JPH09157804A - 低磁場での磁気特性に優れ、磁気異方性が小さい無方向性電磁鋼板およびその製造方法 - Google Patents

低磁場での磁気特性に優れ、磁気異方性が小さい無方向性電磁鋼板およびその製造方法

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JPH09157804A
JPH09157804A JP32187695A JP32187695A JPH09157804A JP H09157804 A JPH09157804 A JP H09157804A JP 32187695 A JP32187695 A JP 32187695A JP 32187695 A JP32187695 A JP 32187695A JP H09157804 A JPH09157804 A JP H09157804A
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steel sheet
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JP32187695A
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Inventor
Akira Hiura
昭 日裏
Yoshihiko Oda
善彦 尾田
Takehide Koike
健英 小池
Toshiharu Iizuka
俊治 飯塚
Shinichi Sugiyama
晋一 杉山
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JFE Engineering Corp
Original Assignee
NKK Corp
Nippon Kokan Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】低鉄損化のためにSi、Alを多量に添加する
成分系を前提とし、強冷延を行うことなく、低磁場での
磁気特性に優れ、異方性が小さい無方向性電磁鋼板を提
供すること。 【解決手段】重量%で、C:0.005%以下、Si:
1.7〜3.2%、Al:0.1〜1.0%、Mn:
0.1〜0.8%、およびCr:0.02〜0.1%、
Ni:0.01〜0.1%、Cu:0.01〜0.04
%の少なくとも1種を含有し、Sが15ppm以下であ
り、熱延板板厚全体の再結晶率が80%以上で、かつ熱
延板平均粒径DH(μm)が以下の式を満足する、低磁
場での磁気特性に優れ、磁気異方性が小さい無方向性電
磁鋼板。 53.1+36.8×[Si+Al]≦DH≦125.0 +64.8×
[Si+Al]

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、モーター等の鉄心
材料に好適な、低磁場での磁気特性に優れ、磁気異方性
が小さい無方向性電磁鋼板およびその製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】無方向性電磁鋼板は、磁気特性の板面内
異方性が小さいという特徴を生かしてモーター等の回転
機の鉄心材料に多用されており、磁気特性としては鉄損
と磁束密度が重視される。
【0003】近年、これらの無方向性電磁鋼板に対する
品質向上の要求は、電気機器の省電力化、高効率化、小
型化の観点から益々強くなってきている。とりわけ、電
気機器の設計では、一部の産業用の大型回転機を除け
ば、鉄損を重視するよりも励磁磁束密度を高く設定し、
鉄心の小型化を目指す動きが盛んになっている。
【0004】低鉄損の電磁鋼板は、一般にSiが多く添
加されている。このため、鉄損が低減する一方で磁束密
度も低下し、回転機鉄心に適用したときには励磁電流の
増加が予想される。このため、回転機鉄心材料として好
適な電磁鋼板は、鉄損だけではなく磁束密度も考慮する
必要がある。
【0005】これまで、無方向性電磁鋼板の鉄損を低減
するためには、SiおよびAlの添加量を増加して電気
抵抗を高める、仕上焼鈍において温度・時間を充分に確
保する、鋼をその溶製段階で高純度化する等の手段が採
用されている。
【0006】しかし、SiおよびAlの添加量を増加さ
せると磁束密度の低下を招き、かつ冷間圧延性が劣化す
るのでこれらの添加量には限界がある。しかも、1.7
%Si以上の高Si材では、熱延板中心厚さの部分に<
110>±θ//RDの繊維集合組織が発達し、熱延板焼
鈍を省略した場合に最終製品でリジングと称される畳表
面の縞模様のような形状不良が生じる。このため、高S
i鋼では熱延板焼鈍が必須となり、コストの上昇を招
く。また、仕上焼鈍で結晶粒を成長させると、磁気的に
不利な集合組織が発達しやすく、磁束密度は低下する。
【0007】溶製段階でS,N,O等の鋼中の不純物を
低減させることにより鉄損を低減する技術は、例えば、
特公平2−50190号公報等に提案されている。この
技術はW15/50 ≦2.5W/kgクラスの高級電磁鋼板
の低鉄損化のために、Si、Al量を限界まで高め
(3.2%Si−0.6%Al)、不純物元素をS≦1
5ppm、O≦20ppm、N≦25ppmまで極低下
させることで結晶粒の粗大化を図るものである。
【0008】しかしながら、この技術による製品特性
は、鉄損は非常に低いものの、本質的に高Si・高Al
材のため、磁束密度の低下は避けられない。また、リジ
ング防止のための熱延板焼鈍や中間焼鈍を挟んだ2回の
冷延等、複雑な工程によるコスト上昇の欠点がある。
【0009】以上のように、これまでの鉄損低減方法は
いずれも磁束密度の観点からは不利な方向にある。近
年、パワーエレクトロニクス技術が急速な進歩をとげ、
その代表例であるインバーターが産業用の大型機器から
家電製品まで幅広く採用されるようになってきている。
インバーターの採用により、電気機器の省電力、高効
率、高性能、小型化などが実現されはじめている。イン
バーター駆動による大型モーターやコンプレッサーモー
ターは、起動時には1.2〜1.5T、安定状態では
0.8〜1.0T程度で励磁されることが多く、こうし
た用途では、B1やW10/50 等の低磁場での磁気特性が
重視される。
【0010】これまでに低磁場特性に優れた電磁鋼板お
よびその製造方法が種々提案されている。例えば、 (1)Si:0.1〜1.2%とし、鋼中に存在する1
0μm以上の介在物の個数を規定する技術(特開昭61
−266059号公報) (2)Si:0.1〜4.5%を含み、中間焼鈍を挟む
2回冷延法における2次冷間圧延の圧延速度を規定する
技術(特公平4−34614号公報) (3)Si<3.5%、Al:0.1〜1.0%、再結
晶焼鈍時の加熱速度と焼鈍雰囲気を規定、あるいは加熱
の2段化を規定する技術(特開平3−202424号公
報、特開平3−202425号公報) (4)AlN、MnSの析出粗大化のために直送圧延と
熱延板焼鈍条件を最適化する技術(特公平4−3385
2号公報)などがある。
【0011】しかしながら、電気機器の効率向上、小型
化等の要求に応える低磁場での磁気特性に優れた無方向
性電磁鋼板を得ようとする場合には、安定性、再現性の
面で不十分である。
【0012】一方、無方向性電磁鋼板において鉄損と同
時に磁束密度の改善を図る観点から、例えば、特開昭5
8−151453号、特開昭59−157259号、特
開昭61−67753号、特開昭62−180014号
の各公報に記載されているように、Sn、Cu等の微量
添加と製造条件の組み合わせにより、特性向上を図る方
法が提案されている。
【0013】しかし、これらの方法では、磁気特性に好
ましくない{111}集合組織は抑制されるものの、
{100}方位の発達はそれほどではなく、{110}
方位のほうが発達しやすいという問題点がある。このた
め、L方向とC方向との磁気特性の差、すなわち異方性
が著しく大きくなるという欠点がある。
【0014】回転機器鉄心向けの無方向性電磁鋼板とし
ては、磁気異方性が少なく、板面のあらゆる方向の平均
値の磁気特性が高磁束密度、低鉄損であることが求めら
れている。
【0015】したがって、回転機器を対象とした場合に
は、鉄損、磁束密度の評価方法としては、その励磁状態
に近いリング試料での磁気特性の評価が適切であり、こ
の試験法で良好な特性が得られることが重要である。
【0016】しかし、上述の製造方法による鋼板の磁気
特性は、圧延方向と圧延直角方向からエプスタイン試料
を採取して測定するJIS−C2550法では良好な特
性が得られても、異方性が大きいためリング試料により
測定した場合には必ずしも良好な特性が得られないこと
が多かった。
【0017】このようなことから、近年、リング試料で
測定しても良好な磁気特性が得られる無方向性電磁鋼板
が開発されており、このような鋼板を製造する技術とし
て、例えば、 (a)Si+Al<1.5%とし、熱延終了温度600
〜700℃と冷間圧延率75〜85%を組み合わせる技
術(特開昭59−10104429号公報、特開昭60
−125325号公報) (b)Si<4.0%、Al<1.0%とし、巻取温度
700〜950℃にして流度番号4以下とし、圧下率8
5%以上の強冷延とする技術(特開昭59−12371
5号公報) (c)Si<4.0%、Mn<0.2%、S<0.00
6%、Al<0.002%とし、巻取温度600℃以下
として、次いで700〜1000℃の温度で焼鈍し、圧
下率85%以上の強冷延とする技術(特公平6−104
865号公報)がある。
【0018】しかしながら、これらの技術にも以下のよ
うな問題点がある。(a)の技術は、低温熱延を行うこ
とが必須であり、現状の熱間圧延機ではmミルパワーの
観点から実現するのが難しい。また、高Si材ではリジ
ングの観点から適用することができないという欠点があ
る。
【0019】(b)の技術は、成分系の問題から熱延板
粒径を安定的に粗大化することが難しく、磁束密度、異
方性とも不十分である。また85%以上の強冷延を必要
とするために熱延板厚は4〜5mmとなり、高Si材で
は冷間圧延機ミルパワーの観点から実現するのが難し
い。
【0020】(c)の技術により製造された鋼板は、異
方性が小さく、リング特性も良好であるが、85%以上
の強冷延を必要とするため、高Si材では冷間圧延機の
ミルパワーの観点から実現するのが難しい。
【0021】本発明はかかる事情に鑑みてなされたもの
であって、低鉄損化のためにSi、Alを多量に添加す
る成分系を前提とし、強冷延を行うことなく、低磁場で
の磁気特性に優れ、かつ異方性が小さい無方向性電磁鋼
板を提供すること、およびそのような電磁鋼板を安定し
て製造することができる方法を提供することを目的とす
る。
【0022】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、低磁場で
の磁気特性に優れ、かつ異方性が小さい無方向性電磁鋼
板を得るために、鋼成分、熱延板組織、冷間圧延率の面
から種々実験、検討を行った結果、以下のことを知見し
た。
【0023】すなわち、低磁場での磁気特性向上および
磁気異方性を低減するためには、単純に粒径を粗大化し
た熱延板を85%以上の圧下率で冷間圧延するよりも、
鋼成分に応じて一定の関係を満足するように特定の熱延
組織に制御した後、67〜85%の圧下率で冷間圧延す
ることが有効であるという知見を得た。
【0024】熱延板の組織制御には、低S化とCr、N
i、Cuの微量添加が有効である。高Si−Al系で
は、熱延板中心厚さ部分に<110>±θ//RDの繊維
集合組織が発達しやすく、この組織の領域が存在すると
熱延板の組織は不均一となる。この組織不均一は、低S
化により大幅に低減することができるが、上述した特公
平6−104865号公報で提案されている低S、低M
nの技術の場合には、熱延板組織の粗粒化は非常に容易
になるものの、異常粒成長による粗大粒が発生しやすく
なり、特定の組織に制御することが困難になる。この公
報では巻取温度600℃以下として歪エネルギーを蓄積
した後、700〜1000℃の温度で焼鈍を実施してい
る。
【0025】本発明はこのような知見に基づいて完成さ
れてものであり、重量%で、C:0.005%以下、S
i:1.7〜3.2%、Al:0.1〜1.0%、M
n:0.1〜0.8%、およびCr:0.02〜0.1
%、Ni:0.01〜0.1%、Cu:0.01〜0.
04%の少なくとも1種を含有し、Sが15ppm以下
であり、熱延板板厚全体の再結晶率が80%以上で、か
つ熱延板平均粒径DH(μm)が以下の(1)式を満足
することを特徴とする、低磁場での磁気特性に優れ、磁
気異方性が小さい無方向性電磁鋼板を提供するものであ
る。
【0026】また、本発明は、重量%で、C:0.00
5%以下、Si:1.7〜3.2%、Al:0.1〜
1.0%、Mn:0.1〜0.8%、およびCr:0.
02〜0.1%、Ni:0.01〜0.1%、Cu:
0.01〜0.04%の少なくとも1種を含有し、Sが
15ppm以下である珪素鋼素材を熱間圧延し、650
〜800℃の温度で巻取を行ない、板厚全体の再結晶率
が80%以上で、かつ熱延板平均粒径DH(μm)を以
下の(1)式を満足するように調整し、次いで67〜8
5%の圧下率で冷間圧延を行ない、その後、焼鈍を施す
ことを特徴とする、低磁場での磁気特性に優れ、磁気異
方性が小さい無方向性電磁鋼板の製造方法を提供するも
のである。
【0027】さらに、本発明は、重量%で、C:0.0
05%以下、Si:1.7〜3.2%、Al:0.1〜
1.0%、Mn:0.1〜0.8%、およびCr:0.
02〜0.1%、Ni:0.01〜0.1%、Cu:
0.01〜0.04%の少なくとも1種を含有し、Sが
15ppm以下である珪素鋼素材を熱間圧延し、600
℃以下の温度で巻取を行ない、脱スケール後に700〜
850℃の温度で焼鈍を行ない、板厚全体の再結晶率が
80%以上で、かつ熱延板平均粒径DH(μm)を以下
の式を満足するように調整し、次いで67〜85%の圧
下率で冷間圧延を行ない、その後焼鈍を施すことを特徴
とする、低磁場での磁気特性に優れ、磁気異方性が小さ
い無方向性電磁鋼板の製造方法を提供するものである。 53.1+36.8×[Si+Al]≦DH≦125.0 +64.8×[Si+Al]…(1)
【0028】
【発明の実施の形態】以下、本発明を実験結果をもとに
詳述する。まず、表1に示す組成の鋼を溶製し、熱間圧
延により仕上げ温度830℃で板厚5.0、4.2、
2.8、2.3、2.0、1.7mmの熱延板を作成し
た。巻取温度を変化させて熱延組織を制御し、平均粒径
DHを150μm、240μmとした。酸洗後、0.5
mmまで冷間圧延し、その後870℃で2分間の連続焼
鈍を施し、この鋼板についてリング試料により板面全方
向を平均した磁気特性を調査した。
【0029】
【表1】
【0030】図1、図2はリング試料による低磁場の磁
束密度B1と高磁場の磁束密度B50を冷間圧延率で整理
したものである。この図に示すように、熱延板平均粒径
(DH)により冷間圧延率の依存性は異なる。特にDH
=240μmの場合、冷延率85%以下で優れた磁束密
度を示し、この傾向は低磁場でより顕著に現れる。ま
た、Cr、Ni、Cuの微量添加により低磁場特性はさ
らに向上する。さらにDH=150μmの場合には、8
5%以上の強冷延により磁束密度は向上するがその値は
DH=240μmの場合と比較して低い。
【0031】そこで、圧延方向より22.5°毎に単板
試料をそれぞれ切り出し、磁気特性を調査した。その結
果を図3に示す。この図に示すように、DH=240μ
mにすると磁気異方性は小さくなる。一方、DH=15
0μmでは強冷延により磁気異方性は小さくなる。ま
た、Cr、Ni、Cuの微量添加により磁気異方性はさ
らに小さくなることが判明した。
【0032】Cr、Ni、Cuの微量添加による低磁場
での磁気異方性への効果を詳細に検討するために、2.
8%Si−0.3%Al−0.19%Mn−0.000
5%Sのベース鋼にCr、Ni、Cuをそれぞれ添加し
たインゴットを作成した。加熱温度1200℃、仕上げ
温度860℃、巻取温度720℃の条件で、それぞれ
2.3mm厚と4.2mm厚の2種類ずつの熱間圧延
後、冷間圧延にて0.5mm厚とし、810℃にて仕上
げ焼鈍を施した後、上述のように圧延方向から22.5
°毎に単板試料を切り出し、磁気特性を調査した その結果を図4ないし図6に示す。磁気異方性の評価パ
ラメータとして、以下のように定義されるΔB1を用い
た。
【0033】 ΔB1=(L方向のB1)−(C方向のB1) 図から、ΔB1はDHに大きく依存し、DH=240μ
mの場合、添加量がCrでは0.02%、Ni、Cuで
は0.01%を超えるとΔB1が小さくなる効果が現れ
始めるが、DH=150μmでは強冷延率にしても顕著
な効果は認められないことがわかる。これは、最適な熱
延板状態における粒界への金属元素の濃化により、冷延
後の焼鈍時の一次再結晶過程において、{110}<0
01>方位への成長が抑制され、{100}面が発達し
たためと考えられる。なお、各元素の磁気異方性の改善
効果は、Cu>Ni≧Crである。
【0034】次に、種々のDHと冷間圧延率における低
磁場特性について調査した。その結果を図7に示す。図
中○はB1が1.15T以上のもの、△は1.13T以
上で1.15Tより小さいもの、×は1.13Tより小
さいものである。この図に示すように、冷間圧延率85
%以下で低磁場特性を向上させるためには、DH=17
0μm以上必要であることが判明した。なお、DH=3
40μmになると特性は劣化しはじめる。これは、結晶
粒界の少ない粗大粒熱延板では冷間圧延後の一次再結晶
の核発生時に粒内変形帯から{110}<001>方位
が発生するため磁気異方性が大きくなることに起因す
る。このようにDHには磁気異方性の観点から上限値が
存在する。
【0035】そこで、Si:1.7〜3.2%、Al:
0.1〜1.0%の範囲の鋼板について、低磁場特性に
優れ、磁気異方性が小さい無方向性電磁鋼板となるため
に最適なDHについて調査した。図8は、冷延率78%
の条件でのリング試料による磁気測定結果を、(Si+
Al)量とDHとで整理したグラフである。B1の値
は、(Si+Al)量で異なるため、(Si+Al)量
に応じてB1の優劣を定めた。その際の基準を図8に併
記する。この図から、最適DHは(Si+Al)量によ
り変動し、以下の(1)式で表されることが判明した。
【0036】 53.1+36.8×[Si+Al]≦DH≦125.0 +64.8×[Si+Al]…(1) 次に、DHを制御するために重要である巻取温度につい
て述べる。本発明では低S化と巻取温度の適正化によ
り、鋼成分に応じて一定の関係を満足するように、特定
の熱延板粒径(DH)に制御する。このときの熱延組織
の再結晶率は80%以上とする。図9は、表1の鋼A、
Cについて種々の巻取温度で作成した熱延板のDHおよ
び再結晶率fを調査した結果を示すグラフである。この
図から、S量の少ない鋼Aでは650℃で所望の組織が
得られているが、S量が多い鋼Cでは巻取温度920℃
でも所望の組織は得られていないことが確認される。
【0037】熱延板の組織制御方法としては、600℃
以下で巻取を行ない、脱スケール後に700〜850℃
の焼鈍を行なうことも可能である。ただし、この方法よ
りも上述の巻取温度の適正化によるほうがより効果的で
ある。
【0038】次に、本発明に規定する要件について、成
分、製造プロセスに分けて説明する。 (1)成分 各成分の限定理由は以下の通りである。
【0039】C:0.005%以下 Cは磁気時効による鉄損特性の劣化を招くため、そのよ
うな問題が生じない0.005%以下とした。
【0040】Si:1.7〜3.2% Siは、鋼板の固有抵抗増加による鉄損改善のために必
要な元素であり、本発明では変態のない系を対象として
いるため1.7%以上必要であるが、3.2%を超える
と磁束密度が低下する。したがって、Si含有量を1.
7〜3.2%の範囲とする。
【0041】Al:0.1〜1.0% Alは、Siと同様に固有抵抗増加による鉄損改善のた
めに必要な元素であり、AlNの微細析出を抑制する量
とする必要がある。0.1%未満ではAlNが粗大化さ
れないため、充分な粒成長性が得られず、良好な磁気特
性が得られない。一方、1.0%を超えると磁束密度が
低下する。
【0042】Mn:0.1〜0.8% Mnは、熱間圧延時の赤熱脆性を防止するために、0.
1%以上必要であるが、0.8%以上になると磁気特性
を劣化させる。従って、Mn量を0.1〜0.8%の範
囲で添加することが好ましい。
【0043】S:15ppm以下 焼鈍時の粒成長を阻害するMnS等の硫化物を生成させ
る元素であり、極力少ないほど好ましい。本発明では巻
取温度650〜800℃、あるいは600℃以下での巻
取後の700〜850℃の焼鈍により特定の熱延組織に
制御するために、15ppm以下(0%を含む)、好ま
しくは10ppm以下とする。
【0044】Cr:0.02〜0.1%、Ni:0.0
1〜0.1%、Cu:0.01〜0.04%の少なくと
も1種を合計で0.04〜0.1% これらの元素は、磁気異方性を低減する効果がある。そ
れぞれ下限値以下では効果が発揮されず、一方、多量の
添加は高価になるため経済的でないばかりか、磁束密度
の低下を招くため、そのような観点からそれぞれ上限を
規定する。これらは、それぞれ同様の効果を示すためこ
れらの少なくとも1種を含有することとする。また、こ
のような効果を有効に発揮させる観点からは、これらが
合計で0.04〜0.1%であることが好ましく、これ
らの2または3種の複合添加が好ましい。なお、各元素
の低磁場での磁気異方性の改善効果は、Cu>Ni≧C
rであるが、Cuは表面欠陥の発生や打ち抜き後の溶接
における熱影響部の脆化の原因となるため、その上限を
0.04%と低い値に規定している。
【0045】その他の鋼中不純物であるO、Nは、本発
明の目的である低磁場特性や磁気異方性には直接的には
影響しないため、特に規定してはいないが、以下の範囲
が好ましい。
【0046】Oは、SiO2 、Al23 、MnO等の
酸化物を形成し、鋼中に過剰に含まれると鉄損確保のた
めの粒成長性が劣化するので30ppm以下が好まし
い。Nは、AlNなどの窒化物を形成し、鉄損確保のた
めの粒成長性が劣化するので、30ppm以下が好まし
い。
【0047】(2)製造プロセス 上記成分組成を有する珪素鋼素材は、常法にしたがって
転炉で溶製後、脱ガス処理され、連続鋳造または造塊−
分塊圧延を経てスラブとなる。次いで、熱間加工→巻取
→酸洗→冷間圧延→焼鈍の工程により無方向性電磁鋼板
が製造される。以下、熱間圧延条件、冷間圧延条件、焼
鈍条件に分けて説明する。
【0048】(a)熱延条件 上記組成の鋼板を熱間圧延し、巻取を650〜800℃
で実施し、板厚全体の再結晶率80%以上、かつ前記
(1)式を満足するように熱延板平均粒径DH(μm)
を調整する。熱間圧延の仕上温度は800℃以上が好ま
しい。
【0049】巻取、脱スケールの後に焼鈍(熱延板焼
鈍)を行なわない場合、巻取温度が650℃以下では、
再結晶率が80%以下となり、DHの制御ができなくな
る。また800℃以上ではDHが大きくなるため磁気異
方性が増大し、低磁場の磁気特性が劣化する。そのた
め、熱延板焼鈍を省略する場合、巻取温度を650〜8
00℃とする。
【0050】本発明では、このような工程に代えて、6
00℃以下で巻取を行ない、脱スケールの後に700〜
850℃の温度で熱延板焼鈍施してもよい。この場合に
は、工程が増加して製造コストは上昇するが、低磁場特
性と磁気異方性はさらに改善される。
【0051】(b)冷延条件 本発明では、特定の熱延組織に制御した鋼板を冷間圧延
するが、その際の圧下率を67〜85%とする。圧下率
が85%を超えると磁気異方性が増大するとともに、磁
気特性が劣化する。一方、圧下率の下限値は操業上の制
約から決定される。すなわち、現行の熱延ミルで安定し
て製造できる熱延板板厚は1.5mmであり、製品板厚
が0.5mmの場合には圧下率が67%になるため、こ
の圧下率を下限とする。なお、製品板厚が0.35m
m、0.2mmの場合、熱延板板厚が2.0〜2.5m
mでは冷延率が85%を超えるため、中間焼鈍を挟む2
回冷延法が好ましい。
【0052】(c)焼鈍条件 最終焼鈍は750〜900℃の温度範囲で実施する。通
常、本発明のような高Si−Al鋼では鉄損確保のため
に900〜1050℃の高温で実施している。しかし、
本発明の無方向性電磁鋼板は粒成長性にも優れているの
で、低い温度で最適な粒径とすることができる。
【0053】
【実施例】
(実施例1)表2に示す組成の鋼を溶製し、連続鋳造に
よりスラブとし、続いて仕上げ温度800℃以上の熱間
圧延を施し、種々の温度で巻き取った後、酸洗し、0.
5mm厚とし、次いで仕上げ焼鈍を行なった。その際の
製造条件を表3に示す。このようにして作成した電磁鋼
板より、外径70mm、内径50mmのリング試料を打
ち抜き、磁気特性を測定した。また、上述した方法で磁
気異方性ΔBを求めた。これらの結果を表3に併記す
る。
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】表3に示すように、本発明を満足する組
成、再結晶率およびDHを満足するものは異方性が小さ
く、リング試料によるB1、B3、W10/50 などの低磁
場特性が向上することが確認された。これに対して本発
明の組成、再結晶率、DHを満足しないものは、低磁場
特性が劣っていた。
【0057】(実施例2)表2に示す組成の鋼を溶製
し、連続鋳造によりスラブとし、続いて仕上げ温度80
0℃以上の熱間圧延を施し、種々の温度で巻き取った
後、酸洗し、その後熱延板焼鈍を施し、0.5mm厚と
し、次いで仕上げ焼鈍を行なった。その際の製造条件を
表4に示す。このようにして作成した電磁鋼板より、外
径70mm、内径50mmのリング試料を打ち抜き、磁
気特性を測定した。また、上述した方法で磁気異方性Δ
Bを求めた。これらの結果を表4に併記する。
【0058】
【表4】
【0059】表4に示すように、本発明を満足する組
成、再結晶率およびDHを満足するものは異方性が小さ
く、リング試料によるB1、B3、W10/50 などの低磁
場特性が向上することが確認された。これに対して本発
明の組成、再結晶率、DHを満足しないものは、低磁場
特性が劣っていた。
【0060】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
低鉄損化のためにSi、Alを多量に添加する成分系を
前提とし、強冷延を行うことなく、低磁場での磁気特性
に優れ、異方性が小さい無方向性電磁鋼板が得られる。
また、そのような電磁鋼板を安定して製造することがで
きる方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】リング試料による、冷間圧延率と低磁場の磁束
密度B1との関係を示す図。
【図2】リング試料による、冷間圧延率と高磁場の磁束
密度B50との関係を示す図。
【図3】単板試料における圧延方向からの角度と低磁場
の磁束密度B1との関係を示す図。
【図4】Cr含有量と磁気異方性ΔB1との関係を示す
図。
【図5】Ni含有量と磁気異方性ΔB1との関係を示す
図。
【図6】Cu含有量と磁気異方性ΔB1との関係を示す
図。
【図7】種々のDHと冷間圧延率における低磁場特性を
示す図。
【図8】冷延率78%の条件でのリング試料による磁気
測定結果を、(Si+Al)量とDHとで整理した図。
【図9】種々の巻取温度で作成した熱延板のDHおよび
再結晶率fを調査した結果を示す図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 飯塚 俊治 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 杉山 晋一 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、C:0.005%以下、S
    i:1.7〜3.2%、Al:0.1〜1.0%、M
    n:0.1〜0.8%、およびCr:0.02〜0.1
    %、Ni:0.01〜0.1%、Cu:0.01〜0.
    04%の少なくとも1種を含有し、Sが15ppm以下
    であり、熱延板板厚全体の再結晶率が80%以上で、か
    つ熱延板平均粒径DH(μm)が以下の式を満足するこ
    とを特徴とする、低磁場での磁気特性に優れ、磁気異方
    性が小さい無方向性電磁鋼板。 53.1+36.8×[Si+Al]≦DH≦125.0 +64.8×
    [Si+Al]
  2. 【請求項2】 重量%で、C:0.005%以下、S
    i:1.7〜3.2%、Al:0.1〜1.0%、M
    n:0.1〜0.8%、およびCr:0.02〜0.1
    %、Ni:0.01〜0.1%、Cu:0.01〜0.
    04%の少なくとも1種を含有し、Sが15ppm以下
    である珪素鋼素材を熱間圧延し、650〜800℃の温
    度で巻取を行ない、板厚全体の再結晶率が80%以上
    で、かつ熱延板平均粒径DH(μm)を以下の式を満足
    するように調整し、次いで67〜85%の圧下率で冷間
    圧延を行ない、その後、焼鈍を施すことを特徴とする、
    低磁場での磁気特性に優れ、磁気異方性が小さい無方向
    性電磁鋼板の製造方法。 53.1+36.8×[Si+Al]≦DH≦125.0 +64.8×
    [Si+Al]
  3. 【請求項3】 重量%で、C:0.005%以下、S
    i:1.7〜3.2%、Al:0.1〜1.0%、M
    n:0.1〜0.8%、およびCr:0.02〜0.1
    %、Ni:0.01〜0.1%、Cu:0.01〜0.
    04%の少なくとも1種を含有し、Sが15ppm以下
    である珪素鋼素材を熱間圧延し、600℃以下の温度で
    巻取を行ない、脱スケール後に700〜850℃の温度
    で焼鈍を行ない、板厚全体の再結晶率が80%以上で、
    かつ熱延板平均粒径DH(μm)を以下の式を満足する
    ように調整し、次いで67〜85%の圧下率で冷間圧延
    を行ない、その後焼鈍を施すことを特徴とする、低磁場
    での磁気特性に優れ、磁気異方性が小さい無方向性電磁
    鋼板の製造方法。 53.1+36.8×[Si+Al]≦DH≦125.0 +64.8×
    [Si+Al]
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2001038595A1 (fr) * 1999-11-26 2001-05-31 Kawasaki Steel Corporation Feuille d'acier electromagnetique non orientee a anisotropie magnetique reduite dans la region des hautes frequences et excellente ouvrabilite a la presse
US11225699B2 (en) 2015-11-20 2022-01-18 Jfe Steel Corporation Method for producing non-oriented electrical steel sheet

Cited By (3)

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Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2001038595A1 (fr) * 1999-11-26 2001-05-31 Kawasaki Steel Corporation Feuille d'acier electromagnetique non orientee a anisotropie magnetique reduite dans la region des hautes frequences et excellente ouvrabilite a la presse
US6428632B1 (en) 1999-11-26 2002-08-06 Kawasaki Steel Corporation Non-oriented electromagnetic steel sheet having reduced magnetic anisotropy in high frequency region and excellent press workability
US11225699B2 (en) 2015-11-20 2022-01-18 Jfe Steel Corporation Method for producing non-oriented electrical steel sheet

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