JPH09137213A - 電気アーク炉におけるスラグ塩基度の調整方法 - Google Patents

電気アーク炉におけるスラグ塩基度の調整方法

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JPH09137213A
JPH09137213A JP7314895A JP31489595A JPH09137213A JP H09137213 A JPH09137213 A JP H09137213A JP 7314895 A JP7314895 A JP 7314895A JP 31489595 A JP31489595 A JP 31489595A JP H09137213 A JPH09137213 A JP H09137213A
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JP
Japan
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slag
slag basicity
basicity
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metal
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JP7314895A
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English (en)
Inventor
Kenichi Katayama
賢一 片山
Takashi Yamauchi
隆 山内
Tsutomu Okuno
勉 奥野
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Nippon Steel Nisshin Co Ltd
Original Assignee
Nisshin Steel Co Ltd
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  • Refinement Of Pig-Iron, Manufacture Of Cast Iron, And Steel Manufacture Other Than In Revolving Furnaces (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 電気炉精錬において、スラグ塩基度を出湯後
のメタル中のS含有量の目標値に応じた適切な脱硫能を
有する値に調整する。 【解決手段】 酸化物原料を使用する電気アーク炉にお
いて、精錬中にスラグの電気伝導度Xを測定し、あらか
じめ求めてあるスラグ塩基度とスラグの電気伝導度の関
係を表す式に前記Xを代入してその時点におけるスラグ
塩基度Bscを推定し、一方、別途あらかじめ求めてある
出湯後のメタル中のS含有量とスラグ塩基度の関係を表
す式を用いてS含有量の目標値に対するスラグ塩基度の
目標値Bsaを決定し、前記Bscと目標値Bsaを比較して
スラグ塩基度が目標値Bsaに近づくように造滓剤を追加
投入する。ここで、スラグ塩基度は次式で定義する。 スラグ塩基度Bs=(スラグ中のトータルCa濃度のC
aO濃度換算値)/(SiO2濃度)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、メタル原料の一部
として酸化物原料を使用する電気アーク炉におけるスラ
グ塩基度の調整方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】各種スクラップや酸化物原料からインゴ
ット,スラブ,ビレット等の中間製品を製造する製鉄所
・製鋼所では、電気炉においてこれらの原料を溶解し、
メタルを還元して粗鋼(溶銑)を製造した後、転炉によ
る粗脱炭・酸化製錬工程、真空脱ガス炉やAOD炉によ
る仕上げ精錬工程、または取鍋2次精錬等の工程、鋳造
工程を経て、所定の形状の中間製品が製造される。ま
た、非鉄金属製錬所においても電気炉精錬による粗金属
の製造が行われている。
【0003】電気炉の操業について、ステンレス鋼原料
を製造する電気アーク炉を例に説明する。まず、配合計
画にしたがって、炉内へ金属スクラップ,合金,溶融金
属等の主原料と、場合によっては製鋼工場で発生するダ
スト・スケール類の酸化物等の副原料を装入し、通電を
開始する。装入原料が溶解し始めたら、造滓剤や前記原
料を追装する。この際、クロム鉱石やニッケル鉱石等の
酸化物原料を、コークス等の還元剤とともに溶湯へ供給
することもある。溶融メタル表層には、スクラップ,合
金,酸化物原料,造滓剤等から持ち込まれたSiやCa
Oによって次第にスラグが形成される。メタルの脱硫能
を考慮するとき、スラグの塩基度を適切に調整すること
が重要であるが、その調整方法は、通常、経験的に求め
た量のCaOやCaF2を溶解前または溶解中に供給す
ることによって行っている。最終的に必要に応じて成分
調整のための合金添加を行い、成分チェックの後、ステ
ンレス鋼原料としての溶銑を電気炉から出湯する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】原料コストの低減や工
場廃材の有効利用の観点から、最近では多種の原料を使
用した電気炉精錬のニーズが高まっている。特に、メタ
ル原料として酸化物原料を使用できれば、原料コストの
面で非常に有利となる。
【0005】多種の原料を用いる電気炉操業において
は、粉粒状原料や造滓剤の炉内での粉化ロス,原料品位
のバラツキ,操業状況の変動等の要因によって、目標と
するスラグ組成を正確に得ることは難しい。特に、酸化
物原料を使用した場合、その原料中に多量に含まれる酸
化物がメタル中のSi等の酸化源となり、その結果Si
2等がスラグ中に持ち込まれ、スラグ組成の大幅な変
動が生じやすい。実際には、入手経路が複雑な酸化物原
料や、工場廃材であるダスト・酸化スケール類の酸化物
を多量に使用する電気炉精錬のニーズが高く、このよう
な場合には、実操業においてスラグ組成を精度良く調整
することは極めて困難である。
【0006】スラグ組成が大きく変動すると、適切な脱
硫能が得られないだけでなく、アークの異常による溶解
効率の低下を引き起こす等、操業上のトラブルに発展す
る場合もある。このような理由から、現実的には意識的
に過剰量の造滓剤を装入して安全サイドの操業を行いが
ちであり、時にはスラグ量が100kg/T-メタル以上
にもなることがある。スラグ量の増加は電力原単位の増
加を招く。本発明は、電気炉精錬において、造滓剤を過
剰に添加することなく、出湯後のメタル中のS含有量の
目標値に応じた適切な脱硫能を有するスラグ組成になる
ように、スラグ塩基度を調整する方法を提供することを
目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的は、メタル原料
の一部として酸化物原料を使用する電気アーク炉におい
て、精錬中にスラグの電気伝導度Xを測定し、あらかじ
め求めてあるスラグ塩基度とスラグの電気伝導度の関係
を表す式に前記Xを代入してその時点におけるスラグ塩
基度Bscを推定し、一方、別途あらかじめ求めてある出
湯後のメタル中のS含有量とスラグ塩基度の関係を表す
式を用いてS含有量の目標値に対するスラグ塩基度の目
標値Bsaを決定し、前記Bscと目標値Bsaを比較してス
ラグ塩基度が目標値Bsaに近づくように追加投入する造
滓剤の配合組成および量を算出し、その算出結果に従っ
て造滓剤を追加投入する、スラグ塩基度の調整方法によ
って達成できる。ここで、スラグ塩基度は次式で定義す
る。 スラグ塩基度Bs=(スラグ中のトータルCa濃度のC
aO濃度換算値)/(SiO2濃度)
【0008】また、Cr含有量:10〜30重量%のス
テンレス鋼原料を製造する場合には、スラグ塩基度の目
標値Bsaを決定するに際し、下記の条件式(1)に従っ
て出湯後のメタル中のS含有量の目標値[S]aに対する
スラグ塩基度Bsの許容範囲を求め、その許容範囲内に
スラグ塩基度の目標値Bsaを決定すればよい。 2.625−0.0175×[S]a(ppm)≦Bs≦2.948
−0.0175×[S]a(ppm)、かつ、Bs≧1.4、ただ
し、これら2式による解が存在しないときはBs=1.4
とする・・・(1) ここで、Bsはスラグ塩基度を表し、次式で定義する。 Bs=(スラグ中のトータルCa濃度のCaO濃度換算
値)/(SiO2濃度)
【0009】図1に、本発明のスラグ塩基度調整手順の
フロー図を示す。
【0010】
【発明の実施の形態】電気アーク炉とは、炭素または黒
鉛電極から直接的に被熱物へアークを発生させたり、ま
たはその電極間にアークを発生させることにより、被熱
物を加熱・溶解するものである。本発明で対象とする電
気アーク炉は、このような電気アーク炉のうち、鉄や
鋼、あるいは非鉄金属の溶解用アーク炉であり、交流
式、直流式、あるいは単極式、多極式を問わない。
【0011】酸化物原料とは、精錬しようとする金属の
成分元素を含有した酸化物のことであり、例えばステン
レス溶銑を溶解する場合には、鉄原料としては酸化鉄を
種とする製鋼ダスト等、クロム原料としてはクロム鉱石
等、ニッケル原料としては酸化ニッケルやニッケル鉱石
等が挙げられる。
【0012】電気炉をはじめ各種精錬炉内のスラグ(溶
融酸化物)は、上述したような原料中の成分として入っ
てくるものの他、ライニング(耐火物)が溶損して生成
したもの、あるいは意図的に精錬フラックスを添加して
生成した脱酸・脱硫生成物などを含んでいるが、最上工
程である電気炉においては原料から入ってくる割合が大
きい。具体的なスラグ成分としては、CaO,Ca
2,SiO2,MgO,Al23等がある。
【0013】電気炉におけるスラグの作用は、第1に、
精錬上の働きであり、メタル組成を次行程の転炉等に適
した組成に調整する役割を担う。第2に、メタルの保
熱,アークからの耐火物の保護などの作用がある。本発
明者らは、電気アーク炉のスラグの作用に関して種々検
討してきた結果、過剰の造滓剤を投入するよりも、むし
ろ少量の造滓剤でスラグ組成を適切に制御する方が精錬
効率に大きく寄与することを見いだした。過剰な造滓剤
を投入しないことは、造滓剤費用や溶解電力費の節減に
寄与する。また、過剰なCaOを投入してもスラグの流
動性の悪化等により脱硫反応の促進にはつながらない。
【0014】図2に、Cr:10〜30重量%の種々の
ステンレス鋼原料を電気アーク炉で精錬した場合の数多
くのチャージについて、スラグ塩基度と出湯後のメタル
中のS含有量および電力原単位の関係示す。この図か
ら、スラグ塩基度が上昇するほど脱硫能は向上するが、
反面、電力原単位が大きくなることがわかる。このた
め、出湯後のS含有量の目標値に応じて、スラグ塩基度
を適切な範囲に調整することが重要となる。本発明で
は、合金の種類に応じてあらかじめ図2に示すような出
湯後のメタル中のS含有量とスラグ塩基度の関係を求め
ておく。そして、その結果に基づいて、個々のチャージ
において出湯後のS含有量目標値に対する最適なスラグ
塩基度の目標値を決定することにより、造滓剤の添加を
必要最小限に抑えた効率の良い精錬を実施する。電気ア
ーク炉においては、出湯の際のスラグ/メタルの攪拌に
よる出湯脱硫が重要な場合があり、少なくとも出湯時ま
でには脱硫反応に適したスラグ組成にする必要がある。
【0015】本発明は、スラグ(溶融酸化物)を10kg
/T-メタル以上生成して精錬を行う電気アーク炉にお
いて、そのスラグの組成変動が電力効率に大きく影響す
る場合に効果的である。例えば、酸化物原料を使用し、
CaO,CaF2,MgO,SiO2,Al23等の多成
分系スラグを生成して精錬を行うステンレス鋼製造の電
気アーク炉操業に特に適する。
【0016】Cr:10〜30重量%のステンレス鋼原
料を製造する場合、スラグ塩基度の目標値Bsaは、出湯
後のメタル中のS含有量の目標値[S]aに応じて、条件
式(1)を満たす範囲内に決定すればよい。すなわち、 2.625−0.0175×[S]a(ppm)≦Bs≦2.948
−0.0175×[S]a(ppm)、かつ、Bs≧1.4、ただ
し、これら2式による解が存在しないときはBs=1.4
とする・・・(1) この条件式は、図2の結果から導いたものである。スラ
グ塩基度が2.948−0.0175×[S]a(ppm)より大
きくなると、過剰な脱硫能を有し、電力原単位が必要以
上に高くなる。逆に、スラグ塩基度が2.625−0.0
175×[S]a(ppm)より小さくなると、脱硫が不十分と
なる。ただし、スラグ塩基度が1.4未満になると、ア
ーク異常等が生じ炉況が著しく不安定になるため、スラ
グ塩基度の下限値を1.4とする。S含有量の目標値が
高く(例えば100ppm)、塩基度が1.4以上の範囲に2.
625−0.0175×[S]a(ppm)≦Bs≦2.948−
0.0175×[S]a(ppm)を満たすBsが無い場合は、ス
ラグ塩基度の目標値を1.4とする。
【0017】以上のように、電気アーク炉操業の効率化
を図るためには、出湯後のS含有量の目標値に応じたス
ラグ塩基度の適正化が重要であるが、操業中にスラグ塩
基度を最適値に近づけるためには、造滓剤追加投入前の
現実のスラグ塩基度を知る必要がある。本発明ではスラ
グの電気伝導度を測定することにより、その時点におけ
る現実のスラグ塩基度を精度良く推定する。スラグの電
気伝導度とスラグ組成の間には、相関関係があることを
利用する。
【0018】スラグの電気伝導度は、CaO,Ca
2,SiO2,MgO,Al23等のスラグ成分の含有
量の影響を受ける。組成にもよるが、例えばCaO,C
aF2,MgOの増加は電気伝導度を大きくし、Si
2,Al23の増加は電気伝導度を小さくする傾向に
ある。電気アーク炉でステンレス鋼原料を製造する場合
を例に挙げると、スラグ成分の中で含有量の多いCa
O,CaF2,SiO2の3成分に注目し、含有量の少な
いMgO,Al23の影響は無視して電気伝導度とスラ
グ塩基度の関係を求めると、それらの間にはかなり明瞭
な相関関係が見られる。図3に、電気アーク炉でステン
レス鋼原料を製造する際の1500℃のスラグにおける
電気伝導度と塩基度Bs(トータルCa濃度のCaO濃
度換算値/SiO2濃度)の関係を示す。塩基度の上昇
に伴って電気伝導度はある幅をもって上昇する。この幅
は、CaO,CaF2,SiO2以外の成分のバラツキに
よるものと考えられる。そこで、そのバラツキも考慮し
た塩基度推定式を求めると、その式に電気伝導度の測定
値を代入してスラグ塩基度を推定することができる。一
例として、図3の結果から求めた塩基度推定式を(2)
式として示す。 Bs=1.333・X+0.0663 ・・・(2) ここで、Xは電気伝導度(Ω-1/cm)を表す。なお、こ
の式は温度やスラグの成分系によって変わるので限定的
なものではない。
【0019】電気伝導度の測定方法としては、スラグサ
ンプラーにより測定に必要な最小限量のスラグを採取し
て炉外で測定する方式、電気伝導度測定用プローブをス
ラグ層に挿入する方式等があるが、後者が好ましい。電
気伝導度測定用電極としては、例えば交流ブリッジ法な
どの一般に用いられる回路方式のものでよい。なお、正
確な塩基度調整を達成するために、電気伝導度の測定と
同時に温度を測定することが望ましい。同一のスラグ組
成でも、温度によって電気伝導度が変化するためであ
る。
【0020】このような方法でスラグの塩基度を推定
し、スラグ成分の過不足分を算出し、その算出結果に基
づいて必要な造滓剤を追加投入することによって、目的
に応じた最適なスラグ組成とすることができる。その
際、添加する造滓剤としてはCaO,CaF2,SiO2
等がある。
【0021】造滓剤を追加投入する方法としては、主に
粉末状の造滓剤を溶湯へ吹き込む方法(インジェクショ
ン)、塊状造滓剤を炉上部または壁部から専用の投入孔
を通して溶融域に投入する方法、追装原料と同時に装入
する方法等がある。このうち、インジェクションによる
方法は、速効性と溶融域の攪拌効果に優れるため、本発
明の効果を引き出す上で好ましい。
【0022】本発明の好ましい操業上の手順としては、
まず、電気伝導度測定前の造滓剤の供給量(初期装入分
および通電開始後装入分)を抑え気味にしておき、装入
物が完全に溶解した後に、スラグの電気伝導度の測定を
行ってスラグ組成を推定し、その結果に応じて必要量の
造滓剤を追加投入する。こうすることによって過剰の造
滓剤を添加せずに済み、最適な脱硫能を達成できると同
時に、常に最大限の電力効率で操業することができる。
なお、さらに精度良くスラグ塩基度を調整するために
は、造滓剤の追加投入の後、再度電気伝導度を測定し、
その結果を反映させて再度スラグ塩基度の調整(造滓剤
の投入)を行うとよい(図1の破線参照)。
【0023】
【実施例】各種ステンレス鋼を生産する製鋼工場で、9
0Ton電気アーク炉によってステンレス溶銑(SUS3
04)を溶製する際、4チャージについて本発明を適用
した。表1に、これら4チャージ(溶解No.1〜4)の
操業状況と実績を示す。表中の電力原単位は、そのチャ
ージの溶解電力から算出した。いずれのチャージも、ま
ず初期原料として、ステンレス鋼スクラップ,鉄屑,フ
ェロニッケル等のメタル原料、製鋼ダスト等の酸化物原
料を装入し、通電を開始した。
【0024】
【表1】
【0025】溶解No.1は、出湯後のメタル中のS含有
量の目標値[S]aが20ppmの場合である。溶解中に造滓
剤としてCaOを2000kgを添加した。装入物が溶け
落ちた後、二次原料として再度スクラップ等を装入し、
さらに、溶解中に造滓剤としてCaOを600kg,Ca
2を1600kgを添加した。これらの装入物すべてが
ほぼ溶解したところで、炉内に生成したスラグ中に直接
プローブを浸漬してスラグの電気伝導度と温度を測定し
た。電気伝導度の計測には、タングステン電極を用いた
ホイーストンブリッジ回路を使用した。測定の結果、電
気伝導度X=1.3Ω-1/cm,スラグ温度は1500℃で
あった。この値を、前述(2)式のスラグ塩基度推定式
に代入して、スラグ塩基度Bsc=1.8と推定した。出
湯後のメタル中のS含有量の目標値[S]aが20ppmの場
合、前述(1)式の条件式に従うと、スラグ塩基度Bs
の許容範囲は2.28〜2.60であり、塩基度の目標値
を許容範囲の下限近くのBsa=2.3と決定した。スラ
グ中のSiO2量はこの鋼種の過去の実績から2340k
gと推定された。スラグ塩基度の推定値Bsc=1.8と目
標値Bsa=2.3を比較した結果、不足分の造滓剤はC
aO換算量で1170kg(2340kg×(2.3-1.8)=1170k
g)と算出された。ここで、CaOとCaF2の全投入量
の比が6:4となるようにすると、追加投入すべき造滓
剤の量は、CaO=726kg,CaF2=617.5kg
(1170kg(CaO)/1.3992=836kg(Ca)、CaO/CaF2=6/4
=1.5となるように、(2600kg+1.3992・X)/(1600kg+
1.948・(836kg−X))=1.5を解くと、X=519kg、519kg×
1.3992=726kg(CaO)、(836kg(Ca)-519kg)・1.948=617.
5kg(CaF2))と決定された。これらの造滓剤を、粉体フ
ィーダーを用い炉内に追加投入した。追加した造滓剤が
溶解した後も昇熱のために通電を続行し、通電終了後、
専用の取鍋に出湯した。取鍋からメタルサンプルを採取
し、分析したところ、出湯後のメタル中のS含有量の目
標値[S]a=20ppmに対して、実績は18ppmであり、
造滓剤を過剰に使用することなく良好な結果が得られ
た。
【0026】溶解No.2では、溶解No.1と同様に、出湯
後のメタル中のS含有量の目標値[S]aが20ppmの場合
の操業を行った。スラグ電気伝導度測定前のCaO,C
aF2供給量は同じであったが、スラグ電気伝導度を測
定したところ、電気伝導度X=1.45Ω-1/cmを得
た。この値を、前述(2)式のスラグ塩基度推定式に代
入して、スラグ塩基度Bsc=2.0と推定した。溶解No.
1と同様、前述(1)式からスラグ塩基度Bsの許容範
囲は2.28〜2.60であり、このチャージでは許容範
囲の上限近くを狙って塩基度の目標値をBsa=2.55
としてみた。溶解No.1と同様の手法で不足分の造滓剤
はCaO換算量で1287kgと算出され、CaOとCa
2の全投入量の比が6:4となるようにすると、追加
投入すべき造滓剤の量は、CaO=806kg,CaF2
=670kgと決定された。専用の取鍋に出湯後、メタル
サンプルを採取して分析したところ、出湯後のメタル中
のS含有量の目標値[S]a=20ppmに対して、実績は1
7ppmであり、溶解No.1と同様、良好な結果が得られ
た。
【0027】溶解No.3では、出湯後のメタル中のS含
有量の目標値[S]aが80ppmの鋼種について操業を行っ
た。溶解中に造滓剤としてCaOを1000kgを添加し
た。装入物が溶け落ちた後、二次原料として再度スクラ
ップ等を投入し、さらに、溶解中にCaOを800kg,
CaF2を1000kgを添加した。これらの装入すべて
がほぼ溶解したところで、炉内に生成したスラグを直接
電気伝導度プローブで測定し、電気伝導度X=0.7Ω
-1/cmという値を得た。この値を、前述(2)式のスラ
グ塩基度推定式に代入して、スラグ塩基度Bsc=1.0
と推定した。出湯後のメタル中のS含有量の目標値[S]
aが80ppmの場合、前述(1)式の条件式に従うと、ス
ラグ塩基度Bsの許容範囲は1.40〜1.55であり、
塩基度の目標値を許容範囲の下限近くのBsa=1.4と
決定した。スラグ中のSiO2量はこの鋼種の過去の実
績から2600kgと推定された。スラグ塩基度の推定値
Bsc=1.0と目標値Bsa=1.4を比較した結果、不足
分の造滓剤はCaO換算量で1040kgと算出された。
ここで、CaOとCaF2の全投入量の比が6:4とな
るようにすると、追加投入すべき造滓剤の量は、CaO
=606kg,CaF2=604kgと決定された。これら
の造滓剤を追加投入後、専用の取鍋に出湯し、メタルサ
ンプルを採取して分析したところ、出湯後のメタル中の
S含有量の目標値[S]a=80ppmに対して、実績は92
ppmであった。操業管理上、このチャージでは出湯後の
メタル中のSの含有量の許容範囲を、目標値[S]aに対
して±15ppmとしているため、本実績値は合格と判定
された。
【0028】溶解No.4では、溶解No.3と同様に、出湯
後のメタル中のS含有量の目標値[S]aが80ppmの鋼種
について操業を行った。スラグ電気伝導度測定前のCa
O,CaF2供給量は同じであったが、スラグ電気伝導
度を測定したところ、電気伝導度X=0.85Ω-1/cm
を得た。この値を、前述(2)式のスラグ塩基度推定式
に代入して、スラグ塩基度Bsc=1.2と推定した。溶
解No.3と同様、前述(1)式からスラグ塩基度Bsの許
容範囲は1.40〜1.55であり、このチャージでは許
容範囲の上限近くを狙って塩基度の目標値をBsa=1.
5としてみた。溶解No.3と同様の手法で不足分の造滓
剤はCaO換算量で780kgと算出され、CaOとCa
2の全投入量の比が6:4となるようにすると、追加
投入すべき造滓剤の量は、CaO=430kg,CaF2
=487kgと決定された。これらの造滓剤を追加投入
後、専用の取鍋に出湯し、メタルサンプルを採取して分
析したところ、出湯後のメタル中のS含有量の目標値
[S]a=80ppmに対して、実績は81ppmであり、良好
な結果が得られた。
【0029】(比較例1)比較例1での操業方法は、基
本的には実施例と同じである。異なる点は、スラグの電
気伝導度を測定せずに、単に、経験的に必要と予想され
る量のCaOおよびCaF2を供給することによってス
ラグ塩基度を調整したことである。S含有量が目標値を
越えることがないように、意識的に多めの量の造滓剤を
添加した。このような方法で、出湯後のメタル中のS含
有量の目標値[S]aが20〜80ppmの場合の操業(溶解
No.5〜8)を行った。表2に操業状況と実績を示す。
【0030】
【表2】
【0031】出湯後のメタル中のS含有量の目標値[S]
aに対して、実績値はかなり低めの値が達成されてお
り、造滓剤が過剰気味であったことがわかる。そのた
め、比較例1での平均の電力原単位は487KWH/Tであ
り、実施例に比べて約7KWH/T高かった。また、投入した
造滓剤の合計量も5300kgと実施例に比べて約810
kg多かった。
【0032】(比較例2)比較例2では、実施例と同様
に、スラグの電気伝導度を測定し、これをもとに塩基度
を推定したが、意識的(実験的)に、塩基度の許容範囲
を外れる量のCaO,CaF2を供給してみた。表3に
操業状況と実績を示す。
【0033】
【表3】
【0034】溶解No.9は、出湯後のメタル中のS含有
量の目標値[S]aが20ppmの場合である。スラグ電気伝
導度を測定したところ、電気伝導度X=1.4Ω-1/cm
を得た。この値を、前述(2)式のスラグ塩基度推定式
に代入して、スラグ塩基度Bsc=1.93と推定した。
前述(1)式からスラグ塩基度Bsの許容範囲は2.28
〜2.60であり、このチャージでは許容範囲の下限を
下回る値を狙って塩基度の目標値をBsa=2.2として
みた。不足分のCaOおよびCaF2の量を算出し、そ
れぞれ15kgおよび143kgを追加投入した。通電完了
後、取鍋に出湯し、メタルサンプルを採取して分析した
ところ、出湯後のメタル中のS含有量の目標値[S]a=
20ppmに対して、実績は37ppmであり、成分アウトと
判定された。
【0035】溶解No.10は、出湯後のメタル中のS含
有量の目標値[S]aが80ppmの場合である。スラグ電気
伝導度を測定したところ、電気伝導度X=0.65Ω-1
/cmを得た。この値を、前述(2)式のスラグ塩基度推
定式に代入して、スラグ塩基度Bsc=0.93と推定し
た。前述(1)式からスラグ塩基度Bsの許容範囲は1.
40〜1.55であり、このチャージでは許容範囲の下
限を下回る値を狙って塩基度の目標値をBsa=1.35
としてみた。不足分のCaOおよびCaF2の量を算出
し、それぞれ310kgおよび400kgを追加投入した。
通電完了後、取鍋に出湯し、メタルサンプルを採取して
分析したところ、出湯後のメタル中のS含有量の目標値
[S]a=80ppmに対して、実績は98ppmであり、成分
アウトと判定された。
【0036】
【発明の効果】本発明では、電気アーク炉の操業におい
て、精錬中のスラグ塩基度を精度良く推定すること、お
よび、出湯後のメタル中のS含有量の目標値に応じた最
適なスラグ塩基度を精度良く決定することにより、造滓
剤を過不足なく投入してスラグ塩基度を最適値に調整す
る。スラグ塩基度が精度良く調整できるため、品質の良
いメタルを安定して出湯するこができる。また、造滓剤
の過剰添加が防止できるため、精錬時間の短縮と電力の
節減が図られる。さらに、溶解チャージ毎に現実のスラ
グ塩基度の推定値を造滓剤の追加投入量に反映させるの
で、メタル原料として酸化物原料を使用した場合に、現
実のスラグ塩基度がチャージにより不規則に変動する状
況(=予測が困難な状況)であっても、目標組成範囲内
のメタルを安定して得ることができる。特に、酸化物原
料を使用した電気炉精錬は、原料コストの低減や工場廃
材の有効利用の観点から工業的に高い価値を有する技術
であり、本発明を採用することにより、多くの電気炉操
業現場において当該技術の普及を図ることが可能とな
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のスラグ塩基度調整手順を説明したフロ
ー図である。
【図2】ステンレス鋼原料を電気アーク炉で精錬した場
合の、スラグ塩基度と出湯後のメタル中のS含有量およ
び電力原単位の関係を表すグラフである。
【図3】ステンレス鋼原料を電気アーク炉で精錬した場
合の、1500℃のスラグにおける電気伝導度と塩基度
の関係を表すグラフである。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 メタル原料の一部として酸化物原料を使
    用する電気アーク炉において、精錬中にスラグの電気伝
    導度Xを測定し、あらかじめ求めてあるスラグ塩基度と
    スラグの電気伝導度の関係を表す式に前記Xを代入して
    その時点におけるスラグ塩基度Bscを推定し、一方、別
    途あらかじめ求めてある出湯後のメタル中のS含有量と
    スラグ塩基度の関係を表す式を用いてS含有量の目標値
    に対するスラグ塩基度の目標値Bsaを決定し、前記Bsc
    と目標値Bsaを比較してスラグ塩基度が目標値Bsaに近
    づくように追加投入する造滓剤の配合組成および量を算
    出し、その算出結果に従って造滓剤を追加投入する、ス
    ラグ塩基度の調整方法。ここで、スラグ塩基度は次式で
    定義する。 スラグ塩基度Bs=(スラグ中のトータルCa濃度のC
    aO濃度換算値)/(SiO2濃度)
  2. 【請求項2】 メタル原料の一部として酸化物原料を使
    用する電気アーク炉においてCr含有量:10〜30重
    量%のステンレス鋼原料を製造するに際し、精錬中にス
    ラグの電気伝導度Xを測定し、あらかじめ求めてあるス
    ラグ塩基度とスラグの電気伝導度の関係を表す式に前記
    Xを代入してその時点におけるスラグ塩基度Bscを推定
    し、一方、下記の条件式(1)に従って出湯後のメタル
    中のS含有量の目標値[S]aに対するスラグ塩基度Bsの
    許容範囲を求め、その許容範囲内にスラグ塩基度の目標
    値Bsaを決定し、前記Bscと目標値Bsaを比較してスラ
    グ塩基度が目標値Bsaに近づくように追加投入する造滓
    剤の配合組成および量を算出し、その算出結果に従って
    造滓剤を追加投入する、スラグ塩基度の調整方法。 2.625−0.0175×[S]a(ppm)≦Bs≦2.948
    −0.0175×[S]a(ppm)、かつ、Bs≧1.4、ただ
    し、これら2式による解が存在しないときはBs=1.4
    とする・・・(1) ここで、Bsはスラグ塩基度を表し、次式で定義する。 Bs=(スラグ中のトータルCa濃度のCaO濃度換算
    値)/(SiO2濃度)
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008019510A (ja) * 2007-08-20 2008-01-31 Jfe Steel Kk 製鋼ダストを用いた電気炉操業方法
KR20180119664A (ko) * 2016-04-13 2018-11-02 제이에프이 스틸 가부시키가이샤 슬래그의 분석 방법 및 용융 철의 정련 방법
KR20190014859A (ko) * 2017-08-04 2019-02-13 주식회사 포스코 용강의 정련방법

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