JPH091391A

JPH091391A - ガスシールドアーク溶接用ワイヤの製造方法

Info

Publication number: JPH091391A
Application number: JP14470495A
Authority: JP
Inventors: Kozo Noguchi; 幸三野口; Ko Kato; 興加藤
Original assignee: Nippon Steel Welding and Engineering Co Ltd
Current assignee: Nippon Steel Welding and Engineering Co Ltd
Priority date: 1995-06-12
Filing date: 1995-06-12
Publication date: 1997-01-07

Abstract

(57)【要約】【目的】長尺のコンジットケーブルが曲げて使用され
る場合の溶接時においても送給性が極めて良好なガスシ
ールドアーク溶接用ワイヤの製造方法を提供することを
目的とする。【構成】ガスシールドアーク溶接用ワイヤの製造方法
において、固形潤滑剤または固形潤滑剤を含む潤滑剤を
用いて伸線工程の一部あるいは全工程を経た後、液体潤
滑剤に揮発性液体を混合した混合液をワイヤ表面に塗布
することを特徴とする。また、前記液体潤滑剤に混合す
る揮発性液体は容量％で８〜３５％であることも特徴と
する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、ガスシールドアーク溶
接用ワイヤの製造方法に係り、さらに詳しくは、溶接時
にワイヤ送給性が優れたガスシールドアーク溶接用ワイ
ヤの製造方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】ガスシールドアーク溶接用ワイヤとして
は、一般に線径が０．８〜２．０ｍｍの細線で、ソリッ
ドワイヤとフラックス入りワイヤがある。これらのワイ
ヤは、溶接時にワイヤ供給装置の送給ローラにより、内
部に螺旋状に成形した可撓性チューブ（以下コンジット
チューブ）を内包した長さ６〜２０ｍのコンジットケー
ブルの中を挿通させ、溶接トーチのコンタクトチップ
（通電部）から連続的に供給される。このような状態で
試用されるために、ガスシールドアーク溶接用ワイヤ
（以下ワイヤ）には、一般に微量の液体潤滑剤が塗布さ
れており、この潤滑剤がワイヤの送給性を良好にすると
ともに防錆効果をも有している。ワイヤの送給性を良く
するための液体潤滑剤は、一般に動植物油あるいは鉱物
油の単独またはそれらの混合油をワイヤ表面に一定量塗
布している。

【０００３】ワイヤ表面に潤滑油を均一に塗布する方法
として、機械的に塗布、静電気あるいは超音波を活用し
て均一に塗布する技術が開発されている。静電塗布を行
うものでは、放電線に対する直流高電圧発生装置の出力
電圧が巻取初期の低速時には定常値よりも低圧となるよ
う入力電圧を調整することにより、潤滑剤塗布量を一定
にできるようにする（特開昭５７−１８７６７号公
報）、また、イオナイザと対流用フードとを線材を挟ん
で対向配設することにより、線材の周囲に荷電霧化油剤
粒子を均一かつ高密度に浮遊させて塗着効率の向上、膜
厚の均一化を図る（特開昭５９−１４５０６１号公報）
等が知られている。

【０００４】また、長いコンジットケーブルを使用して
狭隘な現場での溶接においては、コンジットケーブルを
Ｓ字あるいはＪ字状に曲げて使用されることが多々あ
る。この場合コンジットケーブル内のコンジットチュー
ブと内部を通過するワイヤとの接触摩擦部が増えて送給
抵抗が増加し、ワイヤ送給性が悪くなる。そのため、ワ
イヤの送給性をより良好にする目的でＭｏＳ₂，ＷＳ₂
等の固体潤滑剤をワイヤ表面に均一に分散付着させるた
めに、キャリア材として各種ろう、フッ素樹脂、炭酸石
灰等の有機あるいは無機物、鉱物等の粉末を混合した物
質が伸線用潤滑剤として使われ、これらをワイヤ表面に
付着する技術が知られている。

【０００５】しかし、上述した各種の潤滑剤塗布方法は
０．８〜２．０ｍｍの細径ワイヤの表面に潤滑剤を均一
かつ微量塗布するには完全とはいえない。このために、
潤滑剤の塗布量が多過ぎる場合には、送給ローラ部でワ
イヤがスリップしたり、あるいは長時間溶接するとワイ
ヤの摩耗粉と合体して送給ローラ部やコンジットチュー
ブの内表面に堆積し、逆にコンジットチューブ内の摩擦
による抗力を増加させて、ワイヤの送給性を劣化させる
原因になっている。特に固体潤滑剤と液体潤滑剤とを混
合した潤滑剤の場合にはワイヤ表面に残留する固体潤滑
剤の量を均一にすべく製造工程でいろいろ工夫している
が、従来の方法では十分とはいえない状況である。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】そこで本発明は、長尺
のコンジットケーブルが曲げて溶接される場合において
も、防錆効果を損なうことなく、ワイヤ送給性が極めて
良好なガスシールドアーク溶接用ワイヤの製造方法を提
供することを目的とする。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記目的
を達成するために、ガスシールドアーク溶接用ワイヤの
製造方法を種々検討した結果、固形潤滑剤または固形潤
滑剤を含む潤滑剤で伸線した後、揮発性液体を含む液体
潤滑剤をワイヤ表面に塗布することにより、均一かつ微
量の潤滑剤を塗布することが可能で、防錆効果を損なう
ことなく長尺のコンジットケーブルが曲げて溶接される
場合においてもワイヤ送給性が極めて良好であることを
見いだしたものである。すなわち、本発明の要旨とする
ところは、ガスシールドアーク溶接用ワイヤの製造方法
において、固形潤滑剤または固形潤滑剤を含む潤滑剤を
用いて伸線工程の一部あるいは全工程を経た後、液体潤
滑剤に揮発性液体を混合した混合液をワイヤ表面に塗布
することを特徴とする。また、前記液体潤滑剤に混合す
る揮発性液体は容量％で８〜３５％であることも特徴と
するガスシールドアーク溶接用ワイヤの製造方法にあ
る。

【０００８】

【作用】固形潤滑剤または固形潤滑剤を含む潤滑剤で伸
線した後、揮発性液体を含む液体潤滑剤をワイヤ表面に
塗布することにより、ワイヤ表面の固体潤滑剤を膨潤さ
せて薄く引伸ばすと共に、揮発性液体が揮発消散した後
のワイヤ表面に固体潤滑剤と液体潤滑剤が均一にかつ微
量残留するので、長尺のコンジットケーブルが曲げて溶
接される場合においても極めて良好なワイヤ送給性が得
られる。

【０００９】液体潤滑剤に混合する揮発性液体は容量％
で８〜３５％である。揮発性液体が８％未満であると、
固体潤滑剤を膨潤させて薄く引き伸ばすことができず、
不均一で多量の固体潤滑剤と液体潤滑剤がワイヤ表面に
残留し、溶接時に送給ローラ部でワイヤがスリップした
り、長時間溶接すると送給ローラ部やコンジットチュー
ブ内に潤滑剤が堆積してワイヤとの摩擦抵抗を増してワ
イヤ送給性を劣化させる。揮発性液体が３５％を超える
と、固体潤滑剤量および液体潤滑剤量が少なくなって、
ワイヤ表面の潤滑剤が掠れて防錆効果が少なくなるとと
もに、溶接時にコンジットチューブの摩擦抵抗でワイヤ
送給性が悪くなる。

【００１０】伸線工程の潤滑剤を全工程液体潤滑剤のみ
で伸線した後、液体潤滑剤に揮発性液体を塗布しても混
合した混合液をワイヤ表面に塗布しても、液体潤滑剤は
均一にかつ微量塗布されるが、長尺のコンジットケーブ
ルが曲げて使用される場合、コンジットチューブ内部と
の接触摩擦による送給抵抗が大きくワイヤ送給性が悪く
なる。なお、本発明でいうガスシールドアーク溶接用ワ
イヤとは、Ｓｉ，Ｍｎ系からさらにＭｏ，Ｔｉ，Ａｌそ
の他を含むソリッドワイヤおよび各種フラックス、合
金、脱酸剤を含むフラックス入りワイヤを対象とする。

【００１１】液体潤滑剤とは、動植物油または鉱物油の
単独または混合したものをいい、固体潤滑剤とは、二硫
化モリブデン、二硫化タングステン、グラファイト、ポ
リ四弗化エチレン、炭酸石灰、各種ろうなどの混合した
ものをいう。揮発性液体とは、ガソリン，ベンジン，メ
タノール，エタノール，アセトン，灯油等の動植物油や
鉱物油に均一に溶けるか懸濁状となり、かつ揮発性の高
いものが好ましい。また、ワイヤ表面に液体潤滑剤と共
に塗布された揮発性液体は常温放置で揮発消散するが、
ワイヤ表面に塗布後ワイヤ温度を５０〜８０℃に加熱す
ることにより、短時間で容易に揮発消散除去できるの
で、ワイヤの生産性を損なうことはない。

【００１２】

【実施例】以下、実施例により本発明をさらに詳細に説
明する。まず、ＪＩＳＺ３１１２に規定するＹＧＷ１
１のソリッドワイヤを伸線・めっき・伸線・スキンパス
伸線の工程を経て１．２ｍｍの製品径にした。なお、め
っき後の伸線工程で合成ろうおよび二硫化モリブデンを
主成分とする固体潤滑剤を用いて１ダイス伸線した後
に、動植物油とアニオン活性剤を主成分とする潤滑剤で
湿式伸線し、ワイヤ表面に固形潤滑剤を付着させた。ス
キンパス伸線後、表１に示す液体潤滑剤に各種揮発性液
体を混合し、この混合液をロール式の潤滑剤塗布装置で
ワイヤ表面に塗布し、６０℃で３分間加熱して揮発性液
体を揮発消散させた。各条件で２００ｋｇ試作して２０
ｋｇのスプール巻きワイヤとした。ワイヤ表面に残留し
た潤滑剤量を各スプールからサンプルを採取（１試作１
０サンプル）して調べた。

【００１３】また、ワイヤ送給性は、図１に示す装置を
用いて調べた。すなわち、送給抵抗を高める目的で、ル
ープ直径Ｄ２００ｍｍのループ２回転とループ直径Ｄ１
００ｍｍのループ２回転を設けた６ｍのコンジットケー
ブル１にスプール２から引き出された供試ワイヤ３をワ
イヤ送給部４によって供給し、トーチ５に送り各１０ｋ
ｇを溶接した。この時の溶接条件は次の通りである。

【００１４】溶接電流：３００Ａ溶接電圧：３６Ｖ溶接速度：３０ｃｍ／分ワイヤ突き出し長さ：２０ｍｍシールドガス：ＣＯ₂ ２０リットル／分溶接方法：ビードオンプレート

【００１５】スプール２から送り出されたワイヤ３に負
荷が加わるとワイヤ送給部４の反力によってワイヤ３が
後退するが、この時に生じる力をロードセル６によって
送給抵抗Ｒとして測定した。また、送給ローラ部７，８
でのワイヤのスリップは、送給ローラの周速（ＴＧ）と
溶接トーチ５の部分のメジャリングローラ９を設置して
ワイヤの通過速度（ＰＧ）を測定して下記式でスリップ
率として算出した。スリップ率＝（ＴＧ−ＰＧ）１００／ＴＧ安定した溶接ができる範囲内である送給抵抗Ｒは６ｋｇ
以下で、スリップ率も４％以下である。それらの結果を
表１に示す。

【００１６】

【表１】

【００１７】表１において、Ｎｏ．１〜３が本発明によ
るガスシールドアーク溶接用ワイヤの製造例、Ｎｏ．４
〜７が比較例である。本発明によるＮｏ．１〜３は、固
体潤滑剤を含む潤滑剤で伸線した後に、液体潤滑剤に適
量の揮発性液体を混合した混合液をワイヤ表面に塗布し
たので、固体潤滑剤が膨潤されて薄く引き伸ばされワイ
ヤ表面の残留潤滑剤が均一かつ微量塗布でき、溶接時に
ループ径１００ｍｍで２ターンのコンジットケーブルを
使用しても送給抵抗Ｒおよびスリップ率が低く、極めて
優れたワイヤ送給性が得られた。

【００１８】比較例中Ｎｏ．４は、揮発性液体を混合し
ない液体潤滑剤をワイヤ表面に塗布したので、残留潤滑
剤量が不均一で多いので、ループ直径２００ｍｍおよび
１００ｍｍともにスリップ率が大きくなってワイヤ送給
性が不良となった。Ｎｏ．５は、伸線工程で固形潤滑剤
を使用せず、液体潤滑剤で伸線した後に、揮発性液体を
混合した液体潤滑剤をワイヤ表面に塗布したので、ルー
プ直径２００ｍｍで送給抵抗Ｒが高くなり、ワイヤ送給
性が不良となった。また、ループ直径１００ｍｍではワ
イヤ送給が困難となった。

【００１９】Ｎｏ．６は、液体潤滑剤への揮発性液体の
混合量が少ないので、ワイヤ表面の残留潤滑剤量が不均
一となり、ループ直径２００ｍｍでは良好であったが、
ループ直径１００ｍｍではスリップ率が大きくなってワ
イヤ送給性が不良となった。Ｎｏ．７は、液体潤滑剤へ
の揮発性液体の混合量が多すぎるので、ワイヤ表面の残
留潤滑剤量が少なくなって、溶接時にコンジットチュー
ブの摩擦抵抗によって、ループ直径２００ｍｍおよび１
００ｍｍともに送給抵抗Ｒが高くなり、ワイヤ送給性が
不良となった。また、別途実施した錆試験において、Ｎ
ｏ．７のみ１週間の大気放置でワイヤ表面に点状の錆が
生じた。

【００２０】

【発明の効果】以上述べたように、本発明のガスシール
ドアーク溶接用ワイヤの製造方法によれば、防錆効果を
損なうことなく、長尺のコンジットケーブルが曲げて溶
接される場合においても、コンジットケーブル内での送
給抵抗が低く、送給ローラ部でスリップの少ない極めて
送給が良好なガスシールドアーク溶接用ワイヤを提供す
ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施例に使用した溶接装置を示す図で
ある。

【符号の説明】

１コンジットケーブル２スプール３ワイヤ４ワイヤ送給部５トーチ６ロードセル７，８送給ローラ部９メジャリングローラ

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】ガスシールドアーク溶接用ワイヤの製造
方法において、固形潤滑剤または固形潤滑剤を含む潤滑
剤を用いて伸線工程の一部あるいは全工程を経た後、液
体潤滑剤に揮発性液体を混合した混合液をワイヤ表面に
塗布することを特徴とするガスシールドアーク溶接用ワ
イヤの製造方法。
【請求項２】液体潤滑剤に混合する揮発性液体は容量
％で８〜３５％であることを特徴とする、請求項１記載
のガスシールドアーク溶接用ワイヤの製造方法。