JPH09150322A - 放電加工用電極線およびその製造方法 - Google Patents
放電加工用電極線およびその製造方法Info
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- JPH09150322A JPH09150322A JP31262295A JP31262295A JPH09150322A JP H09150322 A JPH09150322 A JP H09150322A JP 31262295 A JP31262295 A JP 31262295A JP 31262295 A JP31262295 A JP 31262295A JP H09150322 A JPH09150322 A JP H09150322A
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 放電加工のより一層の高精度化、かつ、高速
度化を可能にする高引張強度、高導電率の両特性を具備
した放電加工用電極線およびその製造方法を提供するも
のである。 【解決手段】 芯材2を、NbまたはNb合金とCuま
たはCu合金とを溶解および鋳造した溶製材からなるN
b/Cu2相分散強化型複合体3で囲繞し、そのNb/
Cu2相分散強化型複合体3をCu−Zn合金層4で囲
繞したものである。
度化を可能にする高引張強度、高導電率の両特性を具備
した放電加工用電極線およびその製造方法を提供するも
のである。 【解決手段】 芯材2を、NbまたはNb合金とCuま
たはCu合金とを溶解および鋳造した溶製材からなるN
b/Cu2相分散強化型複合体3で囲繞し、そのNb/
Cu2相分散強化型複合体3をCu−Zn合金層4で囲
繞したものである。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ワイヤ放電加工に
用いられる放電加工用電極線およびその製造方法に係
り、特に引張強度、導電率に優れた放電加工用電極線お
よびその製造方法に関するものである。
用いられる放電加工用電極線およびその製造方法に係
り、特に引張強度、導電率に優れた放電加工用電極線お
よびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ワイヤ放電加工は、走行するワイヤ電極
線と被加工物間の放電現象により被加工物を所定の寸法
に溶断する加工法である。又機械的な切削、切断加工が
困難な金型等の加工に広く用いられている。最近の金型
加工分野においては、より一層の高精度化、かつ、高速
度化の要求が高く、直径0.1mm以下で、130kg
f/mm2 (約1,300MPa)以上の高引張強度、
20%IACS以上の高導電率特性を有する極細電極線
の出現が待たれている。
線と被加工物間の放電現象により被加工物を所定の寸法
に溶断する加工法である。又機械的な切削、切断加工が
困難な金型等の加工に広く用いられている。最近の金型
加工分野においては、より一層の高精度化、かつ、高速
度化の要求が高く、直径0.1mm以下で、130kg
f/mm2 (約1,300MPa)以上の高引張強度、
20%IACS以上の高導電率特性を有する極細電極線
の出現が待たれている。
【0003】この種の電極線としては、引張強度の高い
W単体電極線が従来から用いられてきた。W電極線は、
引張強度が約400kgf/mm2 (約4,000MP
a)と汎用黄銅電極線の約4倍の強度を有している。こ
のため、W電極線は、高精度化のために線径を0.1m
m以下に極細化しても、加工精度低下の原因となる電極
線の振動が生じるおそれのない十分な張力を負荷するこ
とができる。しかし、W自体がレアメタルの一種である
と共に難加工材であり、かつ、電極線が消耗品であるこ
とを考慮に入れると、Wを電極線として用いた極細W電
極線は、非常に高価のものとなってしまう。さらに、W
電極線を用いた場合、強度が高すぎるために、電極線に
電圧を印加する送り出しリール、および、巻取りリール
の摩耗が激しく、接触抵抗の変化等により不安定な放電
現象が生じやすかった。
W単体電極線が従来から用いられてきた。W電極線は、
引張強度が約400kgf/mm2 (約4,000MP
a)と汎用黄銅電極線の約4倍の強度を有している。こ
のため、W電極線は、高精度化のために線径を0.1m
m以下に極細化しても、加工精度低下の原因となる電極
線の振動が生じるおそれのない十分な張力を負荷するこ
とができる。しかし、W自体がレアメタルの一種である
と共に難加工材であり、かつ、電極線が消耗品であるこ
とを考慮に入れると、Wを電極線として用いた極細W電
極線は、非常に高価のものとなってしまう。さらに、W
電極線を用いた場合、強度が高すぎるために、電極線に
電圧を印加する送り出しリール、および、巻取りリール
の摩耗が激しく、接触抵抗の変化等により不安定な放電
現象が生じやすかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】これらのW電極線の欠
点を改善すべく、汎用電極線である黄銅(Cu−35%
Zn)電極線とW電極線の中間の引張強さを有すると共
に、高張力鋼線周囲にCu−Zn合金層を被覆した複合
電極線が高精度加工用電極線として開発されている(例
えば、特開昭56−126528号公報)。
点を改善すべく、汎用電極線である黄銅(Cu−35%
Zn)電極線とW電極線の中間の引張強さを有すると共
に、高張力鋼線周囲にCu−Zn合金層を被覆した複合
電極線が高精度加工用電極線として開発されている(例
えば、特開昭56−126528号公報)。
【0005】図2に示すように、この複合電極線11
は、テンションメンバーである高抗張力鋼12をコア部
とし、それを囲繞してCu−Zn合金層13を配してい
る。これによって、複合電極線11は引張強度が約13
0〜200kgf/mm2 (約1,300〜2,000
MPa)に達し、高精度加工に十分な張力を負荷するこ
とができると共に、送り出しリール、および、巻取りリ
ールとの摩耗が少なくて済む。すなわち、この複合電極
線11は、適度の引張強度を有すると共に、比較的安価
に供給することができる。
は、テンションメンバーである高抗張力鋼12をコア部
とし、それを囲繞してCu−Zn合金層13を配してい
る。これによって、複合電極線11は引張強度が約13
0〜200kgf/mm2 (約1,300〜2,000
MPa)に達し、高精度加工に十分な張力を負荷するこ
とができると共に、送り出しリール、および、巻取りリ
ールとの摩耗が少なくて済む。すなわち、この複合電極
線11は、適度の引張強度を有すると共に、比較的安価
に供給することができる。
【0006】しかしながら、この複合電極線11は、引
張強度の低いCu−Zn合金層13を外層に配している
ため、複合電極線11として十分な引張強度を確保する
には、複合電極線11のコア部の高抗張力鋼12の割合
を大きくしなければならない。しかし、この場合、高抗
張力鋼12の導電率が10%IACS程度しかないた
め、複合電極線11としての導電率が低下してしまい、
放電加工の高速度化に不可欠な放電加工電流を高くする
ことが困難であるという大きな問題点を有していた。
張強度の低いCu−Zn合金層13を外層に配している
ため、複合電極線11として十分な引張強度を確保する
には、複合電極線11のコア部の高抗張力鋼12の割合
を大きくしなければならない。しかし、この場合、高抗
張力鋼12の導電率が10%IACS程度しかないた
め、複合電極線11としての導電率が低下してしまい、
放電加工の高速度化に不可欠な放電加工電流を高くする
ことが困難であるという大きな問題点を有していた。
【0007】そこで、本発明は、上記課題を解決し、放
電加工のより一層の高精度化、かつ、高速度化を可能に
する高引張強度、高導電率の両特性を具備した放電加工
用電極線およびその製造方法を提供することにある。
電加工のより一層の高精度化、かつ、高速度化を可能に
する高引張強度、高導電率の両特性を具備した放電加工
用電極線およびその製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に請求項1の発明は、芯材を、NbまたはNb合金とC
uまたはCu合金とを溶解鋳造させた溶製材からなるN
b/Cu2相分散強化型複合体で囲繞し、そのNb/C
u2相分散強化型複合体をCu−Zn合金層で囲繞した
放電加工用電極線である。
に請求項1の発明は、芯材を、NbまたはNb合金とC
uまたはCu合金とを溶解鋳造させた溶製材からなるN
b/Cu2相分散強化型複合体で囲繞し、そのNb/C
u2相分散強化型複合体をCu−Zn合金層で囲繞した
放電加工用電極線である。
【0009】請求項2の発明は、上記芯材が、焼鈍状態
で10kgf/mm2 以上の常温引張強さを有する金属
からなる請求項1記載の放電加工用電極線である。
で10kgf/mm2 以上の常温引張強さを有する金属
からなる請求項1記載の放電加工用電極線である。
【0010】請求項3の発明は、芯材を、NbまたはN
b合金とCuまたはCu合金とを溶解鋳造させた溶製材
からなるNb/Cu2相分散強化型複合体で囲繞し、そ
のNb/Cu2相分散強化型複合体をCu−Zn合金層
で囲繞した放電加工用電極線の製造方法である。
b合金とCuまたはCu合金とを溶解鋳造させた溶製材
からなるNb/Cu2相分散強化型複合体で囲繞し、そ
のNb/Cu2相分散強化型複合体をCu−Zn合金層
で囲繞した放電加工用電極線の製造方法である。
【0011】請求項4の発明は、上記芯材の体積率が3
0%以下、上記Nb/Cu2相分散強化型複合体の体積
率が40%以上、上記Cu−Zn合金層の体積率が60
%以下である請求項3記載の放電加工用電極線の製造方
法である。
0%以下、上記Nb/Cu2相分散強化型複合体の体積
率が40%以上、上記Cu−Zn合金層の体積率が60
%以下である請求項3記載の放電加工用電極線の製造方
法である。
【0012】請求項5の発明は、上記溶製材におけるN
bまたはNb合金の重量分率が5〜20%である請求項
3記載の放電加工用電極線の製造方法である。
bまたはNb合金の重量分率が5〜20%である請求項
3記載の放電加工用電極線の製造方法である。
【0013】請求項6の発明は、上記芯材が、焼鈍状態
で10kgf/mm2 以上の常温引張強さを有する金属
からなる請求項3記載の放電加工用電極線の製造方法で
ある。
で10kgf/mm2 以上の常温引張強さを有する金属
からなる請求項3記載の放電加工用電極線の製造方法で
ある。
【0014】上記組成範囲の限定理由を以下に説明す
る。
る。
【0015】Nb/Cu2相分散強化型複合体の体積率
を40%以上と限定した理由は、Nb/Cu2相分散強
化型複合体の体積率が少なくとも40%以上ないと、放
電加工時の高精度化および高速度化に必要な特性が得ら
れないためである。また、芯材の体積率を30%以下に
限定した理由は、溶製材で生じたNb濃度の不均一を補
正することと、押出や伸線時の加工性を確保するためで
ある。
を40%以上と限定した理由は、Nb/Cu2相分散強
化型複合体の体積率が少なくとも40%以上ないと、放
電加工時の高精度化および高速度化に必要な特性が得ら
れないためである。また、芯材の体積率を30%以下に
限定した理由は、溶製材で生じたNb濃度の不均一を補
正することと、押出や伸線時の加工性を確保するためで
ある。
【0016】Nb/Cu2相分散強化型複合体の母材と
なる溶製材におけるNbまたはNb合金の重量分率を5
〜20%の範囲に限定した理由は、NbまたはNb合金
の重量分率が5%未満では十分な分散強化が図れないた
めである。また、NbまたはNb合金の重量分率が20
%を超えると、押出、伸線加工が著しく困難になるため
である。
なる溶製材におけるNbまたはNb合金の重量分率を5
〜20%の範囲に限定した理由は、NbまたはNb合金
の重量分率が5%未満では十分な分散強化が図れないた
めである。また、NbまたはNb合金の重量分率が20
%を超えると、押出、伸線加工が著しく困難になるため
である。
【0017】本発明によれば、芯材を中心として、その
周囲に強度メンバーとしてNbまたはNb合金とCuま
たはCu合金とを溶解鋳造させた溶製材からなるNb/
Cu2相分散強化型複合体を配し、その周囲にCu−Z
n合金を配したため、放電加工性に優れていると共に、
高引張強度、高導電率特性を兼ね備えた放電加工用電極
線を得ることができる。
周囲に強度メンバーとしてNbまたはNb合金とCuま
たはCu合金とを溶解鋳造させた溶製材からなるNb/
Cu2相分散強化型複合体を配し、その周囲にCu−Z
n合金を配したため、放電加工性に優れていると共に、
高引張強度、高導電率特性を兼ね備えた放電加工用電極
線を得ることができる。
【0018】また、複合材の塑性加工では、各構成材間
の変形抵抗の差が大きすぎると、ネッキング現象と称さ
れる塑性不安定現象が発生し、断線などのトラブルが起
こり易くなる。本発明では、Nb/Cu2相分散強化型
複合体の強度、即ち、変形抵抗が高くなるため、塑性不
安定現象の発生を防止するには、変形抵抗の高い材料を
芯材として用いる必要がある。焼鈍状態で、10kgf
/mm2 以上の常温引張強さを有する金属を用いること
により、常温での減面加工によって歪硬化し、その結
果、塑性不安定現象の発生を防止できると共に、良好な
減面加工性を維持できる。
の変形抵抗の差が大きすぎると、ネッキング現象と称さ
れる塑性不安定現象が発生し、断線などのトラブルが起
こり易くなる。本発明では、Nb/Cu2相分散強化型
複合体の強度、即ち、変形抵抗が高くなるため、塑性不
安定現象の発生を防止するには、変形抵抗の高い材料を
芯材として用いる必要がある。焼鈍状態で、10kgf
/mm2 以上の常温引張強さを有する金属を用いること
により、常温での減面加工によって歪硬化し、その結
果、塑性不安定現象の発生を防止できると共に、良好な
減面加工性を維持できる。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を説明
する。
する。
【0020】図1に示すように、本発明の放電加工用電
極線1は、芯材2、Nb/Cu2相分散強化型複合体3
およびCu−Zn合金層4の3つの層から構成されてい
る。
極線1は、芯材2、Nb/Cu2相分散強化型複合体3
およびCu−Zn合金層4の3つの層から構成されてい
る。
【0021】芯材2は、溶製材におけるNb濃度分布の
不均一を補正すべく配されており、放電加工用電極線1
の中心にNbまたはNb合金からなる所定の長さ・直径
を有した円柱状に形成される。Nb/Cu2相分散強化
型複合体3は、高引張強度および高導電率特性を良好に
すべく配されており、NbまたはNb合金とCuまたは
Cu合金とを溶解鋳造させた溶製材からなり、芯材2を
囲繞して設けられる。Cu−Zn合金層4は、放電加工
性を良好にすべく配されており、Nb/Cu2相分散強
化型複合体3を囲繞して設けられる。Cu−Zn合金層
4として放電加工特性の良好なZnが10〜50wt%
添加されたCu−Zn合金以外では、冷間で断面減少率
50%以上の減面加工が可能な金属材料の周囲に、Zn
またはZn基合金を被覆した複合体で置き換えてもよ
い。
不均一を補正すべく配されており、放電加工用電極線1
の中心にNbまたはNb合金からなる所定の長さ・直径
を有した円柱状に形成される。Nb/Cu2相分散強化
型複合体3は、高引張強度および高導電率特性を良好に
すべく配されており、NbまたはNb合金とCuまたは
Cu合金とを溶解鋳造させた溶製材からなり、芯材2を
囲繞して設けられる。Cu−Zn合金層4は、放電加工
性を良好にすべく配されており、Nb/Cu2相分散強
化型複合体3を囲繞して設けられる。Cu−Zn合金層
4として放電加工特性の良好なZnが10〜50wt%
添加されたCu−Zn合金以外では、冷間で断面減少率
50%以上の減面加工が可能な金属材料の周囲に、Zn
またはZn基合金を被覆した複合体で置き換えてもよ
い。
【0022】次に本発明の方法を説明する。
【0023】所定の直径を有するCu−Zn合金管の内
部に、NbまたはNb合金とCuまたはCu合金とを溶
解鋳造して円柱状に成形した溶製材を挿入する。さら
に、溶製材の中心には芯材2が入るように穴を開け、そ
の中に芯材2を挿入する。このようにして構成される溶
製材を、押出や伸線などの減面加工を施すことにより、
強度メンバーとしてCu中にNbが分散したNb/Cu
2相分散強化型複合体3を有する放電加工用電極線1を
得ることができる。尚、Cu−Zn合金管の中央の芯材
2の配置方法については、NbとCuの溶製材を挿入
後、その溶製材に穴開けをして芯材2を挿入する方法
と、NbとCuの溶製材を挿入する前に、あらかじめ芯
材2を配置しておく方法とが考えられるが、どちらの方
法であってもよい。
部に、NbまたはNb合金とCuまたはCu合金とを溶
解鋳造して円柱状に成形した溶製材を挿入する。さら
に、溶製材の中心には芯材2が入るように穴を開け、そ
の中に芯材2を挿入する。このようにして構成される溶
製材を、押出や伸線などの減面加工を施すことにより、
強度メンバーとしてCu中にNbが分散したNb/Cu
2相分散強化型複合体3を有する放電加工用電極線1を
得ることができる。尚、Cu−Zn合金管の中央の芯材
2の配置方法については、NbとCuの溶製材を挿入
後、その溶製材に穴開けをして芯材2を挿入する方法
と、NbとCuの溶製材を挿入する前に、あらかじめ芯
材2を配置しておく方法とが考えられるが、どちらの方
法であってもよい。
【0024】次に、NbまたはNb合金とCuまたはC
u合金とを溶解鋳造させた溶製材が、高引張強度特性を
有するNb/Cu2相分散強化型複合体に変化する機構
について説明する。
u合金とを溶解鋳造させた溶製材が、高引張強度特性を
有するNb/Cu2相分散強化型複合体に変化する機構
について説明する。
【0025】NbはCu中にほとんど固溶しないため、
溶製材におけるNbはCuマトリックス中に粒状に分散
する。NbとCuの溶製材は、Cu−Zn合金管に挿入
された後、粉末押出や伸線などの減面加工によって、粒
状Nbは繊維状になる。その結果、最大200kgf/
mm2 (約2,000MPa)に達する引張強度が得ら
れるようになり、放電加工用電極線1の強度メンバーに
要求される特性を満足するNb/Cu2相分散強化型複
合体3となる。また、分散組織となった後も、CuをN
b/Cu2相分散強化型複合体3の構成材の一つとして
いることにより、Nb/Cu2相分散強化型複合体3は
高い導電率特性を有する。
溶製材におけるNbはCuマトリックス中に粒状に分散
する。NbとCuの溶製材は、Cu−Zn合金管に挿入
された後、粉末押出や伸線などの減面加工によって、粒
状Nbは繊維状になる。その結果、最大200kgf/
mm2 (約2,000MPa)に達する引張強度が得ら
れるようになり、放電加工用電極線1の強度メンバーに
要求される特性を満足するNb/Cu2相分散強化型複
合体3となる。また、分散組織となった後も、CuをN
b/Cu2相分散強化型複合体3の構成材の一つとして
いることにより、Nb/Cu2相分散強化型複合体3は
高い導電率特性を有する。
【0026】尚、本発明においては、Nb/Cu2相分
散強化型複合体3として、NbまたはNb合金とCuま
たはCu合金を溶解鋳造させた溶製材を母材として形成
したものを用いたが、 (a) NbシートとCuシートとを単純に重ねた積層
複合体から形成されるNb/Cu2相分散強化型複合体 (b) Nbマトリックス中にCuを芯材として多数本
埋設した連続繊維型複合体から形成されるNb/Cu2
相分散強化型複合体 (c) Cuマトリックス中にNbを芯材として多数本
埋設した連続繊維型複合体から形成されるNb/Cu2
相分散強化型複合体 などを用いてもよいことは勿論である。
散強化型複合体3として、NbまたはNb合金とCuま
たはCu合金を溶解鋳造させた溶製材を母材として形成
したものを用いたが、 (a) NbシートとCuシートとを単純に重ねた積層
複合体から形成されるNb/Cu2相分散強化型複合体 (b) Nbマトリックス中にCuを芯材として多数本
埋設した連続繊維型複合体から形成されるNb/Cu2
相分散強化型複合体 (c) Cuマトリックス中にNbを芯材として多数本
埋設した連続繊維型複合体から形成されるNb/Cu2
相分散強化型複合体 などを用いてもよいことは勿論である。
【0027】次に本発明の実施例を説明する。
【0028】(実施例1)芯材として工業用純Nbを、
Nb/Cu2相分散強化型複合体の母材として工業用純
Nbと工業用純Cuと溶解鋳造して得られた溶製材を、
Cu−Zn層としてCu−35%Zn合金(JIS C
2700)を用いて放電加工用電極線を作製した。放電
加工用電極線は、Cu−Znの体積率を5(vol
%)、Nb/Cuの体積率を90(vol%)、かつ、
Nb/Cu中のNbの体積率を20(vol%)、Nb
(芯材)の体積率を5(vol%)、線径を0.1(m
m)とした。
Nb/Cu2相分散強化型複合体の母材として工業用純
Nbと工業用純Cuと溶解鋳造して得られた溶製材を、
Cu−Zn層としてCu−35%Zn合金(JIS C
2700)を用いて放電加工用電極線を作製した。放電
加工用電極線は、Cu−Znの体積率を5(vol
%)、Nb/Cuの体積率を90(vol%)、かつ、
Nb/Cu中のNbの体積率を20(vol%)、Nb
(芯材)の体積率を5(vol%)、線径を0.1(m
m)とした。
【0029】(実施例2)実施例1と同様に、放電加工
用電極線を作製した。放電加工用電極線は、Cu−Zn
の体積率を5(vol%)、Nb/Cuの体積率を90
(vol%)、かつ、Nb/Cu中のNbの体積率を2
0(vol%)、Nb(芯材)の体積率を5(vol
%)、線径を0.07(mm)とした。
用電極線を作製した。放電加工用電極線は、Cu−Zn
の体積率を5(vol%)、Nb/Cuの体積率を90
(vol%)、かつ、Nb/Cu中のNbの体積率を2
0(vol%)、Nb(芯材)の体積率を5(vol
%)、線径を0.07(mm)とした。
【0030】(実施例3)実施例1と同様に、放電加工
用電極線を作製した。放電加工用電極線は、Cu−Zn
の体積率を5(vol%)、Nb/Cuの体積率を90
(vol%)、かつ、Nb/Cu中のNbの体積率を2
0(vol%)、Nb(芯材)の体積率を5(vol
%)、線径を0.05(mm)とした。
用電極線を作製した。放電加工用電極線は、Cu−Zn
の体積率を5(vol%)、Nb/Cuの体積率を90
(vol%)、かつ、Nb/Cu中のNbの体積率を2
0(vol%)、Nb(芯材)の体積率を5(vol
%)、線径を0.05(mm)とした。
【0031】(実施例4)実施例1と同様に、放電加工
用電極線を作製した。放電加工用電極線は、Cu−Zn
の体積率を5(vol%)、Nb/Cuの体積率を92
(vol%)、かつ、Nb/Cu中のNbの体積率を5
(vol%)、Nb(芯材)の体積率を3(vol
%)、線径を0.07(mm)とした。
用電極線を作製した。放電加工用電極線は、Cu−Zn
の体積率を5(vol%)、Nb/Cuの体積率を92
(vol%)、かつ、Nb/Cu中のNbの体積率を5
(vol%)、Nb(芯材)の体積率を3(vol
%)、線径を0.07(mm)とした。
【0032】(比較例1)芯材として0.25wt%炭
素鋼(高抗張力鋼)を、Cu−Zn層としてCu−35
%Zn合金(JIS C2700)を用いて放電加工用
電極線を作製した。放電加工用電極線は、Cu−Znの
体積率を30(vol%)、高抗張力鋼の体積率を70
(vol%)、線径を0.07(mm)とした。
素鋼(高抗張力鋼)を、Cu−Zn層としてCu−35
%Zn合金(JIS C2700)を用いて放電加工用
電極線を作製した。放電加工用電極線は、Cu−Znの
体積率を30(vol%)、高抗張力鋼の体積率を70
(vol%)、線径を0.07(mm)とした。
【0033】(比較例2)実施例1と同様に、放電加工
用電極線を作製した。放電加工用電極線は、Cu−Zn
の体積率を5(vol%)、Nb/Cuの体積率を92
(vol%)、かつ、Nb/Cu中のNbの体積率を2
(vol%)、Nb(芯材)の体積率を3(vol
%)、線径を0.07(mm)とした。
用電極線を作製した。放電加工用電極線は、Cu−Zn
の体積率を5(vol%)、Nb/Cuの体積率を92
(vol%)、かつ、Nb/Cu中のNbの体積率を2
(vol%)、Nb(芯材)の体積率を3(vol
%)、線径を0.07(mm)とした。
【0034】各例における放電加工用電極線の諸元およ
び引張強度、導電率特性を表1に示す。
び引張強度、導電率特性を表1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】表1からわかるように、実施例1〜4にお
いては、いずれも引張強度が130kgf/mm2 (約
1,300MPa)以上で、かつ、40%IACS以上
の導電率を有しており、非常に優れた引張強度特性およ
び導電率特性を示している。これに対して、比較例1
は、引張強度は205kgf/mm2 (約2,000M
Pa)を有しており、引張強度特性は優れているもの
の、芯材として導電率の低い炭素鋼(高抗張力鋼)を用
いているため、導電率は12%IACSしかなく、導電
率特性が劣っている。比較例2は、Nb/Cu中のCu
の比率が多いため、非常に優れた導電率特性を示すが、
Nb/Cu中のNbの比率が少ない(5wt%未満)た
め、引張強度特性が劣っている。
いては、いずれも引張強度が130kgf/mm2 (約
1,300MPa)以上で、かつ、40%IACS以上
の導電率を有しており、非常に優れた引張強度特性およ
び導電率特性を示している。これに対して、比較例1
は、引張強度は205kgf/mm2 (約2,000M
Pa)を有しており、引張強度特性は優れているもの
の、芯材として導電率の低い炭素鋼(高抗張力鋼)を用
いているため、導電率は12%IACSしかなく、導電
率特性が劣っている。比較例2は、Nb/Cu中のCu
の比率が多いため、非常に優れた導電率特性を示すが、
Nb/Cu中のNbの比率が少ない(5wt%未満)た
め、引張強度特性が劣っている。
【0037】本実施例から、複合則によりNb/Cu2
相分散強化型複合体分のみの引張強度を逆算すると、実
施例3において最大約200kgf/mm2 (約2,0
00MPa)となる。したがって、引張強度が最大でも
約100kgf/mm2 (約1,000MPa)しかな
いCu−Zn合金とNb/Cu2相分散強化型複合体と
を複合する場合は、Nb/Cu2相分散強化型複合体の
体積率を少なくとも40%以上にしないと、放電加工の
より一層の高精度、高速度化に必要な、高引張強度特性
および高導電率特性を得ることができないことがわか
る。
相分散強化型複合体分のみの引張強度を逆算すると、実
施例3において最大約200kgf/mm2 (約2,0
00MPa)となる。したがって、引張強度が最大でも
約100kgf/mm2 (約1,000MPa)しかな
いCu−Zn合金とNb/Cu2相分散強化型複合体と
を複合する場合は、Nb/Cu2相分散強化型複合体の
体積率を少なくとも40%以上にしないと、放電加工の
より一層の高精度、高速度化に必要な、高引張強度特性
および高導電率特性を得ることができないことがわか
る。
【0038】
【発明の効果】以上要するに本発明によれば、放電加工
用電極線の強度メンバーとして、NbまたはNb合金と
CuまたはCu合金とを溶解鋳造させた溶製材を母材と
するNb/Cu2相分散強化型複合体を配しているた
め、高引張強度、高導電率を有する放電加工用電極線を
得ることができるという優れた効果を発揮する。
用電極線の強度メンバーとして、NbまたはNb合金と
CuまたはCu合金とを溶解鋳造させた溶製材を母材と
するNb/Cu2相分散強化型複合体を配しているた
め、高引張強度、高導電率を有する放電加工用電極線を
得ることができるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の放電加工用電極線の断面を示す図であ
る。
る。
【図2】従来の放電加工用電極線の断面を示す図であ
る。
る。
1 放電加工用電極線 2 芯材 3 Nb/Cu2相分散強化型複合体 4 Cu−Zn合金層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山中 務 茨城県土浦市木田余町3550番地 日立電線 株式会社システムマテリアル研究所内 (72)発明者 木村 守男 茨城県土浦市木田余町3550番地 日立電線 株式会社システムマテリアル研究所内 (72)発明者 木村 孝光 茨城県日立市川尻町4丁目10番1号 日立 電線株式会社豊浦工場内
Claims (6)
- 【請求項1】 芯材を、NbまたはNb合金とCuまた
はCu合金とを溶解鋳造させた溶製材からなるNb/C
u2相分散強化型複合体で囲繞し、そのNb/Cu2相
分散強化型複合体をCu−Zn合金層で囲繞したことを
特徴とする放電加工用電極線。 - 【請求項2】 上記芯材が、焼鈍状態で10kgf/m
m2 以上の常温引張強さを有する金属からなる請求項1
記載の放電加工用電極線。 - 【請求項3】 芯材を、NbまたはNb合金とCuまた
はCu合金とを溶解鋳造させた溶製材からなるNb/C
u2相分散強化型複合体で囲繞し、そのNb/Cu2相
分散強化型複合体をCu−Zn合金層で囲繞したことを
特徴とする放電加工用電極線の製造方法。 - 【請求項4】 上記芯材の体積率が30%以下、上記N
b/Cu2相分散強化型複合体の体積率が40%以上、
上記Cu−Zn合金層の体積率が60%以下である請求
項3記載の放電加工用電極線の製造方法。 - 【請求項5】 上記溶製材におけるNbまたはNb合金
の重量分率が5〜20%である請求項3記載の放電加工
用電極線の製造方法。 - 【請求項6】 上記芯材が、焼鈍状態で10kgf/m
m2 以上の常温引張強さを有する金属からなる請求項3
記載の放電加工用電極線の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP31262295A JPH09150322A (ja) | 1995-11-30 | 1995-11-30 | 放電加工用電極線およびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP31262295A JPH09150322A (ja) | 1995-11-30 | 1995-11-30 | 放電加工用電極線およびその製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH09150322A true JPH09150322A (ja) | 1997-06-10 |
Family
ID=18031422
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP31262295A Pending JPH09150322A (ja) | 1995-11-30 | 1995-11-30 | 放電加工用電極線およびその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH09150322A (ja) |
-
1995
- 1995-11-30 JP JP31262295A patent/JPH09150322A/ja active Pending
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