JPH09219928A - 超電導限流素子および超電導部材 - Google Patents

超電導限流素子および超電導部材

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JPH09219928A
JPH09219928A JP8025584A JP2558496A JPH09219928A JP H09219928 A JPH09219928 A JP H09219928A JP 8025584 A JP8025584 A JP 8025584A JP 2558496 A JP2558496 A JP 2558496A JP H09219928 A JPH09219928 A JP H09219928A
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thin film
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Mutsuki Yamazaki
六月 山崎
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宏 久保田
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    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E40/00Technologies for an efficient electrical power generation, transmission or distribution
    • Y02E40/60Superconducting electric elements or equipment; Power systems integrating superconducting elements or equipment

Abstract

(57)【要約】 【課題】 酸化物超電導体薄膜等を用いた超電導限流素
子等の超電導部材において、局所的なSN転移に起因す
る酸化物超電導体薄膜の焼損や電流パス間での放電等に
よる素子破壊を有効に抑制する。 【解決手段】 少なくとも106 N/m 3 の巨視的ピニング
力を有する第二種超電導体1で超電導線路を構成し、こ
のような超電導線路中に超電導線路を流れる電流方向に
対して略垂直な方向に印加した0.01〜 10Tの磁場により
磁束を侵入させて、超電導限流素子6として使用する。
あるいは、第二種超電導体で構成された超電導線路を、
隣接する超電導線路に同じ向きの電流が流れるように形
成し、かつ超電導線路の幅をL、厚さをt、隣接する超
電導線路間の距離をdとしたとき、d≧0.01LかつL≧
100tの関係を満足させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は電力系統等に用いら
れる超電導限流素子および超電導部材に関する。
【0002】
【従来の技術】超電導体の臨界電流以上の電流で超電導
状態が壊れ、抵抗を生じるという性質を利用して、配電
系統等に事故で大電流が流れようとしたときに、その電
流を高速で絞る超電導限流素子が研究されている。従来
は金属系の超電導体を用いて限流素子を作製していた
が、金属であるために常伝導状態に転移した際の抵抗率
が小さく、素子の大きさが数メートルにもなるという欠
点に加えて、液体ヘリウムで冷却を行う必要があること
に起因して、コストが高い、超電導状態の破壊時に液体
ヘリウムが気化して装置全体が膨大な圧力になる等、金
属系超電導体を用いた限流素子は多くの問題を有してい
た。
【0003】これに対して、最近、酸化物超電導体を用
いた限流素子が注目されている。酸化物超電導体は、ま
ず臨界温度が高いために取扱いが簡便な液体窒素で冷却
が行えるという利点がある。また、酸化物超電導体は常
伝導状態における抵抗率が高いことに加えて、薄膜化に
より106 A/cm2 というような高い臨界電流密度(Jc
を持つ酸化物超電導体を作製できるようになったことか
ら、酸化物超電導体を用いることで超電導限流素子を小
型化することが可能となる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上述したような酸化物
超電導体薄膜を使用する場合には、酸化物超電導体薄膜
をフォトリソグラフィやイオンミリングでミアンダ状や
螺旋状にパターン化することによって、超電導限流素子
を構成している。しかし、このような超電導限流素子で
は、パターンの折り返し部分や曲率の大きな部分に自己
磁場による磁束が侵入することによって、大電流による
超電導−常伝導転移(SN転移)が局所的に起りやすい
という問題がある。この局所的なSN転移は酸化物超電
導体薄膜の焼損等を招き、超電導限流素子を繰り返し動
作させることができなくなってしまう。
【0005】例えば、酸化物超電導体薄膜に過電流を流
して限流動作の試験を行うと、超電導状態が壊れて抵抗
が発生するものの、自己磁場の侵入しやすい部分で局所
的にSN転移するために、ジュール発熱で酸化物超電導
体薄膜が焼損してしまうという現象が起こっている。ま
た、この現象はJc が高い材料ほど頻発する。そのた
め、酸化物超電導体を高品質化する等して限流素子の定
格を増加させると、焼損が起りやすくなってしまう。
【0006】ところで、超電導体のSN転移を利用した
限流素子において、磁場を印加して限流開始電流を制御
するもの(特開平4-236125号公報、特開平6-295833号公
報参照)や、過電流そのものではなく、過電流を検出し
あるいは過電流で生じた一部のSN転移による発生電圧
により磁場を発生させ、これにより他の部分もSN転移
させる(特開平 1-17448号公報、特開平 1-26326号公
報、特開平 1-26329号公報、特開平2-168814号公報参
照)等の磁場を利用した限流素子が知られている。この
ような磁場を印加したり、あるいは磁場を利用する限流
素子においても、電流と磁場の方向にばらつきがあった
り、磁束密度に偏りがあったり、あるいは超電導体中の
量子化磁束を止めるピニングセンタ密度やピニング力に
ばらつきがあると、やはり局所的にSN転移が生じやす
く、この局所的なSN転移により酸化物超電導体薄膜の
焼損が起るという問題がある。
【0007】酸化物超電導体薄膜を用いた超電導限流素
子においては、上述したような酸化物超電導体薄膜の焼
損による素子破壊に加えて、ミアンダ状や螺旋状のよう
に酸化物超電導体薄膜を電流パスが隣合う形状にパター
ン化して用いているため、SN転移時に電流パス間で放
電が起りやすく、この放電により素子が破壊してしまう
という問題もある。このような問題は超電導限流素子に
限らず、例えば超電導パワーデバイスの超電導回路等に
おいても同様に生じる可能性がある。
【0008】このように、酸化物超電導体薄膜等を用い
た超電導限流素子等の超電導部材においては、局所的な
SN転移に起因する酸化物超電導体薄膜の焼損や電流パ
ス間での放電等による素子破壊を有効に抑制することが
課題とされている。
【0009】本発明は、このような課題に対処するため
になされたもので、素子破壊を抑制した超電導限流素子
および超電導部材を提供することを目的としており、具
体的には局所的なSN転移を防止することによって、超
電導体の焼損による素子破壊を抑制することを可能にし
た超電導限流素子、および電流パス間での放電による素
子破壊を抑制することを可能にした超電導部材を提供す
ることを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の超電導限流素子
は、第二種超電導体で構成された超電導線路を有する超
電導限流素子において、前記超電導線路を構成する第二
種超電導体は、少なくとも106 N/m 3 の巨視的ピニング
力を有し、かつ前記超電導線路中には該超電導線路を流
れる電流方向に対して略垂直な方向に印加した0.01〜 1
0Tの磁場に基く磁束が侵入していることを特徴としてい
る。
【0011】また、本発明の超電導部材は、第二種超電
導体で構成された超電導線路を有する超電導部材におい
て、前記超電導線路は、隣接する超電導線路に同じ向き
の電流が流れるように形成されており、かつ前記超電導
線路の幅をL、厚さをt、隣接する超電導線路間の距離
をdとしたとき、d≧0.01LかつL≧ 100tの関係を満
足することを特徴としている。この超電導部材は、超電
導限流素子や超電導パワーデバイス等に好ましく用いら
れるものである。
【0012】超電導限流素子で超電導体が焼損する原因
は以下のように考えられる。零磁場下でも超電導体に電
流が流れている場合には、その周囲に自己磁場と呼ばれ
る磁場が形成される。電流が増加するとこの自己磁場が
増大し、パターン形状により磁場集中を起こしている部
分や、超電導体が滑らかでなく表面ピニングが弱くなっ
ている部分等に、局所的に量子化磁束が侵入しはじめ
る。一方、このとき電流値はピニングにより量子化磁束
を止めておくことができないほど大きいために、量子化
磁束は侵入と同時に運動をはじめて超電導体を横切る。
これによって、量子化磁束の運動する狭い領域で電圧が
発生し、局所的に発熱して常伝導状態になる。その後、
熱伝導により常伝導状態は広がりはじめ、超電導体の抵
抗は増大する。しかし、超電導体の抵抗が上がり、過電
流を限流できるようになるまで、最初に常伝導状態にな
った部分は発熱を続けるため、大きく温度上昇して焼損
に至る。常伝導状態の発熱量は電流の二乗に比例するた
め、臨界電流(Ic )が大きいほど焼損しやすい。
【0013】このような零磁場下において過電流に対し
て超電導体が焼損してしまうのは、限流に必要なほど常
伝導状態が広がる前に温度が限界値に達してしまうこと
と、最初の常伝導状態が局所的であるためである。これ
を防ぐためには、同時に複数の箇所を常伝導状態とした
り、また初期の常伝導転移領域を増加すればよいことに
なる。
【0014】そこで、本発明の超電導限流素子において
は、少なくとも106 N/m 3 の巨視的ピニング力を有する
第二種超電導体で超電導線路を構成し、このような超電
導線路中に超電導線路を流れる電流方向に対して略垂直
な方向に印加した0.01〜 10Tの磁場により磁束を侵入さ
せている。磁場中での超電導体の電圧発生機構は零磁場
下とは異なり、既に超電導体に存在している量子化磁束
が電流から受けるローレンツ力によって動き出すことに
よって発生する。従って、零磁場の場合のように磁場の
動きはじめる場所が超電導体の一部分ではなく、超電導
体の内部で量子化磁束の存在しているそれぞれの場所か
ら磁場が動きはじめる。これによって、同時に複数の箇
所が常伝導状態となり、電力消費を分散させることが可
能となるため、焼損を防ぐことができる。
【0015】また、放電する理由は以下のように考えら
れる。過電流が流れた際には、局所的にSN転移して一
部分が高電位になるが、電位の異なる部分、すなわち他
の電流パスが近接していると、その部分との間に放電が
生じる。また、電流パスに凹凸等が生じていると、放電
が起りやすくなる。
【0016】そこで、本発明の超電導部材においては、
隣接する超電導線路に同じ向きの電流が流れるように形
成することによって、自己磁場の集中を避ける構造と
し、局所的なSN転移を抑制していると共に、電界が強
いほど放電が生じやすくなるため、隣接する超電導線路
間の距離dを超電導線路の幅Lに対して十分な値、すな
わちd≧0.01Lとしている。また、超電導線路の幅Lが
超電導線路の厚さtに対して小さいと、パターンエッジ
に凹凸が生じたり、アンダーカットが起り、これらが放
電の発生原因となるため、超電導線路の幅Lを超電導線
路の厚さtに対して十分な値、すなわちL≧ 100tとし
ている。これらによって、超電導線路間の放電を防止す
ることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明の超電導限流素子お
よび超電導部材の実施形態について、図面を参照して説
明する。
【0018】図1は、本発明の一実施形態による超電導
限流素子および超電導部材の要部構成を示す図であっ
て、図1(a)はその断面図、図1(b)は平面図であ
る。図1において、1は基板2上に設けられた第二種超
電導体である酸化物超電導体の薄膜であり、この酸化物
超電導体薄膜1としてはY−Ba−Cu−O系、Bi−
Sr−Ca−Cu−O系、Tl−Ba−Ca−Cu−O
系、Hg−Ba−Cu−O系、Nd−Ba−Cu−O系
等の臨界温度が 77K以上の酸化物超電導体を用いること
が好ましい。酸化物超電導体薄膜1は、螺旋状の超電導
線路(電流パス)を構成しており、その両端には電極
3、3が形成されている。酸化物超電導体薄膜1は、例
えば反応性スパッタ法、反応性蒸着法、レーザ蒸着法、
CVD法、MOCVD法等により基板2上に成膜する。
【0019】また、この酸化物超電導体薄膜の厚さは、
電流パスとしての超電導線路に流すことができる電流値
を十分なものとする上で 100nm以上さらには 1μm 以上
とすることが好ましい。ただし、酸化物超電導体薄膜の
厚さがあまりに厚すぎると、臨界電流密度(Jc )が低
下する傾向があるため、酸化物超電導体薄膜の厚さの好
ましい上限値は10μm である。
【0020】なお、基板2としては酸化物の単結晶もし
くは多結晶基板が用いられ、特に酸化物超電導体と構造
が類似し、かつ格子定数も近いSrTiO3 、LaAl
3、MgO、YSZ、YAlO3 、NdGaO3 、L
aGaO3 等の酸化物が好ましく用いられる。これら酸
化物の単結晶もしくは多結晶基板の厚さは、酸化物超電
導体薄膜1がクエンチした際に割れることがないよう
に、 0.5mm以上とすることが好ましく、さらに好ましく
は 1mm以上である。また、金属基板の表面に酸化物膜を
形成した基板を用いることもできる。この場合、金属基
板としては873K以上の高温でも酸化しにくいNi基合
金、例えばハステロイ等を用いることが好ましい。酸化
物膜としては上記したような酸化物が用いられ、その厚
さは 100nm以上とすることが好ましく、特に金属基板の
構成元素が酸化物超電導体薄膜1に拡散するのを抑制す
るために 1μm 以上とすることが望ましい。
【0021】酸化物超電導体薄膜1は、通常の通電時に
量子化磁束系が動かないように、巨視的ピニング力(J
c ×B)が少なくとも106 N/m 3 以上のものが用いられ
る。酸化物超電導体薄膜1の巨視的ピニング力が106 N/
m 3 未満であると、後述するような大きさを有する磁場
を印加した際に、通常の通電時に量子化磁束系が動くお
それがあり、超電導限流素子としての機能が損われてし
まう。このような巨視的ピニング力は酸化物超電導体薄
膜1中に存在する格子欠陥、異相、不純物等のピニング
センタにより達成される。酸化物超電導体薄膜1の巨視
的ピニング力は、107 N/m 3 以上であることが好まし
く、さらに好ましくは108 N/m 3 以上である。上限は特
に規定されるものではないが、現実的に得られる値は10
11 N/m3 程度であると考えられる。また、限流動作時に
多くの箇所で量子化磁束が同時に動きだし、多くの位置
で同時に抵抗が発生するように、ピニングセンタ密度や
各ピニングセンタのピニング力は均一であることが好ま
しい。
【0022】上述したような酸化物超電導体薄膜1上に
は、Ag、Cu、Au等の金属からなる保護層4が設け
られている。保護層4の厚さは10nm〜 1μm 程度とする
ことが好ましく、さらに好ましくは30〜 300nmの範囲で
ある。さらに、保護層4を酸化物超電導体薄膜1上に形
成した後に、酸素中でアニールすることが好ましく、こ
れにより酸化物超電導体薄膜1との接触抵抗を小さくす
ることができる。この際の熱処理温度は 573〜 1173Kと
することが好ましく、さらに好ましくは 673〜923Kの範
囲である。
【0023】また、図2に示すように、Ag、Cu、A
u等からなる保護層を第1の保護層4aとし、その上に
例えばAg等と比べて比抵抗が 2倍以上(より好ましく
は10倍以上)高い金属膜を第2の保護層4bとして形成
することによって、保護層4の厚さを厚くしても素子の
抵抗があまり小さくならないため、電源電圧が高い回路
に入れるのに適した構造となる。第2の保護層4bとし
ては、例えばプラチナ、ニクロム等が用いられる。ま
た、この際の第1の保護層4aの厚さは10〜 200nm程度
とすることが好ましく、さらに好ましくは20〜 100nmの
範囲である。第2の保護層4bの厚さは50nm〜10μm 程
度とすることが好ましく、さらに好ましくは 100nm〜 5
μmの範囲である。
【0024】さらに、酸化物超電導体薄膜1の表面は、
例えば図3に示すように、比抵抗が103 Ωcm以上の電気
絶縁性物質からなる被覆層5で覆うことが好ましい。こ
の絶縁性被覆層5の比抵抗は107 Ωcm以上であることが
さらに好ましく、またその厚さは 100nm以上であること
が好ましく、さらに好ましくは 500nm以上である。これ
は電流パスの一部がクエンチした場合、その部分に高い
電圧がかかって起こる放電を抑制するためである。Ag
等からなる保護層4を厚くすることによっても同様な効
果が得られるが、素子の抵抗を下げることなく放電防止
効果を得る上で、絶縁性被覆層5を用いることが好まし
い。また、この絶縁性被覆層6は素子の耐環境性向上に
も効果を発揮する。すなわち、酸化物超電導体薄膜1は
水に弱く、空気中の水分によっても特性が劣化するおそ
れがあるが、その表面を被覆することでそれを防ぐこと
ができる。
【0025】絶縁性被覆層5としては、例えばMgO、
SrTiO3 、SiO2 、Al2 3 、Si3 4 、A
lN、BN、SiC等の金属酸化物、窒化物、炭化物等
を用いることができる。また、この絶縁性被覆層5は高
分子膜で構成してもよい。その場合は高分子を分散させ
た溶液に素子を浸すか、あるいはスピンコートした後に
乾燥させて作製する。この方法では 1μm 以上、さらに
は 5μm 以上の厚い絶縁性被覆層5を容易に得ることが
できる。
【0026】酸化物超電導体薄膜1による超電導線路の
形状としては、例えば図1に示した螺旋構造の他に、図
4に示す折り返し構造や図5に示すいわゆるミアンダ構
造等を適用することができる。ここで、図4や図5に示
すパターンは、電極3、3が基板2の端部にあるため、
回路等との接続が容易である反面、これらのパターンに
は折り返し部分があり、ここでは電流が作る自己磁場が
強いため、局所的にクエンチが生じて焼損するおそれが
ある。
【0027】一方、図1に示す酸化物超電導体薄膜1の
パターンは、一方の電極3が基板2の中程にあるので回
路との接続がしにくいものの、このパターンでは電流経
路に折り返し部分がなく、かつ隣接する電流パスを流れ
る電流の向きが同じで、自己磁場が打ち消し合って自己
磁場の集中が避けられるため、局所的なクエンチによる
焼損等をより効果的に防止することができる。このよう
に、本発明の超電導限流素子においては、ミアンダ構造
のような折り返し部分を有するパターンより、隣接する
電流パスに同じ向きの電流が流れ、かつ折り返し部分が
なく、自己磁場の集中が避けられる螺旋状パターン等の
方が好ましく用いられる。
【0028】なお、図4や図5に示すパターンであって
も、折り返し部分のAg等からなる保護層4の厚さを、
例えば10〜500%程度厚くすることによって、酸化物超電
導体薄膜1の焼損を有効に抑制することができる。これ
は、折り返し部分の保護層4の厚さを厚くすることによ
って、局所的にクエンチしてもAg等からなる保護層4
に電流がバイパスして発熱量を減らすことができるため
である。折り返し部分の保護層4の厚さは20〜200%の範
囲で厚くすることがさらに好ましい。
【0029】図1、図4および図5に示した酸化物超電
導体薄膜1による超電導線路は、いずれも電流パスが隣
接している。このようなパターンにおいて線路間隔が狭
いと、局所的に超電導状態から常伝導状態に転移した際
に、超電導線路間で放電が起こり、素子が破損するおそ
れがある。これを避けるためには、超電導線路の幅を
L、厚さをt、隣接する超電導線路間の距離dとしたと
き、L≧ 100tかつd≧0.01Lの関係を満足させること
が好ましい。
【0030】すなわちJc が同じ酸化物超電導体薄膜1
を使用しても、超電導線路の幅Lが増大するにしたがっ
て臨界電流Ic が高くなり、このIc が高いほど放電が
起りやすくなるため、線路間距離dは少なくとも0.01L
以上とすることが好ましく、より好ましくはd≧0.02
L、さらにはd≧ 0.1Lとすることが望ましい。具体的
には、Jc が106 A/cm2 の膜を用いる場合には、Lとt
の積が小さくとも電流値が大きいので、局所的なクエン
チが起こった場合に大きな電場ができやすく、放電が起
りやすい。従って、dは比較的大きい方が望ましい。例
えば、厚さ 1μmの膜を幅10mmの電流パスに加工すると1
00Aの電流が流れる。この場合、dはL×0.01以上すな
わち 0.1mm以上とすることが好ましく、さらにはL×0.
02以上すなわち 2mm以上とすることが望ましい。一方、
c が105 A/cm2 の膜であれば、厚さが 1μm の場合に
100Aを流すのに 100mmの幅が必要であり、dはL×0.01
以上すなわち 1mmとすることが好ましい。
【0031】また、酸化物超電導体薄膜1にパターンを
形成する際に、パターンエッジに凹凸が生じたり、また
酸エッチングする場合にアンダーカットが起ると、放電
が起りやすくなる。これらは、超電導線路の厚さtに対
して超電導線路の幅Lを大きくすることで抑制できるた
め、L≧ 100tとすることが好ましい。より好ましくは
L≧1000tである。
【0032】酸化物超電導体薄膜1による超電導線路パ
ターンには、例えば図6に示すような複数の電流パスが
並列に隣接しているような構造を適用することも可能で
あるが、このような場合にも上述したL、t、dの関係
を満足させることが望ましい。なお、このようなパター
ンを利用する場合に、電流パスの長さを長くするために
は、例えば図7に示したように、酸化物超電導体薄膜1
による複数の電流パスを並列形成した基板2を複数枚接
続すればよい。あるいは、接続した基板に酸化物超電導
体薄膜を成膜し、電流パスを並列形成してもよい。この
場合、接続部でJc の低下が起こりやすいため、接続部
のパスの幅を広くすることが好ましい。上述したような
構成を有する超電導限流素子6は、図8に示すように、
永久磁石や電磁石等の磁界発生装置7により、酸化物超
電導体薄膜1の臨界温度(Tc)以上の温度で磁場を印
加し、その後液体窒素あるいは冷凍機等でTc 以下に冷
却し、量子化磁束が酸化物超電導体薄膜1にトラップさ
れた状態で使用する。すなわち、酸化物超電導体薄膜1
に侵入した磁束がピニングセンタにトラップされた状態
で使用する。
【0033】酸化物超電導体薄膜1に印加する磁場の方
向は、量子化磁束に加えられるローレンツ力が均等にな
るように、どの部分においても酸化物超電導体薄膜1に
流れる電流に対する角度が一定となるようにする。実際
には、電流と磁場の方向は常に垂直とすることがよく、
これによりローレンツ力が最大となる。
【0034】また、多くの箇所で量子化磁束が同時に動
いて抵抗が発生するように、量子化磁束系が均一に分布
していることが望ましい。すなわち、磁場は均一に印加
することが望ましい。従って、磁界発生装置7として使
用する電磁石や永久磁石は、酸化物超電導体薄膜1に対
して均一に磁場を印加できるように、超電導限流素子6
より大きいことが好ましく、また磁界方向の均一化等を
図る上で、磁界発生装置7は超電導限流素子6を介して
2個の磁石を向かい合わせに配置した構成とすることが
好ましい。
【0035】印加する磁場の大きさは、量子化磁束が強
く相互作用するように、磁束間距離が磁場侵入長以内と
なる大きさが望ましいため、少なくとも 0.01T以上とす
る。例えば、Y−Ba−Cu−O系酸化物超電導体で
は、 77Kで磁場侵入長がab軸方向で約 200nmであるた
め、 0.05T以上の磁場を印加することが望ましい。さら
に、常伝導転移領域を分散あるいは増加させる、すなわ
ち同時にできるだけ多くの位置で量子化磁束を動きださ
せるためには、酸化物超電導体薄膜1中に存在する量子
化磁束の数、すなわち印加磁場が大きいほどよい。具体
的には、0.1T以上の磁場を印加することがより好まし
く、さらに好ましくは0.5T以上である。一方、印加磁場
の上限は臨界電流密度、素子の定格や大きさ等によって
決定されるが、印加磁場を大きくすると臨界電流が低下
するので、焼損を起こさない十分な大きさ以上の磁場は
印加しないほうが素子の小型化には望ましい。具体的に
は、印加磁場は 10T以下とし、より好ましくは5T以下で
ある。さらに、永久磁石や電磁石等で発生できる磁場を
考えると2T以下とすることが望ましい。
【0036】本発明の超電導限流素子6は、上述したよ
うに酸化物超電導体薄膜1中に磁束が侵入した状態で用
いられるものであるが、磁束が液体状態になっていると
通常の通電状態でも電圧が発生してしまうために実用的
ではない。従って、磁束系の状態は磁束グラスまたは磁
束固体状態になっていることが好ましい。磁束グラスま
たは磁束固体状態になっている場合、臨界電流以下では
電圧発生は無視でき、通常の通電状態では零磁場下の応
答と同じ特性が得られる。また、量子化磁束間の距離が
磁場侵入長より十分に短い磁束グラスまたは磁束固体状
態では、量子化磁束間の相互作用が磁束の運動に影響を
与える。その結果、量子化磁束は一本では動くことがで
きず、ある領域の量子化磁束がかたまって動くことにな
る。この現象により、ある領域だけ着目した場合でも、
常伝導状態になる領域が零磁場の場合より広くなる。こ
の領域の大きさは(B/Jc 1/2 に比例しており、よ
り広い領域で同時に常伝導状態にするためには、Jc
大きく下げない程度に磁場が強いほうが好ましい。
【0037】上述した実施形態の超電導限流素子6は、
磁界発生装置7により磁場を印加し得る構成として、例
えば図9に示すように配電系統回路8等に組み込まれ、
所定の磁場が印加され酸化物超電導体薄膜1が磁束をト
ラップした状態で、限流装置9として使用される。な
お、図9において10は電源であり、11は負荷抵抗で
ある。すなわち、配電系統回路8が正常なときには、超
電導限流素子6には臨界電流値以下の電流がほとんどロ
スなしで流れ、短絡等の事故が発生して配電系統回路8
に過電流が流れ、印加磁場、酸化物超電導体薄膜1のピ
ニングセンタ密度、各ピニングセンタのピニング力等に
より決定される臨界電流密度Jc を超えると同時に、超
電導限流素子6に抵抗が発生して電流が抑制される。
【0038】この際、酸化物超電導体薄膜1は前述した
ように磁束をトラップした状態で用いられているため、
複数の箇所で磁場が動きはじめることによって、同時に
複数の箇所が常伝導状態(SN転移)となる。従って、
電力消費を分散させることが可能となるため、酸化物超
電導体薄膜1の焼損を防ぐことができ、超電導限流素子
1を安定に繰り返し使用することが可能となる。このよ
うに、磁場を印加することによって、過電流が流れたと
きに酸化物超電導体薄膜1が焼損しない程度の領域で同
時に電圧が発生してSN転移が起こる。具体的には、電
圧発生開始から1msec以内の電圧発生領域の体積の合計
は、酸化物超電導体の全体積の少なくとも 0.01%以上で
ある。また、超電導線路の形状等によって、超電導線路
間での放電を防止している。これによっても素子破壊が
抑制されるため、超電導限流素子1を安定に繰り返し使
用することが可能となる。
【0039】また、磁場中の酸化物超電導体薄膜1のJ
c は、上述したように印加磁場、ピニングセンタ密度、
各ピニングセンタのピニング力等によって決定されるの
で、これらのパラメータを選ぶことによって限流開始電
流を任意に設定することができる。特に、磁界発生装置
7として電磁石を用いれば、同じ素子構造で定格電流を
変えることができ、リアルタイムに限流開始電流を変化
させることができる。なお、磁場印加による限流開始電
流の変化を防ぐ場合には、超電導限流素子6を冷凍機に
より冷却して動作温度を変化させるとよい。
【0040】ところで、前述したような構成を有する超
電導限流素子6においては、広い範囲でSN転移させる
ことが可能であるが、SN転移により発生した熱はでき
る限り速く放出することが好ましい。これは熱による焼
損を防ぐためだけではなく、復帰時間を速くするという
事情に基くものである。例えば冷凍機で冷却した場合、
熱は基板を介してコールドヘッドへと伝搬する。一般
に、酸化物超電導体薄膜1を形成する基板2の熱伝導率
はあまりよくない。そこで、酸化物超電導体薄膜1で発
生した熱を吸収するように、薄膜1上に少なくとも膜厚
の10倍以上、好ましくは 100倍以上の電気絶縁性物質を
堆積させることが好ましい。具体的には、シリコン油、
パラフィン等を厚く塗布する。
【0041】また、冷凍機に超電導限流素子6をとりつ
け、液体窒素が固体になる温度以下まで冷却した後、気
体の窒素を少量ずつ導入して、超電導限流素子6の表面
に固体の窒素を成長させてもよい。この時、酸化物超電
導体薄膜1からの熱により、この窒素が気化しない程度
まで温度を下げておくことが望ましく、固体窒素の熱伝
導率および熱容量によって決定される。これらによれ
ば、動作時に焼損することなく短時間に復帰させること
が可能になる。また、酸化物超電導体薄膜1の周囲に空
間がなくなるので、放電も防ぐことができる。
【0042】なお、前述したような素子構成は超電導限
流素子に限らず、超電導パワーデバイス等に用いられる
超電導回路等の他の超電導部材として使用することも可
能である。その場合、超電導線路間の放電による素子破
壊を防止するために、隣接する超電導線路に同じ向きの
電流が流れるようにパターン形成すると共に、超電導線
路の幅L、超電導線路の厚さt、隣接する超電導線路間
の距離dをd≧0.01LかつL≧ 100tとする。
【0043】次に、本発明の超電導限流素子の他の実施
形態について説明する。
【0044】前述した実施形態の超電導限流素子では、
所定の大きさの磁場を印加し、この磁場の大きさや他の
要因により決定されるJc に基いて限流動作させる例に
ついて説明したが、例えば磁場の増加に伴う超電導−常
伝導転移(SN転移)を利用することもできる。
【0045】図10は、この実施形態の限流装置の構成
を示す図であり、21は冷凍機のコールドヘッドであ
り、 77K以下の所望の温度に保たれる。このコールドヘ
ッド21上に、熱伝導がよくかつ透磁率の高い円筒状の
コア22が接触配置されている。コア22の材質は、熱
伝導を優先させるのであれば銅、アルミニウム、銀等が
好ましく、発生磁場を大きくする場合は鉄、ニッケル、
コバルト等の透磁率の高い材料が好ましい。
【0046】このコア22に絶縁材23を介して高温超
電導体からなるコイル24が巻回されている。コイル2
4はコア22により冷却されるため、絶縁材23には熱
電導率が高い材料を用いることが好ましい。例えばセラ
ミックスならば、AlN、BN等が好ましく、厚さが薄
ければSi3 4 、SiO2 、SiC等でもよい。また
高分子フィルムでもよく、この場合 1mm以下のフィルム
が容易に得られるのでコスト面では有利である。材質は
ポリイミド等のイミド系樹脂、ポリエチレン、ポリエス
テル、ポリスチレン等の炭化水素系もしくはエポキシ系
樹脂、塩化ビニル、テフロン等のハロゲン系樹脂等が使
用できる。
【0047】一方、コイル24は、例えばAgシース法
でBi系酸化物超電導体(Bi2 Sr2 CaCu
2 x 、(Bi,Pb)2 Sr2 Ca2 Cu3 Ox等)
をテープ状に加工した線材により作製される。テープ状
の方がコア22との接触面積が大きくなるので熱伝導が
よくなり、コイル24の温度がクエンチにより上昇した
としても速く復起するので好ましい。
【0048】そして、上記したコア22の上部に前述し
たような超電導限流素子6を配置すると共に、コイル2
4の一端を超電導限流素子6の一方の電極に接続する。
超電導限流素子6の具体的な構成や印加磁場の条件等は
前述した通りである。このような限流装置25をコイル
24の他端部と超電導限流素子6の他方の電極を配電系
統回路8に接続して組み込むと、コイル24に電流が流
れて磁場が発生し、超電導限流素子6は磁束をトラップ
した状態で限流素子として動作する。
【0049】ここで、酸化物超電導体薄膜1の臨界電流
c は、印加磁場がある値以下では零磁場の状態とほと
んど変わらない。従って、配電系統回路8が正常な場合
に、このような状態が得られるようにコイル24の巻回
数等を調整する。一方、酸化物超電導体薄膜1にある値
以上の磁場がかかるとIc は急激に低下する。すなわ
ち、短絡等の事故が発生して配電系統回路8に過電流が
流れ、コイル24による磁場が増大することによって、
酸化物超電導体薄膜1が常伝導状態に転移し、超電導限
流素子6に抵抗が発生して電流が抑制される。
【0050】このような構成においても、磁束の侵入お
よび移動による抵抗の発生を経て常伝導状態に転移する
ため、局所的なSN転移は起こりにくい。従って、酸化
物超電導体薄膜1の焼損を防ぐことができ、超電導限流
素子1を安定に繰り返し使用することが可能となる。
【0051】
【実施例】次に、本発明の具体的な実施例について説明
する。
【0052】実施例1 図1に構成を示した超電導限流素子6において、まず直
径30mmのSrTiO3(100) 単結晶基板2上に、酸化物
超電導体薄膜1としてc軸配向性の強い厚さ500nmのY
Ba2 Cu3 x (YBCO)薄膜を蒸着法により成膜
した。このYBCO薄膜1には格子欠陥が存在し、これ
がピニングセンタとして働く。このYBCO薄膜1の77
K,0.1Tの巨視的ピニング力は 1×109 N/m3 であった。
【0053】YBCO薄膜1を作製した後、真空蒸着装
置に移し、基板加熱せずに厚さ40nmのAg保護層4を成
膜した。次いで、イオンミリング装置に移し、図1
(b)に示した幅 4mmの螺旋状パターンを形成した。そ
の後、電流導入部分(電極3)が発熱しやすいので、そ
の部分のみAg保護層4を 500nm蒸着した。また、YB
CO薄膜1とAg保護層4とのコンタクトをとるため
に、 1気圧の酸素中で673K×10分間の熱処理を行った。
【0054】このような超電導限流素子6を用いて、図
8に示したように、YBCO薄膜1のc軸に平行に均一
な磁場が加わるように、磁界発生装置7として一対の電
磁石を設置した。磁場方向は電流に対して垂直とした。
電磁石としては、磁場の大きさが1Tまで可変なものを用
いた。
【0055】図11に 77KにおけるYBCO薄膜1のJ
c −B特性(磁場BはYBCO薄膜1のc軸に平行に印
加)を示す。図11から0TでJc = 2×106 A/cm2 であ
り、Jc は磁場の増加に伴って減少し、0.1Tで 1×106
A/cm2 (77%)、0.5Tで 7×105 A/cm2 (35%)となる。従
って、図1(b)に示すようなパターンでは、限流開始
電流は0Tで 40A、0.1Tで 30A、0.5Tで 14Aとなる。
【0056】液体窒素で冷却した上記超電導限流素子6
を、図9に示したような回路に直列に接続し、負荷抵抗
11を変化させて限流特性試験を行った。電源10には
配電系統の100V、50Hzの交流電源を用いた。通常時は負
荷抵抗は10Ωであり、超電導限流素子6は超電導状態で
あるが、負荷抵抗を 0.5Ωに変化させて回路電流を200A
にすると、これは酸化物超電導体薄膜1のIc 以上とな
るため、抵抗が発生して回路電流は限流される。図12
にその限流特性を示す。
【0057】図12から明らかなように、0.1Tおよび0.
5Tでは 30A、 14Aで限流しはじめ、10A以下に絞られ
た。また、超電導限流素子6は動作後30秒以内で超電導
状態に回復し、磁場印加の場合は上記の動作実験を10回
以上行っても焼損しなかった。これは、SN転移領域が
複数箇所で起こり、電力消費が分散されたためである。
また、電源電圧を200Vに増加しても同様に焼損なく正常
に動作し、サージ電圧に対する耐圧も増すことがわかっ
た。これは同時に広い領域が常伝導に転移していること
を示している。
【0058】また、酸化物超電導体薄膜1のJc は、温
度の低下と共に向上する。図11は冷凍機で 60Kに冷却
したときのJc −Bの特性も併せて示している。 60Kに
冷却した際には、0TでのJc は 77Kの 3倍の 6×106 A/
cm2 となり、磁場の増加と共に0.1Tで 5×106 A/cm
2 (83%)、0.5Tで 3×106 A/cm2 (50%)となる。0.5Tに
おいても、 77K動作時の0TのJc より大きな定格電流が
流せる。従って、温度と磁場のパラメータを選ぶことに
よって、限流開始電流を任意に設定することが可能とな
る。例えば、200V、200Aの電流が流れる回路に、 60Kに
冷却した超電導限流素子6を直列に接続して限流試験を
行った。その結果を図13に示す。0.1Tでは100A、0.5T
では 60Aで限流しはじめ、どちらも 20A以下に絞ること
ができた。
【0059】比較例1 実施例1の超電導限流素子に磁場を印加せずに、200Aの
過電流を流す動作実験を行ったところ、 40Aで限流しは
じめたが、すぐに導通がなくなった。素子を調べると局
所的に焼損しており、局所的にSN転移が生じているこ
とが分かった。また、 60Kまで冷却して零磁場下で200A
の動作試験を行ったが、同様に120Aで限流しはじめた
が、すぐに焼損して導通がなくなった。
【0060】実施例2 Y組成を増加させ、Y2 3 を析出させたYBCO薄膜
1を用いる以外は、実施例1と同様にして超電導限流素
子を作製した。このYBCO薄膜1をTEM観察したと
ころ、場所によってY2 3 は偏ることなく、ほぼ均一
に分布していることを確認した。Y2 3 はピニングセ
ンタとして働き、このY2 3 を析出させたYBCO薄
膜の77K,0.1Tの巨視的ピニング力は 5×109 N/m3 であ
った。そして、Jc −B特性は図14に示すように、実
施例1に比べて向上させることができた。その結果、 7
7Kにおける限流開始電流を0.1Tで 38A、0.5Tで 36A、1T
で20Aと増加できた。
【0061】さらに実施例1と同様の回路で試験を行っ
たところ、図15に示すような限流特性が得られた。動
作後30秒以内で超電導状態に回復し、動作実験を10回以
上繰り返し行うことができた。また、電源電圧を200Vに
増加しても同様に動作した。 実施例3 酸化物超電導体薄膜1のパターンを図5に示したミアン
ダ構造とする以外は、実施例1と同様にして超電導限流
素子を作製した。この場合、自己磁場は折り返し部分で
侵入しやすく、SN転移は局所的に生じやすい。磁場を
印加しても自己磁場の影響は残るが、常伝導転移領域は
他の部分でも生じやすくなり、また常伝導領域も増加す
る。図16に0.1Tの磁場を印加した場合の各部の発生電
圧を示す。各部の電圧端子(A,B,C,D,E,F,
G)間は 1mmである。各部で同時に電圧発生しており、
複数箇所で常伝導状態となっていることが分かる。その
ため、回路電流200Aにおいて焼損せずに正常に動作し、
10A以下に限流することができた。また、この動作実験
を10回以上繰り返し行うことができた。
【0062】比較例2 実施例3のミアンダパターン超電導限流素子に磁場を印
加せずに、200Aの過電流を流して、各部の発生電圧波形
を測定した。その結果を図17に示す。パターンの折り
返し部分B、D、Fでは電圧発生して常伝導転移してい
るが、他の部分A、C、E、Gでは電圧が発生せず、超
電導状態のままであることが分かる。そのため、折り返
し部分B、D、Fに電力消費が集中し、限流しはじめて
すぐに折り返し部分B、D、Fで焼損した。
【0063】実施例4 直径50mmのSrTiO3 単結晶基板上にYBCO薄膜を
1μm の膜厚で積層した。その後、図1(b)に示すよ
うな螺旋状のパターンをイオンミリングにより形成し
た。このYBCO薄膜上に厚さが50nmのAg保護膜を積
層した。また、電流導入部分のみ、さらに 500nmの厚さ
になるようにAg保護膜を積層した。その後、YBCO
薄膜とAg保護層との接触抵抗を小さくするために、酸
素中で673K×20分間の条件でアニールした。
【0064】このようにして作製した超電導限流素子
を、図10に示したようにコールドヘッド21上に配置
されたコア(直径60mm×長さ50mm)22上に設置し、コ
イル24の一端を超電導限流素子の一方の電極に接続し
た。そして、コイル24の他端部と超電導限流素子の他
方の電極を、通常100Aの電流が流れる試験回路に直列に
接続した。コイル24はコア22に40ターン巻いて作製
した。これにより、YBCO薄膜には約0.1Tの磁場が常
時印加されている。
【0065】上記YBCO薄膜の磁場特性を図18に示
す。磁束のピニング力は弱いが弱結合の無い膜であるた
め、0.1T程度まではYBCO薄膜に垂直に磁場が印加さ
れてもIc の低下はほとんどない。しかし、それ以上の
磁場がかかると急激にIc が低下する。試験では負荷の
一部をショートし、回路に400Aの電流が流れる状況を故
意に作り出した。その際、回路を流れる電流が150Aにな
ると、超電導限流素子が抵抗を発生して、 50A以下にま
で限流した。
【0066】この場合、コイルを流れる電流が150Aにな
り、超電導限流素子にかかる磁場が0.1Tを超えたために
超電導が破れたと考えられる。ただし、磁束の侵入およ
び移動による抵抗の発生を経て常伝導に転移しているた
め、局所的なクエンチは起こりにくく、焼損することは
なかった。
【0067】比較例3 実施例4と同じ構造の超電導限流素子にコイルを直列に
接続せず、かつ磁場印加を行わないで100Aを通電し、負
荷をショートして400Aの電流が流れる状況を作ったとこ
ろ、電流が180Aに達したところで電流パスの一部が焼損
して使用不能となった。
【0068】なお、上記各実施例においては、酸化物超
電導体薄膜としてY−Ba−Cu−O系酸化物超電導体
を用いた例を示したが、本発明はBi−Sr−Ca−C
u−O系、Tl−Ba−Ca−Cu−O系、Hg−Ba
−Ca−Cu−O系、Nd−Ba−Cu−O系等の他の
酸化物超電導体にも適用可能である。また酸化物超電導
体薄膜としてYBCO膜を用いる際、Y組成を変化させ
ることでピニングセンタ密度を増加させることができ、
その結果として限流開始電流を増加させることができ
た。これは特に磁場印加時に有効であった。Y組成を変
化させるだけでなく、Ba、Cu組成を変化するとY21
1 、CuO、Cu2 O、BaO、BaCuO2 等の異相
が析出し、その大きさや分布状態によってピニング力が
異なり、限流開始電流を変化させることが可能であっ
た。
【0069】また、金属保護層としてAgを用いた例を
示したが、Cu、Auでも同様の効果が得られた。保護
層には金属の他に低温での熱伝導率の高いMgO等の酸
化物、AlN等の窒化物を用いた場合も同様の効果が得
られた。また、磁石として電磁石を用いたが永久磁石を
用いても同様な効果が得られ、特に本発明においては、
限流装置そのものの電力消費を少なくするためには、永
久磁石により定磁場を印加する構成の方が好ましい。
【0070】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の超電導限
流素子によれば、磁場を印加することで電圧発生位置お
よび電圧発生領域を増加させることができ、これによっ
てSN転移領域を分散あるいは常伝導転移領域を広くす
ることが可能となるため、局所的な発熱による焼損等の
発生を防止することができる。従って、良好な限流特性
を得た上で、繰り返し動作させることが可能となる。
【0071】また、本発明の超電導部材によれば、大電
流が流れた場合においても超電導線路間の放電が防止で
きるため、放電による素子破壊を抑制することが可能と
なる。本発明の超電導部材は超電導限流素子等に好適で
ある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態による超電導限流素子の
要部構成を示す図で、(a)はその断面図、(b)は平
面図である。
【図2】 図1に示す超電導限流素子における保護層の
変形例を示す断面図である。
【図3】 図1に示す超電導限流素子の変形例を示す断
面図である。
【図4】 本発明の超電導限流素子における超電導線路
パターンの他の例を示す平面図である。
【図5】 本発明の超電導限流素子における超電導線路
パターンのさらに他の例を示す平面図である。
【図6】 本発明の超電導限流素子における超電導線路
パターンのさらに他の例を示す平面図である。
【図7】 図6に示す超電導線路パターンの変形例を示
す斜視図である。
【図8】 図1に示す超電導限流素子に磁場を印加した
状態の一構成例を示す図である。
【図9】 図1に示す超電導限流素子を配電系統に組込
んだ状態を示す図である。
【図10】 本発明の他の実施形態による超電導限流素
子を含む限流装置の構成を示す図である。
【図11】 実施例1の超電導限流素子のJc −B特性
を示す図である。
【図12】 実施例1の超電導限流素子の 77Kにおける
限流特性を示す図である。
【図13】 実施例1の超電導限流素子の 60Kにおける
限流特性を示す図である。
【図14】 実施例2の超電導限流素子のJc −B特性
を示す図である。
【図15】 実施例2の超電導限流素子の 77.3Kにおけ
る限流特性を示す図である。
【図16】 実施例3の超電導限流素子の各部における
電圧発生状態を示す図である。
【図17】 比較例2の超電導限流素子の各部における
電圧発生状態を示す図である。
【図18】 実施例4の超電導限流素子の印加磁場と臨
界電流Ic との関係を示す図である。
【符号の説明】
1……酸化物超電導体薄膜 2……基板 6……超電導限流素子 7……磁界発生装置
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 久保田 宏 神奈川県川崎市幸区小向東芝町1番地 株 式会社東芝研究開発センター内 (72)発明者 芳野 久士 神奈川県川崎市幸区小向東芝町1番地 株 式会社東芝研究開発センター内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 第二種超電導体で構成された超電導線路
    を有する超電導限流素子において、 前記超電導線路を構成する第二種超電導体は、少なくと
    も106 N/m 3 の巨視的ピニング力を有し、かつ前記超電
    導線路中には該超電導線路を流れる電流方向に対して略
    垂直な方向に印加した0.01〜 10Tの磁場に基く磁束が侵
    入していることを特徴とする超電導限流素子。
  2. 【請求項2】 第二種超電導体で構成された超電導線路
    を有する超電導部材において、 前記超電導線路は、隣接する超電導線路に同じ向きの電
    流が流れるように形成されており、かつ前記超電導線路
    の幅をL、厚さをt、隣接する超電導線路間の距離をd
    としたとき、d≧0.01LかつL≧ 100tの関係を満足す
    ることを特徴とする超電導部材。
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