JPH09234740A - 合成樹脂の成形法 - Google Patents

合成樹脂の成形法

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JPH09234740A
JPH09234740A JP18531096A JP18531096A JPH09234740A JP H09234740 A JPH09234740 A JP H09234740A JP 18531096 A JP18531096 A JP 18531096A JP 18531096 A JP18531096 A JP 18531096A JP H09234740 A JPH09234740 A JP H09234740A
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JP
Japan
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synthetic resin
mold
temperature
thickness
seconds
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Application number
JP18531096A
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English (en)
Inventor
Hiroshi Kataoka
紘 片岡
Isao Umei
勇雄 梅井
Iwao Kato
巖生 加藤
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Asahi Chemical Industry Co Ltd
Original Assignee
Asahi Chemical Industry Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 成形品の型表面再現性の向上、成形サイクル
タイムの短縮、金型の耐久性の向上3つを同時に満たす
成形方法とする。 【解決手段】 金属の主キャビティの型壁面に0.1m
mを超え0.5mm未満の厚みの断熱層を設け、その表
面に更に金属層を設けた金型を用い、合成樹脂が型キャ
ビティを構成する型表面に接触後、型表面温度が合成樹
脂の軟化温度以上にある間の(型表面温度−合成樹脂の
軟化温度)値の積分値(△H)が2秒・℃以上の成形条
件、及び/又は、型表面温度が(合成樹脂の軟化温度−
10℃)以上にある間の{型表面温度−(合成樹脂の軟
化温度−10℃)}値の積分値(△h)が10秒・℃以
上の成形条件と、合成樹脂が型表面に接触して5秒以後
に、型表面が合成樹脂の軟化温度以下に低下する成形条
件で成形する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、射出成形、ブロー
成形等に適した合成樹脂の成形法に関する。更に詳しく
は、製造コストの低下、成形品のリサイクル利用、溶剤
蒸発等による環境破壊の低減等のために要望されている
塗装の省略を可能にする成形法に関するもので、特に電
気機器、電子機器、事務機器等の合成樹脂製ハウジング
等の成形に適した成形法に関する。
【0002】
【従来の技術】射出成形において、型表面再現性を良く
し、成形品の外観を良くすることは、通常、樹脂温度や
金型温度を高くしたり、射出圧力を高くする等の成形条
件を選ぶことによりある程度達成できる。ブロー成形に
おいても同様に、成形品外観を良くすることは、通常、
樹脂温度や金型温度を高くしたり、ブローガス圧力を高
くする等の成形条件を選ぶことによりある程度達成でき
る。
【0003】これらの成形条件の中で最も大きな影響が
あるのは金型温度であり、成形品の型表面再現性を良く
し、外観を向上させるためには、金型温度を高くするこ
とが好ましい。しかし、金型温度を高くすると、可塑化
された樹脂の冷却固化に必要な冷却時間が長くなり、成
形能率が下がることになる。そこで、金型温度を高くす
ることなく成形品の型表面再現性を良くすることがで
き、又金型温度を高くしても必要な冷却時間が長くなら
ない方法が要求されている。
【0004】金型に加熱用、冷却用の孔をそれぞれ形成
しておき、交互に熱媒、冷媒を流して金型の加熱、冷却
を繰り返す方法が、「Plastic・Technol
ogy,June,p.151(1988)」等に示さ
れているが、この方法は熱の消費量も多く、冷却時間が
長くなる。
【0005】金型の型壁面を熱伝導率の小さい物質、す
なわち薄肉の断熱層で被覆した断熱層被覆金型について
はWO・93/06980等で開示されている。また、
金型の型壁面を薄肉の断熱層で被覆しただけでなく、更
にその表面を薄肉の金属層で被覆した金属層付断熱層被
覆金型については、USP3734449、USP53
02467及びUSP5388803の各明細書に示さ
れている。しかし、これ等の公知文献には、型表面再現
性と成形サイクルタイムを共に十分に満たす成形法は開
示されていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、成形時の型
表面再現性と成形サイクルタイムとは相反する方向に働
く。すなわち、金型温度を高くすれば型表面再現性は良
くなるが、成形サイクルタイムは長くなる。断熱層被覆
金型を用いた場合、あるいは断熱層表面に更に金属層を
被覆した金属層付断熱層被覆金型では、断熱層を厚くす
れば型表面再現性は良くなるが、成形サイクルタイムは
長くなり、また最表面の金属層を厚くすれば型表面再現
性が悪くなる。このように、型表面再現性と成形サイク
ルタイムは二者択一の関係にある。
【0007】また、断熱層被覆金型を用い、断熱層とし
て重合体を用いた場合、一般に断熱層は使用中に傷がつ
きやすく、合成樹脂に無機充填材が多量に配合されると
型表面は更に傷つきやすくなる。また、成形される合成
樹脂の種類によっては、成形時に金型からの離型が困難
になる場合がある。
【0008】一方、金属層付断熱層被覆金型は、上記断
熱層被覆金型の問題点を改良することができるものでは
あるが、これにも種々の問題があり、我々は次の問題が
あることを発見した。すなわち、金属層の厚みと断熱
層の厚みの関係が不適当であると、成形時の型表面再現
性が不良になる、断熱層厚みを厚くすると成形サイク
ルタイムが長くなり、成形効率が低下する、金属層が
厚くなると型表面再現性が悪くなる、必要な断熱層厚
みと金属層厚みは成形する合成樹脂の軟化温度、金型温
度や樹脂温度等の成形条件等と密接な関係を有する、
金属層と断熱層は強固に密着していることが必要であ
り、更に断熱層と金属層の密着面は合成樹脂の成形によ
り繰り返される冷熱サイクルに耐える必要がある、表
面金属層の耐久性が必要であり、特に成形される合成樹
脂に無機充填材が配合されると特別な耐久性を必要とす
る、等の課題を解決する必要がある。
【0009】本発明は、上記諸問題を解決することによ
り、型表面再現性、成形サイクルタイム、金型耐久性の
三者を同時に満足させることを目的とするもので、限定
した範囲の断熱層の表面に金属層を被覆した金属層付断
熱層被覆金型を用いて、限定した成形条件で成形するこ
とによりこの目的を達成したものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記諸問
題を解決するため、金属層付断熱層被覆金型について検
討を行い、主金型の型壁面を被覆する断熱物質及びその
厚み、その被覆状態、主金型の材質との組み合わせ、型
表面を形成する金属層の密着力及びその厚み、成形する
合成樹脂の軟化温度、合成樹脂の成形条件等との関係に
ついて検討を行い、成形品の型表面再現性、成形サイク
ルタイム、金型の耐久性の三者を同時に満たす本発明に
至った。
【0011】すなわち本発明は、以下のとおりである。
【0012】1、 合成樹脂の成形法に於いて、金属か
らなる主金型の型壁面に、該型壁面に密着した耐熱性重
合体からなる厚み0.1mmを超え0.5mm未満の断
熱層が存在し、上記断熱層の上に密着した金属層が存在
する金属層付断熱層被覆金型を用い、成形される合成樹
脂が型キャビティを構成する型表面に接触後、型表面温
度が合成樹脂の軟化温度以上にある間の(型表面温度−
合成樹脂の軟化温度)値の積分値(ΔH)が2秒・ ℃以
上となる成形条件、及び/又は、型表面温度が(合成樹
脂の軟化温度−10℃)以上にある間の{型表面温度−
(合成樹脂の軟化温度−10℃)}値の積分値(Δh)
が10秒・℃以上となる成形条件と、成形される合成樹
脂が型表面に接触して5秒後に、型表面温度が合成樹脂
の軟化温度以下に低下する成形条件とを満たして成形す
る合成樹脂の成形法。
【0013】2、 断熱層上の金属層厚みが、断熱層厚
みの1/3以下且つ0.001〜0.1mmの厚みであ
り、主金型温度を、15℃以上100℃以下で、且つ合
成樹脂の軟化温度から20℃を減じた温度以下に設定し
て射出成形する上記1の合成樹脂の成形法。
【0014】3、 断熱層上の金属層が凸部と凹部とか
らなるしぼ状表面を有する金属層であり、凸部の金属層
厚みが上記断熱層厚みの1/3以下且つ0.01〜0.
07mmであり、しぼ形状凹部の深さが0.001〜
0.09mmで且つ凸部の金属層厚みより小さく、主金
型温度を15℃以上100℃以下で且つ合成樹脂の軟化
温度から20℃を減じた温度以下に設定して射出成形す
る上記1の合成樹脂の成形法。
【0015】4、 断熱層の厚みが0.1mmを超え
0.4mm未満であり、金属層の厚みが断熱層厚みの1
/3以下且つ0.001〜0.07mmであり、積分値
(ΔH)が2秒・℃以上50秒・℃以下、及び/又は、
積分値(Δh)が10秒・℃以上100秒・℃以下で、
且つ合成樹脂が型表面に接触して5秒後に、型表面温度
が(合成樹脂の軟化温度−10℃)以下に低下する成形
条件で射出成形する上記1又は2の合成樹脂の成形法。
【0016】5、 断熱層の厚みが0.12mmを超え
0.3mm未満であり、金属層の厚みが断熱層厚みの1
/5以下1/100以上且つ0.002〜0.06mm
であり、積分値(ΔH)が5秒・℃以上40秒・℃以
下、及び/又は、積分値(Δh)が12秒・℃以上70
秒・℃以下で、且つ合成樹脂が型表面に接触して5秒後
に、型表面温度が(合成樹脂の軟化温度−10℃)以下
に低下する成形条件で射出成形する上記1又は2の合成
樹脂の成形法。
【0017】6、 断熱層の厚みが0.1mmを超え
0.4mm未満であり、凸部の金属層厚みが断熱層厚み
の1/3以下且つ0.01〜0.07mmであり、しぼ
形状凹部の深さが0.005〜0.06mmであって、
積分値(ΔH)が2秒・℃以上50秒・℃以下、及び/
又は、積分値(Δh)が10秒・℃以上100秒・℃以
下で、且つ合成樹脂が型表面に接触して5秒後に、型表
面温度が(合成樹脂の軟化温度−10℃)以下に低下す
る成形条件で射出成形する上記1又は3の合成樹脂の成
形法。
【0018】7、 断熱層の厚みが0.12mmを超え
0.3mm未満であり、凸部の金属層厚みが断熱層厚み
の1/5以下且つ0.01〜0.06mmであり、しぼ
形状凹部の深さが0.005〜0.04mmであって、
積分値(ΔH)が5秒・℃以上40秒・℃以下、及び/
又は、積分値(Δh)が12秒・℃以上70秒・℃以下
で、且つ合成樹脂が型表面に接触して5秒後に、型表面
温度が(合成樹脂の軟化温度−10℃)以下に低下する
成形条件で射出成形する上記1又は3の合成樹脂の射出
成形法。
【0019】8、 合成樹脂の型内平均流動速度が20
〜300mm/秒で射出成形する上記1〜7いずれかの
合成樹脂の射出成形法。
【0020】9、 金属層の厚みが断熱層厚みの1/3
以下且つ0.002〜0.1mmであり、主金型温度を
15℃以上100℃以下で、且つ合成樹脂の軟化温度か
ら20℃を減じた温度以下に設定し、更に積分値(Δ
H)が10秒・℃以上200秒・℃以下、及び/又は、
積分値(Δh)が20秒・℃以上400秒・℃以下の成
形条件でブロー成形する上記1の合成樹脂の成形法。
【0021】10、 断熱層の厚みが0.3mm以上
0.5mm未満で、金属層の厚みが断熱層厚みの1/5
以下1/100以上且つ0.004〜0.06mmであ
り、積分値(ΔH)が20秒・℃以上100秒・℃以
下、及び/又は、積分値(Δh)が30秒・℃以上30
0秒・℃以下の成形条件でブロー成形する上記1又は9
の合成樹脂の成形法。
【0022】11、 金属層が凸部と凹部とからなるし
ぼ状表面を有する金属層であり、凸部の金属層厚みが断
熱層厚みの1/3以下且つ0.01〜0.1mmで、し
ぼ形状凹部の深さが0.005〜0.09mmであっ
て、主金型温度を15℃以上100℃以下で、且つ合成
樹脂の軟化温度から20℃を減じた温度以下に設定し、
積分値(ΔH)が10秒・℃以上200秒・℃以下、及
び/又は、積分値(Δh)が20秒・℃以上400秒・
℃以下の成形条件でブロー成形する上記1の合成樹脂の
成形法。
【0023】12、 断熱層の厚みが0.3以上0.5
mm未満で、凸部の金属層厚みが断熱層厚みの1/5以
下1/100以上且つ0.01〜0.08mmであり、
しぼ形状凹部の深さが0.005〜0.07mmであっ
て、積分値(ΔH)が20秒・℃以上100秒・℃以
下、及び/又は、積分値(Δh)が30秒・℃以上30
0秒・℃以下の成形条件でブロー成形する上記1又は1
1の合成樹脂の成形法。
【0024】13、 パリソンが型表面に接触してか
ら、ブロー圧力が成形品内面に十分にかかるまでの時間
が1〜5秒である成形条件でブロー成形する上記9〜1
2いずれかの合成樹脂の成形法。
【0025】14、 断熱層と金属層は微細凹凸界面で
密着している上記1〜13いずれかの合成樹脂の成形
法。
【0026】15、 断熱層を形成する耐熱性重合体が
直鎖型高分子量ポリイミドからなる上記1〜14いずれ
かの合成樹脂の成形法。
【0027】16、 断熱層の最表面層を微粉末状エッ
チング助剤が1〜30重量%配合された耐熱性重合体で
形成した後に、該断熱層の最表面層を化学エッチング処
理を行い微細凹凸状にし、その表面に化学メッキを行
い、更に必要に応じて化学メッキ及び/又は電解メッキ
の1つ以上を行うことにより金属層を形成し、該金属層
の密着力が0.3kg/10mm以上の金属層を被覆し
てなる金型を用いる上記1〜15いずれかの合成樹脂の
成形法。
【0028】17、 金属層表面あるいは金属層表面の
一部が、鏡面状である上記1〜16いずれかの合成樹脂
の成形法。
【0029】18、 金属層表面あるいは金属層表面の
一部が、レンズ様の凹凸状である上記1、2、4、5、
8、14、15又は16の合成樹脂の成形法。
【0030】19、 金属層表面あるいは金属層表面の
一部が、微細凹凸艶消し状である上記1〜16いずれか
の合成樹脂の成形法。
【0031】20、 金属層表面の凸部と凹部のうち一
方が鏡面状であり、他方が艶消し状である上記1、3、
6、7、8、11、12、13、14、15又は16の
合成樹脂の成形法。
【0032】
【発明の実施の形態】本発明の成形法で使用される合成
樹脂は、一般の射出成形やブロー成形に使用される熱可
塑性樹脂であり、例えばポリエチレン、ポリプロピレン
等のポリオレフィン、ポリスチレン、スチレン−アクリ
ロニトリル共重合体、ゴム強化ポリスチレン、スチレン
−メチルメタクリレート共重合体、ABS樹脂等のスチ
レン系樹脂、ポリメチルメタクリレート、メチルメタク
リレート−スチレン共重合体等のメタクリル樹脂、ポリ
アミド、ポリエステル、ポリカーボネート、塩化ビニー
ル樹脂等である。
【0033】本発明の成形法が特に効果的に使用できる
のは、例えばポリスチレン、ゴム強化ポリスチレン、ス
チレン−アクリロニトリル共重合体、ABS樹脂、スチ
レン−メチルメタクリレート共重合体等のスチレン系樹
脂、ポリメチルメタクリレート、ゴム強化ポリメチルメ
タクリレート等のメタクリル樹脂、ポリカーボネートか
ら選択された非結晶性樹脂であリ、更にこれに各種充填
材が配合された樹脂である。
【0034】例えばガラス繊維、カーボン繊維、ウイス
カー等の繊維、炭酸カルシウム、酸化チタン、タルク等
の粉末等の無機充填材が5〜65重量%配合された各種
合成樹脂は、特に本発明の成形法を適用する利益が大き
い。ガラス繊維、ウイスカー等の無機充填材が5〜65
重量%含有される合成樹脂を、金属層のない断熱層被覆
金型で射出成形すると、型表面を構成する断熱層は無機
充填材で傷がつきやすくなる。特に無機充填材が20重
量%を超えて配合されると断熱層に傷がつきやすく、充
填材が30重量%以上の多量に配合されると、断熱層は
著しく傷つきやすくなる。本発明では型表面が金属層で
構成される金属層付断熱層被覆金型を用いることから、
この断熱層の傷つきを防止できる。金属層は、無機充填
材と同等程度、あるいはそれ以上の硬さであることが好
ましい。また、ポリアミド樹脂、アクリロニトリル含有
量の多い樹脂等は、一般に極性基を有する断熱層との離
型性が悪いが、本発明の成形法に於ては、該断熱層の表
面に金属層が存在していることにより、離型性を改良で
きる。
【0035】本発明の成形法が最も効果的に使用できる
のは、ゴムが1〜10重量%配合され、ガラス転移温度
が80〜120℃のゴム強化ポリスチレンである。
【0036】本発明の成形法で成形するに適した成形品
は、例えば弱電機器、電子機器、事務機器等のハウジン
グ、各種自動車部品、各種日用品、各種工業部品等の一
般に使用される合成樹脂射出成形品である。特に好まし
くは、多点ゲートで射出成形され、その結果ウエルドラ
インが多数発生する電子機器、電気機器、事務機器のハ
ウジング等である。また、良好な艶消し状成形品、良好
なパターンしぼ成形品、透明な合成樹脂を用いて成形し
た良好なレンチキュラーレンズやフレネルレンズ等のレ
ンズ、良好な高透過、高拡散板等の射出成形品も得られ
る。本発明の成形法で成形されるこれらの成形品は、型
表面再現性が良く、ウエルドラインの目立ちが少なくな
り、型表面のシャープエッジの再現性や、微細な型表面
の凹凸の再現性も良くなり、良好な上記の各種成形品が
得られる。本発明の成形法は、一般の射出成形法と組み
合わせても良好な結果が得られるが、特にガスアシスト
射出成形、液体アシスト射出成形、オリゴマーアシスト
射出成形、射出圧縮成形等の、成形時に合成樹脂を型表
面に押し付ける圧力が低い、及び/又は合成樹脂の型内
流動速度が遅い低圧射出成形と組み合わせて使用した場
合に大きい効果が得られる。
【0037】本発明の成形法により成形するに適した他
の成形品としては、良好な外観が要求される各種ブロー
成形品を挙げることができる。
【0038】本発明に述べる金属からなる主金型とは、
鉄又は鉄を主成分とする鋼材、アルミニウム又はアルミ
ニウムを主成分とする合金、ZAS等の亜鉛合金、ベリ
リウム−銅合金等の一般に合成樹脂の成形に使用されて
いる金属金型を包含する。特にS55C、S45C等の
鋼材から成る金型が良好に使用できる。これらの金属か
らなる主金型の断熱層と接する型壁面は硬質クロムやニ
ッケル等でメッキされていることが好ましい。
【0039】本発明で断熱層として良好に用いられる耐
熱性重合体は、成形される合成樹脂より高い軟化温度を
有する重合体であり、好ましくはガラス転移温度が14
0℃以上、更に好ましくは160℃以上、最も好ましく
は190℃以上、及び/又は融点が200℃以上が好ま
しく、更に好ましくは250℃以上の耐熱性重合体であ
る。特に好ましくは、成形される合成樹脂の成形温度よ
り高い軟化温度を有する重合体である。耐熱性重合体の
熱伝導率は一般に0.0001〜0.003cal/c
m・sec・℃であり、金属より大幅に小さい。また、
該耐熱性重合体としては、破断伸度が4%以上、好まし
くは5%以上、更に好ましくは10%以上の靭性のある
重合体が好ましい。破断伸度の測定法はASTM・D6
38に準じて行い、測定時の引っ張り速度は5mm/分
である。
【0040】本発明で断熱層として良好に使用できる耐
熱性重合体は、主鎖に芳香環を有する耐熱性重合体であ
り、例えば、有機溶剤に溶解する各種非結晶性耐熱性重
合体や、各種ポリイミド等が良好に使用できる。非結晶
性耐熱性重合体としては、例えばポリスルホン、ポリエ
ーテルスルホン等が挙げられる。これらの非結晶性耐熱
性重合体は、カーボン繊維や各種無機充填材等の充填材
を配合して熱膨張係数を低下させることで、本発明の断
熱層として好ましく使用することができる。ポリイミド
は各種あるが、直鎖型高分子量ポリイミド、一部架橋型
のポリイミドが良好に使用できる。直鎖型高分子量ポリ
イミドは破断伸度が大きく強靭であり、耐久性に優れて
おり特に良好に使用できる。この直鎖型高分子量ポリイ
ミドにはポリアミドイミド、ポリエーテルイミドも含ま
れる。
【0041】更に、本発明では、熱膨張係数の小さいエ
ポキシ樹脂硬化物、すなわち熱膨張係数が小さくなる硬
化剤と未硬化エポキシ樹脂を組み合わせて硬化させたエ
ポキシ樹脂硬化物、あるいは各種充填材が適量配合され
たエポキシ樹脂硬化物等も使用できる(以後、エポキシ
樹脂硬化物をエポキシ樹脂と略称する。)。エポキシ樹
脂は一般に熱膨張係数が大きく、金属金型との熱膨張係
数の差は大きい。しかし、熱膨張係数が小さいガラス、
シリカ、タルク、クレー、珪酸ジルコニウム、珪酸リチ
ウム、炭酸カルシウム、アルミナ、マイカ等の粉体や粒
子、ガラス繊維、ウイスカー、炭素繊維等を適量配合
し、金属金型との熱膨張係数の差を小さくしたエポキシ
樹脂は本発明の断熱層として良好に使用できる。
【0042】また、エポキシ樹脂あるいは上記充填材を
配合したエポキシ樹脂であって、ナイロン等の強靭な熱
可塑性樹脂や、ゴム等の強靭性を与える各種配合物が加
えられて強靭性が与えられたエポキシ樹脂は、更に良好
に使用できる。特に、ポリエーテルスルホンやポリエー
テルイミドを配合して硬化させたポリマーアロイは強靭
性に優れ、良好に使用できる。
【0043】本発明における断熱層を形成する耐熱性重
合体には、この断熱層上にメッキ等で形成する金属層の
密着力を向上させるために、酸化チタン、アルミナ、炭
酸カルシウム等の微粉末を配合することが好ましい。こ
の微粉末は、断熱層全体に配合しても、断熱層の表層部
にのみ配合しても良い。これらの微粉末の配合量が多過
ぎると断熱層の熱伝導率が高くなって本発明の目的が達
成しにくくなり、少な過ぎると配合による効果が得にく
くなるので、一般的な微粉末の配合量は1〜30重量%
である。
【0044】射出成形やブロー成形等では、成形される
加熱樹脂に接触する型表面は各成形毎に厳しい冷熱サイ
クルにさらされる。一般に重合体で構成される断熱層
は、金属で構成される主金型より熱膨張係数が大きいた
め、その界面で応力が成形毎に発生し、剥離を生じやす
い。また、後述する金属層と断熱層間も同様で、従来メ
ッキ等で断熱層表面に形成される金属層は、一般に重合
体からなる断熱層より熱膨張係数が小さく、やはり断熱
層との界面で剥離が発生しやすい。断熱層と接する主金
型及び金属層の熱膨張係数と断熱層の熱膨張係数との差
を小さくすることにより、剥離を引き起こす応力を低減
すれば、この剥離を防止することができる。本発明にお
いて、断熱層と主金型間及び断熱層と金属層間の熱膨張
係数の差は4×10-5/℃未満であることが好ましく、
更に好ましくは3×10-5/℃未満である。
【0045】一般に金属は重合体より熱膨張係数が小さ
い。従って、熱膨張係数が小さい耐熱性重合体を選択す
ることが好ましい。ここに述べる熱膨張係数は線膨張係
数である。断熱層の熱膨張係数は断熱層の面方向の線膨
張係数であり、JIS・K7197−1991に示され
る方法で測定し、50℃と250℃の温度間の平均値、
あるいは断熱層のガラス転移温度が250℃以下の場合
には、50℃と該ガラス転移温度間の平均値で示す。す
なわち、平滑な平板状金属の上に断熱層を形成し、次い
で該断熱層を剥離し、その断熱層の50℃と250℃の
間、あるいは50℃とガラス転移温度の間の平均熱膨張
係数として求める。
【0046】断熱層と主金型の間及び断熱層と金属層の
間の剥離の原因は熱膨張係数の差だけではないが、熱膨
張係数の差が極めて大きな要因である。断熱層と主金型
間及び断熱層と金属層間の密着力が大きく、しかも断熱
層が、引っ張り弾性率が小さく且つ破断伸度が大きい、
いわゆるゴム状の軟質材質のものであれば、熱膨張係数
の差が若干大きくても剥離は生じない。しかし、断熱層
に適した材質、すなわち、耐熱性が高く、硬度が大き
く、研磨により鏡面になりやすいこと等を満たす断熱材
は、一般に弾性率が大きい主鎖に芳香環を有する耐熱性
硬質合成樹脂であり、この耐熱性硬質合成樹脂層を主金
型と金属層に密着させ、剥離を起こさせない様にするに
は、熱膨張係数の差が小さいことが好ましい。
【0047】本発明に良好に使用できる主金型の金属、
最表面に被覆される金属層の金属、断熱層の耐熱性重合
体、及び一般の合成樹脂の熱膨張係数を表1に示す。
【0048】
【表1】 ※ これらの樹脂にはカーボン繊維を配合することによ
り熱膨張係数を4×10-5/℃付近まで低下できる。
【0049】主金型及び金属層の熱膨張係数が大きくな
れば、相対的に熱膨張係数の大きい断熱層が使用できる
様になる。金型材質として鋼鉄が最も多く使用されてい
るが、最近アルミニウム合金やZAS等の亜鉛合金も使
用される様になってきている。本発明では、断熱層と主
金型の熱膨張係数が近ければ近い程好ましく、主金型に
鋼鉄を使用した場合には、熱膨張係数が極めて小さい低
熱膨張型ポリイミド等を良好に使用できる。
【0050】表2に、本発明に良好に使用できる耐熱性
重合体の構造(繰り返し単位)とガラス転移温度(T
g)を示す。
【0051】
【表2】
【0052】射出成形やブロー成形は、複雑な形状の成
形品を一度の成形で得られるところに経済的価値があ
る。この複雑な型壁面を耐熱性重合体の断熱層で被覆
し、且つ強固に密着させるには、耐熱性重合体溶液及び
/又は耐熱性重合体前駆体溶液を塗布し、次いで加熱し
て耐熱性重合体の断熱層を形成させる方法や、型壁面に
耐熱性重合体を蒸着重合させて断熱層を形成する方法等
が好ましい。塗布により耐熱性重合体の断熱層を形成す
るには、耐熱性重合体あるいは耐熱性重合体の前駆体が
溶剤に溶解できることが好ましい。ポリイミドの前駆体
であるポリアミド酸の溶液を型壁面に塗布し、次いで加
熱キュアを行って型壁面上にポリイミドの断熱層を形成
する方法は良好に使用できる。下記化1にポリアミド酸
からポリイミドを形成する反応式を示す。
【0053】
【化1】
【0054】ポリイミドの前駆体のポリアミド酸溶液を
型壁面に塗布し、次いで加熱キュアを行ってポリイミド
の断熱層を形成した場合、加熱キュア温度及び/又は加
熱キュア雰囲気によりポリイミドのガラス転移温度や熱
膨張係数が異なる。一般に加熱キュア温度が高い程ガラ
ス転移温度が高くなり、また熱膨張係数が小さくなる。
ポリアミド酸は一般に250℃以上にすればイミド化が
ほとんど100%進行し、ポリイミドが形成されるが、
ポリイミドになってからの分子の動きが熱膨張係数に影
響を与えると考えられている。
【0055】射出成形やブロー成形は、複雑な形状の成
形品が一度の成形でできることが最大の長所であり、そ
のため金型キャビティは一般に複雑な形状をしている。
しかし、この複雑な形状の金型キャビティ表面に鏡面状
に被覆物質を塗布することは極めて困難であり、そのた
め塗布された被覆層を後から表面研磨したり、塗布層を
数値制御フライス盤等の各種工作機械で削つた後に表面
研磨して鏡面状に仕上げることは最も良好な方法であ
る。
【0056】本発明における断熱層の全厚みは、本発明
に指定する積分値、型表面温度の変化を満たす範囲で選
択され、0.1mmを超え0.5mm未満の極めて狭い
範囲内で選択される。射出成形においては、好ましくは
0.1mmを超え0.4mm未満、更に好ましくは0.
12mmを超え0.3mm未満であり、ブロー成形にお
いては、好ましくは0.2mm以上0.5mm未満、更
に好ましくは0.3mm以上0.5mm未満である。
0.1mm以下の薄い断熱層では、十分な外観改良効果
が得られない。断熱層厚みが厚くなりすぎると、成形時
の金型内必要冷却時間が長くなり、経済的観点から好ま
しくない。
【0057】熱可塑性樹脂の成形では、金型温度と成形
サイクルタイムは密接に関連している。すなわち、成形
時の金型温度(Td)と金型内必要冷却時間(θ)の関
係は理論的には次式で示される。 θ=−(D2 /2πα)・ln[(π/4){(Tx−
Td)/(Tc−Td)}] θ :冷却時間(sec) D :成形品の最大肉厚(cm) Tc:成形時の加熱樹脂温度(℃) Tx:成形品の軟化温度(℃) α :樹脂の熱拡散率 Td:金型温度(℃) 冷却時間(θ)は、成形品肉厚(D)の2乗に比例し、
(Tx−Td)/(Tc−Td)の関数である。
【0058】主金型に断熱層を被覆することは、成形品
肉厚を厚くして、冷却時間を長くする方向と同様の働き
をするが、一方、金型温度を下げると冷却時間を短くす
る方向へ働く。断熱層の厚みは薄肉で外観改良ができる
ことが成形サイクルタイムの観点から経済的に好まし
い。本発明では、断熱層の厚みを前記の狭い範囲に設定
することが外観改良と成形サイクルタイムを良好に満足
させる。
【0059】金型に断熱層と金属層を被覆した公知文献
の多くは断熱層厚みが厚い。断熱層厚みが厚くなれば、
型表面再現性は良くなるが、生産性、経済性に大きな影
響を与える成形サイクルタイムを犠牲にすることとな
る。
【0060】断熱層厚みと成形サイクルタイムの関係を
具体的な数値で説明する。断熱層が0.6mmと0.2
mmの2種の断熱層被覆金型を用いて、2mm厚の成形
品を射出成形するに必要な冷却時間を比較する場合、射
出成形する合成樹脂と断熱層の熱伝導率は一般にほぼ同
等レベルであり、従って型内必要冷却時間の比は2.6
mm厚と2.2mm厚の成形品を成形するに必要な冷却
時間の比とほぼ同等になる。3mm厚と2.2mm厚の
成形に必要な冷却時間の比は、前記式に示す様に、2.
2 /2.22 =1.4になる。必要冷却時間が1.4
倍の差は、工業的に合成樹脂を成形する場合の経済性の
面から考えると、極めて大きな差である。
【0061】本発明で使用される金型の金属層の厚み
は、射出成形においては断熱層の厚みの1/3以下で、
且つ0.001〜0.1mmの厚みであることが好まし
く、ブロー成形においては断熱層の厚みの1/3以下
で、且つ0.002〜0.1mmの厚みであることが好
ましい。この本発明で使用される金型の金属層に用いら
れる好ましい金属は、一般にメッキに用いられる金属で
あり、例えばクロム、ニッケル、銅等の1種又は2種以
上である。良好に使用できるのは化学ニッケルメッキ、
電解ニッケルメッキ、化学銅メッキ、電解銅メッキ、電
解クロムメッキ等で、1又は複数のメッキ層で構成され
る。金属層は断熱層の表面に密着して被覆されるもので
ある。
【0062】本発明における断熱層と主金型、断熱層と
金属層とは密着している。その密着力は大きいことが好
ましい。本発明に述べる主金型に密着した断熱層、ある
いは断熱層に密着した金属層とは、一万回を超える合成
樹脂の成形で引き起こされる冷熱サイクルで剥離が起こ
らないことである。密着力は23℃で0.3kg/10
mm幅以上が好ましく、更に好ましくは0.5kg/1
0mm幅以上、最も好ましくは0.7kg/10mm幅
以上である。これは密着した金属層、あるいは金属層と
断熱層を10mm幅に切り、接着面と直角方向に20m
m/分の速度で引張った時の剥離力である。この剥離力
は測定場所、測定回数によりかなりバラツキが見られる
が、最小値が大きいことが重要であり、安定して大きい
密着力であることが好ましい。本発明に述べる密着力
は、本発明で用いる金型の主要部の密着力の最小値であ
る。
【0063】主金型と断熱層の密着力を向上させるた
め、主金型の型壁面を微細な凹凸状にしたり、主金型の
型壁面に各種メッキをしたり、プライマー処理をするこ
とは適宜実施できる。CO基や、SO2 基を多く含むポ
リイミドは金属表面に密着しやすいことから、これらの
密着性に優れたポリイミドの薄層をプライマー層として
用い、この上に一般のポリイミドを断熱層として被覆す
る方法は良好に使用できる。断熱層と金属層の密着力を
向上させるためには、少なくとも断熱層に直接に接する
層は化学メッキ層にすることが好ましく、また断熱層と
金属層が微細凹凸界面で密着していることが好ましい。
すなわち、断熱層と金属層がその界面で交互に入り合っ
てアンカー効果により密着力が増大していることが好ま
しい。断熱層と金属層の界面の微細凹凸の大きさは、交
互に入り合っている距離が0.5〜10μm程度の凹凸
であり、該凹凸の一部が複雑に入り合ってアンカー効果
が働く凹凸が好ましい。微細凹凸度の測定は、断熱層と
金属層の界面部の断面を顕微鏡で観察して測定する。好
ましい微細凹凸度は、基準長さ80μmで金属層と断熱
層の界面の凹凸の高い方から5番目までの山頂の標高の
平均と、深い方から5番目までの谷底の標高の平均との
差が0.5〜10μmのものである。ここに述べる凹凸
は交互に複雑に入り合ってアンカー効果が働く形状であ
って、単純な凹凸ではないので、標高は各凹凸の最も深
く入り込んでいる位置を選択することとする。
【0064】金属層の表面は鏡面状、微細な凹凸表面の
艶消し状、微細なレンズ状凹凸表面のレンズ状、皮しぼ
や木目しぼ等のしぼ状等のいずれでも良く、必要に応じ
て選択される。
【0065】本発明に良好に使用できるしぼ形状は、皮
しぼ、木目しぼ、ヘアーラインしぼ等のパターンしぼで
ある。しぼ状表面を浮き出させるために、しぼ状表面の
凹凸の一方(凹部面又は凸部面)を鏡面に、他方を艶消
し面にすることが好ましい。又、しぼ状表面の凹凸を適
度に細かくし、凹凸の一方を鏡面に他方を艶消し状にす
ると、アルミニウムフレーク等を配合した合成樹脂で成
形した、いわゆるメタリック調外観が得られ、これも本
発明に含まれる。尚、しぼ状表面とした時の金属層の厚
みは凸部における厚みとする。
【0066】レンズ状とは、微細なフレネルレンズ、微
細なレンチキュラーレンズ等の平板状レンズである。微
細なレンズ状金型で、断熱層がほぼ一定厚みで、金属層
にレンズ状の厚み変動がある場合には、金属層の薄肉部
分の厚みを本発明に述べる金属層厚みとし、逆に金属層
がほぼ一定厚みで断熱層にレンズ状の厚み変動がある場
合には、断熱層の薄肉部分の厚みを本発明に述べる断熱
層厚みとする。
【0067】断熱層の厚み及び金属層の更に好ましい厚
みは、型表面が鏡面状、艶消し状、しぼ状のいずれかに
より異なり、更に、成形法が射出成形、ブロー成形のい
ずれかによっても異なる。各成形法における好ましい断
熱層の厚みと好ましい金属層の厚みを次に詳しく示す。
【0068】射出成形法で鏡面状又は艶消し状成形品を
成形する場合には、好ましくは、断熱層の厚みが0.1
mmを超え0.4mm未満で、金属層の厚みが断熱層厚
みの1/3以下で且つ0.001〜0.07mmであ
り、更に好ましくは、断熱層の厚みが0.12mmを超
え0.3mm未満で、金属層の厚みが断熱層厚みの1/
5以下1/100以上で且つ0.002〜0.06mm
である。
【0069】射出成形法でしぼ状成形品を成形する場合
には、好ましくは、凸部の金属層の厚みが断熱層の厚み
の1/3以下で且つ0.01〜0.1mmのであって、
しぼ形状凹部の深さが0.001〜0.09mmであ
り、より好ましくは、断熱層の厚みが0.1mmを超え
0.4mm未満で、金属層の凸部の厚みが断熱層厚みの
1/3以下且つ0.01〜0.07mmであって、しぼ
形状凹部の深さが0.005〜0.06mmであり、更
に好ましくは、断熱層の厚みが0.12mmを超え0.
3mm未満で、金属層の凸部の厚みが断熱層厚みの1/
5以下且つ0.01〜0.06mmであって、しぼ形状
凹部の深さが0.005〜0.04mmである。凹部の
深さが大き過ぎると、凹部と凸部の型表面再現性に大き
な差が生じたり、成形品の抜き勾配に影響を与える。ま
た、凹部の深さが小さ過ぎると、しぼ形状にする効果が
小さくなる。尚、凹部の深さはいずれの場合も金属層の
凸部の厚さを超えないものである。
【0070】ブロー成形で鏡面状あるいは艶消し状成形
品を成形する場合には、好ましくは、断熱層の厚みが
0.2mm以上0.5mm未満で、金属層の厚みが断熱
層厚みの1/3以下で、且つ、0.002〜0.1mm
であり、更に好ましくは、断熱層の厚みが0.3mm以
上0.5mm未満で、金属層の厚みが断熱層厚みの1/
5以下1/100以上で、且つ、0.004〜0.06
mmである。
【0071】ブロー成形でしぼ状成形品を成形する場合
には、好ましくは、金属層の凸部の厚みが断熱層厚みの
1/3以下で且つ0.01〜0.1mmであって、しぼ
形状凹部の深さが0.005〜0.09mmであり、よ
り好ましくは、断熱層の厚みが0.2mm以上0.5m
m未満で、金属層の凸部の厚みが断熱層厚みの1/3以
下且つ0.01〜0.1mmであって、しぼ形状凹部の
深さが0.005〜0.09mmであり、更に好ましく
は、断熱層の厚みが0.3mm以上0.5mm未満で、
金属層の凸部の厚みが断熱層厚みの1/5以下1/10
0以上且つ0.01〜0.08mmであって、しぼ形状
凹部の深さが0.005〜0.07mmである。尚、凹
部の深さはいずれの場合も金属層の凸部の厚さを超えな
いものである。
【0072】本発明において、金属層表面にしぼ状凹凸
を有する場合に、金属層の厚肉部(一般には金属層の凸
部の厚み)の金属層厚みを本発明の成形法における金属
層厚みとするのは、凸部の型表面再現性を良好にして、
成形品全体のウエルドライン等の目立ちを低減するため
である。
【0073】金属層の厚みは均一であることが好まし
く、厚みのばらつきは好ましくは±20%以下、更に好
ましくは±10%以下である。金属層表面がしぼ状の凹
凸の場合には、凸部の金属層厚み、あるいは凹部の金属
層の厚みが、それぞれ均一であることが好ましく、それ
ぞれの厚みのばらつきが好ましくは±20%以下、更に
好ましくは±10%以下である。金属層厚みのばらつき
が大きいと、金属層厚みの厚い部分の型表面再現性が悪
くなり、型表面再現性が良い部分と悪い部分が同一成形
品表面に現れやすくなる。
【0074】本発明は、成形品の型表面再現性と成形サ
イクルタイムを両立させることを一つの目的としている
もので、成形サイクルタイムを短く保つためには主金型
温度を低く設定して成形することが好ましい。本発明で
は主金型温度を、15℃以上、100℃以下で、且つ合
成樹脂の軟化温度から20℃を減じた温度以下に設定し
て成形することが好ましく、更に好ましくは、合成樹脂
の軟化温度から30℃を減じた温度以下で成形する。こ
こに述べる主金型温度は、断熱層と接する部分の主金型
の成形時の温度である。主金型温度をこれより高くする
と、金型内必要冷却時間が長くなり、従って成形サイク
ルタイムが長くなり、成形効率が低下する。主金型温度
を100℃を超える高温度にすれば当然型表面再現性は
良くなるが、成形効率の面から好ましくない。主金型温
度は好ましくは20℃以上で90℃以下であり、更に好
ましくは25℃以上で80℃以下である。主金型温度を
15℃未満にすることは型表面に結露等がおこりやすく
なる。ここに述べる軟化温度は、成形品全体の変形を問
題とする軟化温度であり、ガラス繊維等の配合物等を含
む場合には、該配合物を含む合成樹脂全体の軟化温度で
ある(後で述べる積分値(秒・℃)を計算する際の軟化
温度とは異なる)。
【0075】本発明では、成形される合成樹脂が、型キ
ャビティを構成する型表面に接触して5秒後に、型表面
温度が合成樹脂の軟化温度以下に低下する成形条件を選
択する。すなわち、合成樹脂が型表面に接触して5秒の
間、型表面温度が合成樹脂の軟化温度以上であれば、型
表面再現性は十分に良くなり、この後は型表面温度は低
くなる方が成形サイクルタイムの点から好ましい。更に
本発明では、合成樹脂が型表面に接触して5秒後に、型
表面温度が(合成樹脂の軟化温度―10℃)以下に低下
することが好ましく、更に好ましくは型表面温度が(合
成樹脂の軟化温度―20℃)以下に低下することであ
る。これは、断熱層と金属層の各厚み、樹脂温度、金型
温度を適度に選択して満たすことができる。
【0076】例えば、射出成形に於ける成形品の型表面
再現性は合成樹脂が型表面に接触してから5秒以内の問
題であり、標準的な射出成形では3秒以内、最も標準的
な射出成形では2秒以内の問題であり、その間だけ型表
面温度が高く、合成樹脂の軟化温度以上であれば、その
後は成形サイクルタイムの観点から型表面は急速に冷却
されることが好ましい。従って、本発明では、合成樹脂
が型表面に接触してから2秒後に、型表面温度が合成樹
脂の軟化温度以下に低下する条件が特に好ましい。合成
樹脂が型表面に接触してから20秒近くの間、型表面温
度が合成樹脂の軟化温度以上にすれば当然のことながら
型表面再現性は良くなるが、成形サイクルタイムが長く
なり、経済的に使用できない。
【0077】金属からなる主金型表面を断熱層で被覆
し、その表面に射出された加熱樹脂が接触すると、型表
面は樹脂の熱を受けて昇温する。断熱層の熱伝導率が小
さいほど、また、断熱層が厚いほど型表面温度は高くな
る。
【0078】本発明は、金属からなる主金型の型壁面
に、耐熱性重合体からなる断熱層が存在し、その上に断
熱層に密着した金属層が存在する断熱層被覆金型を用
い、成形される加熱合成樹脂が型表面に接触後、型表面
温度が合成樹脂の軟化温度以上にある間の(型表面温度
−合成樹脂の軟化温度)値の積分値(ΔH)が2秒・℃
以上、及び/又は、型表面温度が(合成樹脂の軟化温度
―10℃)以上にある間の{型表面温度―(合成樹脂の
軟化温度―10℃)}値の積分値(Δh)が10秒・℃
以上になる成形条件で成形する合成樹脂の成形法であ
る。
【0079】型表面温度とは、成形される加熱合成樹脂
が接触する界面温度であり、型表面温度と樹脂表面温度
はほぼ等しい。本発明では型表面温度と樹脂表面温度は
同一の意味を有するものとして使用する。冷却された金
型に加熱可塑化された合成樹脂が接触すると、熱容量の
大きい金属層に熱が奪われて、型表面温度は一旦低下す
るが、直ちに昇温して合成樹脂の軟化温度以上に上が
り、それから再び低下して行く。成形時の型表面再現性
は型表面が合成樹脂の軟化温度以上にある時間と、軟化
温度から何度高い温度に上昇するかの2つの要因が大き
いことを見出し、本発明に至った。即ち、本発明では、
成形される加熱合成樹脂が型表面に接触後、型表面温度
が合成樹脂の軟化温度以上にある間の積分値(ΔH)が
2秒・℃以上、及び/又は積分値(Δh)が10秒・℃
以上の成形条件で成形すると型表面再現性が良好にな
る。この積分値は、型表面温度の経時変化曲線を描いた
図の、該曲線と合成樹脂の軟化温度線で囲まる面積、あ
るいは該曲線と(合成樹脂の軟化温度―10℃)線で囲
まれる面積に相当する。
【0080】射出成形に於いては、好ましい積分値(Δ
H)は2秒・℃以上、50秒・℃以下、更に好ましくは
5秒・℃以上、40秒・℃以下、特に好ましくは7秒・
℃以上、40秒・℃以下、最も好ましくは8秒・℃以
上、40秒・℃以下である。好ましい積分値(Δh)は
10秒・℃以上、100秒・℃以下であり、更に好まし
くは12秒・℃以上、70秒・℃以下であり、特に好ま
しくは15秒・℃以上、70秒・℃以下であり、最も好
ましくは20秒・℃以上、70秒・℃以下である。
【0081】ブロー成形は、射出成形に比較して合成樹
脂が型表面に押しつける力が低く、且つ型表面に接触後
に圧力が加わるまでの時間が長いため必要な積分値も大
きくなる。ブロー成形に於ける好ましい積分値(ΔH)
は10秒・℃以上、更に好ましくは20秒・℃以上であ
り、好ましい積分値(Δh)は20秒・℃以上、更に好
ましくは30秒・℃以上である。
【0082】金属層表面が凹凸を有するしぼ状の場合に
は、金属層の厚みの厚い部分(一般には凸部が厚い)の
積分値を用いる。
【0083】積分値(ΔH)の上限は、成形サイクルタ
イム等の観点から、射出成形においては好ましくは50
秒・℃以下、更に好ましくは40秒・℃以下であり、一
方、積分値(Δh)については、好ましくは100秒・
℃以下、更に好ましくは70秒・℃以下である。
【0084】ブロー成形においては、積分値(ΔH)は
200秒・℃以下が好ましく、更に好ましくは100秒
・℃以下であり、積分値(Δh)は400秒・℃以下が
好ましく、更に好ましくは300秒・℃以下である。本
発明では成形サイクルタイムの観点から、実用的に型表
面再現性が達成される範囲内で積分値が小さくなる成形
条件と金型構造を選択することが好ましい。
【0085】積分値(△H)と積分値(△h)を計算す
る際に用いる合成樹脂の軟化温度は、合成樹脂が容易に
変形しうる温度である。合成樹脂に配合されている配合
物がゴム等の成形時に変形しやすい有機物や合成樹脂に
溶解している物の場合には、それら配合物を含む合成樹
脂全体の軟化温度である。一方、ガラス繊維、ウイスカ
ー、カーボン繊維等の繊維、炭酸カルシウム等の無機粉
末等、成形時に合成樹脂中で変形しない充填材を配合さ
れた合成樹脂では、これら無機充填材を除いたベースの
合成樹脂の軟化温度である。成形時に合成樹脂中で変形
しない充填材が含有される合成樹脂を成形して型表面再
現性を良くするには、成形品表面がベースの合成樹脂で
被覆されることが好ましく、成形品表面には無機充填材
がほとんど露出していない状態にすることが好ましい。
このため成形時、型表面に樹脂が接触した時に、成形品
表面付近に存在する無機充填材の隙間をベース合成樹脂
が通り抜けて型表面に達する必要があり、ベース樹脂の
流動性が型表面再現性に直接に関係がある。従って、成
形時に合成樹脂中で変形しない充填材が配合された合成
樹脂の積分値を計算する際の軟化温度は、ベース樹脂の
軟化温度をもって示す(金型温度を設定するさいに使用
した軟化温度は、成形品全体の変形を問題としており、
配合物を含む樹脂全体の軟化温度である)。軟化温度は
非結晶性樹脂ではビカット軟化温度(ASTM・D15
25)、硬質結晶性樹脂では熱変形温度(ASTM・D
648、荷重18.6kg/cm2 )、軟質結晶性樹脂
では熱変形温度(ASTM・D648、荷重4.6kg
/cm2 )でそれぞれ示す温度とする。非結晶性樹脂と
は、例えばポリスチレン、ゴム強化ポリスチレン、ポリ
カーボネート等であり、硬質結晶性樹脂とは、例えばポ
リオキシメチレン、ナイロン6、ナイロン66等であ
り、軟質結晶性樹脂とは、例えば各種ポリエチレン、ポ
リプロピレン等である。
【0086】更に本発明では、昇温する型表面温度が一
度低下した後、直ちに昇温する最高温度が、(合成樹脂
の軟化温度+20℃)以上になることが好ましい。
【0087】本発明では、積分値(ΔH)が2秒・℃以
上、及び/又は、積分値(Δh)が10秒・℃以上の成
形条件になる成形条件で成形できる様に、断熱層と金属
層の厚み、合成樹脂の種類、樹脂温度や金型温度等の成
形条件等を選択する。
【0088】本発明の目的の一つは、型表面再現性を良
くすることと、成形サイクルタイムを短く保持すること
を両立させることである。このためには型表面再現性を
良くするに必要な型表面温度の変化が得られれば、即ち
型表面再現性を良くするに必要な積分値(ΔH)、積分
値(Δh)が得られれば、その後の型表面温度は急速に
低くなることが成形サイクルタイムを短くするには必要
である。更には積分値(ΔH)、積分値(Δh)は型表
面再現性が得られるのに必要な値以上である必要がある
が、それ以上に大幅に大きくする必要はなく、必要最小
限に近い値が好ましい。これを達成するために本発明で
は、成形される合成樹脂が型表面に接触して5秒後に、
型表面温度が合成樹脂の軟化温度以下に、好ましくは
(合成樹脂の軟化温度−10℃)以下に、更に好ましく
は(合成樹脂の軟化温度−20℃)以下に低下する成形
条件で成形される。これが成形サイクルタイムを長くし
ない制限事項である。好ましくは主金型温度を15℃以
上で100℃以下、且つ合成樹脂の軟化温度から20℃
を減じた温度以下に設定し、更に好ましくは20℃以上
で90℃以下、且つ合成樹脂の軟化温度から20℃を減
じた温度以下に設定し、特に好ましくは25℃以上で8
0℃以下、且つ合成樹脂の軟化温度から30℃を減じた
温度以下に設定し、断熱層厚みを0.1mmを超え0.
5mm未満とし、その上で積分値(ΔH)と積分値(Δ
h)の範囲を規定している。
【0089】射出成形時やブロー成形時の型表面温度の
変化は、合成樹脂、主金型、断熱層の温度、比熱、熱伝
導率、密度等から計算できる。例えば、「ABAQU
S」(米国のHibbit,Karlson & So
rensen,Inc.のソフトウェア)や、「ADI
NA及びADINAT」(マサチューセッツ工科大学で
開発されたソフトウェア)等を用い、非線形有限要素法
による非定常熱伝導解析により計算できる。本発明の積
分値(△H)及び積分値(△h)は、型表面温度の変化
の計算値から算出した値をもって示す。この計算値は射
出成形中の合成樹脂の剪断発熱と各層間の境膜伝熱係数
は無視している。本発明の図等で示す型表面温度変化
は、上記の条件で「ABAQUS」を用いて計算した値
である。
【0090】本発明における金属層は種々の方法で被覆
できるが、メッキにより良好に被覆される。ここに述べ
るメッキは化学メッキ(無電解メッキ)と電解メッキで
ある。本発明では次の工程のいくつかを経てメッキされ
ることが好ましい。すなわち、まず断熱層表面の微細凹
凸化を行い、次いで化学メッキを行うことが好ましい。
【0091】好ましい手順の一例は、前処理→化学腐食
(強酸化剤の強酸溶液等による化学エッチング:表面を
適度な微細凹凸状にする)→中和→感受性化処理(合成
樹脂表面に還元力のある金属塩を吸着させて活性化を効
果あらしめる)→活性化処理(触媒作用を有するパラジ
ウム等の貴金属を樹脂表面に付与)→化学メッキ(化学
ニッケルメッキ、化学銅メッキ等)→電解メッキ(電解
ニッケルメッキ、電解銅メッキ、電解クロムメッキ等)
である。
【0092】断熱層とメッキ層の密着力を増大させるた
め、断熱層の少なくとも最表部に炭酸カルシウム、酸化
珪素、酸化チタン、炭酸バリウム、硫酸バリウム、アル
ミナ等の無機物、各種重合体等の有機物の微粉末等の微
粉末状エッチング助剤を配合含有させておき、化学腐食
で該粉末を溶出して、表面を適度な微細凹凸状にした後
にメッキを行うことは極めて良好に使用できる。微粉末
状エッチング助剤は断熱層に1〜30重量%程度配合す
ることが好ましい。
【0093】次に、本発明に良好に使用できる化学ニッ
ケルメッキについて詳しく述べる。
【0094】化学メッキは、金属イオンを還元剤により
金属に還元析出させるものである。一般的に化学メッキ
は次の条件を満たすことが必要である。(1)メッキ液
を調整したままの状態で還元剤が自己分解をせずに安定
であること。(2)還元反応後の生成物が沈澱を生じな
いこと。(3)析出速度がpH、液温度により制御でき
ること等があげられる。化学ニッケルメッキでは還元剤
に次亜燐酸ソーダ、水素化ホウ酸等が使用され、特に次
亜燐酸ソーダが良好に使用される。上記の条件を満たす
ためには、化学メッキ液中に主成分(金属塩、還元剤)
以外に補助成分(pH調整剤、緩衝剤、促進剤、安定剤
等)が加えられる。還元剤として次亜燐酸ソーダが各種
補助成分と共に使用されると、結果的に形成されるニッ
ケルメッキには燐が含有される。
【0095】本発明において断熱層に密着する好ましい
化学ニッケルメッキ層は、燐を1重量%以上5重量%未
満含有するもので、更に好ましくは2重量%以上5重量
%未満含有するものである。この化学ニッケルメッキ層
の厚みは、一般にプライマーと称される程度の薄層で十
分であり、好ましくは0.1〜5μm、更に好ましくは
0.2〜2μm程度である。本発明に用いられる金型で
は、化学ニッケルメッキ層を断熱層にしっかりと密着さ
せることが必要であり、そのために化学ニッケルメッキ
の初期はメッキ液の温度を下げ、PHを調節することに
よりメッキ速度を遅くし、小粒径のメッキ粒子を生成さ
せ、断熱層表面の微細凹凸の内部にまでメッキが入り込
ませることが極めて好ましい。一定厚みのメッキ層が形
成された後は、メッキ速度を上げて、効率良くメッキを
行う。この結果、断熱層に接するニッケルメッキ層は燐
を1重量%以上、5重量%未満を含有する化学ニッケル
メッキ層になり、その上のメッキ層は電解ニッケルメッ
キ層、電解クロムメッキ層、燐を5〜14重量%含有す
る化学ニッケルメッキ層、電解銅メッキ層等になる。断
熱層表面に直接燐含量が多い化学ニッケルメッキ、特に
燐を8重量%以上含有する化学ニッケルメッキを行う
と、一般にニッケルの生成粒子が大きくなり、メッキ層
の密着力が低くなる。
【0096】本発明において断熱層として最も適してい
るポリイミド層表面への金属メッキについて詳しく説明
する。ポリイミド表面への金属メッキはポリイミド表面
処理を行うことからはじめることが好ましい。この表面
処理としては、米国特許第4775449号や同第48
42946号明細書等に示されている様に、ポリイミド
表面をアルカリ等で処理することが一般的である。即
ち、ポリイミドはアルカリに弱く、表面が活性化され
る。しかし、断熱層表面の金属層は合成樹脂成形中に厳
しい冷熱サイクルにさらされるため、その厳しい冷熱サ
イクルに耐えるだけの十分な密着強度にする必要があ
る。我々は種々検討の結果、ポリイミド表面層に炭酸カ
ルシウム、酸化チタン、アルミナ等の微粉末状エッチン
グ助剤を配合したポリイミドを被覆し、その表面を強酸
化剤の強酸溶液でエッチングして表層部に存在する炭酸
カルシウム、酸化チタン、アルミナ等の微粉末とポリイ
ミドの一部を溶出させてポリイミド層表面を適度な微細
凹凸状にし、次いで、中和、感受性化処理、活性化処理
を経て、化学ニッケルメッキを行う方法が本発明に良好
に使用できることを発見した。微粉末は架橋したゴムの
微粉末、難溶性重合体の微粉末等の有機物も使用でき
る。
【0097】本発明に良好に使用できるメッキの具体例
を更に詳しく次に示す。平均粒径が0.001〜5μm
程度の微細な炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミナ等
の微粉末を、ポリイミドに対して1〜30重量%、好ま
しくは5〜25重量%配合し、十分にポリイミドと混練
して配合したポリイミドを最表面層とする。この場合、
ポリイミド層全体が微粉末配合ポリイミドであっても良
いし、最表層のみが微粉末配合ポリイミドであっても良
い。これらの微粉末は凝集しやすく、ポリイミド前駆体
溶液と良く混練して十分に分散させ、それを型壁面に塗
布し、加熱してポリイミド化する。次いで、該ポリイミ
ド表面をクロム酸、硫酸、燐酸等が含まれる強酸溶液で
エッチング処理し、表層にある微粉末とポリイミドの一
部を溶出してポリイミド表面に適度な微細な凹凸を形成
し、次いで中和、感受性化処理、活性化処理を経て、次
亜燐酸ソーダ等を還元剤として化学ニッケルメッキを行
う。化学ニッケルメッキは低温度、弱アルカリ性の状態
で低速度で行い、生成するニッケル粒子を小さくし、ポ
リイミド層表面の微細な凹凸の内部にまで均一にニッケ
ルが入り込んだニッケルメッキとすることにより、密着
力を著しく向上させる方法が本発明に極めて好ましい方
法である。
【0098】一般に化学ニッケルメッキは酸性状態で、
温度を上げて、メッキ効率を良くして行われている。次
亜燐酸ソーダを還元剤として使用し、弱アルカリ状態で
低温、低速度で化学ニッケルメッキを行うと、ニッケル
メッキ中の燐含有量は1重量%以上5重量%未満にな
る。本発明の断熱層に接する化学ニッケルメッキ層の好
ましい組成は、1重量%以上5重量%未満の燐を含有す
ることである。 本発明に述べる化学ニッケルメッキを
低温度、低速度で行うとは、一般に行われている化学ニ
ッケルメッキより低温度、低速度で行うことを示すが、
好ましくは50℃以下5℃以上、更に好ましくは40℃
以下10℃以上の温度であり、また好ましくは時間当た
り10μm以下0.1μm以上の速度である。
【0099】断熱層に強固に密着する薄層化学ニッケル
メッキの上には各種のメッキ層をつけることができる。
該薄層化学ニッケルメッキの上に更につけるメッキの好
ましい具体例を次に示す。
【0100】(1)化学ニッケルメッキ(燐を5〜18
重量%含有) (2)電解クロムメッキ(硬質クロムメッキ等) (3)電解ニッケルメッキ(光沢ニッケルメッキ、半光
沢ニッケルメッキ、無光沢ニッケルメッキ等) (4)化学銅メッキ (5)電解銅メッキ これ等のメッキから選択された少なくとも1層あるいは
2層以上が被覆されることが好ましい。例えば薄層化学
ニッケルメッキの上に電解銅メッキ及び/又は化学銅メ
ッキを行い、更にその上にニッケルメッキを行うと、メ
ッキ密着力が向上し、良好に使用できる。
【0101】メッキ層の最表面に硬く、傷つき難いニッ
ケルメッキ層や硬質クロムメッキ層等が0.5μm以上
の厚みで存在することが好ましく、より好ましくは1〜
50μmの厚み、特に好ましくは2〜30μmの厚みで
あることが好ましい。
【0102】成形する合成樹脂にガラス繊維、ウイスカ
ー、炭酸カルシウム等の無機充填材が5〜65重量%配
合されている場合、特に20重量%を越え65重量%の
多量が配合されている場合、とりわけ30〜50重量%
の無機充填材が配合されている場合には、型表面の最表
面の金属層の硬さが、合成樹脂中の無機充填材の硬さと
同等程度、あるいはそれ以上であることが好ましい。こ
の硬さとは相対的なものであり、2つを擦り合わせて金
属層に容易に傷がつかないことである。ガラス繊維と硬
質クロムメッキを比較する場合、硬質クロムメッキをガ
ラス繊維でこすりつければ比較できる。物体の硬度は材
質の種類が異なると直接的には数値で比較しにくいが、
本発明ではビッカース硬度(HV)で比較することにす
る。ビッカース硬度(HV)とは136度の頂角を有す
るダイヤモンド角錐を圧子として用い、荷重を生じた厚
痕凹みの表面積で割った値で硬度を表現する方法であ
り、単位はkg/mm2 で示す。次表に代表的なメッキ
とガラスのビッカース硬度(HV)を示す。
【0103】
【表3】
【0104】化学ニッケルメッキ(無電解ニッケルメッ
キ)の硬度は、含有される燐含量によって異なり、メッ
キ後の熱処理によっても異なる。ニッケルメッキの熱処
理による硬度の変化はISO・DIS・4527等に記
載されている。
【0105】合成樹脂に配合されるガラス繊維として多
く使用されているのはEガラスであり、Eガラスは電気
製品用に開発されたガラスで無アルカリガラスに近く、
その組成は、SiO2 が52〜56wt%、Al23
が12〜16wt%、CaOが16〜25wt%、Mg
Oが0〜6wt%、B23 が8〜13wt%、Na2
O及び/又はK2 Oが0〜3wt%である。このガラス
を多量含有する合成樹脂を成形する場合には、金型の最
表面の金属層の硬さはこのガラスの硬さと同等あるいは
それ以上であることが好ましい。
【0106】本発明に述べる金属層の硬さが合成樹脂中
の無機充填材の硬さと同等、あるいはそれ以上であると
は、金属層のビッカース硬度が合成樹脂中の無機充填材
の(ビッカース硬度−100)値より大きいことであ
り、好ましくは金属層のビッカース硬度が無機充填材の
ビッカース硬度より大きいことであり、更に好ましくは
金属層のビッカース硬度が無機充填材の(ビッカース硬
度+50)値より大きいことである。
【0107】本発明に良好に使用できるこれらの金属メ
ッキは、断熱層と微細凹凸界面で密着している。メッキ
層と断熱層の界面はメッキ層と断熱層が相互に入り込ん
だ形状をしていることが好ましい。この場合の本発明に
述べる金属層の厚みは金属が50容量%以上を占める部
分の厚みを用い、断熱層厚みは断熱材が50容量%を超
える部分の厚みを用いる。
【0108】本発明の金属層表面は、鏡面状、艶消し
状、しぼ状、レンズ状等にできる。
【0109】メッキで形成した金属層表面をしぼ状にす
る方法は種々の方法で行うことができる。エッチング法
は最も良好に使用できる。金型の最表面層が電解ニッケ
ルメッキ、電解銅メッキ、化学ニッケルメッキ等の酸溶
液等でエッチングできる金属であれば、一般の金属金型
のしぼ化に使用されているエッチング法と同様の方法で
しぼ化ができる。すなわち、金属層表面を紫外線硬化樹
脂を用いてしぼ状にマスキングし、次いで酸エッチング
でしぼ化する方法は良好に使用できる。金属層がニッケ
ルメッキの場合、燐含量が8重量%以上の化学ニッケル
メッキは酸でエッチングされ難く、燐含量がそれより少
ない化学ニッケルメッキはエッチングされやすい。
【0110】化学ニッケルメッキの燐含有量と耐酸性に
ついては、「Plating・and・Surface
Finishing,79,No.3,P.29〜3
3(1992)」等に示されており、燐含有量が多い
程、耐酸性は良くなる。上記文献の表1には、耐酸性は
燐含有量が10〜12重量%で「Good」、7〜9重
量%で「Fair」、1〜4重量%で「Poor」とな
っている。ニッケルと燐の合金の状態図は、燐含量が0
〜4.5重量%がβ相、11〜15重量%がγ相であ
り、4.5〜11重量%はγ相とβ相の混合物である。
酸に対する耐食性はγ相が優れており、一般には高燐含
量と言われる8重量%以上の時に耐食性は大きい。
【0111】電解ニッケルメッキでも組成によりエッチ
ング性が異なり、燐含有量が多いニッケルメッキは酸で
エッチングされ難い。エッチングによるしぼ深さは、エ
ッチング時間の調節、エッチングされやすい金属層とエ
ッチングされ難い金属層の組み合わせ等により調節でき
る。更にしぼ状にした後の金属層の最表面には薄層の耐
食性に優れた金属層、及び/又は硬度の大きい金属層、
すなわち燐含量の多い化学ニッケルメッキ層や電解硬質
クロムメッキ層等をつけることは良好に使用できる。
【0112】型表面をフレネルレンズやレンチキュラー
レンズ状にする方法は種々考えられるが、(a)メッキ
で形成された金属層を工作機械でレンズ状に切削及び/
又は研磨する方法、(b)断熱層を工作機械でレンズ状
に切削し、そのレンズ状表面にメッキを行い、次いでそ
の表面を再び工作機械で切削及び/又は研磨する方法、
(c)あらかじめ形成されたレンズのモデルを用い、そ
の表面を電鋳加工で金属層を被覆し、その金属層を剥離
してレンズ表面の金属薄層をつくり、それを断熱層に貼
り付ける方法、等は良好に使用できる。(a)と(c)
の方法でつくられた金型は、断熱層厚みがほぼ一定で、
金属層の厚みがレンズ状に変動している。一方、(b)
の方法でつくられた金型は、断熱層厚みがレンズ状に変
動し、金属層の厚みはほぼ一定になる。本発明では両方
の金型が使用できる。断熱層の厚みが変動する場合に
は、薄肉部分の断熱層の厚みを断熱層の厚みとする。
【0113】本発明に述べる金型で成形されるレンズ
は、型キャビティの鋭角部が十分に再現され、良好なレ
ンズが得られる。すなわち、従来の金型で型キャビティ
の鋭角部を有するレンズを成形すると、型キャビティの
鋭角部に合成樹脂は十分に入り込めず、角部を十分に再
現した良好なレンズを成形するには金型温度を極めて高
く設定して成形する必要があった。金型温度を高くする
ことは成形サイクルタイムが長くなり、生産性を低下さ
せる欠点がある。本発明では成形サイクルタイムの増大
を微小にとどめ、角部を良好に再現した良好なレンズが
得られる。
【0114】微細な凹凸状表面を有する高度な拡散率を
もつ拡散性成形品を得る場合においても、同様な問題が
あり、型表面の微細凹凸が十分に再現された成形品は従
来の金型では成形困難であった。本発明の成形法は、型
表面の凹凸が十分に再現された高度な拡散性成形品が得
られ、特に透明な合成樹脂を射出成形して、高透過、高
拡散板等を成形するには極めて好ましい成形法である。
近年、液晶表示装置のバックライトには性能の優れた高
透過、高拡散板が要求されている。すなわち、全光線透
過率が大きく、平行光線透過率が小さい高透過、高拡散
板が要求されている。従来これらの高透過、高拡散板に
はメタクリル樹脂等の透明樹脂に炭酸カルシウム、硫酸
バリウム等の該透明合成樹脂と屈折率が異なる微粉末を
分散させて、入射光線を分散させる板が使用されてき
た。しかしながら、これら微粉末が入射光線を吸収して
十分な高透過、高拡散板を得ることは困難であった。型
表面を該型表面に平行な面が極めて少ない、すなわち微
細凹凸の凹と凸がとがっている微細凹凸表面にした金型
を使用し、本発明に示す成形法で成形すれば、該型表面
の微細凹凸表面を十分に再現させた成形品が得られ、入
射した光を十分に成形品表面で拡散できる成形品が得ら
れる。この結果、合成樹脂に配合する微粉末の配合量を
少なく、あるいは配合しなくても平行光線透過率を十分
に小さくした高透過、高拡散板が得られることがわかっ
た。この成形品は、ASTM・D1003で測定した全
光線透過率T(%)、拡散光線透過率D(%)、平行光
線透過率P(%)の関係が、 T=D+P P<0.045T である高透過、高拡散板になり、これは本発明の成形法
の好ましい使用法の一つである。
【0115】次に、本発明の成形法の好ましい使用法の
別の例を示す。ウエルド部を有する家電、事務機器等の
艶消し状外観ハウジング等の成形品、すなわち上記の高
度な拡散率を有する高透過、高拡散板とは全く逆の効果
が要求される成形品の成形にも本発明は良好に使用でき
る。この様な成形品を成形する場合、金属層表面あるい
は金属層表面の一部が、多段サンドブラスト処理及び/
又は多段エッチング処理により形成された艶消し状表面
を有する金型が良好に使用できる。更に好ましくは、型
表面側の金属層が、その内側金属層に比較して硬度が小
さく及び/又はエッチング性が大きくなった、少なくと
も2層を有する金属層を有する金型を、多段サンドブラ
スト処理及び/又は多段エッチング処理して形成した艶
消し状表面を有する金型である。特に、金属層の型表面
金属層のエッチング速度がその内側金属層のエッチング
速度の2倍以上であることが更に好ましく、上記金属層
を多段エッチング処理により艶消し状表面にした艶消し
状表面を有する金型が良好に使用できる。この艶消し状
表面を有する金型を用いることが好ましいことと、その
製法については次に更に詳しく説明する。
【0116】従来の一般の金型の型キャビティを構成す
る型表面を艶消し状にするには、これまで一般にサンド
ブラスト法により型表面を粗面化する方法が主に用いら
れている。断熱層被覆金型においても、断熱層表面を粗
面化して艶消し状にするにはまずサンドブラスト法が考
えられる。断熱層被覆金型の断熱層表面を、あるいは金
属層付断熱層被覆金型の金属層をサンドブラスト処理し
て艶消し状にしてゴム強化ポリスチレン等で射出成形を
行ったところ、金型表面は均一な艶消し状であるにもか
かわらず、成形された合成樹脂射出成形品は均一な艶消
し状にならず、更に人の爪等で極めて傷付き易くなるこ
とがわかった。すなわち、見苦しいウエルドラインのへ
こみは無くなるが、射出成形品は容易に傷が付き易くな
り、更に成形品の一般部とウエルド部、及び/又は一般
部と樹脂流動端部が不均一な艶消し面になりやすいとい
う、不良現象が顕著に現れた成形品になる。本発明はこ
れ等の艶消し状表面の断熱層被覆金型又は金属層付断熱
層被覆金型を使用して成形した成形品に発現する固有の
問題を解決する方法を提供するものでもある。すなわ
ち、ウエルドラインの目立ち低減、均一な艶消し面、耐
擦傷性の改良等を達成した、優れた外観を有する合成樹
脂成形品を、成形サイクルタイムを大幅に長くすること
なく経済的に成形する成形法を提供するものでもある。
【0117】上記目的を達成する上で、本発明に用いる
金型の金属層は、型表面を構成する金属層が、その内側
の金属層に比較して硬度が小さく及び/又はエッチング
性が大きくなるような2層以上の金属層を有することが
特に好ましい。この金属層が2層以上の場合には、金型
キャビティ側の表面金属層の厚みは全金属層の厚みの1
/2以上であることが好ましい。金属層を多段サンドブ
ラスト処理により艶消し状にするには、表面金属層のビ
ッカース硬度値がその内側金属層の(ビッカース硬度―
50)値より小さいことが好ましい。すなわち、サンド
ブラスト処理で凹凸化されやすいい金属が型表面の金属
層を形成することが好ましい。物体の硬度は材質の種類
が異なると直接的には数値で比較しにくいが、本発明で
はビッカース硬度(HV)で比較することにする。ビッ
カース硬度(HV)とは136度の頂角を有するダイヤ
モンド角錐を圧子として用い、荷重を生じた厚痕凹みの
表面積で割った値で硬度を表現する方法であり、単位は
kg/mm2 で示す。ここに述べるサンドブラスト処理
とは、一般の金型表面を艶消し状にするサンドブラスト
処理であり、各種粒径、各種形状のカーボランダム、ガ
ラス等の無機物粒子を加圧気体と一緒に金型表面に吹き
付けて、型表面を艶消し状にすることであり、多段サン
ドブラスト処理とは、粒径、形状、材質等が異なる粒子
を2度以上サンドブラスト処理することである。角ばっ
た粒子のサンドブラストと球形粒子のサンドブラスト等
を組み合わせて行うことが好ましい。本発明の多段サン
ドブラスト処理は、2度以上、好ましくは3〜6度にわ
たって異なるサンドブラスト処理をほどこすことであ
る。この場合、3〜6度のサンドブラスト処理のうち総
てが異なる処理である必要はない。例えば、A処理、B
処理の2種の処理を繰り返し行っても良い。一段のサン
ドブラスト処理では本発明が求める艶消し表面は得るの
は困難である。化学ニッケルメッキ(無電解ニッケルメ
ッキ)の硬度は、含有される燐含量により異なるが、メ
ッキ後の熱処理によっても異なる。ニッケルメッキの熱
処理による硬度の変化はISO・DIS・4527等に
記載されている。
【0118】本発明に述べる多段エッチングとは、2段
以上、好ましくは3〜10段、更に好ましくは4〜8段
にわたって繰り返しエッチング処理を行うことである。
一段のエッチング処理では本発明が求める艶消し表面を
得るのは困難である。金属層表面を多段エッチング処理
で艶消し状にする場合には、型表面側の金属層のエッチ
ング速度がその内側金属層のエッチング速度の2倍以上
であることが好ましく、更に好ましくは3倍以上、特に
好ましくは5倍以上である。
【0119】金属層が電解ニッケルメッキ、電解銅メッ
キ、化学ニッケルメッキ等の一般のエッチング液でエッ
チングできる金属であれば、一般の金属金型のしぼ化に
使用されているエッチング法と同様のエッチング法が使
用できる。すなわち、金属層表面を紫外線硬化樹脂を用
いて部分的にマスキングし、次いで塩化第2鉄溶液や酸
溶液でエッチング処理される。このマスキングとエッチ
ングを繰り返し行い、表面金属層を艶消し状にする。
【0120】金属層がニッケルメッキの場合、燐含量が
8重量%以上の化学ニッケルメッキはエッチングされ難
く、燐含量がそれより少ない化学ニッケルメッキはエッ
チングされやすい。本発明において、内側の金属層には
耐蝕性に優れた高燐含量ニッケルが好ましく、表面の金
属層には燐含量が8重量%未満で3重量%以上のニッケ
ルが好ましい。電解ニッケルメッキでも組成によりエッ
チング性が異なり、硫黄含有量や燐含有量により異な
る。燐含量が大きいと耐蝕性が良くなる。
【0121】本発明に述べる多段サンドブラスト処理、
及び/又は多段エッチング処理を行うことには、サンド
ブラスト処理とエッチング処理を併用して合計2回以上
の処理を行うことも含まれることとする。この場合でも
合計3回以上の処理を行うことが好ましい。多段エッチ
ング処理と、一段あるいは多段サンドブラスト処理を組
み合わせる方法は最も良好に使用できる。
【0122】この金型で成形されるゴム強化ポリスチレ
ン等の合成樹脂射出成形品の艶消し面は、好ましくは鉛
筆引っかき試験の2B以下の硬度、好ましくはB以下の
硬度で目立つ傷がつかない耐擦傷性を有する良好な微細
凹凸表面を有する。更に好ましくは人の爪に対する耐擦
傷性を有する。鉛筆引っかき試験はJIS・K5401
に準じて測定する。目立つ傷とは肉眼で容易にわかる傷
である。
【0123】断熱層被覆金型や金属層付断熱層被覆金型
を使用して成形した場合、型表面に未だ固化層が形成さ
れていない状態で型壁面の合成樹脂に型表面を再現させ
るに必要な圧力を加えることが可能になる。断熱層被覆
金型や金属層付断熱層被覆金型の型表面が微細凹凸状の
艶消し状であると、固化層が形成されないうちに合成樹
脂は型表面の微細凹凸の凹部の奥まで十分に流れ込み、
型表面が十分に再現される。型表面の微細凹凸の凹部が
鋭角になっていても、それが十分に再現されることにな
る。その結果、通常の断熱層被覆金型や金属層付断熱層
被覆金型で成形された艶消し状成形品は、その表面の微
細凹凸の凸部が鋭角になり、該成形品に人の爪等が接触
すると表面凹凸の鋭角部が損傷して傷となりやすくな
る。
【0124】これに対して上述のような多段エッチング
及び/又は多段サンドブラストを行った金属層付断熱層
被覆金型では、金型の最表面金属層の微細凹凸の凹部を
鈍角でき、微細凹凸の凹部の奥まで合成樹脂が十分に入
り込んでも、傷が付き難い凹凸表面の成形品を得るもの
である。すなわち、金属層表面の微細凹凸の凹部の底が
鈍角になった金型をつくるには、多段エッチング及び/
又は多段サンドブラストを用いて艶消し状にすることが
好ましく、この艶消し状表面有する金型を本発明と組み
合わせることが極めて好ましいものである。
【0125】本発明は、射出成形法あるいはブロー成形
法に良好に適用できる。
【0126】射出成形では、射出される合成樹脂温度、
主金型温度、射出圧力、合成樹脂の型内流動速度等によ
り型表面再現性が異なる。本発明法は、合成樹脂の型内
平均流動速度が20〜300mm/秒である場合に効果
が大きくなり良好に使用できる。更に好ましくは30〜
200mm/秒の低速射出で良好に成形される。型内流
動速度が小さい程、型表面再現性は一般に悪くなり、本
発明は型表面再現性が一般に悪い低速射出成形時に効果
が大きく、特に良好に使用できる。射出圧縮成形やガス
アシスト射出成形等は一般に低速射出成形である。型内
平均速度は一般に型キャビティのゲートから流動端部ま
での樹脂流動距離を合成樹脂の型内流動時間で割ること
により算出でき、本発明においてもこの値を用いる。本
発明は低速射出の場合に効果は大きいが、低速射出成形
に限定するものではなく、一般の高圧射出成形において
も使用できる。
【0127】ブロー成形においても、ブローされる合成
樹脂温度、主金型温度、ブロー圧力、ブローされるパリ
ソンが型表面に接触してから、ブロー圧力が成形品内面
に十分にかかるまでの時間等により型表面再現性が異な
る。本発明では、ブローされるパリソンが型表面に接触
してから、ブロー圧力が成形品内面に十分にかかるまで
の時間が1〜10秒であることが好ましく、更に好まし
くは2〜8秒である。特に本発明では、合成樹脂が型表
面に接触後、5秒間は型表面温度が合成樹脂の軟化温度
以上に保たれるため、5秒以内にブロー圧力がかかれば
十分な型表面再現性が得られる。
【0128】本発明を図面を用いて説明する。
【0129】図1〜図27は、型表面温度の変化等を計
算により算出した結果を示す。型表面温度の変化は、前
記した通り、「ABAQUS」等のソフトを用いて非定
常熱伝導解析で計算できる。
【0130】次に、計算法について更に詳しく述べる。
樹脂製品の肉厚に対してニッケル層(金属層)及びポリ
イミド層(断熱層)の厚みはかなり小さいので、現象を
一次元熱伝導問題と考える。定常状態においては支配方
程式は、次式で示される。
【0131】k(d2T/dx2)=0 ここで、kは物質の熱伝導率、Tは温度、xは位置であ
る。
【0132】また、熱流束はフーリエの法則から次式で
示される。
【0133】q=−k(dT/dx) ここで、qは熱流束である。これらの式から有限要素法
を用い、連立方程式をマトリクス表示すると次式のよう
になる。
【0134】[K]{T}={F} ここで、[K]は熱伝導マトリクス、{T}は全体の節
点温度ベクトル、{F}は熱流束ベクトルである。熱伝
導マトリクス[K]と熱流束ベクトル{F}が既知であ
れば連立方程式を解くことができ、節点温度が求まる。
【0135】実際の計算は、市販されている汎用の構造
解析ソフトを用いて行うことができる。ここでは「AB
AQUS」を用いて計算を行った。この計算では、合成
樹脂と金属層間の境界熱伝達、及び主金型内の熱伝導は
影響が極めて小さいとして無視して計算している。
【0136】本発明の成形時の型表面温度変化のCAE
計算に用いる熱伝導率と比熱の値は、実測値と各種文献
からの値を使用する。すなわち、ポリイミドについては
実施例で断熱層として使用するポリイミドの実測値を用
いる。ポリスチレンについては熱伝導率は、H.Lob
o及びR.Newman著「SPE・ANTEC′9
0,862」に報告されている値を使用し、比熱はJ.
Brandrup,E.H.Immergut編、Jo
hn・Wiley・&・Sons発行の「Polyme
r・Handbook」に記載の値を使用する。ポリオ
キシメチレンについては、橋本壽正著、株式会社ユーテ
ス発行の「高分子の熱拡散率・比熱容量・熱伝導率デー
タハンドブック・1994」に記載の値を使用する。熱
伝導率等は厳密には測定時の温度や圧力等の測定条件に
より異なるが、本発明では温度の影響は考慮するが圧力
の影響は考慮しない。重合体の熱伝導率と測定時の圧力
の関係については、「成形加工」Vol.8(2),9
2(1996)、SPE,ANTEC′90,862
(1990)、「成形加工」′90,139(199
0)等で報告されているが、測定法により異なり、はっ
きりとしていないので、大気圧時の熱伝導率等を使用す
ることとする。密度については、ポリスチレンは884
kg/m3 、ポリオキシメチレンは1420kg/m
3 、ポリイミドは1420kg/m3 をそれぞれ使用す
る。エポキシ樹脂はエポキシ樹脂及びその硬化剤の種類
により性能は大きく異なり、更に一般には無機物等の配
合物を配合して使用される場合が多く、従って単にエポ
キシ樹脂と称した場合の、最も一般的な値の熱伝導率、
比熱、密度の各値を用いることとし、「機械設計便覧」
(第3版、平成4年、丸善株式会社発行)の値をそのま
ま使用することとする。すなわち、エポキシ樹脂の熱伝
導率値は0.3W/m・K、比熱値は1.1J/g・
K、密度は1850kg/m3 を、温度と圧力に関係な
く使用する。セラミックス、ニッケル、鋼鉄についての
各値は、日本化学会編、「化学便覧・基礎編」(丸善株
式会社)から引用する。セラミックスの熱伝導率は2.
1W/(m・K)、比熱は454J/(kg・K)、密
度は5700kg/m3 を使用する。
【0137】更に、本発明の型表面温度変化のCAE計
算には、成形時の樹脂剪断発熱を考慮していない。図3
0はゴム強化ポリスチレンの射出成形時の剪断発熱によ
る樹脂温度上昇をCAE計算し、樹脂断面の温度分布を
示した図である。CAE計算条件は、樹脂が旭化成工業
社製の「ポリスチレン492」、樹脂温度は240℃、
金型温度は50℃、金型は鋼鉄製、金型キャビティは厚
みは2mm、サイドゲートから流動端部までの流動距離
は290mm、金型キャビティの樹脂流動時間が0.4
秒(射出速度725mm/秒)と1.0秒(射出速度2
90mm/秒)である。ゲートからの距離が25mmの
位置と、145mmの位置で、樹脂が金型キャビティを
充填した直後の樹脂断面の温度分布を図30に示す。射
出速度が725mm/秒の高速射出の場合には剪断発熱
量は大きく、樹脂の温度上昇は大きいが、射出速度が低
くなる程発熱量は下がり、射出速度が290mm/秒に
なると発熱は少なくなる。本発明が特に良好に使用でき
る、射出速度が20〜300mm/秒の低速射出の場合
には、剪断発熱の要因は小さくなり、剪断発熱を計算に
入れていない。
【0138】図28と図29に本発明に使用する各樹脂
の熱伝導率(λ)と比熱(Cp)の温度依存性を示し、
本発明に述べるCAE計算にはこれらの図に示す熱伝導
率と比熱の値を使用する。
【0139】図1、図2及び図3には、鋼鉄からなる主
金型の温度を50℃、ゴム強化ポリスチレン(図ではH
IPSで示す。)の温度が240℃で射出成形したとき
の金型表面付近の温度分布の変化の計算値を示してい
る。
【0140】図中の各曲線の数値は加熱された合成樹脂
が冷却された金型表面に接触してからの時間(秒)を示
している。加熱された合成樹脂は型表面に接触して、急
速に冷却される(図1)。主金型の型壁面を断熱層で被
覆すると、型表面は加熱された合成樹脂から熱を受けて
昇温する。図に示すように、型壁面を0.1mmと0.
3mmの断熱層(ポリイミド)で被覆すると(図2及び
図3)、合成樹脂(ゴム強化ポリスチレン)と接触する
断熱層表面の温度上昇は大きくなり、温度低下速度も小
さくなる。
【0141】図4は、鋼鉄製の主金型の型壁面に各種厚
みのポリイミド(図ではPIで示す)を被覆した金型
に、加熱された合成樹脂(ゴム強化ポリスチレン)が接
触した時の型表面温度の経時変化(計算値)を示す。型
壁面に被覆されるポリイミド層が厚くなるに従い、型表
面温度の低下は著しく遅くなる。
【0142】図5は、鋼鉄製の主金型の型壁面に0.2
mm厚のポリイミドを被覆した金型に、各種の樹脂温度
と金型温度で、合成樹脂(ゴム強化ポリスチレン)が接
触した時の型表面温度の経時変化(計算値)を示す。合
成樹脂温度及び金型温度が低くなると型表面温度も低下
する。
【0143】図6は、鋼鉄製の主金型の型壁面に0.2
mm厚のポリイミドを被覆した金型に、各種の成形品厚
みと金型温度で、合成樹脂(ゴム強化ポリスチレン)が
接触した時の型表面温度の経時変化(計算値)を示す。
【0144】図7は、鋼鉄からなる主金型の型壁面にポ
リイミド層を被覆し、その表面にニッケル層(図ではN
iで示す)を被覆した金型と、比較としてポリイミド層
のみが被覆された金型を用い、主金型の温度を50℃に
設定し、該金型でゴム強化ポリスチレン樹脂の温度が2
40℃で射出成形した時の、該樹脂が金型最表面に接触
してからの型表面の温度(これは樹脂表面とニッケル表
面の界面の温度、あるいは樹脂表面とポリイミド表面の
界面の温度である)の経時変化を示す。図7はポリイミ
ド層の厚みを0.3mm、ニッケル層の厚みを0.02
mmにした場合の樹脂表面温度の経時変化であり、図中
で実線はポリイミド層とニッケル層を被覆した場合であ
り、破線はポリイミド層のみを被覆した場合である。ポ
リイミドのみを被覆した場合には、樹脂表面温度は時間
経過とともに低下するのに対して、ポリイミド層とニッ
ケル層を被覆した場合には、一旦温度が大きく低下した
後に再び上昇してから次第に低下する。これは表層のニ
ッケルの熱容量が大きいために、合成樹脂の熱がニッケ
ル層に吸収されて低下するものである。従って、ニッケ
ル層の厚みが大きくなる程、一旦低下する温度幅は大き
くなり、再び上昇する温度も低くなる。合成樹脂の温度
が高いと、最表層の金属層に熱が吸収されてもその熱を
十分に供給できる。合成樹脂温度は型表面再現性に著し
い影響を与える。
【0145】図8は、ポリイミド層の上に被覆するニッ
ケル層の厚みを種々変化させた場合の型表面温度の経時
変化(計算値)を示す。我々は合成樹脂の成形で型表面
再現性を良くするには、積分値(ΔH)及び/又は積分
値(Δh)が一定以上の値である必要があることを発見
した。図8において、ニッケルの厚みが0.05mm
で、合成樹脂の軟化温度が105℃(図中で線1で示
す)の場合、斜線で示す面積2が本発明で示す積分値
(ΔH)になる。軟化温度の線1より10℃下に線を引
いて、該線と型表面温度曲線で囲まれた面積が積分値
(Δh)になる。ニッケル層の厚みが0.1mmになる
と、一旦低下した表面温度が再び上昇する温度は低くな
り、射出成形時の型表面再現性が悪くなることが推定で
きる。ニッケル層の厚みが0.002mmの場合には樹
脂表面温度は一旦低下しても急速に回復し、その温度も
高いために、射出成形時の型表面再現性は良好である。
本発明では、加熱合成樹脂が型表面に接触後、型表面温
度が合成樹脂の軟化温度以上にある間の(型表面温度−
合成樹脂の軟化温度)値の積分値(ΔH)が2秒・℃以
上、及び/又は{型表面温度―(合成樹脂の軟化温度―
10℃)}値の積分値(Δh)が10秒・℃以上の成形
条件で成形することが必要である。
【0146】この積分値は金型の構成によって異なる
が、この他に合成樹脂の種類、成形条件等の要因により
異なる。この積分値はこれらの要因が次の方向へ向かう
時に大きくなる。 ・合成樹脂の軟化温度が低くなる ・断熱層が厚くなる ・金属層が薄くなる ・合成樹脂温度が高くなる ・金型温度が高くなる ・成形品厚みが厚くなる これらの方向に向ければ積分値は大きくなるが、成形さ
れる合成樹脂及び成形後の成形品性能、成形サイクルタ
イム等の観点から選択できる幅は限定されており、その
限定された範囲で積分値の大きい範囲を選択する。
【0147】本発明の積分値はこれらの要因を総合し
て、型表面再現性との関係を示すものである。
【0148】図9〜図26は、鋼鉄製の主金型の型表面
に、断熱層{ポリイミド(図中ではPIで示す。)又は
エポキシ樹脂}厚み、その表面のニッケル層厚みを種々
変化させて被覆し、更に成形品厚み、合成樹脂温度、主
金型温度を種々変化させて成形した場合の、型表面温度
の経時変化を示すグラフと、各場合について、合成樹脂
の軟化温度と、型表面温度が合成樹脂の軟化温度以上に
ある間の(型表面温度−合成樹脂軟化温度)値の積分値
ΔH(秒・℃)(計算値)との関係を示すグラフであ
る。これらの各図では、各合成樹脂の軟化温度の積分値
が本発明に述べる積分値(ΔH)であり、軟化温度より
10℃低い温度の積分値が本発明に述べる積分値(Δ
h)に相当する。個々の条件を表4及び表5にまとめて
示し、図中の番号は表4及び表5の中に示す番号に相当
する。
【0149】
【表4】
【0150】
【表5】
【0151】図9〜図22は断熱層がPI、合成樹脂が
ゴム強化ポリスチレン(以後HIPSと略称)について
の計算値であり、図23〜図24は断熱層がPI、合成
樹脂が結晶化潜熱を有するポリアセタール(POMと略
称する。)についての計算値であり、図25は断熱層が
セラミック(Zr2/Y23)、合成樹脂がHIPSに
ついての計算値であり、図26は断熱層がエポキシ樹
脂、合成樹脂がHIPSについての計算値である。
【0152】これらの図から種々の層構成の金型、種々
の成形条件で成形時の積分値がわかる。すなわち、本発
明に示す積分値の計算にはコンピューターを用いた計算
が必要になるが、図4〜図26に示す各種データから該
積分値の概略の値は容易に読み取れる。
【0153】図では、断熱層としてポリイミド及びエポ
キシ樹脂、金属層としてニッケル層を用いて示したが、
断熱材として他の耐熱性重合体、金属としてニッケル以
外のクロム等の他金属を使用した場合も、図4〜図26
に示すデータから推測できる。
【0154】図18〜図21に合成樹脂の温度を変化さ
せた時の型表面温度の変化と、積分値の変化を示す。合
成樹脂温度を高くすると積分値は著しく大きくなる。す
なわち、断熱層と金属層は合成樹脂より熱を供給されて
昇温し、その昇温する温度と時間が積分値を大きくし、
成形品の型表面再現性を良くする。このことは、断熱層
被覆のない一般の金属金型とは著しく異なることであ
る。すなわち、一般の金属金型では、図1に示すよう
に、合成樹脂が冷却された金型表面に接すると、直ちに
合成樹脂表面層は冷却されて金型温度と同一温度にな
る。合成樹脂温度を高くしても同じであり、合成樹脂温
度を上げる効果はない。一般金型で合成樹脂温度を高く
して成形すると、合成樹脂の粘度が低下して、射出圧力
の伝達が成形品端部にまで伝達される効果で成形品の型
表面再現性を若干良くすることはあるが、本発明に示す
ように型表面温度を一定時間上昇させ、積分値(Δ
H)、積分値(Δh)を増大させることにより、型表面
再現性を著しく良くすることはない。本発明では合成樹
脂温度を高くして成形することは、積分値を著しく増大
させる効果があり、この点が一般金型を使用する場合と
全く異なる。
【0155】本発明では成形条件によりその効果は著し
く異なり、少なくとも合成樹脂の温度と主金型温度を指
定することが必要である。特に樹脂温度の効果は大き
く、本発明ではこの要因を含むパラメーターである積分
値(ΔH)、(Δh)を導入し、公知文献との差異を明
らかにした。
【0156】図25は断熱材として、セラミックスを使
用した場合とエポキシ樹脂を使用した場合について示
す。断熱材としてセラミックが紹介されているが、しか
しセラミックは耐熱性重合体より熱伝導率がかなり大き
く、断熱材としてセラミックスを使用した場合には、図
25に示す様に型表面温度は急速に低下し、積分値は極
めて小さく、本発明ではセラミックスは使用できない。
【0157】図26は、断熱層厚みが0.5mm以上に
なると、本発明の条件の、型表面温度が合成樹脂が型表
面に接触後、5秒以内に合成樹脂温度の軟化温度以下に
低下することを満たし難くなることを示す。
【0158】図27は本発明の成形法の型表面温度の変
化と、引例の公知文献USP5388803の図6に示
されている型表面温度の変化を対比して示す。引例では
合成樹脂が型表面に接触後、約20秒で型表面温度は合
成樹脂のガラス転移温度以下になるが、本発明では5秒
以内にガラス転移温度以下になる。本発明では型表面温
度が、5秒後に合成樹脂の軟化温度以下に低下すること
により、成形サイクルタイムを短くし、経済性に優れた
成形法を提供する。
【0159】図31はゴム強化ポリスチレン(「スタイ
ロン495」旭化成工業社製)を使用して、樹脂温度を
変化させて射出成形法した場合の成形品 光沢度を示
す。本発明で使用する光沢度はJIS・K7105、反
射角度60度で測定する。この光沢度は屈折率1.56
7のガラス表面の鏡面光沢度を100%とした光沢度で
あり、従って合成樹脂成形品の光沢度が100%を超え
ることもある。以後光沢度はこの測定法により測定す
る。断熱層がない一般金型で成形した場合に比較して、
断熱層被覆金型で成形した場合には樹脂温度により成形
品光沢度は大きく変化する。
【0160】図32はゴム強化ポリスチレン(「スタイ
ロン495」旭化成工業社製)を使用した場合の積分値
(△H)と成形品光沢度の関係を示す。射出成形品の光
沢度は、射出成形速度により異なり、射出速度が小さい
程光沢度は低くなる。射出速度が低い程本発明の効果は
顕著に現れ、良好に使用できる。本発明では型キャビテ
ィ内の合成樹脂流動速度が20〜300mm/秒、好ま
しくは30〜200mm/秒で成形される。図32の光
沢度は50mm/秒で射出成形された値である。図32
の射出成形品の例で示す様に、本発明では積分値(Δ
H)が2秒・℃以上になると型表面再現性が良く、成形
品光沢度は良くなり、積分値(ΔH)が5秒・℃になれ
ば更に光沢度は良くなり、積分値(ΔH)が7秒・℃以
上になれば光沢度はほぼ100%に近くなる。
【0161】図33は同様にゴム強化ポリスチレン
(「スタイロン495」旭化成工業社製)を使用して射
出成形した場合の積分値(Δh)と射出成形品の光沢度
の関係を示す。積分値(Δh)が10秒・℃以上になる
と型表面再現性が良く、成形品光沢が良くなり、積分値
(Δh)が12秒・℃以上になれば更に光沢度は良くな
り、積分値(Δh)が15秒・℃以上になれば光沢度は
ほぼ100%に近くなる。
【0162】本発明は、図に示すゴム強化ポリスチレン
では光沢度が80%以上、好ましくは90%以上、更に
好ましくは95%以上の高光沢度成形品を得ることを一
つの目的にしている。成形品への塗装を無くし、外観が
要求される用途に使用するにはこの程度の外観が要求さ
れる。勿論、積分値(ΔH)が2秒・℃未満、あるいは
積分値(Δh)が10秒・℃以上でなくてもそれ相応に
光沢度は改善されるが、高光沢度成形品で、且つ、ウエ
ルドラインの目立ちが極めて小さい成形品を得るには積
分値(ΔH)が2秒・℃以上、及び/又は積分値(Δ
h)が10秒・℃以上が必要である。我々は成形品光沢
度を本発明に示す積分値(ΔH)及び/又は積分値(Δ
h)で整理できることを発見し本発明に至った。断熱層
厚みを厚くして行けば良好な外観の成形品が得られる
が、しかし、断熱層厚みを厚くすることは成形サイクル
タイムを長くし、成形効率の面から不適である。本発明
では外観改良と成形サイクルタイムを両立させることも
目的の一つである。
【0163】図34は断熱層を被覆していない通常の金
属金型を使用し、型キャビティを構成する型表面を鏡面
状にして、ゴム強化ポリスチレン(「スタイロン49
5」旭化成工業社製、ビカット軟化温度 105℃)を
射出成形した場合の、金型温度と成形品の光沢度の関係
を示す。成形時の型表面再現性は成形品の光沢度でわか
る。型表面再現性、すなわち成形品光沢度は合成樹脂の
射出速度(合成樹脂の型内流動速度)により異なるが、
金型温度が(合成樹脂軟化温度−10℃)になると、射
出速度に関係なくほぼ一定になる。金型温度が高くなれ
ば、それ相応に成形品の光沢度は良くなるが、光沢度を
100%近くにまでもって行くには、金型温度を成形す
る合成樹脂の軟化温度近くまで上げる必要がある。しか
し、図34でわかる様に、合成樹脂軟化温度の105℃
から10℃減じた温度の95℃まで金型温度を上げれ
ば、成形品光沢度はかなり良くなり、クラスA表面と言
える光沢度95%近くまでになる。積分値(ΔH)が小
さくても、積分値(Δh)が著しく大きければ、同様に
型表面再現性は良くなる。{積分値(Δh)/積分値
(ΔH)}比は断熱層が厚くなると大きくなる傾向にあ
る。従って、積分値(ΔH)と積分値(Δh)の両方で
型表面再現性を整理することが、現実の結果を良好に整
理できることを発見した。我々がこの2種の積分値をパ
ラメーターに選定している理由はこのことにある。ここ
に述べる光沢度の数値はあくまでも相対的なものであ
り、元来外観が極めて悪い合成樹脂、あるいは元来外観
が良くならない合成樹脂では、高光沢度の数値も相対的
に低く、従来の一般金型を使用した成形品と比較して顕
著に外観が改良されていれば、本発明に述べる高光沢度
成形品である。
【0164】図35は本発明に述べる金型の断熱層と金
属層の界面が微細凹凸状になって密着している状態を示
す。断熱層と金属層の密着力も大きいことが好ましく、
断熱層と金属層がその界面で交互に入り合ってアンカー
効果により密着力が増大していることが好ましい。好ま
しい微細凹凸度は基準長さ80μmで金属層と断熱層の
界面の凹凸の高い方から5番目までの山頂の標高の平均
と深い方から5番目までの谷底の標高の平均との差が
0.5〜10μmである。ここに述べる凹凸は交互に複
雑に入り合ってアンカー効果が働く形状であって単純な
凹凸ではないので、標高は各凹凸の最も深く入り込んで
いる位置を選択することとする。
【0165】図36、図37は本発明の成形法がレンチ
キュラーレンズやフレネルレンズ等を成形するに適して
いることを示す。図36は従来のフレネルレンズ金型
で、通常の成形条件で射出成形した状態を示す。図36
に於いて、金属金型3の型表面には凸の角部5と凹の角
部6があり、射出された合成樹脂4は一般に凹の角部6
の隅7に十分に入り込めず、角部が十分に再現されたレ
ンズは得られない。
【0166】図37は本発明法で成形するフレネルレン
ズ金型を示す。図37に於いて、主金型8の型壁面に断
熱層9があり、更にその表面にフレネルレンズ状の金属
層10がある。一般のフレネルレンズ金型で型表面再現
性が特に悪いのは、図に示す様に、凹の角部6であり、
断熱層9の効果は凹の角部6の型表面再現性を良くする
ことにある。従って、本発明に於いて、フレネルレンズ
やレンチキュラーレンズを成形する金型では、金属層の
厚みとして薄肉部の厚み12を用いる。該金属層厚み1
2は断熱層厚み11の1/3以下、好ましくは1/5以
下で、0.001〜0.1mmであり、且つ該金属層は
断熱層に密着している必要がある。
【0167】本発明は、金属層表面あるいは金属層表面
の一部が、多段サンドブラスト処理及び/又は多段エッ
チング処理により形成された艶消し状表面を有する金型
を用いて成形する、耐傷つき性に優れた微細凹凸状艶消
し状表面をもつ成形品の成形法である。
【0168】図38は本発明の成形法でつくられた耐傷
つき性に優れた艶消し状成形品(38−1)と、従来法
で成形された傷つきやすい艶消し状成形品(38−2)
の断面を示す。(38−1)に示す本発明法で成形され
る成形品は、合成樹脂成形品13の微細凹凸表面の凹部
の先15は鋭角であるが、凸部の先14は丸くなってお
り(鈍角となっており)、傷がつきにくくなっている。
これに対し、(38−2)で示す従来の成形品は凹凸の
凸部の先16も凹部の先15も共に鋭角であり、人の爪
等で成形品表面をこすった場合に凸部の先16は容易に
削りとられ、傷がつきやすい。本発明による成形品は凸
部の先が鋭角になっている割合が少なく、従って人の爪
等で傷がつき難くなっている。
【0169】図39に示す射出成形品の例について説明
する。図39に於いて、ゲート17から射出された合成
樹脂は、穴部18をまわって流動し、ウエルド部で合体
し、ウエルドライン19を形成する。図39に於いて、
型表面に断熱層と更にその表面に微細凹凸表面を有する
金属層を被覆した金型で射出成形すると、成形品表面に
は金属層の微細凹凸表面が転写される。しかし、一般に
艶消し化に使用されるサンドブラスト法で微細凹凸化し
た断熱層被覆金型で射出成形すると、成形品8のウエル
ド部から樹脂流動端部にかけての領域(以後、図面を使
用した説明ではウエルド部21と略称する)の微細凹凸
度は大きくなり、黒着色樹脂で成形すると、ウエルド部
21は黒っぽくなり、一般部22は白っぽくなり、本発
明に述べる均一な光沢度の成形品にはなり難い。この原
因は次の様に推定している。その原因を図40と図41
で説明する。
【0170】図39に示す成形品の射出成形で、ウエル
ド部21と一般部22の型壁面にかかる圧力をモデル的
に図40に示す。図40に於いて、成形品の一般部22
にかかる圧力は曲線23となり、ウエルド部21にかか
る圧力は曲線24となる。曲線25はゲート部にかかる
圧力である。すなわち、一般部22にかかる圧力は射出
時間の経過に応じて徐々に上昇するのに対し、ウエルド
部21にかかる圧力は合成樹脂が型表面に接触すると同
時に高圧力がかかる。図8に示す様に、加熱された合成
樹脂が断熱層の型表面に接して断熱層被覆表面を加熱
し、そして直ちに冷却が始まる。図8のNiが0.05
mm被覆された金型では型表面は1.5秒後には105
℃以下に低下する。型表面をより良く再現するには加熱
された合成樹脂が型表面に接すると同時に樹脂に高圧力
がかかること、すなわち、型表面と合成樹脂の表層部が
高温である間に樹脂に高圧力がかかることが好ましい。
図40に示す様に、ウエルド部は合成樹脂が型表面に接
すると同時に樹脂に高圧力がかかり、型表面の微細凹凸
がより正確に再現される。
【0171】図41でこの経過をモデル的に説明する。
41−1において、型表面は、断熱層26の表面に設け
られた、微細凹凸形状の金属層27よりなる。表面の微
細凹凸には鋭角の凹部28がある。この金型で射出成形
を行うと成形品の一般部では合成樹脂29が型壁面に接
触してから徐々に樹脂圧力が上昇するため、圧力上昇中
に型壁面と樹脂の表層部が冷却し、型壁面の微細凹凸の
奥まで入り込めず、充填されない部分30が発生する
(41−2)。これに対して、成形品のウエルド部では
合成樹脂29が型壁面に接触すると同時に樹脂圧力が上
昇するため、合成樹脂は型の微細凹凸の奥まで入り込め
る(41−3)。この結果、ウエルド部21では一般部
22に比較して成形品の表面凹凸度がより大きくなり、
黒着色合成樹脂ではウエルド部が黒っぽくなり、均一な
艶消し状態にならない。
【0172】この様な現象は断熱層被覆金型や金属層付
断熱層被覆金型で艶消し状成形品を射出成形した場合に
顕著に現れる。本発明はこの不良現象を改良した成形品
の成形法をも提供する。成形品のウエルド部と一般部の
表面凹凸を均一にするためには、断熱層表面の微細凹凸
を適度な凹凸形状にする必要がある。本発明を図39に
示す単純な形状の成形品で説明したが、弱電機器のハウ
ジング等は多点ゲートで成形される複雑な形状をしてお
り、この様な複雑な形状の成形品では一般部とウエルド
部の艶消し度の差の他に、ウエルドラインをはさんで左
右で艶消し度に差が生ずる場合が多い。ウエルドライン
をはさんで左右に差が生ずるのは、左右の樹脂の流動速
度に差がある場合である。流動速度が速い側の樹脂は型
壁面に接触してから速く樹脂圧力がかかり、遅い側の樹
脂は型壁面に接触してから遅く樹脂圧力がかかり、左右
で型表面再現性に差が生じやすい。本発明はこの様な場
合に特に有効である。
【0173】図42、図43、図44及び図45に本発
明法に使用する金型の製法の好ましい例を示す。図42
に於いて、金属からなる主金型32の表面には0.05
〜2.0mm厚みの断熱層26があり、その上に密着力
を強くするための薄肉金属層が付けられ、更にその表面
に2層の金属層33、34が被覆されている。この断熱
層と金属層の密着力を強くするための薄肉金属層は金属
層33、34に比較して大幅に薄肉であるため、図42
〜45では省略している。金属層33、34を含めた全
金属層の厚みの合計は断熱層26の厚みの1/3以下
で、且つ0.01〜0.5mmである。断熱層と金属層
の密着力を強くするための薄肉金属層の上に付けられる
金属層は2層からなり、表面金属層34の厚みは全金属
層の厚みの1/2以上であることが好ましく、更に好ま
しくは2/3以上である。内側の金属層33の好ましい
厚みは0.002〜0.1mmであり、更に好ましくは
0.003〜0,05mmである。表面側の金属層22
のエッチング速度はその内側の金属層33の2倍以上、
好ましくは3倍以上、更に好ましくは5倍以上である。
この金型をエッチング処理して、主に表面側の金属層2
を選択的にエッチング処理することにより(42−2)
に示すような金型を得る。
【0174】図43と図44にエッチング処理により、
金型の表面側の金属層を本発明が求める艶消し状にする
方法を更に詳しく示す。図43に於いて、金属からなる
主金型32の型キャビティを構成する型壁面を断熱層2
6で被覆する(43−1)。次いで、該断熱層26の表
面に薄肉金属層(図では省略している。)、2層の金属
層35、36を被覆する(43−2)。金属層は表面金
属層36のエッチング速度が内側金属層35エッチング
速度の2倍以上であることが好ましく、更に好ましく3
倍以上、最も好ましくは5倍以上である。該金属層36
の表面に感光性樹脂37を被覆する(43−3)。次い
で、マスクシート38でマスキングを行い。紫外線照射
を行い、照射された部分の感光性樹脂を硬化する(43
−4)。次いで、硬化されなかった部分の感光性樹脂を
洗浄して取り去り、パターン状の硬化樹脂39を残す
(43−5)。次いで、エッチング処理で硬化樹脂39
が被覆していない部分の金属層を溶解し、凹凸状表面の
金属層36を有する型表面とする(43−6)。更に感
光性樹脂の被覆(43−3)からエッチング(43−
6)まで繰り返し行う。
【0175】多段エッチングの2段め以降のエッチング
工程を図44に示す。図44において、第1段めのエッ
チングで凹凸化された表面金属層26(44−1)に感
光性樹脂37を被覆し(44−2)、その表面にパター
ンマスキングをして露光、現像、洗浄をした後(44−
3)、エッチングをして更なる凹凸化を行い(44−
4)、更に(44−2)から(44−4)の工程を繰り
返して本発明が求める金型(44−5)を得る。エッチ
ングは耐エッチング性に優れた内側金属層35にぶつか
ってそこでエッチング速度は遅くなり、金属層の凹部の
底は丸くなり、鋭角の凹部は形成されない。(44−
5)に示す金型を用いて射出成形することにより、図
(38−1)に示す本発明が求める耐傷つき性に優れた
成形品が得られる。
【0176】図43と図44では感光性樹脂を型表面全
面に塗布し、マスキングフィルムでカバーして露光する
方法を示したが、図45は更に優れた方法を示す。図4
5において、感光性樹脂を金属層表面に振りかけるよう
に間隔をあけて細かく塗布し、それを紫外線照射して硬
化し(45−1)、次いでエッチング処理により表面金
属層36を凹凸化する(45−2)。この感光性樹脂の
振りかけ塗布、紫外線照射(45−3)と、エッチング
処理(45−4)を繰り返し、更にこの工程を数回繰り
返して本発明が求める艶消し状表面金型を得る(45−
5)。本発明では感光性樹脂塗布からエッチングまでの
工程を好ましくは3〜10回、更に好ましくは4〜8回
繰り返して、好ましい形状の微細凹凸表面とする。本発
明の多段エッチング処理で得られた微細凹凸状の艶消し
表面金型表面に、更に該微細凹凸形状を大幅に変化させ
ない程度の薄肉の耐蝕性金属層つけることは、射出成形
中の耐久性向上に有効であり、本発明に含まれる。
【0177】
【実施例】次の主金型、断熱層、金属層及び合成樹脂を
使用する。
【0178】主金型:鋼鉄(S55C)製の射出成形用
の金型である。該金型の熱膨張係数は1.1×10-5
℃である。図39に示す成形品20の型キャビティを有
する。成形品サイズは100mm×100mmで厚みは
2mmであり、中央に30mm×30mmの穴4が開い
ている。ゲート17は、図39に示す様に、サイドゲー
トであり、成形品20にはウエルドライン19が発生す
る。型壁面は鏡面状である。この主金型の型キャビティ
を形成する入れ子を19個用意し、各入れ子の型キャビ
ティを形成する表面には硬質クロムメッキを行う。
【0179】断熱層A:主金型の入れ子表面をプライマ
ー処理する。プライマーとしてはCO基含量が多いポリ
イミド前駆体溶液を薄層に塗布し、加熱してポリイミド
薄層を形成してプライマーとする。その上に、ポリイミ
ドワニス(「トレニース#3000」東レ社製)を塗布
し、160℃で加熱し、次いでこの塗布、加熱を繰り返
して所定の厚みにし、次いで290℃に加熱して100
%イミド化し、所定厚みのポリイミド層を形成する。ポ
リイミド層の主金型への密着力は1kg/10mmであ
る。
【0180】断熱層B:主金型の入れ子表面をプライマ
ー処理する。プライマーとしてはCO基含量が多いポリ
イミド前駆体溶液を薄層に塗布し、加熱してポリイミド
薄層を形成してプライマーとする。その上に、ポリイミ
ドワニス(「トレニース#3000」東レ社製)を塗布
し、160℃で加熱し、次いでこの塗布、加熱を繰り返
して所定の厚みにし、最後に平均粒径が0.1μmの酸
化チタン微粉末を固形分比で20重量%配合して十分に
混練した配合ポリイミドワニスの薄層を断熱層の最表面
に塗布して被覆し、次いで290℃に加熱して100%
イミド化し、最表面10μm厚の配合ポリイミド層を有
する所定厚みのポリイミド層を形成する。ポリイミド層
の主金型への密着力は1kg/10mmである。
【0181】金属層A:断熱層表面をクロム酸を含む強
酸溶液でエッチング処理を行い、次いで、中和→感受性
化処理→活性化処理の順に処理し、次いで次亜燐酸ソー
ダを還元剤とし、35℃の低温、弱アルカリ状態、低速
度で化学ニッケルメッキを行うことによって得られる、
燐含量が3〜4重量%の化学ニッケルメッキ層。
【0182】金属層B:次亜燐酸ソーダを還元剤とし、
60℃、酸性状態で化学ニッケルメッキを行うことによ
って得られる、燐含量が6〜7重量%の化学ニッケルメ
ッキ層。
【0183】金属層C:硫黄含有量が0.005重量%
の電解ニッケルメッキ層。
【0184】上記の各ニッケルメッキ層の熱膨張係数
は、いずれもほぼ1.3×10-5/℃である。
【0185】金属層D:硬質クロムメッキ層。このメッ
キの表面硬度はHV1000である。
【0186】射出成形する合成樹脂: (a):ゴム強化ポリスチレン(「スタイロン495」
旭化成工業社製)、ガラス転移温度は105℃。
【0187】(b):ガラス繊維30重量%配合スチレ
ン−アクリロニトリル共重合体樹脂(「スタイラック−
ASGF・R160T」旭化成工業社製)。ベース樹脂
のビカット軟化温度は110℃。合成樹脂中のガラス繊
維はE−ガラスであり、その硬度はHV640である。
【0188】(c):スチレン−アクリロニトリル共重
合体樹脂(「スタイラック−AS・767」旭化成工業
社製)。ビカット軟化温度 110℃。
【0189】射出成形条件:表6に示す。金型内の樹脂
流動速度は指定のない時は50mm/sec.である。
【0190】光沢度の測定法:JIS・K7105、反
射角度60°。
【0191】実施例1〜7及び比較例1〜7 断熱層Bを被覆した主金型の断熱層表面に、0.000
5mm厚の金属層Aを被覆し、その表面に金属層Cを被
覆し、その表面を研磨して鏡面状とし、表6に示すポリ
イミド(PI)とニッケル(Ni)の各厚みを有する金
属層付断熱層被覆金型を用意した。金属層と断熱層の密
着力、及び断熱層と主金型の密着力はいずれも0.5k
g/10mm以上であった。この金型を用いて表6に示
す各成形条件で合成樹脂(a)の射出成形を行った。各
成形条件の積分値と成形品の光沢度を表6に示す。
【0192】実施例1〜7の積分値(ΔH)は2秒・℃
以上、及び/又は積分値(Δh)は10秒・℃以上であ
った。更に型表面に接触して5秒後の型表面温度は、い
ずれの実施例においても(合成樹脂の軟化温度―20
℃)以下に低下していた。実施例1〜7の各成形品光沢
度は高く、ウエルドラインの目立ちもなく、外観に優れ
た成形品であり、クラスA表面といえる外観であった。
実施例3の金型で1万回の射出成形を行っても断熱層や
金属層の剥離は発生しなかった。実施例3の断熱層と金
属層の接着界面の断面図を図35に示す。金属層と断面
層は微細凹凸界面で密着しており、アンカー効果が働い
ていることが分かる。
【0193】
【表6】
【0194】実施例8 実施例7に示す金型の最表面金属層Cを、エッチング加
工により、凹部の深さ0.02mmの革しぼ状のパター
ンしぼにした。この金属層表面はパターンしぼの凸部が
鏡面であり、凹部が艶消し面である。この金型を用いて
実施例7と同様に射出成形を行ない、ウエルドラインの
目立ちが少ない、外観に優れたパターンしぼ状表面の成
形品が得られた。この革しぼ状の金属層表面の凸部の積
分値(ΔH)は実施例7と同じく7.2秒・℃、積分値
(Δh)は17秒・℃であった。合成樹脂が型表面に接
触して5秒後の型表面温度は、(合成樹脂の軟化温度−
20℃)以下に低下していた。
【0195】実施例9 0.3mmの断熱層Bを被覆した主金型の断熱層表面
に、0.5μm厚の金属層Aを被覆し、その表面に10
μmの金属層Bを被覆し、表面研磨して鏡面状にした
後、更に10μmの金属層Dを被覆した金属層付断熱層
被覆金型を用いた。金属層と断熱層の密着力、及び断熱
層と主金型の密着力はいずれも0.5kg/10mm以
上であった。合成樹脂(b)を樹脂温度240℃、主金
型温度50℃で射出成形を行った。加熱合成樹脂が型表
面に接触後、型表面温度が合成樹脂の軟化温度以上にあ
る間の(表面温度−合成樹脂の軟化温度)値の積分値
(△H)は5秒・℃以上であった。型表面は合成樹脂の
1000回の射出成形で傷がつくことはなく、成形品の
型表面再現性も良好で、高光沢でウエルドラインの目立
ちが少ない成形品が得られた。合成樹脂が型表面に接触
して5秒後の型表面温度は、(合成樹脂の軟化温度−2
0℃)以下に低下していた。
【0196】比較例8 主金型に0.3mmの断熱層Aを被覆し、表面研磨して
鏡面状にした断熱層被覆金型を用いた。合成樹脂
(c)、(b)の順序で射出成形した。成形は樹脂温度
240℃、主金型温度50℃で行った。合成樹脂(c)
の1000回の射出成形では断熱層表面に傷はつかない
が、合成樹脂(b)の射出成形では、断熱層表面は10
0回の成形で、光沢度が20%以下になる程の傷がつい
た。
【0197】実施例10 0.2mmの断熱層Bを被覆した主金型の断熱層表面
に、0.0005mm厚の金属層Aを被覆し、その表面
に0.01mmの金属層Bを被覆し、その表面に0.0
3mmの厚みの金属層Cを被覆した。この金型を用いて
図45に示す6段の多段エッチング処理で艶消し状表面
の金型を得た。得られた金型で合成樹脂(a)の射出成
形を行った。射出成形は樹脂温度240℃、金型温度4
0℃で行った。射出成形品のウエルドラインの目立ちは
無く、一般部とウエルド部は均一な艶消し面であり、そ
の光沢度は20%以下であり、鉛筆引っ掻き試験の2B
硬度で目立つ傷はつかなかった。射出成形品の表面の凹
凸形状を図46に示す。凹凸形状は東京精密社製の表面
粗さ形状測定器「サーフコム570A」で測定した。射
出成形品表面の凹凸形状は表面に飛び出している鋭角凸
部が少なく、傷つき難い表面形状であった。
【0198】
【発明の効果】本発明の成形法によって合成樹脂の射出
成形やブロー成形を行うことにより、外観良好な成形品
を得ることができる。従来ウェルドラインが多数発生
し、塗装等の後加工を必要としてきた弱電機器や事務機
器のハウジング等の各種射出成形品を、本発明成形法に
て成形することにより型表面再現性を良くし、ウエルド
ラインの目立ちを少なくし、塗装等の後加工を省略する
ことができ、経済的に有効である。塗装を省略すること
により、合成樹脂のリサイクルが容易になり、塗装時に
大気中に飛散する有機溶剤がなくなり、環境保全に貢献
できる。
【0199】また、結晶性合成樹脂を本発明の成形法で
成形することにより、成形品表面の直近まで結晶化した
成形品を経済的に得ることができる。表面近くまで結晶
化した成形品は表面硬度、耐摩耗性、メッキ性等に優れ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】鋼鉄製の主金型に、加熱された合成樹脂が接触
した時の型表面付近の合成樹脂の温度分布変化(計算
値)を示すグラフ図である。
【図2】鋼鉄製の主金型の型壁面に0.1mmのポリイ
ミドを被覆した金型に、加熱された合成樹脂が接触した
時の型表面付近の合成樹脂及び耐熱性樹脂の温度分布変
化(計算値)を示すグラフ図である。
【図3】鋼鉄製の主金型の型壁面に0.5mmのポリイ
ミドを被覆した金型に、加熱された合成樹脂が接触した
時の型表面付近の合成樹脂及び耐熱性樹脂の温度分布変
化(計算値)を示すグラフ図である。
【図4】鋼鉄製の主金型の型壁面に各種厚みのポリイミ
ドを被覆した金型に、加熱された合成樹脂が接触した時
の型表面温度の経時変化(計算値)を示すグラフ図であ
る。
【図5】鋼鉄製の主金型の型壁面に0.2mm厚のポリ
イミドを被覆した金型に、各種の樹脂温度と金型温度で
合成樹脂が接触した時の型表面温度の経時変化(計算
値)を示すグラフ図である。
【図6】鋼鉄製の主金型の型壁面に0.2mm厚のポリ
イミドを被覆した金型に、各種の成形品厚みと金型温度
で合成樹脂が接触した時の型表面温度の経時変化(計算
値)を示すグラフ図である。
【図7】鋼鉄製の主金型の型壁面に0.3mmのポリイ
ミドを被覆し、更にその表面に0.02mmのニッケル
を被覆した金型に、加熱された合成樹脂が接触した時の
型表面(樹脂表面と金型表面の界面)の温度変化(計算
値)を示すグラフ図である。
【図8】鋼鉄製の主金型の型壁面に0.3mmのポリイ
ミドを被覆し、更にその表面に厚みを種々変化させたニ
ッケル層を被覆した金型に、加熱された合成樹脂が接触
した時の型表面(樹脂表面と金型表面の界面)温度の経
時変化(計算値)を示すグラフ図である。
【図9】合成樹脂温度240℃、主金型温度50℃、ニ
ッケル層厚み0.03mmで、ポリイミド層厚みを0.
1mm、0.2mm、0.3mm、0.5mmに変化さ
せて、HIPSで厚み2mmの成形品を成形した場合
の、型表面温度の経時変化を示すグラフ図と、合成樹脂
の軟化温度と型表面温度が合成樹脂の軟化温度以上にあ
る間の(型表面温度−合成樹脂軟化温度)値の積分値
(計算値)との関係を示すグラフ図である。
【図10】合成樹脂温度240℃と270℃、主金型温
度30℃、ニッケル層厚み0.05mmで、ポリイミド
層厚みを0.1mm、0.2mmに変化させて、HIP
Sで厚み2mmの成形品を成形した場合の、型表面温度
の経時変化を示すグラフ図と、合成樹脂の軟化温度と型
表面温度が合成樹脂の軟化温度以上にある間の(型表面
温度−合成樹脂軟化温度)値の積分値(計算値)との関
係を示すグラフ図である。
【図11】合成樹脂温度240℃、主金型温度70℃、
ニッケル層厚み0.03mmで、ポリイミド層厚みを
0.1mm、0.2mmに変化させて、HIPSで厚み
2mmの成形品を成形した場合の、型表面温度の経時変
化を示すグラフ図と、合成樹脂の軟化温度と型表面温度
が合成樹脂の軟化温度以上にある間の(型表面温度−合
成樹脂軟化温度)値の積分値(計算値)との関係を示す
グラフ図である。
【図12】合成樹脂温度240℃、主金型温度50℃、
ニッケル層厚み0.01mm、0.02mmで、ポリイ
ミド層厚みを0.2mm、0.3mmに変化させて、H
IPSで厚み2mmの成形品を成形した場合の、型表面
温度の経時変化を示すグラフ図と、合成樹脂の軟化温度
と型表面温度が合成樹脂の軟化温度以上にある間の(型
表面温度−合成樹脂軟化温度)値の積分値(計算値)と
の関係を示すグラフ図である。
【図13】合成樹脂温度240℃、主金型温度50℃、
ポリイミド層厚み0.3mmで、ニッケル層厚みを0.
01mm、0.02mm、0.03mm、0.05m
m、0.1mmに変化させて、HIPSで厚み2mmの
成形品を成形した場合の、型表面温度の経時変化を示す
グラフ図と、合成樹脂の軟化温度と型表面温度が合成樹
脂の軟化温度以上にある間の(型表面温度−合成樹脂軟
化温度)値の積分値(計算値)との関係を示すグラフ図
である。
【図14】合成樹脂温度240℃、主金型温度50℃、
ポリイミド層厚み0.2mmで、ニッケル層厚みを0.
02mm、0.03mm、0.05mに変化させて、H
IPSで厚み2mmの成形品を成形した場合の、型表面
温度の経時変化を示すグラフ図と、合成樹脂の軟化温度
と型表面温度が合成樹脂の軟化温度以上にある間の(型
表面温度−合成樹脂軟化温度)値の積分値(計算値)と
の関係を示すグラフ図である。
【図15】合成樹脂温度240℃、主金型温度30℃、
ポリイミド層厚み0.2mmで、ニッケル層厚みを0.
01mm、0.02mm、0.03mmに変化させて、
HIPSで厚み2mmの成形品を成形した場合の、型表
面温度の経時変化を示すグラフ図と、合成樹脂の軟化温
度と型表面温度が合成樹脂の軟化温度以上にある間の
(型表面温度−合成樹脂軟化温度)値の積分値(計算
値)との関係を示すグラフ図である。
【図16】合成樹脂温度240℃、ニッケル層厚み0.
01mmで、ポリイミド層厚み0.1mmで、主金型温
度を30℃、40℃、50℃と変化させて、HIPSで
厚み2mmの成形品を成形した場合の、型表面温度の経
時変化を示すグラフ図と、合成樹脂の軟化温度と型表面
温度が合成樹脂の軟化温度以上にある間の(型表面温度
−合成樹脂軟化温度)値の積分値(計算値)との関係を
示すグラフ図である。
【図17】合成樹脂温度240℃、ニッケル層厚み0.
02mmで、ポリイミド層厚み0.1mm、主金型温度
を30℃、40℃、50℃、70℃に変化させて、HI
PSで厚み2mmの成形品を成形した場合の、型表面温
度の経時変化を示すグラフ図と、合成樹脂の軟化温度と
型表面温度が合成樹脂の軟化温度以上にある間の(型表
面温度−合成樹脂軟化温度)値の積分値(計算値)との
関係を示すグラフ図である。
【図18】主金型温度30℃、ニッケル層厚み0.01
mm、ポリイミド層厚み0.1mmで、合成樹脂温度を
210℃、240℃、270℃に変化させて、HIPS
で厚み2mmの成形品を成形した場合の、型表面温度の
経時変化を示すグラフ図と、合成樹脂の軟化温度と型表
面温度が合成樹脂の軟化温度以上にある間の(型表面温
度−合成樹脂軟化温度)値の積分値(計算値)との関係
を示すグラフ図である。
【図19】主金型温度30℃、ポリイミド層厚み0.1
mm、ニッケル層厚み0.02mmで、合成樹脂温度を
210℃、240℃、270℃に変化させて、HIPS
で厚み2mmの成形品を成形した場合の、型表面温度の
経時変化を示すグラフ図と、合成樹脂の軟化温度と型表
面温度が合成樹脂の軟化温度以上にある間の(型表面温
度−合成樹脂軟化温度)値の積分値(計算値)との関係
を示すグラフ図である。
【図20】主金型温度:30℃、ポリイミド層厚み0.
2mm、ニッケル層厚み0.01mmで、合成樹脂温度
を210℃、240℃、270℃に変化させて、HIP
Sで厚み2mmの成形品を成形した場合の、型表面温度
の経時変化を示すグラフ図と、合成樹脂の軟化温度と型
表面温度が合成樹脂の軟化温度以上にある間の(型表面
温度−合成樹脂軟化温度)値の積分値(計算値)との関
係を示すグラフ図である。
【図21】主金型温度30℃、ポリイミド層厚み0.2
mmで、ニッケル層厚み0.02mmで、合成樹脂温度
を210℃、240℃、270℃に変化させて、HIP
Sで厚み2mmの成形品を成形した場合の、型表面温度
の経時変化を示すグラフ図と、合成樹脂の軟化温度と型
表面温度が合成樹脂の軟化温度以上にある間の(型表面
温度−合成樹脂軟化温度)値の積分値(計算値)との関
係を示すグラフ図である。
【図22】合成樹脂温度240℃、主金型温度50℃、
ポリイミド層厚み0.2mm、ニッケル層厚み0.02
mmで、成形品厚みを3mm、4mm、5mmに変化さ
せて、HIPSで成形品を成形した場合の、型表面温度
の経時変化を示すグラフ図と、合成樹脂の軟化温度と型
表面温度が合成樹脂の軟化温度以上にある間の(型表面
温度−合成樹脂軟化温度)値の積分値(計算値)との関
係を示すグラフ図である。
【図23】合成樹脂温度200℃、主金型温度60℃、
ポリイミド層厚み0.2mmで、ニッケル層厚みを0.
01mm、0.02mm、0.04mmに変化させて、
HIPSで厚み2mmの成形品を成形した場合の、型表
面温度の経時変化を示すグラフ図と、合成樹脂の軟化温
度と型表面温度が合成樹脂の軟化温度以上にある間の
(型表面温度−合成樹脂軟化温度)値の積分値(計算
値)との関係を示すグラフ図である。
【図24】合成樹脂温度200℃、主金型温度60℃、
ニッケル層厚み0.02mmで、ポリイミド厚みを0.
2mm、0.3mm、0.4mmに変化させて、POM
で厚み2mmの成形品を成形した場合の、型表面温度の
経時変化を示すグラフ図と、合成樹脂の軟化温度と型表
面温度が合成樹脂の軟化温度以上にある間の(型表面温
度−合成樹脂軟化温度)値の積分値(計算値)との関係
を示すグラフ図である。
【図25】エポキシ樹脂の断熱層、断熱層厚み0.3m
m、金属層厚み0.03mm、合成樹脂温度200℃、
主金型温度40℃として、HIPSで厚み3mmの成形
品を成形した場合と、セラミックス(Zr2/Y23
の断熱層、断熱層厚み0.3mm、金属層は無し、合成
樹脂温度240℃で、主金型温度を35℃、50℃に変
化させて、HIPSで厚み2mmの成形品を成形した場
合の、型表面温度の経時変化を示すグラフ図と、合成樹
脂の軟化温度と型表面温度が合成樹脂の軟化温度以上に
ある間の(型表面温度−合成樹脂軟化温度)値の積分値
(計算値)との関係を示すグラフ図である。
【図26】ポリイミド厚み0.5mm、ニッケル厚み
0.03mm、合成樹脂温度240℃と270℃、主金
型温度:50℃と70℃として、HIPSで厚み2mm
の成形品を成形した場合の、型表面温度の経時変化を示
すグラフ図と、合成樹脂の軟化温度と型表面温度が合成
樹脂の軟化温度以上にある間の(型表面温度−合成樹脂
軟化温度)値の積分値(計算値)との関係を示すグラフ
図である。
【図27】USP5388803の図6に示されている
型表面温度の変化と、本発明の型表面温度変化を対比し
て示す図である。
【図28】本発明に示す各図の型表面温度変化を計算す
るに用いた、樹脂の熱伝導率の温度変化を示すグラフ図
である。
【図29】本発明に示す各図の型表面温度変化を計算す
るに用いた、樹脂の比熱の温度変化を示すグラフ図であ
る。
【図30】射出成形時の金型内剪断発熱を示すグラフ図
である。
【図31】断熱層のない一般金型と金属層付断熱層被覆
金型を使用した場合の、HIPSの射出成形品の光沢度
の樹脂温度による変化を示すグラフ図である。
【図32】金属層付断熱層被覆金型によるHIPSの射
出成形品の光沢度と型表面温度が合成樹脂の軟化温度以
上にある間の(型表面温度−合成樹脂軟化温度)値の積
分値(ΔH)との関係を示すグラフ図である。
【図33】金属層付断熱層被覆金型によるHIPSの射
出成形品の光沢度と、型表面温度が(合成樹脂の軟化温
度―10℃)以上にある間の{型表面温度−(合成樹脂
軟化温度―10℃)}値の積分値(Δh)との関係を示
すグラフ図である。
【図34】一般の金属金型でHIPS(「スタイロン4
95」旭化成工業社製)を射出成形した場合の、金型温
度と成形品光沢度の関係を示すグラフ図である。
【図35】本発明における断熱層と金属層が微細凹凸界
面で密着していることを示す、金型表面層の断面であ
る。
【図36】従来のフレネルレンズ金型で、通常の成形条
件で射出成形した状態を示す部分断面説明図である。
【図37】本発明法で使用するフレネルレンズ金型の部
分断面図である。
【図38】本発明の方法で射出成形した艶消し状成形品
の断面と、従来の金型で射出成形した艶消し状成形品の
断面を示す。
【図39】本発明の説明に使用する射出成形品を示す図
である。
【図40】射出成形時の型表面にかかる樹脂圧力の経時
変化を示すグラフ図である。
【図41】射出成形された合成樹脂が型表面の微細凹凸
へ充填される様子をモデル的に示す説明図である。
【図42】本発明の成形品を成形する金型の断面図を示
す。
【図43】金型表面をエッチング処理する各工程を示
す。
【図44】金型表面を多段エッチング処理する各工程を
示す。
【図45】金型表面を多段エッチング処理する各工程を
示す。
【図46】実施例10における成形品の表面凹凸パター
ンを示すグラフ図である。
【符号の説明】
1 合成樹脂の軟化温度 2 積分値 3 金属金型 4 合成樹脂 6 凹の角部 7 角の隅 8 主金型 9 断熱層 10 金属層 11 断熱層厚み 12 金属層薄肉部の厚み 13 合成樹脂成形品 14 凸部の先 15 凹部の先 16 凸部の先 17 ゲート 18 穴部 19 ウエルドライン 20 成形品 21 ウエルド部 22 一般部 23 一般部にかかる樹脂圧力曲線 24 ウエルド部にかかる樹脂圧力曲線 25 ゲート部にかかる樹脂圧力曲線 26 断熱層 27 金属層 28 金属層表面の凹部 29 合成樹脂 30 合成樹脂が充填されない凹部 31 本発明金型が除くことを目的とする鋭角な凹部 32 主金型 33 内側金属層 34 表面金属層 35 内側金属層 36 表面金属層 37 感光性樹脂 38 マスクシート 39 硬化樹脂
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 B29C 51/30 9268−4F B29C 51/30 // B29K 77:00 (31)優先権主張番号 特願平7−336648 (32)優先日 平7(1995)12月25日 (33)優先権主張国 日本(JP)

Claims (20)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 合成樹脂の成形法に於いて、 金属からなる主金型の型壁面に、該型壁面に密着した耐
    熱性重合体からなる厚み0.1mmを超え0.5mm未
    満の断熱層が存在し、 上記断熱層の上に密着した金属層が存在する金属層付断
    熱層被覆金型を用い、 成形される合成樹脂が型キャビティを構成する型表面に
    接触後、型表面温度が合成樹脂の軟化温度以上にある間
    の(型表面温度−合成樹脂の軟化温度)値の積分値(Δ
    H)が2秒・ ℃以上となる成形条件、及び/又は、型表
    面温度が(合成樹脂の軟化温度−10℃)以上にある間
    の{型表面温度−(合成樹脂の軟化温度−10℃)}値
    の積分値(Δh)が10秒・℃以上となる成形条件と、 成形される合成樹脂が型表面に接触して5秒後に、型表
    面温度が合成樹脂の軟化温度以下に低下する成形条件と
    を満たして成形する合成樹脂の成形法。
  2. 【請求項2】 断熱層上の金属層厚みが、断熱層厚みの
    1/3以下且つ0.001〜0.1mmの厚みであり、
    主金型温度を、15℃以上100℃以下で、且つ合成樹
    脂の軟化温度から20℃を減じた温度以下に設定して射
    出成形する請求項1の合成樹脂の成形法。
  3. 【請求項3】 断熱層上の金属層が凸部と凹部とからな
    るしぼ状表面を有する金属層であり、凸部の金属層厚み
    が上記断熱層厚みの1/3以下且つ0.01〜0.07
    mmであり、しぼ形状凹部の深さが0.001〜0.0
    9mmで且つ凸部の金属層厚みより小さく、主金型温度
    を15℃以上100℃以下で且つ合成樹脂の軟化温度か
    ら20℃を減じた温度以下に設定して射出成形する請求
    項1の合成樹脂の成形法。
  4. 【請求項4】 断熱層の厚みが0.1mmを超え0.4
    mm未満であり、金属層の厚みが断熱層厚みの1/3以
    下且つ0.001〜0.07mmであり、積分値(Δ
    H)が2秒・℃以上50秒・℃以下、及び/又は、積分
    値(Δh)が10秒・℃以上100秒・℃以下で、且つ
    合成樹脂が型表面に接触して5秒後に、型表面温度が
    (合成樹脂の軟化温度−10℃)以下に低下する成形条
    件で射出成形する請求項1又は2の合成樹脂の成形法。
  5. 【請求項5】 断熱層の厚みが0.12mmを超え0.
    3mm未満であり、金属層の厚みが断熱層厚みの1/5
    以下1/100以上且つ0.002〜0.06mmであ
    り、積分値(ΔH)が5秒・℃以上40秒・℃以下、及
    び/又は、積分値(Δh)が12秒・℃以上70秒・℃
    以下で、且つ合成樹脂が型表面に接触して5秒後に、型
    表面温度が(合成樹脂の軟化温度−10℃)以下に低下
    する成形条件で射出成形する請求項1又は2の合成樹脂
    の成形法。
  6. 【請求項6】 断熱層の厚みが0.1mmを超え0.4
    mm未満であり、凸部の金属層厚みが断熱層厚みの1/
    3以下且つ0.01〜0.07mmであり、しぼ形状凹
    部の深さが0.005〜0.06mmであって、積分値
    (ΔH)が2秒・℃以上50秒・℃以下、及び/又は、
    積分値(Δh)が10秒・℃以上100秒・℃以下で、
    且つ合成樹脂が型表面に接触して5秒後に、型表面温度
    が(合成樹脂の軟化温度−10℃)以下に低下する成形
    条件で射出成形する請求項1又は3の合成樹脂の成形
    法。
  7. 【請求項7】 断熱層の厚みが0.12mmを超え0.
    3mm未満であり、凸部の金属層厚みが断熱層厚みの1
    /5以下且つ0.01〜0.06mmであり、しぼ形状
    凹部の深さが0.005〜0.04mmであって、積分
    値(ΔH)が5秒・℃以上40秒・℃以下、及び/又
    は、積分値(Δh)が12秒・℃以上70秒・℃以下
    で、且つ合成樹脂が型表面に接触して5秒後に、型表面
    温度が(合成樹脂の軟化温度−10℃)以下に低下する
    成形条件で射出成形する請求項1又は3の合成樹脂の射
    出成形法。
  8. 【請求項8】 合成樹脂の型内平均流動速度が20〜3
    00mm/秒で射出成形する請求項1〜7いずれかの合
    成樹脂の射出成形法。
  9. 【請求項9】 金属層の厚みが断熱層厚みの1/3以下
    且つ0.002〜0.1mmであり、主金型温度を15
    ℃以上100℃以下で、且つ合成樹脂の軟化温度から2
    0℃を減じた温度以下に設定し、更に積分値(ΔH)が
    10秒・℃以上200秒・℃以下、及び/又は、積分値
    (Δh)が20秒・℃以上400秒・℃以下の成形条件
    でブロー成形する請求項1の合成樹脂の成形法。
  10. 【請求項10】 断熱層の厚みが0.3mm以上0.5
    mm未満で、金属層の厚みが断熱層厚みの1/5以下1
    /100以上且つ0.004〜0.06mmであり、積
    分値(ΔH)が20秒・℃以上100秒・℃以下、及び
    /又は、積分値(Δh)が30秒・℃以上300秒・℃
    以下の成形条件でブロー成形する請求項1又は9の合成
    樹脂の成形法。
  11. 【請求項11】 金属層が凸部と凹部とからなるしぼ状
    表面を有する金属層であり、凸部の金属層厚みが断熱層
    厚みの1/3以下且つ0.01〜0.1mmで、しぼ形
    状凹部の深さが0.005〜0.09mmであって、主
    金型温度を15℃以上100℃以下で、且つ合成樹脂の
    軟化温度から20℃を減じた温度以下に設定し、積分値
    (ΔH)が10秒・℃以上200秒・℃以下、及び/又
    は、積分値(Δh)が20秒・℃以上400秒・℃以下
    の成形条件でブロー成形する請求項1の合成樹脂の成形
    法。
  12. 【請求項12】 断熱層の厚みが0.3以上0.5mm
    未満で、凸部の金属層厚みが断熱層厚みの1/5以下1
    /100以上且つ0.01〜0.08mmであり、しぼ
    形状凹部の深さが0.005〜0.07mmであって、
    積分値(ΔH)が20秒・℃以上100秒・℃以下、及
    び/又は、積分値(Δh)が30秒・℃以上300秒・
    ℃以下の成形条件でブロー成形する請求項1又は11の
    合成樹脂の成形法。
  13. 【請求項13】 パリソンが型表面に接触してから、ブ
    ロー圧力が成形品内面に十分にかかるまでの時間が1〜
    5秒である成形条件でブロー成形する請求項9〜12い
    ずれかの合成樹脂の成形法。
  14. 【請求項14】 断熱層と金属層は微細凹凸界面で密着
    している請求項1〜13いずれかの合成樹脂の成形法。
  15. 【請求項15】 断熱層を形成する耐熱性重合体が直鎖
    型高分子量ポリイミドからなる請求項1〜14いずれか
    の合成樹脂の成形法。
  16. 【請求項16】 断熱層の最表面層を微粉末状エッチン
    グ助剤が1〜30重量%配合された耐熱性重合体で形成
    した後に、該断熱層の最表面層を化学エッチング処理を
    行い微細凹凸状にし、その表面に化学メッキを行い、更
    に必要に応じて化学メッキ及び/又は電解メッキの1つ
    以上を行うことにより金属層を形成し、該金属層の密着
    力が0.3kg/10mm以上の金属層を被覆してなる
    金型を用いる請求項1〜15いずれかの合成樹脂の成形
    法。
  17. 【請求項17】 金属層表面あるいは金属層表面の一部
    が、鏡面状である請求項1〜16いずれかの合成樹脂の
    成形法。
  18. 【請求項18】 金属層表面あるいは金属層表面の一部
    が、レンズ様の凹凸状である請求項1、2、4、5、
    8、14、15又は16の合成樹脂の成形法
  19. 【請求項19】 金属層表面あるいは金属層表面の一部
    が、微細凹凸艶消し状である請求項1〜16いずれかの
    合成樹脂の成形法。
  20. 【請求項20】 金属層表面の凸部と凹部のうち一方が
    鏡面状であり、他方が艶消し状である請求項1、3、
    6、7、8、11、12、13、14、15又は16の
    合成樹脂の成形法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006116759A (ja) * 2004-10-20 2006-05-11 Nippon Zeon Co Ltd 光学材料射出成形用金型及び光学材料の製造方法
US8268114B2 (en) 2001-09-28 2012-09-18 Shin-Etsu Handotai Co., Ltd. Workpiece holder for polishing, workpiece polishing apparatus and polishing method
JP2012228810A (ja) * 2011-04-26 2012-11-22 Asahi Kasei Corp 樹脂の成形方法
JP5730868B2 (ja) * 2010-06-14 2015-06-10 ポリプラスチックス株式会社 金型の製造方法

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