JPH09109609A - タイヤゴム補強用スチールコード及びタイヤ - Google Patents

タイヤゴム補強用スチールコード及びタイヤ

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JPH09109609A
JPH09109609A JP7270000A JP27000095A JPH09109609A JP H09109609 A JPH09109609 A JP H09109609A JP 7270000 A JP7270000 A JP 7270000A JP 27000095 A JP27000095 A JP 27000095A JP H09109609 A JPH09109609 A JP H09109609A
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JP
Japan
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steel cord
wire
steel
tire
corrosion
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JP7270000A
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English (en)
Inventor
Shinji Sakashita
真司 阪下
Takenori Nakayama
武典 中山
Nobuhiko Ibaraki
信彦 茨木
Kenji Ochiai
憲二 落合
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Kobe Steel Ltd
Original Assignee
Kobe Steel Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 空気タイヤ用の補強材として使用される腐食
疲労特性及び耐食性に優れるタイヤゴム補強用スチール
コードを提供する。 【解決手段】 線径が 0.4mmφ以上の素線からなる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車、バスある
いはトラック等の輸送機用のラジアルタイヤやバイアス
タイヤ等の空気タイヤ用の補強材として使用される腐食
疲労特性及び耐食性に優れたスチールコード、及びスチ
ールコードにより補強されたタイヤに関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】自動車、バスあるいはトラック等のタイ
ヤの補強材料の要求特性として、強度、弾性率、耐熱
性、耐疲労性、耐食性、寸法安定性、接着性、コスト等
が挙げられ、現在それらのトータルバランスの最も優れ
るスチールコードが多く使用されている。
【0003】上記スチールコードは、線径の細い素線を
複数本撚り合わせて形成され、その素線としてはJIS SW
RS72A やSWRS82A 等の炭素鋼が使用されている。スチー
ルコードは通常以下の手順で製造されている。すなわ
ち、所定の化学組成を有する鋼を熱間圧延した後必要に
応じて調整冷却し、得られた線材を一次伸線加工、パテ
ンティング処理、二次伸線加工、再度のパテンティング
処理及びゴムとの接着性を向上させるブラスめっき処理
等を順次施し、最終的に湿式伸線加工を加えて線径0.10
mmφ〜0.50mmφの極細鋼線とし、これをタイヤの種類に
応じて複数本撚り合わせてスチールコードとしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記スチー
ルコードで補強されたタイヤにおいては、タイヤゴム中
の水分やタイヤゴムの亀裂部から侵入する水分その他の
環境物質によりスチールコードが腐食疲労や全面腐食な
どの腐食損傷を受け、耐久寿命に影響を及ぼすことが懸
念されており、このような問題を改善しタイヤ寿命を長
くする方法として、補強材であるスチールコードに窒化
処理を施すことにより腐食疲労特性を向上させる方法
(特公平 3− 44923号公報)、あるいは補強材であるス
チールコードの素線の化学成分を適正化することにより
耐食性を向上させる方法(特公平 3−23674号公報)等
が提案されている。
【0005】上記提案方法で製造されたスチールコード
を使用することにより腐食損傷はある程度は低減され、
タイヤの耐久寿命を長くし得る期待が持てる。しかし、
安全性確保の観点からはまだ十分とは言えず、上記特公
平 3− 44923号公報に提案の方法では、タイヤ中でのフ
レッティング摩耗により窒素の拡散層が消失し、効果が
なくなるという問題がある。また、特公平 3− 23674号
公報に提案の方法でも、タイヤ補強材として要求される
耐久寿命は必ずしも得られず、更に優れた耐食性、腐食
疲労特性を有するスチールコードの開発が望まれてい
る。
【0006】本発明は、上記の事情を基になされたもの
であって、その目的は、空気タイヤ用の補強材として使
用される腐食疲労特性及び耐食性に優れるタイヤゴム補
強用スチールコード、及びこのスチールコードにより補
強された耐久性に優れるタイヤを提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
め、本発明に係るタイヤゴム補強用スチールコードは、
線径が 0.4mmφ以上の素線からなるものである。
【0008】そして、上記タイヤゴム補強用スチールコ
ードにおいては、素線の化学成分がC:0.50〜1.30wt
%、Si:2.00wt%以下、Mn:1.00wt%以下、Cu:0.05〜
0.50wt%、残部Fe及び不可避不純物よりなる素線であっ
てもよいし、更にこの化学成分に加えてLa: 0.001〜
0.050wt%、Ce: 0.001〜 0.050wt%の内の少なくとも
1種、又は/及び、Ti: 0.001〜0.20wt%、 V:0.01〜
0.50wt%、Nb: 0.001〜0.50wt%、Cr:0.05〜3.00wt
%、Mo:0.01〜0.50wt%、 W:0.01〜0.50wt%、Ni:0.
05〜1.00wt%、Co:0.01〜0.50wt%、よりなる群の内1
種以上を含む素線であってもよい。
【0009】また、上記タイヤゴム補強用スチールコー
ドにおいては、素線の表面にCu:55.0〜70.0wt%、残部
Zn及び不可避不純物よりなる表面処理層、又は/及び、
硫化物を形成する元素の少なくとも1種を 0.1wt%以上
含む表面処理層を有するものであってもよい。
【0010】そして更に、前記表面処理層中にSn: 1.0
〜15.0wt%、又は/及び、Cr:0.01〜0.50wt%、 W:0.
01〜0.50wt%、Mo:0.01〜0.50wt%、Ni:0.01〜0.50wt
%、Co:0.01〜0.50wt%、Al: 0.001〜0.50wt%、より
なる群の内1種以上を含むものであってもよい。
【0011】また、本発明に係るタイヤは、上述したタ
イヤゴム補強用スチールコードにより補強されたもので
ある。
【0012】以下、本発明の構成並びに作用について詳
細に説明する。これまでの鋭意検討の結果、本発明者ら
はスチールコードの耐食性と電気化学的特性との関係に
関して、次のような知見を得た。すなわち、平板状電極
表面での溶存酸素の還元反応挙動とは異なり、フィラメ
ントのような円柱状の電極の場合、溶存酸素の拡散過程
は円柱の直径に依存する。つまり、円柱状電極表面での
拡散限界電流密度iは円柱の半径に依存し、円柱の半径
r0と近似的に式の関係が成立する。ただし、nは電荷
数、Fはファラデー定数、Dは溶存酸素の拡散定数、C
* は沖合いの酸素濃度、δは拡散層の厚さである。
【数1】
【0013】式から明らかなように、拡散限界電流密
度は線径に依存し、その値は線径が小さくなると大きく
なる。即ち、鉄の腐食速度は拡散限界電流密度で決定さ
れ、しかも線径が大きいほど腐食速度は小さくなること
を意味する。これらの効果を得るためには、線径を 0.4
mmφ以上とする必要がある。また、式においてr0が大
きくなると分母はδに近づくことは明らかであり、本発
明者らの研究結果によれば、線径を 0.4mmφ以上とすれ
ば式の分母はδでほぼ近似できる、即ち線径依存性が
なくなることが分かった。つまり、線径 0.4mmφ以上で
は耐食性の線径依存性はない。しかしながら、素線の延
性や表面に形成される皮膜性状によりもたらされる耐食
性を考慮すれば 0.5mmφ以上がより望ましく、 0.6mmφ
以上がさらに望ましい。また、タイヤゴムの補強材とし
て用いるには、素線にしなやかさが要求されるため、線
径は 1.5mmφ以下とすることが望ましい。
【0014】一方、上述の如き線径の素線であっても、
さらにその鋼組成として化学成分をC:0.50〜1.30wt
%、Si:2.00wt%以下、Mn:1.00wt%以下、Cu:0.05〜
0.50wt%をベースとしたものに限定すると、スチールコ
ードとしての機械的性質を満たすとともに、腐食速度が
上記の拡散限界電流密度に大きく支配されることを見出
したもので、その化学成分の限定理由を以下に説明す
る。
【0015】C:0.50〜1.30wt%について、 Cは鋼の強
度を高める元素であり、所定の強度を得るためには0.50
wt%以上、好ましくは0.70wt%以上添加する必要があ
る。しかし、多く添加すると伸線加工時もしくは撚線加
工時に断線が多発すること、及び Cは耐食性を劣化させ
る元素であることから、添加量の上限は1.30wt%以下と
することが必要であり、好ましくは1.00wt%以下がよ
い。
【0016】Si:2.00wt%以下について、Siは鋼の脱酸
に有効であり、生成錆を緻密化して耐食性を向上させ、
フェライト中に固溶し強度を高める元素であるが、多く
添加すると脱スケール性や加工性を害するため2.00wt%
以下とした。特に脱スケール性を考慮する場合には1.00
wt%以下が好ましく、より好ましくは0.30wt%以下がよ
いが、0.10wt%以下では前記耐食性向上効果が期待でき
なくなる。
【0017】Mn:1.00wt%以下について、MnもSiと同様
に脱酸剤として有効であり、鋼の焼き入れ性を増大させ
る効果があり、鋼中の Sとの MnS生成やMn偏析による鋼
線の脆化や加工性の観点より1.00wt%以下とするが、前
記観点より好ましくは0.30〜0.70wt%の範囲がよい。
【0018】Cu:0.05〜0.50wt%について、Cuは緻密で
安定な錆層を鋼線表面に形成させる元素であり、耐食性
向上に有効な元素である。この効果を得るためには0.05
wt%以上添加することが必要であるが、0.50wt%を越え
ると結晶粒界に偏析し、分塊工程時や熱間圧延時の割れ
の原因となる。
【0019】また、上記化学成分の他にLa: 0.001〜
0.050wt%、Ce: 0.001〜 0.050wt%の内の少なくとも
1種、又は/及び、Ti: 0.001〜0.20wt%、 V:0.01〜
0.50wt%、Nb: 0.001〜0.50wt%、Cr:0.05〜3.00wt
%、Mo:0.01〜0.50wt%、 W:0.01〜0.50wt%、Ni:0.
05〜1.00wt%、Co:0.01〜0.50wt%、よりなる群の内1
種以上を添加してもよいが、その化学成分の限定理由を
以下に説明する。
【0020】La: 0.001〜 0.050wt%、Ce: 0.001〜
0.050wt%の内の少なくとも1種を添加するについて、L
a、Ceは共に溶解することにより塩基性を示し鋼の腐食
生成物の加水分解によるpHの低下を緩和する、つまり腐
食促進物質である塩素イオンの濃縮を抑制するため鋼の
耐食性向上に有効な元素である。この効果を得るために
は 0.001wt%以上添加することが必要である。しかし
0.050wt%を越えて添加すると介在物となるため、鋼の
伸線加工性を害する。これらの元素はミッシュメタルと
して添加することももちろん可能である。
【0021】Ti: 0.001〜0.20wt%について、Tiは結晶
粒微細化による鋼の高強度化と耐食性向上に有効な元素
である。また、炭化物や硫化物を形成し、これらが拡散
性水素のトラップサイトとなるため、耐水素脆性の向上
をもたらす。これらの効果を得るためには 0.001wt%以
上の添加が必要である。しかし0.20wt%を越えて添加す
ると析出炭化物量が多くなり、伸線加工性を害する。
【0022】V:0.01〜0.50wt%について、 VはTiと同
様に鋼の結晶粒微細化による高強度化作用があり、マト
リックス内に微細な炭化物を形成し、Crの炭化物が粒界
に析出するのを防ぐ作用も有する。このためCrによる伸
線加工性の劣化をなくす作用がある。これらの効果を得
るためには0.01wt%以上の添加が必要であるが、0.50wt
%を越えて添加すると伸線加工性を劣化させる。
【0023】Nb: 0.001〜0.50wt%について、NbはTiと
同様に鋼の結晶粒微細化による高強度化作用があり、耐
食性向上に有効な元素でもある。また Vと同様に、Crの
炭化物が粒界に析出するのを防ぐ作用も有する。これら
の効果を得るためには 0.001wt%以上の添加が必要であ
るが、0.50wt%を越えて添加すると伸線加工性を劣化さ
せる。
【0024】Cr:0.05〜3.00wt%について、Crは酸化性
環境において鋼の耐食性を向上させる元素である。また
伸線加工時の加工硬化率を高める元素でもあるため、所
定の強度を得るにあたりCr添加により耐食性に有害な C
含有量を少なくすることができる。このような効果は0.
05wt%以上添加したときに有効である。しかしCrは非酸
化性環境においては逆に耐食性を劣化させる元素であ
り、また後記するNiと同様に熱間圧延後の脱スケール性
を劣化させる元素であるから、3.00wt%以下とした。特
に脱スケール性を考慮する場合には0.50wt%以下が好ま
しい。
【0025】W:0.01〜0.50wt%について、 Wは腐食溶
解時に腐食反応抑制作用のあるタングステン酸イオンを
表面に形成し、耐孔食性を向上させる元素である。この
効果を得るためには0.01wt%以上添加することが必要で
ある。しかし0.50wt%を越えて添加すると熱間加工性を
劣化させる。
【0026】Mo:0.01〜0.50wt%について、Moも Wと同
様に腐食溶解時に腐食反応抑制作用のあるモリブデン酸
イオンを表面に形成し、耐孔食性を向上させる元素であ
り、この効果を得るためには0.01wt%以上添加すること
が必要である。しかし0.50wt%を越えて添加するとその
効果は飽和する。
【0027】Ni:0.05〜1.00wt%について、Niはフェラ
イト中に固溶し、伸線加工性及び靱性を向上させる元素
である。またNiは陽極活性度を低下させる効果があり、
錆を緻密化して耐食性を向上させる元素でもある。これ
らの効果を得るためには0.05wt%以上の添加が必要であ
るが、1.00wt%を越えて添加すると熱間加工後の脱スケ
ール性を劣化させるとともに、経済的にも不合理とな
る。
【0028】Co:0.01〜0.50wt%について、Coは耐食
性、伸線加工性及び撚線加工性を向上させる効果があ
る。この効果は0.01wt%以上の添加で発揮させる。しか
し、Coは高価な元素であり、0.50wt%を越えて添加して
もそれらの効果は飽和する。
【0029】以上説明したように、化学成分を最適化す
ることにより線径増加による耐食性、耐腐食疲労特性向
上との相乗効果が得られる。
【0030】また、上述した素線の線径( 0.4mmφ以
上)に限定することにより得られる腐食速度を小さくす
る効果を発揮させるためには、タイヤゴムとの接着を担
うための表面処理が同時に必要である。即ち、この表面
処理層中にCu、Ni、Co、Mo、Ti、Ca、Ce、La、ミッシュ
メタル、その他の硫化物形成元素を1種以上含ませるこ
とにより、加硫時にゴム中の硫黄 Sと反応して硫化物が
形成され、ゴムとスチールコードとの接着力を高めるこ
とができる。以下、請求項5乃至8に記載の表面処理層
中に含まれる硫化物を形成する元素の限定理由を説明す
る。
【0031】Cu:55.0〜70.0wt%と残部Znについて(請
求項5)、Cuは加硫時にゴム中の硫黄と化合物CuS を形
成し、加硫によるゴムとスチールコードとの接着力を高
める効果がある。また、めっき処理後の最終伸線時に潤
滑作用を発揮するために、伸線加工性を向上させる元素
でもある。これらの効果を得るためには、55.0wt%以上
を含有することが必要である。しかし、その含有量が7
0.0wt%を越えると、大気中において生成するCuの酸化
物を主体とする表面皮膜の還元反応や、一度溶解したCu
イオンの還元反応がガルバニック腐食のカソード反応に
追加され、ガルバニック腐食特性が劣化する。このた
め、Cu量の上限は70.0wt%以下とする必要があり、好ま
しくは65.0wt%がよい。更に、Znを含有させた理由は、
ZnはFeよりも卑な金属であり、一方CuはFeよりも貴な金
属であり、両者を混合させることにより電位をFeの電位
に近づけて、電食を抑制するためである。
【0032】硫化物を形成する元素の少なくとも1種を
0.1wt%以上含むについて(請求項6)、段落番号〔0
030〕に説明したCu、Ni、Co、Mo、Ti、Ca、Ce、La、
ミッシュメタル、その他の硫化物形成元素は、加硫時に
ゴム中の硫黄 Sと反応して硫化物を形成し、ゴムとスチ
ールコードとの接着力を高めることができ、その効果を
発揮するには 0.1wt%以上を含む必要がある。
【0033】Sn: 1.0〜15.0wt%について(請求項
7)、Snは上記硫化物形成元素と共に含有させゴムとス
チールコードとの接着力劣化を低減する作用を有する。
また、SnはFeより卑な金属であり、鋼の犠牲陽極として
作用するため、地鉄(鋼のマトリックス)を防食する効
果がある。また、水素過電圧が大きいため、酸性環境で
の耐食性を向上させる元素でもある。これらの効果を得
るためには、 1.0wt%以上の添加が必要である。しか
し、低融点金属であるため、15.0wt%を越えて添加する
と、伸線時にダイスへの焼き付きを起こし、断線の原因
となる。
【0034】また、上記Snの他にCr:0.01〜0.50wt%、
W:0.01〜0.50wt%、Mo:0.01〜0.50wt%、Ni:0.01〜
0.50wt%、Co:0.01〜0.50wt%、Al: 0.001〜0.50wt
%、よりなる群の内1種以上を表面処理層中に含有させ
てもよいが、その化学成分の限定理由を以下に説明す
る。
【0035】Cr:0.01〜0.50wt%について、Crは腐食溶
解時に、めっきピンホール部の地鉄の酸化皮膜形成を助
長し、それを緻密化し、腐食疲労特性を向上させる作用
を持つ。この効果を得るためには0.01wt%以上含有する
ことが必要である。しかし、0.50wt%を越えて含有する
と、最終伸線加工時にめっき割れの原因となる。
【0036】W:0.01〜0.50wt%について、 Wは腐食溶
解時に腐食反応抑制作用のあるタングステン酸イオンを
表面に形成し、耐局部腐食性を向上させる元素である。
この効果を得るためには0.01wt%以上含有することが必
要である。しかし、0.50wt%を越えて含有すると、伸線
加工時にめっき割れの原因となる。
【0037】Mo:0.01〜0.50wt%について、Moも Wと同
様に腐食溶解時に腐食反応抑制作用のあるモリブデン酸
イオンを表面に形成し、耐局部腐食性を向上させる元素
であり、この効果を得るためには0.01wt%以上含有する
ことが必要である。しかし、0.50wt%を越えて含有する
とその効果は飽和する。
【0038】Ni:0.01〜0.50wt%について、Niはゴムと
スチールコードとの接着力を向上させ、その劣化を低減
する作用を担う。また、腐食溶解時に、めっきピンホー
ル部の地鉄の酸化皮膜形成を助長し、腐食疲労特性を向
上させる元素でもある。この効果を得るためには0.01wt
%以上含有することが必要である。しかし、0.50wt%を
越えて含有すると、伸線加工時にめっき割れの原因とな
る。
【0039】Co:0.01〜0.50wt%について、CoはNiと同
様にゴムとスチールコードとの接着力を向上させ、その
劣化を低減する作用を有する。また、耐食性、伸線加工
性及び撚線加工性を向上させる効果もある。この効果は
0.01wt%以上の含有で発揮し得る。しかし、Coは高価な
元素であり、0.50wt%を越えて添加してもそれらの効果
は飽和する。
【0040】Al: 0.001〜0.50wt%について、AlもNi、
Coと同様にゴムとスチールコードとの接着力を向上さ
せ、その劣化を低減する作用を有する。しかし、硬く脆
いAlが酸化物を形成すると最終伸線加工時のめっき割れ
や、断線の原因となるため、その含有量は0.50wt%以下
とする必要がある。
【0041】以上説明したように、本発明(請求項5乃
至6)においては、線径最適化による酸素の拡散限界電
流密度低減効果と共に、素線表面にゴムとの接着を担う
硫化物形成元素を含有させた表面処理及びめっき中のCu
量最適化によるガルバニック腐食抑制効果等の相乗効果
により優れた耐食性、腐食疲労特性が得られるものであ
る。また、本発明(請求項7)では、Snによる犠牲防食
効果と水素過電圧の増大による耐食性向上とが付加さ
れ、さらに優れた耐食性、腐食疲労特性が得られるもの
である。また、本発明(請求項8)では、微量元素の含
有量を最適化することで耐食性向上やめっき割れが低減
されるなどの効果がさらに加味される。
【0042】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例を説明す
る。
【0043】
【実施例】
〔実施例1〕 供試材の作成について 0.82C-0.20Si-0.55Mn 鋼を熱間圧延し得られた線材(5.5
mmφ)を一次伸線加工(5.5mmφ→ 2.6mmφ)、パテンテ
ィング処理(950℃加熱→ 550℃鉛浴)、二次伸線加工
(2.6mmφ→ 1.3mmφ)、再度のパテンティング処理(950
℃加熱→ 550℃鉛浴)及びブラスめっき処理(電気Cuめ
っき→電気Znめっき→拡散熱処理)を順次施し、最終的
に湿式伸線加工を加えて様々な線径(0.20〜1.20mmφ)
の細鋼線を作成した。次に、表1に示した基本配合(ph
r) のタイヤ用ゴム(300× 500×50mm)に上記細鋼線を
表2に示す様々な撚り構造で埋め込み、温度 160℃、圧
力15MPa で20分間加硫したものを試験片とし、耐食性評
価及び接着力評価試験を行った。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】耐食性評価及び接着力評価試験について 上記要領で作成した試験片にスチールコードまで達する
切れ目(クロスカット)を入れ、それを複合サイクル試
験に供した。複合サイクル試験は、塩水環境(3.5wt%N
aCl水溶液散布、 3時間)→乾燥(30℃、40%RH、 3時
間)→湿潤(80℃、95%RH、 6時間)を1サイクルと
し、 120サイクルを繰り返した。本試験は、実機タイヤ
においてゴム損傷部から水分、塩分がしみ込んだ時の状
態を模擬した試験である。試験後に、埋め込まれたスチ
ールコードを引き抜き、スチールコードの剥離状態の観
察から接着力を、素線の最大減肉量から耐食性を評価し
た。その結果を上記表2に併せて示す。この表2に示す
結果から明らかなように、本発明に係るスチールコード
は減肉量が少なく、ゴムとの接着性にも優れることが分
かる。即ち、この結果は、本発明のタイヤは耐久寿命が
従来タイヤに比べ格段に長いことを示すものである。
【0047】〔実施例2〕 供試材の作成について 表3に示す化学成分の異なる各種鋼を熱間圧延し得られ
た線材(5.5mmφ)を一次伸線加工(5.5mmφ→ 2.6mm
φ)、パテンティング処理(950℃加熱→ 550℃鉛浴)、
二次伸線加工(2.6mmφ→ 1.3mmφ)、再度のパテンティ
ング処理(950℃加熱→ 550℃鉛浴)及びブラスめっき処
理(電気Cuめっき法、Cu−30Zn)を順次施し、最終的に
湿式伸線加工を加えて表3に示す線径の細鋼線を作成し
た。これらの供試材の強度、捻回値、破断絞り値を表4
に示す。本発明に係る鋼は従来鋼と同等以上の機械的特
性値を有しており、ゴム補強用材料として使用可能であ
ることが分かる。
【0048】
【表3】
【0049】
【表4】
【0050】素線の耐食性評価について 上記表3に示した供試材の耐食性を評価するために、 H
Cl水溶液及びNaOH水溶液によりpHを 2.5、 6.4、 8.9と
変化させた0.1mol/l NaCl水溶液中(30℃、大気開放)
に浸漬し、浸漬前後の重量変化から腐食速度(g/m2/h)
を求めた。その結果を表4に併せて示す。また、本発明
に係る供試材において、化学成分を同一として線径のみ
変化させたもの(供試材 No.1, 2, 3, 4, 6, 7, 8, 9)
の腐食速度と線径との関係を図1に示す。これら表3、
4及び図1から明らかなように、線径を 0.4mmφ以上と
すると中性(pH6.4)及び酸性(pH2.5)環境で著しく耐食
性が向上することが分かる。また、本発明のように化学
成分を最適化すると、更に耐食性が向上することが分か
る。
【0051】素線の腐食疲労特性評価試験について 表3に示す各供試材の腐食疲労特性は、 HCl水溶液及び
NaOH水溶液によりpHを2.5、 6.4、 8.9と変化させた0.1
mol/l NaCl水溶液中(30℃、大気開放)での腐食疲労
試験による破断寿命(サイクル数/kcycle)にて評価し
た。最大引張応力20MPa 、応力変動幅15MPa 、繰り返し
速度 0.3Hzで、供試材に繰り返し引張応力を負荷した。
その試験結果を上記表4に併せて示す。表4より明らか
なように本発明に係る鋼は従来鋼に比べて腐食疲労特性
が大きく向上していることが分かる。また、上記結果
は、本発明のタイヤは耐久寿命が従来タイヤに比べ格段
に長いことを示すものである。
【0052】〔実施例3〕 供試材の作成について 0.81C-0.34Si-0.55Mn 鋼を熱間圧延し得られた線材(5.5
mmφ)を一次伸線加工(5.5mmφ→ 2.6mmφ)、パテンテ
ィング処理(950℃加熱→ 550℃鉛浴)、二次伸線加工
(2.6mmφ→ 1.3mmφ)、再度のパテンティング処理(950
℃加熱→ 550℃鉛浴)及び表5に示す様々なめっき処理
を順次施し、最終的に湿式伸線加工を加えて表5に示す
線径の細鋼線を作成した。これらの供試材の強度、捻回
値、破断絞り値を表6に示す。本発明に係る鋼は従来鋼
と同等以上の機械的特性値を有しており、ゴム補強用材
料として使用可能であることが分かる。なお、表面処理
としては、表5に示す電気めっきや無電解めっきなどの
湿式処理のみならず、PVDやCVDなどの気相コーテ
ィング技術も適用されることは言うまでもない。
【0053】
【表5】
【0054】
【表6】
【0055】素線の腐食疲労特性評価試験について 上記表5に示す各供試材の腐食疲労特性は、 HCl水溶液
及びNaOH水溶液によりpHを 2.5、 6.4、 8.9と変化させ
た0.1mol/l NaCl水溶液中(30℃、大気開放)での腐食
疲労試験による破断寿命(サイクル数/kcycle)にて評
価した。最大引張応力20MPa 、応力変動幅15MPa 、繰り
返し速度 0.3Hzで、供試材に繰り返し引張応力を負荷し
た。その試験結果を上記表6に併せて示す。表6より明
らかなように本発明に係る鋼は従来鋼に比べて腐食疲労
特性が大きく向上していることが分かる。
【0056】ゴムとの接着力評価試験について 上記表5の各供試材を上記表1に示した基本配合(phr)
のタイヤ用ゴムに埋め込み、温度 160℃、圧力15MPa で
20分間加硫した。これらのゴムの加硫直後、及び恒温恒
湿雰囲気(80℃、95%RH)に14日、30日暴露した後の接
着力を、スチールコード引き抜き試験で評価した。その
試験結果を上記表6に併せて示す。表6の試験結果より
明らかなように、恒温恒湿試験30日後においても、本発
明に係る鋼はいずれもスチールコードとゴムの界面で剥
離することがなく、非常に高い接着力を維持しているこ
とが分かる。これは、本発明に係る鋼が優れた耐食性を
有しており、スチールコードとゴムの界面の接着層で劣
化が起こらないことに起因するものである。
【0057】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係るタイ
ヤゴム補強用スチールコードは、その素線の線径が 0.4
mmφ以上に形成され、及びその素線の鋼化学成分が最適
化され、更にはこれらの表面に施すめっきの化学成分が
最適化されていることで、優れた耐食性及び腐食疲労特
性を有するものである。
【0058】また、本発明に係るタイヤは、上記スチー
ルコードにより補強されており、耐久寿命の長い空気タ
イヤを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】線径と腐食速度との関係を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 落合 憲二 兵庫県神戸市灘区灘浜東町2番地 株式会 社神戸製鋼所神戸製鉄所内

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 線径が 0.4mmφ以上の素線からなること
    を特徴とするタイヤゴム補強用スチールコード。
  2. 【請求項2】 素線の化学成分が C:0.50〜1.30wt%、
    Si:2.00wt%以下、Mn:1.00wt%以下、Cu:0.05〜0.50
    wt%、残部Fe及び不可避不純物よりなる請求項1記載の
    タイヤゴム補強用スチールコード。
  3. 【請求項3】 請求項2記載のタイヤゴム補強用スチー
    ルコードにおいて、素線の化学成分が更にLa: 0.001〜
    0.050wt%、Ce: 0.001〜 0.050wt%の内の少なくとも
    1種を含むタイヤゴム補強用スチールコード。
  4. 【請求項4】 請求項2又は3記載のタイヤゴム補強用
    スチールコードにおいて、素線の化学成分が更にTi:
    0.001〜0.20wt%、 V:0.01〜0.50wt%、Nb:0.001〜0.
    50wt%、Cr:0.05〜3.00wt%、Mo:0.01〜0.50wt%、
    W:0.01〜0.50wt%、Ni:0.05〜1.00wt%、Co:0.01〜
    0.50wt%、よりなる群の内1種以上を含むタイヤゴム補
    強用スチールコード。
  5. 【請求項5】 素線の表面にCu:55.0〜70.0wt%、残部
    Zn及び不可避不純物よりなる表面処理層を有する請求項
    1、2、3又は4記載のタイヤゴム補強用スチールコー
    ド。
  6. 【請求項6】 素線の表面に硫化物を形成する元素の少
    なくとも1種を 0.1wt%以上含む表面処理層を有する請
    求項1、2、3、4又は5記載のタイヤゴム補強用スチ
    ールコード。
  7. 【請求項7】 表面処理層中にSn: 1.0〜15.0wt%を含
    む請求項5又は6記載のタイヤゴム補強用スチールコー
    ド。
  8. 【請求項8】 表面処理層中にCr:0.01〜0.50wt%、
    W:0.01〜0.50wt%、Mo:0.01〜0.50wt%、Ni:0.01〜
    0.50wt%、Co:0.01〜0.50wt%、Al: 0.001〜0.50wt
    %、よりなる群の内1種以上を含む請求項5、6又は7
    記載のタイヤゴム補強用スチールコード。
  9. 【請求項9】 請求項1乃至8記載のタイヤゴム補強用
    スチールコードにより補強されたことを特徴とするタイ
    ヤ。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN110100049A (zh) * 2016-12-19 2019-08-06 日本制铁株式会社 镀覆钢线、镀覆钢线的制造方法、钢帘线及橡胶复合体

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EP3561157A4 (en) * 2016-12-19 2020-09-02 Nippon Steel Corporation PLATED STEEL WIRE, PROCESS FOR MANUFACTURING PLATED STEEL WIRE, STEEL CABLE AND RUBBER-BASED COMPOSITE BODY

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