JP3002521B2 - 四重極型質量分析計 - Google Patents
四重極型質量分析計Info
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Description
ン源(1)と四重極電極(2)と検出部(3)(2次電
子増倍管)とに分けられる。四重極電極(2)は、互い
に平行に配置された4本の円柱ロッド電極(2a)(2b)
(3a)(3b)から組み立てられており、その相対向する
ロッド電極(2a)(2b)、(3a)(3b)を結線しその各
々に±(U+Vcosωt)なる直流電圧と高周波電圧の重
畳したものを印加する。この電圧印加により電極(2)
内に電場が形成される。イオン源(1)において生成し
たイオンが四重極電極(2)の中心軸(z軸方向とす
る)に沿って入射されると、z軸方向に進む間に四重極
電極内に作られた電場(以後四重極電場と呼ぶ)によっ
てx軸方向及びy軸方向の力を受ける。電圧(U、
V)、四重極電極間距離(2r0)、周波数(f)のある
条件のもとで、ある特定のm/e(質量電荷比)を有する
イオンのみが、x、y軸とも限定された振巾をもって振
動し、四重極電極(2)内を通過できる。その他のm/e
を有するイオンは振巾が増大し、四重極電極(2)に捕
えられるか、四重極電極(2)間のすき間を通り抜け
て、イオンの検出部(3)に到達しない。四重極電極
(2)内を通過したイオンは、イオンコレクターか2次
電磁増倍管で検出され、イオン電流に比例した信号が、
オシロスコープ、電磁オシログラフ、ペン記録計などで
記録され、質量スペクトルとなる。
式(1−1)を満足する電位(potential)を作ること
ができる。この電位φは、Poissonの法則に従い、(1
−2)式を満足する。
かれる。
σ、γを(1−4)式のように選んだものである。
せる。
になっている四重極型のものである。第5図に示すよう
に、電極(2a)(2b)、(3a)(3b)に電圧±(U+Vc
osωt)を与えると四重極電極(2)内の電位は(1−
6)式で与えられる。
は(1−7)式で表わされ、 このような電場にはいったイオンの運動方程式は、(1
−8)式で表わされ、 イオンの運動について考えてみると、x軸方向、y軸方
向の運動は(x軸方向、y軸方向の運動は独立に取り扱
うことができる)、x軸方向、y軸方向に周期的な力を
受けて振動することがわかる。またz軸方向には何らの
力も受けず、初速度と同じ速度で運動する。(1−8)
式を(1−9)式のように置換すると、Mathieu方程式
として知られる微分方程式(1−10)となる。
て与えられる。この解は、無限時間の間、イオンが一定
振巾を越えない安定な軌道をたどる安定解と、時間と共
に振巾が無限に増大する不安定解とに分けられる。安定
解を与えるa、qの関係を(a、q)平面に図示するこ
とができ、それを第6図に示す、四重極電場のx方向と
y方向の安定解を与える領域は、第6図に示すように原
点に対して対称となる。斜線部分が安定な解を与える領
域であり、白い部分が不安定な解となる領域である。四
重極電場をイオンが通過するためには、x、y両方向の
イオンの運動は限定された振巾でなければならない。こ
のことは図のxの安定領域とyの安定領域が重なり合っ
た領域を意味する。実際の四重極型質量分析計では、従
来実用的な観点から原点に最も近い安定領域を利用して
いる。この安定領域を拡大したものを、第3図に示す。
これを安定線図(stability diagram)と呼んでいる。
られると(a、q)平面上に1点が定まる。(1−9)
式からa/2q=U/Vの関係が与えられるが、この式は
(a、q)平面の原点を通り勾配がUとVの比で決まる
直線であって、質量数に無関係に定まる。このU/Vの比
を決めると、全ての異なった質量のイオンはこの直線上
に並ぶことになる。これを質量走査線(mass scan lin
e)と呼ぶ。質量走査線上に並ぶ全イオンのうち安定領
域内(第3図のxy安定領域)の線上に並ぶ質量のイオン
のみが四重極電場を通過できることになる。この直線上
でxy安定領域の外にあるイオンのうちy安定の領域、x
不安定の領域にあるイオンは、xy安定領域にあるイオン
よりも高質量であり、x方向の運動が不安定となり、x
軸上にある四重極電極に捕えられる。一方xy安定領域の
外で、x安定の領域、y不安定の領域にあるイオンは、
xy安定領域にあるイオンよりも低質量であり、y方向が
不安定となり、y軸上にある四重極電極に捕えられる。
であるが、この四重極型質量分析計の使用に際しては、
その分解能を調節するために上記U/Vの比を変えてい
る。すなわちU/Vの比を大きくすればする程、第3図に
おいて質量走査線の傾斜は大きくなり、遂にはxy安定領
域の頂点であるQ点を通る質量走査線となるのである
が、この頂点Qに近い勾配の質量走査線程分解能が高
い。これを第7図を参照して説明すると、例えば比較的
小さいU/Vの比の質量走査線の時には、(A)で示され
るスペクトルが得られるが、aで示す位置の質量のイオ
ンの両側に、これより質量の大きい及び小さいイオン
b、cのピークが認められる。然しながらこのスペクト
ルを見る人の熟練度によって、この見分けが異なり、こ
れを一つのイオン質量aだけのスペクトルと見る人もい
るかも知れない。これに対し更に分解能を高くするため
にはU/Vの傾斜の比を大きくすべく主としてUの調節が
行なわれる。これにより(B)のようなスペクトルが得
られる。更にU/Vの傾斜の比を大きくして分解能を上げ
ると(C)のようなスペクトルが得られる。
る温度ドリフトや回路の信頼性によっては、日により温
度により変化するので、この質量分析器は使用する毎
に、その微妙な調節を行なわなければならず、同じ質量
分析に対し、その再現性を得ることを困難にしていた。
した場合でも簡単な操作で安定性、再現性が良く、高分
解能を確実に得ることができる四重極型質量分析計を提
供することを目的とする。
して成る四重極電極を有し、相対向する前記ロッド電極
を結線し、これら各々に±(U+Vcosωt)なる直流電
圧と高周波電圧の重畳したものを印加し、これにより前
記四重極電極内部に形成される電場を利用して質量分析
を行なうようにした四重極型質量分析計において、変数
a=8eU/mr0 2ω2、q=4eV/mr0 2ω2 を直角座標として表わした場合((a、q)平面)、前
記四重極電極をイオンが通過できる条件を決定する領域
中で原点に最も近い第1安定領域と、次に近い第2安定
領域を選択的に用いるために、前記U、V及びωのうち
少なくとも一つを相異なる大きさの間で切換え可能と
し、この切換えにより、前記第1安定領域と前記第2安
定領域を切換えるようにしたことを特徴とする四重極型
質量分析計、によって達成される。
の大きさであるUを相異なる大きさの間で切換可能と
し、この切換えにより質量走査線の傾斜がこの大きさの
変化に応じて変化し(a、q)平面の第1の安定領域か
ら第2安定領域、あるいは第2安定領から第1安定領域
に切換えることができる。
は広くて、これ等に対し安定な分解能を与えることがで
き、また第2安定領域においては測定できるイオンの質
量範囲は狭いが、この範囲内の質量の分析には高い分解
能で安定にその質量を再現性良く分析することができ
る。特に質量数が4までの例えば水素や重水素やヘリウ
ム等のイオン質量の分析をする場合には特に第2安定領
域は有効である。
いて図面を参照して説明する。
対する高周波電源及び直流電源の回路ブロック図を示す
ものであるが、四重極型質量分析計本体(10)は従来と
同様な構成を有し、その大きさは茶筒程度の大きさであ
り、その内部には第4図または第5図に示すような電極
ロッドが(2a)(2b)及び(3a)(3b)が対として平行
に配設されており、これら相対向する電極ロッド(2a)
(2b)及び(3a)(3b)を従来と同様に結線して、これ
等に直流電圧と高周波電圧を重畳したものを加えるよう
にしている。
HZの高周波を発生するが、これが緩衝増巾器(12)、平
衡変調器(13)、直線増巾器(14)、励振増巾器(15)
及び電力増巾器(16)を介して高圧発生部/検波部/直
流重畳部−回路(17)に供給される。なおこの回路(1
7)においては、その入力として電力増巾器(16)より2
MHZの高周波電圧を受けるために、これと受けるべき本
体(10)との整合をとるために可変容量(18)により同
調をとるようにしている。
電力増巾器(16)から供給された高周波電圧の一部を整
流し、これを検波出力として主制御部(19)の比較器
(20)に供給するようにしている。これにより高周波電
源に対する閉ループを構成し、安定な高周波電圧を四重
極型質量分析計本体(10)に供給するようにしている。
すなわち主制御部(19)には図示しないがパソコンより
デジタル−アナログ変換器(分析すべき質量範囲に応じ
てデジタル的にパソコンに設定)を介して図示するよう
な鋸歯状波(31)が繰返し時間設定のために基準入力と
して供給される。これは主制御部制御出力回路(19)に
おいて比較器(20)に更に接続される直流増巾器(21)
により増巾されて、直流電圧発生部(22)に供給され
る。これには本発明に係る切換え回路Aが接続されてい
る。すなわち可動接点(23)は第1抵抗(24)側か第2
抵抗(25)側に切換えられる。これにより第1安定領域
及び第2安定領域のいずれかを選択するように構成され
ている。またこれには分解能調節用のボリュウム(26
a)(26b)が接続されており、これ等はそれぞれ第1安
定領域用第2安定領域用であって、上述の抵抗(24)
(25)に対応し、(24)に切換えられた時には可変抵抗
(26a)により、第1安定領域での分解能が調節され、
抵抗(25)に切換えた時には可変抵抗(26b)により第
2安定領域での分解能が調節される。すなわち質量走査
線の傾斜がそれぞれの安定領域において調整されるよう
になっている。この直流電圧発生部(22)から上述の直
流電圧+U及び−Uがそれぞれ電線路(28)及び(29)
を介して高圧発生部/検波部/直流重畳部−回路(17)
に供給され、この回路(17)においてその直流重畳部で
電力増巾器(16)からの高周波電圧と直流電圧+U及び
−Uとが重畳されて四重極型質量分析計本体(10)が内
蔵する電極ロッド(2a)(2b)及び(3a)(3b)に印加
されるように構成されている。
制御部(32)が接続されており、これは第4図に示すイ
オン源(1)を制御するものであって更に出力としての
四重極型質量分析計本体(10)の出力分析の結果はイオ
ン電流の微少電流増巾器(DC.AMP)(33)に供給され、
この出力がモニター(34)に供給される。またこれには
上述のパソコンよりの鋸歯状波(31)が供給されるよう
になっている。
における高圧発生部は、四重極型質量分析計本体(10)
は超高真空中で使用される場合があり、このような真空
内においてイオン電流が微少であれば、その検出が困難
であるので2次電子増倍管を設けており、これに対する
供給電圧を発生するものである。
変抵抗(27)が接続されているが、これは第2安定領域
専用であって、第2安定領域に切換えた時、すなわち切
換回路Aにおける可動接点(23)を抵抗(25)側に切換
えたときに調節される。すなわち第2安定領域において
質量走査線を走査するときに、その電圧が非常に小さい
ときに第1安定領域における質量スペクトルも出てくる
のを防止するためであって、第1安定領域で四重極型質
量分析計を作動させるときには全く関係のないものであ
る。
(41)(42)が接続されているが、これは主制御部(1
9)における比較器(20)の基準電位を与えるものであ
って、この四重極型質量分析計が安定に行なわれるため
の調節用抵抗である。
うに構成されるが、次にこの作用について説明する。
ついて説明する。この場合には直流電圧発生部(22)に
おいて可動接点(23)は抵抗(24)側に切換えられてお
り、これに応じた直流電圧+U及び−Uが電線路(28)
及び(29)を介して高圧発生部/検波部/直流重畳部−
回路(17)に供給されている。他方、水晶発振器(11)
から発振出力する高周波は緩衝増巾器(12)、平衡変調
器(13)、直線増巾器(14)励振増巾器(15)及び電力
増巾器(16)を介して所定の大きさに増巾された所定の
電力で高圧発生部/検波部/直流重畳部−回路(17)に
供給されており、また、これからの検波出力により主制
御部(19)を介して平衡変調器(13)にフィードバック
される。搬送波としての基準入力がこれに加えられてい
るのであるが、これにより変調された高周波電圧を以
下、直線増巾器(14)、励振増巾器(15)及び電力増巾
器(16)を介して上述の高圧発生部/検波部/直流重畳
部−回路(17)に供給しており、これにより質量走査用
の安定な高周波電圧を得るようにしている。すなわち直
流電圧発生部(22)からの直流、+U、−Uとの比が第
1安定領域を走査するための電圧を構成し、これにより
広い範囲の質量数のイオンを分析することができるので
あるが、これは微少電流増巾器(33)により増巾されて
モニター(34)に供給される。他方パソコンより鋸歯状
波(31)が供給されているので、これをタイムベースと
してディスプレー(35)に図示するようなスペクトルが
得られる。これを見て、この時のイオンの質量を分析す
ることができる。なお上記分析の開始においては直流電
圧発生部(22)における可変抵抗(26a)の調節により
第1安定領域内で質量走査線の傾斜を所望の分解能を得
るべく調整される。
いて説明する。例えば質量数が4までの原子、例えば水
素、重水素、ヘリウム等のイオンの分析を行なう場合に
ついて説明する。この場合には直流電圧発生部(22)に
おいて可変接点(23)は抵抗(25)側に切換えられる。
これにより電線路(28)(29)には第1安定領域におけ
る場合の電圧より更に高い電圧の直流電圧+U、−Uが
得られるのであるが、これが高圧発生部/検波部/直流
重畳部−回路(17)に供給される。また、これには電力
増巾器(16)より第1安定領域における場合の電圧と同
じ大きさの高周波電圧が供給されており、上述の直流電
圧+U、−Uを重畳させて四重極型質量分析計本体(1
0)に供給される。この場合にはU/Vの比が第1安定領域
の走査時よりも大きくなることにより、すなわち質量走
査線の傾斜が大きくなり、第2安定領域内を走査するこ
とになる。
常に狭く、全体として傾斜が第1安定領域より高いため
に、例えばヘリウムと重水素とは、その質量が非常に近
接しているが、このような場合においても高い分解能で
これを分解してスペクトルでモニター(34)にディスプ
レーさせることができる。
行なうのであるが次のような効果を奏するものである。
すなわち通常の分析、すなわち広い範囲の質量分析を行
なう場合には第1安定領域を用いるために可動接点(2
3)を抵抗(24)側に接続して測定し、また狭い範囲で
あるが低質量を高分解能で分析する場合には可動接点
(23)を抵抗(25)側に切換えて高い分解能でその狭い
質量範囲のイオンを分析するようにしているので、いず
れの質量のイオンでも誤認することなく確実に分析する
ことができ、操作者の熟練度に頼ることなく、どのよう
な質量範囲のイオンも安定に再現性良く分析することが
できる。
明はこれに限定されることなく、本発明の技術的思想に
基いて種々の変形が可能である。
を切換えるために直流電圧+U及び−Uの大きさを変え
るようにしているが、これに代えて高周波電圧の周波数
(実施例では2.0MHz)または高周波電源の電圧を変える
ようにして質量走査線の傾斜を変えて、第1安定領域か
ら第2安定領域、あるいは第2安定領域から第1安定領
域に切換えるようにしてもよい。
ば、低質量側で高分解能な測定が簡単な操作で再現性良
く測定でき更に従来の高質量までの測定も可能になる。
如何なる質量範囲のイオンに対しても簡単な操作で高分
解能で再現性よく、これを分析、測定することができ
る。
周波電源及び直流電源の回路ブロック図、第2図は同作
用を説明するための(a、q)平面の第1安定領域及び
第2安定領域を示すグラフ、第3図は第2図における第
1安定領域の詳細を示す拡大グラフ、第4図は従来例の
四重極型質量分析計を説明するための概略側面図、第5
図は更にその詳細を説明するための斜視図、第6図は従
来例の作用を説明するためのグラフ及び第7図は同作用
を説明するための分析スペクトルを示すものである。 なお図において、 (10)……四重極型質量分析計本体 (17)……高圧発生部/検波部/直流重畳部−回路 (22)……直流電圧発生部 A……切換回路
Claims (1)
- 【請求項1】4本のロッド電極を互いに平行に配設して
成る四重極電極を有し、相対向する前記ロッド電極を結
線し、これら各々に±(U+Vcosωt)なる直流電圧と
高周波電圧の重畳したものを印加し、これにより前記四
重極電極内部に形成される電場を利用して質量分析を行
なうようにした四重極型質量分析計において、変数a=
8eU/mr0 2ω2、q=4eV/mr0 2ω2 を直角座標として表わした場合((a、q)平面)、前
記四重極電極をイオンが通過できる条件を決定する領域
中で原点に最も近い第1安定領域と、次に近い第2安定
領域を選択的に用いるために、前記U、V及びωのうち
少なくとも一つを相異なる大きさの間で切換え可能と
し、この切換えにより、前記第1安定領域と前記第2安
定領域を切換えるようにしたことを特徴とする四重極型
質量分析計。
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