JPH0913153A - チタン焼結体の処理方法 - Google Patents

チタン焼結体の処理方法

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JPH0913153A
JPH0913153A JP35333395A JP35333395A JPH0913153A JP H0913153 A JPH0913153 A JP H0913153A JP 35333395 A JP35333395 A JP 35333395A JP 35333395 A JP35333395 A JP 35333395A JP H0913153 A JPH0913153 A JP H0913153A
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titanium sintered
titanium
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JP35333395A
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English (en)
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Tatsuo Araki
辰雄 荒木
Setsuo Shoji
節夫 東海林
Tomio Kono
富夫 河野
Tetsuya Kondo
鉄也 近藤
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Daido Steel Co Ltd
Seiko Instruments Inc
Original Assignee
Daido Steel Co Ltd
Seiko Instruments Inc
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 機械的な研磨方法による光沢面ないし鏡面の
形成が容易で、ひいては焼結体の研磨後の外観が向上す
るチタン焼結体の処理方法を提供する。 【解決手段】 本発明のチタン焼結体の処理方法は、少
なくとも880℃以上に設定された保持温度においてチ
タン焼結体を保持する保持工程と、保持温度が900℃
以上に設定されている場合には少なくとも900℃から
850℃までの温度域において、保持温度が900℃未
満の場合には該保持温度から850℃までの温度域にお
いて、そのチタン焼結体を0.1℃/秒以上の冷却速度
で冷却する冷却工程とを含む。このような処理を施した
チタン焼結体の表面に各種機械研磨を施した場合、その
研磨面の鏡面性あるいは光沢性が、処理を施さないもの
に比べて向上する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、チタン焼結体の研
磨面の外観、特にその光沢を増大させるための、焼結体
の処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】チタン部品は軽量かつ高強度で耐食性に
優れる特性を活かし、機械部品をはじめとして、腕時計
のベルトやフレーム等の外装部品、眼鏡部品あるいは装
身具等にも広く使用されている。ところで、チタンは常
温での加工性が悪く、切削加工による部品製造は材料歩
留まりが低い欠点があり、より歩留まりの高い方法とし
て、チタン金属粉末を所定の形状に成形後これを焼結す
ることによりチタン部品を得る、いわゆる粉末冶金法の
適用が図られている。特に、チタン金属粉末と樹脂バイ
ンダとの混練物を射出成形した後焼結する金属粉末射出
成形法(以下、MIM法ともいう)は、通常のダイプレ
ス成形法では成形できない複雑な形状の部品でも比較的
容易にかつ高歩留まりで製造でき、装飾部品等の製造に
は一層有利であるといえる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上述のような焼結チタ
ン部品のうち、腕時計の外装部品や装身具、あるいは眼
鏡部品等に使用されるものは強度や耐食性に加え、表面
の外観状態ができるだけ良好であることが要求される。
しかしながら従来のチタン焼結部品、特にMIM法によ
り製造された焼結部品については、バフ研磨やバレル研
磨等の機械的な研磨方法を用いた場合、研磨面が曇るな
ど、光沢面あるいは鏡面が得にくい問題があった。
【0004】本発明の課題は、機械的な研磨方法による
光沢面ないし鏡面の形成が容易で、ひいては焼結体の研
磨後の外観が向上するチタン焼結体の処理方法を提供す
ることにある。
【0005】
【課題を解決するための手段及び作用・効果】本発明の
第一の方法は、上述の課題を解決するために、少なくと
も880℃以上に設定された保持温度においてチタン焼
結体を保持する保持工程と、保持温度が900℃以上に
設定されている場合には少なくとも900℃から850
℃までの温度域において、保持温度が900℃未満の場
合には該保持温度から850℃までの温度域において、
そのチタン焼結体を0.1℃/秒以上の冷却速度で冷却
する冷却工程とを含むことを特徴とする。
【0006】上記の処理の要点は、チタン焼結体の保持
温度が、チタンの低温相である最密六方充填(hcp)
構造のα相と、高温相である体心立方(bcc)構造の
β相との間の変態点に対応する880℃よりも高温側
(すなわちβ相温度域内)に設定されており、その変態
点の近傍においてチタン焼結体を、β相温度域からα相
温度域まで上述の冷却速度で冷却することにある。本発
明者らは、このような処理を施したチタン焼結体の表面
に各種機械研磨を施した場合、その研磨面の鏡面性ある
いは光沢性が、処理を施さないものに比べて向上するこ
とを見い出したのである。
【0007】ここで、研磨後の焼結体の外観をより向上
させるためには、冷却工程において、上記変態点近傍を
なるべく大きな冷却速度で冷却するのがよく、その冷却
速度を望ましくは0.5℃/秒以上、さらに望ましくは
1℃/秒以上とするのがよい。また、保持工程において
は焼結体の保持温度は、望ましくは950℃以上とする
のがよい。なお、保持温度は、焼結体の溶融ないし変形
を避けるため1350℃以下に設定される。一方、上記
冷却速度で冷却する温度域は望ましくは、少なくとも9
50℃から800℃までとするのがよい。なお、その保
持時間は、焼結体の寸法及び設定保持温度を勘案して、
本発明の効果が不足なく得られるように、適宜調整され
る。なお、保持工程においては、一定の保持温度を維持
するようにしてもよいが、上記条件を逸脱しない範囲で
変動させることも可能である。
【0008】上述の冷却速度を達成するための具体的な
方法としては、冷却工程においてチタン焼結体を、アル
ゴン、窒素又はヘリウムのいずれかを主体とする1気圧
以上の気体雰囲気中で冷却する方法を例示することがで
きる。より大きな冷却速度を得るために、気体の圧力
は、望ましくは5.0気圧以上とするのがよい。ここ
で、保持工程を実施する炉室内に所定の圧力の気体を導
入した後、さらに炉内に設けられた送風機により強制対
流を生じさせれば、より大きな冷却速度を得ることがで
きる。一方、チタン焼結体を、油、水、あるいは食塩や
苛性ソーダ等の水溶液、液体窒素等の液体冷却媒中で冷
却する方法も採用できる。
【0009】次に、本発明の第二の方法は、少なくとも
880℃以上に設定された第一の保持温度においてチタ
ン焼結体を保持する第一の保持工程と、その第一の保持
工程の終了後に、チタン焼結体を、少なくとも750℃
以上880℃未満に設定された第二の保持温度において
保持する第二の保持工程とを含むことを特徴とする。す
なわち、前述の変態点よりも高温側で第一の保持工程
を、続いて該保持工程よりも低温側で第二の保持工程を
実施することにより、チタン焼結体の研磨面の鏡面性あ
るいは光沢性が一層向上する。
【0010】上記第二の方法において第二の保持温度
は、望ましくは800〜880℃の範囲で、さらに望ま
しくは800〜860℃の範囲で設定するのがよい。こ
こで、第二の保持温度が850℃以上に設定されている
場合には、第二の保持工程終了後にその第二の保持温度
から850℃までの温度域において、チタン焼結体を
0.1℃/秒以上の冷却速度で冷却すれば、チタン焼結
体の研磨面の状態をさらに良好なものとすることができ
る。
【0011】次に、第一の保持工程後の冷却は、前述の
第一の方法と同様に上記変態点近傍をなるべく大きな冷
却速度で冷却すれば、チタン焼結体の研磨面の状態をよ
り良好な状態とすることができる。第一の保持工程終了
後に、第一の保持温度が900℃以上に設定されている
場合には少なくとも900℃から850℃までの温度域
において、第一の保持温度が900℃未満の場合には第
一の保持温度から850℃までの温度域において、チタ
ン焼結体を0.1℃/秒以上の冷却速度で冷却を行う。
その冷却速度は、望ましくは0.5℃/秒以上、さらに
望ましくは1℃/秒以上とするのがよい。また、第一の
保持温度は、望ましくは950℃以上とするのがよい。
一方、第一の保持温度は、焼結体の溶融ないし変形を避
けるため1350℃以下に設定される。この場合、上記
冷却速度で冷却する温度域は望ましくは、少なくとも9
50℃から800℃までとするのがよい。なお、所望の
冷却速度を得るための方法は、本発明の第一の方法で説
明したものと同様の手法を採用することができる。
【0012】第一及び第二の保持工程におけるそれぞれ
の保持時間は、焼結体の寸法及び設定保持温度を勘案し
て、本発明の効果が不足なく得られるように適宜調整さ
れる。また、いずれの保持工程においても、保持中に一
定の保持温度を維持するようにする方法の他、上記条件
を逸脱しない範囲で温度を変動させる方法も可能であ
る。
【0013】上記第一及び第二方法において、処理後の
チタン焼結体の表面に研磨を施す方法としては、砥石研
磨、及びバフ研磨やラップ研磨等の砥粒を使用する研
磨、バレル研磨、あるいはホーニング等の方法を採用す
ることができる。
【0014】次に、本発明の対象となるチタン焼結体
は、例えば、腕時計のベルトやフレーム等の外装部品、
眼鏡部品あるいは装身具、さらには医療機器、航空機関
連部品等に使用されるものであり、その製造方法として
金属粉末射出成形法(MIM法)を採用することができ
る。
【0015】MIM法を使用する場合、チタン焼結体は
具体的には下記のような工程に従って製造することがで
きる。 (1)チタン粉末とバインダとを混練して、チタン粉末と
バインダとの混練物を作製する。バインダは、例えばポ
リプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、アクリル樹脂、
ポリスチレン樹脂、各種ワックス類等、あるいはそれら
の2種以上を所定の割合で混練したものが使用できる。
混練物における金属粉末とバインダとの混合比率は、樹
脂を加熱軟化させたときに混練物が適度な流動性を有
し、かつ脱バインダ工程後に成形体が自身の形状を維持
できる範囲内で、金属粉末とバインダの種類に応じて適
宜設定される。 (2)バインダを軟化させて混練物を流動可能な状態と
し、予め定められた形状の空間部を有する成形型のその
空間部内に、その混練物を射出してバインダを凝固させ
ることにより、空間部に対応する形状の射出成形体を作
製する。 (3)形状を維持しつつ射出成形体からバインダ成分を除
去する。具体的には、真空ないし所定の減圧雰囲気、不
活性雰囲気あるいは大気中で成形体を焼結温度よりも低
温で加熱し、樹脂バインダを蒸発ないし分解させること
によりバインダ成分が除去される。加熱温度及びその加
熱速度は、バインダ成分と金属粉末とが過度に反応した
り、またバインダが急激に蒸発ないし分解して成形体が
損傷を受けたりしない範囲内で、金属粉末とバインダの
種類に応じ適宜設定される。一方、別の方法として、射
出成形体を溶媒中に浸漬したり、溶媒蒸気中に保持する
ことにより、バインダ成分を抽出・除去する方法も可能
である。 (4)バインダ成分除去後の射出成形体を焼結する。焼結
は、真空ないし所定の減圧雰囲気あるいは不活性雰囲気
において、金属粉末が完全に溶融せず、かつ成形体の収
縮が十分進行して所望の密度の焼結体が得られるよう
に、焼結温度及び焼結時間が適宜設定される。例えば焼
結温度は1100〜1350℃の範囲内で設定するのが
よい。
【0016】一方、チタン金属粉末に所定量の潤滑剤を
添加したものを、公知のダイプレス法により成形して圧
粉成形体を作り、これを焼結することにより製造したも
のを使用することもできる。
【0017】上述のようにして得られたチタン焼結体に
対し、熱間静水圧プレス処理を施したものを使用するこ
ともできる。これにより、チタン焼結体の研磨面の状態
を極めて良好なものとすることができる。ここで、熱間
静水圧プレス処理は、例えばその温度範囲を900〜1
350℃、望ましくは900〜1100℃に設定し、圧
力範囲を500〜2000気圧、望ましくは1000〜
1500気圧に設定して行うのがよい。
【0018】例えば第一の方法においては、このような
チタン焼結体に、前述の保持工程及び冷却工程が施され
ることとなる。この場合、チタン焼結体は、所定の焼結
炉を用いて焼結後、室温まで炉冷し、別の熱処理炉を用
いて保持温度まで再加熱することにより保持工程を行
い、続いて炉内に冷却用の気体を導入したり、あるいは
炉外に設けられた冷却槽内の液体冷却媒中に投入するこ
とにより冷却工程を実施することができる。ここで、保
持温度におけるチタン焼結体の保持は、例えばα相から
β相への変態がほぼ完了するまで継続され、保持温度に
応じてその保持時間が適宜設定される。一方、それぞれ
設定温度と炉内雰囲気とを個別に調整可能な複数の炉室
と、各炉室間でワークを搬送するための搬送機構とを備
えた連続処理炉を使用し、それら炉室の1つのものを使
用して焼結工程を実施し、続いて別の炉室へ搬送してそ
こで保持工程を実施し、さらに別の炉室へ搬送して冷却
工程を実施する方法も可能である。また、焼結工程を実
施後、別の炉室へ搬送して直ちに冷却工程を実施するよ
うにしてもよい。この場合は、焼結工程が保持工程を兼
ねているとみることができる。また、単一の炉室のみを
備えた、いわゆるバッチ式炉で焼結を行う場合において
も、炉室内に気体を導入することにより、焼結工程から
冷却工程へ直接移行することができる。
【0019】一方、第二の方法においても、類似の方法
を採用することができる。すなわち所定の焼結炉を用い
て焼結された焼結体を室温まで炉冷した後、別の熱処理
炉を用いて第一の保持温度まで再加熱することにより第
一の保持工程を行い、続いて炉内に冷却用の気体を導入
したり、あるいは炉外に設けられた冷却槽内の液体冷却
媒中に投入することにより焼結体を冷却し、続いて同一
の又は異なる熱処理炉により第二の保持工程を同様に行
うことができる。また、連続処理炉を使用する場合は、
それら炉室の1つのものを使用して焼結工程を実施し、
続いて別の炉室へ搬送して第一の保持工程及び第二の保
持工程を順次実施し、さらに別の炉室へ搬送して冷却工
程を実施することができる。この場合、第一の保持工程
終了後、所定の冷却速度で第二の保持温度まで冷却し、
そのまま第二の保持工程へ移行することも可能である。
また、第一の保持工程及び第二の保持工程を別々の炉室
で行うようにしてもよい。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、い
くつかの実施例に基づき説明する。 (実施例1)まず、チタン金属粉末と、ポリプロピレン
及び各種ワックス類等を含有する樹脂バインダとを所定
の比率(例えば体積比で30〜50%)で予め混練し、
これをペレットないしフレーク状に成形してコンパウン
ドを作製した。次に、このコンパウンドを加熱して樹脂
バインダを溶融させ、成形型内に射出して射出成形体を
得た。この射出成形体を、所定の脱バインダ炉を用いる
ことにより、真空中で焼結温度よりも低温で加熱し、成
形体の形状が崩れないように樹脂バインダを蒸発ないし
分解させてバインダ成分を除去した。次に、その成形体
を焼結炉に移し、真空中で1180℃で30分焼結し、
その後室温まで炉冷した(冷却速度0.03℃/秒)。
得られた焼結体試料(以下、単に試料ともいう)はその
寸法が長さ93mm、幅6.5mm、厚さ3.4mmの板状と
され、その密度は理論密度に対する相対値で97.3%
であった。
【0021】上記のような試料を複数用意し、所定の熱
処理炉を用いて表1に示す850〜1180℃の5種類
の温度でそれぞれ保持後、炉内に窒素ガスを導入し、炉
内に設けられた送風機を作動させて冷却を行った。ここ
で、導入する窒素の圧力は6.0気圧であり、保持温度
から800℃までの平均の冷却速度は1.0〜1.5℃
/秒となった。処理後の各焼結体の板面をエメリー紙
(#1500)で研磨し、続いて#100のアルミナ研
粒を用いて糸バフ研磨を行い、さらに#400のアルミ
ナ研粒を用いてバフ研磨を行った後、Cr23系の研磨
粉による仕上バフ研磨を行って、各試料の研磨面の状態
を目視により観察した(試料1〜5、保持温度が850
℃の試料5は比較例)。また、焼結後炉冷したままの試
料に対し同様の研磨処理を施したものも作製した(試料
6、比較例)。その観察結果を表1に示す。なお、評価
は、◎:研磨面が鏡面となり光沢が非常に大きい、○:
光沢が大きい、△:若干曇りはあるが、比較的良好な光
沢を維持、×:表面が曇り光沢が不足、の4段階で評価
した。
【0022】
【表1】
【0023】上記結果において、比較例の試料(試料
5、6)については研磨面の光沢が不足しているが、本
発明の処理方法を適用した実施例の試料(1〜4)につ
いては、光沢に富んだ良好な研磨面が得られていること
がわかる。
【0024】なお、試料1(実施例)と試料6(比較
例)については、研磨表面((a))及び研磨後に、所
定量のフッ酸と硝酸を含有する腐食液でエッチングした
表面((b))の光学顕微鏡観察を行った。またX線回
折(ディフラクトメータ法)により、試料中に存在する
相の同定を行った。図1及び図2は、試料1及び試料6
の研磨表面((a))及びエッチングした表面
((b))の写真(倍率:×100)をそれぞれ示して
いる。試料1の研磨面は平坦であるのに対し、試料6の
研磨面には波打ったような凹凸が見られ、両者の表面の
光沢の違いを反映しているように思われる。また、X線
回折の結果においては、試料1はチタンのα相のピーク
以外には目立った回折ピークが観察されなかったのに対
し、試料6についてはα相以外に炭化チタンの比較的大
きな回折ピークが観察された。試料6については、図2
(a)に示すように、灰色の斑点状の相が観察される
が、試料1に対しては同相はほとんど観察されない(図
1(a))。このことから、上記灰色の相は炭化チタン
相に対応しているものと推測される。また、エッチング
表面の写真においては、試料1(図1(b))に対して
はα相と見られる非常に微細な結晶粒が観察されたのに
対し、試料6(図2(b))に対しては粗大な結晶粒が
主体であることがわかる。
【0025】ここで、本発明の方法により処理したチタ
ン焼結体の研磨面の光沢が増大する要因は下記のように
推測される。チタンのα相は前述の通りhcp構造を有
しており、そのc軸方向とc面方向とで硬度に差がある
ために、同じ結晶粒でも研磨面に現われる結晶面の種類
に応じて研磨される度合いが異なるのではないかと考え
られる。従って、硬度の小さい結晶面が研磨面に現われ
ている結晶粒については比較的大きく研磨され、硬度の
大きい結晶面が現われている結晶粒についてはそれほど
研磨されないこととなる。そして、比較例の試料のよう
に、変態点近傍で徐冷されて結晶粒が粗大化してしまう
と、結晶方位に基づく研磨度の差異が強調され易くな
り、研磨面に凹凸が生じやすくなるのに対し、実施例の
試料のように結晶粒が微細化していれば、その影響が抑
制されて表面の平坦度が向上し、光沢が増すものと考え
られる。一方、炭素の固溶限はα相よりβ相の方が大き
いので、変態点近傍を徐冷すると、過剰な炭素が炭化チ
タンの形で多量に析出することとなる。炭化チタンは非
常に硬度が大きく研磨されにくいので、研磨面に凸部と
なって残留し、研磨面の平坦度を下げる要因となりう
る。一方、変態点近傍を急冷すると、炭化物の析出が抑
制されるので平坦度が向上するものと考えられる。
【0026】(実施例2)実施例1と同様の条件にて作
製した焼結体試料を熱処理炉に移して950℃に保持
し、続いて炉内に窒素ガスを導入して試料の冷却を行っ
た。このとき、導入する窒素ガスの圧力を調整すること
により、その800℃までの平均の冷却速度を0.03
〜1℃/秒の範囲で変化させた(0.03℃は窒素ガス
を導入せずに炉冷、比較例)。そして、各試料の表面を
実施例1と同様の条件で研磨し、その研磨面を目視によ
り観察した。その結果を表2に示す。
【0027】
【表2】
【0028】比較例の試料(24)については研磨面の
光沢が不足しているが、冷却速度が0.1℃/秒より大
きい実施例の試料(21〜23)については、光沢に富
んだ良好な研磨面が得られていることがわかる。
【0029】(実施例3)実施例1と同様の条件にて作
製した焼結体試料を熱処理炉に移して950℃に保持
し、続いて炉内に6.3気圧の窒素ガスを導入して1〜
1.5℃/秒の平均冷却速度で試料の冷却を行った。そ
して、試料温度が900、850、800℃の各温度
(下限温度)に到達した時点で再び炉内を真空排気した
(試料33〜35、33は比較例)。真空排気後の試料
の冷却速度は0.05℃/秒以下となった。そして、各
試料の表面を実施例1と同様の条件で研磨し、その研磨
面を目視により観察した。その結果を表3に示す。
【0030】
【表3】
【0031】比較例の試料(33)については研磨面の
光沢が不足しているが、実施例の試料(34、35)に
ついては、光沢に富んだ良好な研磨面が得られているこ
とがわかる。
【0032】(実施例4)実施例1とほぼ同様の条件に
より作成した焼結体試料(ただし、焼結温度は1250
℃とした)を熱処理炉に移して、第一の保持工程として
1050℃に保持し、続いて炉内に所定圧力の窒素ガス
を導入することにより、700℃までの温度域における
平均冷却速度が0.67℃/秒となるように冷却した。
この段階で試料の表面を実施例1と同様の条件で研磨
し、その研磨面を目視により観察したところ、光沢の比
較的大きい研磨面が得られた。次に、同じ試料を、第二
の保持工程として830℃に再加熱した後、300℃ま
での温度域における平均冷却速度が0.67℃/秒とな
るように冷却し、同じ条件で表面を研磨したところ、光
沢はさらに増大した。第二の保持工程を施すことにより
研磨面の光沢が増大する原因としては、例えば第一の保
持工程からの冷却時に若干析出した炭化物相が、変態点
以下で再保持されることで固溶・減少すること、あるい
は第二の保持工程において、焼結体の結晶粒の粒度分布
がより鋭いものに変化し、研磨に伴う脱粒等が生じにく
くなること等が推測される。
【0033】(実施例5)実施例1と同様の条件により
作成した焼結体試料に対し、さらに熱間静水圧プレス処
理を1130℃、1000気圧の条件で3時間施した。
そして、得られた試料に対し実施例4と同様の条件によ
り第一及び第二の保持工程を実施するとともに、各々の
工程の終了後に実施例1と同様の条件で試料表面を研磨
して、その研磨面を目視により観察した。第一の保持工
程終了後の研磨面は、実施例4で同工程終了後に得られ
た研磨面とほぼ同程度の光沢を有する程度であったが、
第二の保持工程終了後の研磨面は、実施例4で同工程終
了後に得られた研磨面よりもさらに光沢に富む良好なも
のとなった。
【0034】(実施例6)実施例4と同様の条件により
作成した焼結体試料を熱処理炉に移し、第一の保持工程
としてこれを1050℃に保持した。続いて、熱処理炉
の抵抗発熱体の通電量の調整及び/又は所定圧力のアル
ゴンガスの導入により、830〜900℃(900℃の
試料46は比較例)に設定された第二の保持温度まで各
種平均冷却速度により冷却した。そして、試料をそのま
まその第二の保持温度に保持した後、同様に室温まで各
種平均冷却速度により冷却した。そして、得られた表面
を実施例1と同様の条件で研磨し、その研磨面を目視に
より観察した。結果を表4に示す。
【0035】
【表4】
【0036】第二の保持工程を変態点以上で行った比較
例の試料については、研磨面が不良であったのに対し、
第二の保持工程を変態点よりも低温側で行った実施例の
試料については、いずれも良好な研磨面が得られている
ことがわかる。また、第二の保持工程を変態点よりも低
温側で行う場合、第一の保持工程からの冷却速度を0.
1℃/秒以上とした試料(41、42、45)の方が、
冷却速度がそれ未満の試料(43)よりも研磨面がさら
に良好となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の、試料1(実施例)の研磨表面及び
エッチング表面の光学顕微鏡写真。
【図2】実施例1の、試料6(比較例)の研磨表面及び
エッチング表面の光学顕微鏡写真。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 河野 富夫 愛知県名古屋市天白区土原3−905−2 (72)発明者 近藤 鉄也 愛知県名古屋市中川区戸田四丁目1809番地

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも880℃以上に設定された保
    持温度においてチタン焼結体を保持する保持工程と、 前記保持温度が900℃以上に設定されている場合には
    少なくとも900℃から850℃までの温度域におい
    て、保持温度が900℃未満の場合には該保持温度から
    850℃までの温度域において、前記チタン焼結体を
    0.1℃/秒以上の冷却速度で冷却する冷却工程と、 を含むことを特徴とするチタン焼結体の処理方法。
  2. 【請求項2】 前記冷却工程において前記チタン焼結体
    は、アルゴン、窒素又はヘリウムのいずれかを主体とす
    る1気圧以上の気体雰囲気中で冷却される請求項1記載
    のチタン焼結体の処理方法。
  3. 【請求項3】 前記冷却工程において前記チタン焼結体
    は、油、水、水溶液、液体窒素等の液体冷却媒中で冷却
    される請求項1記載のチタン焼結体の処理方法。
  4. 【請求項4】 少なくとも880℃以上に設定された第
    一の保持温度においてチタン焼結体を保持する第一の保
    持工程と、 その第一の保持工程の終了後に、前記チタン焼結体を、
    少なくとも750℃以上880℃未満に設定された第二
    の保持温度において保持する第二の保持工程と、 を含むことを特徴とするチタン焼結体の処理方法。
  5. 【請求項5】 前記第二の保持温度が850℃以上に設
    定されている場合には、前記第二の保持工程終了後にそ
    の第二の保持温度から850℃までの温度域において、
    前記チタン焼結体が0.1℃/秒以上の冷却速度で冷却
    される請求項4記載のチタン焼結体の処理方法。
  6. 【請求項6】 前記チタン焼結体は、 チタン粉末とバインダとを混練して該チタン粉末とバイ
    ンダとの混練物を作製し、 前記バインダを軟化させて前記混練物を流動可能な状態
    とし、予め定められた形状の空間部を有する成形型のそ
    の空間部内に、その混練物を射出して前記バインダを凝
    固させることにより、前記空間部に対応する形状の射出
    成形体を作製し、 さらに、前記形状を維持しつつ前記射出成形体からバイ
    ンダ成分を除去し、 前記バインダ成分除去後の前記射出成形体を焼結するこ
    とにより製造されたものである請求項1ないし5のいず
    れかに記載のチタン焼結体の処理方法。
  7. 【請求項7】 前記チタン焼結体は、焼結後に熱間静水
    圧プレス処理されたものが使用される請求項1ないし6
    のいずれかに記載のチタン焼結体の処理方法。
  8. 【請求項8】 前記冷却工程の後に、前記チタン焼結体
    の表面が研磨される研磨工程を含む請求項1ないし7の
    いずれかに記載のチタン焼結体の処理方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6306196B1 (en) 1999-08-04 2001-10-23 Hitachi Metals, Ltd. Sintered Ti-system material product derived from injection molding of powder material and producing method thereof
JP2009052092A (ja) * 2007-08-27 2009-03-12 J Make:Kk チタン−ゲルマニウム合金およびその製造方法、ならびに装身具、金属製日用品および金属製医療用部材
US7883662B2 (en) 2007-11-15 2011-02-08 Viper Technologies Metal injection molding methods and feedstocks
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