JPH09111309A - 連続式焼結炉 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 溶媒を含む希土類磁石成形体の脱溶媒および
焼結を良好に行う。 【解決手段】 希土類永久磁石用微粉を溶媒に分散させ
た混合物を成形した後、連続的に脱脂焼結する炉におい
て、加熱手段と真空排気手段を有した脱脂室と焼結室
を、扉を介して連接すると共に、脱脂室が壁面と成形体
の搬入用扉及び搬出用扉により密封空間を形成し、前記
壁面が密封空間にセットされた成形体を加熱する面状発
熱体を成していることを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、溶媒を含んだ成形
体を連続的に脱脂焼結する焼結炉に係わり、特に希土類
永久磁石用微粉を鉱物油等の溶媒に分散させた混合物を
磁場中で加圧成形した後の成形体を、真空中で脱脂した
後焼結する焼結炉に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】希土類永久磁石の製造方法として、希土
類永久磁石用磁粉を鉱物油等の溶媒に分散させた混合物
を原料として磁場中で加圧成形し、得られた成形体（以
下ワークと呼ぶ）の溶媒を除去（以後脱脂と呼ぶ）した
後に、真空中で焼結する方法が知られている。通常脱脂
は、ワークを真空容器にセットし、溶媒の沸点を下げる
と同時に、材料の反応を抑えながら加熱することで行
う。小規模な生産においては、設備的には脱脂と焼結を
一つの炉で行ったり、別個の炉で行いこの間をワーク搬
送することで対処できるが、量産面からは一連の連続炉
とした方が、効率面、省エネ面からも適していることは
明らかである。

【０００３】従来例として、特開昭６０ー９８０１に脱
ワックス室と焼結室とを連接した真空焼結炉が開示され
ている。本例によれば、ヒータを備えた脱ワックス室と
焼結室とを扉フードを介して連接し、扉フードおよび前
記各室にそれぞれ真空排気管を接続するとともに、前記
脱ワックス室の真空排気路に気化ワックス捕集器を設け
たことを特徴としている。その目的とするところは、脱
ワックス時の処理材温度を有効利用することによる省エ
ネルギーと、排気ガス中の気化ワックスを捕集し、真空
ポンプへのワックスの付着防止による設備の長期安定化
である。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】高性能な希土類永久磁
石を製造するための脱脂焼結工程で、特に脱脂工程は重
要であり、完全に脱脂することはもちろんであるが、ワ
ークから気化した溶媒又はその分解物を、ワークに付着
させないようにしなければならない。脱脂が不完全であ
れば、焼結時の高温で、溶媒が内部で分解して高性能磁
性材料としての材質を変化させたり、気化ガスの発生に
よる真空度低下により、材料を酸化あるいは炭化させ
る。また、ワークに付着した前記溶媒又はその分解物
も、前記同様焼結時に磁性材料を変化させ、いずれも特
性の低下につながる。前記従来例によれば、真空脱ワッ
クス室は、外装保温された炉殻内に筒状の反射板を配置
し、この内部にヒータが配設されて、室内を約５００℃
に保持し、気化したワックスは、排気ガスを真空ポンプ
で引く際に途中のワックス捕集器で捕集する構造であ
る。本希土類永久磁石製造に用いる鉱物油、植物油、合
成油あるいはそれらの混合油等の溶媒は、気化開始温度
が約１５０℃、希土類永久磁石微粉と反応し焼結阻害す
る温度は約２００℃であり、分解開始温度は約３５０℃
である。従って、ワークを１５０〜２００℃に加熱制御
する必要があるが、従来例ではこの点については何ら述
べられていない。また、ヒータが３５０℃以上の高温で
あれば、当然気化した溶媒がヒータに接触すると分解
し、ワークに付着するものもでてくる。本発明は、成形
体から溶媒を完全に除去すると同時に、脱脂時の気化溶
媒が分解等を起こして再びワークに付着しないような脱
脂室を有した希土類永久磁石の連続式焼結炉の提供を目
的とする。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明は、希土類永久磁
石用微粉を溶媒に分散させた混合物を成形して得た成形
体を、成形体から溶媒を除去した後に焼結する連続式焼
結炉において、各々加熱手段と真空排気手段を有した脱
脂室と焼結室を、扉を介して密封的に連接するととも
に、脱脂室が壁面と成形体の搬入用扉及び搬出用扉によ
り密封空間を形成し、前記壁面が密封空間にセットされ
た成形体を加熱する面状発熱体を成していることを特徴
としている。

【０００６】

【発明の実施の形態】図１に、本発明の希土類磁石の連
続式焼結炉の実施例を示す。本発明の連続式焼結炉は、
二つの脱脂室１、２と焼結室３と冷却室４を、扉６、
７、８を介して連接している。脱脂室１のワーク装入用
扉５の前方及び冷却室４のワーク排出用扉９の後方に
は、ワークを収納した容器１００を移動可能に積載でき
る入口コンベア５０及び出口コンベア５１を配設する。
脱脂室１は、外殻を耐火断熱構造の外壁１１とし、その
内部に設けた内壁１３と断熱扉５、６により密封空間を
形成する脱脂チャンバー１０を有する。外壁１１と内壁
１３の間にワーク加熱用ヒーター１２を配設する。内壁
１３は熱伝導性の良い鉄系材質、又は伝導性と保温性を
適度に有するような薄いセラミックス系材質を用いる。
脱脂チャンバー１０には、蒸気加熱した真空配管１４を
介して溶媒回収装置１５、メカニカルブースターポンプ
１６、ロータリポンプ１７を接続する。脱脂室２は脱脂
室１と基本構造は同一であり、脱脂室１の主要構成要素
１０〜１７に相当するものを２０〜２７で示している。

【０００７】焼結室３は、耐火断熱構造の外壁３と断熱
扉７、８によって密封空間を形成する焼結チャンバー３
０を有する。焼結チャンバー３０内にはワーク加熱用ヒ
ーター３２を配設する。また焼結チャンバー３０には、
真空配管３３を介して油拡散ポンプ３４及びロータリポ
ンプ３５が接続されている。冷却室４は、耐火断熱構造
の外壁４１と断熱扉８、９により密封空間を形成する冷
却チャンバー４０を有する。冷却チャンバー４０には真
空配管４２を介してロータリポンプ４３が接続され、更
に置換ガスである不活性ガスを循環冷却するガス冷却装
置４４が接続されている。前記構造の連続式焼結炉は、
各室はワーク収納容器１００を搬送するワーク搬送機構
を有しているが図示していない。また、各扉の開閉装置
についても図示していない。

【０００８】次に本装置の作動を説明する。定常時の作
動は、後方の冷却室からワーク収納容器１００が搬出さ
れることから始まり、順次空き室にその上流の部屋で処
理を完了したワーク収納容器１００を搬入する。まず、
冷却室４で処理が完了すると、扉９が開き、ワーク収納
容器１００は出口コンベヤ５１に送られ、冷却室チャン
バー４０は空になる。その後扉９は閉止され、ロータリ
ポンプ４３が作動し、真空度を焼結室３と同等になるよ
うにする。焼結室３で処理が完了していれば、冷却室４
内が空で、かつ所定の真空度であることを確認後、扉８
を開きワーク収納容器１００を冷却室４に移送する。焼
結処理後のワーク収納容器１００が冷却室４にセットさ
れると、扉８を閉止し、ガス冷却装置４４を作動させて
冷却された不活性ガスを室内に注入し、成形体を冷却す
る。この時、ロータリポンプ４３は停止させておく。

【０００９】焼結室３は、常時ロータリポンプ３５と油
拡散ポンプ３４を作動し、焼結チャンバー３０内を所定
の真空度になるようにしている。脱脂室２で処理が完了
すると、焼結室３内が空で、かつ所定の真空度になって
いることを確認後、扉７を開きワーク収納容器１００を
焼結室３に移送する。脱脂処理後のワーク収納容器１０
０が焼結室３にセットされると、扉７を閉止し、ヒータ
３２を予め設定した所定の加熱パターンで制御開始し、
成形体を約１１００℃に２時間保持をし焼結する。焼結
時間経過後、ヒータ加熱を停止しワークを冷却する。

【００１０】脱脂室２は、常時ロータリポンプ２７とメ
カニカルブースターポンプ２６を作動し、脱脂チャンバ
ー２０内を所定の真空度になるようにしている。脱脂室
１で処理が完了すると、脱脂室２内が空で、かつ所定の
真空度になっていることを確認後、扉６を開きワーク収
納容器１００を脱脂室２に移送する。脱脂室１でワーク
を加熱しプレ脱脂処理後のワーク収納容器１００が脱脂
室２にセットされると、扉６を閉止し、ワークを溶媒が
気化するように１５０〜１８０℃に２時間保持し、ワー
ク中の溶媒を気化し、脱脂を行う。この時、ワークはヒ
ータ２２からの直接放射熱を受け加熱されるのではな
く、ヒータ２２からの放射及び対流でほぼ均等に加熱さ
れた内壁２３の表面からの放射熱で加熱される。これに
より、ワークは均等に加熱される。ヒータ２２は、内壁
２３の表面温度が溶媒の熱分解温度以下、例えば３００
℃になるように内壁２２の温度を検出しながら加熱制御
をする。このため気化溶媒が内壁２３に触れても分解す
ることはない。ここで、内壁２３を設けず、ヒータ自体
を３００℃に制御して、直接ヒータ２２の放射熱でワー
クを加熱することも考えられるが、ワークを均等に加熱
するためには、前記内壁２３の位置にヒータを密に多数
設置しなければならず得策ではない。ヒータ数を少なく
してかつワークを均等に加熱するには、ヒータとワーク
の間隔を長くする必要があるが、当然ながらヒータの温
度をその分高くしなければならず、ヒータに接触した溶
媒が分解してしまう。

【００１１】脱脂室１が空になり、扉６が閉止される
と、ロータリポンプ１７とメカニカルブースターポンプ
１６を停止し、窒素等の不活性ガスを導入して（図示せ
ず）脱脂チャンバー１０内を大気に戻す。次に扉５を開
放し、入口コンベア５０上にセットされた成形後のワー
クを収納した容器１００を脱脂室１内に搬入セットす
る。入口側扉５を閉めてロータリポンプ１７とメカニカ
ルブースターポンプ１６を起動し、脱脂チャンバー１０
を真空環境とする。ヒータ１２は、ワーク搬送時も加熱
制御は継続したままでも良いし、ロータリポンプ１７の
作動と連動させても良い。以上説明した各室の作動は、
時間的には下流から上流にずれていくが、ほぼ連続的な
流れとなるようにしており、従って各室の処理時間はほ
ぼ同一である。

【００１２】図２に本発明の焼結装置の各室のワークの
温度変化を示す。縦軸に温度を、横軸に各室を対応させ
て時間表示した。本例では脱脂室１ではワーク温度が溶
媒が気化する温度まで上がりきっておらず、実質的な脱
脂は行っていないが、ヒータ１２の温度制御を、例えば
最初にヒータに急激な高出力を与えて、ワークを溶媒気
化温度近くまで急加熱するようにすれば、脱脂室１でも
脱脂をすることができる。また、真空配管１４、２４は
蒸気加熱されており、吸引ガス中に含まれている溶媒は
配管内壁に凝固することなく排気されるので、溶媒回収
装置１５、２５でほぼ完全に溶媒回収ができる。

【００１３】本実施例では、脱脂室のワークへの加熱源
は内壁面とし、基の熱源であるヒータからの放射及び対
流の熱エネルギーを内壁に与える構造としたが、基の熱
源はヒータだけでなく配管中に加熱流体を通したもの等
も考えられる。また、基の熱源を用いず、例えばヒータ
内蔵のシートを内壁に貼り付けたり、抵抗等により発熱
する材質を内壁自身に用いるなど、面発熱できるものな
ら何でもよい。また、本実施例では、真空度は各室とも
１０^-2〜１０^-3Ｔｏｒｒとなるように制御したが、適宜
個々に適切な値をとっても良い。さらに、本実施例では
脱脂室を２室設けたが、脱脂必要時間と焼結時間の関係
で１室でも良いし、逆に３室以上としても良く、溶媒種
類あるいは脱脂加熱パターンに合わせて適宜決めること
ができる。

【００１４】

【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、鉱
物油等の溶媒を含む希土類永久磁石の成形体を焼結する
焼結炉において、焼結炉を二つの脱脂室と焼結室と冷却
室に仕切る連続炉にし、かつ脱脂室におけるワーク加熱
を、気化溶媒が接触しても分解しないような温度に制御
した面加熱式としたので、気化した溶媒が発熱体に接触
しても溶媒が分解し、分解物がワークに付着するような
ことはなく、次の焼結室でワークが高温に加熱されて
も、分解物によりワーク材質が炭化又は酸化等を起こす
ことはなく、高特性の希土類永久磁石が製造できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施例を示す全体構成図

【図２】本発明の連続式焼結装置におけるワーク温度変
化例

【符号の説明】

１、２…脱脂室、 ３…焼結室、 ４…冷却室、 ５、
６、７、８、９…扉 １２、２２、３２…ヒータ、 １３、２３…内壁、１
７、２７、３５、４３…ロータリポンプ、 １００…ワ
ーク収納容器

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 脱脂室と焼結室を扉を介して密封的に連
   接した連続式焼結炉において、脱脂室が壁面と成形体の
   搬入用扉及び搬出用扉により密封空間を形成し、前記壁
   面自体が加熱源を成していることを特徴とする連続式焼
   結炉。
2. 【請求項２】 前記脱脂室と焼結室はそれぞれ加熱手段
   と真空排気手段を有し、かつ脱脂室は、前記壁面とその
   外周に設けた外殻間に加熱手段を配設し、加熱手段によ
   り発熱した壁面が、密封空間にセットされた脱脂対象品
   の加熱源であることを特徴とする請求項１記載の連続式
   焼結炉。
3. 【請求項３】 焼結対象品が、希土類永久磁石用微粉を
   溶媒に分散させた混合物を成形して得た成形体であり、
   溶媒が鉱物油あるいは植物油あるいは合成油あるいはこ
   れらの混合油のいずれか一種であり、脱脂室の壁面表面
   温度が３００〜４００℃である請求項１又は２に記載の
   連続式焼結炉。