JPH09217123A - 高引張り強度ステンレス鋼シート又はストリップの製造方法 - Google Patents

高引張り強度ステンレス鋼シート又はストリップの製造方法

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JPH09217123A
JPH09217123A JP9005456A JP545697A JPH09217123A JP H09217123 A JPH09217123 A JP H09217123A JP 9005456 A JP9005456 A JP 9005456A JP 545697 A JP545697 A JP 545697A JP H09217123 A JPH09217123 A JP H09217123A
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ヨーン−ウ・キム
Lewis L Kish
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高引張り強度ステンレス鋼シート又はストリ
ップの製造方法を提供すること。 【解決手段】 フェライトとマルテンサイトとの二重相
から本質的に成る高引張り強度ステンレス鋼シート又は
ストリップの製造方法であって、冷延ステンレス鋼をア
ニーリング温度に30秒間未満で加熱することによって
迅速にアニーリングする工程と;加熱した鋼をオーステ
ナイトをマルテンサイトに変換するために充分な冷却速
度で冷却する工程とを含む方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、通常に製造される
同様なシート又はストリップに比べて優れた引張り強度
とビッカース硬度とを有し、アニーリング温度に迅速に
加熱した後にオーステナイトをマルテンサイトに変換す
るために充分な速度で冷却する工程を用いて製造される
微粒子二重相フェライト−マルテンサイトステンレス鋼
シート又はストリップの製造方法に関する。本発明はさ
らに詳しくは、一般に均一な微細粒度を有する二重相フ
ェライト−マルテンサイトステンレス鋼シート又はスト
リップの製造方法であって、シート又はストリップを約
1900゜F〜約2250゜F(1038℃〜1232
℃)の範囲内の温度に迅速にアニーリングし、該シート
又はストリップをオーステナイトをマルテンサイトに変
換するために充分な冷却速度で冷却することによる製造
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】二重相フェライト−マルテンサイトステ
ンレス鋼ストリップの好ましい機械的特性と成形性(for
mability)との望ましい組合せは専門的な製鋼業者に周
知であり、このような鋼の特性は製鋼業者の顧客によっ
て有利に利用される。最近数年間に、二重相フェライト
−マルテンサイトステンレス鋼ストリップはエレクトロ
ニクス産業において、特にコンピュータ製造用途におい
てますます増大して用いられている。エレクトロニクス
産業におけるビジネスの増大に伴って、二重相フェライ
ト−マルテンサイトステンレス鋼シート又はストリップ
の需要及び、通常の方法によって加工される現在入手可
能な二重相フェライトステンレス鋼によって確実には供
給されない、改良された成形性と共に改良された硬度、
降伏/引張り強度及び伸び特性を有するこのようなシー
ト又はストリップの需要が増大している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明の
目的は、通常の加工方法によって得られるものよりも優
れた機械的特性を有する二重相フェライト−マルテンサ
イトステンレス鋼シート又はストリップの製造方法を提
供することである。本発明の他の目的は、このような望
ましい機械的特性を有する二重相フェライト−マルテン
サイトステンレス鋼シート又はストリップの製造方法で
あって、アニーリング時間を減じ、アニーリング装置の
長さと総合ライン長さとを短縮するように迅速に実施さ
れることができる製造方法を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記目的は、第1工程に
おいて好ましくはシート又はストリップの形状である冷
延ステンレス鋼を30秒間未満でアニーリング温度に加
熱することによって加工する、図1に概略的に説明され
る本発明の迅速アニーリング方法によって達成される。
第2工程では、加熱した鋼を該鋼中のオーステナイトを
マルテンサイトに変換するために充分な冷却速度で冷却
して、フェライトとマルテンサイトとから本質的に成る
二重相生成物を形成する。以下に述べる好ましい実施態
様の詳細な説明において実証されるように、本発明の迅
速アニーリング方法によって製造される二重相フェライ
ト−マルテンサイトステンレス鋼は、通常に製造される
フェライトとマルテンサイトとの二重相から成るステン
レス鋼シート又はストリップに比べて高い引張り強度と
硬度とを有し、鋼の降伏強度と伸びとに対する有意に不
利な効果を示さない。
【0005】本発明の方法によって製造される二重相鋼
に強化された引張り強度と硬度特性をより良く与えるた
めに、冷延ステンレス鋼を30秒間未満でアニーリング
温度に加熱することが好ましく、該鋼をアニーリング温
度に迅速に加熱するためにトランスバースフラックス誘
導加熱(“TFIH”)を用いることも好ましい。好ま
しくは、鋼をその温度まで迅速に加熱するアニーリング
温度は約1900゜F〜約2250゜F(1038℃〜
1232℃)の範囲内であり、この温度は30秒間未満
の限られた時間内に、好ましくは10秒間未満に達せら
れる。好ましい実施態様では、鋼を少なくとも200゜
F/秒(111℃/秒)の加熱速度で該温度に加熱する
ことができる。最も好ましい実施態様では、アニーリン
グ温度に達した直後に冷延鋼に本発明の方法の冷却工程
を受けさせる。
【0006】この方法を好ましくはAISI400型シ
リーズのステンレス鋼に適用され、より好ましくは、4
30型クロムステンレス鋼を包含するフェライトクロム
ステンレス鋼に適用される。好ましい実施態様では、本
発明の方法は好ましくはシート又はストリップの形状の
冷延AISI430型鋼に適用されて、二重相フェライ
ト−マルテンサイト生成物を生じる。冷延T−430鋼
を10秒間未満の時間対温度(“TTT”)で迅速に約
1900゜F〜約2250゜F(1038℃〜1232
℃)の範囲内のアニーリング温度に迅速にアニーリング
し、次に、アニーリング温度に達した直後に好ましくは
周囲空気中で冷却して、オーステナイトからマルテンサ
イトに変換することによって該冷延T−430鋼を加工
することによって、優れた二重相生成物が得られること
が判明している。冷延T−430ストリップを加工する
ために本発明の方法を適用することによって、約30〜
40%マルテンサイトを含む均一ASTM8〜9粒度を
有し、約220〜270ビッカース硬度と約110〜1
20ksi(758.4〜827.3MPa)の引張り
強度とを有する二重相フェライト−マルテンサイト鋼を
製造することができる。これらの性質は、ガス燃焼又は
電気抵抗−加熱炉を用いてT−430鋼を迅速にアニー
リングすることによって得られる二重相フェライト−マ
ルテンサイト生成物の硬度及び引張り強度よりも優れて
いる。また、迅速にアニーリングされた生成物の強化さ
れた引張り強度及び硬度は、通常に加工される生成物に
比べて降伏強度又は伸び特性の有意な変化なく得られ
る。迅速アニーリング方法は通常のアニーリングに比べ
てシート又はストリップ上の直線距離につき少ない時間
で実施されるので、ライン上の他の装置の速度を高める
ことができるならばアニーリングラインのスループット
を上昇させることができる。
【0007】本発明のこれらの特徴とその他の利点は、
以下に述べる好ましい実施態様の詳細な説明を検討し、
以下の図面を考慮するならば、明らかになり、より詳細
に理解されるであろう。
【0008】本発明は広範囲には、フェライトとマルテ
ンサイトとの二重相から成るステンレス鋼シート又はス
トリップを製造するための、図1に概略的に示す、迅速
アニーリング方法に関する。この鋼は重量%で約10〜
約20%のクロムと、0.30%までの炭素と、1.0
%までのマンガンと、1.0%までのケイ素と、1.5
%までのモリブデンと、残部の鉄及び通常の製鋼残留不
純物とを含むことができる。
【0009】
【実施例】実施例1 冷延(56%冷間絞り(cold reduction))AISI43
0型鋼の0.0118”(0.2997cm)厚さのス
トリップの18個の2”幅x11”長さ(5.08x2
7.94cm)サンプルを製造した。このT−430鋼
は表1に示した実験室化学(laboratory chemistry)を有
した。表1の組成は合金の総重量の重量%で記載する。
【0010】
【表1】
【0011】冷延T−430の18個のサンプルをトラ
ンスバースフラックス誘導加熱をシミュレートするため
に非常に迅速な時間対温度において迅速にアニーリング
した。TFIHでは、ストリップがインダクタ(inducto
r)を通過するときに、ストリップが時間と共に殆ど直線
的にピークアニーリング温度までに加熱される。次に、
ストリップがインダクタを出るときに放熱と対流とによ
って冷却される。一部には、冷延ストリップは必要なア
ニーリング温度に少なくとも200゜F/秒(111℃
/秒)から必要に応じて1050゜F/秒(583℃/
秒)までの加熱速度において加熱することができるとい
う理由から、TFIHがサンプルをアニールするために
選択された。TFIHによって与えられる迅速な加熱が
成核された(nucleated)オーステナイト粒子が成長する
時間を殆ど残さないと考えられる。TFIHによって迅
速にアニーリングされたステンレス鋼ストリップが典型
的に微細で均一な粒度を有することを、発明者は発見し
ている。微細で均一な粒度はプレーナ異方性(planar an
isotropy)をかなり減じて、改良された成形性を生じる
と予想される。必要な場合には、より高いアニーリング
温度を選択することによって、より大きな粒度を得るこ
とができると考えられる。
【0012】ASTM粒度に関して本明細書で用いる限
り、より大きい数はより微細な粒度を意味する。
【0013】TFIHによって金属ストリップを加熱す
る方法は当業者に周知であり、例えば米国特許第4,0
54,770号、第4,585,916号、第3,44
4,346号、第2,902,572号、第4,67
8,883号及び第4,824,536号によって例示
される。TFIHを用いて達成される実際の加熱速度は
インダクタ出力定格(power rating)、目標温度、ストリ
ップ厚さ及びライン速度を包含する、インダクタの設計
及び操作パラメータに依存する。本発明と本発明の開示
のために、特定の率(selected rate)のスループットに
おいて、例えばコブリング(cobbling)、バックリング(b
uckling)又は他の好ましくない効果を惹起するようなス
トリップ幅にわたる不均一な温度の発生を避けて、ステ
ンレス鋼ストリップ又はシートを所望のアニーリング温
度に充分に加熱するために、インダクタの磁極片の遮蔽
(shielding)と成形との適当な使用と共に、印加周波数
と出力(impressed frequency and power)との適当な組
合せを選択することは当該技術分野の熟練の範囲内であ
ると見なすことができる。
【0014】本発明の好ましい実施態様はTFIHを用
いてステンレス鋼サンプルの迅速なアニーリングを行う
が、本発明の方法に任意の代替え手段を用いて、シート
又はストリップを約30秒間未満の時間内でオーステナ
イトが形成されるアニーリング温度に加熱することがで
きる。迅速アニーリングのこのような代替え手段は縦方
向又はソレノイド誘導加熱、直接抵抗加熱及び高周波加
熱を包含する。
【0015】実物大(full-size)ストリップのTFIH
によるアニーリングを正確にシミュレートするために、
ニューヨーク州ペンステンキル(Poenstenkill)のDyn
amic Systems社によって提供されたGle
eble 2000TS Thermal Syste
mを用いて、サンプルをアニーリング温度に加熱した。
Gleeble系は、目標温度までの定常な加熱速度を
用いてかつ加熱されたサンプルを放熱と空気対流とによ
って冷却して、種々な条件下でのサンプルのアニーリン
グを可能にした。Gleeble系の確立された操作に
従って、18個のT−430ストリップサンプルを19
00゜F(1038℃)、1950゜F(1066
℃)、2000゜F(1093℃)、2050゜F(1
121℃)、2100゜F(1149℃)及び2150
゜F(1177℃)の目標アニーリング温度に各目標温
度に対して2、4又は8秒間のTTTを生じる加熱速度
でアニーリングした。ピーク温度に達した後に、加熱さ
れたサンプルを直ちに空冷し、続いて金属組織学的検査
及び機械的試験のために加工した。
【0016】Gleeble系でのTFIHアニーリン
グをシミュレートするために用いた加熱速度は、Gle
eble系で実施される典型的なアニーリングサイクル
シミュレーションの加熱速度に比べて、非常に高かった
ために、極度に高い入力が必要であった。TFIHアニ
ーリングサイクルを正確にシミュレートするためのGl
eeble系のサイクルプログラムと出力設定(power s
ettings)とを適当に調節する試行錯誤の多数回のランに
も拘わらず、各ランのピーク温度を正確に制御すること
は幾らか困難であった。サンプルの実際のピーク温度を
測定するために、Gleeble系のデータ収集特徴を
利用し、実際のピーク温度を回収したデータから記録し
た。目標アニーリング温度に正確に達することがある程
度困難であるにも拘わらず、各ランの実際のピーク温度
は目標温度に非常に近かった。各ランにおいて、サンプ
ルを表示ピーク温度に達した直後に冷却した。
【0017】表2はGleeble系を用いて迅速にア
ニーリングしたT−430シートの1コイルからの18
個のサンプルに関する目標温度、実際のピーク温度、T
TT、金属組織学的特性及び機械的特性を記載する。降
伏強度、極限引張り強度及び伸びは全て縦方向において
測定した。
【0018】表2に示すように、1899〜2150゜
F(1037〜1177℃)の実際のピーク温度範囲に
わたって、降伏強度は56.4〜61.3ksi(38
8.86〜422.65MPa)の範囲であり、極限引
張り強度は112.9〜119.3ksi(778.4
2〜822.54MPa)の範囲であった。
【0019】マルテンサイト%は当業者に周知の方法、
即ち、目視評価によって算出した。目視評価はNiko
nブランド金属顕微鏡を用いて実施した、この金属顕微
鏡はストリップのゲージと構造中のマルテンサイトの程
度とに依存して100X〜1000Xの倍率の範囲内で
操作することができる。
【0020】
【表2】
【0021】サンプル1〜18の粒度及び機械的特性を
通常に加工された二重相ストリップと比較するための基
準として、表3は通常の方法で製造された二重相フェラ
イト−マルテンサイト430型鋼の343種類の異なる
コイルの性質に関する統計を記載する。二重相物質のコ
イルが通常の方法で製造されたとは、冷延後に、鋼スト
リップを約20〜30秒間でアニーリング温度に加熱す
るガス燃焼又は電気抵抗加熱耐火性(refractory-lined)
炉内での連続アニーリング操作を用いて鋼ストリップを
熱処理して、オーステナイトを生成したことを意味する
ように意図される。通常に加工された二重相430型ス
テンレス鋼とは、1875゜F(1024℃)において
アニーリングして、次に不活性ガスのジェットブラスト
によって冷却してマルテンサイトを形成したものであ
る。
【0022】
【表3】
【0023】図2は、4秒間TTTによって1948゜
F(1064℃)の実際のピーク温度にアニーリングさ
れたGleeble−アニーリング済みサンプル#5の
ミクロ構造を示す200X倍率の顕微鏡写真である。こ
の顕微鏡写真における白色部分はフェライトマトリック
スであり、暗色部分はマルテンサイト相である。マルテ
ンサイト相はこのミクロ構造の約40%を成す。研究し
た温度範囲において迅速アニーリングプロセスの目標温
度とTTTとを変えることが合金の金属組織学的構造に
識別されるような影響を与えないことが判明した。AS
TM E112比較方法を用いて、各Gleebleア
ニーリング済みサンプルの粒度が、目標温度とTTTと
に関係なく、フェライトマトリックス中に約40%マル
テンサイトを含み、ASTM9.0(又は14μ)にお
いて実質的に均一であることが判明した。本発明の迅速
アニーリング方法によって得られるマルテンサイト:フ
ェライト比は、鋼の化学的組成の操作によって調節され
ることができ、このようにして鋼の機械的特性をさらに
改良することができると考えられる。
【0024】18個のGleebleアニーリング済み
サンプルを放熱と空気対流とによって空冷したが、本発
明の方法によって迅速アニーリングされたシート又はス
トリップがオーステナイトをマルテンサイトに変換する
ために充分な冷却速度を与える任意の既知冷却方法を用
いて冷却されることができると考えられる。他の点で
は、冷却方法は決定的ではなく、天然対流又は例えば空
気、水素若しくは不活性ガスを用いる強制対流を包含す
ることができる。
【0025】図3は、ピークアニーリング温度の関数と
しての表2に報告した平均ビッカース硬度数(VHN)
のプロットである。VHNの測定には、Wilson
Series2000機器を用いた。図3はまた、通常
アニーリング済み二重相T−430ストリップに関する
表3に報告した平均ビッカース硬度数をプロットした連
続(unbroken)直線と、表3の平均ビッカース硬度数から
の+と−の2標準偏差(平均値+2σと平均値−2σ)
での破直線をも包含する。図3には実直線と破直線が存
在するが、これらの直線をX軸上に与えるアニーリング
温度の関数であると解釈すべきではないことを認識すべ
きである。18個のGleebleアニーリング済みサ
ンプルの各々において、研究した温度範囲における迅速
アニーリングは、通常加工済みT−430コイルに関し
て表3に報告した221.4VHN平均値よりも大きい
硬度レベルを有する二重相フェライト−マルテンサイト
物質を生成した。本発明の迅速アニーリング方法によっ
て生じた硬度の増加は、266VHNまでの硬度値が得
られる1900〜2000゜F(1038〜1260
℃)の温度範囲において特に顕著である。
【0026】図4は、18個のGleebleアニーリ
ング済みサンプルの各々に関する実際のピークアニーリ
ング温度の関数としての降伏強度、極限引張り強度及び
伸び%のプロットである。図3におけるように、通常加
工済みT−430コイルに関する表3からの機械的特性
の平均値は図4に直線としてプロットされ、破線は各性
質に関する平均値±2標準偏差(±2σ)を示す。図4
は、本発明の迅速アニーリング方法がGleebleア
ニーリング済みT−430サンプルの極限引張り強度を
試験した温度範囲にわたって117.4ksiの平均値
にまで高めたことを実証する。このことは通常アニーリ
ング済み二重相T−430製品に関して表3に報告した
91.6ksiの平均極限引張り強度に比べて28.2
%増加を表す。図4はまた、極限引張り強度のこの増加
が本発明の方法によって、通常アニーリング済み二重相
T−430製品に比べてストリップの降伏強度と伸びと
に不利に影響することなく得られたものであることを実
証する。Gleebleアニーリング済みサンプルから
回収された降伏強度と伸びとの全ては表3からの平均値
近くになり、通常アニーリング済み二重相T−430製
品に関して算出された±2σ限界の範囲内であった。
【0027】実施例2 表4のサンプルNo.19〜34として示した、9種類
の加熱からの16種類コイルサンプルに対して、同様な
T−430鋼に関する実施例1と同じ方法で追加のTF
IHアニーリングシミュレーションを実施した。アニー
リングサイクルは4秒間TTTの速度での2050゜F
(1121℃)までの迅速アニーリングであった。この
温度までの加熱後に、サンプルを放熱と対流とによって
室温にまで空冷して、次に粒度、マルテンサイト%及び
ビッカース硬度に関して金属組織学的に評価した。要約
すると、本発明の迅速アニーリング方法はASTM8.
0〜9.0の範囲内の粒度と、27〜33%の範囲内の
マルテンサイトと、平均224VHNであるビッカース
硬度とを生じた。これらの値は実施例1の値よりもやや
低いが、通常の性質よりもまだ有意に良好である。
【0028】
【表4】
【0029】本発明の迅速アニーリング方法は、通常の
方法で加工した二重相物質の機械的特性に比べて、二重
相フェライト−マルテンサイトステンレス鋼の機械的特
性の有意な改良を与える。さらに詳しくは、1900〜
2150゜F(1038〜1177℃)の温度範囲にお
けるT−430鋼の迅速アニーリングはASTM8〜9
粒度の均一に分布された粒子と約30〜40%のマルテ
ンサイトとを含む二重相フェライト−マルテンサイト製
品を生成する。本発明の方法によって製造される二重相
T−430製品は、通常加工済みT−430に比べて優
れた硬度(220〜270VHN)と、優れた引張り強
度(112.9〜119.3ksi)とを有し、降伏強
度と伸び特性に対する不利な影響を示さない。
【0030】好ましい実施態様についての上記説明で
は、本発明の迅速アニーリング方法を冷延T−430フ
ェライトストリップに適用したが、AISI400型シ
リーズを包含して、任意の適当な冷延ステンレス鋼のシ
ート又はストリップに本発明の迅速アニーリング方法を
実施して、フェライトとマルテンサイトとから成り、通
常のアニーリング方法によって製造された二重相フェラ
イト−マルテンサイト鋼に比べて改良された機械的特性
を有する二重相製品を得ることができると考えられる。
したがって、本発明の方法を上記好ましい実施態様に関
連して説明したが、本発明の方法が異なる出発物質に適
用可能であり、上記方法に対する変更が本発明の範囲か
ら逸脱せずに行われうることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【図1】二重相フェライト−マルテンサイトシート又は
ストリップを製造するための本発明の方法の概略説明
図。
【図2】表2の実験サンプル#5のミクロ構造を示す2
00X倍率での顕微鏡写真。
【図3】本発明の方法によって加工した表2の実験サン
プルに関する実際のピークアニーリング温度の関数とし
ての平均ビッカース硬度数(VHN)のプロット。
【図4】本発明の方法によって加工した表2の実験サン
プルに関する実際のピークアニーリング温度の関数とし
ての降伏強度、極限引張り強度及び伸び%のプロット。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 ルイス・エル・キッシュ アメリカ合衆国ペンシルバニア州16055, サーバー,クレセント・ヒル・ドライブ 128

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 フェライトとマルテンサイトとの二重相
    から本質的に成る高引張り強度ステンレス鋼シート又は
    ストリップの製造方法であって、 冷延ステンレス鋼をアニーリング温度に30秒間未満で
    加熱することによって迅速にアニーリングする工程と;
    加熱した鋼をオーステナイトをマルテンサイトに変換す
    るために充分な冷却速度で冷却する工程とを含む方法。
  2. 【請求項2】 前記冷却工程後にステンレス鋼シート又
    はストリップが、通常に製造されるフェライトとマルテ
    ンサイトとの二重相から本質的に成るステンレス鋼シー
    ト又はストリップに比べて高い引張り強度と硬度とを有
    する、請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】 前記アニーリング温度が約1900゜F
    (1038℃)〜約2250゜F(1232℃)の範囲
    内である、請求項1記載の方法。
  4. 【請求項4】 前記迅速アニーリング工程において、冷
    延ステンレス鋼を前記アニーリング温度に約10秒間未
    満で加熱する、請求項1記載の方法。
  5. 【請求項5】 前記迅速アニーリング工程において、ア
    ニーリング速度が少なくとも200゜F/秒(111℃
    /秒)である、請求項1記載の方法。
  6. 【請求項6】 前記迅速アニーリング工程において、加
    熱速度が1050゜F/秒(583℃/秒)までであ
    る、請求項1記載の方法。
  7. 【請求項7】 前記迅速アニーリング工程において、冷
    延ステンレス鋼をトランスバースフラックス誘導加熱に
    よって加熱する、請求項1記載の方法。
  8. 【請求項8】 前記迅速アニーリング工程において、冷
    延ステンレス鋼を前記アニーリング温度に加熱し、該鋼
    が前記アニーリング温度に達した後に直ちに、該鋼に前
    記冷却工程を受けさせる、請求項1記載の方法。
  9. 【請求項9】 前記冷却工程において、フェライトとマ
    ルテンサイトとの二重相から本質的に成るステンレス鋼
    シート又はストリップに比べて実質的に同じ降伏強度及
    び伸びと共により高い引張り強度と硬度とを有するステ
    ンレス鋼を生じるために充分な冷却速度で、冷延ステン
    レス鋼を冷却する、請求項2記載の方法。
  10. 【請求項10】 請求項1で定義された方法によって加
    工されたステンレス鋼であって、重量%で下記成分:約
    10〜約20%のクロムと;0.30%までの炭素と;
    1.0%までのマンガンと;1.0%までのケイ素と;
    1.5%までのモリブデンと;残部の鉄及び通常の残留
    不純物とを含むステンレス鋼。
  11. 【請求項11】 冷延アニーリング済み鋼がフェライト
    相とマルテンサイト相とから本質的に成る、請求項10
    記載のステンレス鋼。
  12. 【請求項12】 シート又はストリップの形状である、
    請求項11記載のステンレス鋼。
  13. 【請求項13】 鋼がAISI400シリーズである、
    請求項11記載のステンレス鋼。
  14. 【請求項14】 鋼がAISI430型ステンレス鋼で
    ある、請求項11記載のステンレス鋼。
  15. 【請求項15】 フェライトとマルテンサイトとの二重
    相から本質的に成る高引張り強度ステンレス鋼シート又
    はストリップの製造方法であって、 AISI400シリーズの冷延ステンレス鋼を約190
    0゜F(1038℃)〜約2250゜F(1232℃)
    の範囲内のアニーリング温度に少なくとも200゜F/
    秒(111℃/秒)の加熱速度で加熱することによって
    迅速にアニーリングする工程と;その後直ちに、加熱し
    た鋼を周囲空気内で前記アニーリング温度からオーステ
    ナイトをマルテンサイトに変換するために充分な速度で
    冷却する工程とを含む方法。
JP9005456A 1996-01-16 1997-01-16 高引張り強度ステンレス鋼シート又はストリップの製造方法 Pending JPH09217123A (ja)

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