JPH09110980A - トリフルオロプロピレンオキシド重合体の製造方法 - Google Patents

トリフルオロプロピレンオキシド重合体の製造方法

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JPH09110980A
JPH09110980A JP29064795A JP29064795A JPH09110980A JP H09110980 A JPH09110980 A JP H09110980A JP 29064795 A JP29064795 A JP 29064795A JP 29064795 A JP29064795 A JP 29064795A JP H09110980 A JPH09110980 A JP H09110980A
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JP
Japan
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reaction
formula
trifluoropropylene oxide
tfpo
trifluoropropylene
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JP29064795A
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Tokio Hagiwara
時男 萩原
Tadashi Narita
正 成田
Hiroshi Hamana
浩 浜名
Junko Matsui
順子 松井
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Eneos Corp
Original Assignee
Japan Energy Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 トリフルオロプロピレンオキシドを開環重合
し、それを繰り返し単位とするポリエ−テル型重合体を
高収率、且つ簡便に製造する方法を提供する。 【解決手段】 下記の式(I): 【化1】 (式中、n は、数平均の繰り返し数を示し、 2 〜 1
00 である)で示されるトリフルオロプロピレンオキ
シド重合体を製造する際し、下記の式(II): 【化2】 で示されるトリフルオロプロピレンオキシドをフッ化セ
シウムの存在下で重合させることを特徴とする重合体の
製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、トリフルオロプロ
ピレンオキシドを開環重合させ、トリフルオロプロピレ
ンオキシドオリゴマ−を製造する方法に関する。即ち、
潤滑油、高分子材料改質剤、或いは、機能性材料の製造
に用いる中間体として有用な含フッ素エ−テルオリゴマ
−の一つである、トリフルオロプロピレンオキシドオリ
ゴマ−の製造方法に関する。特には、中間体として適す
る重合度のオリゴマ−、具体的には低分子量のオリゴマ
−を、重合開始剤とするフッ化セシウムの存在下に製造
する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】トリフルオロプロピレンオキシドを重合
して得られるエ−テルオリゴマ−は、該ポリエ−テルの
繰返し単位に化学的に安定なトリフルオロメチル基を持
ち、その含フッ素基に伴いユニ−クな物性を示すため、
潤滑剤、塗料、接着剤、改質剤等の製造に用いる中間体
として有用である。トリフルオロプロピレンオキシドを
開環して重合体を得るための重合開始剤としては、塩化
第二鉄、塩化アルミニウム、水酸化カリウム (Floyd D.
Trischler, Amer. Chem. Soc., Div. Polym. Chem. Pr
eprint, 8, 491 (1967) を参照)が従来より知られてい
た。本願出願人は、重合開始剤として、種々の有機金属
試薬、例えば、アルカリ金属アルコキシド(特開平2−
1230号公報、特公平7−2837号公報を参照)、
有機亜鉛化合物(特開平4−227723号公報を参
照)、有機アルミニウム化合物(特開平5−51445
号公報を参照)などを使用できることを明らかにし、こ
れら重合開始剤を利用するトリフルオロプロピレンオキ
シドの重合方法を、既に提案した。特に、種々の末端官
能基を有するトリフルオロプロピレンオキシドオリゴマ
−を製造する方法として、アルカリ金属水酸化物あるい
はアルカリ金属アルコキシドと、該末端官能基となる種
々のアルコ−ルの存在下、トリフルオロプロピレンオキ
シドを重合させることにより、効率よく目的のオリゴマ
−が得られる方法複数をも提案している(特開平6−2
5403号公報、特開平5−310910号公報、特開
平6−80602号公報、特開平6−80601号公
報、特開平6−263868号公報などを参照)。
【0003】既に、多くのトリフルオロプロピレンオキ
シドオリゴマ−を製造する方法が提案されているが、潤
滑剤、塗料、接着剤、改質剤等の製造に用いる中間原料
に適する重合度のオリゴマ−、即ち低分子量のトリフル
オロプロピレンオキシドオリゴマ−を作製するに有効且
つ簡便な方法の開発は、なお望まれている。特には、中
間原料に適する、例えば、オキシドに由来する水酸基を
末端に残すポリエ−テル型オリゴマ−、即ち、係るオリ
ゴマ−の少なくとも一つの末端に水酸基を持ち、低分子
量のオリゴマ−などを効率よく製造する新規な方法が望
まれている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の解決しようと
する課題は、潤滑剤、塗料、接着剤、改質剤等の製造に
用いる中間原料に適する重合度のトリフルオロプロピレ
ンオキシドオリゴマ−を製造する新規な方法を提供する
ことである。即ち、本発明の目的は、係る中間原料に適
するポリエ−テル型オリゴマ−、例えば、係るオリゴマ
−の少なくとも一つの末端に水酸基を持ち、低分子量の
オリゴマ−を効率よく、簡便且つ高い再現性で製造でき
る新たな方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、潤滑油、
高分子材料の改質剤、或はそれらの製造に用いる中間原
料等の用途に適するトリフルオロプロピレンオキシド重
合体を、トリフルオロプロピレンオキシドの開環重合に
より得る方法について検討を進めた結果、フッ化セシウ
ムを重合開始剤として用いて、トリフルオロプロピレン
オキシドを重合することができ、また、得られる生成物
として、低分子量のトリフルオロプロピレンオキシド重
合体をも得ることができることを見出し、本発明を完成
するに到った。なお、開始剤にフッ化セシウムを用い
て、トリフルオロプロピレンオキシドを重合した例の報
告の存在を発明者らは知らない。
【0006】即ち、本発明は、下記の(1)の項に記載
される方法である。 (1) 下記の一般式(I):
【化3】 (式中、n は、数平均の繰り返し数を示し、n= 2
〜 100 である。)で示されるトリフルオロプロピレ
ンオキシド重合体を製造する際し、下記の式(II):
【化4】 で示されるトリフルオロプロピレンオキシドをフッ化セ
シウムの存在下で重合させることを特徴とするトリフル
オロプロピレンオキシド重合体の製造方法。
【0007】なお、上記するトリフルオロプロピレンオ
キシド重合体は、式(II)で示されるトリフルオロプロ
ピレンオキシド(以降、TFPOと略記する: 3,3,3-
トリフルオロ-1,2-エポキシプロパン)の開環で得られ
る下記の式(III):
【化5】 で示される繰り返し単位からなるポリエ−テル型の重合
体である。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明の方法における出発原料、
式(II)で示される単量体TFPOは、トリフルオロア
セトン(1,1,1-トリフルオロ-2-プロパノン)を臭素化
して得られるブロモトリフルオロアセトン(3-ブロモ-
1,1,1-トリフルオロ-2-プロパノン)を水素化アルミニ
ウムリチウムで還元して、ブロモトリフルオロイソプロ
ピルアルコ−ル(3-ブロモ-1,1,1-トリフルオロ-2-プロ
パノ−ル)を調製し、苛性ソ−ダで処理し、閉環する方
法、或は、トリフルオロプロピレン(3,3,3-トリフルオ
ロプロペン)を微生物を用いて酸化する方法(特公昭6
1−14798号公報、特開昭61−202697号公
報などを参照)等により製造することができる。なお、
後者の微生物の酵素反応(特公昭61−14798号公
報、特開昭61−202697号公報に記載の方法)に
より調製されるTFPOは、光学活性体であり、その絶
対配置は、(S)−体のものである。
【0009】一方、重合開始剤として用いるフッ化セシ
ウムは、単量体TFPOに対して触媒量を用いればよ
い。重合体における繰り返し数 n を数平均で 100
を超えない範囲にする為には、 0.1 〜 10 モル%の範
囲に、特には、 0.5 〜 5 モル%の範囲とするのが好ま
しい。TFPOに対する溶解度を超える量のフッ化セシ
ウムを用いる場合には、フッ化セシウムが可溶な溶媒を
用いて希釈して、反応液中に均一に溶解せしめ、単量体
TFPOに作用させるとよいのは勿論である。
【0010】反応は、無溶媒で行うことができるし、溶
媒を用いる場合には、 1,2-ジメトキシエタン(DM
E)、テトラヒドロフラン(THF)等の非プロトン性
有機溶媒を用いて行なうのがよい。即ち、係る重合反応
において、反応性を示さない溶媒であり、フッ化セシウ
ム並びに単量体TFPOの溶解が可能な溶媒を用いるこ
とが好ましい。更には、溶媒並びに原料の単量体TFP
Oに残留又は混入する水分を除去する処理を行い用いる
とよいのは勿論である。具体的には、原料のTFPOは
窒素気流下で蒸留により精製して用いるとよく、溶媒も
窒素気流下で蒸留した後用いるとよい。加えて、反応容
器中に、予め精製処理を施した原料、溶媒、フッ化セシ
ウムを所定量入れる際、不活性ガス、例えば、乾燥した
窒素ガス、アルゴンガスなどで置換し、密閉する、或
は、水分の侵入を抑える目的で、これら不活性ガス気流
中で、重合反応を行うとよい。
【0011】反応温度は、反応系の流動性が保持される
温度範囲であり、密閉系にて反応を行う場合には、単量
体TFPOの沸点 40 ℃を超える温度を用いてもよいの
は、勿論のことである。一方、非密閉系にて反応を行う
場合には、単量体TFPOの蒸散が甚だしくならない温
度の範囲に選択するのが好ましい。通常、密閉系にて反
応を行う場合には、20 〜 200 ℃の範囲に、より好まし
くは、40 〜 120 ℃の範囲に選択するとよい。また、反
応温度は、用いる重合開始剤フッ化セシウムのTFPO
に対する量比に依存して選択するものであるが、室温
(30 ℃程度)より充分に低い温度、例えば、10 ℃以下
では、反応が開始しない程度のフッ化セシウム使用量と
して、加熱により反応を開始する構成とするのが好まし
い。従って、この反応条件においては、反応液の温度を
室温(30 ℃程度)以下の、当初触媒を添加した温度に
冷却することにより、重合反応の更なる進行を有効に抑
えることができる。
【0012】重合反応は、反応液の温度を低下させる、
又は溶媒を更に加えて原料濃度を低下させるなどの操作
を行い、更なる進行を抑えて、次いで、水又は酸水溶液
等の停止剤を反応液に添加し停止する。この停止操作に
伴い、生成物ポリエ−テルの一つの末端は、水又は酸水
溶液から供給されたプロトン(H+)により、エポキシド
の酸素に由来する水酸基等で終端される。或いは、水、
酸水溶液のようなプロトン(H+)の供給源に換えて、ハ
ロゲン化アルキル等のアルキル基など炭化水素基を供与
できる化合物を添加して停止する際には、水酸基に換え
て、対応するアルコキシ基などのエ−テル構造で終端さ
れる。反応停止後、生成物ポリエ−テル、即ちトリフル
オロプロピレンオキシド重合体は、ジエチルエ−テル、
トルエンなどの有機溶媒で抽出する。その後、有機相か
ら抽出に用いた溶媒を留去し、減圧乾燥することによ
り、目的とするトリフルオロプロピレンオキシド重合体
を回収することができる。
【0013】重合反応の過程を詳細に述べるならば、下
記する過程を経ると考えられる。先ず、重合開始剤とな
るフッ化セシウムは、式(II)で示される単量体TFP
Oの1位の炭素原子に作用して、該1位の炭素原子と酸
素原子間の結合を開裂させてエポキシ環の開環を行う。
この素過程を模式的に示すと、次ぎの反応式(A)にて
表現することができる。
【化6】
【0014】次いで、生成するアルコキシド型の酸素原
子(−CH(CF3)−O- )が、求核的に他のTFP
O分子の1位の炭素原子を攻撃することにより、重合が
進行する。以降の重合においても、エポキシ環の開環
は、該1位の炭素原子と酸素原子間の結合開裂により行
われるので、トリフルオロメチル基の結合する不斉中
心、即ち2位の炭素原子上の立体配置は保持されること
になる。従って、原料の単量体TFPOに、光学活性体
を用いると、重合反応においてラセミ化は起きず、生成
物のポリエ−テルの光学活性体となる。加えて、生成物
のポリエ−テルは、式(III)で示される繰り返し単位
が、式(I)で示される線状単独重合体の主骨格構造を
形成したものとなる。
【0015】開環重合が進み、単体TFPOの残留量が
僅かとなると、ポリエ−テル鎖の反応末端が、例えば、
フッ化セシウム由来のカチオン種(Cs+)で終端された
中間生成物等になる。反応の停止は、例えば、水又は酸
水溶液を添加し、該中間生成物に存在する、アルコキシ
ド型の酸素原子(−CH(CF3)−O-…Cs+ )をア
ルコ−ル型の水酸基(−CH(CF3)−OH )に変換
することで行われる。或いは、ハロゲン化アルキルなど
R-X (Rは、アルキル基等の炭化水素基を示し、X
は、ハロゲン原子を示す。)型の停止剤を添加すること
で、エ−テル型の(−CH(CF3)−OR )に変換す
ることで行われる。
【0016】一方、他端では、例えば、連鎖移動反応に
よる、H+の脱離に伴い、炭素-炭素二重結合 C=C が
形成され、(−CH(CF3)−CH2−F )から誘導
された原子団(−C(CF3)=CH2)への変換がなされ
る。なお、この連鎖移動反応による遊離H+の生成を伴
う、原子団(−C(CF3)=CH2)への変換は、温度が
高いほど起こり易く、反応中の加熱時に徐々に進む。ま
た、前記の原子団(−C(CF3)=CH2)以外にも、反
応停止時まで(−CH(CF3)−CH2−F )の形態
を保持する中間体が残余する際には、この原子団が残基
する。
【0017】最終生成物の重合体ポリエ−テルの繰り返
し数nの分布は、上記する中間生成物のポリエ−テルの
数平均繰り返し数n1の値付近に主要な極大を持つこと
になる。この中間生成物のポリエ−テルの数平均繰り返
し数n1は、反応温度及び反応時間に主に依存するもの
であるが、単体TFPOに対する重合開始剤フッ化セシ
ウムの使用量にも依存し、通常、フッ化セシウムの使用
量を増すと、数平均繰り返し数n1は減少する。具体的
には、フッ化セシウム1分子当たりの単体TFPOの分
子数を上限値とし、主に、反応温度が高くなると該n1
の値は大きくなり、付随的に、反応時間が長くなると該
1の値は大きくなる一般的な傾向がある。
【0018】しかしながら、前述の連鎖移動反応によ
る、末端基の原子団(−C(CF3)=CH2)への変換
は、反応温度が高いほど、その頻度が高くなる。それに
伴い生成、遊離するH+が、アルコキシド型の酸素原子
(−CH(CF3)−O- )と結合を形成すると、重合
反応が終止する。この副次的反応の好ましからざる寄与
により、反応温度を高くし、重合反応の反応速度を増す
とも、重合体ポリエ−テルの繰り返し数nは必ずしも増
さないことがある。従って、重合体ポリエ−テルの繰り
返し数nをより大きな値とするためには、該連鎖移動反
応による遊離H+の生成を抑制するべく、反応温度を低
くするともに、TFPOに対する重合開始剤フッ化セシ
ウムの使用量を減ずるとよい。
【0019】なお、最終生成物の重合体ポリエ−テルの
構造の確認は、その繰り返し単位、即ち、式(III)の
構造に由来する、核磁気共鳴スぺクトル:1H−NM
R、13C−NMR、19F−NMRに表れる、単体TFP
Oに類似するスぺクトル、更には、赤外吸収スペクトル
の結果をも参考にして行うことができる。また、繰り返
し数nの分布、その数平均は、GPC法でポリスチレン
換算値として算定される、ピ−ク分子量により評価する
ことができるのは勿論のことである。具体的には、該ポ
リエ−テルの構造は、例えば、それに含まれる繰り返し
単位の式(III):
【化7】 に由来する核磁気共鳴スぺクトル:1 H−NMR δ ppm: 3.7 〜 4.4 (-CH(CF3)-CH2-,-CH
(CF3)-CH2 -)13 C−NMR δ ppm: 71.7 (-CH(CF3)-CH2 -), 79 (q,
-CH(CF3)-CH2-),119 〜 132 (q, -CF3)19 F−NMR δ ppm: 0.8 (-CF3) これらの核磁気共鳴スぺクトルを基に決定することがで
きる。
【0020】該ポリエ−テルは、その末端基として、種
々の構造をとることができるが、それら末端基の構造
も、分光学的な測定において決定することができる。例
えば、次ぎの式(IV)或いは式(V)の原子団が存在
すると、式(IV):
【化8】 に由来する核磁気共鳴スぺクトル:1 H−NMR δ ppm: 4.6 (-CH(CF3)-CH2-), 3.8〜 4.
4 (-CH(CF3)-CH2 -)5.5 (-OH)13 C−NMR δ ppm: 71.7 (-CH(CF3)-CH2 -), 71 (q,
-CH(CF3)-CH2-),119 〜 132 (q, -CF3)19 F−NMR δ ppm: -1.2 (-CF3) 式(V):
【化9】 に由来する核磁気共鳴スぺクトル:1 H−NMR δ ppm: 4.9 and 5.0 (-C(CF3)=CH2 )13 C−NMR δ ppm: 90 (-C(CF3)=CH2 ), 150.5 (q,
-C(CF3)=CH2),120 〜 133 (q, -CF3)19 F−NMR δ ppm: 4.1 (-CF3) これらの核磁気共鳴スぺクトルを基に、これら末端の原
子団を決定することができる。加えて、赤外吸収スペク
トルの測定結果には、 IR : 〜 1100 (C-F), 〜 3450 (OH), 〜 1660 (C=C)
cm-1 の特徴的な吸収が見られ、前記の構造決定を補完するこ
とができる。
【0021】本発明の方法では、重合体の繰り返し数
は、重合開始剤フッ化セシウムの使用量により予め決め
られる上限と、反応温度の制御により、低分子量のトリ
フルオロプロピレンオキシド重合体を再現性よく、効率
的に作製することができる。加えて、生成する重合体ポ
リエ−テルの一つの末端に、水酸基を有するものとする
こともでき、中間原料として種々の高分子化合物製造に
利用することが容易である。或いは、上記する反応の停
止を行うことなく、得られた中間生成物の重合体ポリエ
−テルをそのまま、中間原料として種々の高分子化合物
製造に利用することも容易である。なお、重合体の繰り
返し数nは、式(III)で示される繰り返し単位から誘
導される両端も含めて算定することは勿論のことであ
る。
【0022】以下、本発明の方法に付いて、その実施の
形態を、具体的な例を挙げて詳しく説明する。
【0023】
【実施例1】本例では、トリフルオロプロピレンオキシ
ド(TFPO)として、3,3,3-トリフルオロプロピレン
を特公昭61−14798号公報記載の方法により微生
物で酸化して得られた光学活性を有するものを用いた。
TFPOは、予め窒素気流下で蒸留して精製モノマ−を
得た。なお、該TFPOの光学純度は、75 % e.e.であ
り、その絶対配置は、(S)体である。
【0024】上記するTFPO精製モノマ− 4.0 ml
(46.7 mmol)と、重合開始剤としてフッ化セシウム 0.
14 g (0.9 mmol)を窒素置換したアンプルに充填し
た。アンプルを密閉後、80℃で47時間重合を行なっ
た。温度を下げて、反応終了後、アンプル管を開封し、
反応物をエ−テルに溶解させ、食塩水で数回洗浄した。
その後、このエ−テル溶液を、無水Na2SO4で乾燥し
た。溶媒を留去し、室温で真空乾燥し、生成物である白
色ロウ状固体 4.05 g を回収した。単体TFPOに対す
る収率(TFPOの仕込み重量に対する、回収した生成
物の重量%)は、77% であった。この生成物は、下記
1H−NMR、13C−NMR、19F−NMR、並びに
赤外吸収スペクトルの分析結果により、上記する式(II
I)の繰り返し単位からなるCF3基を有するポリエ−テ
ルであることが確認された。また、末端には、上記する
式(IV)並びに式(V)の構造をそれぞれ持つことが
判明した。
【0025】1 H-NMR〔(CD3)2CO〕δ ppm:3.7 〜 4.4 (-O-CH(CF3)-C
H2-,-O-CH(CF3)-CH2 -),3.8 〜 4.4 (HO-CH(CF3)-CH2 -),
4.6 (HO-CH(CF3)-CH2-), 5.5 (HO-),4.9 & 5.0 (-O-C(C
F3)=CH2 )13 C-NMR〔(CD3)2CO〕δ ppm:71.7 (-O-CH(CF3)-CH2 -),
79 (q, -O-CH(CF3)-CH2-), 119 〜 132 (q, CF3),70.9
(q, HO-CH(CF3)-CH2-),71.7 (HO-CH(CF3)-CH2 -), 119
〜 132 (q, CF3),90 (-O-C(CF3)=CH2 ),150.5 (q, -O-C
(CF3)=CH2),120 〜 133 (q, CF3)19 F-NMR〔(CD3)2CO〕δ ppm:0.8 (-O-CH(CF3 )-CH2-),-
1.2 (HO-CH(CF3 )-CH2-),4.1 (-O-C(CF3 )=CH2) IR (neat) : 1100 (C-F), 3450 (OH), 1660 (C=C) c
m-1
【0026】また、下記する条件のGPC法で評価した
ピ−ク分子量は、ポリスチレン換算値で2.7×103
であった。GPC法の分析条件 カラム:Shodex KF-80M ×2本 溶離液:THF, 流量 0.1 ml/min
【0027】
【実施例2】実施例1に用いたと同じ、精製TFPOモ
ノマ− 2.0 ml (23.3 mmol)と、重合開始剤としてフ
ッ化セシウム 0.07 g (0.5 mmol)を用いた。これを、
溶媒として、窒素気流下で蒸留した 1,2-ジメトキシエ
タン 8.0 ml とともに、窒素置換したアンプルに充填し
た。アンプルを密閉後、80 ℃ で 47 時間重合を行なっ
た。温度を下げ、反応を停止した後、アンプル管を開封
し、反応物をエ−テルに溶解させ、食塩水で数回洗浄し
た。その後、この有機層を無水Na2SO4で乾燥した。
溶媒を留去し、室温で真空乾燥し、生成物を濁りを帯び
た茶色(茶濁)オイル 2.00 g として回収した。単体T
FPOに対する収率(TFPOの仕込み重量に対する、
回収した生成物の重量%)は、77 % であった。この
生成物も、1H−NMR、13C−NMR、19F−NM
R、並びに赤外吸収スペクトルの分析結果は、上記する
実施例1とほぼ同じものであり、上記する式(III)の
繰り返し単位からなるCF3基を有するポリエ−テルで
あることが確認された。
【0028】また、実施例1に記載する条件のGPC法
で評価したピ−ク分子量は、ポリスチレン換算値で 1.5
×103であった。その他に、ポリスチレン換算値で
4.3×103 に、副次的なピ−クが観測された。
【0029】
【実施例3、4】重合開始剤フッ化セシウムの使用量
を、実施例3では、 0.03 g (0.2 mmol)に、実施例4
では、 0.18 g (1.2 mmol)に換えて、他条件は実施例
2と同様にして、それぞれ 51 時間重合を行なった。以
降、実施例2と同じ処理により、生成物を回収した。生
成物は、分析の結果より、何れも上記する式(III)の
繰り返し単位からなるポリエ−テルであることが確認さ
れた。なお、収率、及びGPC法で評価したピ−ク分子
量の結果は、表1に示す。また、ポリスチレン換算値で
1.5 ×103の主ピ−クに加えて、副次的なピ−ク値も
併せて示す。
【0030】
【実施例5】溶媒として、1,2-ジメトキシエタン(DM
E)に換えて、テトラヒドロフラン(THF)を用い、他の
条件は、実施例2と同様にして、 48 時間重合を行なっ
た。以降、実施例2と同じ処理により、生成物を回収し
た。生成物は、分析の結果、何れも上記する式(III)
の繰り返し単位からなるポリエ−テルであることが確認
された。なお、収率、及びGPC法で評価したピ−ク分
子量の結果は、表1に示す。また、ポリスチレン換算値
で 1.5 ×103の主ピ−クに加えて、副次的なピ−ク値
も併せて示す。
【0031】表1には、上記する実施例1〜5の結果、
並びにその反応条件を併せて示してある。なお、表1
中、フッ化セシウムの使用量は、TFPO仕込み量に対
するモル%で表記し、収率は、仕込みTFPOの重量に
対する回収重合物の重量%で記載してある。
【0032】
【表1】
【0033】
【発明の効果】本発明の方法は、フッ化セシウムを重合
開始剤に用いて、トリフルオロプロピレンオキシドを開
環重合するので、その繰り返し単位にトリフルオロメチ
ル基を有する、ポリエ−テル型重合体を高収率、且つ簡
便に得られる利点を持つ。加えて、生成するポリエ−テ
ルの少なくとも一末端に、例えば、水酸基を残基したも
のとすることもでき、潤滑油、高分子材料改質剤、もし
くは機能性材料の中間体など各種用途に適する低分子量
の製品を得る方法として大きな利用価値が持つ。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記の一般式(I): 【化1】 (式中、n は、数平均の繰り返し数を示し、n= 2
    〜 100 である。)で示されるトリフルオロプロピレ
    ンオキシド重合体を製造する際し、下記の式(II): 【化2】 で示されるトリフルオロプロピレンオキシドをフッ化セ
    シウムの存在下で重合させることを特徴とするトリフル
    オロプロピレンオキシド重合体の製造方法。
JP29064795A 1995-10-13 1995-10-13 トリフルオロプロピレンオキシド重合体の製造方法 Pending JPH09110980A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
GB2582364A (en) * 2019-03-21 2020-09-23 Mexichem Fluor Sa De Cv Methods
US11377432B2 (en) 2017-04-27 2022-07-05 Mexichem Fluor S.A.De C.V. Method for preparing a tetrafluoro-1,2-epoxypropane

Cited By (3)

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US11377432B2 (en) 2017-04-27 2022-07-05 Mexichem Fluor S.A.De C.V. Method for preparing a tetrafluoro-1,2-epoxypropane
GB2582364A (en) * 2019-03-21 2020-09-23 Mexichem Fluor Sa De Cv Methods
US11897832B2 (en) 2019-03-21 2024-02-13 Mexichem Fluor S.A. De C.V. Method for preparing partially fluorinated alcohol

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