JPH09241805A - 高強度極細鋼線 - Google Patents

高強度極細鋼線

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JPH09241805A JP5308996A JP5308996A JPH09241805A JP H09241805 A JPH09241805 A JP H09241805A JP 5308996 A JP5308996 A JP 5308996A JP 5308996 A JP5308996 A JP 5308996A JP H09241805 A JPH09241805 A JP H09241805A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 撚り線加工性および疲労特性の優れた高強度
極細鋼線を実現する。 【解決手段】 C:0.7〜1.1%、Si:0.05
〜2.0%、Mn:0.2〜2. 0%、Al:0.00
5%以下、更に必要に応じてCr、Ni、Vの1種また
は2種以上を含む伸線加工されたパーライト組織を有す
る鋼線において、鋼線表層部と鋼線中心部におけるラメ
ラフェライト中のC濃度比(鋼線表層部のフェライト中
のC濃度/鋼線中心部のC濃度)が2以下であることを
特徴とする高強度極細鋼線。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、スチールタイヤコ
ード、スチールベルトコード等の素線として使用され、
線径が0.05〜0.4mm であり、特に撚り線加工性と疲労特
性が優れ、強度が3800MPa 以上の高強度極細鋼線に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】軽量化などのために極細鋼線に対する高
強度化の要求は一段と高まっている。従来、自動車用タ
イヤ、産業用各種ベルト類などの補強用に使用されてい
る極細鋼線は、高炭素鋼の熱間圧延線材から中間伸線、
パテンティング処理を繰り返し所定の線径にした後、最
終パテンティング処理を行い、伸線加工性およびゴムと
の接着性を向上させるめっき処理を施し所定の線径まで
湿式伸線加工することにより製造される。例えばスチー
ルタイヤコードは、上記のように製造される素線を最終
的にダブルツイスタなどの撚り線機を用いて撚り線加工
することによって製造される。
【0003】上記のような製造工程において、極細鋼線
の高強度化を図るためには、最終パテンティング処理後
の素線強度を上げるか、最終の伸線加工歪を増加させる
必要がある。ところが、最終パテンティング処理後の素
線強度ないしは伸線加工歪を増加させて極細鋼線の高強
度化を図っても、伸線加工後の撚り線加工工程で断線が
頻発し、生産性が極めて悪化する。このため、例えばSW
RS82A を用いた線径が0.3mm φの鋼線では撚り線加工が
可能な引張強さとして3400MPa が限界であり、これ以上
の高強度の極細鋼線の製造は工業的には困難であった。
また、極細鋼線の強度が増加しても、疲労強度はむしろ
劣化するという問題がある。
【0004】これに対して、強度を増加させた高炭素鋼
線の撚り線加工性を向上させる従来の知見としては、例
えば特開昭60-204865 号、特開昭63-24046号、特公平3-
23674 号の各公報にはそれぞれC、Si、Mn、Cr等
の化学成分を規制することにより撚り線加工工程での断
線回数の少ない極細線用高炭素線材が提案されている。
しかしこれらの実施例からもわかるように鋼線の引張強
さは最大でも3500〜3600MPa であり、極細鋼線の高強度
化には限界があった。
【0005】一方、極細鋼線の疲労特性を向上させる手
段として、例えば、特開平5-195457号公報には極細線中
の微細不均一歪の分布を制御することにより、特開平6-
184962号公報には極細鋼線の表層と内部の強度差を制御
することにより、疲労特性を向上させる技術が開示され
ているが、本発明者らの詳細な研究によれば、このよう
な技術を適用しても極細鋼線の高疲労強化には限界があ
った。
【0006】以上のように、従来技術では撚り線加工性
と疲労特性の優れた高強度極細鋼線を実現することが不
可能であった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の如き実
状に鑑みなされたものであって、線径が0.05〜0.4mm の
極細鋼線を高強度化する際に問題となる撚り線加工性と
疲労特性の劣化を防止する技術を確立し、強度が3800MP
a 以上である撚り線加工性および疲労強度の優れた高強
度極細鋼線を実現することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らはまず高強度
極細鋼線の撚り線加工時に多発する断線の破面形態を解
析した。撚り線加工ではねじり応力、引張応力、曲げ応
力が鋼線にかかる。この結果、鋼線を高強度化していく
と伸線方向に沿って亀裂(デラミネーション)が発生し
やすくなり、このため撚り線加工工程において断線が頻
発することが明らかとなった。そこでデラミネーション
の発生に及ぼす鋼線の化学成分、最終パテンティング処
理後の引張強さ、伸線加工歪、伸線加工方法等の影響に
ついて検討し、高強度極細鋼線のデラミネーションの発
生要因について詳細に解析した。この結果、高強度極細
鋼線の断面内のフェライト中のC濃度分布がデラミネー
ションの発生に対して著しい影響を持つと言う全く新た
な事実を見い出した。即ち、伸線加工歪の増加に伴いパ
ーライト組織のフェライト中のC濃度が増加するが、こ
の際に極細鋼線表層と中心部のC濃度差が大きくなると
デラミネーションが発生しやすくななることを発見した
のである。更に、極細鋼線表層と中心部のC濃度差は、
疲労特性にも大きな影響を及ぼすことを見出し、C濃度
差を小さく制御することが高強度化に伴って劣化しやす
くなる疲労特性の向上に対して極めて重要であるという
新たな知見を得た。
【0009】以上の検討結果に基づいて、高炭素鋼を用
いた極細鋼線において、断面内の表層と中心部のC濃度
差を制御すれば、デラミネーションの発生が抑制される
とともに疲労強度も向上し、撚り線加工性と疲労特性の
優れた高強度極細鋼線を提供できるとの結論に達し、本
発明をなしたものである。本発明は以上の知見に基づい
てなされたものであって、その要旨とするところは、重
量%で、 C:0.7 〜1.1 % Si:0.05〜2.0 % Mn:0.2 〜2.0 % Al:0.005 %以下 を含有するか、あるいは化学成分として更に Cr:0.1 〜1.0 % Ni:0.1 〜1.0 % V:0.05〜0.5 % の1種または2種以上を含むとともに残部はFe及び不
可避的不純物からなる伸線加工されたパーライト組織を
有する鋼線において、鋼線表層部と鋼線中心部における
フェライト中のC濃度比(鋼線表層部のフェライト中の
C濃度/鋼線中心部のフェライト中のC濃度)が2以下
であることを特徴とする高強度極細鋼線にある。ここ
で、鋼線表層部とは、鋼線の表層から中心に向かって0.
1 D(D:線径)以内の領域を、鋼線中心部とは鋼線の
表層から中心に向かって0.4 〜0.6 Dの領域を意味す
る。
【0010】
【発明の実施の形態】以下に本発明を詳細に説明する。
はじめに、本発明の成分限定理由について述べる。Cは
パテンティング処理後の引張強さの増加および伸線加工
硬化率を高める効果があり、より少ない伸線加工歪で極
細鋼線の引張強さを高めることができる。Cが0.7 %未
満では本発明で目的とする3800MPa 以上の高強度の極細
鋼線を製造することが困難となり、一方1.1 %を越える
とパテンティング処理時に初析セメンタイトがオーステ
ナイト粒界に析出して伸線加工性が劣化し伸線加工工程
あるいは撚り線加工工程で断線が頻発するため、Cを0.
7 〜1.1 %の範囲に限定した。
【0011】Siはパーライト中のフェライトを強化さ
せるためと鋼の脱酸のために有効な元素である。0.05%
未満では上記の効果が期待できず、一方2.0 %を越える
と伸線加工性に対して有害な硬質のSiO2系介在物が
発生しやすくなるため、0.1〜2.0 %の範囲に制限し
た。Mnは脱酸、脱硫のために必要であるばかりでな
く、鋼の焼入性を向上させパテンティング処理後の引張
強さを高めるために有効な元素であるが、0.2 %未満で
は上記の効果が得られず、一方2.0 %を越えると上記の
効果が飽和しさらにパテンティング処理時のパーライト
変態を完了させるための処理時間が長くなりすぎて生産
性が低下するため、0.2 〜2.0 %の範囲に限定した。
【0012】Alは0.005 %を越えると鋼中の介在物の
中で最も硬質なAl2 3 系介在物が生成しやすくな
り、伸線加工あるいは撚り線加工の際の断線原因となる
ため、0.005 %以下に制限した。本発明による高強度極
細鋼線においては、上記の元素に加えて、更にCr:0.
1 〜1.0 %、Ni:0.1 〜1.0 %、V:0.05〜0.5 %の
範囲で1種または2種以上を含有することができる。
【0013】Crはパーライトのセメンタイト間隔を微
細化しパテンティング処理後の引張強さを高めるととも
に特に伸線加工硬化率を向上させる有効な元素である
が、0.1 %未満では前記作用の効果が少なく、一方1.0
%を越えるとパテンティング処理時のパーライト変態終
了時間が長くなり生産性が低下するため、0.1 〜1.0 %
の範囲に限定した。
【0014】Niはパテンティング処理時に変態生成す
るパーライトを伸線加工性の良好なものにする作用を有
するが、0.1 %未満では上記の効果が得られず、1.0 %
を越えても添加量に見合うだけの効果が少ないためこれ
を上限とした。Vはパーライトのセメンタイト間隔を微
細化しパテンティング処理後の引張強さを高める効果が
あるが、この効果は0.05%未満では不十分であり、一方
0.5 %を越えると効果が飽和するため0.05〜0.5 %の範
囲に制限した。
【0015】他の元素は特に限定しないが、P:0.015
%以下、S:0.015 %以下、N:0.0070%以下が望まし
い範囲である。次に、本発明で目的とする撚り線加工性
および疲労特性を向上させる上で重要な伸線加工された
パーライト組織のフェライトにおける鋼線断面内の鋼線
表層部と鋼線中心部のC濃度の比率(以下C濃度比とす
る)の限定理由について述べる。
【0016】図1は線径が0.3mm であり、強度を4100MP
a に調整した極細鋼線において、横断面内のフェライト
中のC濃度を測定した一例を示す。同図において、鋼線
Aは従来の極細鋼線であり、表層部のフェライト中のC
濃度が高く、中心部が低くなっている。即ち、C濃度比
が高くなっている。これに対して、鋼線Bは断面内のC
濃度分布が鋼線Aに比べ均一であり、C濃度比が低くな
っている。鋼線Bのような断面内のC濃度比が低い場合
は、極細線の強度が高くてもデラミネーションが発生し
にくく撚り線加工性が良好であり、更に疲労特性も向上
する。
【0017】図2に線径が0.3mm の極細鋼線における、
C濃度比とデラミネーションが発生する鋼線の強度の関
係について解析した一例を示す。同図から明らかなよう
に、C濃度比が2を超えるとデラミネーションが発生す
る鋼線の強度が著しく低下する。ここで、デラミネーシ
ョンが発生すると言うことは、撚り線加工時の断線回数
が増加することを意味している。更に、図3は高強度極
細鋼線の疲労強度とC濃度比の関係について解析した一
例である。疲労強度もC濃度比が低いほど高く、C濃度
比が2を越えると著しく低下することが明らかである。
鋼種、線径、強度を種々に変化させた極細鋼線について
も全く同様の結果が得られることから、C濃度比を2以
下に制限した。
【0018】ここで、C濃度比を2以下にする方法とし
ては、下記のA〜Hの製造方法が有効であり、それぞれ
単独の場合より組み合わせることが重要である。下記製
造方法の中でも、A,B,C,D,E,Hが特に重要な
技術である。このため、C濃度比が2以下の極細鋼線を
製造するためには、A,B,C,D,E,Hの内、2種
類以上、好ましくは3種類以上の方法を組み合わせるこ
とが好ましい条件である。
【0019】A:パテンティング材強度を1300MPa 以上
にする。 B:アプローチ角度が8 〜12°、ベアリング長さが0.2
〜0.5 D(D: ダイス径)であるダイスを用いて伸線加
工を行う。 C:ダイヤモンドダイスを使用する。 D:伸線による加工発熱を抑える。
【0020】E:潤滑能力の高い潤滑剤を使用する。 F:伸線加工の初期は1ダイス当たりの減面率を20%
以上にし、最終のダイスでは3 〜10%の減面率にする。 G:伸線加工後、150 〜500 ℃の温度に加熱する。 H:伸線加工後、張力を付与しながら曲げ加工を行う。
【0021】なお、フェライト中のC濃度比は、アトム
プローブ電界イオン顕微鏡を用いれば、簡単に且つ正確
に測定することができる。本発明において、フェライト
中のC濃度Xは、アトムプローブ電界イオン顕微鏡によ
る分析から、全検出イオン数をY(total) 、Cの検出イ
オン数をY(carbon)とした時に、下式により求める。 X=[Y(carbon)/Y(total) ]×100 (原子%) C濃度比は、鋼線表層部のフェライト中のC濃度X( 表
層) と、鋼線中心部のフェライト中のC濃度X( 中心)
を上記方法により求め、X( 表層) /X( 中心)により
求める。なお、より良い定量精度を得るために、全検出
イオン数Y(total) は10,000個以上にすることが好まし
い測定条件である。
【0022】
【実施例】以下、実施例により本発明の効果をさらに具
体的に説明する。表1に供試材の化学組成を示す。
【0023】
【表1】
【0024】これらの供試材を用いて線径が0.15〜0.37
mmのブラスめっきを有する極細鋼線を試作した。表2お
よび表3に極細鋼線の製造条件およびC濃度比、撚り線
加工時の断線回数、疲労強度等の極細鋼線の機械的特性
を示す。
【0025】
【表2】
【0026】
【表3】
【0027】同表において製造条件の記号であるB〜H
は前述した内容である。また、撚り加工性は極細鋼線の
重量1000kg当たりの断線回数で評価し、疲労強度(107
サイクル)は、回転曲げ疲労試験で評価した結果であ
る。表2および表3において、試験No. (2)、
(4)、(6)、(8)、(10)、(12)が本発明
例であり、その他は比較例である。同表に見られるよう
に、本発明例はいずれも高強度極細鋼線の表層部と中心
部のC濃度比が2以下となっており、このため高強度で
あるにもかかわらずデラミネーションの発生が無く撚り
線加工時の断線回数が極めて少ない。更に、比較例に比
べ、疲労強度の高い高強度極細鋼線が実現されている。
【0028】これに対して比較例であるNo. 1、3、
5、7、9、11は、いずれも従来の方法で極細鋼線の
高強度化を図ったものであり、C濃度比が2を越えてい
るためデラミネーションが発生し、この結果、撚り線加
工時の断線回数が急激に増加している。また、疲労強度
も低くなっている。
【0029】
【発明の効果】以上の実施例からも明かなごとく、本発
明は高強度極細鋼線のデラミネーションの発生を防止し
撚り線加工性を向上させるとともに疲労強度を向上させ
ることに対して、極細鋼線の表層部と中心部のフェライ
ト中のC濃度比を2以下にすることが極めて有効である
ことを見出し、撚り線加工性と疲労特性の優れた高強度
極細鋼線を実現したものであり、産業上の効果は極めて
顕著なものがある。
【図面の簡単な説明】
【図1】極細鋼線のフェライト中のC濃度について測定
した一例である。
【図2】極細鋼線のC濃度比とデラミネーションが発生
する強度の関係について解析した一例である。
【図3】極細鋼線のC濃度比と疲労強度の関係について
解析した一例を示す図である。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、 C:0.7 〜1.1 %、 Si:0.05〜2.0 %、 Mn:0.2 〜2.0 %、 Al:0.005 %以下、 残部はFeおよび不可避的不純物からなる伸線加工され
    たパーライト組織を有する鋼線において、鋼線表層部と
    鋼線中心部におけるフェライト中のC濃度比(鋼線表層
    部のフェライト中のC濃度/鋼線中心部のフェライト中
    のC濃度)が2以下であることを特徴とする高強度極細
    鋼線。
  2. 【請求項2】 化学成分として、さらに、重量%で、 Cr:0.1 〜1.0 %、 Ni:0.1 〜1.0 %、 V:0.05〜0.5 %、 の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求
    項1記載の高強度極細鋼線。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN113718171A (zh) * 2021-07-19 2021-11-30 武汉钢铁有限公司 一种70级高性能帘线钢及其轧制工艺
CN113789466A (zh) * 2021-08-11 2021-12-14 武汉钢铁有限公司 粗拉断丝率低于3次每千吨的82级帘线钢及其生产方法
CN113789465A (zh) * 2021-08-11 2021-12-14 武汉钢铁有限公司 粗拉断丝率低于5次每千吨的92级帘线钢及其生产方法

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CN113789466B (zh) * 2021-08-11 2022-05-03 武汉钢铁有限公司 粗拉断丝率低于3次每千吨的82级帘线钢及其生产方法
CN113789465B (zh) * 2021-08-11 2022-05-03 武汉钢铁有限公司 粗拉断丝率低于5次每千吨的92级帘线钢及其生产方法

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