JPH09180662A - イオンビーム装置 - Google Patents
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Abstract
重イオンビーム装置で、ビームの空間電荷を中和してビ
ームの発散を防ぎ、大電流ビームを効率良く輸送、利用
できるようにする。 【解決手段】質量分離器の磁場を使い、5GHz以上の
周波数のマイクロ波による電子サイクロトロン共鳴プラ
ズマを作り、そのプラズマ電子によりイオンビームの空
間電荷を中和する。
Description
関する。
を図2で説明する。図で打込み室の代わりに加速器を設
ければ、本装置は加速器へのイオンビーム入射装置とな
る。図2で、イオン源1から引出されたイオンビーム6
は種々のイオン種を含むため、この中から必要とするイ
オン種6′を選別するために質量分離器2を通す。選び
だされたイオンビーム6′はその後、後段加速で加速さ
れたり、磁場レンズ等を含むビーム制御器3によりビー
ムの断面形状や発散角等が調整されて、打込み室4の中
に置かれた試料基板5にイオン注入される。イオン打込
み装置には制御器3が省略されたものも利用されてい
る。なお、図2のイオンビーム装置ではビームラインが
高真空にひかれている。
ム電流が10mAを越す大電流領域になると、大電流に
起因する問題が発生する。即ち、イオン空間電荷による
ビーム発散効果が顕著になり、輸送後のビーム電流が増
大しなくなる問題があった。大電流ではビーム内のイオ
ン同士のクーロン反発作用によりビーム発散作用が著し
くなり、イオン源から出たビームは途中で壁等に当って
失われるからである。この様になると、折角、大電流の
ビームをイオン源から引出せても、ビーム透過率が減少
するため、利用できる打込み電流は増加できない。一
方、加速器用のビーム入射装置としての視点からは、大
電流になると同じ空間電荷作用のビーム発散でビームの
質(エミッタンス)が著しく低下することになり、加速
器に入射しても、加速利用されるビーム電流値が増えな
い問題があった。
は質量分離器やビーム制御器3として磁場型のものを利
用することが行われていた。これはビームが残留ガスや
容器壁などと衝突して発生する2次電子がイオンビーム
の中に取り込まれやすくなり、イオンビーム自身の空間
電荷を打消し易くなるからである。
電流が数十〜百mAの重イオンビームでは十分に空間電
荷を打ち消せず、ビーム発散が起きやすかった。これ
は、大電流ビームを効率良く輸送するには、真空度を良
くして残留ガスとの衝突損失を減らすことが必要であ
り、このためには装置の真空度も一段と良くしなければ
ならない。また、大電流になるとビーム電力も大きくな
り壁等に当ると熱負荷が大きくなって冷却等の負担が増
すので、なるべく容器壁に当てないようにイオンビーム
を輸送する工夫が施される。即ち、大電流になると空間
電荷を打ち消すに見合うだけの量の2次電子を発生させ
ることが益々困難になる。
百mA級の大電流のイオンビームについて、空間電荷に
よるビーム発散やエミッタンス劣化を起こさず、良質で
大電流のイオンビームが得られるイオンビーム装置を提
供することにある。このためには、イオンビームの空間
電荷を打ち消すことが課題である。
ム電流を増加した時に、イオンビーム空間電荷による発
散作用を起こさせないためには、ビーム電流の増加に見
合った十分な電子の供給源がビームラインの途中にあれ
ば良い。このためには、電子を多く含むプラズマをビー
ムライン中に設ければ良い。しかし、一般のプラズマ発
生では放電ガスを流すため真空度の劣化が起こり、ガス
粒子とイオンとの衝突による損失が大きくなって実用化
されていなかった。プラズマ発生には一般に磁場が印加
されるが、図2に示したビームラインの途中(イオン源
と質量分離器の間や質量分離器と打込み室の間など)に
プラズマ生成用の磁場を追加すると、もともとのイオン
ビームがこの磁場の力により不必要に軌道が曲げられ、
ビーム形状やエミッタンスの劣化を起こしていた。
のではなく、もし、質量分離器の磁場を使ってイオンビ
ームが通る質量分析管の中でプラズマを生成できれば、
不必要な磁場の追加によるビーム劣化は防止できる。さ
らに、プラズマ発生条件に、質量分離器の磁場強度に対
し電子サイクロトロン共鳴(ECRと略す)を起こす周
波数のマイクロ波放電を利用すれば、極めて低いガス圧
力の下でプラズマを生成できるから、イオンビームと放
電ガスとの衝突によるイオンビーム損失も少なくでき
る。
る本発明によれば、数十mA〜百mAレベルのビームを
扱うイオンビーム装置について、イオンビーム空間電荷
を中和するに十分な電子供給源に高真空下のECRプラ
ズマが活用できるようになる。またプラズマの有無によ
り磁場強度が変化したりイオンのエネルギが変わったり
することはないので、本来の質量分離作用もそのまま維
持できる。
づいて説明する。図1は本発明の1実施例である。図
で、質量分離器には開口部9が設けられ、マイクロ波発
振器8からのマイクロ波電波を導波管10を通し、質量
分析管13に導入できるようにした。そして、分析管の
一端からガス導入系7を使い、微量の放電ガスを導入し
た。マイクロ波の周波数としては、導波管の寸法が小さ
くできる5GHz以上のものを選んだ。サイクロトロン
共鳴条件で分析管13内にプラズマ11を発生するに
は、以下の条件によってマイクロ波周波数が決められ
る。
ンが質量分離器の磁場強度Bのもとで質量分離されると
き、質量分離されたイオンは質量分析管の中心軌道を通
る。その中心軌道半径をrとすると、イオンの質量を
M、電荷数をqとして、必要な磁場強度Bは次式で与え
られる。
場強度Bに対応する電子サイクロトロン共鳴条件を得る
マイクロ波周波数fは次式で与えられる。
発振器に周波数固定のものを使った。マイクロ波周波数
から電子サイクロトロン共鳴条件の磁場強度が決めら
れ、次に所望のイオン種が分析管の中心軌道を通るよう
にイオン源引出し電圧や中心軌道半径を設計した。一般
にイオン源引出し電圧はイオン種によらず高い値で一定
に保つほうが、イオン源の安定運転や大電流引出しの上
で有利である。イオン源電圧を一定に保ちながら、質分
離器の磁場強度を変え種々のイオン種を選択すること
は、イオンビーム装置の基本仕様であり、常套的に用い
られている仕様である。本実施例ではマイクロ波の周波
数は固定としたため特定のイオンについてしかプラズマ
発生が行えない。別のイオン種についても本発明を実施
するには、マイクロ波の周波数を数2により変えてやる
ことが実用的である。
イオン源を使い、50kVのイオン源電圧で数十mA〜
百mAレベルの窒素ビームを引出した。質量分離器の分
析管に導入するマイクロ波周波数は10GHzとした。
その電力は数kWである。この周波数で電子サイクロト
ロン共鳴条件を満たすように、質量分離器の中心軌道半
径rと共鳴磁場強度Bを決め、質量分離器の構造設計を
行ったものを使った。分析管の放電ガスにはアルゴンガ
スを用いた。その結果、分析管13の中には、10のマ
イナス3〜4乗パスカル以下の高真空のもとでアルゴン
ガスプラズマが発生した。プラズマの点火にあたって
は、質量分離磁石の磁場強度を設計値の10%程度増減
しても、ガス圧等の調整によりプラズマは同様に点火で
きた。点火後に設計値(中心軌道が確保されかつ電子サ
イクロトロン共鳴条件が満足される値)の磁場強度に戻
せば、プラズマは消えずに継続して発生できた。
の低減効果を調べるため、打込み室4の試料基板5の代
わりにビーム電流測定器やエミッタンス測定器を設けて
ビーム電流やエミッタンスを測定した。
電流が20mA以下では打込み室でのイオン電流値に変
化は無かったが、20mAを越える電流値ではプラズマ
点火に伴い、ビーム電流値の増加が見られた。特に10
0mAを越える電流ではプラズマの存在により打込み室
ビーム電流は著しく増え、イオン源から出たビーム電流
のうち打込み室に到達したビーム電流の割合(透過率)
は40%程度から70%以上に改善された。これによ
り、打込み室でのイオンビーム電流として100mAを
越える値が容易に得られるようになった。打込み室での
ビーム寸法は、電流値が低い時と同じ寸法に維持でき
た。図9は本発明の質量分析管のプラズマ発生の有無に
よるエミッタンスの変化を調べた結果である。図で横軸
は打込み室で測定されたビーム電流値で、縦軸はビーム
の規格化エミッタンスである。イオンビームの質として
は、エミッタンスの値の小さい方が良質のビームを表
す。図からプラズマの存在により、ビーム電流値が増え
てもエミッタンス増加が抑えられていることが分かっ
た。なお、図9では窒素イオンを代表とした結果を示し
たが、酸素,水素,ボロン,リン,砒素,炭素等のイオ
ンについても同様な結果が得られた。
離器と分析管の断面図である。質量分離器はヨーク14
とコイル15で構成されている。プラズマ発生用のマイ
クロ波発振器8からの電波は質量分離器のマイクロ導入
用の開口部9と分析管の開口部9′を通り、分析管内に
導かれる。開口部9′の近くあって導波管10の途中に
は絶縁物のマイクロ波真空封じ窓20が設けられてい
る。特に、ビーム6やプラズマ11に直接晒されて汚れ
ないように、真空封じ窓20は図に示したように開口部
9′よりやや引っ込めた位置に設けている。
示した図である。分析管は90°偏向の分析管であり、
中心軌道の曲率中心が図中の0′である。本発明では分
析管の開口部9′の位置に特別の工夫をしている。即
ち、図の斜線領域で示したように中心軌道を挟んで幅g
(図3に示した磁極幅)の部分は、質量分離能を維持す
るために均一磁場が必要である。このため、開口部9′
はこの位置をはずして設けており、開口に伴う均一磁場
の乱れがビームに影響しないように工夫した。
説明図である。図ではマイクロ波の導入を、質量分離器
の磁極の間から行った。この時の質量分離器の詳細断面
図を図6に示す。この場合、質量分離器の磁極間にある
磁場の向きとマイクロ波の伝わる方向(伝幡方向)とは
直交する。マイクロ波の点火のしやすさからは、図1の
構成のように磁場の向きとマイクロ波伝幡方向が一致す
る方が良い。図1に比べ、投入マイクロ波電力はやや増
加したものの図5の構成でもプラズマの点火は十分行
え、図9に示したような本発明の効果が得られた。
である。図1の実施例では窒素原子のイオンビームにつ
いて実施したが、イオン源の動作状態を変えれば同じ引
出し電圧で、窒素分子の大電流イオンビームが引出せ
る。窒素分子イオンビームを質量分離器で分離するに
は、窒素原子のイオンビームの時にくらべ、1.414
倍高い磁場強度を必要とする。ここでは、マイクロ波発
振器として周波数が5〜30GHzの範囲のいずれかの
範囲で変えられる発振器(実際にはクライストロン発振
器)8′を用いた。また周波数調整器17を設けて磁場
強度の変化に応じて数2にしたがってマイクロ波の周波
数を変えた。図で16は質量分離器のコイル15の励磁
電源であり、その出力は磁場強度に対応するので、出力
制御信号の一部を周波数調整器に入れ、この信号に応じ
てマイクロ波周波数を変えた。この場合、イオン源の引
出し電圧は50kVであり、窒素原子のイオンビームを
引出した時と同じ値であるため、イオン源では簡単に窒
素分子のイオンビームへの切り替えが行えた。
である。図では、マイクロ波発振器8は固定周波数(1
0GHz)のものを使った。ここで、イオン種を切り替
えるとき図7とは異なり、質量分離器の磁場強度は一定
に保ち電子サイクロトロン共鳴条件は変えずに式1でV
を変えることによって別のイオン種が質量分離されるよ
うにした。この場合、イオン源引出し電圧が変わるため
イオン源からのビーム電流が変わる問題があった。しか
し、プラズマ点火によりビーム透過率が改善される効果
は同様に確かめられた。
鳴(ECR)によるプラズマ生成にアルゴンガスを用い
たが、別のガスでも良いことは本発明の本質からして明
らかである。また図1から図8の実施例では、イオン注
入室を用いて、半導体へのイオン注入を行った。この場
合、プラズマ照射により分析管内面から不純物が叩きだ
され、これが半導体基板表面に汚染物質として注入され
たり付着したりすることが見られた。これを防止するた
め、分析管13の内面全体にシリコン板を貼り付けた。
その結果、シリコン半導体注入における著しい汚染防止
が図られた。半導体イオン注入への利用では実用上、本
発明を用いる場合、分析管内面へのシリコン板の貼り付
けが特に有効なことが分かった。一方、打込み室を加速
器等に応用した場合には、質量分離器から試料までの距
離が一般に長尺になるため、事実上、シリコン板の貼り
付け等による汚染防止策は不要であった。
イオンビームを扱うイオンビーム装置で、イオンビーム
自身が持つ空間電荷によりビームが発散消失することが
防止でき、大電流イオンビームの利用にあたり、無駄な
くイオンビームをイオン打込みあるいは加速器等に供す
ることができ、実用上の効果は著しく大である。
図。
の断面図。
の断面図。
のビーム電流依存性の違いを測定した結果の説明図。
…打込み室、5…試料基板、6…イオンビーム、7…ガ
ス導入系、8…マイクロ波発振器、9…開口部、10…
導波管、11…ECRプラズマ、12…フランジ、13
…分析管。
Claims (7)
- 【請求項1】イオンビームを発生するイオン源、前記イ
オン源から引出されたイオンビームの中から特定のイオ
ン種を選別するための磁場型質量分離器、質量分離され
たイオンビームを試料基板に打込むためのイオン打込み
室や質量分離イオンを更に加速するための加速器を含む
イオンビーム装置において、前記磁場型質量分離器の分
析管内にマイクロ波電波と微量な放電ガスを導入し、前
記分析管内でプラズマを生成させることを特徴とするイ
オンビーム装置。 - 【請求項2】請求項1において、前記磁場型質量分離器
の前記分析管に導入するマイクロ波の周波数が、前記磁
場型質量分離器に印加している磁場強度に対する電子サ
イクロトロン共鳴周波数もしくは共鳴周波数を中心とし
て±10%以内の範囲にある周波数であるイオンビーム
装置。 - 【請求項3】請求項1または2において、前記分析管へ
のマイクロ波電波の導入法として、質量分離磁石の鉄芯
の一部を開口し、この部分からマイクロ波導波管を装着
し、質量分離磁石の磁極間に置かれた分析管にマイクロ
波電波を導入したイオンビーム装置。 - 【請求項4】請求項3において、マイクロ波を導入する
分析管開口部の位置が、前記分析管の幾何学的中心軌道
に対し磁極幅の寸法分の領域を避けた場所に開口部を設
けたイオンビーム装置。 - 【請求項5】請求項1または2において、前記分析管の
マイクロ波電波の導入方法として、磁極の間にある前記
分析管の側面に直接マイクロ波を導入したイオンビーム
装置。 - 【請求項6】請求項1において、マイクロ波発振器が5
〜30GHzの範囲の中のいずれかの範囲で周波数可変
できる発振器であり、更に周波数調整器を設けるととも
にイオン源から出たビームについて別のイオン種を質量
分離するため質量分離器の磁場強度を変更した時、サイ
クロトロン共鳴条件が維持できるように周波数調整器か
らの信号に応じてマイクロ波発振器の周波数を変えたイ
オンビーム装置。 - 【請求項7】請求項1において、マイクロ波発振器の周
波数が一定の発振器であり、さらにビーム軌道調整器を
設けるとともに、イオン源から出たビームについて別の
イオン種を質量分離する時、質量分離器の磁場強度は固
定し、ビーム軌道調整器からの指定された値の信号に応
じてイオン源引出し電圧を変え、イオンビームが分析管
の中心軌道を通るようにしたイオンビーム装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP7340297A JPH09180662A (ja) | 1995-12-27 | 1995-12-27 | イオンビーム装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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JPH09180662A true JPH09180662A (ja) | 1997-07-11 |
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Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP7340297A Pending JPH09180662A (ja) | 1995-12-27 | 1995-12-27 | イオンビーム装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JPH09180662A (ja) |
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