JPH09180546A - 絶縁電線及びその製造方法 - Google Patents

絶縁電線及びその製造方法

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JPH09180546A
JPH09180546A JP34137695A JP34137695A JPH09180546A JP H09180546 A JPH09180546 A JP H09180546A JP 34137695 A JP34137695 A JP 34137695A JP 34137695 A JP34137695 A JP 34137695A JP H09180546 A JPH09180546 A JP H09180546A
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JP
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raw material
insulating layer
conductor
curable resin
ultraviolet
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JP34137695A
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English (en)
Inventor
Hitoyasu Hongo
仁康 本郷
Hiroo Matsuda
裕男 松田
Tetsuo Harada
哲夫 原田
Seiji Endo
誠治 遠藤
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Sumitomo Electric Industries Ltd
Original Assignee
Sumitomo Electric Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 低誘電率被覆を備えた細径の絶縁電線を提供
する。 【解決手段】 導電性を有する線状の導体と、紫外線に
より重合する第1の紫外線硬化型樹脂原料を重合した第
1の樹脂と熱膨張性のマイクロカプセルとを含み、導体
の周囲を覆う絶縁層と、紫外線により重合する第2の紫
外線硬化型樹脂原料を重合した第2の樹脂から成り、絶
縁層の周囲を覆う保護層とを備えることを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、同軸ケーブル等に
用いられる絶縁電線に関し、特に、低誘電率で細径の絶
縁電線に関する。
【0002】
【従来の技術】線状の内部導体の周囲に絶縁体が被覆さ
れた絶縁電線に、更に同心的に円筒形の外部導体が配置
された同軸ケーブルは、高周波電気信号の伝送に多用さ
れているが、特に近年、細径の高密度信号伝送線への要
求が、主に医療、コンピュータ計測等の分野を中心に高
まっている。
【0003】同軸ケーブルには、伝送される信号を正し
く(歪みなく)、しかも高速で伝える性能が要求され
る。一般に、伝送線路内の進行波の伝搬速度はνg =c
/ε1/ 2 (c:真空中の光速度、ε:電界が発生する部
分の比誘電率)で与えられるため、該同軸ケーブルを構
成する絶縁電線の絶縁被覆に対しては、低誘電率である
こと(例えば比誘電率ε=1.6以下)が要請される。
【0004】導体上に薄い絶縁層を形成して細径の絶縁
電線を製造する技術には、例えば、特公昭57−302
53号公報に記載されるような発泡押出技術がある。こ
れは一般に、アゾジカルボンアミドのような化学発泡
剤、窒素、アルゴン等の不活性な気体あるいは気体又は
液体状の炭化水素又はフルオロカーボンのいずれかある
いはそれらの併用により、ポリオレフィン系の樹脂を発
泡させ、大きな空隙率を得て低誘電率の絶縁層を形成す
るものである。
【0005】また、例えば、米国特許第3,953,5
66号明細書あるいは米国特許第4,187,390号
明細書に示されるような、大きな空隙率を有するフッ素
樹脂テープを延伸により導体上に巻き付けることにより
絶縁層を形成する方法がある。更に、特公昭56−43
564号及び特公昭57−39006号公報には、アル
ミナ等の無機材料の中空球又は発泡状球体の表面に熱可
塑樹脂を被覆したものを溶融押出しする方法や、熱可塑
樹脂と無機材料中空球体とを溶剤に分散させたものを導
体に塗布し乾燥することにより、絶縁電線を得る方法が
開示されている。
【0006】しかしながら、上記した従来の発泡押出法
においては、薄肉で高い発泡度を維持しつつ低誘電率の
被覆を形成することが技術的に困難であり、また、上記
した多孔質のテープを導体に巻付ける方法においては、
生産速度が非常に遅く大量生産に適しないという問題が
ある。
【0007】そこで、このような問題点を解決する技術
として、本出願人による特開平2−160312号公報
には、中空球と紫外線硬化型樹脂等のエネルギー線硬化
型樹脂との混合組成物を用いて高空隙率の薄肉被覆を作
製する方法が開示されている。更に、特開平2−242
536号公報、特開平2−276109号公報及び米国
特許第5,115,103号明細書には、膨張性中空球
(熱膨張性マイクロカプセル)と紫外線硬化型樹脂等の
エネルギー線硬化型樹脂との混合組成物を用いて高空隙
率の薄肉被覆を作製する方法が開示されている。これら
の技術によれば、低誘電率の被覆を形成することがで
き、生産性を向上させることができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
従来技術による絶縁電線では、同軸ケーブルの高速伝送
特性を向上させるために、線状の内部導体と円筒状の外
部導体の間に介在させる絶縁被覆の誘電率を低くしよう
とすると、絶縁被覆を高空隙率のものにする必要がある
ため、絶縁被覆の強度が低下する。
【0009】このため、従来の絶縁電線では、製造工程
での機械的な被覆の破壊や、外部導体を巻き付ける工程
での被覆の破壊を考慮して、マイクロカプセルの添加量
を一定以下に抑えるか、又はマイクロカプセルの膨張率
を一定以下に抑えるかしなければならず、充分な高速伝
送性が得られなかった。
【0010】しかしながら、近年における伝送信号量
(単位時間当たり)の飛躍的増大に伴い、該伝送の手段
たる同軸ケーブルに対しても、更に高いレベルでの高速
伝送性が要求されるようになったため、上記した従来技
術の問題点を解決する絶縁電線を提供することが求めら
れていた。
【0011】本発明の目的は、生産速度の向上に適する
ものでありながら、高強度であるため製造工程等で絶縁
破壊や破損を受けることなく、且つ、実効誘電率が低い
絶縁被覆を有する絶縁電線を提供することにある。
【0012】本発明の他の目的は、高速伝送用の同軸ケ
ーブルを高い生産性で製造することに特に適するよう
に、高強度且つ低実効誘電率の絶縁被覆を有する絶縁電
線を製造する方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】一般に、信号を高速で伝
送する同軸ケーブル中の絶縁電線の被覆では、該被覆全
体として低誘電率であったとしても、導体近傍に位置す
る被覆の誘電率が高いと、実測される信号の伝送速度は
遅くなり、実用性が低下する。即ち、絶縁被覆の実効誘
電率は高くなってしまう傾向がある。このことは逆に言
えば、中心導体の近傍において、絶縁被覆の誘電率が低
ければ、外周部の誘電率が高くても、全体としての実効
誘電率は低くできることを意味している。本発明は、か
かる事実に着目してなされたものであり、導電性を有す
る線状の導体と、紫外線により重合する第1の紫外線硬
化型樹脂原料を重合した第1の樹脂と熱膨張性のマイク
ロカプセルとを含み、導体の周囲を覆う絶縁層と、紫外
線により重合する第2の紫外線硬化型樹脂原料を重合し
た第2の樹脂から成り、絶縁層の周囲を覆う保護層とを
備えることを特徴とする。
【0014】保護層を具備する事により、全体の誘電率
に影響を与えることなく、絶縁電線は、充分な被覆強度
を有する事が可能となる。
【0015】本発明の絶縁電線の製造方法は、紫外線に
よる重合性を有する第1の紫外線硬化型樹脂原料と熱膨
張性のマイクロカプセルとを含有する絶縁層原料組成物
を、導電性を有する線状の導体の外周上に付着させる第
1の付着のステップと、絶縁層原料組成物が周囲に付着
された導体に紫外線を照射して、絶縁層原料組成物に含
まれる紫外線硬化型樹脂原料の重合反応を行い、絶縁層
原料組成物が硬化した絶縁層を導体の周囲に形成する絶
縁層形成のステップと、絶縁層形成のステップの後、導
体の周囲の絶縁層の表面上に、紫外線による重合性を有
する第2の紫外線硬化型樹脂原料を付着させる第2の付
着のステップと、第2の付着のステップの後、第2の紫
外線硬化型樹脂原料が周囲に付着された導体に紫外線を
照射して第2の紫外線硬化型樹脂原料の重合反応を行
い、第2の紫外線硬化型樹脂原料が硬化した保護層を絶
縁層の周囲に形成する保護層形成のステップとを備える
ことを特徴とする。
【0016】この方法では、第1の塗布のステップ及び
絶縁層形成のステップのための装置をそのまま、第2の
塗布のステップ及び保護層形成のステップに用いる事が
できるので、従来から用いられている装置をそのまま用
いる事ができる。
【0017】本発明の絶縁電線の製造方法は、紫外線に
よる重合性を有する第1の紫外線硬化型樹脂原料と熱膨
張性のマイクロカプセルとを含有する絶縁層原料組成物
を、導電性を有する線状の導体の外周上に付着させる第
1の付着のステップと、第1の付着のステップの後、絶
縁層原料組成物の周囲に紫外線による重合性を有する第
2の紫外線硬化型樹脂原料を付着させる第2の付着のス
テップと、第2の付着のステップの後、導体に紫外線を
照射して、第1の紫外線硬化型樹脂原料及び第2の紫外
線硬化型樹脂原料の重合反応を行い、導体の周囲に形成
された絶縁層と、絶縁層の周囲に形成された保護層を、
導体の周囲に同時に形成する硬化のステップとを備える
ことを特徴とする。
【0018】この方法では、絶縁層の硬化反応と保護層
の硬化反応を一度に行う事ができるため、製造プロセス
が簡便なものとなる。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、添付した図面を参照して、
本発明を更に詳しく説明する。尚、添付した図面におい
ては、共通の要素には共通の符号を付し、重複する説明
を省略した。
【0020】図1(a)及び(b)は、本発明に従った
絶縁電線の一例の模式的な断面図である。図1(a)
は、後述する図2に示される製造装置10により製造さ
れる絶縁電線1の断面図を表し、図1(b)は、後述の
図3に示される製造装置30により製造される絶縁電線
6の断面図を表す。図1(a)及び(b)に示されるよ
うに、本発明に従った絶縁電線1又は6では、高密度信
号伝送用の導体2の周囲を絶縁層3が被覆し、絶縁層3
は更に、樹脂から成る保護層7で覆われている。絶縁層
3は、樹脂5の中にマイクロカプセル4が均一に分散す
ることにより構成されている。
【0021】図1(a)又は(b)に示されるような絶
縁電線1又は6の構成において、マイクロカプセル4が
樹脂5のマトリクスに分散する絶縁層3を具備する事に
より、細径の低静電容量の絶縁電線を実現できる理由
は、特開平2−242536号公報及び特開平2−27
6109号公報に記載されると同様に、以下の通りであ
る。
【0022】まず、空隙率と誘電率の関係を説明する。
図1に示される絶縁層3を構成する、紫外線硬化樹脂
(5で指示される部分を構成する)とマイクロカプセル
(4で指示される部分を構成する)の「樹脂カプセル混
合組成物」(保護層3全体を構成する)の空隙率Vは、
下記(1)式により算出される; V = (ρ0 −ρ)/ρ0 X 100 ...(1), ここで、ρ0 は紫外線硬化型樹脂の密度、ρは樹脂カプ
セル混合組成物の密度である。
【0023】このρ0 及びρは、様々な周知の手段で容
易に測定でき、これらの密度から(1)式により空隙率
が算出される。
【0024】樹脂カプセル混合組成物の誘電率εは、紫
外線硬化樹脂の誘電率ε1 と、マイクロカプセル内に充
填されている充填物の誘電率ε2 、更に上記の空隙率V
により決定され、より具体的に下記の(2)式で表され
ることは周知である。
【0025】 ε=ε1 {2 ε1 +ε2 −2 V(ε1 −ε2 )}/{2 ε1 +ε2 +V(ε1 − ε2 )} ...(2)。
【0026】従って、マイクロカプセルを形成する材
質、紫外線硬化型樹脂の種類、樹脂カプセル混合組成物
の空隙率、並びに、混合組成物中のマイクロカプセルの
含有率を選択することにより、混合組成物を付着して硬
化する被覆層の空隙率を所望の値に安定させることが可
能となる。
【0027】このとき、例えば、樹脂カプセル混合組成
物の誘電率εを、同軸ケーブルに用いるために好ましい
誘電率である1.60以下にするためには、適当なε1
を与える樹脂5を選択し、且つ、絶縁層3のための樹脂
カプセル混合組成物の空隙率Vを40%以上とすればよ
い。
【0028】更に、図1に示されるように、本発明に従
った絶縁電線は、絶縁層3の周囲に形成された薄い保護
層7を具備する。保護層7を構成する樹脂は、絶縁層3
を構成する樹脂5と異なる樹脂であっても同一の樹脂で
あってもよいが、絶縁層3と保護層7との接着性の観点
からは、同一の樹脂であることが好ましい。
【0029】次に、絶縁電線の被覆の強度に関して考察
する。絶縁層を構成するマイクロカプセル単体では、接
着や一体化の作用はないので、当該被覆の強度は、マト
リクスである紫外線硬化型樹脂によって決定される。こ
こで、強度に関しては、電線の製造工程における繰り出
しやローラ等の接触で破壊されるか否かといった観点か
らの評価が重要である。
【0030】絶縁層のための原料組成物において、マイ
クロカプセルが膨張する前は、マイクロカプセルの間に
も紫外線硬化型樹脂が充填されているが、マイクロカプ
セルが膨張する事により絶縁層自体の肉厚が増大し、そ
の断面積が増加する。従って、膨張後の絶縁層には、マ
イクロカプセル間に紫外線硬化型樹脂が完全に充填され
ないこととなり、マイクロカプセルと紫外線硬化型樹脂
がいわば点接触的な構造を有して、絶縁層を構成するこ
とになる。
【0031】ここで、強度向上の手段としては、マイク
ロカプセルの添加量を低減するか、あるいは膨張率を小
さくするかが考えられるが、いずれも被覆の実効誘電率
を損なってしまう。一方、被覆の破壊は、被覆同士やロ
ーラ等によって外部から生じるものである。従って、外
周部に紫外線硬化型樹脂の保護層が形成されれば、前述
の点接触的な構造の低強度の問題は改善され、かつ、下
記のように、導体から最も離れた最外周の部分的な誘電
率が増加するのみであって実効誘電率にはほとんど影響
がない。
【0032】即ち、被覆された導体の静電容量Cは、
【数1】 (ここで、Dは被覆外径、dは被覆内径、εは誘電率、
添字mは層の数)で表されるので、最外周に薄い高誘電
率の保護層7があったとしても、全体に対しての保護層
7の寄与は大きくない。従って、絶縁層3の外周に高誘
電率の保護層7を形成しても、保護層が充分薄ければ、
絶縁電線全体の静電容量に大きな影響を与えることな
く、機械的に充分な強度を有する保護を絶縁電線に与え
る事が可能となる。
【0033】従って、上記の如く、保護層7の厚さは、
静電容量Cに大きな変化を与えないで有効な強度を与え
る観点から、1μm〜50μmの範囲にあればよく、好
ましくは5μm〜20μm、更に好ましくは5μm〜1
0μmの範囲にあればよい。
【0034】製造工程及び製造装置に関して説明をす
る。
【0035】図2は、本発明の絶縁電線の製造方法を実
現するための製造装置の一例を示す構成図である。図2
に示されるように、本発明に従った絶縁電線の製造装置
10は、絶縁層の形成のためのライン10aと、保護層
形成のためのライン10bの2つのラインから構成され
る。
【0036】絶縁層形成のためのライン10aは、導体
を製造装置へ供給するための導体サプライ12からの供
給される導体11aの周囲に原料組成物を塗布するため
の塗布ダイ14と、塗布ダイ14に原料組成物を供給す
る原料組成物供給用タンク13を備える。更に、塗布ダ
イ14の下流には、順に、塗布ダイ14で塗布された原
料組成物に含まれるマイクロカプセルの膨張のための加
熱炉16と、樹脂硬化のための紫外線照射装置17と、
ラインで導体を駆動する駆動装置18と、絶縁層の形成
が終了した導体を収容する巻き取り19とが具備され
る。即ち、ライン10aは、従来から用いられている絶
縁電線の装置をそのまま用いたものである。
【0037】保護層形成のためのライン10bでは、ラ
イン10aで絶縁体が形成された導線を収容した巻き取
り19をそのまま供給用のサプライとして用いてもよ
い。ライン10bは、巻き取り19からの導線11bの
周囲に紫外線硬化型樹脂原料を塗布する塗布ダイ114
を備える。塗布ダイ114には、紫外線硬化型樹脂原料
を供給するための樹脂原料供給用タンク113が接続さ
れている。更に、ライン10bには、塗布された樹脂硬
化のための紫外線照射装置117と、絶縁電線1を駆動
するための駆動装置118と、完成した絶縁電線1を収
容する巻き取り119とが具備される。但し、ライン1
0bとして、必ずしもライン10aと別の装置を用意す
る必要はなく、ライン10aは、導体サプライ12の位
置に巻き取り19を設置して加熱炉16を機能させなけ
れば、ライン10bとしても使用可能である。従って、
製造装置10は、従来からの絶縁電線の製造装置をその
まま用いればよい。
【0038】本発明の絶縁電線の製造装置10では、ラ
イン10a、10bとも、導体11a又は11bは、ラ
イン10aではサプライ12から、ライン10bでは巻
き取り19から、矢印Aの方向に進行する。導体線11
a(又は絶縁電線11b)の移送速度は、線速で10〜
100m/分程度(更には30〜80m/分程度)であ
ることが好ましい。
【0039】ライン10aでは、導体11aは以下のよ
うに、硬化後の樹脂カプセル混合組成物(簡単のため、
以下、「樹脂組成物」と略す。これは硬化後の物を指
す)から成る絶縁層が導体上に形成される。図2に示さ
れるように、導体11aは塗布ダイ14へと導入され
る。塗布ダイ14では、モノマー、オリゴマー又はプレ
ポリマー等の樹脂原料とマイクロカプセルとの混合物で
ある絶縁材料原料組成物(簡単のため、以下、「原料組
成物」と称する。これは「樹脂組成物」の硬化前の物を
指す)が導体11aに塗布され、導体11aの周囲に付
着する。塗布ダイ14には、塗布ダイ14へ原料組成物
を供給するための原料組成物供給用タンク13が具備さ
れる。塗布ダイ14へ導入された導体11aは、ここで
原料組成物が略一定の厚みをもって導体線11aの外周
に付着し、加熱炉16へと進む。尚、塗布ダイ14にお
いては、液状の原料組成物は、導体11aの周りに供給
された後、ダイによって搾り取られて、適切な量が導体
11aの周囲に残される。また、別の塗布付着方法とし
て、導体11aに対して周知のスプレー装置によってカ
プセル混合モノマーをスプレーする方法等を使用しても
よいし、更にスプレーの後に、ダイによってカプセル混
合モノマーを搾りとってもよい。このようにして導体1
1aの表面上に塗布された原料組成物層の厚さは、該導
体11aの直径ないし製造されるべき絶縁電線の直径に
よっても異なるが、通常、10〜100μm程度、好ま
しくは10〜50μm程度であることが好ましい。
【0040】後述するマイクロカプセルを適度に膨張さ
せるためには、導体11aが重合のための紫外線照射装
置17に導入される前に、マイクロカプセルを適切な温
度まで加熱しておく必要がある。このため、図2に示さ
れるように、導体11aは、原料組成物に含まれるマイ
クロカプセルの膨張のため、加熱炉16へと導入され
る。加熱炉16では、後述するマイクロカプセルの膨張
開始温度よりも高い温度に原料組成物中のマイクロカプ
セルを加熱する加熱工程が行われ、マイクロカプセルが
均一に充分に膨張する。
【0041】上記した加熱炉16による「外周外部から
の加熱」は、導体11a上の原料組成物表面の温度が、
150〜200℃程度となるように行うことが好まし
い。加熱炉16の炉長(導体の長手方向の大きさ)は、
通常、30〜100cm程度であることが好ましい。
【0042】原料組成物が付着された導体11aは、原
料組成物の硬化のため、紫外線照射装置17に導入され
る。紫外線照射装置17は、紫外線を照射するための水
銀ランプを備えて、紫外線を照射する紫外線照射工程に
よる重合反応が行われ、図2に示されるように、絶縁層
が形成された導体11bが紫外線照射装置17から吐出
される。紫外線照射装置17の川下には、導体11a、
11bを進行させるための駆動装置18が配置されて、
導体11bを引っ張り、巻き取り19に巻き取られる。
【0043】巻き取られた導体11bは、巻き取り19
のまま、ライン10bに設置される。ライン10bに
も、駆動用の駆動装置118が具備され、供給用の巻き
取り19から製品収容用の巻き取り119の方向へと、
導体11bないし絶縁電線1を引っ張って移動させる。
導体11bは、供給用の巻き取り19から塗布ダイ14
4へと導入される。塗布ダイ114には、樹脂原料供給
用タンク113が接続され、保護層の形成用のモノマ
ー、オリゴマー又はプレポリマー等の樹脂原料が、塗布
ダイ114へと供給される。塗布ダイ114では、絶縁
層の表面上に樹脂原料が略一定の厚さに塗布される。樹
脂原料が塗布された導体は、樹脂原料の重合による硬化
のため、紫外線照射装置117へと導入される。紫外線
照射装置117でも、ライン11aにおけると同様に紫
外線が照射され、樹脂原料が硬化して保護層が形成さ
れ、絶縁電線が完成する。絶縁電線1は、製品収容用の
巻き取り119に巻き取られる。
【0044】また、本発明に従った絶縁電線の製造方法
は、図3に示されるような、デュアルダイによるウェッ
ト・オン・ウェットの塗布の後に、マイクロカプセルの
膨張のための加熱と、紫外線の照射を行い、絶縁層と保
護層を同時に硬化させて形成する様式であってもよい。
【0045】図3は、本発明に従った絶縁電線の別の製
造方法に用いられる別の製造装置の構成図である。図3
に示されるように、絶縁電線の製造装置30は、導体サ
プライ212から供給される導体11aに対して、紫外
線硬化型の樹脂原料とマイクロカプセルとの混合物であ
る原料組成物塗布用の第1の塗布ダイ214と紫外線硬
化型の樹脂原料塗布用の第2の塗布ダイ215とから成
るデュアルダイ220を具備する。原料組成物は、原料
組成物供給用タンク213からダイ214へと供給され
る。また、樹脂原料は、樹脂原料供給用タンク231か
らダイ215へと供給される。デュアルダイ220で
は、第2の塗布ダイ215の出口側径は、第1の塗布ダ
イの出口側の径よりも大きくなっている。
【0046】デュアルダイ220の下流には、図2に示
される製造装置10と同様に、原料組成物中のマイクロ
カプセルを膨張させるための加熱炉216が具備され
る。更に、その下流には、デュアルダイ220により形
成された原料組成物の層と樹脂原料の層の2つの層を一
度に重合硬化させるための、紫外線照射装置217が1
つ備えられる。紫外線照射装置217は、図2に示され
る紫外線照射装置17と同様に、紫外線を照射するため
の水銀ランプを有している。更に紫外線照射装置217
の下流には、絶縁層と保護層とが被覆されて完成した絶
縁電線11dを引く駆動装置218が配置され、完成し
た絶縁電線11dは、製品収容用の巻き取り219に収
容される。
【0047】次に、本発明の絶縁電線を構成する要素に
関して詳細に説明する。前述のように、本発明では、導
体に塗布すべき原料組成物は、熱膨張性のマイクロカ
プセルと、紫外線硬化型樹脂のモノマー、オリゴマー
又はプレポリマー、ないしこれらの混合物とを備える。
【0048】本発明では、原料組成物中に分散混合して
存在するマイクロカプセルとして、熱膨張剤からなる芯
材(内包物)と、該芯材を包む外殻とからなる熱膨張性
マイクロカプセルが好適に用いられる。
【0049】本発明の方法により製造されるべき絶縁電
線の絶縁被覆を薄肉(例えば、厚さ400μm以下の薄
肉)で低誘電率とすることが容易たらしめるためには、
上記熱膨張性マイクロカプセルは、その理想膨張(膨張
を妨げる力を実質的に受けていない状態での膨張)した
後の球径が、平均直径で4〜50μmφ(更には20〜
40μm)となるマイクロカプセルであることが好まし
い。同様に、絶縁被覆の薄肉化および低誘電率化のため
には、理想膨張後の中空率が90%以上(更には95%
以上)となるようなマイクロカプセルであることが好ま
しい。ここに、上記「中空率」とは、マイクロカプセル
の中空殻部の体積をマイクロカプセルの体積で除した値
をいう。この「中空率」は、中空殻部の球径と中空殻部
の殻厚とを測定することにより求めることができる。
【0050】上記マイクロカプセルの膨張前の平均粒径
は、1〜25μmφ(更には5〜10μm)であること
が好ましい。このマイクロカプセルの膨張率は、4程度
であることが好ましい。ここに、上記「膨張率」とは、
膨張前(常温:25℃)における平均粒径(直径)をD
r とし、膨張後(150℃)における平均粒径をDh
した場合の両者の比(Dh /Dr )をいう。
【0051】また、上記マイクロカプセルの膨張開始温
度が80〜200℃程度であるようにマイクロカプセル
の構成を選択することが好ましく、更には、80〜12
0℃程度であることが更に好ましい。ここに、上記「膨
張開始温度」とは、その平均粒径が、膨張前(常温:2
5℃)における平均粒径Dr の1.1倍となる温度をい
う。従って、前述の第1紫外線照射装置における第1の
重合のステップでは、マイクロカプセルは、(膨張開始
温度−30℃)〜(膨張開始温度)の範囲の温度まで加
熱されている事が好ましく、(膨張開始温度−20℃)
〜(膨張開始温度)の温度まで加熱されている事が更に
好ましい。そして、前述の加熱工程では、膨張開始温度
以上の温度に原料組成物を加熱することが好ましく、膨
張開始温度より5〜100℃高い温度に原料組成物を加
熱することが更に好ましい。
【0052】上記したような好ましい膨張性を与える限
り、熱膨張性マイクロカプセルを構成する熱膨張剤(芯
材)の膨張の原理ないしメカニズムは特に制限されな
い。この熱膨張剤としては、例えば、低沸点液体、およ
び/又は発泡剤が使用可能である。
【0053】上記した低沸点の液体としては、ブタン、
iーブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、ネオペンタ
ン等のアルカンないし炭化水素、トリクロロフルオロメ
タン等のフレオン類等が好ましく用いられる。また、上
記発泡剤としては、アゾビスイソブチロニトリル(加熱
によりN2 ガスを発生)等の熱分解性の化学発泡剤等が
好ましく用いられる。
【0054】一方、上記熱膨張剤を内包する外殻は、通
常は、熱可塑性樹脂等の高分子を主成分とする。該熱可
塑性樹脂には、ビニルモノマー(例えば塩化ビニル、塩
化ビニリデン、アクリロニトリル、アクリル酸、メタア
クリル酸、アクリレート、メタアクリレート、スチレン
等)等の単量体から形成された重合体、あるいは2種以
上の単量体から形成された共重合体が好ましく用いられ
る。
【0055】本発明で用いる熱膨張性マイクロカプセル
は、この外殻の軟化温度以上の適正な範囲(例えば、外
殻が塩化ビニリデンーアクリロニトリル共重合体の場
合、80℃〜150℃の範囲)で膨張する。
【0056】一方、本発明の絶縁層形成用の原料組成物
に含まれる紫外線硬化型樹脂のための原料であるモノマ
ー、オリゴマー又はプレポリマー、並びに、本発明の保
護層形成のための紫外線硬化型樹脂のための原料である
モノマー、オリゴマー又はプレポリマー(以下、両者を
総括して「紫外線硬化型樹脂の原料」と称する)には、
例えば、ウレタンアクリレート樹脂、エポキシアクリレ
ート樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンアクリレート樹
脂、ポリエステルアクリレート樹脂等の汎用の紫外線硬
化型樹脂の原料であるモノマー、オリゴマー又はプレポ
リマーを用いることが可能である。本発明による方法で
形成される絶縁被覆の誘電率を低下させる点からは、上
記紫外線硬化型樹脂の硬化後の誘電率は、4.0以下
(更には3.0以下)であることが好ましい。これらの
紫外線硬化型樹脂の原料は、紫外線の照射により重合し
硬化する。また、紫外線硬化型樹脂の原料であるモノマ
ー、オリゴマー又はプレポリマーは、混合物であっても
よく、例えば、オリゴマー及び/又はプレポリマーがモ
ノマー中に分散している形態であってもよい。更にこれ
らが溶剤を含んでいてもよい。
【0057】また、上記紫外線硬化型樹脂及びその原料
には、一般的に樹脂に含有されてしかるべき添加物、例
えば、可塑剤や帯電防止剤の如き添加物が含有されてい
てもよい。
【0058】上記の紫外線硬化型樹脂の原料の粘度は、
該樹脂中への熱膨張性マイクロカプセルの均一な混合分
散を容易にする点と、得られた混合組成物の導体上への
塗布加工を容易とする点からは、25℃において、10
0〜10000cps(更には500〜5000cp
s)の範囲とすることが望ましい。このような粘度は、
例えば、B型粘度計を用いて、(粘度500〜5000
cpsの範囲の樹脂の場合)以下のような測定条件の範
囲で測定することが可能である。
【0059】粘度計機種名:東京計器(株)社製、商品
名B 型粘度;型名BM型 容器径:70mmφ以上 内筒(ローター)径:18.7mmφ(NO.2ローター) ローター回転数:6〜60rpm。
【0060】絶縁層の形成のための熱膨張性マイクロカ
プセルと紫外線硬化型樹脂との混合物である原料組成物
において、好ましい誘電率を得るためには、形成された
被覆の空隙率を40%以上とする必要がある。そして、
完成後の被覆における空隙率を40%以上とするために
は、上記マイクロカプセルの混合比率は5体積%以上で
ある必要があり、更には10体積%以上であることが好
ましい。一方、マイクロカプセルの混合率が高くなり過
ぎると、混合物の粘度が大きくなり過ぎて、連続塗布あ
るいは平滑性に支障が生じる。このため、紫外線硬化型
樹脂に対する熱膨張性マイクロカプセルの混合比率は5
0容量%以下(更には40容量%以下)とすることが好
ましい。
【0061】原料組成物の粘度は、導体上への塗布加工
を容易とする点からは、25℃において、1, 000〜
100,000cps(更には1,000〜10,00
0cps)の範囲とすることが望ましい。このような粘
度は、紫外線硬化型樹脂原料の粘度の測定と同様な方法
で測定することが可能である。この100,000cp
sの粘度を与えるためには、前述のように紫外線硬化型
樹脂に対する熱膨張性マイクロカプセルの混合比率は5
0容量%以下とすることが好ましい。
【0062】また、塗布後硬化までの間に原料組成物の
「液だれ」を生じないように、原料組成物には周知の方
法でチクソトロピー性が付与されていてもよい。
【0063】このような樹脂とマイクロカプセルを含む
樹脂組成物によって形成される被覆の厚さは、現実には
制限はない。但し、紫外線の照射により硬化する事と、
本発明の利点が薄膜被覆にある事から、被覆はあまり厚
くしない方が好ましく、具体的には導体への被覆の厚さ
は、0.4mm以下とすることが好ましい。
【0064】本発明の原料組成物は、あらゆる導体に対
して塗布を行って硬化することが可能である。より具体
的には例えば、従来公知の金属性の電気導体(銅、アル
ミニウム、ニッケルあるいはこれらの合金等)、これら
電気導体の表面をメッキしたもの等を上記導体として使
用し、この周囲に上記原料組成物を塗布、硬化して、絶
縁電線を形成することが可能である。導電性等の電線と
しての性能から、銅あるいは銅合金を用いることが好ま
しい。但し、導体の熱容量が大きい場合はマイクロカプ
セルの膨張性が優れないことから、0.2mmφの銅あ
るいは銅合金の熱容量に相当する熱容量以下である導体
を用いることが好ましい。
【0065】同様に、保護層の形成のための紫外線硬化
型樹脂原料も、導体上への塗布加工を容易とする点か
ら、25℃において上記と同様の粘度測定法で、1, 0
00〜100,000cps(更には1,000〜1
0,000cps)の範囲の粘度を有することが望まし
い。また同様に、塗布後硬化までの間に原料組成物の
「液だれ」を生じないように、原料組成物には周知の方
法でチクソトロピー性が付与されていてもよい。
【0066】図3は、本発明の絶縁電線を用いた同軸ケ
ーブル20の断面図である。図3に示されるように、導
体2の外側に、本発明に従った製造方法で、マイクロカ
プセル4と樹脂5とを備えた絶縁層3と保護層7を形成
した絶縁電線に対して、導体2のシールドのため、保護
層7の表面上に、外形30μmφの合金線の編組からな
るシールド層22を形成し、その上に、5μm厚のポリ
エチレンテレフタレート製のテープを横巻きした外被2
3を形成し、図3に示す断面構造を有する同軸ケーブル
20が作製される。この同軸ケーブル20においては、
絶縁層3の形成方法以外は、全て周知の方法で形成され
る。
【0067】
【実施例】以下、本発明の好ましい実施例を明らかにす
る。
【0068】(実施例1)本実施例では、本発明に従っ
て、図2に示される絶縁電線の製造装置10を用い、図
1(a)に示される断面を有する絶縁電線を作製した。
本実施例では、先ず導体2の周囲に紫外線硬化型樹脂と
マイクロカプセルとの混合物である原料組成物を塗布し
て硬化させて絶縁層3を形成した後、絶縁層3の表面に
紫外線硬化型樹脂を塗布して硬化させて保護層7を形成
した。
【0069】まず、製造装置10aの導体サプライ12
に、外径0.20mmの銅線(導体)を配置した。以下
のように、製造装置10aによって、導体2の上に絶縁
層3を形成した。
【0070】塩化ビニリデン系樹脂を殻とする中空球内
に液体のイソブタンを充填した平均球径(直径)10μ
mの熱膨張性マイクロカプセルを、室温(25℃)で粘
度14psのシリコーンアクリレートを主成分とする紫
外線硬化型樹脂の原料(硬化後の誘電率:2.8)と
を、マイクロカプセルの含有量が25容量%となるよう
に添加し、撹拌混合して粘度6X103 cpsの原料組
成物を作製した。作成された原料組成物は、原料組成物
供給タンク13に投入された。
【0071】次に、加圧式の原料組成物供給タンク13
から、流動する原料組成物を加圧式塗布ダイ14に供給
しつつ、導体サプライ12から巻出した外径0.20m
mφの銅線(導体)11aを、出口側に0.25mmφ
の開口を有する塗布ダイ14中を線速40m/分で通過
させることにより、銅線11aの外周に上記の原料組成
物を約20μmの厚みで塗布した。銅線11aの線速
は、駆動装置18によって調整された。表面に原料組成
物が塗布された導体11aは、炉長30cmの加熱炉1
6に導入され、ここでマイクロカプセルの膨張が行われ
た後、紫外線照射装置17に導入された。紫外線照射装
置17は、炉長25cmで、内部に出力120Wの水銀
ランプが具備されていた。紫外線照射装置17内で約
0.2秒間紫外線の照射を受けて、原料組成物の紫外線
硬化型樹脂が硬化し、絶縁層3の厚さが0.19mm、
外径0.58mmの絶縁層3を有する導体11bが紫外
線照射装置17から吐出された。
【0072】ちなみに、絶縁層3の静電容量を測定した
ところ、67pF/mであった。
【0073】そして以下のように、製造装置10bを用
いて、絶縁層3の上に保護層7を形成して、図1(a)
にその断面が示されるような絶縁電線を完成させた。絶
縁層3が形成された導体を巻き取った巻き取り19を製
造装置11bに設置した。絶縁層3の形成のための原料
組成物を構成する紫外線硬化型樹脂原料と同じ紫外線硬
化型樹脂原料を、樹脂原料供給タンク113に投入し
た。この紫外線硬化型樹脂原料は、樹脂原料供給タンク
113から、出口側に0.62mmφの開口を有する塗
布ダイ114に供給された。巻き取り19から、絶縁層
で覆われた導体11bが、線速40m/分で塗布ダイ1
14に導入され、導体上に形成された絶縁層の表面上に
紫外線硬化型樹脂原料が、塗布温度45℃の条件で塗布
された。そして、これは紫外線照射装置117へと導入
され約0.2秒間紫外線の照射を受けて紫外線硬化型樹
脂が硬化し、ここに、図1(a)にその断面が示される
ような絶縁電線が紫外線照射装置117から吐出され
て、製品収容用の巻き取り119に巻き取られた。
【0074】作製された絶縁電線は、外径0.60mm
φ、静電容量は70pFであり、被覆の強度を確認する
ために絶縁電線を指でしごいてみたところ、被覆の剥離
は生じなかった。作製された絶縁電線を切断して断面の
走査電子顕微鏡(SEM)写真を撮影し、断面を観察し
たところ、被覆の表面に樹脂層が形成されて保護層を成
しており、マイクロカプセルは被覆の表面に露出してい
なかったことが確認された。
【0075】(実施例2)本実施例では、本発明に従っ
て、図3に示される絶縁電線の製造装置30を用い、図
1(b)に示される断面を有する絶縁電線を作製した。
本実施例では、出口側に0.25mmφの開口を有する
第1の塗布ダイ214と、出口側に0.31mmφの開
口を有する第2の塗布ダイ215とから成るデュアルダ
イ220を用い、導体2の周囲に、紫外線硬化型樹脂と
マイクロカプセルとの混合物である原料組成物と紫外線
硬化型樹脂とを2層に塗布した後、紫外線照射によって
2層ともに硬化させて、絶縁層3と保護層7を同時に形
成した。
【0076】本実施例でも、導体は外径0.20mmの
銅線(導体)を用い、実施例1で用いたと同じ配合の絶
縁層用の原料組成物と、実施例1で用いたと同じ保護層
用の紫外線硬化型樹脂原料を用いた。
【0077】本実施例で作製された絶縁電線は、その断
面が図1(b)に示されるようであった。作製された絶
縁電線は、外径0.60mmφ、静電容量は70pFで
あり、被覆の強度を確認するために絶縁電線を指でしご
いてみたところ、被覆の剥離は生じなかった。作製され
た絶縁電線を切断して断面の走査電子顕微鏡(SEM)
写真を撮影し、断面を観察したところ、被覆の表面に樹
脂層が形成されて保護層を成しており、マイクロカプセ
ルは被覆の表面に露出していなかったことが確認され
た。
【0078】(比較例)図5は、従来から用いられる絶
縁電線の製造装置の構成図である。図6は、本比較例で
製造された絶縁電線の断面を示す断面図である。この比
較例では、実施例1及び2に示された本発明の製造方法
の有用性を確認するため、図5に示される製造装置50
を用い、従来からの製造方法に従って、0.2mmφの
銅線の表面に、実施例1及び2と同じ原料組成物を塗布
して硬化させて絶縁層3を形成し、図6に示される断面
を有する絶縁電線を作製した。樹脂のみから成る保護層
は形成しなかった。本比較例の製造装置50は、図2に
示される製造装置10aの構成と同じである。各装置の
仕様等も、図2に示される装置10(a)と全く同じで
あり、例えば、紫外線照射装置17には、長さ25c
m、出力120Wの水銀ランプが具備されていた。
【0079】塗布ダイ14において表面に原料組成物を
塗布し、炉長30cmの加熱炉16にてマイクロカプセ
ルを膨張させた後紫外線照射装置17にて原料組成物を
硬化させて、絶縁層3を導体2の表面上に形成し、図6
に示されるような断面を有する絶縁電線を作製した。こ
の上に保護層は形成しなかった。絶縁層3の厚さが0.
19mm、外径0.58mm、静電容量67pF/mの
絶縁電線が得られた。
【0080】本比較例で作製された絶縁電線の表面をS
EMで観察したところ、マイクロカプセルが略点接触で
形成されていた。そして、強度調査のため、絶縁電線の
表面を指でしごいたところ、ごくわずかに、被覆の一部
であるマイクロカプセルが剥離したことが確認された。
【0081】以上のように比較例と比較すれば、実施例
1及び2のように樹脂のみの保護層を絶縁層上に薄く形
成すれば、静電容量にさほど影響を与えずに、被覆の強
度を高めることが可能となることが示された。
【0082】
【発明の効果】以上、詳細に説明したように、本発明の
絶縁電線では、保護層が具備される事により、全体の誘
電率に影響を与えることなく、絶縁電線は、充分な被覆
強度を有する事が可能となる。
【0083】また、本発明の絶縁電線の製造方法では、
上記のような絶縁電線を連続的に効率良く製造する方法
が提供される。
【0084】従って、高いレベルでの高速伝送性を備え
且つ充分な機械強度を備えた細径の絶縁電線を生産性良
く提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従った絶縁電線の一例の断面図であ
る。
【図2】本発明に従った1つの製造方法に用いることが
できる絶縁電線の製造装置の構成図である。
【図3】本発明に従った別の製造方法に用いることがで
きる絶縁電線の製造装置の構成図である。
【図4】本発明に従った絶縁電線を用いた同軸ケーブル
の断面図である。
【図5】従来からの技術に従った製造方法に用いること
ができる絶縁電線の製造装置の構成図である。
【図6】従来からの技術に従った絶縁電線の断面図であ
る。
【符号の説明】
1…絶縁電線、2…導体線、3…絶縁層、4…マイクロ
カプセル、5…樹脂、7…保護層、10,30…絶縁電
線製造装置、11a,11b…導体、12…導体サプラ
イ、13…原料組成物供給用タンク、113…樹脂原料
供給用タンク、14,114…塗布ダイ、16…加熱
炉、17…紫外線照射装置、18…駆動装置、19…巻
き取り、20…同軸ケーブル、22…シールド層、23
…外被。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 遠藤 誠治 栃木県鹿沼市さつき町3番3号 住友電気 工業株式会社関東製作所内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 導電性を有する線状の導体と、 紫外線により重合する第1の紫外線硬化型樹脂原料を重
    合した第1の樹脂と熱膨張性のマイクロカプセルとを含
    み、前記導体の周囲を覆う絶縁層と、 紫外線により重合する第2の紫外線硬化型樹脂原料を重
    合した第2の樹脂から成り、前記絶縁層の周囲を覆う保
    護層とを備えることを特徴とする絶縁電線。
  2. 【請求項2】 紫外線による重合性を有する第1の紫外
    線硬化型樹脂原料と熱膨張性のマイクロカプセルとを含
    有する絶縁層原料組成物を、導電性を有する線状の導体
    の外周上に付着させる第1の付着のステップと、 絶縁層原料組成物が周囲に付着された前記導体に紫外線
    を照射して、前記絶縁層原料組成物に含まれる前記紫外
    線硬化型樹脂原料の重合反応を行い、前記絶縁層原料組
    成物が硬化した絶縁層を前記導体の周囲に形成する絶縁
    層形成のステップと、 前記絶縁層形成のステップの後、前記導体の周囲の前記
    絶縁層の表面上に、紫外線による重合性を有する第2の
    紫外線硬化型樹脂原料を付着させる第2の付着のステッ
    プと、 前記第2の付着のステップの後、前記第2の紫外線硬化
    型樹脂原料が周囲に付着された前記導体に紫外線を照射
    して前記第2の紫外線硬化型樹脂原料の重合反応を行
    い、前記第2の紫外線硬化型樹脂原料が硬化した保護層
    を前記絶縁層の周囲に形成する保護層形成のステップと
    を備えることを特徴とする絶縁電線の製造方法。
  3. 【請求項3】 紫外線による重合性を有する第1の紫外
    線硬化型樹脂原料と熱膨張性のマイクロカプセルとを含
    有する絶縁層原料組成物を、導電性を有する線状の導体
    の外周上に付着させる第1の付着のステップと、 前記第1の付着のステップの後、前記絶縁層原料組成物
    の周囲に紫外線による重合性を有する第2の紫外線硬化
    型樹脂原料を付着させる第2の付着のステップと、 前記第2の付着のステップの後、前記導体に紫外線を照
    射して、前記第1の紫外線硬化型樹脂原料及び前記第2
    の紫外線硬化型樹脂原料の重合反応を行い、前記導体の
    周囲に形成された絶縁層と、前記絶縁層の周囲に形成さ
    れた保護層を、前記導体の周囲に同時に形成する硬化の
    ステップとを備えることを特徴とする絶縁電線の製造方
    法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010095652A (ja) * 2008-10-17 2010-04-30 Hitachi Cable Ltd 含水吸水性ポリマ含有樹脂組成物の製造方法及び含水吸水性ポリマ含有樹脂組成物、これを用いた多孔質物の製造方法及び多孔質物、絶縁電線の製造方法及び絶縁電線並びに同軸ケーブル
JP2011256429A (ja) * 2010-06-09 2011-12-22 Autonetworks Technologies Ltd 防食剤、端子付き被覆電線およびワイヤーハーネス
JP2016110847A (ja) * 2014-12-05 2016-06-20 住友電気工業株式会社 絶縁電線及び絶縁電線の製造方法

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