JPH09184832A - 潤滑油組成物の分析方法 - Google Patents

潤滑油組成物の分析方法

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JPH09184832A
JPH09184832A JP35261795A JP35261795A JPH09184832A JP H09184832 A JPH09184832 A JP H09184832A JP 35261795 A JP35261795 A JP 35261795A JP 35261795 A JP35261795 A JP 35261795A JP H09184832 A JPH09184832 A JP H09184832A
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component
polymer additive
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lubricating oil
peak
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JP35261795A
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English (en)
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Shigeaki Takamura
重昭 高村
Takeshi Suzuki
健 鈴木
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COSMO SOGO KENKYUSHO KK
Cosmo Oil Co Ltd
Original Assignee
COSMO SOGO KENKYUSHO KK
Cosmo Oil Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】潤滑油組成物を複雑な前処理を必要とせずに、
極めて微量の試料により、基油および各種添加剤を高精
度に分析できる潤滑油組成物の分析方法を提供する。 【解決手段】加熱炉2により、高分子添加剤以外の成分
のみを熱脱着して各成分情報を取得する第1プロセス、
残りの高分子添加剤を熱脱着して高分子添加剤の各成分
情報を取得する第2プロセスからなる。第1プロセスに
おける各成分情報の取得を、熱脱着成分をガスクロマト
グラフ1のキャピラリーカラム12により分離して各ピ
ークのマススペクトルとリテンションタイムから各成分
を同定するステップ、上記の同定した各成分を各ピーク
の面積値に基づき定量するステップ等により行う。第2
プロセスにおける高分子添加剤の各成分情報の取得を、
生成物をガスクロマトグラフの前記キャピラリーカラム
により分離し、各ピークのマススペクトルと各高分子添
加剤の特徴的なピークパターンとクロマトグラムのリテ
ンションタイムから各成分を同定するステップ、上記の
同定した各成分を各ピークの面積値に基づき定量するス
テップ、により行う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、潤滑油組成物を複
雑な前処理を必要とせずに、極めて微量の試料により、
基油および各種添加剤を高精度に分析することができ
る、加熱炉付ガスクロマトグラフィー/質量分析計を用
いた分析方法に関する。
【0002】
【技術背景】潤滑油組成物はあらゆる産業分野において
用いられており、特に自動車や発電機などの内燃機関に
おいては最も重要な要素の一つになっている。中でもエ
ンジン油は内燃機関を構成するエンジン部品(シリンダ
やピストン等)の潤滑を円滑に行い、エンジン部品の摩
耗を抑制し、エンジン内を清浄な状態に保つ役割をなし
ている。従来、これらの潤滑油組成物、特にエンジン油
の組成分析を行う場合、まず該組成物試料をカラムクロ
マト法により極性が異なる溶剤で展開し、その溶剤毎に
分取する。次にエバポレータなどを使用して溶剤を蒸発
させ、残った成分について、赤外分光分析、核磁気共鳴
分析、質量分析などのスペクトル分析を行い解析する。
【0003】ところが、カラムクロマト法により潤滑油
組成物成分の分離を行う場合、展開する溶剤の極性によ
って試料の分離を行うため、それぞれの成分毎に分離す
ることができず、混合物となってしまうといった問題が
ある。このため、スペクトルの解析が難しく、その結
果、明確な測定結果が得られない場合が多い。また、こ
の手法では1試料あたり数週間を必要とする場合が多
い。さらに、通常、使用されるガスクロマトグラフィー
/質量分析計ではガスクロマトグラフの注入口内部に高
分子添加剤が残留してしまい、高分子添加剤の分析がで
きない。また、質量分析計に直接、試料油を導入したの
ではマススペクトルの解析が非常に困難となる。
【0004】例えば、Caスルホネート、Caサリシレ
ート等の金属型清浄剤の同定は、赤外分光分析により、
主にCaCOの吸収位置から行っている。しかし、こ
の方法では金属清浄剤の親油基の構造が詳しくわから
ず、また、どの程度の塩基価を持つ清浄剤であるかを判
断することができない。また、ZnDTP(アルキルジ
チオリン酸亜鉛)を赤外分光分析により行う場合、Pの
結合状態により、1000cm−1付近の吸収がシフト
することを利用して、プライマリ、セカンダリ、アリル
の判定を行っている。また、ZnDTPを核磁気共鳴分
析により行う場合も、31PNMRにより、そのケミカ
ルシフトの違いから、プライマリ、セカンダリ、アリル
の判定を行っている。これらの方法では、アルキル基の
炭素数までを知ることができない。
【0005】なお、カラムクロマト法により分離する代
わりに、高速液体クロマト法を用いる場合もある。
【0006】
【発明の目的】本発明は、上記のような問題を解決する
ために提案されたものであって、潤滑油組成物を複雑な
前処理を必要とせずに、極めて微量の試料により、基油
および各種添加剤を高精度に分析することができる、加
熱炉付ガスクロマトグラフィー/質量分析計を用いた潤
滑油組成物の分析方法を提供することを目的とする。
【0007】具体的には、基油の沸点範囲や芳香族分の
有無、添加剤に含まれる酸化防止剤の構造やZnDTP
のタイプ、または金属型清浄剤、分散剤、粘度指数向上
剤のタイプ、等についての情報を詳細に知ることができ
る上記分析方法を提供することを目的とする。
【0008】
【発明の概要】本発明者らは、上記目的を達成するため
に、鋭意検討を重ねた結果、固体ポリマーやワックスの
分析に用いられていた2段階昇温が可能な加熱炉を取り
付けたガスクロマトグラフィー/質量分析計を、潤滑油
の測定に応用することにより、好適な測定結果を得るこ
とができるとの知見を得、本発明をなすに至った。
【0009】すなわち、本発明の方法では、 (A)第1プロセスにおいて、加熱炉により、潤滑油試
料を高分子添加剤は熱脱着しないが、高分子添加剤以外
の成分が熱脱着(本発明では、揮発や熱分解を意味す
る)する温度に昇温し、生成物をガスクロマトグラフに
導入して高分子添加剤以外の各成分情報を取得する。こ
のプロセスでは、加熱炉の温度を、例えば250〜35
0℃の範囲の一定温度まで昇温する。これにより、潤滑
油試料が、高分子量の添加剤(例えば、金属型清浄剤、
無灰型分散剤、粘度指数向上剤、腐食防止剤等)と、こ
れ以外の成分(基油、酸化防止剤、ZnDTPが含まれ
る成分)とに分離される。
【0010】酸化防止剤としてアミン系、フェノール系
のものが、ZnDTPとしてプライマリー、セカンダリ
ー、アリル各タイプがそれぞれ挙げられる。また、金属
清浄剤として、各種金属のスルホネート、フェネート、
サリシレートが、分散剤としてコハク酸イミドが、粘度
指数向上剤としてオレフィンコポリマータイプ、ポリメ
タクリレートタイプのものが、腐食防止剤としてベンゾ
トリアゾールがそれぞれ挙げられる。
【0011】なお、第1プロセスでは、上記加熱炉の温
度は高分子添加剤以外の成分が全て熱脱着する温度であ
る。加熱炉温度が低すぎると、基油や高分子添加剤以外
の成分が熱脱着しないし、逆に高すぎると高分子分添加
剤が熱脱着してしまう。このため、上記温度は、潤滑油
試料に含まれているであろう成分等を考慮して適宜設定
される。
【0012】第1プロセスにおける各成分情報の取得
は、まず熱脱着成分をガスクロマトグラフの高分離能キ
ャピラリーカラムにより分離して、各ピークのマススペ
クトルとリテンションタイムから各成分を同定する(ス
テップ(A−1))。高分離能キャピラリーカラムとし
て、例えばシリカ系カラムが用いられる。このカラムと
しては、高温度まで測定可能なものが好ましい。
【0013】次に、上記の同定した各成分を、各ピーク
の面積値に基づき定量する(ステップ(A−2))。定
量に際しては、従来公知の種々の定量計算法を採用する
ことができる。
【0014】本発明の方法では、必要に応じて(A−
1)、(A−2)のステップに加え、(A−3)あるい
は(A−4)ステップを付加することもできる。すなわ
ち、ステップ(A−2)における定量の後、得られたマ
ススペクトルから基油の沸点範囲を算出する(ステップ
(A−3))。このステップでは、典型的には、AST
M D 2887に準拠して、基油の蒸留性状が算出さ
れる。
【0015】さらに、基油の芳香族分量を算出する(ス
テップ(A−4))。このステップでは、熱脱着成分の
マススペクトルを全て平均化して、芳香族分由来による
マススペクトルの強度から芳香族分の特定を行う。
【0016】(B)第2プロセスにおいては、前記加熱
炉により、高分子添加剤以外の成分が熱脱着した前記試
料を、高分子添加剤が熱脱着する温度にさらに昇温し、
生成物をガスクロマトグラフに導入して高分子添加剤の
各成分情報を取得する。このプロセスでは、加熱炉の温
度を、例えば400〜800℃の範囲の一定温度まで昇
温し、加熱炉内に残留している高分子化合物を熱脱着
し、これをガスクロマトグラフに導入する。第2プロセ
スにおける加熱炉温度を低くし過ぎると高分子添加剤が
熱脱着できないし、逆に高くし過ぎると多くの分解生成
物ができ質量分析装置で分析する際にマススペクトルが
複雑化する。このため、上記温度は潤滑油試料に含まれ
ているであろう成分等を考慮して適宜設定する。
【0017】高分子添加剤の各成分の情報の取得は、生
成物をガスクロマトグラフの前記キャピラリーカラムに
より分離し、各ピークのマススペクトルと各高分子添加
剤の特徴的なピークパターンとマスクロマトグラムのリ
テンションタイムから各成分を同定する(ステップ(B
−1))。
【0018】この後、上記の同定した各成分を、各ピー
クの面積値に基づき定量する(ステップ(B−2))。
このとき、それぞれの添加剤で特徴的なピークパターン
が得られるが、そのパターンは殆ど変化しない。個々の
ピークのマススペクトルを測定することにより、より正
確な同定や定量が可能となる。
【0019】このように、本発明は、加熱炉と、ガスク
ロマトグラフィー/質量分析計とを巧みに組合せること
により、従来の問題を悉く解決することのできる潤滑油
組成物の分析法を提供するものである。
【0020】
【発明の実施の形態】以下に、本発明を、ガソリンエン
ジン用パッケージ添加剤(金属型清浄剤、無灰型分散
剤、酸化防止剤が混合され鉱油で希釈されたもの)を試
料とする場合を例に説明するが、エンジン油以外の他の
潤滑油組成物についても同様である。
【0021】図1は、本発明の一実施例による分析方法
の説明図である。図1においては、ガスクロマトグラフ
部(以下、「GC部」という)1のオーブン内には、コ
ールドトラップ11が組み込まれており、加熱炉2から
GC部1に入ってくる成分は、このコールドトラップ1
1において一旦濃縮される。これにより、それぞれの成
分を鋭いピークとして検出することができる。GC部1
において使用する分析カラム12は、高分離能を有して
おり、高温度までの測定が可能なものである。カラム1
2として、内径0.1〜0.25mm、長さが5〜50
mのキャピラリーカラムを使用することが好ましい。ま
た、加熱炉2として、試料を瞬時に加熱できるものが好
ましい。
【0022】カラム12には、メチルシリコンまたはメ
チルシリコンを主成分とするものをコーティング剤(液
相)として使用する。メチルシリコン(液相)を架橋化
学結合させたものを、膜厚約0.1〜5.0μmでコー
ティングしたものを使用することが好ましい。なお、コ
ーティング剤として、フェニルメチルシリコンも使用可
能である。この場合、メチルに対するフェニルの比が、
好ましくは1〜50%の範囲にあり、さらに好ましくは
1〜10%の範囲にあることが好ましい。
【0023】キャリヤーガスとしては、水素、ヘリウ
ム、窒素を使用することができるが、分子拡散が大き
く、不活性で安全なヘリウムが好ましく、その速度は2
〜30ミリリットル/分の範囲が好ましい(以下、リッ
トルをLで記述する)。試料注入量は、エンジン油の場
合、ヘキサンなどの溶剤で5〜10倍程度に希釈した溶
液を5μL程度注入するのが好ましい。GC部1のオー
ブンは、分析時間を短縮し、カラム12の分離能を損な
わないために、高温まで昇温できるものが好ましい。
【0024】また、GC1には、質量分析部(質量分析
計)3が設けられており、カラム12から分離成分の一
部を取込み、各成分の質量スペクトルを測定することが
できる。
【0025】以上のように構成される本発明の分析装置
を使用して本発明の分析方法を実施する場合を図1によ
り説明する。 〔第1プロセス〕まず、潤滑油試料を注入すると、試料
成分は加熱炉2に導入される。ここでは、加熱炉2の温
度を、20〜100℃の温度から、5〜50℃/分の昇
温速度で、室温から250〜350℃の範囲の一定温度
まで昇温し、その温度で5〜20分保持するのが好まし
い。保持時間は、その時間内にするべき成分が熱脱着で
きるように、適宜変更することができる。
【0026】これにより、試料成分は熱脱着成分(揮発
成分および熱分解生成物成分であり、ここでは、基油、
添加剤、酸化防止剤、ZnDTP)と、これ以外の成分
(高分子量の各添加剤であり、例えば金属型清浄剤、無
灰型分散剤、粘度指数向上剤等)とに分離され、前記熱
脱着により生成した成分のみがGC部1に導入される。
これらの熱脱着成分は一旦、GC部1内のコールドトラ
ップ11で濃縮された後、カラム12により分離され
る。分離された成分はそれぞれ質量分析部3によりイオ
ン化されマススペクトルとして検出される。
【0027】このとき、得られたマスクロマトグラムを
図2に示す。このマスクロマトグラムとそれぞれの成分
の特徴的なピークパターンとを比較して同定を行う(ス
テップ(A−1))。
【0028】本発明においては、リテンションタイムに
対する各試料分子の信号強度を表すマスクロマトグラム
と、マススペクトルとを用いる。質量分析計に導入され
た成分は、イオン化室でフラグメントイオンになる。す
なわち、イオン源から出た電子が試料分子に衝突する
と、試料分子は分子内で結合が弱い部分から開裂して、
小さなフラグメントになる。これらのフラグメントイオ
ンは磁場を低磁場から高磁場へと走査させることによ
り、低質量数を持つものから順に磁場を通り抜け、イオ
ンマルチプライヤによりマススペクトルが得られる。例
えば、図2のマスクロマトグラムを得るのに用いた潤滑
油中には、図3のマスクロマトグラムを持つフェノール
系酸化防止剤が含まれている。図2および図3から、フ
ェノール系酸化防止剤は、リテンションタイム23分前
後に特徴ピークを持つことがわかる。図2に矢印aで示
したこの特徴ピークのマススペクトルを図4に示す。図
4のマススペクトルを解析することにより、前記フェノ
ール系酸化防止剤を確認することができる。なお、図
2、図3の横軸はリテンションタイムを示し(図5、図
13〜図20についても同様)、図4の横軸はイオン強
度(m/z値:mはイオン質量、zはイオン電荷)を示
し(図6〜図11についても同様)、それぞれ縦軸は信
号強度を示す。
【0029】図2中の他のピーク、例えばZnDTPに
ついても、そのマスクロマトグラム(または、ある特徴
ピークのマススペクトル)を、純粋なZnDTPについ
て予め測定しておいた図5に示すようにマスクロマトグ
ラム(またはマススペクトル)と比較することにより同
定を行うことができる。
【0030】図6(a)は図2に矢印bで示した特徴ピ
ークのマススペクトルを示している。図2において、矢
印bで示す特徴ピークは、2−ターシャリーブチルフェ
ノールであることが予想される。図6(b)は、純粋な
2−ターシャリーブチルフェノールのマススペクトルで
あり、これと図6(a)のマススペクトルとを比較する
ことで、2−ターシャリーブチルフェノールを正確に同
定することができる。
【0031】図2に矢印cで示した特徴ピークは2,4
−ジターシャリーブチルフェノールであることが、図7
(a)に示した該特徴ピークのマススペクトルと図7
(b)に示した純粋な2,4−ジターシャリーブチルフ
ェノールのマススペクトルから正確に同定することがで
きる。
【0032】また、図2に矢印dで示した特徴ピークは
ジフェニルアミンであることが、図8(a)に示した該
特徴ピークのマススペクトルと図8(b)に示した純粋
なジフェニルアミンのマススペクトルから正確に同定す
ることができる。
【0033】さらに、図2に矢印e、f、gで示した特
徴ピークは、リテンションタイムから、それぞれアミン
系酸化防止剤であることが直接予測される。これらの特
徴ピークのマススペクトルを、図9、図10および図1
1に示す。このマススペクトルから、直接、該特徴ピー
クが、アミン系酸化防止剤であることが確認できる。
【0034】また、図12(a)は図2に矢印hで示し
た特徴ピークのマススペクトルを示している。図2に矢
印hで示す特徴ピークは、セカンダリZnDTPの熱分
解生成物であることが予想される。図12(b)は、純
粋なセカンダリZnDTPを熱分解させたときに生成す
る分解物の特徴的なピークのマススペクトルであり、こ
れと図12(a)のマススペクトルとを比較すること
で、セカンダリZnDTPをより正確に同定することが
できる。さらに、図13のマスクロマトグラム(図2の
マスクロマトグラムと全く同一)に矢印i〜iで示
した特徴ピークは、リテンションタイムとマススペクト
ルから、それぞれプライマリZnDTPであることと、
アルキル基の炭素数を直接予測することができる。
【0035】このように、本発明では、成分未知試料に
ついても適用でき、純粋な添加剤のマススペクトルや特
徴ピークのマススペクトルからも各成分の同定を行うこ
とができる。
【0036】本実施例では、上記のようにして、図2に
示すマスクロマトグラムに基づき各酸化防止剤、ZnD
TPを同定した。各酸化防止剤やZnDTPと、基油と
の検出ピーク位置が重なっていないことを確認後、マス
クロマトグラムの面積値から、各炭化水素間の感度差は
殆どないものとして各成分のmass%を算出した。さ
らに、このマスクロマトグラムの全範囲のマススペクト
ルを積算し、これから酸化防止剤によるマススペクトル
およびZnDTPによりマススペクトルを差し引いたマ
ススペクトルの総イオン強度でm/z=77、91、1
05・・・のシリーズのイオン強度を除して、100を
乗じ、基油の芳香族分のmass%を算出した(ステッ
プ(A−2))。
【0037】なお、試料中にアルキルベンゼンが含まれ
る場合、これを質量分析部3で分析すると、その構造が
開裂してさまざまな分子イオンを生じる。このうち、m
/z=77の位置に表れるピークは、ベンゼン環からプ
ロトンが1つ脱離した形の分子イオンを表す。同様に、
m/z=91に表れるピークはベンゼン環にメチレン基
が1つ付加した分子イオン、m/z=105はメチレン
基が2つ付加した分子イオンを表す。このように、イオ
ンピークの強度を基に芳香族分の定量が可能となる。な
お、通常は、1環芳香族についてのみ定量するが、2
環、3環の芳香族分の定量をも行うこともできる。
【0038】さらに、このマスクロマトグラムをAST
M D 2887に準拠して計算を行い、蒸留性状、す
なわち沸点範囲を計算した(ステップ(A−3))。ま
た、さらに基油の芳香族分量を算出した(ステップ(A
−4))。
【0039】〔第2プロセス〕第2プロセスでは、加熱
炉2に残った高分子添加剤を熱脱着させるべく、加熱炉
2の温度を一気に400〜800℃の範囲の一定温度ま
で上昇させた。ここでは、再現性を持たせるために瞬時
に熱脱着を行う必要があり、昇温速度は可能な限り速い
ことが好ましい。これにより、高分子添加剤以外の成分
が熱脱着した試料は熱分解され、GC部1に導入され
る。そして、キャピラリーカラム11からの分離生成物
を質量分析部3によりマススペクトルとして検出した。
このとき、得られたマスクロマトグラムを図14に示
す。
【0040】このマスクロマトグラムとそれぞれの成分
の特徴的なピークパターンを比較して同定を行った(ス
テップ(B−1))。なお、このとき、金属型清浄剤の
金属種の同定はあらかじめICP分析により分析してお
く必要がある。
【0041】この後、ステップ(A−2)と同様にし
て、マスクロマトグラムの面積値から各成分の定量を行
った(ステップ(B−2))。図14のマスクロマトグ
ラムを得るのに用いた潤滑油中には、添加剤として、C
aスルホネート、Caフェネート、Caサリシレート、
アルケニルコハク酸イミド、ポリメタクリレートが含ま
れている。図15〜図19はこれらの各添加剤(純粋物
質)のマスクロマトグラムを示している。図14と図1
5〜図19との比較から、高分子添加剤の同定を容易に
行うことができる。なお、図14においては、基油によ
るピークの重なりがないために、マスクロマトグラムか
ら容易に直接同定することができる。
【0042】図20(a)、(b)は、Caスルホネー
トと、アルケニルコハク酸イミドのマスクロマトグラム
を示している。これらのマスクロマトグラムと、図14
に示すマスクロマトグラムとを比較することにより、潤
滑油試料中のCaスルホネートとアルケニルコハク酸イ
ミドとを容易に同定することができる。
【0043】
【実施例】初めに標準試料を調製し、分析の繰り返し精
度について確認を行った。このときの、標準試料の組成
を表1に、および分析結果を表2に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】次に、本発明の分析方法を組成未知試料に
適用した。このときの、分析結果を表3に示す。
【0047】
【表3】
【0048】・但し、基油についてはIBP(初留点)
について示した。 ・高分子化合物の成分量についてはポリマー量で示し
た。 ・第1プロセスでのマスクロマトグラムは図2に示した
ものと同じであり、第2プロセスでのマスクロマトグラ
ムは図14に示したものと同じである。 ・フェノール系酸化防止剤の化学式は図21(a)〜
(c)および(e)に、アミン系酸化防止剤の化学式は
図21(d)に示した。
【0049】〔ガスクロマトグラフィー/質量分析計の
測定条件〕 カラム: 固定相;メチルシリコン(架橋化学結合型) カラム寸法;内径0.25mm、長さ30m 検出器:質量分析(質量数範囲35〜500) 検出器温度:325℃ 注入方法:スプリット注入法 試料注入量:5μL 加熱炉条件: 第1プロセス:室温→30℃/分で昇温→300℃(2
分保持) 第2プロセス:550℃まで急速昇温(2分間保持) カラムオーブン条件:(第1プロセス、第2プロセスと
も同じ) 100℃→20℃/分で昇温→350℃(20分保持)
【0050】前述したように、従来、Caスルホネー
ト、Caサリシレート等の金属型清浄剤の同定において
は、金属清浄剤の親油基が分からず、どの程度の塩基価
を持つ清浄剤であるかを判断することができなかった
が、この実施例からわかるように、本発明方法によれ
ば、親油基の量が分かる。特に、ICP分析による金属
量のデータを補完することで、その金属型清浄剤がどの
程度の塩基価を持つかを容易に判断できた。
【0051】また、前述したように、ZnDTPを赤外
分光分析により行う場合や、核磁気共鳴分析により行う
場合には、アルキル基の炭素数までを知ることができな
かった。本発明方法によれば、ZnDTPの熱分解生成
物により、プライマリ、セカンダリ、アリルの判定を行
っていると同時に、その熱分解生成物のピークの保持時
間(C:17分前後、C:18.5分前後、C
24分前後)からアリル基の炭素数も容易に算出するこ
とができた。
【0052】
【発明の効果】本発明によれば、非常に短時間に潤滑油
試料の基油の沸点分布を測定でき、さらに添加剤の組成
を揮発性の添加剤だけでなく、高分子の添加剤まで高精
度に把握することが可能となる(具体的には、分析可能
な添加剤の濃度範囲は、0.01〜100mass%で
ある)。さらに、本発明において、定量に、ガスクロマ
トグラフを使用するため、極微量の試料量で高精度の分
析を行うことができると共に、特定の化合物の定量分析
を行うことができる。以上のように、本発明は、自動
車、石油業界における潤滑油の組成分析における工業的
利用価値は極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の分析方法に使用される加熱炉付ガスク
ロマトグラフィー/質量分析計を示す図である。
【図2】第1プロセスにおけるガスクロマトグラフを示
す図である。
【図3】酸化防止剤のマスクロマトグラムを示す図であ
る。
【図4】図2のガスクロマトグラフにおける特徴ピーク
のマススペクトルを示す図である。
【図5】ZndTPのマスクロマトグラムを示す図であ
る。
【図6】(a)は2−ターシャリーブチルフェノールと
予測される特徴ピークのマススペクトルを示す図、
(b)は純粋な2−ターシャリーブチルフェノールのマ
ススペクトルを示す図である。
【図7】(a)は2,4−ジターシャリーブチルフェノ
ールと予測される特徴ピークのマススペクトルを示す
図、(b)は純粋な2,4−ジターシャリーブチルフェ
ノールのマススペクトルを示す図である。
【図8】(a)はジフェニルアミンと予測される特徴ピ
ークのマススペクトルを示す図、(b)は純粋なジフェ
ニルアミンのマススペクトルを示す図である。
【図9】アミン系酸化防止剤と予想される特徴ピークの
マススペクトルを示す図である。
【図10】アミン系酸化防止剤と予想される特徴ピーク
のマススペクトルを示す図である。
【図11】アミン系酸化防止剤と予想される特徴ピーク
のマススペクトルを示す図である。
【図12】(a)はセカンダリZnDTPと予測される
特徴ピークのマススペクトルを示す図、(b)は純粋な
セカンダリZnDTPのマススペクトルを示す図であ
る。
【図13】第1プロセスにおけるガスクロマトグラフを
示す図である。
【図14】第2プロセスにおけるガスクロマトグラフを
示す図である。
【図15】Caスルホネートと予測される特徴ピークの
マスクロマトグラムを示す図である。
【図16】Caフェネートと予測される特徴ピークのマ
スクロマトグラムを示す図である。
【図17】Caサリシレートと予測される特徴ピークの
マスクロマトグラムを示す図である。
【図18】アルケニルコハク酸イミドと予測される特徴
ピークのマスクロマトグラムを示す図である。
【図19】粘度指数向上剤(ポリメタクリレート)と予
測される特徴ピークのマスクロマトグラムを示す図であ
る。
【図20】(a)はCaスルホネートと予測される特徴
ピークのマスクロマトグラムを示す図であり、(b)は
アルケニルコハク酸イミドと予測される特徴ピークのマ
スクロマトグラムを示す図である。
【図21】(a)〜(e)は酸化防止剤の化学式を示す
図である。
【符号の説明】
1 GC部 2 加熱炉 3 質量分析部 11 コールドトラップ 12 カラム
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 G01N 33/30 G01N 33/30

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (A)加熱炉により、潤滑油試料を、高
    分子添加剤は熱脱着しないが、高分子添加剤以外の成分
    が熱脱着する温度に昇温し、生成物をガスクロマトグラ
    フに導入して高分子添加剤以外の各成分情報を取得する
    第1プロセス、 (B)前記加熱炉により、高分子添加剤以外の成分が熱
    脱着した前記試料を、高分子添加剤が熱脱着する温度に
    さらに昇温し、生成物をガスクロマトグラフに導入して
    高分子添加剤の各成分情報を取得する第2プロセス、か
    らなる加熱炉付ガスクロマトグラフィー/質量分析計を
    用いた潤滑油組成物の分析方法であって、 前記第1プロセスにおける高分子添加剤以外の各成分情
    報の取得を、 (A−1):熱脱着成分をガスクロマトグラフの高分離
    能キャピラリーカラムにより分離して、各ピークのマス
    スペクトルとリテンションタイムから各成分を同定する
    ステップ、 (A−2):上記の同定した各成分を各ピークの面積値
    に基づき定量するステップ、により行い、 前記第2プロセスにおける高分子添加剤の各成分情報の
    取得を、 (B−1):生成物をガスクロマトグラフの前記キャピ
    ラリーカラムにより分離し、各ピークのマススペクトル
    と各高分子添加剤の特徴的なピークパターンとクロマト
    グラムのリテンションタイムから各成分を同定するステ
    ップ、 (B−2):上記の同定した各成分を各ピークの面積値
    に基づき定量するステップ、により行うことを特徴とす
    る潤滑油組成物の分析方法。
  2. 【請求項2】 前記第1プロセスにおいて熱脱着する成
    分に、酸化防止剤およびZnDTPの少なくとも1種が
    含まれ、前記第2プロセスにおいて熱脱着する成分に、
    金属清浄剤、分散剤、粘度指数向上剤、腐食防止剤の少
    なくとも1種が含まれていることを特徴とする請求項1
    に記載の潤滑油組成物の分析方法。
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