JPH09213265A - 質量選択多重ノッチ・フィルタ、多重ノッチ・フィルタの製造方法及び標的イオンの除去方法 - Google Patents

質量選択多重ノッチ・フィルタ、多重ノッチ・フィルタの製造方法及び標的イオンの除去方法

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JPH09213265A
JPH09213265A JP8336518A JP33651896A JPH09213265A JP H09213265 A JPH09213265 A JP H09213265A JP 8336518 A JP8336518 A JP 8336518A JP 33651896 A JP33651896 A JP 33651896A JP H09213265 A JPH09213265 A JP H09213265A
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Carl A Myerholtz
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    • H01J49/42Stability-of-path spectrometers, e.g. monopole, quadrupole, multipole, farvitrons
    • H01J49/4205Device types
    • H01J49/421Mass filters, i.e. deviating unwanted ions without trapping
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    • H01J49/42Stability-of-path spectrometers, e.g. monopole, quadrupole, multipole, farvitrons
    • H01J49/426Methods for controlling ions
    • H01J49/427Ejection and selection methods
    • H01J49/4285Applying a resonant signal, e.g. selective resonant ejection matching the secular frequency of ions

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Abstract

(57)【要約】 【課題】複数の標的イオンを効率よく除去できる高性能
四重極多重ノッチ・フィルタを提供する。 【解決手段】2対の平行電極を備えている四重極と、該
四重極に、対間で互いに逆極性で、対内の振動電位が等
しいrf四重極周波数成分を印加する。また標的イオン
を除去するための除去周波数成分を一対の平行電極間に
印加する。 rf四重極周波数成分で選択された質量/
電荷比を超えるイオンが、四重極を通過し、除去周波数
成分によって、標的イオンがイオン・ビームから除去さ
れる。複数の除去周波数成分がイオン・ビームにそれぞ
れの双極電場を形成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本願発明は、質量フィルタに関
し、より詳細には、特定の質量対電荷比をもつイオンを
除去する四重極質量フィルタ(質量分析計)に関する。
【0002】
【背景】質量分析(MS)は、化学構造の同定、混合物の成
分決定、及び定量的元素分析に有用な分析技術である。
この分析技術は、被検体のイオン化成分をそれらの質量
対電荷比によって分離することに基づいている。分析の
ための試料の捕集又はイオン化の何れにおいても、しば
しば、望ましくないイオン種が試料中に極めて高レベル
で存在することがある。望ましくない種の例には、ガス
クロマトグラフ装置のカラムを質量分析計への入力とし
て用いる時のバックグランドのヘリウムキャリヤーガス
及び誘導結合プラズマ(ICP)源から得た試料に見出され
る残留アルゴンガスがある。従って、予め決められた質
量対電荷比をもつイオンをイオンビームから選択的に除
去できるが、その他の全てのイオンを完全に通過させる
ことができる質量フィルタが求められるのである。
【0003】この目的のため、フィルタをイオンビーム
の経路中に挿入して、特定の質量対電荷比をもつ(汚染
物質、又は好ましくないイオンのような)標的イオンを
除去する一方、その他のイオンを通過させる方式が採ら
れた。好ましくは、フィルタの通過機能は、1個のイオ
ン種の除去ができるよう僅かに1原子質量単位の幅のノ
ッチ(切欠き)を有する。四重極を用いて作られた該フ
ィルタは、文献に報告されている。
【0004】四重極フィルタは、その中をイオンが、電
源に接続されている4本の平行四重極ロッドに平行で且
つそれらの間に芯出しされた軸に沿って進む装置である
(例えば、米国特許第.3,334,225号(Langmuir)及び米国
特許第5,187,365号(Kelley))。図1は、典型的な四重
極10を示し、これは、無線周波数(rf)振動電圧(以
後、"rf四重極電圧"と呼ぶ)を電極に供給する振動電源
20に接続された4本の平行で曲がっていない(即ち、直
線の)細長い電極(又はロッド)12、14、16、18を有す
る。一対の相向き合う電極12、16は、電源20の1つの極
に接続され、他の一対の対向電極14、18は、他の極に接
続される。rf四重極電圧は、周知の有効力によってイオ
ンを電極間に導く。(このrf四重極電圧の、Ωで表され
るrf周波数は、以後"rf四重極周波数"と呼ぶ。)
【0005】当分野で知られているように、望ましくな
い汚染物質のイオンをろ過して完全に除去するには、双
極電場の"除去"(excision)周波数を選択して、rf四重極
電圧で生じた有効電位によって四重極の下流へ導かれる
時に好ましくないイオンが呈する横運動の特定周波数に
一致させる。(rf四重極周波数より低い周波数を有す
る)この双極除去電圧は、好ましくないイオンが四重極
の下流へ横切る時にそのイオンの横運動の振幅を増大す
るように集中して作用する。結局、その横運動の振幅
は、そのイオンが四重極構造体を叩きそしてイオンビー
ムから排除される程に大きくなる。他の質量対電荷比を
有する他のイオンは、それらの除去周波数との同期状態
の欠如から、それらの横運動の振幅を顕著には増大しな
い。この方法で、質量選別が達成されるのである。
【0006】このように、ノッチ・フィルタは、rf四重
極周波数のみの構成(即ち、DC電圧無し、この場合四重
極は"イオンパイプ"として有効に作用)で四重極を作動
させ、且つrf四重極周波数より低い周波数の双極除去電
圧を対向対の4本の四重極ロッドに印加することにより
実現される。その例は次の文献に見られる:Reinsfelde
r et al.,"Theory and Characterization of a Separat
or Analyzer Mass Spectrometer,"Int.J.Mass Spec.and
Ion Physics, 37:241-250 (1981)及びMilleret al.,"A
Notch Rejection Quadrupole Mass Filter,"Int.J.Mas
s Spec.and Ion Phsics,96:17-26 (1990)。
【0007】前述の双極除去系においては、("双極電
場"を作り出す)比較的低い周波数の双極除去電圧が、
電子結合ネットワークを介して対向対の4本の四重極ロ
ッドに印加される。そのような結合ネットワークを必要
とする理由は、任意の2つの隣り合う電極は極性が逆に
なるように比較的高い周波数のrf四重極電圧が印加され
るが、除去電圧が印加される対向電極は逆の極性になる
ようにこの比較的低い周波数の除去電圧が印加されるこ
とによる。このように、電子結合ネットワークは、除去
電圧をより高い周波数のrf四重極電圧から分離するのに
必要となる。該電子結合ネットワークの例は、上記の"A
Notch Rejection Quadrupole Mass Filter,"Miller et
al.,(Miller等の図5参照)に記述されている。該電
子結合ネットワークは、一対のロッドを二対の四重極ロ
ッドから分離できる追加の無線周波数変圧器を必要とす
る。低い周波数の除去電圧は、この変圧器の一次巻線を
介して結合される。この分離の仕組みには、さらに、種
々の無線周波帯チョークとコンデンサを使う必要があ
る。
【0008】
【発明の目的】本願発明は、特定の質量対電荷比を有す
る標的イオンをイオンビーム(例えば、イオンの混合体
を含むビーム)から選択的に除去するための多重ノッチ
・フィルタを提供するものである。
【0009】
【発明の概要】この多重ノッチ・フィルタは、四重極と
その四重極において電気ポテンシャル(即ち、電圧)を
駆動する電源とを有する。四重極は二対の平行電極をも
つ。各対は、2つの対向電極から成る。四重極は、入口
端と出口端を有し;イオンビームは入口端から出口端へ
横切るよう導かれる。また、この多重ノッチ・フィルタ
は、rf四重極周波数成分と除去周波数成分の組合せであ
る(即ち、それらを含んでいる)振動電圧を発生できる
電源を有する。該電源は、rf四重極電圧が四重極電極に
印加される時、各対の(互いに相対して向き合う)対向
電極内で、電極が同一の電圧を有し且つ二対は180°位
相がずれるように接続する。除去周波数成分(即ち、振
動除去電圧)は、それぞれ、対のうちの1つの対向電極
間に印加される。少なくとも1つの除去周波数電圧が対
向電極の1つの対の間に印加され、少なくとも1つの他
の除去周波数電圧が他の対の対向電極間に印加される。
各除去周波数電圧に関して、そこへ接続された対の2つ
の対向電極は、極性が逆となる(即ち、180°位相がず
れる)。例えば、2つの除去周波数を使う場合、1つの
除去周波数電圧は対向電極の1つの対の間に印加され、
他の除去周波数電圧が対向電極の他の対の間に印加され
る。ここで用いられるように、振動電圧(例えば、rf除
去電圧)が2つの電極間に印加されると記述する場合、
1つの電極について生ずる電気ポテンシャルは、印加振
動電圧に基づく他の電極のそれとは180°の位相のずれ
がある。
【0010】電極での電圧の振動は、イオンビーム中の
イオンの移動に影響する有効力となる。rf四重極電圧で
生ずる有効力は、四重極に沿って入口端から出口端へ選
択した質量対電荷比以上のイオンを誘導する。各除去周
波数電圧によって異なった標的イオン(即ち、異なった
質量対電荷比のイオン)が共振し、四重極を出る以前に
イオンビームから取り除かれることになる。このよう
に、各除去周波数電圧は、質量フィルタにおいて異なっ
た標的イオン毎に別々の"ノッチ"即ち"除去ウインドウ"
を作り出すのである。複数の除去周波数成分(即ち、電
圧)を使う、多重ノッチ・フィルタは、複数の特定質量
対電荷比をもつ標的イオンを除去することができる。質
量対電荷比をここでは"質量"とも呼ぶ。
【0011】本願発明はまた、複数の望ましくない標的
イオンをイオンビームから除く方法と、そのような望ま
しくない標的イオンの排除を達成できる四重極多重ノッ
チ・フィルタの作製方法も提供するものである。
【0012】rf四重極電圧だけが電極に印加される、在
来の四重極は、高域質量フィルタとして働く(即ち、そ
れによって選択した質量対電荷比以上のイオンを通過さ
せ、一方その選択比以下のイオンを排除する)。この選
択比(即ち、"遮断"比)は、印加されるrf四重極電圧の
周波数と振幅で定められるものである。遮断比がイオン
ビーム中の対象物の最低質量対電荷比以下になるよう選
択されると、四重極は"イオンパイプ"として働く。イオ
ンは、(rf四重極電圧によって生成され且つ四重極の
(軸に沿って)センターラインの方へ向けられる)有
効"電位"によって四重極電極の下流へ(又はそれに沿っ
て)導かれる。それ故、イオンは、有効電位の回復力で
生じた横振動により四重極の軸の下流へ進む。そのよう
な振動する、"跳ね返り"(上下振動)経路は、効果的に
調和振動する。ここで用いられるように、電極に"沿っ
て"、"下流へ"又は"平行に"動くイオンの運動をみる
時、その運動は、以下に述べるように、横成分を有しう
ると理解される。
【0013】特定のイオンについては、有効電位は、四
重極を横切るイオンの質量対電荷比に部分的に依存す
る。(特定の質量対電荷比をもつ)イオンは、有効電位
の影響下で四重極の下流へ移動する時、以後マクロ運動
と呼ぶ、調和運動を特定のマクロ運動周波数で横方向に
受ける。本願発明により、追加調和電圧(以後、除去周
波数電圧と呼ぶ)を"マクロ運動"周波数に等しい除去周
波数で四重極に印加することにより標的イオンを排除す
るために、イオンが電極を打つまで集中してイオンのマ
クロ運動を急速に成長させる力を与えられるよう、振動
電場が作り出される。電極の所で、イオンが中和され、
そのため、イオンビームから排除される。異なったマク
ロ運動周波数を有するイオンは、除去電場がこれらのイ
オンの横方向のマクロ運動を集中して増幅するよう作動
しない故、除去周波数電圧では顕著には影響されない。
【0014】本願発明の多重ノッチ・フィルタは、複数
の特定質量対電荷比をもつ標的イオンを除去することが
できる。通常、用いる電気部品類の数を減らすことによ
って、質量選別フィルタの複雑さを最小にすることが望
まれよう。それ故、多重ノッチ・質量フィルタを製作す
るには、単一対の対向電極に多重振動除去周波数電圧を
印加してその単一対の電極を分離するのにただ1つの電
子結合ネットワークで事足りるようにすることが、望ま
しいと思われる。しかし、様々な対の対向電極に様々な
除去周波数電圧を印加することにより、より鋭利で且つ
より深いノッチを実現できることを我々は見出してい
る。本発明により、ノッチは、例えば、1m/z幅に関し
て(m/zは、対象イオンの素電荷で表わした全電荷量で
原子量単位(amu)の質量を除した値に対応)、2つ以上
の選択質量(即ち、質量対電荷比)の所に配置できる。
標的ノッチにおける通過抑制は、10-3をはるかに下回る
通過を可能にするよう設定することができる。ノッチ・
フィルタは、ノッチの外部では(もし他のフィルタ除去
範囲でなければ)完全な通過(即ち値1の通過)を許容
することができる。
【0015】
【好ましい具体例の詳細な説明】以下において本願発明
の具体例を説明するための図面において、同じ数字はい
くつかの図における同じ構造特徴を表す。本発明は、二
対の四重極ロッド(又は電極)に低周波数の除去電圧と
高周波数のrf四重極電圧の両方を印加するものである。
多重ノッチろ過は、除去電圧がrf四重極電圧に直接重畳
しないように(即ち、結果として生ずる電圧が丁度電圧
の和にならないように)電圧分離してrf四重極電極にこ
れらの電圧を印加することにより達成される。rf四重極
電圧は二対の電極間に印加される。いくつかの(少なく
とも1つの)除去周波数電圧は対向電極の1つの対に印
加され、いくつかの他の(少なくとも1つの)除去周波
数電圧は対向電圧の他の対に印加される。
【0016】(四重極にかけられたrf電圧によって生ず
るイオン運動) 下記は、四重極におけるイオン運動に関する簡単な理論
的説明を与えるものである。図1に描写した四重極構造
に関して、x、y、zのデカルト座標系でz-軸を横切る次
元の電圧は次の形を持つ: Φ=Φ0(x2-y2)/r0 2 ・・・式(1)、 ここで、r0は四重極の中心軸から電極上の最も近い点ま
での距離であり、Φ0は印加電圧である。z-軸に沿って
電位は不変である故、四重極の軸に沿って進むイオンが
感じる力は横方向におけるだけである。これらの力は下
式で与えられる:
【0017】
【数1】 ここで、eはイオン上の電荷である。質量mをもつイオン
では、式(2)はデカルト座標で次の形を持つ:
【数2】 式(5)の形の印加電位(電圧)に関して(ここでΩは
角速度、UはDC(直流)成分、及びVはAC(交流)の振
幅)、横方向のディメンションに関する運動方程式は、
式(6)、(7)となる。 Φ0=U−VcosΩt ・・・・(5) mr0 2(d2x/dt2)+2ex(U−VcosΩt)=0 ・・・(6) mr0 2(d2y/dt2)+2ey(U−VcosΩt)=0 ・・・(7)
【0018】適正な定義を行い、時変数にスケーリング
を施すことによって、これらの式をマシュー方程式の標
準形式で書くことが可能になる, d2x/dξ2+(a-2qcos2ξ)x=0 ・・・(8)、 d2y/dξ2-(a-2qcos2ξ)y=0 ・・・(9)、 ここで、a=8eU/(mr0 2Ω2)、q=4eV/(mr0 2Ω2)、ξ=Ωt/
2である。
【0019】マシュー方程式はよく知られており、その
解は、図2に示した標準の安定度線図の検討により、定
性的に解析することができる。図2は、"不安定領域"R
1、R2と"安定領域"R3とを示す。安定領域におけるパラ
メーターa及びqに関して、マシュー方程式に対する解は
有限であり、時間(即ち、ξ)につれ準周期である。こ
の安定領域外にあるパラメーターに関しては、解は時間
(即ち、ξ)につれて指数関数的に大きくなり、従っ
て、不安定とみなされる。図3Aと図3Bは、安定及び不安
定領域におけるパラメーター組に関するマシュー方程式
の数値積分した解の例を示すものである。
【0020】もしDC電圧がゼロに等しく設定され(U=0、
従ってa=0)且つrf電圧が与えられた非ゼロ振幅と周波数
であるなら、四重極におけるイオン運動の安定度は、そ
の質量対電荷比によって決まる。パラメーターqは1/mに
比例して変化する故、"質量遮断"(V及びΩの実際の値
によって決まる、選択された質量対電荷比)以下の質量
を持つ全てのイオンは、不安定な飛翔軌跡に従い、そし
て質量遮断以上の質量を有する全てのイオンは、安定な
準周期の飛翔軌跡に従う。
【0021】パラメーターが、適当に、即ち、適当に低
い質量遮断となるように選択される場合、ただ1つの印
加rf電圧だけで作動される四重極により、ある質量遮断
以上の質量を有するイオン全てが通過できることにな
る。この方法では、前述のように、それは、質量遮断よ
り大きい質量対電荷比を有する全てのイオンに対して単
純な"イオンパイプ"として働く。
【0022】マシュー方程式に対する安定な解の定量的
挙動は、次の方法で解析することができる。マシュー方
程式で書かれるような相互作用の非線形性は、以後"ミ
クロ"運動と呼ぶ、急速なrf四重極電場の変化に対する
イオンの小さい振幅応答によって及び印加rf四重極電圧
に関する位相関係によって、イオンに対して"安定な"有
効電位を生ずる。この"安定な"有効電位は、四重極の軸
に沿って下流へイオンを導き、且つイオンに、印加rf四
重極電圧によって生じた小さい、急速なマクロ運動に重
畳された非常に大きい、比較的ゆっくりしたマクロ運動
の振動を受けさせるものである。このマクロ運動の周波
数は、1つのイオンについて計算され、印加rf四重極電
圧の振幅と周波数及びイオンの質量対電荷比によって決
まる。図3Aに示す数値積分した飛翔軌跡は、(ピーク22
等を有する)比較的速くて小さい振幅のミクロ運動に重
畳された(有効電位によってピーク24等を有する)遅く
て大きい振幅のマクロ運動の例を図解するものである。
質量対電荷比200m/z(M2)、500m/z(M5)、及び1000m/z(M1
0)を有するイオンの運動を表すカーブを示す。
【0023】上のように書かれたマシュー方程式の安定
な解(飛翔軌跡)は、ミクロ運動の振幅がマクロ運動の
振幅より非常に小さいという近似で、且つrf周期のオー
ダーで時間スケールにわたって平均化して、横方向の運
動が次の動的方程式の組で支配される: d2x/dξ2+(a+q2/2)x=0 ・・・・(10)、 d2y/dξ2+(-a+q2/2)y=0 ・・・(11)。
【0024】rf四重極周波数だけの(a=0)作動では、動
的方程式は、両方の横方向次元の単振動となる: d2x/dξ2+(q2/2)x=0 ・・・(12)、 d2y/dξ2+(q2/2)y=0 ・・・(13)。これらの方程式が
示すように、イオンは静的線形回復力を示す有効電位に
よって四重極のz軸に沿って案内され、オフセットがゼ
ロの中性位置に向かう。
【0025】上述の式及びξ及びqの前記定義から、マ
クロ運動周波数(角速度)は下記のように示すことが可
能である: ω0=qΩ/(221/2))= 21/2eV/(mr0 2Ω2) ・・・(14)。 上述の近似で、マクロ運動は、特定のrf四重極電圧Vとr
f四重極周波数Ωに関して純粋に調和(正弦)運動であ
る。マクロ運動の周波数は、1/mに比例して変化する。
【0026】(四重極多重ノッチ・フィルタの好ましい
具体例)図4は、本願発明の四重極多重ノッチ・フィル
タ100の例証となる具体例を示すものである。この四重
極多重ノッチ・フィルタ100は、イオンビームから2つ
の標的イオン(即ち、それぞれ異なった特定質量対電荷
比を有する第一及び第二のイオン種)を選択的に除去す
るのに使用できる。四重極多重ノッチ・フィルタ100
は、二対の直線平行電極(又はロッド)を有する四重極
電極組立体110を包含する。相対して向き合う電極12と1
6は、これらの対と他の対向電極14、18から成る対との
間に印加される(周波数Ωの)rf四重極周波数電圧に関
して、(対としての)それらの間に実質的な抵抗が存し
ないよう一緒に電気接続する。同様に、電極14と18は、
rf四重極周波数電圧に関して、それらの間に実質的な抵
抗が存しないよう一緒に電気接続する。各対(例えば、
電極対12、16)は、rf四重極周波数電圧に関して、他の
対(例えば、電極対14、18)と180°位相がずれてい
る。この状態では、2つの対は、極性が逆であると考え
てよい。
【0027】振動電圧(又は電力)源(OVS)120(図4で
は単独に指示せず120A,120B、120C総体を
120という)は、四重極電極組立体110の(周波数ω1
及びω2の)除去電圧同様、(周波数Ωの)rf四重極周
波数電圧を駆動する。電圧源120において、振動電圧源1
20Aは(周波数Ωの)rf四重極電圧を駆動し、振動除去
電圧源120Bは(周波数ω1の)第一除去電圧を駆動し、
そして振動除去電圧源120Cは(周波数ω2の)第二除去
電圧を駆動する。
【0028】周波数選択電気回路121(図4では単独に指
示せず121A,121B総体を121という)は、電
圧源120Aを(周波数ω1及びω2の)除去電圧源120B及び
120Cから分離するのに用いる。対向電極14、18は、(対
向電極14、18間の周波数ω1の除去電圧源120Bによって
供給される)第一除去電圧から電圧源120Aを分離すると
ころの、回路121Bを介して電圧源120Aの1つの電極に接
続される。対向電極12、16は、(対向電極12、16間の周
波数ω2の除去電圧源120Cによって供給される)第二除
去電圧から電圧源120Aを分離する回路121Aを介して電圧
源120Aの他の1つの電極に接続される。このやり方で、
電源120は、rf四重極周波数成分(即ち、周波数Ω)と
第一及び第二の除去周波数成分(周波数ω1及びω2)と
の組合せである振動電圧を発生する。除去周波数の各々
は、rf四重極周波数より低い。
【0029】四重極電極組立体110は、入口端122と出口
端124を有する。イオンビームは、四重極電極組立体110
の入口端122から出口端124へ電極に平行に延びるビーム
経路126を有する。電極12、14、16、18の電圧が振動す
ると、rf四重極電場で生ずる有効電位によって、選択質
量対電荷比(即ち、"質量遮断"比)以上のイオンを四重
極電極組立体の下流へ導く。第一除去電場と第二除去電
場は、それぞれ、第一標的イオンと第二標的イオンを共
振させ且つ四重極多重ノッチ・フィルタ100を出る前に
電極12、14、16、18の1つと衝突させる。
【0030】本願発明の四重極多重ノッチ・フィルタが
少なくとも2つの標的イオンをイオンビームから除去す
るのに用いられる組立体においては、多重ノッチ・フィ
ルタは、さらに、イオンビーム(即ち、イオン束)132
を四重極電極組立体110中に放射するイオン源130を包含
してよい。加えて、四重極電極組立体110を出るイオン
を検出するために検出器134を用いてもよい。そのよう
な応用に適するイオン源と検出器は、当分野で周知であ
る。四重極及び双極フィルタ用として適する電極、電
源、発振器、イオン源、及び検出器は、当分野で周知で
ある(例えば、四重極フィルタの構造説明及びその構造
の動作が参考としてここに引用されている上記Miller等
と上記Reinsfelder等によって記述されたそれら)。
【0031】図5は、図4の多重ノッチ・フィルタに使え
る本願発明による周波数選択分離回路の具体例の説明図
を示す。この周波数選択分離回路は、上記Miller等が示
したそれと類似している。本願開示から、熟練した当業
者は、上記Miller等の回路を改造して、多重ノッチ・フ
ィルタ用回路に到達できるであろう。図5において、電
圧源120Aは、(周波数Ωの)rf四重極周波数電圧を供給
するための変圧器142Aに接続された発振器140Aを包含す
る。変圧器142Aの出力(即ち、二次)巻線の1つの端子
は、分離回路121Aを介して対向電極12、16に接続する。
分離回路121Aにおいて、コンデンサ150Cと誘導コイル15
0Lは、出力巻線144Aと電極12間に直列に連結する。同様
に、コンデンサ152Cと誘導コイル152Lは、出力巻線144A
と電極16間に直列に連結する。コンデンサ150Cと152Cは
同一のキャパシタンスを有し、コイル150Lと152Lは同一
のインダクタンスを有する(但し、コンデンサと誘導コ
イルがそれぞれ同一でない場合の他の具体例も設計して
よい)。同様に、変圧器142Aの出力巻線の他の端子は、
分離回路121Bを介して対向電極14、18に接続する。分離
回路121Aと同様、分離回路121Bもコンデンサ154C、156C
及び誘導コイル154L、156Lを有している。
【0032】除去電圧源120Bにおいて、発振器140Bは変
圧器142Bに接続される(その出力巻線144Bは、電極14、
18間に、従って分離回路121Bへ接続される)。このよう
に、分離回路121Bは、電圧源120Aと電圧源120Bの間に挿
入されて、それらを相互に分離する。同様に、除去電圧
源120Cにおいて、発振器140Cは変圧器142Cに接続される
(その出力巻線144Cは、電極14、18間に、従って分離回
路121Cへ接続される)。コンデンサ(150C、152C、154
C、156C)のキャパシタンス及び誘導コイル(150L、152
L、154L、156L)のインダクタンスの値は、電極対14、18
(対の電極はrf四重極電圧に関して等電位)と電極対1
2、16(対の電極はrf四重極電圧に関して等電位)との
間に応用するため(周波数Ωの)rf周波数四重極電圧を
通すことができるように選択する。しかし、分離回路12
1Bは(周波数ω1の)第一除去電圧を通さず、その結
果、第一除去電圧源120Bによる電圧が電極14と18との間
に保持されることになる。同様に、分離回路121Aは、第
二除去電圧源120Cによる電圧を電極12と16との間に保持
する。この方法で、除去電圧が対向電極間に印加され、
一方、rf周波数四重極電圧が隣の(即ち、相対して向き
合っていない)電極間に印加されるように、除去電圧が
rf周波数四重極電圧に重畳される。
【0033】(除去電場の印加)四重極多重ノッチ・フ
ィルタは、選択した"質量遮断"より大きい質量対電荷比
を有するイオンが四重極の下流へ(即ち、入口端から出
口端の方へ)導かれるように、選択rf四重極周波数Ωの
電圧を有するよう作動される。本願発明に従い、電源
は、さらに、周波数Ωのrf四重極電圧に重畳された周波
数ω1及びω2の除去電圧で振動するよう電極を駆動す
る。除去周波数は、除去されるべき(即ち、イオンビー
ムから取り除かれるべき)標的イオンのマクロ運動周波
数(即ち、有効電位に応じて対応する標的イオンの主振
動周波数)になるよう選択する。
【0034】対応するマクロ運動周波数に整合する周波
数につれて双極電場が変化すると、標的イオンが追加駆
動場と同位相で振動し、従ってイオンビームから駆逐さ
れる。このプロセスを図6に示す。明快のため、(1つ
の標的イオンを除去するのに)1つの除去周波数だけを
記す。様々な除去周波数を有する多重除去電圧も同様に
実施されるものと理解される。
【0035】図6は、イオンが四重極組立体の下流へ通
過していく時のイオンの運動の略図である。除去電場
は、四重極中のイオンの位置に依存して、ある瞬間の横
方向のマクロ運動に従うか又は抗する力を生ずる。図6
に示すように、ピーク324A及び324Bは、rf四重極電圧に
よって生じた有効電位で引き起こされるマクロ運動によ
って標的イオンが通過した(曲線ABCDEFで表される)経
路のピークである。F1、F2、等は、除去電圧の双極電場
によって生じた(例えば、電極12と16間の)力の方向を
表す矢印である。マクロ運動経路の部分BとCでは、(電
極12と16間に印加された)除去電圧で生じた電場からの
(矢印F1で表される)駆動力は、マクロ運動を増強し
て、イオンを電極16から離して電極12の方へ追い立て
る。マクロ運動経路の部分DとEでは、(電極12と16間に
印加された)双極電場によって生じた電場は、今度は、
矢印F1とは反対の方向に、(今逆転された)イオンのマ
クロ運動をやはり増強する(矢印F2で表された)力にな
る。
【0036】双極電場と力の同様の図式はまた、rf四重
極電圧と(電極14、18間に印加される)他の除去電圧に
起因して電極14と18間にもあらわれる。この方法によれ
ば、除去されるべき様々な標的イオンのマクロ運動周波
数にある除去周波数を使うことによって、除去電場は、
標的イオンのマクロ運動の発散(横)成分を増強し(そ
れと同調状態にあり)、これらの横方向のマクロ運動を
増大させることになる。各標的イオンに関して、横方向
のマクロ運動の振幅が十分大きくなると、標的イオンは
四重極を出る以前に電極を叩き、従ってイオンビームか
ら排除される。
【0037】本願発明による質量選択多重ノッチ・フィ
ルタの実際の動作は、コンピュータプログラムを使って
シミュレートすることができる。除去電場を印加する効
果をシミュレートするため、イオンの運動方程式に項V
1 exとV2 exを追加すると、次のようになる: mr0 2(d2x/dt2)+2ex(U-VcosΩt)= 2exV1 excos(2ω1t) ・・・(15) mr0 2(d2y/dt2)-2ey(U-VcosΩt)= -2eyV2 excos(2ω2t) ・・・(16)。 ここに、 V1 exとV2 exとは、印加した除去電場の振幅
である。ω1とω2は、除去されるべき標的イオンのマク
ロ運動の周波数である。
【0038】図7Aは、除去のシミュレーションの代表的
結果を示す。この四重極多重ノッチ・フィルタは、15cm
の長さである。40m/zの質量対電荷比を有するイオンを
排除するのに適している周波数をもっている除去電場
と、17m/zの質量対電荷比を有するイオンを排除するの
に適している周波数をもっている除去電場とが、本願発
明による直交法で四重極に印加される。この方法で、1
つの除去電圧が1つの対の対向電極に印加され、他の除
去電圧が他の対の対向電極に印加される(即ち、双極電
場は垂直状態にある)。このグラフは、フィルタのスル
ープット(即ち、通過する特定質量対電荷比をもつイオ
ンの割合)を示す。該フィルタは、通過ノッチにおける
優れた除去特性を与えると共に、非標的イオン全てを完
全に通過させる(即ち、それは、それぞれ、ノッチ17P
と40Pで図解されるような、17m/zと40m/zの特定質量対
電荷比を有するノッチにあるものを除く全てのイオンを
通過させる)。
【0039】図7Bは、図7Aの40m/zノッチをより詳細に
示すものである。直交双極除去電場に関するものであ
る、図7Aの結果と比較して、実線のカーブ40Tは、"平行
配置の双極電場"、即ち、両除去電圧が同一の対向電極
対に印加されている(従って、平行な双極電場を有す
る)二重ノッチのスループットを示す。そのような平行
双極電場の配置構成は、(後述の)図8に示す具体例か
ら除去電圧源120Cと周波数選択回路121Aを除去すること
により満足させることができる。破線カーブ40Bは、直
交双極電場を有する二重ノッチのスループットを示す
(図7Aに示したカーブと同一)。直交双極電場構成でよ
り深いノッチが生成され、これは平行双極電場構成より
標的質量の小さいスループットを可能にすることを我々
は見出している。直交双極電場構成は、2x10-4未満のノ
ッチ・スループットを生成できる。平行双極電場構成の
ノッチの有効性が低いということは、2つの平行双極除
去電場の除去プロセスにおける相互作用に起因してい
る。理論的記述は、本願発明の理解を容易にするために
与えられるものである。本願発明による多重ノッチ・フ
ィルタは、本開示に基づいて適用できるものであって、
どの特定の理論にも依存しないことが了解される。
【0040】(質量選択多重ノッチ・フィルタの最適
化)本発明の多重ノッチ・フィルタでは、フィルタの有
効長は、最大化すべき重要因子である。相互作用の時間
が比較的長ければ、同一のノッチ深さ(標的イオン排
除)を得るのに比較的弱い除去電場を用いるだけで可能
である。非共振の質量対電荷比のイオンは、それらの位
相が同相、逆相となる際の短い同期周期中それほど影響
されない故、除去電場が弱ければ、より小さいノッチ幅
を生ずる。
【0041】性能は、次の方法で多重ノッチ・フィルタ
の有効長を最大にすることによって最適化される: (1) 四重極構造の物理的長さを最大にする。市販の四重
極は、通常、15cmのオーダーの長さをもっている。 (2) マクロ運動の周波数を最大にする。これによって、
除去電場が作用し得る周期の数が増える。これは、四重
極の質量遮断が対象の質量範囲以下であってほしいと要
求することで制約が課せられる、ということを先ず留意
することにより実行される。質量遮断の表現は、前述の
パラメーター"q"に関する式と図2の安定度線図から得
られる。安定な飛翔軌跡と不安定なそれとの間の境界
は、q=0.909で生ずる故、質量遮断mcは、下記によって
示される: mc=4eV/0.909/(r0 2Ω2) ・・・(17)
【0042】これによって、特定の質量遮断値を得るた
めの、rf電圧の振幅と周波数との間のの比が固定され
る。イオンマクロ運動周波数に関する方程式にこの関係
を利用すると、次のようになる: ω0=0.321(mc/m)Ω ・・・(18) これは、質量遮断の制約内でrf四重極周波数を最大にし
てマクロ運動周波数を、従って多重ノッチ・フィルタの
有効長を最大にすることが望ましいことを示している。
達成し得る最大rf四重極周波数が選択され且つ標的の
(望ましくない)質量対電荷比のマクロ運動周波数が上
式を使って計算されると、そのマクロ運動周波数で除去
電場を印加することができる。除去電場の振幅値は、許
容される1つのm/z以上にノッチ幅を拡げないで、ノッ
チの除去特性(最近接の"非標的"イオンからの分離)を
最大にするよう選択する。
【0043】(それぞれ異なった質量対電荷比を有す
る)2つ以上の標的イオン種を同時に除去し得る故、除
去電圧は、個々のマクロ運動周波数に対応する除去周波
数をもって、標的イオンの各々に加えることができる。
この場合、好ましくは、隣り合う(即ち、直ぐ隣の)ノ
ッチに対する除去電圧は、2つの別々の組の対向電極に
直交法で印加する。例えば、図8は、3つのノッチを有
する多重ノッチ・フィルタ400の略図を示すもので、こ
こで、ω1、ω2及びω3は、質量対電荷比を大きくした
ノッチに対応する除去周波数である。隣り合う周波数ω
1及びω2の除去電圧源は、隣り合う周波数ω3及びω2
除去電圧源同様、直交して配置される。しかし、周波数
ω1及びω3の除去電圧源は、平行配置の関係にある。4
つ以上のノッチがフィルタに与えられることになる場
合、除去電圧源は類似の方法で配置できる。
【0044】本願発明の装置の例証となる具体例及びそ
の装置の使用法を詳細に説明したが、上述の具体例は、
発明の精神と範囲から逸脱することなく、特にサイズと
形状並びに種々の記述した特性の組合せに関して、熟練
した当業者により変更し得るものと理解すべきである。
そこで、本発明の実施態様のいくつかを列挙して本発明
の理解に役立てる。
【0045】(実施態様1)イオンビーム(132)からそ
れぞれが異なった特定質量対電荷比を有する少なくとも
2つの異なった標的イオンを選択的に除去するための多
重ノッチ・フィルタにおいて、 (a)イオンビーム(132)を入口端(122)から出口端(124)へ
進めさせることができるよう入口端(122)と出口端(124)
を有し、四重極の振動電圧を与えるための2つの平行電
極対(12、16;14、18)を有する四重極(110)であって、
各対(12、16;14、18)が等電圧の相対する2つの平行電
極を有し、rf四重極周波数のrf四重極電圧が2つの電極
対間に印加される時、1つの対が他の対とは位相が180
°ずれた振動電圧を有することを特徴とする四重極(11
0)と; (b)四重極の振動電圧を駆動するために四重極に電気接
続されていて、2つの電極対間にrf四重極電圧から成る
組合せである振動電圧を、前記1つの相対する電極対間
に第一除去周波数(ω1)の第一除去電圧を、そして前記
他の1つの相対する電極対間に第二除去周波数(ω2)の
第二除去電圧を、発生させることができる電源(120A、
B、C;121A、B)であって、rf四重極電圧によりイオンビ
ーム中の選択質量対電荷比以上のイオンが四重極に沿っ
て入口端から出口端へ導かれるようにし、第一除去電圧
により第一標的イオンが共振して四重極を出る以前にイ
オンビームから取り除かれるようにし、且つ第二除去電
圧により第二標的イオンが共振して四重極を出る以前に
イオンビームから取り除かれるようにする電源(120A、
B、C;121A、B)とを含んで成る多重ノッチ・フィルタ。
【0046】(実施態様2)前記標的イオンの各々がrf
四重極電圧に応答して異なった主共振周波数を有し且つ
電源がそれぞれが異なった主共振周波数の周波数を有す
る除去電圧を使って四重極を駆動できるよう適用される
ことを特徴とする実施態様1記載の多重ノッチ・フィル
タ。 (実施態様3)2つの隣り合う主周波数に設定されてい
る前記除去電圧の任意の2つが前記相対する電極の2つ
の異なった対(12、16;14、18)に印加されることを特徴
とする実施態様2記載の多重ノッチ・フィルタ。 (実施態様4)電源が、rf四重極電圧と各除去電圧とを
別々に駆動できるように複数の発振器(120A、120B、120
C)を有する実施態様1又は2に記載の多重ノッチ・フィル
タ。 (実施態様5)周波数選択回路(121A、121B)が、rf四重
極電圧を駆動する発振器を除去電圧を駆動する発振器か
ら分離するために包含される実施態様1乃至4に記載の多
重ノッチ・フィルタ。
【0047】(実施態様6)少なくとも3つの除去電圧
が電極(12、16;14、18)に印加され且つ電源が、第一、
第二、及び第三の除去電圧を駆動して、それぞれ、第
一、第二、及び第三の標的イオンを除去する第一(120
B)、第二(120C)、及び第三(120D)の発振器を包含し、第
一、第二、及び第三の標的イオンが、除去されるべき全
ての標的イオンのうち高い順に隣り合う主共振周波数を
有し、前記第一と第三の発振器はそれぞれ電圧出力端子
を有し、前記第一(120B)と第三(120D)の発振器の電圧出
力端子は、1つの相対する電極対(14、18)間に重ね合わ
せるようにそれらの除去電圧を印加できるように直列に
接続され、第二の発振器(120C)は他の相対する電極対(1
2、16)間に第二の除去電圧を印加することを特徴とする
実施態様1乃至5に記載の多重ノッチ・フィルタ。
【0048】(実施態様7)イオンビーム(132)から異
なった特定質量対電荷比を有する少なくとも2つの異な
った標的イオンを選択的に除去するための標的イオンの
除去方法において、四重極の4つの平行電極(12、14、1
6、18)を2つの対(12、16;14、18)としてその電圧を駆
動し、各対が等電圧の相対する2つの電極(12、16又は1
4、18)から構成されるように振動rf四重極電圧を四重極
に印加する時、各対が他の対とは位相が180°ずれるよ
うにし、前記対の1つの相対する電極間の電圧を第一周
波数の第一除去電圧で駆動し、前記対の他の1つの相対
する電極間の電圧を第二周波数の第二除去電圧で駆動す
るステップを包含し、rf四重極周波数(Ω)は、選択質量
対電荷比以上のイオンを四重極に沿って誘導できるよう
選択され、第一除去周波数(ω1)は第一標的イオンを共
振させてイオンビームから除去できるよう選択され、第
二除去周波数(ω2)は第二標的イオンを共振させて四重
極を出る以前にイオンビームから除去できるよう選択さ
れ、イオンビームが四重極の入口端から出口端へ進むよ
う誘導されることを特徴とする方法。
【0049】(実施態様8)前記異なった標的イオンの
それぞれが、四重極電圧に応答して異なった主共振周波
数を有し、且つ除去電圧の周波数が前記異なった主共振
周波数になるよう選択される実施態様7記載の方法。 (実施態様9)rf四重極電圧と除去電圧とを駆動するた
めに、別々の発振器(120A、120B、120C)が用いられる実
施態様7又は8記載の方法。
【0050】(実施態様10)イオンビーム(132)から
異なった特定質量対電荷比を有する少なくとも2つの異
なった標的イオンを選択的に除去するための多重ノッチ
・フィルタを製造するための方法において、 (a)四重極(110)の第一対(12、16)として互いに対向する
2つの平行電極(12、16;14、18)を接続してその間に高
周波の電気的連絡をもたらし且つ四重極の第二対(14、1
8)として互いに対向する2つの平行電極を接続してその
間に高周波の電気的連絡をもたらすステップと; (b)四重極で振動電圧を駆動するために対向する電極の
2つの対からなる4つの平行電極を有する四重極(110)
に電気接続されていて、rf四重極電圧から成る組合せで
ある振動電圧を発生させ、それにより、各対の対向電極
(12、16;14、18)に関して等電位を生じ、且つrf四重極
電圧に関して他の対(14、18)と位相が180°ずれる対(1
2、16)を生成することができる電源(120A、B、C;121
A、B)を接続するステップであって、該電源は、さら
に、前記対向電極の1つの対(14、18)間に、前記対内の
電極(14、18)が第一除去電圧に関して互いに180°位相
がずれるように、第一除去周波数(ω1)の第一除去電圧
を発生でき、且つ前記対向電極の他の対(12、16)間に、
前記他の対内の電極(12、16)が第二除去電圧に関して互
いに180°位相がずれるように、第二除去周波数(ω2)の
第二除去電圧を発生でき、その結果、rf四重極電圧が選
択質量対電荷比以上のイオンを四重極(110)に沿って誘
導する電場を生じ、第一除去電圧は第一標的イオンを共
振させてイオンビーム(132)から除去し、第二除去電圧
は第二標的イオンを共振させて四重極を出る以前にイオ
ンビームから除去し、イオンビームが四重極の入口端か
ら出口端へ進むよう誘導されることを特徴とするステッ
プとを設けてなる多重ノッチ・フィルタの製造方法。
【0051】
【発明の効果】以上詳述したように、本願発明の教示に
より直交双極電場を使用すれば、イオンビームから効率
よく(一つあるいは複数の)標的イオンを除去できるの
で質量分析において有益である。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来技術の四重極の略図である。
【図2】マシュー方程式に基づく四重極の安定度線図で
ある。
【図3A】図2の安定領域にある四重極での種々の質量
(200m/z、500m/z、1000m/z)をもつイオンのミクロ運動
(22)及びマクロ運動(24)のグラフである。
【図3B】種々の初期条件下で、図2の不安定領域にお
ける36m/zのイオンのマクロ運動のグラフである。
【図4】本願発明の四重極多重ノッチ・フィルタの具体
例の略図である。
【図5】本願発明による図4の多重ノッチ・フィルタに
使う周波数選択分離回路を示す略図である。
【図6】双極電場において除去周波数電圧によって生じ
たマクロ運動と駆動力の説明のための経路図である。
【図7A】2つのイオン種を示す本願発明の四重極多重
ノッチ・フィルタのスループットのグラフである。
【図7B】図7Aの一部についてさらに詳細に示し且つ平
行除去電場構成を有するフィルタと比較する本願発明の
四重極多重ノッチ・フィルタのスループットのグラフで
ある。
【図8】3つのイオン種の除去のために3つのノッチを
有する本願発明の四重極多重ノッチ・フィルタの具体例
の概略回路図である。
【符号の説明】
10 四重極 12、14、16、18 電極(又はロッド) 20 振動電源 22 ミクロ運動のピーク 24 マクロ運動のピーク 100 四重極多重ノッチ・フィルタ 110 四重極電極組立体 120 振動電圧源 120A 振動電圧源(Ω) 120B 振動除去電圧源(ω1) 120C 振動除去電圧源(ω2) 121 周波数選択電気回路 121A、B 分離回路(周波数選択回路) 122 入口端 124 出口端 126 ビーム経路 130 イオン源 132 イオンビーム 134 検出器 140A,B,C 発振器 150C R1、R2 不安定領域 R3 安定領域

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】イオンビームからそれぞれが異なった特定
    質量対電荷比を有する少なくとも2つの異なった標的イ
    オンを選択的に除去するための多重ノッチ・フィルタに
    おいて、 (a)イオンビームを入口端から出口端へ進めさせること
    ができるよう入口端と出口端を有し、四重極の振動電圧
    を与えるための2つの平行電極対を有する四重極であっ
    て、各対が等電圧の相対する2つの平行電極を有し、rf
    四重極周波数のrf四重極電圧が2つの電極対間に印加さ
    れる時、1つの対が他の対とは位相が180°ずれた振動
    電圧を有することを特徴とする四重極と; (b)四重極の振動電圧を駆動するために四重極に電気接
    続されていて、2つの電極対間にrf四重極電圧から成る
    組合せである振動電圧を、前記1つの相対する電極対間
    に第一除去周波数の第一除去電圧を、そして前記他の1
    つの相対する電極対間に第二除去周波数の第二除去電圧
    を、発生させることができる電源であって、rf四重極電
    圧によりイオンビーム中の選択質量対電荷比以上のイオ
    ンが四重極に沿って入口端から出口端へ導かれるように
    し、第一除去電圧により第一標的イオンが共振して四重
    極を出る以前にイオンビームから取り除かれるように
    し、且つ第二除去電圧により第二標的イオンが共振して
    四重極を出る以前にイオンビームから取り除かれるよう
    にする電源とを含んで成る多重ノッチ・フィルタ。
JP8336518A 1996-01-30 1996-12-17 質量選択多重ノッチ・フィルタ、多重ノッチ・フィルタの製造方法及び標的イオンの除去方法 Pending JPH09213265A (ja)

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