐食・耐酸化性に優れた緻密な微粒子の凝集体層
を形成することができ、したがって、耐腐食・耐酸化性
に優れた金属被覆層9が形成できる。
【0054】粗粒子の凝集体層8は、NiおよびCoから選
ばれる少なくとも 1種の元素を主成分とし、さらに、Al
およびCr等を含む粗粒子合金粉末をプラズマ溶射するこ
とにより、10〜50μm 程度の厚さに形成されている。こ
のとき使用する粗粒子合金粉末としては、セラミックス
被覆層10との密着性を向上させるために、構成粒子の
平均粒径が45〜 300μm の範囲のものを用いると好まし
い。さらに、溶射時の圧力を 1×105 〜 1×107 Paとす
ると、粗粒子の凝集体層8とセラミックス被覆層9との
密着性が十分に確保される。
【0055】セラミックス被覆層10は、粗粒子の凝集
体層8上に約50〜 500μm の厚さに形成されている。セ
ラミックス被覆層10の形成方法は、溶射法、PVD
法、CVD法等を適宜用いることができるが、実用上は
溶射法、特に、大気プラズマ溶射法を用いることによ
り、形成速度も大きくかつ容易にセラミックス被覆層1
0の形成が可能である。
【0056】また、セラミックス被覆層10として、耐
熱性のセラミックスを適宜選択することができるが、部
分安定化 ZrO2 が、熱伝導度が小さくかつ熱膨張係数が
大きいので、特に有効である。部分安定化 ZrO2 の安定
成分には、 Y2 O 3 、 MgO、CaO、 CeO2 等のジルコニ
アの安定化材料を全て用いることができるのは言うまで
もない。また、上記耐熱部材の製造方法によれば、上述
の耐熱部材を安定かつ再現性よく製造することができ
る。
【0057】
【実施例】次に、本発明の具体的な実施例について説明
する。
【0058】実施例1 単結晶Ni基耐熱合金CMSX-2からなる丸棒状金属基材に、
プラズマ溶射法により厚さ約30μm の NiCoCrAlY層(Ni
-23%Co-17%Cr-12%Al-0.5%Y(重量% ))を形成した。溶
射条件は、雰囲気圧力約 1×105 Pa、溶射距離125mm 、
溶射出力 35V、850Aとした。また、金属基材の表面粗さ
は、Ra=0.3、Rmax =2.0であり、 NiCoCrAlY粉末の平均
粒径は 130μm であった。このとき、 NiCoCrAlY層中の
気孔率は約 10%であった。
【0059】次いで、上記 NiCoCrAlY層上に、平均粒径
が40μm で先と同組成である NiCoCrAlY粉末を用いたプ
ラズマ溶射法により、厚さ約 170μm の NiCoCrAlY層を
形成した。溶射条件は、雰囲気圧力約 1×102 Pa、溶射
距離400mm 、溶射出力 35V、850Aとした。このとき、 N
iCoCrAlY層中の気孔率は、約1%であった。
【0060】こうして得られた耐熱部材に対し、Ar雰囲
気炉中、 1323Kで16時間、さらに 1123Kで48時間の熱処
理を施した。そして、熱処理後の耐熱部材を用いて、 1
173Kで250MPaの応力下でクリープ試験を行ったところ、
100時間保持しても破断しなかった。そこで、この耐熱
部材を切断して断面を微視的に観察したところ、金属基
材側に再結晶層は観察されなかった。
【0061】また、本実施例に対する比較例として、単
結晶Ni基耐熱合金CMSX-2単結晶からなる丸棒状金属基材
の表面を、約 1mm粒径のアルミナ粒子によりサンドブラ
スト処理を施した以外は、上記実施例1と全く同様にし
て、耐熱部材を形成した。なお、このとき、金属基材の
表面粗さはRa=3.5、Rmax =27.0 であった。
【0062】こうして得られた耐熱部材に対し、実施例
1と同様の熱処理を施し、同一条件でクリープ試験を行
ったところ、 100時間経過以前に破断した。そこで、こ
の耐熱部材を切断して断面を微視的に観察したところ、
金属基材側に約30μmmの再結晶層が観察され、この領域
は多結晶化していた。そして、再結晶層の粒界から金属
基材内部に向かって多くの亀裂が進展しており、この亀
裂が破断の起点と考えられた。
【0063】実施例2 Co基超合金 FSX-414からなる丸棒状金属基材に、プラズ
マ溶射法により厚さ約30μm の CoNiCrAlY層(Co-32%Ni
-21%Cr-8%Al-0.5%Y (重量% ))を形成した。溶射条件
は、雰囲気圧力約 1×105 Pa、溶射距離125mm 、溶射出
力 35V、850Aとした。また、金属基材の表面粗さは、Ra
=0.3、Rmax =1.9であり、 CoNiCrAlY粉末の平均粒径は
90μm であった。このとき、 CoNiCrAlY層中の気孔率
は、約7%であった。
【0064】次いで、上記 CoNiCrAlY層上に、平均粒径
が40μm で先と同組成である CoNiCrAlY粉末を用いたプ
ラズマ溶射法により、厚さ約 170μm の CoNiCrAlY層を
形成した。溶射条件は、雰囲気圧力約 1×102 Pa、溶射
距離400mm 、溶射出力 35V、850Aとした。このとき、 C
oNiCrAlY層中の気孔率は、約1%であった。
【0065】こうして得られた耐熱部材に対し、Ar雰囲
気炉中、 1323Kで16時間、さらに 1123Kで48時間の熱処
理を施した。そして、熱処理後の耐熱部材を用いて、 1
123Kで300MPaの応力下でクリープ試験を行ったところ、
100時間保持しても破断しなかった。そこで、この耐熱
部材を切断して断面を微視的に観察したところ、金属基
材側に再結晶層は観察されなかった。
【0066】また、本実施例に対する比較例として、Co
基超合金 FSX-414からなる丸棒状金属基材の表面を、約
1mm粒径のアルミナ粒子によりサンドブラスト処理を施
した以外は、上記実施例2と全く同様にして耐熱部材を
形成した。なお、このとき、金属基材の表面粗さはRa=
3.6、Rmax =27.2 であった。
【0067】こうして得られた耐熱部材に対し、実施例
2と同様の熱処理を施し、同一条件でクリープ試験を行
ったところ、 100時間経過以前に破断した。そこで、こ
の耐熱部材を切断して断面を微視的に観察したところ、
金属基材側に約28μmmの再結晶層が観察され、この領域
は多結晶化していた。
【0068】実施例3 単結晶Ni基耐熱合金CMSX-2からなる丸棒状金属基材に、
プラズマ溶射法により厚さ約20μm の NiCoCrAlY層(Ni
-23%Co-17%Cr-12%Al-0.5%Y(重量% ))を形成した。溶
射条件は、雰囲気圧力約 1×107 Pa、溶射距離125mm 、
溶射出力 35V、850Aとした。また、金属基材の表面粗さ
は、Ra=0.3、Rmax =2.0であり、 NiCoCrAlY粉末の平均
粒径は 200μm であった。このとき、 NiCoCrAlY層中の
気孔率は約 12%であった。
【0069】次いで、上記 NiCoCrAlY層上に、平均粒径
が30μm で先と同組成である NiCoCrAlY粉末を用いたプ
ラズマ溶射法により、厚さ約 60 μm の NiCoCrAlY層を
形成した。溶射条件は、雰囲気圧力約 1×10-5Pa、溶射
距離400mm 、溶射出力 35V、850Aとした。このとき、 N
iCoCrAlY層中の気孔率は、約1%であった。
【0070】さらに、前記厚さ約 60 μm の NiCoCrAlY
層に、平均粒径が 200μm で先と同組成である NiCoCrA
lY粉末を用いたプラズマ溶射法により、厚さ約20μm の
NiCoCrAlY層を形成した。溶射条件は、雰囲気圧力約 1
×105 Pa、溶射距離125mm 、溶射出力 35V、850Aとし
た。また、 NiCoCrAlY層の表面粗さは、Ra=10.3 、Rma
x =98.5 であり、このとき、 NiCoCrAlY層中の気孔率
は、約 12%であった。
【0071】次に、この NiCoCrAlY層上に、 ZrO2 -8重
量%Y2 O3 からなるジルコニア粉末を用いて、大気中プ
ラズマ溶射法により、厚さ約 300μm のセラミックス被
覆層を形成した。
【0072】こうして得られた耐熱部材に対し、Ar雰囲
気炉中、 1323Kで16時間、さらに 1123Kで48時間の熱処
理を施した。そして、熱処理後の耐熱部材を用いて、 1
173Kで250MPaの応力下でクリープ試験を行ったところ、
100時間保持しても破断しなかった。そこで、この耐熱
部材を切断して断面を微視的に観察したところ、金属基
材側に再結晶層は観察されなかった。
【0073】また、本実施例に対する比較例として、単
結晶Ni基耐熱合金CMSX-2単結晶からなる丸棒状金属基材
の表面を、約 1mm粒径のアルミナ粒子によりサンドブラ
スト処理を施した以外は、上記実施例3と全く同様にし
て、耐熱部材を形成した。なお、このとき、金属基材の
表面粗さはRa=3.7、Rmax =27.3 であった。
【0074】こうして得られた耐熱部材に対し、実施例
3と同様の熱処理を施し、同一条件でクリープ試験を行
ったところ、 100時間経過以前に破断した。そこで、こ
の耐熱部材を切断して断面を微視的に観察したところ、
金属基材側に約30μmmの再結晶層が観察され、この領域
は多結晶化していた。そして、再結晶層の粒界から金属
基材内部に向かって多くの亀裂が進展しており、この亀
裂が破断の起点と考えられた。
【0075】実施例4 単結晶Ni基耐熱合金CMSX-2からなる丸棒状金属基材に、
プラズマ溶射法により厚さ約20μm の CoCrAlY層(Co-2
9%Cr-6%Al-0.4%Y (重量% ))を形成した。溶射条件
は、雰囲気圧力約 1×105 Pa、溶射距離125mm 、溶射出
力 35V、850Aとした。また、金属基材の表面粗さは、Ra
=0.3、Rmax =2.0であり、 CoCrAlY粉末の平均粒径は 1
45μm であった。このとき、 CoCrAlY層中の気孔率は、
約 10%であった。
【0076】次いで、上記 CoCrAlY層上に、平均粒径が
35μm で先と同組成である CoCrAlY粉末を用いたプラズ
マ溶射法により、厚さ約 60 μm の CoCrAlY層を形成し
た。溶射条件は、雰囲気圧力約 1×10-5Pa、溶射距離40
0mm 、溶射出力 35V、850Aとした。このとき、 CoCrAlY
層中の気孔率は、約0.5%であった。
【0077】さらに、前記厚さ約 60 μm の CoCrAlY層
に、平均粒径が 145μm で先と同組成である CoCrAlY粉
末を用いたプラズマ溶射法により、厚さ約20μm の CoC
rAlY層を形成した。溶射条件は、雰囲気圧力約 1×105
Pa、溶射距離125mm 、溶射出力 35V、850Aとした。ま
た、この CoCrAlY層の表面粗さは、Ra=10.5 、Rmax =9
8.1 であり、このとき、 NiCoCrAlY層中の気孔率は、約
10%であった。
【0078】次に、この CoCrAlY層上に、 ZrO2 -8重量
%Y2 O3 からなるジルコニア粉末を用いて、大気中プラ
ズマ溶射法により、厚さ約 300μm のセラミックス被覆
層を形成した。
【0079】こうして得られた耐熱部材に対し、Ar雰囲
気炉中、 1323Kで16時間、さらに 1123Kで48時間の熱処
理を施した。そして、熱処理後の耐熱部材を用いて、 1
173Kで250MPaの応力下でクリープ試験を行ったところ、
100時間保持しても破断しなかった。そこで、この耐熱
部材を切断して断面を微視的に観察したところ、金属基
材側に再結晶層は観察されなかった。
【0080】また、本実施例に対する比較例として、単
結晶Ni基耐熱合金CMSX-2単結晶からなる丸棒状金属基材
の表面を、約 1mm粒径のアルミナ粒子によりサンドブラ
スト処理を施した以外は、上記実施例4と全く同様にし
て、耐熱部材を形成した。なお、このとき、金属基材の
表面粗さはRa=4.0、Rmax =24.3 であった。
【0081】こうして得られた耐熱部材に対し、実施例
4と同様の熱処理を施し、同一条件でクリープ試験を行
ったところ、 100時間経過以前に破断した。そこで、こ
の耐熱部材を切断して断面を微視的に観察したところ、
金属基材側に約30μmmの再結晶層が観察され、この領域
は多結晶化していた。そして、再結晶層の粒界から金属
基材内部に向かって多くの亀裂が進展しており、この亀
裂が破断の起点と考えられた。
【0082】実施例5 多結晶Ni基耐熱合金 IN738LCからなる丸棒状金属基材
に、プラズマ溶射法により厚さ約20μm の NiCoCrAlY層
(Ni-23%Co-17%Cr-12%Al-0.5%Y(重量% ))を形成し
た。溶射条件は、雰囲気圧力約 1×106 Pa、溶射距離12
5mm 、溶射出力 35V、850Aとした。また、金属基材の表
面粗さは、Ra=0.3、Rmax =2.0であり、 NiCoCrAlY粉末
の平均粒径は 130μm であった。このとき、 NiCoCrAlY
層中の気孔率は約 13%であった。
【0083】次いで、上記 NiCoCrAlY層上に、平均粒径
が40μm で先と同組成である NiCoCrAlY粉末を用いたプ
ラズマ溶射法により、厚さ約 60 μm の NiCoCrAlY層を
形成した。溶射条件は、雰囲気圧力約 1×10-5Pa、溶射
距離400mm 、溶射出力 35V、850Aとした。このとき、 N
iCoCrAlY層中の気孔率は、約0.3%であった。
【0084】さらに、前記厚さ約 60 μm の NiCoCrAlY
層に、平均粒径が 130μm で先と同組成である NiCoCrA
lY粉末を用いたプラズマ溶射法により、厚さ約20μm の
NiCoCrAlY層を形成した。溶射条件は、雰囲気圧力約 1
×106 Pa、溶射距離125mm 、溶射出力 35V、850Aとし
た。また、 NiCoCrAlY層の表面粗さは、Ra=10.1 、Rma
x =94.5 であり、このとき、 NiCoCrAlY層中の気孔率
は、約8%であった。
【0085】次に、この NiCoCrAlY層上に、 ZrO2 -8重
量%Y2 O3 からなるジルコニア粉末を用いて、大気中プ
ラズマ溶射法により、厚さ約 300μm のセラミックス被
覆層を形成した。
【0086】こうして得られた耐熱部材に対し、Ar雰囲
気炉中、 1393Kで 2時間、さらに 1123Kで24時間の熱処
理を施した。そして、熱処理後の耐熱部材を用いて、 1
123Kで250MPaの応力下でクリープ試験を行ったところ、
100時間保持しても破断しなかった。そこで、この耐熱
部材を切断して断面を微視的に観察したところ、金属基
材側に再結晶層は観察されなかった。
【0087】また、本実施例に対する比較例として、多
結晶Ni基耐熱合金 IN738LC単結晶からなる丸棒状金属基
材の表面を、約 1mm粒径のアルミナ粒子によりサンドブ
ラスト処理を施した以外は、上記実施例5と全く同様に
して、耐熱部材を形成した。なお、このとき、金属基材
の表面粗さはRa=4.4、Rmax =24.3 であった。
【0088】こうして得られた耐熱部材に対し、実施例
5と同様の熱処理を施し、同一条件でクリープ試験を行
ったところ、 100時間経過以前に破断した。そこで、こ
の耐熱部材を切断して断面を微視的に観察したところ、
金属基材側に約30μmmの再結晶層が観察され、この領域
は多結晶化していた。
【0089】実施例6 多結晶Ni基耐熱合金 IN738LCからなる丸棒状金属基材
に、プラズマ溶射法により厚さ約20μm の CoCrAlY層
(Co-29%Cr-6%Al-0.4%Y (重量% ))を形成した。溶射
条件は、雰囲気圧力約 1×105 Pa、溶射距離125mm 、溶
射出力 35V、850Aとした。また、金属基材の表面粗さ
は、Ra=0.2、Rmax =1.0であり、 CoCrAlY粉末の平均粒
径は 130μm であった。このとき、 CoCrAlY層中の気孔
率は、約 10%であった。
【0090】次いで、上記 CoCrAlY層上に、平均粒径が
40μm で先と同組成である CoCrAlY粉末を用いたプラズ
マ溶射法により、厚さ約 60 μm の CoCrAlY層を形成し
た。溶射条件は、雰囲気圧力約 1×102 Pa、溶射距離40
0mm 、溶射出力 35V、850Aとした。このとき、 CoCrAlY
層中の気孔率は、約1%であった。
【0091】さらに、前記厚さ約60μm の CoCrAlY層
に、平均粒径が 130μm で先と同組成である CoCrAlY粉
末を用いたプラズマ溶射法により、厚さ約20μm の CoC
rAlY層を形成した。溶射条件は、雰囲気圧力約 1×105
Pa、溶射距離125mm 、溶射出力35V、850Aとした。ま
た、この CoCrAlY層の表面粗さは、Ra=10.3 、Rmax =9
8.5 であった。
【0092】次に、この CoCrAlY層上に、 ZrO2 -8重量
%Y2 O3 からなるジルコニア粉末を用いて、大気中プラ
ズマ溶射法により、厚さ約 300μm のセラミックス被覆
層を形成した。
【0093】こうして得られた耐熱部材に対し、Ar雰囲
気炉中、 1393Kで 2時間、さらに 1123Kで24時間の熱処
理を施した。そして、熱処理後の耐熱部材を用いて、 1
173Kで250MPaの応力下でクリープ試験を行ったところ、
100時間保持しても破断しなかった。そこで、この耐熱
部材を切断して断面を微視的に観察したところ、金属基
材側に再結晶層は観察されなかった。
【0094】また、本実施例に対する比較例として、多
結晶Ni基耐熱合金 IN738LCからなる丸棒状金属基材の表
面を、約 1mm粒径のアルミナ粒子によりサンドブラスト
処理を施した以外は、上記実施例6と全く同様にして、
耐熱部材を形成した。なお、このとき、金属基材の表面
粗さはRa=3.8、Rmax =27.4 であった。
【0095】こうして得られた耐熱部材に対し、実施例
6と同様の熱処理を施し、同一条件でクリープ試験を行
ったところ、 100時間経過以前に破断した。そこで、こ
の耐熱部材を切断して断面を微視的に観察したところ、
金属基材側に約30μmmの再結晶層が観察された。
【0096】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の耐熱部材
によれば、金属基材と金属被覆層との間の拡散層や、金
属基材の表面近傍の再結晶層の生成が抑制されるため、
金属基材に対してサンドブラスト処理を施行する必要も
なく、金属基材と金属被覆層との密着性が十分確保さ
れ、高温強度と耐腐食・耐酸化性に優れる、寿命の高い
耐熱部材を提供することができる。
【0097】したがって、例えば、ガスタービンの動・
静翼の使用環境のように、腐食、酸化、さらには応力が
重畳してもたらされる環境下においても、優れた耐腐食
・耐酸化性並びに高温強度を長時間にわたって維持でき
る耐熱部材を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願の第1の発明による耐熱部材の一実施形態
を示す断面図である。
【図2】本願の第2の発明による耐熱部材の一実施形態
を示す断面図である。
【図3】偏平形状の粒子の粒径を決定する方法を示す
図。
【符号の説明】
1……金属基材 2……粗粒子の凝集体層 3……微粒
子の凝集体層 4……金属被覆層 5……金属基材 6……第1の粗粒
子の凝集体層 7……微粒子の凝集体層 8……第2の粗粒子の凝集体
層 9……金属被覆層 l0……セラミックス被覆層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 安田 一浩 神奈川県川崎市幸区小向東芝町1番地 株 式会社東芝研究開発センター内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】金属基材と、粗粒子の凝集体層が前記金属
    基材側に配置され、微粒子の凝集体層が部材表面側に配
    置された金属被覆層とを具備することを特徴とする耐熱
    部材。
  2. 【請求項2】金属基材と、前記金属基材を覆うセラミッ
    ク被覆層と、前記金属基材とセラミック被覆層との間に
    設けられ、前記金属基材側に配置された粗粒子の凝集体
    層と前記セラミック被覆層側に配置された微粒子の凝集
    体層とを少なくとも有する金属結合層とを具備すること
    を特徴とする耐熱部材。
  3. 【請求項3】前記微粒子の凝集体層は平均粒径が 1〜44
    μm の範囲の構成粒子からなり、前記粗粒子の凝集体層
    は平均粒径が45〜 300μm の範囲の構成粒子からなるこ
    とを特徴とする請求項1または2に記載の耐熱部材。
  4. 【請求項4】前記金属基材の表面粗さがRa< 3μm であ
    ることを特徴とする請求項1乃至3に記載の耐熱部材。
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Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003500545A (ja) * 1999-05-27 2003-01-07 サンドビック アクティエボラーグ 高温合金の表面改質
KR100509118B1 (ko) * 2002-10-28 2005-08-19 한국전력공사 열 차폐 코팅의 수명연장을 위한 예산화 방법

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2003500545A (ja) * 1999-05-27 2003-01-07 サンドビック アクティエボラーグ 高温合金の表面改質
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