JPH09209099A - α+β型チタン合金製シームレス管の製造方法 - Google Patents

α+β型チタン合金製シームレス管の製造方法

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JPH09209099A
JPH09209099A JP2234096A JP2234096A JPH09209099A JP H09209099 A JPH09209099 A JP H09209099A JP 2234096 A JP2234096 A JP 2234096A JP 2234096 A JP2234096 A JP 2234096A JP H09209099 A JPH09209099 A JP H09209099A
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temperature
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alloy
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Hideki Fujii
秀樹 藤井
Satoru Kawakami
哲 川上
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Nippon Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 材質異方性が少なく、優れた機械的性質を有
する、α+β型チタン合金製シームレス管を製造する方
法を提供する。 【解決手段】 α+β型チタン合金からなるシームレス
管を、穿孔・圧延方式にて製造する方法において、中実
ビレットを当該合金のβ変態点以上でβ変態点+400
℃未満の温度に加熱し造管を行い、次いでβ変態点以下
で当該合金のα相とβ相の体積比が平行状態にて1:1
となる温度以上に20分以上加熱保持した後、空冷以上
の冷却速度で冷却する第1の熱処理を行い、次いで55
0℃以上で当該合金のα相とβ相の体積比が平行状態で
7:3となる温度以下に20分以上2時間未満の時間保
持する第2の熱処理を行うことを特徴とするα+β型チ
タン合金製シームレス管の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、α+β型チタン合
金からなるシームレス管の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】チタン合金は、軽量、高強度、高耐食性
を有することから、近年、地熱開発、海底油田・ガス田
開発などの、大深度、高温、高腐食の極限環境に対応し
うる素材として注目されている。特に、航空機等で実績
の高いα+β型チタン合金やこれに少量のPdやRuを
添加し耐食性をさらに高めた高耐食性α+β型チタン合
金は、上記極限環境用素材として有力視されている。上
記の用途では管が主要製品形状であり、チタン合金製管
材の製造方法としては、板を曲げ加工し溶接する方法
(溶接管)、熱間押し出しによる方法(シームレス
管)、プラグミルを使用して穿孔・圧延により造管する
方法(シームレス管)などが考えられる。このうち、プ
ラグミルを使用した穿孔・圧延方式が最も歩留が高く、
また製造効率も高いことから、材料そのものが既に高価
なチタン合金では特に有利な方法である。加えて、特性
の劣化が懸念される溶接部のないシームレス管が製造で
きることも上記極限環境用途としては適している。
【0003】この方法でα+β型チタン合金からなるシ
ームレス管を製造する場合、α+β型合金はβ変態点以
下の温度域では著しく変形抵抗が高く、また熱間延性も
乏しいことから、β変態点以上のβ単相域で熱間加工の
大部分を行わなくてはならない。しかし、一般に、この
ようなβ単相域での強加工を行いこの歪みが十分に解放
されないと、β変態点以下の温度で冷却中に析出するα
相の結晶方位がある特定方位を優先的に持つようにな
り、その結果著しい材質異方性を生じるようになる。こ
の異方性は、熱間加工の後段階で素材がα+β二相温度
域にまで冷却され、そこで少量の加工が加わったとして
もほとんど解消せず、依然として強い異方性が残存す
る。
【0004】このような強い異方性を解消するには、
α+β域で高圧下の加工を行い、しかも圧延方向を90
゜回転させるいわゆるクロス圧延を行う、β単相域の
高温域で熱間加工を終了し、β変態点にまで冷却される
間にβ相中の塑性歪みを排除し、その後β変態点以下で
析出するα相の結晶方位が特定化しないようにする、
熱間加工後の素材を一度β変態点以上の温度にまで加熱
し、新たな塑性歪みのないβ結晶粒を生じさせ、その後
で冷却し、析出するα相の結晶方位が特定化しないよう
にする、などの方法が考えられる。しかし、は、α+
β域での強加工を必要としており、プラグミルによる穿
孔・圧延法には適用できない。また板の場合、クロス圧
延が可能であるが、プラグミルではこれも困難である。
およびは、β相中の歪みが開放されると同時に、β
結晶粒が粗大化するため、冷却後の機械的性質、特に延
性が乏しくなるという欠点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、以上のよう
な問題を解決し、材質異方性が少なく、優れた機械的性
質を有する、α+β型チタン合金製シームレス管を製造
する方法を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、以下の
通りである。 (1)α+β型チタン合金からなるシームレス管を、穿
孔・圧延方式にて製造する方法において、中実ビレット
を当該合金のβ変態点以上でβ変態点+400℃未満の
温度に加熱し造管を行い、次いでβ変態点以下で当該合
金のα相とβ相の体積比が平行状態にて1:1となる温
度以上に20分以上加熱保持した後、空冷以上の冷却速
度で冷却する第1の熱処理を行い、次いで550℃以上
で当該合金のα相とβ相の体積比が平行状態で7:3と
なる温度以下に20分以上2時間未満の時間保持する第
2の熱処理を行うことを特徴とするα+β型チタン合金
製シームレス管の製造方法。 (2)α+β型チタン合金が、酸素+窒素を合計で0.
25%重量%以上含有することを特徴とする(1)記載
のα+β型チタン合金製シームレス管の製造方法。
【0007】
【発明の実施の形態】α+β型チタン合金とは、室温に
おける平衡状態でα+βの二相を主相とし、β単相温度
域からから焼き入れた場合に、全体あるいは一部がマル
テンサイト変態する種類の合金で、Ti−6Al−4
V、Ti−6Al−6V−2Sn、Ti−6Al−2S
n−4Zr−6Mo、Ti−6Al−1.7Fe−0.
2Si、Ti−5.5Al−1Fe−0.15酸素−
0.05窒素、Ti−5Al−2.5Feなどがこれに
相当する。また、Ti−6Al−4V−0.2%Pdな
ど、PdやRuなどの白金族元素をさらに添加し耐食性
を向上させた合金や侵入型不純物元素量を低減させたT
i−6Al−4V−ELI(Extra-Low Interstitials
)などもα+β型チタン合金に属する。これらα+β
チタン合金は、平衡状態において、FeTi相、ω相、
シリサイド、Ti−Al系規則相、Ti−O系規則相、
Ti−N系規則相、金属間化合物相などを含有するもの
があるが、実質的にはβ変態点以下の温度域ではα+β
の二相を基本としており、β変態点以上ではα相の体積
分率は0で、それ以下の温度では温度の低下とともにα
相の割合が増加し、室温では、合金種によって異なる
が、大体75〜95%のα相と残部β相で構成されてい
る。
【0008】さて、このようなα+β型チタン合金製シ
ームレス管を、穿孔・圧延方式によって製造する方法に
おいて、本発明ではまず、中実ビレットを当該合金のβ
変態点以上でβ変態点+400℃未満の温度に加熱し造
管を行うこととした。ここで、造管とは、熱間加工工程
を指しており、穿孔および延伸、磨管、定形、絞り等の
一連の圧延加工工程を指している。
【0009】β変態点以上に加熱することとしたのは、
以下の理由による。すなわち、造管工程のうち加工量が
多いのは、初期加工工程である穿孔、延伸の工程であ
り、この工程は熱間変形抵抗が低く熱間延性の高いβ変
態点以上のβ単相域で行う必要があるからである。この
工程では、加工量が多いため加工時に発熱しやすく、急
激な温度変化は起こらないので、ビレットの加熱温度を
β変態点以上にしておけば、大部分あるいは全ての加工
を加工性に優れたβ単相域で行うことができる。延伸以
降の後段階の加工工程は、加工量が小さいので、変形抵
抗が高く熱間延性の乏しいα+β域で行うことも可能で
ある。また、加熱温度をβ変態点+400℃未満の温度
としたのは、これ以上の温度に加熱すると生成した酸化
スケールによるスリップが激しくこれも造管が不可能と
なるからである。
【0010】次に、熱間加工を終了した管を、β変態点
以下で、当該合金のα相とβ相の体積比が1:1となる
温度以上に20分以上の時間加熱保持した後、空冷以上
の冷却速度で冷却する第1の熱処理を行う。これは、α
+β域の高温に加熱することにより、異方性の原因であ
る特定結晶方位に方位集積したα相の多くをβ相に変態
させ、しかもこのβ相中の塑性歪みを解放するための工
程である。ここで、加熱温度をβ変態温度以下で、当該
合金のα相とβ相の体積比が平衡状態にて1:1となる
温度以上としたのは、β変態点を超える温度に加熱する
とβ粒が粗大化し、機械的性質、特に延性が劣化するた
めであり、また、当該合金のα相とβ相の体積比が平衡
状態にて1:1となる温度未満に加熱しても、特定方位
に集積したα相の多くがそのまま残存するため、異方性
の低減効果があまり現れず、本発明の効果が不十分とな
るからである。また、20分以上の時間加熱することを
必要としたのは、20分未満の時間の加熱では、α相か
らβ相への変態が不十分で、平衡状態にはほど遠く、特
定方位に方位集積したα相が十分に消失しないからであ
る。ここで、加熱時間の上限は特に指定しないが、これ
はα+β二相域での加熱中にはα相およびβ相ともに結
晶粒成長速度が遅く、10時間を超えるような長時間保
持を行っても組織に大きな変化はないからである。しか
し、エネルギー的観点から、また大気酸化の場合酸化損
耗の観点から、管のサイズに応じた適切な時間加熱する
ことが望ましい。
【0011】さて、この工程では、冷却を空冷以上に限
定したが、その理由は以下の通りである。すなわち、空
冷以上の冷却速度で冷却すると、特定方位に方位集積し
たα相の体積分率はほぼそのまま室温まで凍結され、β
相は、微細なマルテンサイト組織に変態するか、特定方
位に方位集積していないランダムな方位の微細針状α相
が析出するか、あるいは、β相が準安定状態で室温まで
凍結される。これらのどの変化を生じるかは合金成分や
加熱温度(冷却開始温度)によって異なるが、本発明に
関する限りではどのような変化を生じるかは問題ではな
く、特定温度域に加熱することにより、方位集積したα
相を減少させ、冷却中にこれを再び増やさないようにす
ることがポイントとなる。もし空冷よりも遅い冷却速度
で冷却すると、β相は冷却中に上記の組織変化、すなわ
ち、マルテンサイト組織への変態、ランダム方位の微細
針状α相の析出、準安定β相の凍結のいずれの変化も生
ぜず、減少はするものの残存している特定方位に集積し
たα相が冷却中に再び成長し、結局熱処理前の強い異方
性を有する状態に戻ってしまい、熱処理を行った効果が
なくなってしまう。
【0012】さて、上記第1の熱処理に続いて、550
℃以上で当該合金のα相とβ相の体積比が平行状態で
7:3となる温度以下に20分以上2時間未満の時間保
持する第2の熱処理を行う。この第2の熱処理の目的
は、第1の熱処理の最終工程である空冷以上の冷却速度
での冷却により生じた非平衡の不安定組織を安定化する
ことである。この第2の熱処理温度では、平衡状態のα
相の体積分率は、先の第1の熱処理温度におけるα相の
体積分率よりも大きいため、第2の熱処理中にα相の体
積分率は増加する。
【0013】この増加分は以下に示す組織変化によりも
たらされる。すなわち、第1の熱処理でマルテンサイト
へ変態した組織は、微細な針状のα相とβ相に分解し、
このときのα相の結晶方位はランダムである。また、第
1の熱処理の冷却中に析出したランダムな方位の微細針
状α相は、若干の成長と合金元素の分配を通して安定化
する。さらに、第1の熱処理の冷却で室温まで凍結され
た、準安定β相中には、ランダムな結晶方位の微細な針
状α相が析出する。これらいずれの変化を経由しても、
新たに生成するα相の結晶方位はランダムで、特定結晶
方位に集積していない。したがって、熱間加工直後の管
の有する材質異方性は軽減される。しかも、本発明の工
程を経て最終的に得られる組織は、第1の熱処理で消失
しなかった比較的粗大なα相(一次α相)とその間に生
成した微細な針状α相(二次α相)からなっており、特
に微細な二次α相の効果で、長さ方向と周方向の平均強
度も通常の焼鈍材に比べると同等以上となる。
【0014】ここで、第2の熱処理の加熱温度を、55
0℃以上で当該合金のα相とβ相の体積比が平行状態で
7:3となる温度以下としたのは、以下の理由による。
すなわち、550℃未満の温度では、マルテンサイトが
分解したり、凍結β相に析出することにより生成する二
次α相が微細すぎて、延性の低下を招く。また、第1の
熱処理の冷却中に微細針状α相が生成していた場合で
も、550℃未満の温度で熱処理をすると、この針状α
相が若干の成長をするのではなく、この針状α相間に存
在するβ相中に極微細二次α相が析出し、延性の低下を
招く。以上のように、いずれの場合にも、550℃未満
の温度で第2の熱処理を行うことは、延性低下を生じ
る。また、当該合金のα相とβ相の体積比が平行状態で
7:3となる温度以上だと、ランダムな方位の二次α相
の量が少なく、異方性の改善効果が小さくなるためであ
る。
【0015】また、第2の熱処理の時間を20分以上2
時間未満としたのは、20分未満では元素の拡散が不十
分で、平衡状態に近い十分安定な組織が得られないから
であり、2時間以上の熱処理を行うと、既に形成された
安定組織がさらに極端に安定な組織となるべく変化を生
ずるためである。その変化とは、一次α相が二次α相を
食って成長を始め、α相とβ相の界面やα相間の結晶粒
界の少ない組織を目指そうとする現象であり、このよう
な現象が起こると、特定方位に集積したα相の割合が増
え再び異方性が強くなることに加え、強度の上昇に寄与
してきた二次α相の割合が減少するため、材料の強度も
減少する傾向が現れる。
【0016】以上のように、本発明にて規定された、温
度、時間、冷却速度等の範囲内で、中実ビレットを加
熱、造管し、さらに熱処理を行えば、材質異方性が少な
く、優れた機械的性質を有する、α+β型チタン合金製
シームレス管を製造することができる。なお、冷間矯
正、切削加工等の少量の冷間加工は、第1の熱処理と第
2の熱処理の中間で行うと、第2の熱処理が歪み取り焼
鈍を兼ねるので便利である。
【0017】さて、α+β型チタン合金において、酸素
+窒素を合計で0.25重量%以上含有させることによ
り、本発明の製造法を有利に行うことができる。すなわ
ち、酸素および窒素添加が、β変態点以下の温度におけ
るα相とβ相の体積比の変化を緩やかにする効果があ
り、特に、0.25重量%以上の酸素+窒素を含有させ
ると、第1の熱処理の温度範囲が顕著に拡大し、第1の
熱処理が行いやすくなる。Ti−6Al−4Vの酸素お
よび窒素含有量を高めに設定したTi−6Al−4V−
X[O+N]合金(Xは0.25重量%以上)や酸素お
よび窒素を主要元素として添加したTi−1.5Fe−
0.5%酸素−0.04%窒素などがこれに相当する。
【0018】
【実施例】
[試験1]真空アーク溶解により、Ti−6Al−4V
(酸素:0.18重量%、窒素:0.03重量%)、T
i−6Al−4V−ELI(酸素:0.10重量%、窒
素:0.02重量%)、Ti−6Al−4V−0.29
[O+N](酸素:0.19重量%、窒素:0.10重
量%)、Ti−6Al−4V−ELI−0.1Pd(酸
素:0.10重量%、窒素:0.02重量%、Pd:
0.10重量%)の4種類の合金を溶解した。上記4種
類の合金の、α相とβ相の体積分率の温度依存性を図1
に、また図1から読みとったβ変態点、α相とβ相の体
積分率が1:1になる温度、α相とβ相の体積分率が
7:3になる温度を表1に示す。ここで、Ti−6Al
−4V−ELIとTi−6Al−4V−ELI−0.1
Pdの間にはほとんど差が検出されず、α相とβ相の体
積分率の温度依存性は両者とも同じであった。
【0019】
【表1】
【0020】これら鋳塊を分塊圧延によって215mm×
215mmの正方形断面の中実ビレットとし、プラグミル
方式により内径150mm、肉厚20mmに造管し、さらに
50cm長さに切断後熱処理を行った。そして周方向およ
び長さ方向と平行に、評点距離30mm、評点間の直径
6.25mmの丸棒試験片を切り出し引張試験を行った。
ビレットの加熱条件、熱処理条件および引張試験結果は
表2、表3、表4、表5に示す通りである。
【0021】
【表2】
【0022】
【表3】
【0023】
【表4】
【0024】
【表5】
【0025】表2は、Ti−6Al−4Vに対して行っ
た試験の条件とその結果である。試験番号1は、β変態
点直上にビレットを加熱し、造管し、通常の焼鈍を行っ
た従来例である。長さ方向の引張特性は10%以上の高
い伸びを有しているものの、引張強さは950MPa以
下の低い値であり、一方で周方向の引張特性は引張強さ
は1000MPa以上の高い値であるが、伸びが8%未
満の低い値になっており、長さ方向と周方向で強い異方
性が生じている。周方向と長さ方向の引張強さの差は1
00MPa以上にもなっている。
【0026】これに対し、本発明の実施例である試験番
号2、4、5、8、9、11、13では、長さ方向と周
方向の引張強度の差がいずれも70MPa以下に軽減さ
れている。また、長さ方向の引張特性は、いずれも95
0MPa以上の高い引張強さと10%以上の伸び値を有
しており、周方向の引張特性も、1000MPa以上の
高い引張強さと8%以上の高い伸び値を有しており、材
質異方性が小さくなっていることに加え、高い強度と延
性が得られている。
【0027】一方、比較例である試験番号3は、ビレッ
トの加熱温度が本発明における下限値であるβ変態点未
満であったため、α相が析出し変形抵抗が高くなり熱間
加工ができなかった。また、試験番号6では、ビレット
の加熱温度が本発明における上限値を超えたため、酸化
スケールによるスリップが激しくこれも造管が不可能で
あった。
【0028】試験番号7は第1の熱処理の加熱温度が本
発明の上限値であるβ変態点を超えたため、異方性は解
消しているが、β粒が粗大化し機械的性質、特に延性が
劣化した。また、試験番号10、12、14は長さ方向
と周方向の引張強さの差がいずれも90MPa以上あり
強い異方性を有しており、また長さ方向の強度が950
MPa以下、周方向の伸びが8%以下の低い値となって
いる。この理由は、試験番号10では第1の熱処理の加
熱温度が本発明の下限値未満であったためであり、試験
番号12では、第1の熱処理の保持時間が本発明の下限
値より短かったためであり、試験番号14では第1の熱
処理後の冷却速度が本発明で規定された空冷以上ではな
く、炉冷であったためである。
【0029】表3は、Ti−6Al−4V−ELIに対
して行った試験の条件とその結果である。試験番号15
は、β変態点以上にビレットを加熱し、造管し、通常の
焼鈍を行った従来例である。長さ方向の引張特性は12
%以上の高い伸びを有しているものの引張強さは900
MPa以下の低い値であり、一方で周方向の引張特性
は、引張強さは950MPa以上の高い値であるが伸び
が10%未満の低い値になっており、長さ方向と周方向
で強い異方性が生じている。周方向と長さ方向の引張強
さの差は100MPa以上にもなっている。
【0030】これに対し、本発明の実施例である試験番
号17、18では、長さ方向と周方向の引張強度の差が
いずれも60MPa以下に軽減されている。また、長さ
方向の引張特性は、いずれも900MPa以上の高い引
張強さと12%以上の高い伸び値を有しており、周方向
の引張特性も950MPa以上の高い引張強さと10%
以上の高い伸び値を有しており、材質異方性が小さくな
っていることに加え、高い強度と延性が得られている。
【0031】一方、試験番号16は第1の熱処理の加熱
温度が本発明の上限値であるβ変態点を超えたため、異
方性は解消しているが、β粒が粗大化し機械的性質、特
に延性が劣化した。また、試験番号19は長さ方向と周
方向の引張強さの差が100MPaあり強い異方性を有
しており、また長さ方向の強度が900MPa以下、周
方向の伸びが10%以下の低い値となっている。この理
由は、第1の熱処理の加熱温度が本発明の下限値未満で
あったためである。
【0032】表4は、Ti−6Al−4V−0.29
[O+N]に対して行った試験の条件とその結果であ
る。試験番号20は、β変態点以上にビレットを加熱
し、造管し、通常の焼鈍を行った比較例である。長さ方
向の引張特性は9%以上の高い伸びを有しているものの
引張強さは1050MPa以下で高濃度の酸素、窒素を
含有している割には低い値であり、一方で周方向の引張
特性は、引張強さ1100MPa以上の高い値であるが
伸びが7%未満の低い値となっており、長さ方向と周方
向で強い異方性が生じている。周方向と長さ方向の引張
強さの差は100MPa以上にもなっている。
【0033】これに対し、本発明の実施例である試験番
号22、23、24では、長さ方向と周方向の引張強度
の差がいずれも60MPa以下に軽減されている。ま
た、長さ方向の引張特性は、いずれも1050MPa以
上の高い引張強さと9%以上の高い伸び値を有してお
り、周方向の引張り特性も1100MPa以上の高い引
張強さと8%以上の高い伸び値を有しており、材質異方
性が小さくなっていることに加え、高い強度と延性が得
られている。
【0034】一方、試験番号21は第1の熱処理の加熱
温度が本発明の上限値であるβ変態点を超えたため、異
方性は解消しているが、β粒が粗大化し機械的性質、特
に延性が劣化した。また、試験番号25は長さ方向と周
方向の引張強さの差が100MPaあり強い異方性を有
しており、また長さ方向の強度が1050MPa以下、
周方向の伸びが8%以下の低い値となっている。この理
由は、第1の熱処理の加熱温度が本発明の下限値未満で
あったためである。
【0035】さて、表1に示したように、酸素+窒素の
総量は、Ti−6Al−4Vでは0.21重量%、Ti
−6Al−4V−ELIでは0.12重量%、Ti−6
Al−4V−0.29[O+N]では0.29重量%で
ある。また図1および表1に示したように本発明の第1
の熱処理の温度範囲はTi−6Al−4Vでは925〜
990℃間の65℃、Ti−6Al−4V−ELIでは
910〜970℃間の60℃、Ti−6Al−4V−
0.29[O+N]では935〜1040℃間の105
℃であり、0.25重量%以上の酸素+窒素を含むTi
−6Al−4V−0.29[O+N]では第1の熱処理
温度範囲が明らかに拡大しており、実際この広い温度範
囲において本発明の効果が現れることが、試験番号2
2、23、24に示されている。
【0036】表5は、Ti−6Al−4V−0.1Pd
に対して行った試験の条件とその結果である。試験番号
26は、β変態点以上にビレットを加熱し、造管し、焼
鈍を行った従来例である。長さ方向の引張特性は12%
以上の高い伸びを有しているものの引張強さは900M
Pa以下で低い値であり、一方で周方向の引張特性は、
引張強さは950MPa以上の高い値であるが伸びが1
0%未満の低い値になっており、長さ方向と周方向で強
い異方性が生じている。周方向と長さ方向の引張強さの
差は100MPa以上にもなっている。
【0037】これに対し、本発明の実施例である試験番
号28、29、30、31、34、35では、長さ方向
と周方向の引張強度の差がいずれも50MPa以下に軽
減されている。また、長さ方向の引張特性は、いずれも
900MPa以上の高い引張強さと12%以上の高い伸
び値を有しており、周方向の引張特性も950MPa以
上の高い引張特性と10%以上の高い伸び値を有してお
り、材質異方性が小さくなっていることに加え、高い強
度と延性が得られている。
【0038】一方、試験番号27では、第2の熱処理に
おける加熱温度が本発明の上限値を超えたため、異方性
の軽減効果が小さく、また長さ方向の強度が900MP
a以下の低い値となり、周方向の伸びも10%未満の低
い値となった。また、試験番号32では、第2の熱処理
の加熱温度が低すぎたため、長さ方向、周方向ともに延
性が低下し(10%未満の伸び値)、試験番号33で
は、第2の熱処理の保持時間が短すぎたため、組織が安
定化されず延性が劣化した。また、試験番号36では本
発明における上限値を超えて、第2の熱処理を行ったた
め、周方向と長さ方向の引張強さの差が80MPa以上
の大きな値になり、しかも長さ方向の強度が900MP
a以下、周方向の伸びが10%以下の低い値になった。
【0039】[試験2]真空アーク溶接後分塊圧延によ
って、215mm×215mmの正方形断面のTi−1.5
重量%Fe−0.5重量%酸素−0.04重量%窒素合
金(以下Ti−1.5Fe−0.5[O]−0.04
[N]と記す)の中実ビレットを作製し、プラグミル方
式により内径150mm、肉厚20mmに造管し、さらに5
0cm長さに切断後熱処理を行った。本合金のα相とβ相
の体積分率の温度依存性は図2に示す通りであり、β変
態点は965℃、α相とβ相の体積比が1:1になる温
度は820℃、α相とβ相の体積比が7:3になる温度
は755℃である。この合金では酸素+窒素が0.25
重量%をはるかに超える0.54重量%添加されてお
り、そのため、第1の熱処理の加熱温度範囲は820〜
965℃間の145℃となっており、試験1で示した例
よりもさらに広くなっている。この管から周方向および
長さ方向と平行に、評点距離30mm、評点間の直径6.
25mmの丸棒試験片を切り出し引張試験を行った。ビレ
ットの加熱条件、熱処理条件および引張試験結果は表6
に示す通りである。
【0040】
【表6】
【0041】表6において、試験番号37は、β変態点
以上にビレットを加熱し、造管し、焼鈍を行った比較例
である。長さ方向の引張特性は15%以上の高い伸びを
有しているものの、引張強さは950MPa以下の低い
値であり、一方で周方向の引張特性は、引張強さは10
00MPa以上の高い値であるが、伸びが10%未満の
低い値になっており、長さ方向と周方向で強い異方性が
生じている。周方向と長さ方向の引張強さの差は100
MPa以上にもなっている。
【0042】これに対し、本発明の実施例である試験番
号38、40、42、43、45、47、51、53、
54では、長さ方向と周方向の引張強度の差がいずれも
70MPa以下に軽減されている。また、長さ方向のの
引張特性は、いずれも950MPa以上の高い引張強さ
と15%以上の高い伸び値を有しており、周方向の引張
特性も1000MPa以上の高い引張強さと10%以上
の高い伸び値を有しており、材質異方性が小さくなって
いることに加え、高い強度と延性が得られている。
【0043】一方、比較例である試験番号39は、ビレ
ットの加熱温度が本発明における下限値であるβ変態点
未満であったため、α相が析出し変形抵抗が高くなり、
熱間加工ができなかった。
【0044】試験番号41は第1の熱処理の加熱温度が
本発明の上限値であるβ変態点を超えたため、異方性は
解消しているが、β粒が粗大化し機械的性質、特に延性
が劣化した。また、試験番号44、46、48は長さ方
向と周方向の引張強さの差がいずれも90MPa以上あ
り強い異方性を有しており、また長さ方向の強度が95
0MPa以下、周方向の伸びが10%以下の低い値とな
っている。この理由は、試験番号44では第1の熱処理
の加熱温度が本発明の下限値未満であったためであり、
試験番号46では第1の熱処理の保持時間が本発明の下
限値より短かったためであり、試験番号48では第1の
熱処理後の冷却速度が本発明で規定された空冷以上では
なく、炉冷であったためである。
【0045】また、試験番号49では第2の熱処理にお
ける加熱温度が本発明の上限値を超えたため、異方性解
消効果が小さく、また長さ方向の強度が950MPa以
下の低い値となり、周方向の伸びも10%未満の低い値
となった。また、試験番号55では、第2の熱処理の加
熱温度が低すぎたため、長さ方向、周方向ともに延性が
劣化し、長さ方向では15%未満、周方向では10%未
満の値しか得られなかった。試験番号50では第2の熱
処理の保持時間が短すぎたため、組織の安定化がされず
延性が低下した。また試験番号52では本発明における
上限値を超えて第2の熱処理を行ったため、周方向と長
さ方向の引張強さの差が70MPa以上の大きな値にな
り、しかも長さ方向の強度が950MPa以下、周方向
の伸びが10%以下の低い値となった。
【0046】
【発明の効果】以上説明したように、本発明により材質
異方性が少なく、優れた機械的性質を有するα+β型チ
タン合金製シームレス管を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Ti−6Al−4V、Ti−6Al−4V−E
LI、Ti−6Al−4V−0.29[O+N]、Ti
−6Al−4V−ELI−0.1Pdの平行状態におけ
るβ相およびα相の体積分率の温度依存性を示す図であ
る。ここで、Ti−6Al−4V−ELIとTi−6A
l−4V−ELI−0.1Pdには顕著な差が認められ
なかったので、両者は同一曲線で示されている。
【図2】Ti−1.5Fe−0.5[O]−0.04
[N]の平行状態におけるβ相およびα相の体積分率の
温度依存性を示す図である。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 α+β型チタン合金からなるシームレス
    管を、穿孔・圧延方式にて製造する方法において、中実
    ビレットを当該合金のβ変態点以上でβ変態点+400
    ℃未満の温度に加熱し造管を行い、次いでβ変態点以下
    で当該合金のα相とβ相の体積比が平行状態にて1:1
    となる温度以上に20分以上加熱保持した後、空冷以上
    の冷却速度で冷却する第1の熱処理を行い、次いで55
    0℃以上で当該合金のα相とβ相の体積比が平行状態で
    7:3となる温度以下に20分以上2時間未満の時間保
    持する第2の熱処理を行うことを特徴とするα+β型チ
    タン合金製シームレス管の製造方法。
  2. 【請求項2】 α+β型チタン合金が、酸素+窒素を合
    計で0.25%重量%以上含有することを特徴とする請
    求項1記載のα+β型チタン合金製シームレス管の製造
    方法。
JP2234096A 1996-02-08 1996-02-08 α+β型チタン合金製シームレス管の製造方法 Withdrawn JPH09209099A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7438849B2 (en) 2002-09-20 2008-10-21 Kabushiki Kaisha Toyota Chuo Kenkyusho Titanium alloy and process for producing the same
CN103668028A (zh) * 2013-12-27 2014-03-26 张斌 一种钛及钛合金无缝管坯的制备方法

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